説明

ウエハ検査装置

【課題】
半導体ウエハの高速で高分解能な外観検査と、異物や欠陥の存在部位からTEM観察や各種分析のための試料を高い位置精度で一貫して作製することのできる検査装置を提供すること。
【解決手段】
同一検査装置内に、ウエハ検査用の走査型電子顕微鏡部(SEM部)1と試料作製加工用のイオンビーム部101とを併設し、SEM部1によるウエハ7の外観検査と、この検査結果に基づいての、ウエハ7上の欠陥(異物やパターン欠陥)の存在部位からのTEM観察や各種分析のための試料の摘出加工作業とを、同一ステージ8上で一貫して行なえるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハの検査技術に関し、特にウエハ上の欠陥(微小異物やパターン不良等)が存在する箇所を高い位置精度で検出し、該欠陥存在箇所を含む領域を観察や分析、あるいは欠陥修正等の目的で高い位置精度で加工するのに好適なウエハ検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置製造では、生産個数が多量であり、かつ、高度な制御を要求される工程が多数あるため、ある工程での不良発生が、製造歩留りの大幅な低下や生産ライン全体の稼働停止につながり、採算性に大きく影響する。このため、半導体装置の製造現場では、特定のプロセスの後やデバイス完成後に入念な検査が行なわれ、不良品の撲滅と不良原因の追及に注力されている。実際には、製造工程で定期的または一定数量毎にウエハやデバイスを抜き取り、不良箇所の有無を検査している。ウエハの場合、検査箇所と検査項目を予め決めておき、各ウエハに対して常にその検査箇所をモニタして製造プロセスの異常を検出する方法や、パターン完成後のウエハ全面を隈無く検査し、パターン不良や異物等が存在する欠陥箇所があれば、そのデバイスを廃棄したり、欠陥発生の原因を追及して対策する方法が採られる。
【0003】
検査装置の一例として、ウエハの全面もしくは一部の領域の外観について、光や電子線を用いて欠陥(異物付着やパターン不良等)を検出する外観検査装置がある。この外観検査装置によれば、検出欠陥をウエハ上でマッピングすることが可能である。特に、近年では半導体デバイスのパターン寸法が急速に微小化した結果、上記した外観検査装置の中でも、より微細な欠陥の検出が可能な電子線を用いた外観検査装置が注目されている。
【0004】
電子線を用いた外観検査装置に関しては、例えば、特開平5−258703号公報に、X線マスクやそれと同等の導電性基板上に形成されたパターンを電子線を使用して検査する方法およびそのシステム構成について開示されている。
【0005】
また、特開昭59−160948号公報には、半導体ウエハ表面上を電子線で一方向に走査し、該ウエハを載せたステージを上記電子線走査方向と垂直な方向に連続的に移動させて、上記ウエハ表面の電子線走査像を生成させ、該走査像を用いて高速に回路パターンの検査を行なう技術について開示されている。
【0006】
さらに、特開昭63−218803号公報には、電子線走査像取得時の半導体ウエハ表面への電子線照射時間を精密に制御して、半導体表面のチャージアップや階調ドリフトが取得像質に与える影響を低減し、検査に用いる電子線走査像の信頼性および感度を向上させる技術について開示されている。
【0007】
上記のような外観検査装置によってその存在位置が同定された欠陥について、更にそれらの形状観察や分類等の詳細な検討を行なうには、従来走査型電子顕微鏡(以下SEMと略記する)が用いられることが多かった。しかし、半導体デバイスの急速な高集積化に伴い、最早SEMの分解能では観察できない程の極微細形状の観察や、SEMでは原理的に観察不可能な内部構造の観察や、更には欠陥の形状や構造の観察のみではなく、それらの組成分析等も合わせて行なうことが必要になってきた。このため、これら欠陥の存在箇所につき、SEMよりも高分解能な透過型電子顕微鏡(以下TEMと略記する)による形状・構造観察や二次イオン質量分析法による組成評価等を行なうことが次第に活発化してきている。また、ウエハの大型化とデバイスの微細化とによる付加価値の上昇に伴い、付着異物の除去やパターン欠陥の修正をそれらの位置確定と並行して実施することも必要になってきた。
【0008】
【特許文献1】特開平5−258703号公報
【特許文献2】特開昭59−160948号公報
【特許文献3】特開昭63−218803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、今日の半導体集積回路装置の製造技術分野においては、回路パターンの高集積化と歩調を合わせてウエハの大型化が進展している。従って、ウエハ上の欠陥(異物やパターン不良等)の検査には、より高分解能でより広い領域にわたっての検査が要求されている。前述したように、外観検査の高分解能化のためには、必然的に、光を用いた検査方式から電子線を用いた検査方式へと向かわざるを得ない。この電子線による外観検査では、二次電子の走査像(以下SEM像と称する)を従来のSEMにおけるよりも数千倍から一万倍程度の高速で取得し、このSEM像を利用して異物やパターン不良等の欠陥検出を行なう。上述したように、特開昭59−160948号公報には、電子線走査とステージの連続移動とを併用することによって、SEM像を用いた回路パターン検査を高速化する方式が開示されている。このような方式に、大電流の電子光学系や高速偏向・画像取得機構等を併用することで、上記したようなSEM画像の高速取得が実現できる。
【0010】
また、外観検査装置で抽出した欠陥部について前述したような観察や分析評価さらには異物の除去やパターン欠陥の修正を実施するには、さらに大きな技術的課題がある。それは、外観検査装置特に電子線式の外観検査装置によれば、ミクロンサイズあるいは更に微小な欠陥部の位置をその大きさと同程度の精度で検出できるにも拘らず、観察や分析のための試料作製、あるいは異物除去や欠陥修正のための加工を上記と同程度の位置精度で行なうのが非常に困難なことである。更に、この試料作製や加工には多大の時間と技術的熟練が必要であるという実用的な問題もある。
【0011】
以下、上記した欠陥部の観察や分析のための試料の作製技術について、TEM観察用試料の作製方法を例にとって説明する。観察すべき試料がウエハの場合、先ず観察したい領域に目印を付け、この観察領域を破壊しないようにしてウエハ表面にダイアモンドペン等で傷を付けて劈開するかダイシングソ−を用いて分断する。このようにして2枚の短冊状ペレットを作成し、両者をその観察領域同士が互いに向かい合うようにして貼り合わせて貼り合わせ試料を作製する。次に、この貼り合わせ試料をダイヤモンドカッターでスライスし、スライス試料を切り出す。このスライス試料の大きさは、一般に3mm×3mm××0.5mm程度である。さらに、このスライス試料を研磨材を用いて研磨盤上で薄く研磨して厚さ20μm程度の研磨試料を作成し、この研磨試料をTEMステージに搭載される単孔型のTEMホルダ上に固定する。次いで、この研磨試料の片面または両面にイオンビームを照射してイオンシニングを行ない、試料の中央部に穴が開いたらイオンビーム照射を止めてTEM観察用の試料とする。このようにして、試料中央部の穴の周辺の厚さ100nm程度以下の領域についてTEM観察を行なっていた。以上のような方法では、観察が必要な箇所がミクロンレベルで特定されている場合、この観察箇所の位置出しが非常に難しくなる。
【0012】
TEM試料作製の別法として、従来より集束イオンビーム(以下FIBと略記する)加工が利用されている。この方法では、まず観察すべき領域を含む短冊状ペレットをダイシングにより切り出す。このペレットの大きさは、一般に3mm×0.5mm×0.5mm程度である。次に、この短冊状ペレットをやや半円形をした薄い金属片からなるTEM試料ホルダ上に固定する。この短冊状ペレットの中の観察領域にFIBを照射し、厚さ100nm程度の壁状薄片部(ウォール部)を形成する(以下これをウォール加工と云う)。そして、このウォール加工されたペレットを保持したTEMホルダをTEMステージ上に搭載し、上記ウォール部を観察領域としてTEM観察を行なう。この方法により、観察箇所をミクロンレベルで位置出しすることが可能になった。しかし、FIB加工には非常に時間がかかると云う問題があり、さらに、原理的にミクロンレベルでの位置出しが行なえるとは云うものの、実際にこれを確実に行なうには高度の技術的熟練が必要である。
【0013】
上述したように、従来のウエハ検査技術には、以下のような問題点があった。
(1)座標の問題:外観検査装置によりウエハ全面もしくはその一部の検査を行なって異物やパターン不良の存在する欠陥箇所の座標がミクロンレベルで明らかになったとしても、この欠陥箇所の観察や分析のための試料作製、あるいは異物除去や欠陥修正のための加工を行なうには、検査済ウエハを手動または自動で検査位置から加工位置へと搬送しなければならない。従って、上記の欠陥検査により欠陥部の正確な座標データが得られても、加工時にその位置精度を充分に生かすことができず、本来加工不要な部分まで含めての余分な加工を行なうことが避けられなかった。
(2)ウエハ状態の問題:外観検査装置によりウエハ全面もしくはその一部を検査した結果ある位置に欠陥を検出できたとしても、この欠陥箇所の観察や分析あるいは異物除去や欠陥修正等のためにウエハを別の場所に搬送すると、それにより新たな欠陥(異物等)が発生したり、逆に着目していた欠陥(異物等)が無くなってしまったり、あるいは新たに別の欠陥(パターン損傷等)を引き起こしたりして、目的とする欠陥箇所の観察や分析ができなくなってしまうこともある。
(3)ウエハ破損の問題:最近ではウエハ径が200mmにもなり、今後はさらに300mmからそれ以上に大口径化される傾向にあるため、付加価値が高いデバイスが数多く搭載されたウエハをたった数箇所の検査のために切断や劈開で分離してしまい、最終的に廃棄処分としてしまうことは生産コストの観点から次第に許容できなくなりつつある。
【0014】
本発明は、上述したような従来技術における問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、ウエハ上に存在する欠陥についての高速かつ高分解能での外観検査を行なうことと、この外観検査により得られるウエハ上の欠陥位置情報(座標データ)を基にしてそれら欠陥の存在する部位をウエハ形状を維持したままで正確に加工したり摘出したりすることとを長時間の煩雑な作業を行なわずして、簡便かつ確実に、一貫して行なうことの可能なウエハ検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、本発明によれば、以下のような構成と機能とを備えたウエハ検査装置が提供される。
【0016】
先ず、ウエハ上に存在する異物や回路パターンの欠陥等を検出するための外観検査には、電子線照射により得られるSEM像を利用する。SEM像観察により高分解能での外観検査が可能なことは前述したとおりである。これに、ステージの連続移動機構,大電流の電子光学系,高速偏向・画像取得機構等を用いることでSEM像の高速取得が実現できるが、さらに、SEM像取得に用いる電子線を複数とすれば更なる検査速度の向上も可能となる。
【0017】
さらに、本発明では、上記の外観検査により検出された欠陥(異物やパターン不良等)の存在する位置(欠陥箇所)からTEM観察や各種分析のための試料を正確に摘出したり、検出された欠陥の修正(異物の除去やパターン不良の修正等)を行なうために、上記した外観検査のために用いるSEM像観察装置と同一装置内で、検査済ウエハを検査時と同一のステージ上に載置したままの状態で、検出された欠陥箇所の加工や摘出を行なう。
【0018】
上記構成の本発明ウエハ検査装置によれば、上記したSEM像観察による外観検査の結果明らかとなった欠陥箇所に関する位置情報(座標データ)を基にして、これら欠陥箇所の観察や分析のための試料を高い位置精度で作製したり、これら欠陥箇所の修正処理のための加工を行なったりすることができる。また、上記の修正処理は、従来のようにウエハ全体を破壊することなく行なえるため、高価な大口径ウエハを検査のために廃棄してしまう必要もなくなる。
【0019】
すなわち、本発明のウエハ検査装置は、SEM像観察による高分解能での外観検査を高速に行なえると共に、この外観検査により検出された欠陥箇所の観察や分析のための試料作製やこれら欠陥箇所の修正処理のための加工をも、高い位置精度で一貫して行なえるように構成された複合化された検査装置である。
【発明の効果】
【0020】
以上詳述したように、本発明によれば、同一ステージ上においてウエハの検査と加工を合わせて行なうことで、ウエハを検査装置から加工装置に搬送し、合わせて転送した座標データに基づき加工を行なう従来の方法に比べて加工位置精度が著しくに向上し、従来法よりも所要加工範囲を大幅に縮小限定することが可能になった。その結果、所要加工量が減少したため、加工時間が短縮し、加工起因汚染が低減すると共に、加工による新たな欠損部の発生を最小限に抑えることが可能となる。また、上記と同様に、同一ステージ上において検査と評価とを合わせて行なうことで、評価の位置精度を向上させることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態につき、実施例を挙げ、図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
〈実施例1〉
図1に、本発明の一実施例になるウエハ検査装置の基本的構成を示す。図1において、SEM部1は、電界放出型電子源を含む電子発生装置2,静電偏向系を含む電子走査装置3,静電レンズ系を含む電子収束装置4,半導体検出器を含む検出装置5から構成されている。SEM部1からは収束された電子線6が一方向に走査されてウエハ7上に照射される。ウエハ7は、リターディング電圧を印加可能なステージ8上に固定保持されており、ステージ駆動装置9によりステージ8が面内方向に移動するのに応じて、SEM部1に対して相対的に二次元方向に移動する。ここで、ステージ8の移動方向のうち、電子線6の走査方向と垂直な移動方向を連続移動方向、電子線6の走査方向と平行な移動方向を送り方向と称することにする。SEM部1直下の電子線6照射部分で発生する二次電子は検出装置5により検出され、二次電子信号が画像生成装置11に送られる。画像生成装置11は、ステージ8が連続移動方向に移動中の二次電子信号のうちの所定の検査領域幅分の信号からその領域の二次電子像(SEM像)を生成する。そして、画像解析装置12により、このSEM像を利用して欠陥(異物やパターン不良等)の検出を行ない、さらにウエハ7上でのこれら欠陥が存在する箇所(欠陥箇所)の位置情報(座標データ)を含む欠陥マップを生成する。なお、これら装置各部の動作は検査制御装置13により最適に制御される。特に、検査制御装置13においては、SEM部1によりウエハ7上の検査領域全体を隈なく検査することができるようにステージ制御装置10を制御する。
【0023】
加工制御装置105は、上記の欠陥マップに含まれる座標データに基づき操作者が決定した加工部位が、SEM部1と並べて設置された加工部201の直下となるようにステージ8を移動させるための指示をステージ制御装置10に出す。そして、加工部201において、エネルギービームや探針等により上記加工部位の加工や特性評価等(以下これらを一括して加工と称する)を行なう。なお、以上の検査と加工は、システム制御装置112により装置を統合的に制御することにより行われる。
【0024】
このように、同一のステージ8上において検査と加工とを合わせて行うことにより、ウエハ7を検査装置から加工装置に搬送し、合わせて転送した座標データに基づき加工を行なう従来の方法に比べて、加工位置精度が著しく向上し、加工範囲を大幅に縮小限定することが可能になった。その結果、所要加工量が大幅に減少したため、加工時間が短縮し、加工起因汚染が低減すると共に、加工による新たな損傷の発生を最小限に抑えることが可能となった。
【0025】
同一のステージ上において検査と加工とを合わせ行なうことは、検査における位置精度が非常に高い場合でも、その高い位置精度を充分に活用することを可能にするので、特に電子線を用いた検査装置の場合に顕著な効果をもたらす。しかし、この方法は光等の他のエネルギービームを用いた検査装置による検査に際しても有効に利用できることは云うまでもない。
【0026】
〈実施例2〉
次に、本発明の他の一実施例につき図2を参照して説明する。図2において、SEM部1は、電界放出型電子源を含む電子発生装置2,静電偏向系を含む電子走査装置3,静電レンズ系を含む電子収束装置4,半導体検出器を含む検出装置5から構成されている。SEM部1は、N組(図2の実施例においては4組;N=4)が備えられており、各組より収束された電子線6が一方向に走査されつつウエハ7上に照射される。ウエハ7はリターディング電圧を印加可能なステージ8上に固定保持されており、ステージ駆動装置9によってステージ8がその面内方向で移動するのに応じて、SEM部1に対し相対的に二次元方向に移動する。ここで、先の実施例1の場合と同様に、ステージ8の移動方向のうち、電子線6の走査方向と垂直な移動方向を連続移動方向、電子線6の走査方向と平行な移動方向を送り方向と称することにする。SEM部1直下の電子線6照射部分で発生する二次電子は検出装置5により検出され、二次電子信号が画像生成装置11に送られる。画像生成装置11は、ステージ8が連続移動方向に移動中の二次電子信号のうち、各SEM部1が受持つ検査領域幅分の信号からその領域の二次電子像(SEM像)を生成する。そして、画像解析装置12において、このSEM像を利用して欠陥(異物やパターン不良等)の検出を行ない、さらに、ウエハ7上でのこれら欠陥が存在する箇所(欠陥箇所)の位置情報(座標データ)を含む欠陥マップを生成する。なお、これら装置各部の動作は検査制御装置13により最適に制御される。特に、検査制御装置13においては、複数組のSEM部1によりウエハ7表面上の検査領域全体を隈なく、しかも1組のSEM部1を用いる場合のN倍(本実施例の場合は4倍)の速度で検査することができるようにステージ制御装置10を制御する。
【0027】
更に、図2において複数のSEM部1と同列に並べて設置されたイオンビーム部101は、イオンビーム源を含むイオンビーム発生装置102,静電偏向系を含むイオンビーム走査装置103,および静電レンズ系を含むイオンビーム収束装置104から構成されている。画像解析装置12で生成された欠陥マップは、検査制御装置13を経て加工制御装置105へ転送される。加工制御装置105は、欠陥マップ中に含まれる座標データに基づいて操作者が決定した観察部位がイオンビーム部101の直下となるようにステージ8を移動させるための指示をステージ制御装置10に出す。そして、イオンビーム部101からの収束イオンビーム106,高精度微動機構を備えたマニピュレータ107,およびガス供給装置108からのガスを利用して、上記した手順で決定した観察部位からTEM等による観察や各種分析のための試料を摘出し、マニピュレータ107上に固定保持する。
【0028】
また、ここでは上記した試料摘出の他に、イオンビーム106による異物除去や、異物やパターン欠陥の存在位置を示すためのマーカの書き込み、更にはガス供給装置108からのガスを利用してのイオンアシストデポジションによるパターン欠陥部分の修正等も行なえるようになっている。
【0029】
そして、試料を固定保持したマニピュレータ107は、マニピュレータ制御装置111により制御されたマニピュレータ移動装置113により、ステージ8の外に設置された第二のイオンビーム部101の直下位置へと運ばれる。そして、ここで試料が試料ホルダ109上に移され、欠陥部の観察や分析のために必要な試料の加工処理が施される。
【0030】
次に、上記した試料作製の手順をTEM観察用の薄膜試料を作製する場合を例にとって、図3を参照して説明する。先ず、イオンビーム部101から観察部位110の周辺にイオンビーム106を照射し、観察部位110を含む小片がその一端部のみでウエハ7と接続された状態になるまで観察部位110の周辺を削る(図3のa、b、c)。次に、この小片の上面にマニピュレータ107先端を接触させた状態でガス供給装置108からの接着用ガスとイオンビーム106によるイオンビームアシスト接着を行ない、上記小片をマニピュレータ107の先端に固定する(図3のd)。そして、上記小片のウエハ7との接続部分をイオンビーム106で切り離す(図3のe)。これにより、観察部位110を含んだ上記小片をウエハ7から高い位置精度で摘出できる。マニピュレータ107を駆動して上記小片をウエハ7上から第二のイオンビーム部101直下の試料ホルダ109上に移動し(図3のf,g)、そこで再びイオンビームアシスト接着を行なって、上記小片を試料ホルダ109の先端部に固定する(図3のh)。さらに、イオンビーム106によってマニピュレータ107を上記小片から切り離した(図3のi)後、観察部位110をイオンビーム106で薄膜化する(図3のj)ことにより、目的とするTEM観察用の薄膜試料が試料ホルダ109先端部に固定保持された状態で完成する。上記の試料作製手順は、図2R>2におけるイオンビーム部101、マニピュレータ制御装置111、ガス供給装置108,ステージ制御装置10等を加工制御装置105によって統合的に制御することにより進められる。
【0031】
次に、これまで述べたウエハ検査の手順を図4により纏めて説明する。検査を開始すると、先ず最初に電子線6による外観検査を行ない、異物やパターン欠陥のウエハ7上での存在位置を検出して先述の欠陥マップを生成する。この結果は欠陥データとして装置の操作者に提供される。同時に、操作者は上記欠陥マップに基づいて観察部位を決定する。そして、決定した観察部位について、ウエハ7からの試料摘出と観察・分析用の試料作製のための加工をイオンビーム106によって順次行なうことで、観察・分析装置に装着可能な試料の作製が完了する。以上の検査手順は、図2におけるシステム制御装置112による統合的な制御により行なわれる。
【0032】
〈実施例3〉
本発明のさらに他の一実施例につき、図5を用いて説明する。図5において、SEM部1は、電界放出型電子源を含む電子発生装置2,静電偏向系を含む電子走査装置3,静電レンズ系を含む電子収束装置4,半導体検出器を含む検出装置5から構成されている。SEM部1は、N組(本実施例では4組;N=4)が備えられており、各組より収束された電子線6が一方向に走査されてウエハ7上に照射される。ウエハ7は、リターディング電圧を印加可能なステージ8上に固定保持されており、ステージ駆動装置9によってステージ8がその面内方向で移動されるのに応じて、SEM部1に対し相対的に二次元方向に移動する。ここで、先の実施例1、2の場合と同様、ステージ8の移動方向のうち、電子線6の走査方向と垂直な移動方向を連続移動方向、電子線6の走査方向と平行な移動方向を送り方向とする。SEM部1直下の電子線6照射部分で発生する二次電子は検出装置5によって検出され、二次電子信号が画像生成装置11へと送られる。画像生成装置11は、ステージ8が連続移動方向に移動中の二次電子信号のうち、各SEM部1が受持つ検査領域幅分の信号から該領域の二次電子像(SEM像)を生成する。そして、画像解析装置12により、このSEM像を利用してウエハ7上の異物やパターン欠陥等の検出を行ない、さらに、ウエハ7上でのこれら異物や欠陥が存在する箇所(欠陥箇所)の位置情報(座標データ)を含む欠陥マップを生成する。なお、これら装置各部の動作は、検査制御装置13によって最適に制御される。特に、検査制御装置13においては、複数組のSEM部1により、ウエハ7上の検査領域全体を隈なく、しかも1組のSEM部を利用する場合のN倍(本実施例の場合は4倍)の速度で検査することができるようにステージ制御装置10を制御する。なお、以上の装置構成は、図2を用いて説明した本発明の第2の実施例の場合と同様である。
【0033】
図5において、複数組のSEM部1と同列に並べて設置されたイオンビーム部101は、イオンビーム源を含むイオンビーム発生装置102,静電偏向系を含むイオンビーム走査装置103および静電レンズ系を含むイオンビーム収束装置104から構成されている。画像解析装置12で生成された欠陥マップは、検査制御装置13を経て加工制御装置105へ転送される。加工制御装置105は、欠陥マップに含まれる座標データに基づき操作者が決定した観察部位が、イオンビーム部101の直下となるようにステージ8を移動させる指示をステージ制御装置10に出す。そして、イオンビーム部101からのイオンビーム106,高精度微動機構を備えたマニピュレータ107,およびガス供給装置108からのガスを利用して、上記の手順で決定した観察部位からTEM等による観察や各種分析のための試料を摘出して、試料ホルダ109上に固定保持させる。
【0034】
本実施例では、試料のウエハ7からの摘出と、試料ホルダ109への固定と、観察や分析のための試料の加工とを、ステージ8上において同一のイオンビーム部101を用いて一貫して行なう。なお、以上の検査と加工はシステム制御装置112により装置を統合的に制御することにより行なわれる。本実施例では、図2に示した実施例に比べ、装置構成がより簡潔化されているため、上記した加工処理手順を採ってもウエハ7の汚染や損傷が特に問題とならない場合には有用である。
【0035】
〈実施例4〉
図6に、本発明のさらに他の一実施例を示す。図6において、SEM部1は、電界放出型電子源を含む電子発生装置2,静電偏向系を含む電子走査装置3,静電レンズ系を含む電子収束装置4および半導体検出器を含む検出装置5から構成されている。SEM部1より収束された電子線6が一方向に走査されてウエハ7上に照射される。ウエハ7は、リターディング電圧を印加可能なステージ8上に固定保持されており、ステージ駆動装置9によりステージ8がステージ8面内で移動されるのに応じて、SEM部1に対して相対的に二次元方向に移動される。ここで、先の実施例1〜3の場合と同様に、ステージ8の移動方向のうち、電子線6の走査方向と垂直な移動方向を連続移動方向、電子線6の走査方向と平行な移動方向を送り方向と称することとする。SEM部1直下の電子線6照射部分で発生する二次電子は検出装置5により検出されて、検出二次電子信号が画像生成装置11へ送られる。画像生成装置11は、ステージ8が連続移動方向に移動中の二次電子信号のうちの所定検査領域幅分の信号からその領域幅分の二次電子像(SEM像)を生成する。そして、画像解析装置12は、このSEM像を利用して欠陥(異物やパターン欠陥等)の検出を行ない、さらにウエハ7上でのこれら欠陥の位置情報(座標データ)を含む欠陥マップを生成する。なお、これら装置各部の動作は、検査制御装置13により最適に制御される。特に、検査制御装置13においては、SEM部1によりウエハ7上の所要検査領域を隈なく検査することができるようにステージ制御装置10を制御する。
【0036】
また、電気特性・探針力評価装置301は、欠陥マップに含まれる座標データに基づき操作者が決定した評価部位が、実効的にSEM部1と並べて設置された微動機構を備えた探針302の直下となるようにステージ8を移動させる指示をステージ制御装置10に出す。探針302は、位置制御装置303による精密な位置制御の下で、評価部位に接触して同部位の電気特性を検出したり、あるいは評価部位の極近傍に接近して探針302と評価部位との間に働く力を検出したりするのに利用される。また、探針302には加熱装置304が付設されており、これを加熱制御装置305で制御することにより、探針302先端の温度をそれが接近している評価部位の性質や形状を変化させるのに必要な値に設定することが可能である。これらの機構により、評価部位の電気特性および表面形状と寸法の評価、さらには当該部位の加熱修正等が高い位置精度で行なえるようになっている。なお、以上の検査と評価は、システム制御装置112によって装置を統合的に制御することにより行なわれる。
【0037】
以上、本発明を種々の実施例を挙げて説明してきたが、本発明は、SEM部1と加工部201とが同一装置内に設置されており、SEM部1による検査と加工部201による加工や評価がウエハ7を同一のステージ上に設置したままの状態で実施できる装置構成であれば、上記した実施例に留まらず、その他にどのような構成,機能が備わっている場合であっても、上記した実施例の場合と全く同様にして適用できることは云うまでもない。また、SEM部1が、電界放出型以外の電子源を含む電子発生装置,静電型以外の偏向系を含む電子走査装置,静電型以外のレンズ系を含む電子収束装置,半導体以外の検出器を含む検出装置とから構成されている場合であっても、上記実施例の場合と全く同様にして実施できることも云うまでもない。また、SEM部1を複数組用いる場合についても、上記実施例では4組の場合のみについて説明したが、これ以外の組数を用いることももちろん可能であることは云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第一の実施例になるウエハ検査装置の基本的構成を示す図。
【図2】本発明の第二の実施例になるウエハ検査装置の基本的構成を示す図。
【図3】上記した第二の実施例になる装置の機能および動作を説明する図。
【図4】上記した第二の実施例になる装置による検査および加工手順を説明する図。
【図5】本発明の第三の実施例になるウエハ検査装置の基本的構成を示す図。
【図6】本発明の第四の実施例になるウエハ検査装置の基本的構成を示す図。
【符号の説明】
【0039】
1…SEM部、2…電子発生装置、3…電子走査装置、 4…電子収束装置、5…検出装置、 6…電子線、7…ウエハ、 8…ステージ、9…ステージ駆動装置、10…ステージ制御装置、11…画像生成装置、12…画像解析装置、13…検査制御装置、101…イオンビーム部、102…イオンビーム発生装置、103…イオンビーム走査装置、104…イオンビーム収束装置、105…加工制御装置、106…イオンビーム、107…マニピュレータ、108…ガス供給装置、109…試料ホルダ、110…観察部位、111…マニピュレータ制御装置、112…システム制御装置、113…マニピュレータ移動装置、201…加工部、301…電気特性・探針力評価装置、302…探針、303…位置制御装置、304…加熱装置、305…加熱制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線をウエハに照射して発生する二次電子像を形成できる走査型電子顕微鏡と、
前記ウエハにイオンビームを照射して加工を行なうイオンビーム部と、
前記イオンビームの照射により前記ウエハを加工して試料を作製し、該試料を前記ウエハから摘出するマニピュレータとを有することを特徴とする試料作製装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−198617(P2008−198617A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73564(P2008−73564)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【分割の表示】特願2006−277460(P2006−277460)の分割
【原出願日】平成10年5月11日(1998.5.11)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】