説明

エアフィルタ用シート及びその製造方法並びにエアフィルタ

【課題】 アウトガス中に潤滑剤が混入しないエアフィルタならびに前記エアフィルタに適した、成形性に優れ、且つ潤滑剤を含有しないシートおよびその製造法を提供すること。
【解決手段】 平均粒径が0.1〜30μmの機能剤、及び数平均分子量が300万〜5000万のポリテトラフルオロエチレン樹脂の針状繊維を含有し、該ポリテトラフルオロエチレン樹脂の針状繊維に対する該機能剤の重量比が1〜99であることを特徴とするエアフィルタ用シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルーム等の空気中のイオン性ガス状汚染物質、TOC、水分、オゾン、その他異臭成分等を除去するために用いられるエアフィルタ並びに該エアフィルタを製造するためのエアフィルタ用シート及びその製造方法に関し、より具体的には、通気空洞を有する機能剤担持エアフィルタ並びに該エアフィルタを製造するためのエアフィルタ用シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造、液晶製造等の先端産業では、製品の歩留まりや品質、信頼性を確保するため、クリーンルーム内における空気や製品表面の汚染制御が重要となっている。特に半導体産業分野では製品の高集積度化が進むにつれ、HEPA、ULPA等を用いた粒子状汚染物質の制御に加え、上記イオン性ガス状汚染物質、TOC、水分、オゾン、その他異臭成分等の制御が不可欠となっている。
【0003】
該イオン性ガス状汚染物質には、塩基性ガス及び酸性ガスがある。このうち、例えば塩基性ガスであるアンモニアは、半導体製造時の露光工程において、露光時の解像性の悪化や、ウェハー表面の曇りの原因になるとされている。また、酸性ガスであるSOは、半導体製造時の熱酸化膜形成工程において、基板内に積層欠陥を引き起こしてデバイス特性や信頼性を悪化させる原因となる。
【0004】
このように、該イオン性ガス状汚染物質は半導体製造等において種々の困難を引き起こすため、半導体製造等で使用されるクリーンルーム内ではイオン性ガス状汚染物質の濃度が数μg/m以下であることが要求されている。
【0005】
そのため、従来より、該イオン性ガス状物質を除去するために、通気空洞を有する繊維質担体に、機能剤としてイオン交換体が担持されたエアフィルタが用いられていた。従来より用いられているエアフィルタについて、図5を参照して説明する。図5は、従来より用いられている通気空洞を有するエアフィルタの模式図である。図5中、エアフィルタ20は、コルゲート状繊維質21及び平坦状繊維質22を交互に積層させることにより形成される繊維質担体に、イオン交換体を担持させて得られるイオン交換樹脂担持繊維質25を、枠体26に嵌め込み作製される。該コルゲート状繊維質21及び該平坦状繊維質22の間には、通気空洞23が形成されている。そして、該エアフィルタ20に、通気方向24の向きに被処理空気27を通気することにより、被処理空気27中のイオン性ガス状汚染物質が吸着除去される。このとき、通気方向24に対して、通気空洞23が形成されている方向は平行である。
【0006】
また、水分は、ウェハーの不良原因となる酸化膜の生成に関与するので、除去する必要があり、水分を除去するために、除湿剤が担持されたエアフィルタが用いられていた。また、オゾンは、クリーンルーム中の高電圧で使用される装置から発生し、ウェハーの酸化膜の生成の原因となるので、オゾンを除去するために、オゾン分解触媒が担持されたエアフィルタが用いられていた。
【0007】
ところが、上記エアフィルタにおいて、該イオン交換体等の機能剤は、無機又は有機バインダーにより担持されており、機能剤を繊維質担体に担持させるためには、バインダーと機能剤とを混合して調製したスラリーを、繊維質担体に含浸させ又は塗付することが必要なので、余分なバインダーが、担持されている機能剤の表面を覆ってしまい、エアフィルタの吸着能力が低くなるという問題があった。
【0008】
また、上記エアフィルタには、初期の除去性能に加え、該除去性能が長時間持続すること、すなわち優れた持続性を有することも要求されているので、多量の機能剤を該エアフィルタに担持する必要がある。
【0009】
そのためには、エアフィルタの単位体積当りの通気空洞の数を増やし、機能剤が担持される繊維質担体の表面積を増やす必要がある。通気空洞の数を増やすためには、該通気空洞の開口の断面積を小さくすることが必要であるが、断面積が小さ過ぎると、担持を行う際に上記スラリーが通気空洞の内部に入っていかないか、又は担持された機能剤が通気空洞の目を塞いでしまうという問題があった。
【0010】
従って、バインダーを用いずに、機能剤をエアフィルタに担持することができれば、上記問題を解決することができる。
【0011】
バインダーを用いずに、担持物を担体に担持する方法として、従来より、針状繊維化されたポリテトラフルオロエチレン樹脂(以下、フィブリル化ポリテトラフルオロエチレン樹脂とも記載)を用い、フィブリル化ポリテトラフルオロエチレン樹脂に担持物を捕捉させることにより担持物を担持する方法が行われていた。例えば、特開2003−220333号公報には、アンモニアガスを捕捉可能な固体捕捉材と、フィブリル化したポリテトラフルオロエチレン樹脂とを含み、前記ポリテトラフルオロエチレン樹脂によって固体捕捉材が保持されており、アンモニアガスは固体捕捉材に到達可能、かつ液体は固体捕捉材に到達不可能であることを特徴とする、アンモニアガス捕捉複合材が開示されている。
【0012】
また、特開2003−300066号公報には、数平均分子量が20万〜200万のフッ素系樹脂によって、アンモニアガス捕捉可能粉体が被覆されていることを特徴とするアンモニアガス捕捉複合粉体が開示されている。
【0013】
【特許文献1】特開2003−220333号公報(請求項1〜3)
【特許文献2】特開2003−300066号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特開2003−220333号公報に記載された複合捕捉材をはじめ、フィブリル化されたポリテトラフルオロエチレン樹脂により機能剤が捕捉されている従来のエアフィルタの製造方法において、フィブリル化されたポリテトラフルオロエチレン樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂にせん断応力をかけることにより、製造されていた。ところが、該製造方法においては、ポリテトラフルオロエチレン樹脂にせん断応力をかける際に、ソルベントナフサ等の潤滑剤を混合しないと、針状繊維化したポリテトラフルオロエチレン樹脂が互いに激しく絡み合い、塊状になってしまうため、潤滑剤を混合することが必須であった。従って、従来のエアフィルタは、潤滑剤を含有していた。
【0015】
ところが、エアフィルタが潤滑剤を含有すると、エアフィルタを通過した空気中(以下、アウトガスとも記載する。)に、潤滑剤が混入し、アウトガスを汚染するという問題があった。特に、半導体製造用、液晶製造用のクリーンルーム等では、空気中の微量の潤滑剤であっても、製品の性能に影響を与えることがあるため、潤滑剤を含有するエアフィルタを使用することはできなかった。
【0016】
特開2003−300066号公報には、分子量が20万〜200万のポリテトラフルオロエチレン樹脂を用いることより、潤滑剤を混合することなく、ポリテトラフルオロエチレン樹脂をフィブリル化できることが記載されているが、ポリテトラフルオロエチレン樹脂の分子量が低過ぎるので、得られるシートが柔らかくなり過ぎ、エアフィルタ用に成形(例えば、コルゲート状)しても形状を保つことができないという問題があった。すなわち、該シートは、非常に形状保持性が悪かった。
【0017】
従って、本発明の課題は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂の針状繊維により機能剤が担持されており、成形性に優れ、且つアウトガス中に潤滑剤が混入しないエアフィルタ用シート及びその製造方法を提供することにある。また、本発明の課題は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂の針状繊維により機能剤が担持されたエアフィルタ用シートから形成されるエアフィルタであって、アウトガス中に潤滑剤が混入しないエアフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、特定粒径の機能剤を、粒状のポリテトラフルオロエチレン樹脂に混合させると、混合物中で該機能剤が潤滑剤として働くので、潤滑剤を使用することなく、良好に該ポリテトラフルオロエチレン樹脂がフィブリル化されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0019】
すなわち、本発明(1)は、平均粒径が0.1〜30μmの機能剤、及び数平均分子量が300万〜5000万のポリテトラフルオロエチレン樹脂の針状繊維を含有し、該ポリテトラフルオロエチレン樹脂の針状繊維に対する該機能剤の重量比が1〜99であるエアフィルタ用シートを提供するものである。
【0020】
また、本発明(2)は、平均粒径が0.1〜30μmの機能剤、及び数平均分子量が300万〜5000万の粒状のポリテトラフルオロエチレン樹脂を含有し、該粒状のポリテトラフルオロエチレン樹脂に対する該機能剤の重量比が1〜99である混合物(A)に、せん断応力をかけ、該機能剤及び該ポリテトラフルオロエチレン樹脂の針状繊維の混合物(B)を得るフィブリル化工程を行い、次いで、該混合物(B)を、せん断応力をかけながら圧延し、エアフィルタ用シートを得る圧延工程を行うエアフィルタ用シートの製造方法を提供するものである。
【0021】
また、本発明(3)は、通気空洞を有するエアフィルタであって、前記発明(1)に記載のエアフィルタ用シートを成形して得られるエアフィルタを提供するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明のエアフィルタは、機能剤がバインダーを用いることなく担持されており、且つ該機能剤の担持量が多いので、吸着能力が高く、また、潤滑剤を用いることなく製造されるので、アウトガス中に該潤滑剤が混入しない。本発明のエアフィルタ用シートは、成形性に優れており、また、本発明のエアフィルタ用シートの製造方法によれば、潤滑剤を用いることなく、本発明のエアフィルタ用シートを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明のエアフィルタ用シートは、粒状の機能剤及びポリテトラフルオロエチレン樹脂の針状繊維を含有する。
【0024】
該エアフィルタ用シートの実施の形態例について、図1を参照して説明する。図1は、粒状のイオン交換体及びポリテトラフルオロエチレン樹脂(以下、PTFE樹脂とも記載)の針状繊維を含有するエアフィルタ用シートの表面SEM写真を示す。図1中、1が粒状のイオン交換樹脂、2がPTFE樹脂の針状繊維である。図1に示すように、PTFE樹脂の針状繊維2は極めて細い針状の形状を有しており、そして、該PTFE樹脂の針状繊維2が形成する三次元網目中に粒状のイオン交換体1が、保持されていることがわかる。このことにより、機能剤は、無機又は有機バインダーが用いられることなく、エアフィルタ用シートに担持される。そして、該PTFE樹脂の針状繊維が極めて細いので、該機能剤は、該針状繊維によって表面が殆ど覆われずに、大部分が露出した状態で該PTFE樹脂の針状繊維の三次元網目中に保持されている。
【0025】
該機能剤としては、特に制限されず、イオン性ガス状汚染物質の吸着、有機溶剤の吸着、除湿、脱臭、オゾン分解等に用いられるエアフィルタ用の機能剤であればよく、例えば、イオン交換樹脂、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、金属酸化物触媒等が挙げられる。
【0026】
該機能剤に係るイオン交換樹脂は、主に、イオン性ガス状汚染物質の除去に用いられる機能剤である。該イオン交換樹脂は、カチオン交換樹脂又はアニオン交換樹脂の少なくとも一方であっても、又はカチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂の両方であってもよい。このうち、該カチオン交換樹脂に用いられるカチオン交換樹脂の種類としては、例えば、強酸性カチオン交換樹脂等が挙げられる。また、該アニオン交換樹脂に用いられるアニオン交換樹脂の種類としては、例えば、強塩基性アニオン交換樹脂等が挙げられる。
【0027】
また、該イオン交換樹脂は、イオン交換容量が、通常1〜10m当量/g、好ましくは3〜6m当量/gである。イオン交換容量が1m当量/g未満であると、イオン性ガス状汚染物質との反応量が小さくなり、除去性能が低くなり易い。また、イオン交換容量が10m当量/gを超えると、イオン交換樹脂を構成するイオン交換樹脂の化学的安定性が劣り、イオン交換樹脂自体からイオン交換基が脱離し易くなる。
【0028】
また、被処理空気が、塩基性ガス(アンモニア、アミン類等)及び酸性ガス(SO、NO等)の両方を含む場合、該イオン交換樹脂が、カチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂の両方であると、塩基性ガス及び酸性ガスの両方を除去することができる点で好ましい。
【0029】
該イオン交換樹脂が、カチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂を含む場合、該カチオン交換樹脂と該アニオン交換樹脂の重量比は、99:1〜1:99である。該重量比が、99:1〜1:99の範囲外であると該カチオン交換樹脂又は該アニオン交換樹脂のいずれかの樹脂のイオン性ガス状汚染物質との反応量が低くなり易い。
【0030】
該機能剤に係る活性炭は、主にTOCの除去、オゾンの分解等に用いられる機能剤である。該活性炭は、原料の種類により、木材系、石炭系、ヤシ殻系等があるが、特に制限されない。また、炭酸カリウム等の無機塩を添加した、一般に添着炭と呼ばれる活性炭であってもよい。これらのうち、ヤシ殻系の活性炭が、性能及び価格のバランスが良い点で好ましい。また、TOC除去用の場合は、比表面積が大きく、且つ細孔容積が大きいものが好ましく、オゾン分解用の場合は、添着炭が好ましい。
【0031】
該機能剤に係るゼオライトは、親水性のものと疎水性のものがある。親水性のゼオライトは、主にイオン性ガス状汚染物質の除去、脱臭等に用いられる吸着剤であり、疎水性のゼオライトは、主にTOCの除去、脱臭等に用いられる吸着剤である。合成により得られる該ゼオライトは、通常、酸点の対イオンがナトリウムであるナトリウム型ゼオライトであるが、該ナトリウムイオンの一部又は全部が他の金属イオンでイオン交換されたもの、脱ナトリウムしたもの、脱アルミニウムしたもの等であってもよい。また、結晶構造としては、A型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、ベータ型ゼオライト、モルデナイト、フェリエライト、ZSM−5等が挙げられる。これらのうち、A型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト及びZSM−5が、安価な点で好ましい。
【0032】
該機能剤に係るシリカゲルは、主に除湿に用いられる機能剤である。該シリカゲルとしては、特に制限されず、例えば、A型シリカゲル、B型シリカゲル等が挙げられる。
【0033】
該機能剤に係る金属酸化物触媒は、主にオゾンの分解、脱臭等に用いられる機能剤である。該金属酸化物触媒としては、特に制限されず、例えば、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化銅、酸化マンガン−酸化銅の混合触媒、酸化マンガン−酸化コバルトの混合触媒、酸化チタン等が挙げられる。該金属酸化物触媒の表面で、トリエチルアミン、メチルメルカプタン等の悪臭物質が分解されることにより、脱臭され、また、オゾンは酸化されて酸素分子になる。
【0034】
該機能剤の平均粒径は、0.1〜30μm、好ましくは1〜20μm、である。該機能剤の平均粒径が、0.1μm未満だと該機能剤がエアフィルタ用シートから脱落し易くなり、また、30μmを超えると、該エアフィルタ用シートの製造の際に、該機能剤による潤滑効果が低くなる。そのため、平均粒径が30μmを超えている機能剤が、PTFEの針状繊維に補足されているエアフィルタ用シートを製造することは困難である。
【0035】
該ポリテトラフルオロエチレン樹脂の針状繊維は、粒状のポリテトラフルオロエチレン樹脂にせん断応力をかけることにより得られる。従来より、ポリテトラフルオロエチレン樹脂にせん断応力をかけ、ポリテトラフルオロエチレン樹脂を針状繊維化させることは行われており、該針状繊維化は、フィブリル化とも呼ばれている。
【0036】
該ポリテトラフルオロエチレン樹脂の数平均分子量は、300万〜5000万、好ましくは500万〜1500万である。該ポリテトラフルオロエチレン樹脂の数平均分子量が、300万未満だとエアフィルタ用シートが柔らか過ぎるため、成形後のエアフィルタの形状保持性が悪くなり、例えば、コルゲート状ハニカム構造を有するエアフィルタを製造することが困難となる、また、該ポリテトラフルオロエチレン樹脂の数平均分子量が、5000万を超えても良好に成形することができるが、市販されているポリテトラフルオロエチレン樹脂の数平均分子量が通常5000万以下であるため、数平均分子量が5000万を超えるポリテトラフルオロエチレン樹脂の入手が困難である。
【0037】
該ポリテトラフルオロエチレン樹脂の針状繊維に対する該機能剤の重量比(機能剤/ポリテトラフルオロエチレン樹脂の針状繊維)は、1〜99、好ましくは4〜32、特に好ましくは9〜19である。該ポリテトラフルオロエチレン樹脂の針状繊維に対する機能剤の重量比が、1未満だとエアフィルタの吸着性能等の性能が低くなり易く、また、99を超えるとエアフィルタ用シートの強度が低くなるか、又は該機能剤が該エアフィルタ用シートから脱落し易くなる。
【0038】
該エアフィルタ用シートの厚みは、特に制限されないが、好ましくは0.05〜1mm、特に好ましくは0.1〜0.5mmである。例えば、コルゲート状に成形されたエアフィルタ用シート及び平坦状のエアフィルタ用シートを交互に積層して形成されるエアフィルタの場合、該エアフィルタ用シートの厚みが小さい程、一定の積層高さにおいて積層される該エアフィルタ用シートの数が多くなるので、エアフィルタの単位体積当たりに形成される通気空洞の数が多くなり、エアフィルタの単位体積当たりの表面積が多くなる。従って、該エアフィルタ用シートの厚みが小さいことが、エアフィルタの吸着能力が高くなる点で好ましい。ただし、該厚みが、0.05mm未満だと、エアフィルタ用シートの強度が低くなり過ぎる。また、該厚みが、1mmを超えると、エアフィルタの単位体積当りに形成される通気空洞の数が少なくなる。
【0039】
また、該エアフィルタ用シートの単位面積当たりの該機能剤の担持量は、特に制限されないが、好ましくは100〜600g/m、特に好ましくは200〜500g/mである。
【0040】
本発明のエアフィルタ用シートは、潤滑剤が用いられることなく製造されているので、潤滑剤を含有しない。従って、本発明のエアフィルタ用シートを成形して得られるエアフィルタを用いて被処理空気を処理しても、該エアフィルタを通過した空気中に、潤滑剤が混合しない。一方、従来のエアフィルタ用シートの製造では、ポリテトラフルオロエチレン樹脂のフィブリル化に、ソルベントナフサ、アルコール、アイソパー、シンナー等の液体の有機化合物が潤滑剤として使用されていたので、従来のエアフィルタ用シートは、該潤滑油を含有する。そのため、該従来のエアフィルタ用シートを成形して得られるエアフィルタを用いて被処理空気を処理すると、該エアフィルタを通過した空気中に、該潤滑剤が混合し、特に半導体・液晶製造工程においては、大きな問題となる場合があった。
【0041】
また、本発明のエアフィルタ用シートは、数平均分子量が300万〜5000万である高分子量のポリテトラフルオロエチレン樹脂の針状繊維により構成されているので、成形後の形状保持性に優れている。
【0042】
本発明のエアフィルタの製造方法は、フィブリル化工程を行い、次いで、圧延工程を行う製造方法である。
【0043】
該フィブリル化工程は、粒状の機能剤及び粒状のポリテトラフルオロエチレン樹脂を含有する混合物(A)に、せん断応力をかけ、該機能剤及び該ポリテトラフルオロエチレン樹脂の針状繊維の混合物(B)を得る工程である。
【0044】
該フィブリル化工程に係る機能剤としては、特に制限されず、エアフィルタの機能剤として通常使用されているものを用いることができ、例えば、イオン性ガス状汚染物質の吸着剤、有機溶剤の吸着剤、除湿剤、脱臭剤等が挙げられる。該フィブリル化工程に係る機能剤については、前記本発明のエアフィルタ用シートに係る機能剤と同様な点はその説明を省略し、異なる点を説明する。
【0045】
該機能剤の平均粒径は、0.1〜30μm、好ましくは1〜25μm、特に好ましくは10〜20μmである。該機能剤の平均粒径が、上記範囲にあることにより、該粒状のポリテトラフルオロエチレン樹脂を、せん断応力をかけてフィブリル化する際に、該機能剤が潤滑剤として機能するので、数平均分子量が300万〜5000万の高分子量のポリテトラフルオロエチレン樹脂であっても、潤滑剤を混合せずに、良好にフィブリル化することができる。一方、該機能剤の平均粒径が、0.1μm未満だと、該機能剤が該圧延工程の際に又は該圧延工程により得られるエアフィルタ用シートから脱落し易くなり、また、30μmを超えると、該機能剤が潤滑剤として機能し難くなるので、せん断応力をかけると、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、又はポリテトラフルオロエチレン樹脂と機能剤の混合物が塊状になり、該機能剤による潤滑効果が低くなる。
【0046】
該フィブリル化工程に係る粒状のポリテトラフルオロエチレン樹脂の種類及び数平均分子量は、前記本発明のエアフィルタ用シートに係るポリテトラフルオロエチレン樹脂の記載と同様であるので、その説明を省略する。
【0047】
該粒状のポリテトラフルオロエチレン樹脂の平均粒径は、300〜500μmであり、一般にファインパウダーと呼ばれるものが好ましい。
【0048】
該フィブリル化工程に係る混合物(A)は、該機能剤及び該粒状のポリテトラフルオロエチレン樹脂を含有する。該混合物(A)中、該粒状のポリテトラフルオロエチレン樹脂に対する該機能剤の重量比(機能剤/粒状のポリテトラフルオロエチレン樹脂)は、1〜99、好ましくは4〜32、特に好ましくは9〜19である。該粒状のポリテトラフルオロエチレン樹脂に対する該機能剤の重量比が、1未満だとエアフィルタ用シート又はエアフィルタの吸着性能等の性能が低くなり、また、99を超えるとエアフィルタ用シートの強度が低くなる。また、該混合物(A)は、必要に応じ、補強剤等を含有することができる。
【0049】
そして、該混合物(A)に、せん断応力をかけ、該粒状のポリテトラフルオロエチレン樹脂をフィブリル化させる。本発明に係るフィブリル化工程では、該混合物(A)にせん断応力をかける際に、該混合物(A)に、潤滑剤を含有させなくても、該粒状のポリテトラフルオロエチレン樹脂は、良好にフィブリル化される。該潤滑剤については、前記本発明のエアフィルタ用シートに係る潤滑剤と同様なので、その説明を省略する。
【0050】
該混合物(A)にせん断応力をかける方法としては、特に制限されず、例えば、ヘンシェルミキサー中で該混合物(A)を攪拌する方法、乳鉢等ですり潰す方法等が挙げられる。
【0051】
該混合物(A)にせん断応力をかける際の温度は、特に制限されないが、好ましくは50〜150℃、特に好ましくは80〜120℃であり、該混合物(A)にせん断応力かける時間は、該ポリテトラフルオロエチレン樹脂のフィブリル化が起こる時間であれば、特に制限されないが、好ましくは1〜60分、特に好ましくは3〜30分である。
【0052】
該フィブリル化工程の具体的な方法としては、例えば、先ず、該機能剤及び該粒状のポリテトラフルオロエチレン樹脂等を、混合用の容器に加え、該容器を振騰等させること、又は該容器中の混合物をせん断応力がかからない攪拌器を用いて攪拌することにより、混合物(A)を調製し、次いで、該混合物(A)をヘンシェルミキサー等に加え、せん断応力をかける方法が挙げられる。
【0053】
該フィブリル化工程を行うことにより、該機能剤が該ポリテトラフルオロエチレン樹脂の針状繊維に分散された混合物(以下、混合物(B)とも記載する。)を得ることができる。
【0054】
該フィブリル化工程において、該機能剤は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂がフィブリル化する際の潤滑剤としての機能するので、数平均分子量が300万〜5000万の高分子量のポリテトラフルオロエチレン樹脂を用いても、潤滑剤を混合せずに、該ポリテトラフルオロエチレン樹脂を良好にフィブリル化することができる。
【0055】
次いで、該混合物(B)を、せん断応力かけながら圧延する圧延工程を行う。該圧延工程を行うことにより、該混合物(B)がシート化されると共に、該ポリテトラフルオロエチレン樹脂の針状繊維が、更に細くなる。このことにより、該ポリテトラフルオロエチレン樹脂の針状繊維により覆われる該機能剤の面積が小さくなるので、エアフィルタの吸着性能等の性能が高くなる。
【0056】
該混合物(B)を圧延する方法としては、特に制限されず、通常、樹脂シートの製造で用いられる方法、例えば、ニーダーを用いる方法、カレンダーロールを用いる方法、押出加工機を用いる方法等により行うことができる。該混合物(B)を圧延する際の温度は、特に制限されず、通常50〜150℃、好ましくは80〜120℃である。
【0057】
また、該圧延工程では、該混合物(B)の圧延を1回行ない、所望の厚みを有するエアフィルタ用シートを得ることも、該圧延を複数回行い、該エアフィルタ用シートを得ることもできる。すなわち、圧延によって得られるシートを、再び圧延してもよい。これらのうち、該混合物(B)の圧延を、複数回行うことが、エアフィルタ用シートの強度が高くなる点で好ましく、3〜10回行うことが特に好ましい。
【0058】
なお、該混合物(B)は、例えば、押出成形機を用いてペレット状に成形されたペレットのように、成形されたものであってもよい。すなわち、該フィブリル化工程を行い得られる該混合物(B)を、押出成形機を用いてペレット状に成形し、該ペレット等の成形体を、該圧延工程に用いることができる。
【0059】
該圧延工程を行うことにより得られる該エアフィルタ用シートは、数平均分子量が300万〜5000万の高分子量のポリテトラフルオロエチレン樹脂の針状繊維により構成されているので、形状保持性に優れている。従って、該エアフィルタ用シートは、例えば、コルゲート状ハニカム構造を有するエアフィルタの製造に、好適に用いられる。また、本発明のエアフィルタ用シートの製造方法は、前記本発明のエアフィルタ用シートを製造するのに好適に用いられる。
【0060】
本発明のエアフィルタは、通気空洞を有するエアフィルタであって、前記本発明のエアフィルタ用シートを成形して得られる。例えば、平坦状の本発明のエアフィルタ用シート及び波形に成形されたコルゲート状の本発明のエアフィルタ用シートを交互に積層させること、又は平坦状の本発明のエアフィルタ用シート及び波折形状に成形されたプリーツ状の本発明のエアフィルタ用シートを交互に積層させることにより得られる。なお、平坦状のエアフィルタ用シート及び波形に成形されたコルゲート状エアフィルタ用シートを交互に積層させて得られる構造は、一般に、コルゲート状ハニカム構造と呼ばれている。
【0061】
該エアフィルタについて、図2及び図3を参照して説明する。図2は、本発明の実施の形態例のエアフィルタの模式的な斜視図である。また、図3は、通気方向に直交する面で切った時の、該エアフィルタ10の模式的な断面図である。該エアフィルタ10は、平坦状エアフィルタ用シート11及びコルゲート状エアフィルタ用シート12が交互に積層されたコルゲート状ハニカム構造を有する。該コルゲート状エアフィルタ用シート12と該コルゲート状エアフィルタ用シートの上下の該平坦状エアフィルタ用シート11、11の間には、該コルゲート状エアフィルタ用シート12の上下の山部15、15が連続する方向に延びた略半円柱状の通気空洞13、13が形成される。そして、被処理空気が、開口部14から通気され、通気空洞13を通過する。
【0062】
該平坦状エアフィルタ用シート12は、平坦状のエアフィルタ用シート11を、コルゲート加工して波形に成形したものである。該コルゲート加工とは、該平坦状エアフィルタ用シート11等の平坦状物を上下一対の波形段ロールの間に通して波形状に成形する加工方法をいう。
【0063】
そして、平坦状エアフィルタ用シート11及びコルゲート状エアフィルタ用シート12が、該コルゲート状エアフィルタ用シート12を中芯として交互に積層され、該エアフィルタ10が形成される。該平坦状エアフィルタ用シート11及び該コルゲート状エアフィルタ用シート12は、かるく押し付ける程度の力を加えることにより、該コルゲート状エアフィルタ用シート12(中芯)の上下の山部15、15で接着される。また、バインダーを用いて、両者を接着することもでき、該バインダーとしては、例えば、コロイダルシリカ等の無機バインダー、アクリル、酢酸ビニル等の有機バインダーが挙げられる。また、両者を押し付けることなく単に積層し、該積層したものを枠体等に収めて固定しただけのものであってもよい。
【0064】
また、通気方向に直交する方向の該エアフィルタ10の断面中、該開口16の数は、1〜160個/cm、好ましくは30〜150個/cm、特に好ましくは50〜140個/cmである。該開口16の数が多い程、該エアフィルタ10の単位体積当たりの通気空洞13の数が多くなり、該エアフィルタ10の単位体積当たりの表面積が多くなるので、該エアフィルタ10の吸着能力等の性能が高くなる。ただし、該開口16の数が上記範囲を超えると、該開口16の面積が小さくなり過ぎるため、被処理空気の圧力損失が大きくなり過ぎる。
【0065】
また、該エアフィルタ10の山高さ(図3中、符号h)は、特に制限されないが、好ましくは0.5〜5mm、特に好ましくは0.7〜4mmである。また、該エアフィルタ10のピッチ(図3中、符号p)は、特に制限されないが、好ましくは1.5〜10mm、特に好ましくは1.8〜5mmである。
【0066】
該エアフィルタの単位体積当りの該機能剤の担持量は、100〜700kg/m、好ましくは300〜600kg/mである。
【0067】
該エアフィルタは、単位体積当りの該機能剤の担持量が多く、且つ該機能剤がバインダーを用いて担持されていないので、吸着性能等の性能が非常に高い。また、該エアフィルタは、フィルタを構成するポリテトラフルオロエチレン樹脂の分子量が大きいので、形状保持性に優れる。
【0068】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例1】
【0069】
(エアフィルタ用シートの作製)
強酸性陽イオン交換樹脂(ダイヤイオン、三菱化学社製、イオン交換容量5m当量/g、平均粒径0.3mm)を粉砕し、分級して、平均粒径が20μmのイオン交換樹脂(A)を得た。このとき、該イオン交換樹脂(A)の粒度分布は、D50が20.5μmであった。該イオン交換樹脂(A)を、110℃で乾燥した後、窒素ガス雰囲気下で冷却した。次に、冷却した該イオン交換樹脂(A)95重量部、及び数平均分子量1200万のポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)(ファインパウダー、三井デュポンフロロケミカル社製)5重量部を、容器に入れ、該容器を5分間振り混ぜ、混合物(A1)を得た。該混合物(A1)を、110℃に加熱した後、ヘンシェルミキサーを用い、3000回転/分で5分間、せん断応力をかけ、イオン交換樹脂(A)とポリテトラフルオロエチレン樹脂の針状繊維の混合物(B1)を得た。
【0070】
次に、得られた混合物(B1)を、押出成形機で、直径が10mm、厚みが50mm程度のペレット状に成形し、該ペレットを、カレンダーロールを用いて、110℃で3回圧延を行い、0.25mmの平坦状のエアフィルタ用シート(A)を得た。この時、1回目の圧延では、直径10mmのペレットを5mmのシートにし、2回目の圧延では、5mmから1mmのシートにし、3回目の圧延では、1mmから0.25mmのシートにした。該平坦状のエアフィルタ用シート(A)のイオン交換樹脂の担持量は、305g/mであり、引張強度は、0.1kgf/mmであった。
【0071】
(エアフィルタの作製)
次に、上下一対の波形コルゲータの間に、該平坦状のエアフィルタ用シート(A)を通して、コルゲート状エアフィルタ用シート(A)を作製した。該コルゲート状エアフィルタ用シート(A)の山部に接着剤としてアクリル系バインダーを塗布した後、上記平坦状のエアフィルタ用シート(A)を重ね合わせて積層した。該コルゲート状エアフィルタ用シート(A)と該平坦状のエアフィルタ用のシート(A)の積層を、通気方向が同一方向になるようにして繰り返して行い、縦120mm×横120mm×厚さ40mmとなるようにカットして、図2及び図3に示すような中芯のピッチ(図3中、符号p)が2.5mm、山高さ(図3中、符号h)が1.1mmのコルゲート状ハニカム構造を有するエアフィルタ(A)を得た。該エアフィルタのイオン交換樹脂の担持量は414kg/m、単位体積当りのイオン交換容量は2419当量/m、断面16の数は73個/cmであった。
【0072】
(性能評価)
上記のようにして得たエアフィルタ(A)を用い、下記条件でアンモニアの除去率の経時的変化及びエアフィルタの寿命を測定した。なお、実際のクリーンルームで問題となるアンモニア濃度は数μg/mであるが、加速試験とするために、アンモニア濃度を340μg/mにした。その結果を図4に示す。図4中、アンモニアの除去率が90%まで低下した時点における時間を、エアフィルタの寿命とし、該エアフィルタ(A)の寿命を求めたところ、2300時間であった。また、この条件で該エアフィルタ(A)の圧力損失を測定したところ、30Paであった。
【0073】
<試験条件>
・通気ガスの組成 :アンモニアを340μg/m含む空気
・通気ガスの温度及び湿度:23℃、50%RH
・除去対象ガス :アンモニア
・通気風速 :0.5m/s
【0074】
(エアフィルタのアウトガス中の有機化合物の混入量の測定)
上記のようにして得られたエアフィルタ(A)を用いて、下記の測定条件で、アウトガス中の有機化合物の混入量の測定を行った。その結果、総有機化合物検出量は、1.4μg/mであった。
<試験条件>
・通気ガス組成 :クリーンエアー
・通気ガスの温度及び湿度:23℃、50%RH
・通気風速 :0.5m/s
<アウトガスのサンプリング方法>
・捕集管:TENAX
・吸引流量:1.0L/min.
・吸引時間:通気開始24時間後から30分間吸引した。
・分析機器:GC−MS
【0075】
(比較例1)
(コルゲート状ハニカム構造を有する繊維質担体の作製)
平坦状の繊維質シート(B)(シリカアルミナ繊維、厚さ0.2mm)を、上下一対の波形コルゲータの間に通して、コルゲート状繊維質シート(B)を作製した。該コルゲート状繊維質シート(B)の山部に接着剤としてシリカゾルを塗布した後、該平坦状の繊維質シート(B)を重ね合わせて積層した。該コルゲート状繊維質シート(B)と該平坦状の繊維質シート(B)の積層を、通気方向が同一方向になるようにして繰り返して行い、縦120mm×横120mm×厚さ40mmとなるようにカットして、図2及び図3に示すような中芯のピッチ(図3中、符号p)が2.8mm、山高さ(図3中、符号h)が1.3mmのコルゲート状ハニカム構造を有する繊維質担体(B)を得た。
【0076】
(エアフィルタの作製)
実施例1で用いたイオン交換樹脂(A)に、バインダーとしてシリカゾル(スノーテックス、日産化学社製、固形分20重量%)及び水を加えて、該イオン交換樹脂(A)及び該シリカゾルの固形分の重量比が8:2、該イオン交換樹脂(A)及び該シリカゾルの固形分の合計含有量が、スラリー中、30重量%となるように、イオン樹脂粉末含有スラリーを調製した。次に、容器に入れた該スラリーに、上記コルゲート状ハニカム構造を有する繊維質担体(B)を、60秒間浸漬し、該スラリーから引き上げた後、80℃で60分間乾燥を行って、該繊維質担体にイオン交換樹脂(A)を担持し、エアフィルタ(B)を得た。該エアフィルタ(B)のイオン交換樹脂の担持量は100kg/m、単位体積当りのイオン交換容量は500当量/m、断面16の数は54個/cmであった。
【0077】
(性能評価)
上記のようにして得たエアフィルタ(B)を用い、実施例1と同様の条件でアンモニアの除去率の経時的変化及びエアフィルタの寿命を測定した。その結果を図4に示す。該エアフィルタ(B)の寿命を求めたところ、560時間であった。
【0078】
(比較例2)
(コルゲート状ハニカム構造を有する繊維質担体の作製)
中芯のピッチ2.8mmに代えてピッチ2.5mm、山高さ1.3mmに代えて山高さ1.1mmとする以外は、比較例1と同様の方法で行った。
(エアフィルタの作製)
スラリーに浸漬する繊維質担体として、上記で得た繊維質担体を用いる以外は、比較例1と同様の方法で行ったところ、得られたエアフィルタの通気空洞には、目詰まりを起こしている箇所が多数見られた。
【0079】
(比較例3)
(繊維質担体へのスラリーの塗工)
平坦状の繊維質シート(C)(シリカアルミナ繊維、厚さ0.2mm)に、ロールコーター装置を用いて、比較例1で用いたスラリーを塗付した後、80℃で60分間乾燥を行って、該平坦状の繊維質シート(C)にイオン交換樹脂(A)を担持した(第一回塗工)。更に、該スラリーを用いて、同様の方法で、第二回塗工を行い、イオン交換樹脂が担持された平坦状の繊維質シート(C)を得た。該イオン交換樹脂が担持された平坦状の繊維質シート(C)の、イオン交換樹脂の担持量は、131g/mであった。
【0080】
(エアフィルタの作製)
平坦状エアフィルタ用シート(A)に代えて、該イオン交換樹脂が担持された平坦状の繊維質シート(C)とし、接着剤としてアクリル系バインダーを塗付する代わりにシリカゾルを塗付する以外は、実施例1と同様の方法で行い、エアフィルタ(C)を得た。得られたエアフィルタ(C)のイオン交換樹脂の担持量は147kg/m、単位体積当りのイオン交換容量は750当量/m、断面16の数は54個/cmであった。
【0081】
(比較例4)
(繊維質担体へのスラリーの塗工)
比較例3と同様の方法で行い、イオン交換樹脂が担持された平坦状の繊維質シート(C)を得た。
(エアフィルタの作製)
平坦状エアフィルタ用シート(A)に代えて、該イオン交換樹脂が担持された平坦状の繊維質シート(C)とし、接着剤としてアクリル系バインダーを塗付する代わりにシリカゾルを塗付し、中芯のピッチ2.8mmに代えてピッチ2.2mm、山高さ1.3mmに代えて山高さ1.0mmとする以外は、実施例1と同様の方法で行い、エアフィルタ(D)を得た。得られたエアフィルタ(D)のイオン交換樹脂の担持量は163kg/m、単位体積当りのイオン交換容量は815当量/m、断面16の数は54個/cmであった。
【0082】
(比較例5)
(繊維質担体へのスラリーの塗工)
平坦状の繊維質シート(E)(シリカアルミナ繊維、厚さ0.35mm)に、ロールコーター装置を用いて、比較例1で用いたスラリーを塗付した後、80℃で60分間乾燥を行って、該平坦状の繊維質シート(E)にイオン交換樹脂(A)を担持した(第一回塗工)。更に、同様の方法で、該スラリーを用いて第二回塗工及び第三回塗工を行い、イオン交換樹脂が担持された平坦状の繊維質シート(E)を得た。該イオン交換樹脂が担持された平坦状の繊維質シート(E)のイオン交換樹脂の担持量は、195g/mであった。
【0083】
(エアフィルタの作製)
平坦状エアフィルタ用シート(A)に代えて、該イオン交換樹脂が担持された平坦状の繊維質シート(E)とし、接着剤としてアクリル系バインダーを塗付する代わりにシリカゾルを塗付する以外は、実施例1と同様の方法で行い、エアフィルタ(E)を得た。該エアフィルタ(E)のイオン交換樹脂の担持量は203kg/m、単位体積当りのイオン交換容量は1015当量/m、断面16の数は54個/cmであった。
【0084】
(比較例6)
(繊維質担体へのスラリーの塗工)
比較例5と同様の方法で行い、イオン交換樹脂が担持された平坦状の繊維質シート(E)を得た。
(エアフィルタの作製)
平坦状エアフィルタ用シート(A)に代えて、該イオン交換樹脂が担持された平坦状の繊維質シート(E)とし、接着剤としてアクリル系バインダーを塗付する代わりにシリカゾルを塗付し、中芯のピッチ2.8mmに代えてピッチ2.2mm、山高さ1.3mmに代えて山高さ1.0mmとする以外は、実施例1と同様の方法で行いエアフィルタ(F)を得た。該エアフィルタ(F)のイオン交換樹脂の担持量は207kg/m、単位体積当りのイオン交換容量は1035当量/m、断面16の数は54個/cmであった。
【実施例2】
【0085】
(エアフィルタ用シートの作製)
実施例1と同様の方法で行い、エアフィルター用シート(A)を得た。
(エアフィルタの作製)
中芯のピッチ2.5mmに代えてピッチ2.2mm、山高さ1.1mmに代えて山高さ1.0mmとする以外は、実施例1と同様の方法で行い、エアフィルタ(G)を得た。該エアフィルタ(G)のイオン交換樹脂の担持量は457kg/m、単位体積当りのイオン交換容量は2670当量/m、断面16の数は92個/cmであった。
(性能評価)
上記のようにして得られたエアフィルタ(G)を用いる以外は、実施例1と同様の方法で行ったところ、エアフィルタ(G)の寿命は3000時間であった。この条件で該エアフィルタの圧力損失を測定したところ、45Paであった。
【0086】
(比較例7)
(エアフィルタ用シートの作製)
数平均分子量1200万のポリテトラフルオロエチレン樹脂5重量部に代え、数平均分子量100万のポリテトラフルオロエチレン樹脂5重量部とする以外は、実施例1と同様の方法で行い、エアフィルタ用シート(H)を得た。
(エアフィルタの作製)
上記で得られたエアフィルタ用シート(H)を用いて、波形コルゲーターにより、波形に成形することを試みたが、成形後、直に基の平坦状に復元してしまい、コルゲート状のエアフィルタ用シートを得ることはできなかった。そのため、エアフィルタを作製することはできなかった。
【0087】
(比較例8)
(エアフィルタ用シートの作製)
平均粒径が20μmのイオン交換樹脂(A)95重量部に代え、平均粒径が100μmの強酸性陽イオン交換樹脂(B)(ダイヤイオン、三菱化学社製)95重量部とする以外は、実施例1と同様の方法で行ったが、イオン交換樹脂及びPTFEの混合物が塊状になったため、エアフィルタ用シートを作製することはできなかった。
【0088】
(比較例9)
(エアフィルタ用シートの作製)
実施例1で用いた強酸性陽イオン交換樹脂を粉砕し、分級して、平均粒径が100μmのイオン交換樹脂(C)を得た。該イオン交換樹脂(C)を、110℃で乾燥した後、窒素ガス雰囲気下で冷却した。次に、冷却した該イオン交換樹脂(C)95重量部、及び実施例1で用いたポリテトラフルオロエチレン樹脂5重量部を、容器に入れ、該容器を5分間振り混ぜ、混合物(C1)を得た。該混合物(C1)を、110℃に加熱した後、ヘンシェルミキサーに入れ、更に、炭化水素系の押出助剤(アイソパーE、エクソンモービル社製)20重量部を入れ、3000回転/分で5分間、せん断応力をかけ、イオン交換樹脂(C)とポリテトラフルオロエチレン樹脂の針状繊維の混合物(D1)を得た。以下は、混合物(B1)に代えて、該混合物(D1)とする以外は、実施例1と同様の方法で行い、0.25mmの平坦状のエアフィルタ用シート(J)を得た。
【0089】
(エアフィルタの作製)
エアフィルタ用シート(A)に代えて、エアフィルタ用シート(J)とする以外は、実施例1と同様の方法でエアフィルタ(J)を作製した。
【0090】
(エアフィルタのアウトガス中の有機化合物の混入量の測定)
エアフィルタ(A)に代えて、エアフィルタ(J)とする以外は、実施例1と同様の方法で行ったところ、総有機化合物検出量は、630μg/mであった。
【0091】
エアフィルタのアウトガス中の有機化合物の混入量の測定の結果、実施例1のエアフィルタ(A)の総有機化合物検出量が、1.4μg/mと極めて低かったことから、該エアフィルタ(A)を、クリーンルームで用いても、アウトガス汚染の問題が起こることはないことがわかった。一方、比較例9のエアフィルタ(J)の総有機化合物検出量が、630μg/mであったことから、該エアフィルタ(J)をクリーンルームで使用できないことがわかった。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【0094】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明に係るエアフィルタ用シートの表面のSEM写真である。
【図2】本発明の実施の形態例のエアフィルタの模式的な斜視図である。
【図3】通気方向に直交する面で切った時の、図2に示すエアフィルタの模式的な断面図である。
【図4】アンモニア除去率の経時的変化を示す図である。
【図5】従来より用いられている通気空洞を有するエアフィルタの模式図である。
【符号の説明】
【0096】
1 イオン交換樹脂
2 PTFE樹脂の針状繊維
10、20 エアフィルタ
11 平坦状エアフィルタ用シート
12 コルゲート状エアフィルタ用シート
13、23 通気空洞
14 開口部
15 山部
16 通気方向に直交する方向の通気空洞の断面
h 山高さ
p ピッチ
21 コルゲート状繊維質
22 平坦状繊維質
24 通気方向
25 イオン交換樹脂担持繊維質
26 枠体
27 被処理空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が0.1〜30μmの機能剤、及び数平均分子量が300万〜5000万のポリテトラフルオロエチレン樹脂の針状繊維を含有し、該ポリテトラフルオロエチレン樹脂の針状繊維に対する該機能剤の重量比が1〜99であることを特徴とするエアフィルタ用シート。
【請求項2】
前記機能剤が、イオン交換樹脂、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化銅又は酸化チタンであることを特徴とする請求項1記載のエアフィルタ用シート。
【請求項3】
平均粒径が0.1〜30μmの機能剤、及び数平均分子量が300万〜5000万の粒状のポリテトラフルオロエチレン樹脂を含有し、該粒状のポリテトラフルオロエチレン樹脂に対する該機能剤の重量比が1〜99である混合物(A)に、せん断応力をかけ、該機能剤及び該ポリテトラフルオロエチレン樹脂の針状繊維の混合物(B)を得るフィブリル化工程を行い、次いで、該混合物(B)を、せん断応力をかけながら圧延し、エアフィルタ用シートを得る圧延工程を行うことを特徴とするエアフィルタ用シートの製造方法。
【請求項4】
通気空洞を有するエアフィルタであって、請求項1又は2記載のエアフィルタ用シートを成形して得られることを特徴とするエアフィルタ。
【請求項5】
前記機能剤の担持量が、エアフィルタの単位体積当たり100〜700kg/mであることを特徴とする請求項4記載のエアフィルタ。
【請求項6】
前記エアフィルタが、コルゲート状ハニカム構造を有していることを特徴とする請求項4又は5いずれか1項記載のエアフィルタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−223463(P2006−223463A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−39321(P2005−39321)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】