説明

エコー信号処理装置、レーダ装置、エコー信号処理プログラム及びエコー信号処理方法

【課題】簡単な構成で、物標追尾等の処理で用いることができる有用な情報を取得することが可能な信号処理装置を提供する。
【解決手段】信号処理装置3は、スキャン相関処理部33と、物標状態判別部38と、を備える。スキャン相関処理部33は、第1の時刻に受信された第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻よりも前の第2の時刻に受信された第2エコー信号のレベルと、に基づいて、第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルを出力する。物標状態判別部38は、第1エコー信号のレベルと、第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルと、に基づいて、第1エコー信号に対応した物標の状態を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主要には、レーダ装置が備える信号処理装置に関する。詳細には、信号処理装置において、エコー信号が示す物標の状態を検出するための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置が備えるレーダアンテナが受信したエコー信号に基づいて、物標追尾処理(TT:Target Tracking)を行う構成が従来から知られている。この物標追尾は、簡単に説明すると、エコー信号に基づいて物標の座標を取得し、当該座標の経時変化に基づいて当該物標の速度ベクトル等を求める技術である。これにより、例えば衝突の危険性の高い物標を検出することができる。
【0003】
ある物標を追尾している場合、当該追尾処理を継続するためには、当該物標の最新の座標を処理ステップごとに取得する必要がある。ところで、通常、エコー信号には複数の物標からのエコーが含まれているから、物標の座標に関する情報も複数取得され得る。また、エコー信号にクラッタ等の不要信号が含まれていた場合、当該不要信号が検出された位置を物標の座標として誤って取得してしまう場合がある。即ち、エコー信号からは、追尾中の物標とは関係の無い座標情報が、多数取得され得る。
【0004】
従って、追尾処理を継続するためには、新たに取得された複数の座標情報の中から、追尾中の物標に対応する座標情報を特定する必要がある。ここで間違った座標を追尾処理に用いてしまうと(追尾するエコーを取り違えてしまうと)、いわゆる「追尾移り」が発生し、クラッタや間違った物標を追尾してしまうこととなるため、追尾ミスとなる。
【0005】
このような追尾ミスを防止する方法は、各種提案されている。例えば、特許文献1は、クラッタによる追尾情報を検出し、これを除去するように構成した物標追尾映像表示装置を開示する。また特許文献2は、複数の映像が発生したときに、本当に複数の船舶があって複数映像になっているのか、又は1つの船舶によって複数の映像が発生したのかを判定し、追尾誤りを発生させないように構成した物標追尾装置を開示している。
【0006】
また、上記のような追尾ミスを防ぐため、クラッタ等の不要信号は予め除去し、物標のみを検出したうえで追尾処理を行うことが考えられる。エコー信号に含まれるクラッタ等の不要信号を除去するための処理として、スキャン相関処理が知られている。このスキャン相関処理は、簡単に説明すると、最新のエコー信号と、過去のエコー信号と、の相関を取ることにより、物標からのエコーを残しつつクラッタを抑圧するものである。即ち、クラッタ等はランダムに出現する信号であるから、過去の信号との間で相関が極めて弱くなるので、スキャン相関処理によって抑圧することができる。一方、低速物標からのエコーは安定して検出されるため、過去の信号との相関が強く現れ、スキャン相関処理によっても抑圧されることなく出力することができる。
【0007】
しかしながら、このようなスキャン相関処理は、高速移動する物標からのエコーを抑圧してしまうという欠点があった。即ち、高速移動する物標は、スキャンごとに大きく位置を変えるので、過去の信号との間で相関が弱くなり、スキャン相関処理によって抑圧されてしまうのである。従って、仮にスキャン相関処理済みの信号に対して追尾処理を行うと、高速移動物標を追尾することができないという問題がある。そのため、従来は、追尾処理の前処理としてスキャン相関処理が行われることは無かった。
【0008】
この点、特許文献3は、物標を追尾することで当該物標の位置を予測し、その予測した位置に物標のエコーの位置を補正したうえでスキャン相関処理を行う構成を開示している。特許文献3は、これにより、高速移動物標をスキャン相関処理後も表示することができるとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−181247号公報
【特許文献2】特開平7−191134号公報
【特許文献3】特開平11−94931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1の構成によれば、物標の追尾中にクラッタに対して「追尾移り」を起こしてしまうことを防止できると考えられる。また上記特許文献2の構成によれば、1つの物標から複数の物標エコー像が得られている場合に、他の船舶の追尾が乗り移ってしまうことを防止できると考えられる。
【0011】
しかしながら、このような「追尾移り」は、クラッタや、1つの物標に起因して1又は複数の偽像が発生している場合のみならず、その他の場合であっても発生し得る。例えば、追尾対象の物標の近傍に他の物標が存在する場合、何れの物標の座標情報を用いて追尾処理を行えば良いのかの判断が難しいため、エコーの取り違えが発生し易くなる。これは、物標の座標情報のみを頼りに追尾処理を行う従来の構成に共通の問題点であり、特許文献1及び2の構成では解決することができない。
【0012】
一方、特許文献3は、スキャン相関処理で高速移動物標を消さないようにするため、追尾処理の結果を用いている。従って、特許文献3の構成は、追尾処理の前処理としてのスキャン相関処理に適用することができない。また特許文献3の構成は、物標の位置を補正する処理が必要となるため、装置構成等が複雑になってしまうとともに演算負荷が増大することになり、この点で改善の余地が残されていた。
【0013】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、簡単な構成で、物標追尾等の処理で用いることができる有用な情報を取得することが可能なエコー信号処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0014】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0015】
本発明の第1の観点によれば、以下のように構成されたエコー信号処理装置が提供される。即ち、このエコー信号処理装置は、スキャン相関処理部と、物標状態判別部と、を備える。前記スキャン相関処理部は、第1の時刻に受信された第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻よりも前の第2の時刻に受信された第2エコー信号のレベルと、に基づいて、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルを出力する。前記物標状態判別部は、前記第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルと、に基づいて、前記第1エコー信号に対応した物標の状態を判別する。
【0016】
このように、スキャン相関信号レベルと、エコー信号のレベルと、を複合的に用いることにより、物標の状態を取得することができる。例えば、移動速度が速い物標のエコーはスキャン相関処理によって抑圧されるという特徴があるので、スキャン相関処理を行った信号と行っていない信号の両方を参照することにより、当該エコーが示す物標の移動速度が速いか遅いかという情報を取得することができる。このような情報は、例えば物標の追尾処理を行う際の有用な情報として用いることができる。
【0017】
また、このエコー信号処理装置は、以下のように構成することもできる。即ち、このエコー信号処理装置は、スキャン相関処理部と、物標状態判別部と、を備える。前記スキャン相関処理部は、第1の時刻に受信された第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻よりも前の第2の時刻に受信された第2エコー信号のレベルと、前記第2の時刻よりも更に前の時刻に受信された少なくとも1つのエコー信号のレベルと、に基づいて、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルを出力する。前記物標状態判別部は、前記第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルと、に基づいて、前記第1エコー信号に対応した物標の状態を判別する。
【0018】
このように、第1の時刻よりも前の時刻におけるエコー信号を複数考慮することにより、過去の信号との相関性を好適に評価することができるので、スキャン相関処理においてより好ましい結果を得ることができる。
【0019】
前記のエコー信号処理装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記スキャン相関処理部は、前記第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻よりも前の時刻に受信されたエコー信号のレベルと、の加重平均を、あらかじめ定められた重み付けを用いて求め、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルとして出力する。
【0020】
このように、新しいエコー信号と過去のエコー信号との加重平均を求めることにより、時間的に安定しない信号(クラッタ等)を抑圧することができる。
【0021】
前記のエコー信号処理装置は、以下のように構成することもできる。即ち、前記スキャン相関処理部は、前記第1の時刻に受信された前記第1エコー信号のレベルと、前記第2の時刻におけるスキャン相関信号レベルと、に基づいて、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルを求めるように構成される。なお、前記第2の時刻におけるスキャン相関信号レベルは、当該第2の時刻に受信された第2エコー信号のレベルと、当該第2の時刻よりも前の時刻におけるスキャン相関信号レベルと、に基づいて求められる。
【0022】
このように、過去のスキャン相関信号レベルを用いた再帰的な処理によって最新のスキャン相関信号レベルを算出するように構成することにより、過去のエコー信号を考慮したスキャン相関信号レベルを簡単に算出することができる。
【0023】
上記のエコー信号処理装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、このエコー信号処理装置は、受信レベル判定部と、スキャン相関レベル判定部と、を備える。前記受信レベル判定部は、前記第1エコー信号のレベルに対して所定の受信閾値を閾値とした2値処理を行い、二値化エコー信号を出力する。前記スキャン相関レベル判定部は、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルに対して所定のスキャン相関閾値を閾値とした二値化処理を行い、二値化スキャン相関信号を出力する。そして、前記物標状態判別部は、前記二値化エコー信号と、前記二値化スキャン相関信号と、に基づいて、前記第1エコー信号に対応した物標の状態を判別する。
【0024】
即ち、エコー信号又はスキャン相関信号が閾値以上か否かに基づいて(二値化の結果に基づいて)、物標の有無を判定することができる。そして、二値化エコー信号に基づいて物標の有無を検出する場合と、二値化スキャン相関信号に基づいて物標の有無を検出する場合と、では、どのような状態の物標が検出され易いか(或いは検出されにくいか)が異なる。従って、上記のように二値化エコー信号と二値化スキャン相関信号とを相補的に考慮することで、対応する物標の状態を推定することができる。
【0025】
上記のエコー信号処理装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、このエコー信号処理装置は、受信閾値決定部と、スキャン相関閾値決定部と、を備える。前記受信閾値決定部は、前記第1の時刻よりも前の時刻に受信された過去のエコー信号のレベルに基づいて前記受信閾値を決定する。前記スキャン相関閾値決定部は、前記第1の時刻よりも前の時刻にスキャン相関処理部から出力された過去のスキャン相関信号レベルに基づいて前記スキャン相関閾値を決定する。
【0026】
即ち、適切に二値化処理を行うためには、適切な閾値を設定する必要がある。この点、上記のように過去の信号レベルに基づいて閾値を決定することにより、全体的な信号レベルが変動した場合であっても適切に二値化処理を行うことができる。
【0027】
上記のエコー信号処理装置においては、スキャン相関処理を行うことでエコー信号に含まれている不要信号(時間的に不安定な信号)の信号レベルが抑圧され、閾値を小さくしても適切に二値化処理を行うことができるので、前記受信閾値は、前記スキャン相関閾値よりも大きくすれば良い。
【0028】
上記のエコー信号処理装置において、前記物標状態判別部は、前記第1エコー信号に対応する物標の状態を、前記二値化エコー信号と前記二値化スキャン相関信号との組み合わせに基づく4通りの状態のうち何れかに対応させることが好ましい。
【0029】
即ち、二値化エコー信号は、第1エコー信号のレベルが受信閾値以上か否かの2通りの値をとり得る。また、二値化スキャン相関信号は、第1時刻におけるスキャン相関信号レベルがスキャン相関閾値以上か否かの2通りの値をとり得る。従って、上記のように、二値化エコー信号と前記二値化スキャン相関信号とを組み合わせることで、4通りの判別結果を得ることができる。
【0030】
前記のエコー信号処理装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記物標状態判別部は、前記二値化エコー信号が「前記第1エコー信号のレベルが前記受信閾値未満である」ことを示し、かつ、前記二値化スキャン相関信号が「前記第1時刻におけるスキャン相関信号レベルが前記スキャン相関閾値未満である」ことを示している場合、前記第1エコー信号に対応した位置には物標無しと判別する。また前記物標状態判別部は、前記二値化エコー信号が「前記第1エコー信号のレベルが前記受信閾値以上である」ことを示し、かつ、前記二値化スキャン相関信号が「前記第1時刻におけるスキャン相関信号レベルが前記スキャン相関閾値未満である」ことを示している場合、前記第1エコー信号に対応した物標は大型の高速物標であると判別する。また、前記物標状態判別部は、前記二値化エコー信号が「前記第1エコー信号のレベルが前記受信閾値未満である」ことを示し、かつ、前記二値化スキャン相関信号が「前記第1時刻におけるスキャン相関信号レベルが前記スキャン相関閾値以上である」ことを示している場合、前記第1エコー信号に対応した物標は小型の低速物標であると判別する。また、前記物標状態判別部は、前記二値化エコー信号が「前記第1エコー信号のレベルが前記受信閾値以上である」ことを示し、かつ、前記二値化スキャン相関信号が「前記第1時刻におけるスキャン相関信号レベルが前記スキャン相関閾値以上である」ことを示している場合、前記第1エコー信号に対応した物標は大型の低速物標であると判別する。
【0031】
即ち、エコー信号のレベルがある程度大きいということは、ある程度大きな物標が存在するということを示している。従って、二値化エコー信号が示す値(第1エコー信号のレベルが受信閾値以上であるか否か)により、当該第1エコー信号に対応した位置に大型の物標が存在するか否かを判別することができる。一方、スキャン相関処理を行うと高速移動する物標からのエコーは抑圧されてしまう。これを逆に言うと、スキャン相関信号レベルが抑圧されていないということは、低速の物標が存在するということを示している。従って、二値化スキャン相関信号の値(スキャン相関信号レベルがスキャン相関閾値以上であるか否か)により、低速の物標が存在するか否かを判定することができる。そして、上記のように、二値化エコー信号と二値化スキャン相関信号とを複合的に用いることにより、物標の有無を判別できるとともに、物標の状態を「高速・大型物標」、「低速・小型物標」、「大型・低速物標」の3つの区分で取得することができる。
【0032】
前記のエコー信号処理装置は、前記二値化エコー信号と前記二値化スキャン相関信号との論理和を、物標の有無を検出した結果として出力する物標検出結果出力部を備えることが好ましい。
【0033】
即ち、前述のように、二値化エコー信号の値に基づいて、大型の物標が存在するか否かを判別することができる。また、二値化スキャン相関信号に基づいて、低速の物標が存在するか否かを判別することができる。従って、両者の論理和を物標の検出結果とすることで、事実上全ての物標を検出することができる。
【0034】
前記のエコー信号処理装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、このエコー信号処理装置は、物標の追尾処理を行う追尾処理部を備える。当該追尾処理部は、前記物標状態判別部が取得した情報を考慮して、前記追尾処理を行う。
【0035】
これにより、より正確な追尾処理を行うことができる。
【0036】
本発明の第2の観点によれば、前記のエコー信号処理装置と、回転しながら電磁波を放射し、物標からの反射によるエコー信号を受信するアンテナと、を備えるレーダ装置が提供される。
【0037】
このレーダ装置では、前記エコー信号処理装置によって、物標の状態を判別できるので、当該物標の状態に関する情報を、例えば物標の追尾処理を行う際に参照することにより、当該追尾処理の精度を向上させることができる。
【0038】
前記のレーダ装置において、前記第1エコー信号と前記第2エコー信号は、同じ位置から受信されたエコー信号であることが好ましい。
【0039】
このように構成することにより、適切にスキャン相関処理を行うことができる。
【0040】
本発明の第3の観点によれば、以下のステップを含む処理を信号処理装置に実行させるためのエコー信号処理プログラムが提供される。即ち、この信号処理プログラムは、スキャン相関処理ステップと、物標状態判別ステップと、を含む。前記スキャン相関処理ステップでは、第1の時刻に受信された第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻よりも前の第2の時刻に受信された第2エコー信号のレベルと、に基づいて、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルを出力する。前記物標状態判別ステップでは、前記第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルと、に基づいて、前記第1エコー信号に対応した物標の状態を判別する。
【0041】
このように、スキャン相関処理レベルと、エコー信号のレベルと、を複合的に用いることにより、物標の状態を取得することができる。例えば、移動速度が速い物標のエコーはスキャン相関処理によって抑圧されるという特徴があるので、スキャン相関処理を行った信号と行っていない信号の両方を参照することにより、当該エコーが示す物標の移動速度が速いか遅いかという情報を取得することができる。このような情報は、例えば物標の追尾処理を行う際の有用な情報として用いることができる。
【0042】
上記のエコー信号処理プログラムは、以下のステップを含む処理を信号処理装置に実行させるためのエコー信号処理プログラムであっても良い。即ち、この信号処理プログラムは、スキャン相関処理ステップと、物標状態判別ステップと、を含む。前記スキャン相関処理ステップでは、第1の時刻に受信された第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻よりも前の第2の時刻に受信された第2エコー信号のレベルと、前記第2の時刻よりも更に前の時刻に受信された少なくとも1つのエコー信号のレベルと、に基づいて、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルを出力する。前記物標状態判別ステップでは、前記第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルと、に基づいて、前記第1エコー信号に対応した物標の状態を判別する。
【0043】
このように、第1の時刻よりも前の時刻におけるエコー信号を複数考慮することにより、過去の信号との相関性を好適に評価することができるので、スキャン相関処理においてより好ましい結果を得ることができる。
【0044】
前記のエコー信号処理プログラムの前記スキャン相関処理ステップにおいては、前記第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻よりも前の時刻に受信されたエコー信号のレベルと、の加重平均を、あらかじめ定められた重み付けを用いて求め、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルとして出力することが好ましい。
【0045】
このように、新しいエコー信号と過去のエコー信号との加重平均を求めることにより、時間的に安定しない信号(クラッタ等)を抑圧することができる。
【0046】
前記のエコー信号処理プログラムの前記スキャン相関処理ステップにおいては、前記第1の時刻に受信された前記第1エコー信号のレベルと、前記第2の時刻におけるスキャン相関信号レベルと、に基づいて、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルを求めることもできる。なお、前記第2の時刻におけるスキャン相関信号レベルは、当該第2の時刻に受信された第2エコー信号のレベルと、当該第2の時刻よりも前の時刻におけるスキャン相関信号レベルと、に基づいて求められる。
【0047】
このように、過去のスキャン相関信号レベルを用いた再帰的な処理によって最新のスキャン相関信号レベルを算出するように構成することにより、過去の全てのエコー信号を考慮したスキャン相関信号レベルを簡単に算出することができる。
【0048】
本発明の第4の観点によれば、以下のステップを含むエコー信号処理方法が提供される。即ち、この信号処理方法は、スキャン相関処理ステップと、物標状態判別ステップと、を含む。前記スキャン相関処理ステップでは、第1の時刻に受信された第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻よりも前の第2の時刻に受信された第2エコー信号のレベルと、に基づいて、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルを出力する。前記物標状態判別ステップでは、前記第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルと、に基づいて、前記第1エコー信号に対応した物標の状態を判別する。
【0049】
このように、スキャン相関処理レベルと、エコー信号のレベルと、を複合的に用いることにより、物標の状態を取得することができる。例えば、移動速度が速い物標のエコーはスキャン相関処理によって抑圧されるという特徴があるので、スキャン相関処理を行った信号と行っていない信号の両方を参照することにより、当該エコーが示す物標の移動速度が速いか遅いかという情報を取得することができる。このような情報は、例えば物標の追尾処理を行う際の有用な情報として用いることができる。
【0050】
また、上記のエコー信号処理方法は、以下のスキャン相関処理ステップと、物標状態判別ステップと、を含んでいても良い。即ち、前記スキャン相関処理ステップでは、第1の時刻に受信された第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻よりも前の第2の時刻に受信された第2エコー信号のレベルと、前記第2の時刻よりも更に前の時刻に受信された少なくとも1つのエコー信号のレベルと、に基づいて、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルを出力する。前記物標状態判別ステップでは、前記第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルと、に基づいて、前記第1エコー信号に対応した物標の状態を判別する。
【0051】
このように、第1の時刻よりも前の時刻におけるエコー信号を複数考慮することにより、過去の信号との相関性を好適に評価することができるので、スキャン相関処理においてより好ましい結果を得ることができる。
【0052】
前記のエコー信号処理方法の前記スキャン相関処理ステップにおいては、前記第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻よりも前の時刻に受信されたエコー信号のレベルと、の加重平均を、あらかじめ定められた重み付けを用いて求め、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルとして出力することが好ましい。
【0053】
このように、新しいエコー信号と過去のエコー信号との加重平均を求めることにより、時間的に安定しない信号(クラッタ等)を抑圧することができる。
【0054】
前記のエコー信号処理方法の前記スキャン相関処理ステップにおいては、前記第1の時刻に受信された前記第1エコー信号のレベルと、前記第2の時刻におけるスキャン相関信号レベルと、に基づいて、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルを求めることもできる。なお、前記第2の時刻におけるスキャン相関信号レベルは、当該第2の時刻に受信された第2エコー信号のレベルと、当該第2の時刻よりも前の時刻におけるスキャン相関信号レベルと、に基づいて求められる。
【0055】
このように、過去のスキャン相関信号レベルを用いた再帰的な処理によって最新のスキャン相関信号レベルを算出するように構成することにより、過去の全てのエコー信号を考慮したスキャン相関信号レベルを簡単に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーダ装置のブロック図。
【図2】自船周囲の様子を例示する図。
【図3】(a)エコー信号のグラフを例示する図。(b)スキャン相関信号のグラフを例示する図。
【図4】大型物標検出フラグ及び低速物標検出フラグに基づいて取得される物標の状態を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0057】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は、本実施形態に係るレーダ装置1のブロック図である。本実施形態のレーダ装置1は、漁船等の船舶に備えられる舶用レーダであり、主に他船等の物標の探知に用いられる。
【0058】
図1に示すように、本実施形態のレーダ装置1は、アンテナユニット2と、信号処理装置(エコー信号処理装置)3と、を備えている。アンテナユニット2は、レーダアンテナ11と、検波部12と、A/D変換部13と、を備えている。信号処理装置3は、スイープメモリ21と、制御部22と、追尾処理部23と、表示部24と、を備えている。
【0059】
レーダアンテナ11は、指向性の強いパルス状電波を送信可能であるとともに、物標からのエコー(反射波)を受信するように構成されている。この構成で、パルス状電波を送信してからエコーを受信するまでの時間を測定することにより、物標までの距離rを知ることができる。また、レーダアンテナ11は水平面内で360°回転可能に構成され、パルス状電波の送信方向を変えながら(アンテナ角度θを変えながら)電波の送受信を繰り返し行うように構成されている。以上の構成で、自船周囲の平面上の物標を360°にわたり探知することができる。
【0060】
なお、以下の説明で、パルス状電波を送信してから次のパルス状電波を送信するまでの動作を「スイープ」と呼ぶ。また、電波の送受信を行いながらアンテナを360°回転させる動作を「スキャン」と呼ぶ。
【0061】
検波部12は、レーダアンテナ11が受信した信号(エコー信号)を検波して増幅し、A/D変換部13にエコー信号を出力する。A/D変換部13は、このアナログ型式のエコー信号をサンプリングし、複数ビットからなるデジタルデータ(エコーデータ)に変換する。ここで、前記エコーデータの値は、レーダアンテナ11が受信したエコー信号の強度(信号レベル)を示している。A/D変換部13は、前記エコーデータをスイープメモリ21に出力する。
【0062】
スイープメモリ21は、前記エコーデータを1スイープ分リアルタイムで記憶することができるバッファメモリである。スイープメモリ21には、1スイープの間にサンプリングされたエコーデータが、先頭アドレスから順に記憶されるように構成されている。従って、スイープメモリ21からエコーデータを読み出すときの読出しアドレスに基づいて、当該エコーデータに対応するエコー源までの距離rを求めることができる。一方、レーダアンテナ11からは、当該レーダアンテナ11が現在どの方向を向いているか(アンテナ角度θ)を示すデータが出力されている(図示は省略)。以上の構成で、スイープメモリ21からエコーデータを読み出す際には、当該エコーデータに対応するエコー源の位置を、極座標(r,θ)で取得することができる。
【0063】
制御部22は、スイープメモリ21からエコーデータを読み出し、当該エコーデータに対応するエコー源の座標(r,θ)に存在する物標の状態を判別するように構成されている。なお、制御部22は、エコーデータをA/D変換部13からリアルタイムで取り込みながら処理するように構成しても良く、この場合は必ずしもスイープメモリ21は必要無い。
【0064】
例として、自船周囲の様子が図2のようであった場合について説明する。図2に示す物標Aは高速の大型船舶、物標Bは低速の大型船舶、物標Cは低速の小型船舶である。図2の状況で、アンテナ角度がθ1のときにスイープメモリから読み出されるエコーデータ系列(エコー信号の波形)は、図3(a)のグラフのようになる。グラフの縦軸はエコー信号の信号レベル、横軸はスイープメモリ21からの読出しアドレス(即ち、自船からエコー源までの距離r)に対応している。なお、図3のグラフは連続的なアナログ波形のように描かれているが、これは概念的な図であって、実際には、スイープメモリ21から読み出されるエコーデータは離散的なデジタルデータとなっている。
【0065】
図3(a)の例では、物標A、物標B、及び物標Cからのエコーのそれぞれが、信号レベルのピークとして現れている。大型船舶である物標A及び物標Bは、反射断面積が大きいため、小型船舶である物標Cに比べるとピークの信号レベルが高い。また図3(a)の波形には、物標からのエコー以外にも細かいピークが検出されているが、これらはクラッタやノイズなどの不要信号である。ここで、クラッタとは、海面からの反射波や雨からの反射波など、物標の検出に不要な反射波をいう。
【0066】
本実施形態の制御部22は、図3(a)に示すようなエコー信号に対して所定の信号処理を行うことにより、物標A、物標B、及び物標Cを検出し、それぞれの物標が、大型物標であるか否か、低速物標であるか否か、という情報を取得するように構成されている。即ち、本実施形態の制御部22は、図3(a)のエコー信号を信号処理することにより、物標の状態を判別することができる。なお、物標の状態を判別するための構成については後述する。
【0067】
制御部22において取得された物標の状態に関する情報は、後述の追尾処理部23に出力される。追尾処理部23においては、前記物標の状態に関する情報を参照して追尾処理を行う。これにより、物標エコーの位置情報のみに基づいて追尾処理を行っていた従来の構成に比べて、当該追尾処理の精度を向上させ、追尾ミスを減少させることが可能となる(詳しくは後述)。そして、追尾処理部23で物標の追尾処理を行うことにより、当該物標の移動速度、移動方向等の情報を取得することができる。なお、このように物標の追尾処理を行うので、本実施形態の信号処理装置3は、物標追尾装置であると言うこともできる。
【0068】
追尾処理部23で物標を追尾した結果は、表示部24に出力される。表示部24は液晶ディスプレイ等の表示装置を備えており、物標を追尾した結果を画像として表示することができる。表示部24に表示される画像としては、例えば、各物標の移動方向、移動速度等を示すマークを物標エコーに重畳表示させたレーダ映像が好適である。このように構成することにより、レーダ装置1のオペレータは、表示部24の表示を確認することで、自船周囲の危険な物標を容易に認識することができる。なお、このように物標画像の生成を行うので、本実施形態の信号処理装置3は、物標画像処理装置であると言うこともできる。
【0069】
次に、制御部22の構成について詳しく説明する。制御部22は、図略のCPU、RAM及びROM等からなるハードウェアと、前記ROMに記憶されたエコー信号処理プログラムからなるソフトウェアと、から構成されている。
【0070】
前記エコー信号処理プログラムは、本発明に係るエコー信号処理方法を信号処理装置3に実行させるためのプログラムであり、大型物標検出ステップと、低速物標検出ステップと、スキャン相関処理ステップと、物標状態判別ステップと、物標検出結果出力ステップと、を含んでいる。そして、信号処理装置3が備える前記ハードウェアとソフトウェアが協働して動作することにより、制御部22を、大型物標検出部31、低速物標検出部32、スキャン相関処理部33、物標状態判別部38、物標検出結果出力部39等として機能させることができる。
【0071】
以下、図1のブロック図を参照して説明する。以下の説明では具体的に、或る時刻(第1時刻)に受信されたエコー信号(第1エコー信号)をサンプリングしたエコーデータ(以下、第1エコーデータと呼ぶ)を、制御部22がスイープメモリ21から読み出し、当該第1エコーデータに対して上記エコー信号処理プログラムによる信号処理を行うものとして説明する。
【0072】
大型物標検出部31は、スイープメモリ21から読み出された第1エコーデータに基づいて、当該第1エコーデータに対応するエコー源の座標に大型物標が存在するか否かを判定するように構成されている。この大型物標検出部31における処理内容は、前記信号処理プログラムの大型物標検出ステップに対応している。具体的には、大型物標検出部31は、受信閾値決定部34と、受信レベル判定部35と、を備えている。
【0073】
大型物標検出部31における処理を、前記図3(a)を参照して説明する。
【0074】
例えば、物標A(高速・大型船舶)や物標B(低速・大型船舶)のような大型船舶は、反射断面積の大きな物標であり、エコーの強度も強い。一方、気象条件等によっても異なるが、クラッタ等の不要信号の信号レベルは、通常、大型船舶を示すエコー信号のレベルよりも小さい。従って、図3(a)に示すように、所定の受信閾値を設定しておき、第1エコーデータの値が前記受信閾値以上か否かを判定することにより、当該第1エコーデータが物標を示すエコーデータか否かを判別することができる。
【0075】
一方、小型物標(反射断面積の小さな物標)からのエコーは弱く、クラッタに埋もれてしまいがちである。このため、図3(a)に示すように、例えば物標C(低速・小型船舶)のような小型船舶からのエコーを示すエコー信号の信号レベルは、受信閾値以下となる場合がある。このため、このような小型物標は、エコーデータの値が受信閾値以上か否かによっては、不要信号と区別することができない。
【0076】
これを逆に言うと、エコーデータが受信閾値以上か否かを判定することにより、(物標の移動速度が低速か高速かにかかわらず)大型の物標を検出することができる。なお、ここで言う「大型」「小型」というのは、物標の絶対的な大きさを指しているのではなく、不要信号レベルに対して物標からのエコーが大きいか小さいかという相対的な尺度である。従って、クラッタが弱い場合などは、小型船舶であっても大型物標として検出され得ることを考慮すべきである。
【0077】
以上の点を考慮して、受信レベル判定部35は、第1エコーデータの値(第1の時刻に受信されたエコー信号の信号レベル)が受信閾値以上か否かに応じて、1ビットからなる大型物標検出フラグを生成するように構成されている。具体的には、第1エコーデータの値が受信閾値以上だった場合(物標が検出された場合)、受信レベル判定部35は、「1」からなる大型物標検出フラグを生成する。一方、第1エコーデータの値が受信閾値未満だった場合(物標が検出されなかった場合)、受信レベル判定部35は、「0」からなる大型物標検出フラグを生成する。なお、大型物標検出フラグは、上記のように、エコー信号の信号レベルを受信閾値を閾値として二値化したものであるから、二値化エコー信号と呼ぶこともできる。
【0078】
ここで、前述のように、各エコーデータが示すエコー源の位置は、極座標(r,θ)で取得することができる。従って、第1エコーデータを二値化した結果である大型物標検出フラグは、元の第1エコーデータが示すエコー源の座標(r,θ)における大型物標の有無を示している。
【0079】
ところで、上記のように大型物標を確実に検出するとともに、不要信号が誤って物標と判断されないようにするためには、前記受信閾値として適切な値を採用する必要がある。そこで、受信閾値決定部34は、前記第1時刻よりも前の時刻にサンプリングされた過去のエコーデータに基づいて、エコー信号に含まれている不要信号レベルを推定し、この不要信号レベルよりも若干大きな値を前記受信閾値として決定するように構成されている。このように構成することにより、いわゆる適応型の二値化処理が可能となり、受信レベル判定部35において適切に二値化を行うことができる。
【0080】
なお、上記の説明では第1エコーデータに対する処理を例として説明したが、大型物標検出部31における物標検出処理は、エコー信号をサンプリングした個々のデジタルデータであるエコーデータのそれぞれに対して行われる。即ち、スイープメモリ21から処理対象のエコーデータを読み出し、当該エコーデータの値が受信閾値以上の場合に、物標が存在すると判断し、この検出結果に応じて大型物標検出フラグを生成するという処理を繰り返す。
【0081】
そして、大型物標検出部31は、上記のように大型物標検出フラグを生成すると、当該大型物標検出フラグを、後述の物標状態判別部38及び物標検出結果出力部39へ出力する。
【0082】
次に、スキャン相関処理部33について説明する。スキャン相関処理部33は、エコー信号に対してスキャン相関処理を行う。なお、このスキャン相関処理部33における処理内容は、前記信号処理プログラムのスキャン相関処理ステップに対応している。
【0083】
以下、スキャン相関処理について簡単に説明する。スキャン相関処理とは、最新のエコー信号と、過去のエコー信号と、の相関を取ることにより、物標からのエコーを残しつつクラッタを抑圧する処理である。
【0084】
即ち、物標からのエコーは時間的に安定して検出される信号である一方、クラッタは時間的にランダムに変動する信号である。なおここでいう時間的な安定性は、スキャン間での信号レベルの安定性をいう。複数スキャンにわたって、アンテナ角度θ、距離rの位置から同じような信号レベルのエコーが安定して検出される場合、当該座標(r,θ)からの信号は時間的に安定していると言える。従って、ある座標(r,θ)からのエコーに対応するエコーデータに対して低域通過型のデジタルフィルタ処理を施すことにより、当該座標(r,θ)において時間的に安定して検出される信号(物標からのエコー等)を残しつつ、ランダムに変動する信号(クラッタ等の不要信号)を抑圧することができる。
【0085】
上記のような低域通過型のデジタルフィルタ処理としては、例えば過去のエコーデータの時間平均を取る方法が考えられる。即ち、エコーデータの値の時間的な平均を求めることにより、時間的にランダムに変動する成分を抑圧し、時間的に安定した(時間的に平均化された)スキャン相関信号を出力することができる。
【0086】
このような時間平均を求める演算の一例として、例えば以下のように、所定の比率によって重み付けを行った加重平均を計算する方法が考えられる。
r,θ(t1)={αXr,θ(t1)+α(1−α)Xr,θ(t2
+・・・+α(1−α)n-1r,θ(tn)+・・・} ・・・(1)
【0087】
ここで、係数αの範囲は(0≦α≦1)であり、重み係数α,α(1−α),・・・α(1−α)n-1,・・・の総和は1である。なお、Yr,θ(t1)は、第1の時刻におけるスキャン相関信号のレベルを示すデータ(スキャン相関データ)である。Xr,θ(t1)は、前記第1の時刻に受信された第1エコー信号をサンプリングしたエコーデータ(第1エコーデータ)である。Xr,θ(t2)は、Xr,θ(t1)と同じ座標(r,θ)からのエコーを示すエコーデータであって、前記第1の時刻よりも前の第2の時刻に受信された第2エコー信号をサンプリングした第2エコーデータである。なお、第1の時刻よりも前の第2の時刻とは、具体的には、第1の時刻の1スキャン前の時刻である。また、Xr,θ(tn)は、前記第2の時刻よりも更に前の時刻にサンプリングされた過去のエコーデータである。このように、第1エコーデータと、第2エコーデータと、・・・に基づいて、第1の時刻におけるスキャン相関データを算出することができる。
【0088】
ただし、上記のように過去のエコーデータを複数考慮して加重平均を求めるように構成した場合、当該複数の過去のエコーデータを記憶しておくために大きな記憶領域が必要となってしまう。また、大量のエコーデータの加重平均を求める必要があるため、演算回数も多くなり、計算負荷が高まる。
【0089】
そこで本実施形態のスキャン相関処理部33では、低域通過側のフィルタの一実現方法として、式(1)を変形した以下の巡回式デジタルフィルタ処理:
r,θ(t1)=αXr,θ(t1)+(1−α)Yr,θ(t2) ・・・(2)
をエコーデータに対して適用することにより、クラッタを抑圧するように構成している。以上が本実施形態におけるスキャン相関処理である。ここで、Yr,θ(t2)は、前記第2の時刻におけるスキャン相関データである。
【0090】
上記式(2)を用いてスキャン相関信号を求めるように構成することにより、上記式(1)に比べて演算に必要な記憶領域が少なくて済む。また、演算回数も式(1)に比べて少ないため好適である。なお、上記式(2)は、第1エコーデータXr,θ(t1)の値を引数として取ってスキャン相関処理を行うことにより、第1の時刻におけるスキャン相関データYr,θ(t1)を出力する処理であると把握することができる。
【0091】
以上のようなスキャン相関処理を、図3(a)のグラフに示すようなエコー信号に対して行った結果(スキャン相関信号)の例を、図3(b)に示す。図3(b)に示すように、スキャン相関処理により、クラッタの信号レベルを抑圧することができる。なお、前述のように、スキャン相関処理を行うと、高速移動物標を示すエコーの信号レベルも抑圧されてしまう。例えば図3(b)のグラフでは、物標A(高速・大型船舶)のエコーが抑圧された様子が示されている。
【0092】
スキャン相関処理部33は、スキャン相関データを低速物標検出部32に出力する。
【0093】
低速物標検出部32は、前記第1の時刻におけるスキャン相関データ(前記第1エコーデータをスキャン相関処理した結果のスキャン相関データ)のレベルに基づいて、前記第1エコーデータに対応するエコー源の座標に低速移動物標が存在するか否かを判定するように構成されている。なお、この低速物標検出部32における処理内容は、前記信号処理プログラムの低速物標検出ステップに対応している。具体的には、低速物標検出部32は、スキャン相関閾値決定部36と、スキャン相関レベル判定部37と、を備えている。
【0094】
低速物標検出部32における処理を、前記図3(b)を参照して説明する。前述のように、図3(b)において不要信号を示す信号レベルが抑圧されている一方、例えば物標B、物標C等に対応したスキャン相関信号は、高い信号レベルを保っている。従って、図3(b)に示すように、所定のスキャン相関閾値を設定しておき、第1の時刻におけるスキャン相関データの値が前記スキャン相関閾値以上か否かを判定することにより、スキャン相関データが物標を示すスキャン相関データか否かを判別することができる。
【0095】
なお、図3(b)に示すように、スキャン相関信号にも、スキャン相関処理で抑圧しきれなかった不要信号(物標エコー以外を示す信号)が含まれている。そこで、スキャン相関閾値決定部36は、前記第1の時刻よりも前の時刻にスキャン相関処理部33から出力された過去のスキャン相関データに基づいて、スキャン相関信号に含まれている不要信号レベルを推定し、この不要信号レベルよりも若干大きな値を前記スキャン相関閾値として決定するように構成されている。
【0096】
ここで、前記のように、エコー信号に含まれていた不要信号はスキャン相関処理によって抑圧されているため、スキャン相関閾値決定部36で推定される不要信号レベルは、上記受信閾値決定部34で推定される不要信号レベルに比べて小さい。従って、一般的に、受信閾値>スキャン相関閾値となる。このように、低速物標検出部32では、大型物標検出部31に比べて小さな閾値を用いて物標の有無を判定することができるので、大型物標検出部で検出できなかった小型の物標(例えば物標C)も検出することができる。
【0097】
一方、前述のように、高速物標のエコーは、スキャン相関処理によって抑圧されるという特徴がある。このため、例えば物標A(高速・大型船舶)のような高速物標は、低速物標検出部32で検出することができない。
【0098】
これを逆に言うと、スキャン相関信号がスキャン相関閾値以上か否かを判定することにより、(大型物標か小型物標かにかかわらず)低速物標を検出することができる。なお、ここで言う「低速物標」には、速度ゼロの物標(固定物標)も含まれる。
【0099】
以上の点を考慮して、スキャン相関レベル判定部37は、第1の時刻におけるスキャン相関データの値(第1の時刻におけるスキャン相関信号のレベル)がスキャン相関閾値以上か否かに応じて、1ビットからなる低速物標検出フラグを生成する。具体的には、第1の時刻におけるスキャン相関データの信号レベルがスキャン相関閾値以上だった場合(物標が検出された場合)、スキャン相関レベル判定部37は、低速物標検出フラグの内容を「1」とする。また、第1の時刻におけるスキャン相関データの信号レベルがスキャン相関閾値未満だった場合(物標が検出されなかった場合)、スキャン相関レベル判定部37は、低速物標検出フラグの内容を「0」とする。なお、低速物標検出フラグは、上記のように、スキャン相関信号の信号レベルをスキャン相関閾値を閾値として二値化したものであるから、二値化スキャン相関信号と呼ぶこともできる。
【0100】
ここで、前述のように、各エコーデータが示すエコー源の位置は、極座標(r,θ)で取得することができる。そして、当該エコーデータにスキャン相関処理を行った結果であるスキャン相関データは、元のエコーデータが示すエコー源の座標(r,θ)に対応している。従って、当該スキャン相関データを二値化した結果である低速物標検出フラグは、元のエコーデータが示すエコー源の座標(r,θ)における低速物標の有無を示している。
【0101】
なお、上記の説明では第1時刻におけるスキャン相関信号に対する処理を例として説明したが、低速物標検出部32における物標検出処理は、個々のデジタルデータであるスキャン相関データそれぞれに対して行われる。即ち、スキャン相関処理部33から順次入力される最新のスキャン相関データに対して、当該スキャン相関データの値がスキャン相関閾値以上の場合に、物標が存在すると判断し、当該検出結果に応じて低速物標検出フラグを生成する。
【0102】
そして、低速物標検出部は、前記低速物標検出フラグを、後述の物標状態判別部38及び物標検出結果出力部39へ出力する。
【0103】
次に、物標状態判別部38について説明する。物標状態判別部38は、大型物標検出部31及び低速物標検出部32から物標検出フラグを取得すると、当該物標検出フラグに基づいて、物標の状態を判別するように構成されている。なお、この物標状態判別部38における処理内容は、前記信号処理プログラムの物標状態判別ステップに対応している。
【0104】
以下、物標検出フラグに基づいて物標の状態を判別する処理について説明する。前述のように、大型物標検出部31では、物標の移動速度にかかわらず、大型の物標を検出できる。従って、ある座標(r,θ)における大型物標検出フラグが「1」であった場合、当該座標(r,θ)には物標が存在し、当該物標の状態は「大型物標」であると判断できる。
【0105】
また前述のように、低速物標検出部32では、物標の大小にかかわらず、低速物標を検出できる。従って、ある座標(r,θ)における低速物標検出フラグが「1」であった場合、当該座標(r,θ)には物標が存在し、当該物標の状態は「低速物標」であると判断できる。
【0106】
しかしながら、ある座標(r,θ)における大型物標検出フラグが「0」となっている場合、そこに小型物標が存在するのか、それとも単に物標が存在していないだけなのか、当該大型物標検出フラグだけでは判断することができない。また、ある座標(r,θ)における低速物標検出フラグが「0」となっている場合、そこに高速物標が存在するのか、それとも単に物標が存在していないだけなのか、当該低速物標検出フラグだけでは判断することができない。
【0107】
そこで、本実施形態の物標状態判別部38は、大型物標検出フラグと低速物標検出フラグを複合的に用いることにより、物標の状態を判別するように構成されている。具体的には以下のとおりである。
【0108】
即ち、ある座標(r,θ)における大型物標検出フラグが「0」となっている場合であっても、当該座標(r,θ)における低速物標検出フラグが「1」となっている場合、当該座標(r,θ)には低速の物標が存在するということが分かる。このような場合、物標状態判別部38は、前記座標(r,θ)における物標の状態は「低速の小型物標」であると判定する。
【0109】
同様に、ある座標(r,θ)における低速物標検出フラグが「0」となっている場合であっても、当該座標(r,θ)における大型物標検出フラグが「1」となっている場合、当該座標(r,θ)には大型の物標が存在するということが分かる。このような場合、物標状態判別部38は、前記座標(r,θ)における物標の状態は「高速の大型物標」であると判定する。
【0110】
また、ある座標(r,θ)における大型物標検出フラグと低速物標検出フラグが共に「1」であった場合は、当該座標(r,θ)における物標の状態は「低速の大型物標」と判断すれば良い。
【0111】
なお、ある座標(r,θ)における大型物標検出フラグと低速物標検出フラグが共に「0」であった場合(大型物標検出部31と低速物標検出部32の両方で物標を検出できなかった場合)、当該座標(r,θ)に「高速の小型物標」が存在しているのか、単に物標が存在しないだけなのか、を判断することができない。
【0112】
しかしながら、物標エコーがクラッタに埋もれてしまうような気象条件(大型物標検出部31で当該物標を検出できないとき。例えば時化のとき)においては、一般的な小型の船舶は高速航行することができない。従って、大型物標検出部31で小型の船舶を検出できないような気象条件下においては、小型の船舶の大部分は低速航行していることになるため、当該低速の小型船舶は低速物標検出部32で検出することが可能である。
【0113】
一方、クラッタが弱いとき(時化ていないとき)には、小型の船舶であっても高速航行することができるが、その場合、当該小型船舶のエコーはクラッタに埋もれることもないので、大型物標検出部31で検出することができる。この場合、当該小型の船舶は、クラッタレベルに対して相対的にエコーが大きいという意味で、「大型物標」であると言うことができる。
【0114】
何れにしても、大型物標検出部で検出できないほどエコーが弱く、しかも低速物標検出部で検出できないほど高速移動する物標というのは、現実的には殆ど無いと言うことができる。即ち、大型物標検出フラグと低速物標検出フラグが共に「0」となるような物標は、殆ど存在しない。
【0115】
従って、ある座標(r,θ)において、大型物標検出フラグと低速物標検出フラグが共に「0」だった場合、物標状態判別部38は、当該座標(r,θ)は単に物標無しと判定する。
【0116】
上記の結果をまとめて、図4の表に示す。図4に示すように、物標状態判別部38は、「物標なし」「低速・小型物標」「低速・大型物標」「高速・大型物標」の4段階で物標の状態を判別することができる。
【0117】
なお、従来の信号処理装置において、例えば物標の速度に関する情報を取得しようとした場合、追尾処理等を行う必要があった。従って、当該追尾処理の前に物標の速度に関する情報を予め取得することが困難であった。この点、本実施形態の構成によれば、追尾処理等を行うことなく、物標検出フラグの比較判定という簡単な処理で、物標の速度に関する情報(高速物標か低速物標か)を取得することができる。従って、当該情報を、例えば追尾処理を行う際に参照することができる。
【0118】
なお、追尾処理を行うことなく物標の速度に関する情報を取得する他の方法としては、ドップラシフトを利用した方法が公知である。しかしながら、周知のように、ドップラシフトを用いた方法では、距離方向(自船と物標を結ぶ直線方向)での物標の速度成分を取得することはできるものの、自船と物標を結んだ直線と直交する方向の速度成分を取得することができない。この点、本実施形態の構成によれば、平面内で高速移動しているか否かを判定することができる。
【0119】
次に、物標検出結果出力部39について説明する。物標検出結果出力部39は、座標(r,θ)についての大型物標検出フラグ及び低速物標検出フラグの論理和を求め、当該論理和を座標(r,θ)における物標の検出結果として出力する。なお、この物標検出結果出力部39における処理内容は、前記信号処理プログラムの物標検出結果出力ステップに対応している。
【0120】
即ち、前述のように、大型物標検出部31では、(低速か高速かにかかわらず)大型物標を検出できる。また、低速物標検出部32では、(小型か大型かにかかわらず)低速移動物標を検出できる。そして、前述のように、「高速の小型物標」というのは、現実的には殆ど存在しない。従って、大型物標検出部31と低速物標検出部32の検出結果の論理和を取ることにより、実質的に全ての物標を検出することができるのである。
【0121】
なお、従来の物標検出方法では、例えばクラッタに埋もれた小型物標は検出できなかった。また例えば、スキャン相関処理を行ってクラッタを抑圧した後で物標を検出する方法では、高速移動する物標を検出することができなかった。この点、本実施形態のように、スキャン相関処理を行っていない信号(エコー信号)と、スキャン相関処理を行った信号(スキャン相関信号)と、を相補的に用いて物標を検出することにより、小型物標も高速物標も検出することができるようになったのである。
【0122】
制御部22は、物標状態判別部38が判別した物標状態を示すデータと、物標検出結果出力部39が出力した物標の検出結果と、を追尾処理部23に出力する。
【0123】
追尾処理部23においては、物標検出結果出力部39が出力した物標の検出結果に基づいて、物標の追尾を行う。この物標の検出結果は、「0」か「1」かによって座標(r,θ)における物標の存在の有無を示す二値化データであるので、当該二値化データに基づいて物標を追尾することになる。二値化データに基づく物標追尾処理は公知であるが、以下、簡単に説明する。
【0124】
追尾処理部23は、制御部22から入力された二値化データの平面上の連続性を評価し、平面上でまとまって「1」となっている領域を抽出して代表点の座標を得る。当該平面上でまとまって「1」となっている領域は、1つの物標からのエコーを示していると考えられるので、前記代表点の座標は当該物標エコーの位置を示している。そして、追尾処理部23は、この代表点の座標を追尾フィルタに入力することにより、追尾処理を実現する。
【0125】
追尾フィルタについて簡単に説明すると、最新の物標エコーの座標と、1ステップ前における当該物標エコーに対する追尾フィルタ処理の結果と、に基づいて、当該物標エコーの最新の平滑位置及び予測位置を算出するものである。この平滑位置と予測位置とに基づいて、例えば当該物標エコーの速度ベクトル等を求めることができる。なお、追尾フィルタには、カルマン・フィルタ等が使用される。
【0126】
通常、物標は複数存在するので、複数の物標エコーが検出され得る。従って、追尾処理を継続して行うためには、新しく検出された複数の物標エコーの中から、追尾対象の物標エコーを特定する必要がある。従来の追尾処理においては、1ステップ前の追尾フィルタ処理で算出した予測位置の近傍に、最新のステップで物標エコーが検出された場合、当該最新の物標エコーを追尾対象の物標エコーであると判断していた。この従来の方法では、追尾を行っている物標エコーか否かの判断を、当該物標エコーの位置情報のみに基づいて行っているので、物標エコーの取り違え(追尾移り)が発生する可能性が高い。即ち、従来の方法では、前記予測位置の近傍に複数の物標エコーが検出された場合、間違った物標エコーを用いて追尾フィルタ処理を行ってしまう可能性が高かった。
【0127】
そこで、本実施形態の追尾処理部23では、物標状態判別部38から入力される情報を考慮して、追尾対象の物標エコーか否かを判定するように構成されている。
【0128】
即ち、本実施形態の構成によれば、物標が存在する場合、物標の状態を「低速・小型物標」「低速・大型物標」「高速・大型物標」の3つの区分で取得できる(物標エコーの状態を3つの区分で取得できる)ので、追尾中の物標エコーの区分とは違う区分の物標エコーは、追尾対象の物標エコーか否かの判断を行う際に予め除外することができる。これにより、前記予測位置の近傍に多数の物標エコーが存在している場合であっても、正しい物標エコーを用いて追尾処理を行える可能性を高めることができるので、追尾の精度を向上させることができる。
【0129】
また、本実施形態の追尾処理部23は、物標状態判別部38から入力される情報を考慮することにより、追尾フィルタ処理の初期の段階における追尾移りを減少させている。以下、この点について説明する。
【0130】
上記のように追尾フィルタ処理によって物標エコーの予測位置を算出できるのは、当該追尾フィルタ処理を複数ステップにわたって行ったときである。即ち、追尾フィルタ処理の最初のステップ(新しく物標エコーの追尾を開始した段階)では、上記のように予測位置を算出することができない。従って、追尾フィルタ処理の最初のステップでは、「予測位置の近傍で検出された物標エコーを用いて追尾を続ける」という処理を行うことができない。
【0131】
そこで従来の追尾処理において、追尾フィルタ処理の最初のステップでは、追尾対象の物標エコーの実測位置から所定距離範囲の領域を監視し、当該領域内に次のステップで物標エコーが検出された場合に、当該新しい物標エコーを追尾対象の物標エコーであると判断していた。
【0132】
ここで、低速物標であれば、1ステップの間に大きく移動することは無いので、前記所定距離範囲の領域としては、追尾対象の物標エコーの近傍を監視すれば良い。一方、高速物標の場合、1ステップの間に大きく移動するので、前記所定距離範囲の領域としては、追尾対象の物標エコーから一定距離離れた領域を監視すれば良い。
【0133】
しかしながら、従来の追尾処理では、追尾対象の物標エコーが高速物標を示しているのか低速物標を示しているのかを、予め知る方法が無かった。従って、低速物標と高速物標の両方を追尾処理を可能にするために、追尾対象の物標エコーから近い領域も遠い領域も監視する必要があった。このため、従来の追尾処理では、無関係なエコーまで拾ってしまう可能性が高く、追尾処理の初期段階で追尾移りが発生する可能性が特に高かったのである。
【0134】
この点、本実施形態の構成によれば、追尾対象の物標エコーが低速物標を示しているのか、高速物標を示しているのか、を予め知ることができる。従って、追尾フィルタ処理の最初のステップで、物標エコーの検出を監視する領域を限定することができる。これにより、追尾フィルタ処理の初期段階における追尾精度を向上させることができる。そして、追尾フィルタによる追尾処理は、ステップを重ねるごとに徐々に精度が良くなるものであるから、初期段階における追尾精度を向上させることにより、全体的な追尾精度を向上させることができる。
【0135】
以上で説明したように、本実施形態の信号処理装置3は、スキャン相関処理部33と、物標状態判別部38と、を備える。スキャン相関処理部33は、第1の時刻に受信された第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻よりも前の第2の時刻に受信された第2エコー信号のレベルと、に基づいて、第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルを出力する。物標状態判別部38は、第1エコー信号のレベルと、第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルと、に基づいて、第1エコー信号に対応した物標の状態を判別する。
【0136】
このように、スキャン相関信号レベルと、エコー信号のレベルと、を複合的に用いることにより、物標の状態を取得することができる。例えば、移動速度が速い物標のエコーはスキャン相関処理によって抑圧されるという特徴があるので、スキャン相関処理を行った信号と行っていない信号の両方を参照することにより、当該エコーが示す物標の移動速度が速いか遅いかという情報を取得することができる。このような情報は、例えば物標の追尾処理を行う際の有用な情報として用いることができる。
【0137】
また、本実施形態の信号処理装置3において、スキャン相関処理部33は、第1の時刻に受信された第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻よりも前の第2の時刻に受信された第2エコー信号のレベルと、前記第2の時刻よりも更に前の時刻に受信された少なくとも1つのエコー信号のレベルとに基づいて、第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルを出力している。
【0138】
このように、第1の時刻よりも前の時刻におけるエコー信号を複数考慮することにより、過去の信号との相関性を好適に評価することができるので、スキャン相関処理においてより好ましい結果を得ることができる。
【0139】
また、本実施形態の信号処理装置3は、以下のように構成することができる。即ち、スキャン相関処理部33は、第1エコー信号のレベルと第2エコー信号のレベルとの加重平均を、あらかじめ定められた重み付けを用いて求め、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルとして出力する。
【0140】
このように、新しいエコー信号と過去のエコー信号との加重平均を求めることにより、時間的に安定しない信号(クラッタ等)を抑圧することができる。
【0141】
ただし、本実施形態の信号処理装置3は、以下のように構成されている。即ち、スキャン相関処理部33は、第1の時刻に受信された第1エコー信号のレベルと、第2の時刻におけるスキャン相関信号レベルと、に基づいて、第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルを求めるように構成される。なお、前記第2の時刻におけるスキャン相関信号レベルは、第2の時刻に受信された第2エコー信号のレベルと、当該第2の時刻よりも前の時刻におけるスキャン相関信号レベルと、に基づいて求められる。
【0142】
このように、過去のスキャン相関信号レベルを用いた再帰的な処理によって最新のスキャン相関信号レベルを算出するように構成することにより、過去のエコー信号を考慮したスキャン相関信号レベルを簡単に算出することができる。
【0143】
また、本実施形態の信号処理装置3は、以下のように構成されている。即ち、この信号処理装置3は、受信レベル判定部35と、スキャン相関レベル判定部37と、を備える。受信レベル判定部35は、第1エコー信号のレベルに対して所定の受信閾値を閾値とした2値処理を行い、二値化エコー信号を出力する。スキャン相関レベル判定部37は、第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルに対して所定のスキャン相関閾値を閾値とした二値化処理を行い、二値化スキャン相関信号を出力する。そして、物標状態判別部38は、二値化エコー信号と、二値化スキャン相関信号と、に基づいて、前記第1エコー信号に対応した物標の状態を判別する。
【0144】
即ち、エコー信号又はスキャン相関信号が閾値以上か否かに基づいて(二値化の結果に基づいて)、物標の有無を判定することができる。そして、二値化エコー信号に基づいて物標の有無を検出する場合と、二値化スキャン相関信号に基づいて物標の有無を検出する場合と、では、どのような状態の物標が検出され易いか(或いは検出されにくいか)が異なる。従って、上記のように二値化エコー信号と二値化スキャン相関信号とを相補的に考慮することで、対応する物標の状態を推定することができる。
【0145】
また、本実施形態の信号処理装置3は、以下のように構成されている。即ち、この信号処理装置3は、受信閾値決定部34と、スキャン相関閾値決定部36と、を備える。受信閾値決定部34は、第1の時刻よりも前の時刻に受信された過去のエコー信号のレベルに基づいて前記受信閾値を決定する。スキャン相関閾値決定部36は、第1の時刻よりも前の時刻にスキャン相関処理部33から出力された過去のスキャン相関信号レベルに基づいて前記スキャン相関閾値を決定する。
【0146】
即ち、適切に二値化処理を行うためには、適切な閾値を設定する必要がある。この点、上記のように過去の信号レベルに基づいて閾値を決定することにより、全体的な信号レベルが変動した場合であっても適切に二値化処理を行うことができる。
【0147】
また、本実施形態の信号処理装置3においては、一般的に、前記受信閾値は、前記スキャン相関閾値よりも大きくなる。
【0148】
即ち、スキャン相関処理を行うことで、エコー信号に含まれている不要信号(時間的に不安定な信号)の信号レベルが抑圧されるので、閾値を小さくしても適切に二値化を行うことができる。
【0149】
また、本実施形態の信号処理装置3において、物標状態判別部38は、第1エコー信号に対応する物標の状態を、前記二値化エコー信号と前記二値化スキャン相関信号との組み合わせに基づく4通りの状態のうち何れかに対応させている。
【0150】
即ち、二値化エコー信号は、第1エコー信号のレベルが受信閾値以上か否かの2通りの値をとり得る。また、二値化スキャン相関信号は、第1時刻におけるスキャン相関信号レベルがスキャン相関閾値以上か否かの2通りの値をとり得る。従って、上記のように、二値化エコー信号と前記二値化スキャン相関信号とを組み合わせることで、4通りの判別結果を得ることができる。
【0151】
また、本実施形態の信号処理装置3は、以下のように構成されている。即ち、物標状態判別部38は、二値化エコー信号が「0」、かつ、二値化スキャン相関信号が「0」である場合、第1エコー信号に対応した位置には物標無しと判別する。また物標状態判別部38は、二値化エコー信号が「1」、かつ、二値化スキャン相関信号が「0」である場合、第1エコー信号に対応した物標は大型の高速物標であると判別する。また、物標状態判別部38は、二値化エコー信号が「0」、かつ、二値化スキャン相関信号が「1」である場合、第1エコー信号に対応した物標は小型の低速物標であると判別する。また、物標状態判別部38は、二値化エコー信号が「1」、かつ、二値化スキャン相関信号が「1」である場合、前記第1エコー信号に対応した物標は大型の低速物標であると判別する。
【0152】
即ち、エコー信号のレベルがある程度大きいということは、ある程度大きな物標が存在するということを示している。従って、二値化エコー信号が示す値(第1エコー信号のレベルが受信閾値以上であるか否か)により、当該第1エコー信号に対応した位置に大型の物標が存在するか否かを判別することができる。一方、スキャン相関処理を行うと高速移動する物標からのエコーは抑圧されてしまう。これを逆に言うと、スキャン相関信号レベルが抑圧されていないということは、低速の物標が存在するということを示している。従って、二値化スキャン相関信号の値(スキャン相関信号レベルがスキャン相関閾値以上であるか否か)により、低速の物標が存在するか否かを判定することができる。そして、上記のように、二値化エコー信号と二値化スキャン相関信号とを複合的に用いることにより、物標の有無を判別できるとともに、物標の状態を「高速・大型物標」、「低速・小型物標」、「大型・低速物標」の3つの区分で取得することができる。
【0153】
また、本実施形態の信号処理装置3は、前記二値化エコー信号と前記二値化スキャン相関信号との論理和を、物標の有無を検出した結果として出力する物標検出結果出力部39を備える。
【0154】
即ち、前述のように、二値化エコー信号の値に基づいて、大型の物標が存在するか否かを判別することができる。また、二値化スキャン相関信号に基づいて、低速の物標が存在するか否かを判別することができる。従って、両者の論理和を物標の検出結果とすることで、事実上全ての物標を検出することができる。
【0155】
また、本実施形態の信号処理装置3は、以下のように構成されている。即ち、この信号処理装置3は、物標の追尾処理を行う追尾処理部23を備える。当該追尾処理部23は、物標状態判別部38が取得した情報を考慮して、前記追尾処理を行う。
【0156】
これにより、より正確な追尾処理を行うことができる。
【0157】
また、本実施形態のレーダ装置1は、回転しながら電磁波を放射し、物標からの反射によるエコー信号を受信するレーダアンテナ11と、を備える。
【0158】
このレーダ装置1では、前記信号処理装置3によって、物標の状態を判別できるので、当該物標の状態に関する情報を、例えば物標の追尾処理を行う際に参照することにより、当該追尾処理の精度を向上させることができる。
【0159】
前記のレーダ装置において、前記第1エコー信号と前記第2エコー信号は、自装置から見て同じ方位、同じ方角の座標(r,θ)から受信されたエコー信号である。
【0160】
このように構成することにより、適切にスキャン相関処理を行うことができる。
【0161】
また、本実施形態のエコー信号処理方法は、スキャン相関処理ステップと、物標状態判別ステップと、を含む。前記スキャン相関処理ステップでは、第1の時刻に受信された第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻よりも前の第2の時刻に受信された第2エコー信号のレベルと、に基づいて、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルを出力する。前記物標状態判別ステップでは、前記第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルと、に基づいて、前記第1エコー信号に対応した物標の状態を判別する。
【0162】
また、本実施形態のエコー信号処理プログラムは、上記のエコー信号処理方法の各ステップを信号処理装置3に実行させるためのプログラムである。
【0163】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0164】
本発明の構成は、舶用レーダに限らず、他の用途のレーダ装置にも適用することができる。また、レーダ装置に限らず、例えばスキャニングソナーにも適用することができる。
【0165】
上記実施形態では、制御部22は、CPU、RAM及びROM等からなるハードウェアと、前記ROMに記憶された信号処理プログラムからなるソフトウェアと、から構成されるとして説明した。これに代えて、大型物標検出部31、低速物標検出部32、スキャン相関処理部33、物標状態判別部38、物標検出結果出力部39の一部又は全てを、専用のハードウェアで実現しても良い。
【0166】
受信閾値とスキャン相関閾値は不要信号レベルに応じて決定する構成としたが、固定の閾値を用いても良い。これによれば、受信閾値決定部34及びスキャン相関閾値決定部36を省略することができる。ただし、クラッタ等の不要信号の信号レベルは気象条件等によって異なる。従って、適切な処理を行うためには、上記実施形態のように不要信号の信号レベルに応じて閾値を決定することが好ましい。
【0167】
また、大型物標検出部31及び低速物標検出部32では、物標を検出するための閾値はそれぞれ1つとしたが、複数の閾値を用いて物標を検出しても良い。即ち、複数段階で物標を検出しても良い。例えば、大型物標検出部31で複数の閾値を用いて物標を検出することにより、「大型物標」「中型物標」「小型物標」のように、2以上の区分で物標を検出することができる。これにより、物標状態判別部38においては、より細かい物標の状態を取得することができる。
【0168】
また、閾値による物標の検出結果に基づいて物標の状態を取得する構成に限らない。例えば、スキャン相関処理を行っていないエコー信号と、スキャン相関信号と、の大小比較を行い、両者の信号レベルがほぼ同じ場合、スキャン相関処理で信号レベルが抑圧されていないということであるから、低速物標であると判定することができる。
【0169】
スキャン相関処理は、上記の巡回式デジタルフィルタ処理の他、例えばFIRフィルタ等を用いて実現することもできる。
【0170】
物標状態判別部38で判別した物標の状態は追尾処理部23で用いる構成としたが、このような物標の状態に関する情報は、追尾処理以外の様々な用途に利用することができる。
【符号の説明】
【0171】
1 レーダ装置
2 アンテナユニット
3 信号処理装置(エコー信号処理装置)
11 レーダアンテナ
23 追尾処理部
31 大型物標検出部
32 低速物標検出部
33 スキャン相関処理部
38 物標状態判別部
39 物標検出結果出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の時刻に受信された第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻よりも前の第2の時刻に受信された第2エコー信号のレベルと、に基づいて、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルを出力するスキャン相関処理部と、
前記第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルと、に基づいて、前記第1エコー信号に対応した物標の状態を判別する物標状態判別部と、
を備えることを特徴とするエコー信号処理装置。
【請求項2】
第1の時刻に受信された第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻よりも前の第2の時刻に受信された第2エコー信号のレベルと、前記第2の時刻よりも更に前の時刻に受信された少なくとも1つのエコー信号のレベルと、に基づいて、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルを出力するスキャン相関処理部と、
前記第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルと、に基づいて、前記第1エコー信号に対応した物標の状態を判別する物標状態判別部と、
を備えることを特徴とするエコー信号処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエコー信号処理装置であって、
前記スキャン相関処理部は、前記第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻よりも前の時刻に受信されたエコー信号のレベルと、の加重平均を、あらかじめ定められた重み付けを用いて求め、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルとして出力することを特徴とするエコー信号処理装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のエコー信号処理装置であって、
前記スキャン相関処理部は、
前記第1の時刻に受信された前記第1エコー信号のレベルと、
前記第2の時刻におけるスキャン相関信号レベルと、
に基づいて、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルを求めるように構成され、
前記第2の時刻におけるスキャン相関信号レベルは、
当該第2の時刻に受信された第2エコー信号のレベルと、
当該第2の時刻よりも前の時刻におけるスキャン相関信号レベルと、
に基づいて求められることを特徴とするエコー信号処理装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載のエコー信号処理装置であって、
前記第1エコー信号のレベルに対して所定の受信閾値を閾値とした2値処理を行い、二値化エコー信号を出力する受信レベル判定部と、
前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルに対して所定のスキャン相関閾値を閾値とした二値化処理を行い、二値化スキャン相関信号を出力するスキャン相関レベル判定部と、
を備え、
前記物標状態判別部は、前記二値化エコー信号と、前記二値化スキャン相関信号と、に基づいて、前記第1エコー信号に対応した物標の状態を判別することを特徴とするエコー信号処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載のエコー信号処理装置であって、
前記第1の時刻よりも前の時刻に受信された過去のエコー信号のレベルに基づいて前記受信閾値を決定する受信閾値決定部と、
前記第1の時刻よりも前の時刻にスキャン相関処理部から出力された過去のスキャン相関信号レベルに基づいて前記スキャン相関閾値を決定するスキャン相関閾値決定部と、
を備えていることを特徴とするエコー信号処理装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のエコー信号処理装置であって、
前記受信閾値は、前記スキャン相関閾値よりも大きいことを特徴とするエコー信号処理装置。
【請求項8】
請求項5から7までの何れか一項に記載のエコー信号処理装置であって、
前記物標状態判別部は、前記第1エコー信号に対応する物標の状態を、前記二値化エコー信号と前記二値化スキャン相関信号との組み合わせに基づく4通りの状態のうち何れかに対応させることを特徴とするエコー信号処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載のエコー信号処理装置であって、
前記物標状態判別部は、
前記二値化エコー信号が「前記第1エコー信号のレベルが前記受信閾値未満である」ことを示し、かつ、前記二値化スキャン相関信号が「前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルが前記スキャン相関閾値未満である」ことを示している場合、前記第1エコー信号に対応した位置には物標無しと判別し、
前記二値化エコー信号が「前記第1エコー信号のレベルが前記受信閾値以上である」ことを示し、かつ、前記二値化スキャン相関信号が「前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルが前記スキャン相関閾値未満である」ことを示している場合、前記第1エコー信号に対応した物標は大型の高速物標であると判別し、
前記二値化エコー信号が「前記第1エコー信号のレベルが前記受信閾値未満である」ことを示し、かつ、前記二値化スキャン相関信号が「前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルが前記スキャン相関閾値以上である」ことを示している場合、前記第1エコー信号に対応した物標は小型の低速物標であると判別し、
前記二値化エコー信号が「前記第1エコー信号のレベルが前記受信閾値以上である」ことを示し、かつ、前記二値化スキャン相関信号が「前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルが前記スキャン相関閾値以上である」ことを示している場合、前記第1エコー信号に対応した物標は大型の低速物標であると判別することを特徴とするエコー信号処理装置。
【請求項10】
請求項5から9までの何れか一項に記載のエコー信号処理装置であって、
前記二値化エコー信号と前記二値化スキャン相関信号との論理和を、前記第1エコー信号に対応した位置における物標の有無を検出した結果として出力する物標検出結果出力部を備えることを特徴とするエコー信号処理装置。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか一項に記載のエコー信号処理装置であって、
物標の追尾処理を行う追尾処理部を備え、
当該追尾処理部は、前記物標状態判別部が検出した情報を考慮して、前記追尾処理を行うことを特徴とするエコー信号処理装置。
【請求項12】
請求項1から11までの何れか一項に記載のエコー信号処理装置と、
回転しながら電磁波を放射し、物標からの反射によるエコー信号を受信するアンテナと、
を備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項13】
請求項12に記載のレーダ装置であって、
前記第1エコー信号と前記第2エコー信号は、同じ位置から受信されたエコー信号であることを特徴とするレーダ装置。
【請求項14】
第1の時刻に受信された第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻よりも前の第2の時刻に受信された第2エコー信号のレベルと、に基づいて、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルを出力するスキャン相関処理ステップと、
前記第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルと、に基づいて、前記第1エコー信号に対応した物標の状態を判別する物標状態判別ステップと、
を含む処理を、信号処理装置に実行させることを特徴とするエコー信号処理プログラム。
【請求項15】
第1の時刻に受信された第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻よりも前の第2の時刻に受信された第2エコー信号のレベルと、前記第2の時刻よりも更に前の時刻に受信された少なくとも1つのエコー信号のレベルと、に基づいて、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルを出力するスキャン相関処理ステップと、
前記第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルと、に基づいて、前記第1エコー信号に対応した物標の状態を判別する物標状態判別ステップと、
を含む処理を、信号処理装置に実行させることを特徴とするエコー信号処理プログラム。
【請求項16】
請求項14又は15に記載のエコー信号処理プログラムであって、
前記スキャン相関処理ステップにおいては、前記第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻よりも前の時刻に受信されたエコー信号のレベルと、の加重平均を、あらかじめ定められた重み付けを用いて求め、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルとして出力することを特徴とするエコー信号処理プログラム。
【請求項17】
請求項14又は15に記載のエコー信号処理プログラムであって、
前記スキャン相関処理ステップにおいては、
前記第1の時刻に受信された前記第1エコー信号のレベルと、
前記第2の時刻におけるスキャン相関信号レベルと、
に基づいて、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルを求め、
前記第2の時刻におけるスキャン相関信号レベルは、
当該第2の時刻に受信された第2エコー信号のレベルと、
当該第2の時刻よりも前の時刻におけるスキャン相関信号レベルと、
に基づいて求められることを特徴とするエコー信号処理プログラム。
【請求項18】
第1の時刻に受信された第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻よりも前の第2の時刻に受信された第2エコー信号のレベルと、に基づいて、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルを出力するスキャン相関処理ステップと、
前記第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルと、に基づいて、前記第1エコー信号に対応した物標の状態を判別する物標状態判別ステップと、
を含むことを特徴とするエコー信号処理方法。
【請求項19】
第1の時刻に受信された第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻よりも前の第2の時刻に受信された第2エコー信号のレベルと、前記第2の時刻よりも更に前の時刻に受信された少なくとも1つのエコー信号のレベルと、に基づいて、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルを出力するスキャン相関処理ステップと、
前記第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルと、に基づいて、前記第1エコー信号に対応した物標の状態を判別する物標状態判別ステップと、
を含むことを特徴とするエコー信号処理方法。
【請求項20】
請求項18又は19に記載のエコー信号処理方法であって、
前記スキャン相関処理ステップにおいては、前記第1エコー信号のレベルと、前記第1の時刻よりも前の時刻に受信されたエコー信号のレベルと、の加重平均を、あらかじめ定められた重み付けを用いて求め、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルとして出力することを特徴とするエコー信号処理方法。
【請求項21】
請求項18又は19に記載のエコー信号処理方法であって、
前記スキャン相関処理ステップにおいては、
前記第1の時刻に受信された前記第1エコー信号のレベルと、
前記第2の時刻におけるスキャン相関信号レベルと、
に基づいて、前記第1の時刻におけるスキャン相関信号レベルを求め、
前記第2の時刻におけるスキャン相関信号レベルは、
当該第2の時刻に受信された第2エコー信号のレベルと、
当該第2の時刻よりも前の時刻におけるスキャン相関信号レベルと、
に基づいて求められることを特徴とするエコー信号処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−242253(P2011−242253A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114610(P2010−114610)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】