説明

エッジ位置検出装置

【課題】帯状体の走行を継続させながら省スペースでメンテナンスを行うことができるエッジ位置検出装置を提供する。
【解決手段】帯状体10の一方の面側に製造ラインに存在しない色を着色したカラー板2を配置し、帯状体10を挟んでカラー板2と対向配置したカラーCCDカメラ3によって、カラー板2と帯状体10のエッジ部とを撮像する。そして、カラーCCDカメラ3で撮像したカラー画像の各画素の色情報と、カラー板2の着色面と同一色の色情報との類似度をそれぞれ算出し、帯状体10の幅方向で上記類似度が低下する位置を帯状体10のエッジ位置として検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続的に走行する帯状体のエッジ位置を検出するエッジ位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
帯状体のエッジ位置を検出する方法として、例えば特許文献1に記載の技術がある。この技術は、帯状体のエッジ部に光を投射する投光器と、帯状体のエッジ部を挟んで投光器に対向配置され、当該投光器からの光を受光する受光器とを用い、受光器で受光した受光量に応じて帯状体のエッジ位置を検出するものである。
図3は、従来の帯状体のエッジ位置検出装置の概略構成を示す図である。
この図3に示すように、従来のエッジ位置検出装置101は、投光器102と、受光器103と、演算部104とを備える。受光器103は、帯状体10の幅方向(帯状体10の走行方向とほぼ直交する方向)に配列した複数の受光素子を有し、各受光素子の受光量が演算部104に入力される。
【0003】
演算部104は、図4に示すように、帯状体10の幅方向での各受光素子から得られた受光量の変化に基づいて、帯状体10のエッジ位置を検出する。例えば、受光器103で得られる受光量の幅方向合計値や、幅方向で受光量が変化する位置から、帯状体10のエッジ位置を求める。すなわち、このエッジ位置検出装置101は、帯状体10により遮光される範囲を求めることで、帯状体10のエッジ位置を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−340781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のエッジ位置検出装置にあっては、投光器と受光器とを帯状体を挟んで対向配置しているため、帯状体の走行を継続しながら投光器や受光器のメンテナンスを行うためには、帯状体の両側に、投光器や受光器に対するメンテナンススペースをそれぞれ設けなければならない。そのため、エッジ位置検出装置の設置スペースが多く必要となる。
【0006】
ところが、設置制約上、図3に示すような位置に投光器102と受光器103とを配置した場合、一般に受光器103側のメンテナンススペースは確保できるが、投光器102側のメンテナンススペースは確保できない場合が多い。このように、投光器102側のメンテナンススペースが確保できない場合、投光器102の異常発生時には、メンテナンスのためにラインを停止させなければならず、生産性が低下する。
そこで、本発明は、帯状体の走行を継続させながら省スペースでメンテナンスを行うことができるエッジ位置検出装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るエッジ位置検出装置は、帯状体のエッジ位置を検出するエッジ位置検出装置であって、前記帯状体の色とは異なる色が着色された着色面を前記帯状体の一方の面に対向させると共に、前記着色面の一部が前記帯状体のエッジ部よりも幅方向外側に位置するように配置したカラー板と、前記帯状体を挟んで前記カラー板に対向する側に配置し、前記帯状体のエッジ部と当該エッジ部よりも幅方向外側に位置する前記カラー板とを含む領域のカラー画像を撮像するカラー撮像手段と、前記カラー撮像手段で取得したカラー画像の各画素の色情報と前記カラー板の着色面の色情報との類似度に基づいて、前記帯状体のエッジ位置を検出する演算手段と、を備えることを特徴としている。
【0008】
このように、帯状体の一方の面側にメンテナンスが不要なカラー板を配置し、他方の面側にメンテナンスが必要となり得るカラー撮像手段を設けるので、メンテナンススペースを帯状体の片側(カラー撮像手段側)のみに確保すればよい。したがって、帯状体を挟んで投光器と受光器とを対向配置するエッジ位置検出装置のように、帯状体の両側にメンテナンススペースを確保する必要がなくなり、省スペース化を図ることができる。
【0009】
さらに、設備制約上、帯状体の片側にしかメンテナンススペースを確保できない場合であっても、メンテナンススペースが確保可能な側にカラー撮像手段を配置することで、帯状体走行中のカラー撮像手段へのアクセスが可能となる。したがって、カラー撮像手段に異常が発生した場合には、帯状体の走行を継続させながらカラー撮像手段のメンテナンスが可能となる。このように、ラインを停止させずにカラー撮像手段の復旧作業を行うことができるので、生産性の低下を軽減することができる。
【0010】
また、上記において、前記演算手段は、前記カラー画像上で前記帯状体の幅方向に対応する方向に配列された各画素の色情報と前記カラー板の着色面の色情報との類似度が、前記カラー板の着色面の色情報同士の類似度を示す最大値から、前記帯状体の表面の色情報と前記カラー板の着色面の色情報との類似度を示す最小値へ変化する位置を検出し、検出した位置を前記帯状体のエッジ位置に対応する位置として検出することを特徴としている。
このように、カラー画像の各画素の色情報とカラー板の着色面の色情報との類似度が、帯状体の幅方向で変化することを利用するので、帯状体のエッジ位置を適切に検出することができる。
【0011】
さらに、上記において、前記カラー撮像手段は、カラーCCDカメラであることを特徴としている。
これにより、カラー板と帯状体のエッジ部とが含まれる領域のカラー画像を精度良く撮像することができ、帯状体のエッジ位置を適切に検出することができる。
また、上記において、前記カラー撮像手段は、カラーCMOSカメラであることを特徴としている。
これにより、比較的安価な構成でカラー板と帯状体のエッジ部とが含まれる領域のカラー画像を精度良く撮像することができ、帯状体のエッジ位置を適切に検出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、メンテナンスが必要となり得る部品を帯状体の片側のみに配置するので、メンテナンススペースを帯状体の片側のみに設けるだけでよく、装置の省スペース化が図れる。また、片側にしかメンテナンススペースを確保することができない場合でも、メンテナンススペースを確保可能な側にメンテナンスが必要となり得る部品を配置することで、帯状体走行中にメンテナンスが可能となり、生産性低下を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態における帯状体のエッジ位置検出装置の概略構成を示す図である。
【図2】本実施形態におけるエッジ位置検出方法を説明する図である。
【図3】従来の帯状体のエッジ位置検出装置の概略構成を示す図である。
【図4】従来のエッジ位置検出方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における帯状体のエッジ位置検出装置の概略構成を示す図である。
図中、符号1は、製造ライン上を走行する帯状体(鋼板)10の蛇行制御等を行うために、帯状体10のエッジ位置を検出するエッジ位置検出装置である。このエッジ位置検出装置1は、帯状体10の色とは異なる色が着色された着色面を有するカラー板2と、カラー画像を撮像可能なカラーCCDカメラ(カラー撮像手段)3と、カラーCCDカメラ3で撮像したカラー画像を処理し、帯状体10の幅方向のエッジ位置を検出する演算部(演算手段)4とを備える。
【0015】
カラー板2は、走行する帯状体10の一方の側(ここでは裏面側)に、着色面を帯状体10側に向けて配置する。このとき、カラー板2の一部が、帯状体10のエッジ部よりも幅方向外側に位置するように配置する。なお、カラー板2の着色面の色は、帯状体10の表面の色とは異なる色であれば適宜選択可能であるが、製造ライン内には存在しない色であることが好ましい。
カラーCCDカメラ3は、帯状体10を挟んでカラー板2に対向配置し、走行する帯状体10のエッジ部と、当該エッジ部よりも幅方向外側に位置するカラー板2とを含む領域のカラー画像を撮像する。
【0016】
このカラーCCDカメラ3は、カラー画像の複数のサブ画素に対応する複数の受光素子(CCD)を有する。各受光素子には赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のカラーフィルタが配置されており、これによりRGB別の色検出が可能となっている。ここでは、3色のサブ画素(R,G,B)が互いに隣接して配列されるように各受光素子が配列されており、これら3色のサブ画素(R,G,B)で、カラー画像の1つのドットに相当する1画素を構成する。
【0017】
カラーCCDカメラ3は、複数の画素の配列方向が帯状体10の幅方向に一致するように、各受光素子を配置している。そして、カラーCCDカメラ3で撮像したカラー画像は、演算部4に入力される。
演算部4は、例えば製造ラインから離れた制御室等に設置されており、カラーCCDカメラ3から入力されたカラー画像データに基づいて、帯状体10のエッジ位置を検出する。先ず、演算部4は、カラー画像の画素毎に色情報を求める。ここで、色情報とは、RGB色空間を3次元ベクトルで表したRGBベクトルである。
【0018】
次に、画素毎に求めた色情報と、カラー板2の着色面と同一色を表す色情報との類似度として、RGBベクトルのなす角cosθを求める。
cosθ=a・b/|a||b| ………(1)
ここで、aは各画素の色情報であり、a=(Ra,Ga,Ba)である。また、bはカラー板2の着色面に相当する色情報であり、b=(Rb,Gb,Bb)である。すなわち、a・b=Ra×Rb+Ga×Gb+Ba×Bbである。
【0019】
そして、演算部4は、画素毎に求めた類似度cosθに基づいて、帯状体10のエッジ位置を検出する。以下、帯状体10のエッジ位置検出方法について、図2を参照しながら説明する。
図2は、帯状体10の幅方向に配列された各画素の類似度cosθの変化を示している。帯状体10の幅方向外側の領域では、カラーCCDカメラ3の受光素子はカラー板2の着色面を撮像するため、この領域に配置された画素の色情報から求めた類似度cosθは、最大値γmaxとなる。この最大値γmaxは、カラー板2の着色面と同一色を表す色情報同士の類似度を示す値に相当する。
【0020】
一方、帯状体10の幅方向内側の領域では、カラーCCDカメラ3の受光素子は帯状体10の表面を撮像するため、この領域に配置された画素の色情報から求めた類似度cosθは、最小値γminとなる。この最小値γminは、帯状体10の表面と同一色を表す色情報と、カラー板2の着色面と同一色を表す色情報との類似度を示す値に相当する。
演算部4は、各画素の色情報から求めたカラー板2の着色面の色情報との類似度cosθが、帯状体10の幅方向で、最大値γmaxから最小値γminへ向けて低下する位置を検出し、その位置を帯状体10のエッジ位置に対応する位置として検出する。
【0021】
例えば、カラー画像の各画素のうち、類似度cosθが、最大値γmaxと最小値γminとの間の所定値となる画素を検出し、検出した画素の位置を帯状体10のエッジ位置に対応する位置とする。ここで、上記所定値は、最大値γmaxと最小値γminとの中間値(γmax−γmin)/2+γminとしてもよいし、最大値γmaxと最小値γminとの間の任意の値としてもよい。
【0022】
このように、エッジ位置検出装置1は、カラー板2の着色面と走行する帯状体10のエッジ部とを1つのカラー画像として撮像し、撮像したカラー画像の各画素の色情報について、カラー板2の着色面と同一色を表す色情報との類似度cosθを算出する。そして、帯状体10の幅方向で類似度cosθが低下する位置を捉え、その位置を帯状体10のエッジ位置として検出する。したがって、帯状体10のエッジ位置を適切に検出することができる。
【0023】
このとき、カラー板2の着色面の色を帯状体10の表面の色とは異なる色(ライン内に存在しない色)に設定するので、カラー板2の着色面と同一色を表す色情報と、帯状体10の表面の色情報との類似度cosθを比較的小さくすることができる。これにより、類似度cosθの最大値γmaxと最小値γminとの差を大きくとることができるので、帯状体10の幅方向で類似度cosθが低下する位置、即ち帯状体10のエッジ位置を精度良く検出することができる。
【0024】
ところで、帯状体10のエッジ位置を検出するエッジ位置検出装置として、図3に示すように、投光器102と受光器103とを走行する帯状体10のエッジ部を挟んで対向配置し、受光器103で得られる受光量の帯状体10の幅方向での変化に基づいて帯状体10のエッジ位置を検出するエッジ位置検出装置101が広く用いられている。しかしながら、このようなエッジ位置検出装置101では、メンテナンスが必要となり得る投光器102と受光器103とが、帯状体10を挟んで対向配置されているため、メンテナンススペースを帯状体10の両側に設ける必要がある。
【0025】
これに対して、本実施形態では、製造ライン内に設置したエッジ位置検出装置1の部品のうち、メンテナンスが必要なものは動作部品を含むカラーCCDカメラ3のみである。すなわち、メンテナンスが必要となり得る部品は帯状体10の片側のみに配置されるため、メンテナンススペースは帯状体10の片側のみに設ければよい。このように、従来、帯状体10に対向する両側に確保していたメンテナンススペースを、片側のみに確保するだけでよいため、省スペース化が図れる。
【0026】
また、図3に示すように、鉛直上昇した帯状体10が進行方向を反転させて下降するような位置でエッジ位置検出を行う場合、帯状体10の表面側にはメンテナンススペースを確保できるが、帯状体10の裏面側にメンテナンススペースを確保することはできない。すなわち、図3に示すエッジ位置検出装置101にあっては、投光器102側にメンテナンススペースを確保することができない。
【0027】
したがって、この場合、投光器102に異常が発生すると、製造ラインを停止して投光器102のメンテナンスを行うか、エッジ位置検出装置101を不使用状態で操業しなければならない。ところが、製造ラインを停止してメンテナンスを行うと、生産性が大幅に低下してしまう。また、エッジ位置検出装置101を不使用状態で操業する場合、帯状体10の速度低下が必要であるなどの操業制約が発生する期間が長期に亘って発生してしまうため、やはり生産性が低下する。さらに、エッジ位置検出装置101が機能しないため、帯状体10の蛇行制御等を停止しなければならない。
【0028】
これに対して、本実施形態におけるエッジ位置検出装置1は、メンテナンスが必要となり得る部品(カラーCCDカメラ3)を帯状体10の片側のみに配置する構成である。そのため、メンテナンススペースを帯状体10の片側のみにしか確保できない場合でも、メンテナンススペースを確保可能な帯状体10の表面側にカラーCCDカメラ3を配置することで、帯状体10の走行中でもカラーCCDカメラ3にアクセス可能となる。
【0029】
したがって、カラーCCDカメラ3に異常が発生した場合には、ラインを停止させることなくカラーCCDカメラ3のメンテナンスを行うことができる。その結果、生産性の低下を軽減することができる。また、エッジ位置検出装置1を不使用とする期間を、カラーCCDカメラ3に異常が発生してから復旧作業が完了するまでの短期間とすることができ、図3に示すエッジ位置検出装置101と比較して、上記操業制約が発生する期間の削減が図れる。
なお、上記実施形態においては、カラー撮像手段としてカラーCCDカメラを適用する場合について説明したが、カラー画像が撮像可能であれば、これに限定されるものではない。例えば、カラー撮像手段としてカラーCMOSカメラを適用しても同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0030】
1…エッジ位置検出装置、2…カラー板、3…カラーCCDカメラ(カラー撮像手段)、4…演算部(演算手段)、10…帯状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状体のエッジ位置を検出するエッジ位置検出装置であって、
前記帯状体の色とは異なる色が着色された着色面を前記帯状体の一方の面に対向させると共に、前記着色面の一部が前記帯状体のエッジ部よりも幅方向外側に位置するように配置したカラー板と、
前記帯状体を挟んで前記カラー板に対向する側に配置し、前記帯状体のエッジ部と当該エッジ部よりも幅方向外側に位置する前記カラー板とを含む領域のカラー画像を撮像するカラー撮像手段と、
前記カラー撮像手段で取得したカラー画像の各画素の色情報と前記カラー板の着色面の色情報との類似度に基づいて、前記帯状体のエッジ位置を検出する演算手段と、を備えることを特徴とするエッジ位置検出装置。
【請求項2】
前記演算手段は、前記カラー画像上で前記帯状体の幅方向に対応する方向に配列された各画素の色情報と前記カラー板の着色面の色情報との類似度が、前記カラー板の着色面の色情報同士の類似度を示す最大値から、前記帯状体の表面の色情報と前記カラー板の着色面の色情報との類似度を示す最小値へ変化する位置を検出し、検出した位置を前記帯状体のエッジ位置に対応する位置として検出することを特徴とする請求項1に記載のエッジ位置検出装置。
【請求項3】
前記カラー撮像手段は、カラーCCDカメラであることを特徴とする請求項1又は2に記載のエッジ位置検出装置。
【請求項4】
前記カラー撮像手段は、カラーCMOSカメラであることを特徴とする請求項1又は2に記載のエッジ位置検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−88355(P2013−88355A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230953(P2011−230953)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】