説明

エッチング方法及びエッチング装置

【課題】銅を、異方的にエッチングすることが可能なエッチング方法を提供すること。
【解決手段】表面にマスク材102が形成された銅膜101の周囲を、有機化合物ガス22雰囲気とする工程と、有機化合物ガス22雰囲気中で、銅膜101に、マスク材102をマスクに用いて酸素イオン6を照射し、銅膜101を異方性エッチングする工程と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エッチング方法及びエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、半導体集積回路装置の動作の高速化が進展している。動作の高速化は、配線材料の低抵抗化などにより実現される。このため、配線材料は、従来のアルミニウムに代わり、より低抵抗な銅が用いられるようになってきている。
【0003】
しかし、銅の加工には、既存のドライエッチング技術の転用が難しい。これは、エッチングの際に形成される銅の化合物は総じて蒸気圧が低く、蒸発し難いことに由来する。Arスパッタ法、ClガスRIE法などが試されたが、チャンバ内壁への銅の付着などの問題により実用化に至っていない。このため、銅を用いた配線は、もっぱらダマシン法を用いて形成される。ダマシン法は、あらかじめ配線パターンに応じた溝を層間絶縁膜に形成し、この溝を埋めるように銅薄膜を形成し、CMP法を用いて銅薄膜を化学的機械研磨し、溝の内部のみに銅を残す技術である。
【0004】
また、銅を、塩化第二鉄水溶液を用いてウェットエッチングする、という技術もあるが、これもまた、等方的なエッチングである。
【0005】
ところで、特許文献1には、有機化合物ガスを用いたドライクリーニング方法が記載されている。この特許文献1には、銅の表面に形成された薄い酸化銅を、有機化合物ガスを用いてエッチングする、という技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−43975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、有機化合物ガス、例えば、蟻酸ガス(HCOOH)を用いて、酸化銅をエッチングする。反応式は以下の通りである。
【0008】
CuO + 2HCOOH → 2Cu(HCOO) + H
・Cu(HCOO)は揮発性
しかし、特許文献1は、銅の表面に形成された酸化銅をエッチングする、という技術である。エッチングの原理も、薄い酸化銅の全体を等方的にエッチングするものである。
【0009】
銅を異方的にエッチングする、という技術は、まだ確立していない。
【0010】
この発明は、上記事情に鑑みて為されたもので、銅を、異方的にエッチングすることが可能なエッチング方法及びエッチング装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の第1の態様に係るエッチング方法は、表面にマスク材が形成された銅膜の周囲を、有機化合物ガス雰囲気とする工程と、前記有機化合物ガス雰囲気中で、前記銅膜に、前記マスク材をマスクに用いて酸素イオンを照射し、前記銅膜を異方性エッチングする工程と、を具備する。
【0012】
この発明の第2の態様に係るエッチング装置は、酸素イオンを発生させるイオン源室と、前記発生された酸素イオンを加速させる加速室と、銅膜と前記銅膜上に形成されたマスク材とを備えた被処理体が載置され、この被処理体に前記加速された酸素イオンを照射する照射室と、前記照射室に、有機化合物ガスを供給する有機化合物ガス供給源と、を具備し、前記有機化合物ガスを前記照射室に供給しつつ、前記被処理体に前記加速された酸素イオンを照射するように構成されている。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、銅を、異方的にエッチングすることが可能なエッチング方法及びエッチング装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の一実施形態に係るエッチング装置の一例を示す断面図
【図2A】半導体ウエハの一部を拡大して示した断面図
【図2B】半導体ウエハの一部を拡大して示した断面図
【図2C】半導体ウエハの一部を拡大して示した断面図
【図2D】半導体ウエハの一部を拡大して示した断面図
【図2E】半導体ウエハの一部を拡大して示した断面図
【図2F】半導体ウエハの一部を拡大して示した断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。なお、全図にわたり、共通の部分には共通の参照符号を付す。
【0016】
(装置構成)
図1は、この発明の一実施形態に係るエッチング装置の一例を示す断面図である。
【0017】
図1に示すように、エッチング装置1は、被処理体上に形成された銅膜を、異方的にエッチングする装置であり、イオン源室2、加速室3、照射室4を備えている。エッチング処理が施される銅膜を備えた被処理体は、照射室4に配置され、載置台を兼ねているステージヒーター5の上に載置される。被処理体の一例は、半導体ウエハWである。
【0018】
イオン源室2は、酸素イオン6を発生させる。酸素イオン6は、酸素ガス供給源7から酸素ガス8を供給できる容器、例えば、石英管9に酸素ガス8を供給し、酸素ガス8が供給された石英管9にRF電源10を用いて交流電界をかけることで供給された酸素をO、O2+、O、O2+などに電離することで発生される。RF電源10は、接地電位に対して加速電圧電源11により正の電位にされる。酸素イオン6は、RF電源10よりも低い電位に制御された引き出し電極12により石英管9から引き出され、小さい穴13を有した窓14を介して加速室3へ注入される。
【0019】
酸素イオン6の発生方式は、上記の他、酸素ガス8を供給できる容器に、タングステンに酸化物をコーティングしたフィラメント、もしくは反応性の少ないレニウム線フィラメントに電流を流し、そこに酸素ガス8を供給し、フィラメント表面で電離させる方式でも良い。
【0020】
イオン源室2へは酸素ガス8をリークし続ける必要があり、他の室とは別のポンプ(TMP)15により真空に保たれる。
【0021】
加速室3には、電子レンズ16が配置されている。電子レンズ16の中心部には酸素イオン6が通過する孔があいている。加速室3は、イオン源室2および照射室4とは別のポンプ(TMP)17により真空が保たれる。加速室3で加速された酸素イオン6は加速室3と照射室4との間に設けられ、小さい穴18を有した窓19を介して照射室4へ注入される。
【0022】
照射室4に注入された酸素イオン6のビームは、偏向板20にかけられた電界により走査され、半導体ウエハWの望みの位置に照射される。酸素イオン6のビームは、ウエハ面内の均一性を持たせるために、コンピュータ制御によりウエハ面内で走査されることが望ましい。
【0023】
また、照射角度が90度からずれることにより、異方性エッチングに問題が生じる場合には、酸素イオン6のビームを走査せず、図中の矢印に示すように、ステージヒーター(載置台)5をX方向及びY方向に水平移動させるようにしても良い。例えば、酸素イオン6のビームの、半導体ウエハWの表面に対する照射角度を90度としたまま、ステージヒーター5を水平方向に移動させる。この構成を備えることで、照射角度に起因して、マスク材下の銅膜の部分に斜め方向にエッチングが進むことを抑制できる。
【0024】
照射室4には、有機化合物ガス供給源21から有機化合物ガスが供給される。有機化合物ガスの一例は、カルボン酸を含む有機酸ガス22である。有機化合物ガスが、カルボン酸を含む有機酸ガス22である場合、有機化合物ガス供給源21は、液体であるカルボン酸を含む有機酸を気化させる装置が含まれる。照射室4内の圧力は、自動圧力調整装置(APC)23とポンプ(TMP)24とにより調整される。
【0025】
照射室4内の有機酸ガス22の圧力が高い場合には、銅膜の異方的なエッチングの速度の増大が見込まれる。しかし、本例では、酸素イオン6による酸素注入量が銅膜の異方的なエッチングの速度を決めると考えられるので、照射室4内の有機酸ガス22には過大な圧力は必要ない。
【0026】
また、有機酸ガス22の圧力が高いと、注入された酸素イオン6との衝突頻度が高まる。この観点からは照射室4内の有機酸ガス22の圧力は低いことが望ましい。望ましい照射室4内の圧力範囲は、1000Pa〜30000Paである。
【0027】
また、照射室4には有機酸ガス22が供給される。有機酸ガス22が加速室3に逆流することをできるだけ防ぐため、本例では、加速室3と照射室4との間を、小さい穴18を有した窓19で仕切り、差動排気にしている。即ち、加速室3内の圧力を、照射室4内の圧力よりも高く設定する。これにより、有機酸ガス22が加速室3に逆流することを抑制できる。
【0028】
また、照射室4に照射された酸素イオン6は、有機酸ガス22と衝突する可能性がある。酸素イオン6が有機酸ガス22に衝突することで生成されたイオンのうち、負イオンが加速室3にもれると、加速してイオン源室2に向かい、石英管9や引き出し電極12と衝突する可能性がある。このため、本例のように、イオン源室2と加速室3との間、加速室3と照射室4との間を、小さい穴13を有した窓14、及び小さい穴18を有した窓19で仕切ることは、上記負イオンが正イオンと反対方向へ動くことを抑制できる、という利点を得ることができる。
【0029】
また、一般的なイオン照射装置では、石英管9の中、即ち、イオン源で生成された色々なイオンから特定のイオンのみを取り出す。これは、磁場と電場により構成されるウィーンフィルタを用いて、電荷と質量の比からイオンを選ぶ方法をとる。
【0030】
しかし、本例では、あえて特定のイオンのみを取り出すようなフィルタリングはしない。発生した酸素イオンの全て、即ち、Oだけでなく、O2+やOも積極的に用いる。これにより、銅膜の酸化深さにバリエーションを持たせる。O2+は電荷が2倍であることから運動エネルギーが2倍であり、Oよりも銅膜のより深い位置で止まり、酸化に寄与する。Oは質量が2倍であることから銅膜の表面で衝突し2個に乖離した時点での1個当たりの運動エネルギーは、1/2となり、Oよりも浅い位置で止まり酸化に寄与する。O2+はOと質量/電荷比が同じであることから、Oと同じ挙動を示すと考えられるから、あえて選択除去する必要はない。
【0031】
このように、発生した酸素イオンの全て、即ち、Oだけでなく、O2+やO2+も銅膜に照射することにより、銅膜の酸化にバリエーション、特に銅膜を、深さ方向に深く酸化でき、効率の良い酸化を行うことができる。
【0032】
半導体ウエハWの温度はステージヒーター5により制御される。銅膜の酸化のためには、ステージヒーター5による温度コントロールは必要ないが、有機酸ガスによる酸化銅除去のために、ステージヒーター5により、半導体ウエハWの温度は、例えば、100℃から250℃の間に維持されることが良い、このように半導体ウエハWの温度を制御することで、酸素イオン6で酸化された銅と有機酸ガス22との反応を促進させる。例えば、カルボン酸を含む有機酸ガスを、例えば、蟻酸ガス(HCOOH)とした場合には、下記の反応を促進させる。
【0033】
CuO + 2HCOOH → 2Cu(HCOO) + H
・Cu(HCOO)は揮発性
また、酸素イオン6は正に帯電しているので、銅膜および銅膜上に形成されたマスク材の表面に衝突した時に二次電子を発生させる。このため、銅膜およびマスク材の表面は正に帯電する。銅膜およびマスク材の帯電は静電気力を発生させ、正の荷電粒子である酸素イオン6を反発させてしまう。銅膜を異方的に酸化させるためには、酸素イオン6の横方向の運動に比べ、縦方向の運動を大きくする必要がある。このため、縦方向の運動エネルギーをそいでしまうような、銅膜およびマスク材の帯電は防ぐ必要がある。
【0034】
また、銅膜およびマスク材が帯電していると、偏向板20により酸素イオン6のビームを走査しているとき、酸素イオン6のビームが異常な方向に曲げられることも考えられる。
【0035】
銅膜およびマスク材の帯電を防ぐためには、除電機構を別途設置することが望ましい。除電機構の一例としては、一端が接地された小さな除電用電極25を、例えば、ステージヒーター5に取り付け、銅膜が成膜されている半導体ウエハのエッジ等に接触させれば良い。
【0036】
(電源構成)
次に、エッチング装置1の電源構成を説明する。
【0037】
イオン源室2の側壁は、強度の高い部材、例えば、ステンレスもしくはジュラルミンでできていることが望ましく、安全のために電気的に接地される。
【0038】
RF電源10はイオン源室2に設けられた平板型の電極につながり、石英管9内の酸素ガス分子を電離させる。RF電源10および平板型の電極は接地に対して、加速電圧電源11により正の電圧に維持される。
【0039】
加速室3の側壁は、イオン源室2と同様に、強度の高い部材、例えば、ステンレスもしくはジュラルミンでできていることが望ましく、安全のために電気的に接地される。
【0040】
加速室3には、電子レンズ16が設置されている。本例では4枚の電子レンズ16を備えている。各電子レンズ16は照射室4に向かって電位を徐々に下げる。これを実現するために、各電子レンズ16の電極間に高抵抗タイプ、たとえば、セメント抵抗rを用いてわずかな電流を流す。セメント抵抗rを流れる電流により、各電子レンズ16の電極間それぞれに電圧降下分の電位差が発生し、各電子レンズ16の電極の電位は、照射室4に向かって電位が徐々に下がるようになる。
【0041】
また、最もイオン源室2に近い電子レンズ16は、引き出し電極12にセメント抵抗rを介して接続されており、引き出し電極12はさらにセメント抵抗rを介してRF電源10に接続されている。これにより、RF電源10、引き出し電極12、最もイオン源室2に近い電子レンズ16の順で電位が徐々に下がるように構成される。
【0042】
各電子レンズ16の電極間では、等電位面が電極に平行に生ずるが、中心の穴の中では等電位面がしみだす。これにより、発散した酸素イオン6は、湾曲した等電位面により収束させられ、常に中心の穴を通る。
【0043】
加速室3で加速されたイオンは、窓19の、小さな穴18を通して照射室4に照射される。
【0044】
照射室4の側壁も、強度の高い部材、例えば、ステンレスもしくはジュラルミンでできていることが望ましく、安全のために電気的に接地される。メンテナンスのため、照射室4の内壁を洗浄する必要がある場合には、内壁を耐薬品性のある貴金属でコーティングすることも実用的で良い。
【0045】
また、照射室4の側壁を接地しておくことで、酸素イオン6と有機酸ガス22とが衝突することで発生する負イオンが、加速室3に引き込まれる可能性を小さくすることができる。
【0046】
(エッチング方法)
次に、エッチング装置1を用いた銅膜の異方的なエッチング方法の一例を説明する。
【0047】
まず、イオン源室2、加速室3をポンプ15、17により排気し、イオン源室2、加速室3の内部を真空に維持する。
【0048】
次に、イオン源は、立ち上がりから安定するまでに時間がかかるため、前もって立ち上げておく。即ち、石英管9に酸素ガス8を供給し、酸素ガス8が供給された石英管9にRF電源10を用いて交流電界をかけておく。
【0049】
次に、照射室4のゲートバルブ26を開け、表面に銅膜とマスク材とが形成された半導体ウエハWを処理室4の内部に搬送装置(図示せず)を用いて搬送し、ステージヒーター5上に載置し、機械的チャック機構(図示せず)を用いて固定する。酸素イオン照射時の帯電を防止するため、除電用電極25を半導体ウエハのエッジに接触させる。この後、ゲートバルブ26を閉じ、照射室4をポンプ24により排気する。照射室4内の真空度が十分な値となったら、有機化合物ガス供給源21により有機化合物ガス、本例では有機酸ガス22を発生させ、照射室4内に供給する。
【0050】
ここまでの間、酸素イオン6のビームは、バルブ27を用いて窓19に設けられた小さい穴18を塞ぐことで、せき止めておくか、もしくは偏向板20に十分な電圧をかけて、酸素イオン6のビームを半導体ウエハWの外側に偏向させておく。この偏向させた場所にビーム電流計28を設置しておくと、ビーム電流の量、安定度を測定することも可能である。
【0051】
この後、銅膜の異方的なエッチングが開始される。引き続き、半導体ウエハの断面例を参照しながら、銅膜の異方的なエッチングについて説明する。
【0052】
図2A〜図2Fは半導体ウエハの一部を拡大して示した断面図である。
【0053】
図2Aには、照射室4内に搬送された半導体ウエハWの一部を拡大して示した断面が示されている。図2Aに示すように、半導体ウエハWには銅の拡散を防ぐバリアメタル膜100が形成されており、バリアメタル膜100上には銅膜101が形成されている。銅膜101上にはマスク材102が形成されている。
【0054】
マスク材102は、酸素イオン6が銅膜101に到達しないように、酸素イオン6を遮断する役目を持つ。このため、マスク材102には、原子量が大きく、厚いことが求められる。可能であれば、銅(Cu:原子量63.546)よりも原子量が大きく、かつ、密度の高い材料が好ましい。マスク材102の膜厚は、酸素イオン6が銅膜101に到達しないような厚さに設定される。マスク材102の膜厚は、原子量が大きく、かつ、密度の高い材料ほど、薄くすることが可能である。
【0055】
次に、照射室4内に、有機酸ガス22を供給しつつ、偏向板20に印加する電圧を制御して、酸素イオン6のビームを半導体ウエハWの上に走査する。酸素イオン6の打ち込み角度は、偏向板20と照射位置とによりきまる。このため、偏向板20と半導体ウエハWとの間には、十分な距離を取ることが必要である。
【0056】
図2B〜図2Eに、有機酸ガス22の雰囲気中で、酸素イオン6が照射された銅膜101の変化の様子を示す。
【0057】
図2Bに示すように、酸素イオン6が照射された銅膜101の表面部分は酸化され、酸化銅103に変わる。しかし、周囲の雰囲気が有機酸ガス22、例えば、蟻酸ガスであるために、表面部分に形成された酸化銅103は、図2Cに示すように、瞬時にCu(HCOO)とHOとに変わり昇華する。
【0058】
酸化銅103は昇華してしまうから、銅膜101の表面部分には銅が露呈する。しかし、引き続き酸素イオン6が照射されているので、図2Dに示すように、表面部分は再び酸化銅103に変わる。しかし、引き続き、周囲の雰囲気が有機酸ガス22であるために、表面部分に形成された酸化銅103は、図2Eに示すように、再び瞬時にCu(HCOO)とHOとに変わって昇華する。
【0059】
このような現象が、有機酸ガス22の雰囲気中で、酸素イオン6が照射されつづける間、連続的に起こる。このような現象により、最終的に、銅膜101は、図2Fに示すように、異方的にエッチングされる。
【0060】
なお、バリアメタル膜100のダメージを減らすため、銅膜101の異方的なエッチングが終了する直前に、加速電圧を弱めることも可能である。
【0061】
このように上記一実施形態によれば、銅を、異方的にエッチングすることができる。このような実施形態は、銅配線の形成技術に有効であり、例えば、以下の用途に用いることができる。
・半導体集積回路装置のCu配線形成プロセス
・ウエハとウエハとを貼り合わせる3Dプロセスのバンプおよび配線
(有機化合物ガス)
上記一実施形態においては、有機化合物ガスとして有機酸ガス、特に蟻酸ガスを用いた例を示したが、有機化合物ガスは蟻酸ガスに限られるものではなく、蟻酸ガス以外の有機化合物ガスを用いることができる。
【0062】
有機化合物ガスの例としては、
カルボキシル基(−COOH)を有するカルボン酸
を挙げることができる。
【0063】
上記カルボン酸の例としては、以下の一般式で記述されるカルボン酸
−COOH
(Rは水素、又は直鎖もしくは分枝鎖状のC〜C20のアルキル基もしくはアルケニル基、好ましくはメチル、エテル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシル)
例えば、蟻酸(HCOOH)
酢酸(CHCOOH)
プロピオン酸(CHCHCOOH)
酪酸(CH(CHCOOH)
吉草酸(CH(CHCOOH)
などを挙げることができる。
【0064】
以上、この発明を一実施形態に従って説明したが、この発明は一実施形態に限られるものではなく様々な変形が可能である。また、この発明の実施形態は、上記一実施形態が唯一の実施形態でもない。
【符号の説明】
【0065】
6…酸素イオン、22…有機酸ガス、101…銅膜、102…マスク材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にマスク材が形成された銅膜の周囲を、有機化合物ガス雰囲気とする工程と、
前記有機化合物ガス雰囲気中で、前記銅膜に、前記マスク材をマスクに用いて酸素イオンを照射し、前記銅膜を異方性エッチングする工程と、
を具備することを特徴とするエッチング方法。
【請求項2】
前記酸素イオンがO以下の分子量のイオンを含むことを特徴とする請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記有機化合物ガスが、
カルボキシル基(−COOH)を有するカルボン酸
であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記カルボン酸は(1)式で記述されるカルボン酸
−COOH …(1)
(Rは水素、又は直鎖もしくは分枝鎖状のC〜C20のアルキル基もしくはアルケニル基)
から選ばれることを特徴とする請求項3に記載のエッチング方法。
【請求項5】
酸素イオンを発生させるイオン源室と、
前記発生された酸素イオンを加速させる加速室と、
銅膜と前記銅膜上に形成されたマスク材とを備えた被処理体が載置され、この被処理体に前記加速された酸素イオンを照射する照射室と、
前記照射室に、有機化合物ガスを供給する有機化合物ガス供給源と、
を具備し、
前記有機化合物ガスを前記照射室に供給しつつ、前記被処理体に前記加速された酸素イオンを照射するように構成されていることを特徴とするエッチング装置。
【請求項6】
前記加速室と前記照射室との間が、穴を有した窓により仕切られていることを特徴とする請求項5に記載のエッチング装置。
【請求項7】
前記酸素イオンが、前記被処理体に前記加速された酸素イオンが照射されている間、前記加速室の圧力を、前記照射室の圧力よりも高くしておくことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のエッチング装置。
【請求項8】
前記被処理体を載置する載置台を備え、
前記載置台に、前記被処理体に前記加速された酸素イオンが照射されている間、前記銅膜と前記銅膜上に形成されたマスク材を除電する除電機構をさらに備えていることを特徴とする請求項5乃至請求項7いずれか一項に記載のエッチング装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【公開番号】特開2012−54304(P2012−54304A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193983(P2010−193983)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】