説明

エッチング装置

【課題】 水晶板などの圧電素板をエッチング加工する際に使用する湿式のエッチング装置で、被加工物である水晶板などの圧電素板が均一にムラが無くエッチング処理ができる装置を実現することを目的とする。
【解決手段】 課題を解決するために本発明は、エッチング溶液を蓄える容器の中に、圧電素板を格納し揺動する受皿を配置し、前記受皿の下方から前記エッチング溶液を噴射する噴射口を有し、前記受皿の上部には一定間隔で細線を配置した構造を有するもので、従来の回転式のエッチング装置の欠点を改善したもので、エッチング溶液中に圧電素板を格納する受皿を設けて、前記受皿の下方からエッチング溶液を受皿に向けて噴射することで、受皿の中の圧電素板が水流により浮き上がり、受皿の上部に配置する細線で圧電素板の向きを変え、上述の動作を連続的に行うことで、受皿に格納する圧電素板を効率よく回転させることにより課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶板などの圧電素板をエッチング加工する際に使用する湿式のエッチング装置で、被加工物である水晶板などの圧電素板が均一にムラが無くエッチング処理ができる装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、圧電振動子や発振器の小型化に伴いこれらに搭載する圧電素子の形状や板厚みも小型化、薄型化の傾向が強まっている。通常の圧電素子の個片化の加工方法としては、例えば人工水晶の場合にあっては、人工育成炉で育成して得た人工水晶を切断加工と表面研磨加工とにより、外形寸法加工と所望の発振周波数を得るまでの板厚みを薄くする加工が行われている。
【0003】
更に水晶素板の板厚みを微調整すること、すなわち所望の発振周波数を得るための板厚みを薄くする加工方法に湿式のエッチング加工を用いている。湿式のエッチング加工は、機械研磨加工では得られない、微小な水晶素板の板厚みを調整できることと、切断加工も含めた厚み加工(機械加工)で生じた水晶素板表面(主面)の状態(加工変質層の除去)をエッチング処理することにより滑らかな振動子主面を得ることで、水晶振動子あるいは水晶発振器に組み込んだときの水晶素板の持つ電気的特性や温度特性を良好にし異常発振などを起こさない水晶素板を得ることができる。
【0004】
上述する湿式のエッチング方法の一例としては、エッチング加工する際には圧電素板が漏れ出さない程度の微細な孔で被われた加工容器を、エッチング液であるフッ酸系のエッチャント液に浸し、エッチャントの中で適宜加工容器を揺動もしくは回転させてエッチング処理を行うものである。
【0005】
エッチング液はエッチング処理を重ねるごとに圧電素板と化学的反応の進行が低下するため、エッチャントを補充追加しながらエッチング処理効率が低下しないように注意しながら、適宜エッチング液の補充が行われる。
【0006】
このとき圧電素板同士、もしくは圧電素板と加工容器間で貼り付き(重なり)現象が発生すると、圧電素板の表面にエッチング液が潤沢に供給されないために、貼り付いている圧電素板面のエッチング加工は進まず、更にはこの貼り付いている箇所にはその界面に段差やエッチング処理のムラが発生してしまう。
【0007】
また、エッチング工程は機械研磨工程による厚み落とし加工と比較して、厚みの微調整を行うことができるために、所望の周波数に追い込む工程でもあるために、一度に処理する複数枚の圧電素板を同一周波数に合せ込みを行った場合に、上述する貼り付き現象が圧電素板の片面で起きた場合には、その片面の加工変質層は除去されきれずもう一方の面が過剰にエッチングされてしまうこともある。
【特許文献1】特開平07−109200号公報 なお、出願人は前記した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を、本件出願時までに発見するに至らなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術に示すエッチング処理方法では、圧電素板が小型化・薄型化が急速に進んでいるために、従来のエッチング加工方法ではエッチング液中でエッチング加工容器を揺動もしくは回転させても、その圧電素板の自重が軽いため、またエッチング加工容器または圧電素板同士間での衝突による衝撃が小さいために前述の貼り付き現象が発生してしまう割合が増えることにより、エッチング加工によって圧電素子表面に段差を生じ、そのことがまた圧電素子のCI値など電気的特性を悪化させてしまうという問題があった。また、ヒステリシス、CI値の変化量などの検査項目が増えることで作業性を悪化させると言う課題も引き起こす要因がある。
【0009】
また、エッチング液の置換のためにエッチング加工容器に多数個あける穴は、エッチングされる圧電素子が飛出すことのないような大きさとする必要があるが、圧電素板の小型、薄型化に伴いエッチング加工容器の穴の大きさを小さくするとエッチング液の置換がスムーズに行えず、加えてエッチング加工容器内の空気が加工容器外に排出されずに、エッチング加工自体が実施できなくなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために本発明は、エッチング溶液を蓄える容器の中に、圧電素板を格納し揺動する受皿を配置し、前記受皿の下方から前記エッチング溶液を噴射する噴射口を有し、前記受皿の上部には一定間隔で細線を配置した構造を有するエッチング装置である。
【0011】
要するに本発明のエッチング装置は、従来の回転式のエッチング装置の欠点を改善したもので、エッチング溶液中に圧電素板を格納する受皿を設けて、前記受皿の下方からエッチング溶液を受皿に向けて噴射することで、受皿の中の圧電素板が水流により浮き上がり、受皿の上部に配置する細線で圧電素板の向きを変え、上述の動作を連続的に行うことで、受皿に格納する圧電素板を効率よく回転させることでエッチング処理を行うものである。
【0012】
そのために、水流を発生させるエッチング溶液を噴射する箇所は、少なくとも受皿の略一辺の長さに同じ長さで、受皿の一辺方向に複数の噴射口を有するエッチング装置である。なお、上述の動作原理を応用しエッチング溶液に代えて、純水を容器内に蓄えることで洗浄作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のエッチング装置によれば、小型化、薄片化で高周波化が進んだ圧電素板を効率よくエッチング加工することができることにより、エッチング工程を簡略化することができる。そして、圧電素板を使用する圧電振動子等の圧電部品として見た場合には、製造コストを抑えることができ安価に提供できる効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の一実施例を図面を参照しながら説明する。なお、各図においての同一の符号は同じ対象を示すものとする。図1は本発明におけるエッチング装置の概念を示した図である。なお、以下に記述する受皿3を揺動する機構や噴射口の機構などは図示していない。
【実施例】
【0015】
図1において容器1内に蓄えられるエッチング溶液として、例えばフッ酸系溶液があり、そして容器1の中には圧電素板2を格納し揺動する耐溶液性の材料で作られた受皿3を配置し、前記受皿3の下方からエッチング溶液を噴射する噴射口4を有し、そして受皿3の上部には一定間隔で細線5として例えば耐溶液性の材料を用いて配置した構造を有したものである。また受皿3の底は水流を効率良く受けられるためにメッシュ状となっている。
【0016】
ここで前述するエッチング溶液を噴射する箇所は、前記受皿3の略一辺の長さに同じ長さで、噴射する箇所には複数の噴射口4を有することにより、溶液内に水流を発生させることができる。またエッチング溶液は受皿3と圧電素板が浮遊できる十分な量を容器1内に蓄える。
【0017】
図2に示すのは、図1の概念図から受皿3内の圧電素板2に注目しながらエッチング処理を行うためのメカニズムを説明した図である。説明上図中にはエッチング溶液を割愛して描画している。図2(a)〜(c)の動作を繰り返すことでエッチング処理が行われる。まずはじめに図2(a)に示すように、エッチング溶液を蓄えた容器1の中に圧電素板2を格納する受皿3を配置し、噴射口4から水流を発生させる。受皿3はエッチング溶液に侵されることのない耐溶液の材料で作られたもので、前記受皿3内に圧電素板2を散乱させるように配置する。
【0018】
また、容器1内には帯状に水流を発生させることができる噴射口4を設け、この噴射口4が前記受皿3の下方から上方に向けて連続的に水流を起こすことで、受皿3に格納する圧電素板2が適宜受皿3の中で浮遊することができる。なお、噴射口4の上では受皿3が揺動することで常に受皿3の中の圧電素板2は浮遊することになる。次ぎに図2(b)の状態へと移行する。
【0019】
図2(b)では受皿3の中で浮遊する様子を概念的に示したものである。受皿3に格納された圧電素板2は、受皿3の下方から噴射される水流により浮遊運動をする。ここで浮遊した圧電素板2は受皿3の上部にある細線5により浮遊運動の姿態を変化させ、そして水流作用とによって受皿3の中で受皿3の一端から一端へと浮遊しながら移動することになる。この動作は前述する噴射口4の上方を受皿3が揺動することにより連続的処理される。以上の動作が図2(c)に示す一端まで行われる。なお細線については、処理する圧電素板2の最大外形寸法の1/10程度が目安であり、細線間隔は圧電素板2の2倍以内が好ましい。また細線の形状は特に問うものでは無いが断面が丸状の線材が好ましい。
【0020】
次ぎに、図3(a)〜(c)の動作として図2に示す反対の方向に受皿3が動作することで、噴射口4の上部を受皿3の一端から一端が1往復し、この往復動作を連続的に行うことで、一連のエッチング処理が継続する。エッチング処理を完了する場合には、予め実験値として得た処理時間を目安にしたり、適宜エッチング処理中の圧電素板2の表面状態を検証しながら行う。以上のように、従来ではエッチング処理工程における圧電素板2の貼り付き現象が生じていたが、本発明のエッチング処理により従来の課題を解消することができる。
【0021】
なお、上述する一連のエッチング処理作業はエッチング溶液を容器1に蓄えることで処理がなされるもので、エッチング溶液に代えて、純水などを用い容器1に蓄えることで洗浄作業が行えるのは言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のエッチング容器全体の概念を示す斜視図である。
【図2】本発明のエッチング処理を、圧電素板の動きで説明する概念図である。(往路)
【図3】本発明のエッチング処理を、圧電素板の動きで説明する概念図である。(復路)
【符号の説明】
【0023】
1 容器
2 圧電素板
3 受皿
4 噴射口
5 細線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチング溶液を蓄える容器の中に、圧電素板を格納し揺動する受皿を配置し、前記受皿の下方から前記エッチング溶液を噴射する噴射口を有し、前記受皿の上部には一定間隔で細線を配置した構造を有するエッチング装置。
【請求項2】
請求項1記載のエッチング溶液を噴射する箇所は、前記受皿の略一辺の長さに同じで、複数の噴射口を有することを特徴とするエッチング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−310559(P2006−310559A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−131557(P2005−131557)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】