説明

エネルギ依存型投影データから関心領域を画像形成するための画像形成システム

本発明は、エネルギ依存型投影データから関心領域の画像を形成するための画像形成システムに関し、この画像形成システムは、関心領域のエネルギ依存型の第1の投影データを供給するための投影データ供給ユニット1,2,3,6,7,8を有する。画像形成システムは、さらに、投影データが減衰成分画像に依存するとしたモデルを用いてエネルギ依存型の第2の投影データを発生することにより関心領域の減衰成分画像を発生するための減衰成分画像発生ユニット12を有する。成分画像発生ユニット12は、第1の投影データからの第2の投影データの偏差が小さくなるように減衰成分画像を発生するよう適合させられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギ依存型投影データから関心領域の画像を形成するための画像形成システム、画像形成方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願に係る文献のUS6,507,633B1は、コンピュータ断層撮影システムを開示しており、このシステムは、測定されたエネルギ依存型の投影データから関心領域の初期画像を復元するものである。この初期画像は、幾つかのセグメントに分割されており、各セグメントは、もう1つの種類の物質を表す。例えば、一方のセグメントは骨を表すことができ、他方のセグメントは患者の軟組織を表すことができる。計算されたエネルギ依存型投影データを発生するためのモデルが用いられており、これは、異なるセグメントにおける異なる種類の材料の異なる吸収分布を考慮に入れており、当該測定された投影データからの当該計算されたエネルギ依存型の投影データのずれは、関心領域の画像となる様々なセグメントにおける様々な種類の材料の様々な吸収分布を変更することにより最小化される。
【0003】
関心領域の画像のこの復元は、初期の分割(セグメンテーション)に基づいている。コンピュータ断層撮影画像の分割は、しばしば不正確であり、特に、被写体の部分が最終的に復元される画像におけるアーチファクトをもたらす殆ど同じ画像値を有する形で分割されなければならない場合に不正確である。加えて、初期画像の分割は、非常に時間がかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、エネルギ依存型投影データから関心領域の画像を形成するための画像形成システムであって、関心領域の復元画像におけるアーチファクトを低減するものを提供することである。本発明の他の目的は、エネルギ依存型投影データから関心領域の画像を形成するための対応の画像形成方法及び対応のコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発 明の一態様において、エネルギ依存型投影データから関心領域の画像を形成するための画像形成システムが提供され、このシステムは、前記関心領域のエネルギ依存型の第1の投影データを供給するための投影データ供給ユニットと、前記投影データが減衰成分画像に依存するとしたモデルを用いてエネルギ依存型の第2の投影データを発生することにより前記関心領域の減衰成分画像を発生するための減衰成分画像発生ユニットとを有し、前記減衰成分画像発生ユニットは、前記第1の投影データからの前記第2の投影データの偏差が小さくなるように前記減衰成分画像を発生するよう適合させられる。
【0006】
本発明は、関心領域の1つの画像が復元されるだけでなく、幾つかの画像は減衰成分画像とされる、という発想に基づいている。減衰成分画像は、或る減衰効果により生じる画像要素を有する画像である。これら減衰効果は、関心領域内の或る材料の吸収とすることができる。例えば、一方の減衰成分画像は、或る材料の吸収により生じた画像とすることができ、他方の減衰成分画像は、他の材料の吸収により生じた画像とすることができる。これに代えて又は加えて、減衰成分画像を、1つだけ又は幾つかの異なる物理的効果により発生させることができる。例えば、一方の減衰成分画像を、コンプトン効果により生じた画像とすることができ、他方の減衰成分画像を、光電効果により生じた画像とすることができる。本発明によれば、各減衰成分画像は関心領域の画像であり、各減衰成分画像は、或る特定の減衰効果を表すので、関心領域の画像の初期分割は不要であり、これにより、復元される画像内のアーチファクトを減らし、初期分割のための計算コストを排除することになる。
【0007】
本画像形成システムは、優先的にコンピュータ断層撮影システムとされ、当該投影データ供給ユニットは、優先的に、関心領域を横切る放射線を発するための、特に、多色性放射線を発するための放射線ソースと、関心領域を横断した後の放射線に応じたエネルギ依存型の第1の投影データを検出するための検出ユニットと、関心ユニットに対して放射線ソース及び検出ユニットを移動させる移動ユニットとの組み合わせとされる。この移動ユニットは、放射線ソース及び検出ユニットが実装されている回転ガントリと、優先的には当該ガントリの回転軸に平行に移動可能とされるテーブル又はベルトとを有することができる。投影データ供給ユニットはまた、測定され又はシミュレートされたエネルギ依存型の第1の投影データが記憶された記憶ユニットとすることができる。さらに、投影データ供給ユニットは、エネルギ依存型投影データを供給することができる何らかのユニットとすることができる。例えば、投影データ供給ユニットは、Cアームシステム又は放射性映像システムとすることもできる。
【0008】
減衰成分画像発生ユニットは、減衰成分画像の少なくとも2つが空間的に重なるように適合させられることが好ましい。2つ以上の減衰成分画像は空間的に一部が重なることができるが、少なくとも2つ、特に全ての減衰成分画像が関心領域全体をカバーすること、すなわち全ての減衰成分画像が完全に重なることが好ましい。減衰成分画像が重なると、異なる減衰効果が同じ位置、すなわち関心領域内の同じ画像要素の中にあると考えることができる。すなわち、異なる減衰効果は、関心領域内の同じ位置で分離可能である。
【0009】
実施例において、画像形成システムは、合成された減衰成分画像になる減衰成分画像を合成するための減衰成分画像合成ユニットをさらに有する。減衰成分画像を合成することによって、より大きな信号対雑音比を得ることができる。
【0010】
さらに、減衰成分画像発生ユニットは、第1の投影データからの第2の投影データの偏移が、当該減衰成分画像が付与された第1の投影データの可能性が最大になるように減衰成分画像を発生することによって低減されるよう、減衰成分画像を発生するよう適合させられるのが好ましい。第2の投影データは減衰成分画像に依存しているので、第1の投影データから第2の投影データの偏移は、第1の投影データが付与される減衰成分画像の可能性を最大にすることにより効果的に最小化することができ、関心領域の減衰成分画像におけるさらなるアーチファクトの低減となる。
【0011】
好適実施例において、前記投影データ供給ユニットは、エネルギ窓における投射データ値を有するエネルギ依存型の第1の投影データを供給するように適合させられ、前記減衰成分画像発生ユニットは、各エネルギ窓における前記第1の投影データの投影データ値毎に前記第2の投影データのそれぞれの投影データ値が付与される前記投影データ値の確率を判定し、各エネルギ窓における前記第1の投影データの投影データ値毎に判定された前記確率の積が最大になるように前記減衰成分画像を発生するよう適合させられる。この確率を用いることによって、簡単な方法で減衰成分画像を判定することができ、結果として得られる減衰成分画像のアーチファクトがさらに低減される。
【0012】
前記減衰成分画像発生ユニットは、前記減衰成分画像が付与される前記第1の投影データの確率及びノイズモデルを判定するよう適合させられるようにするとさらに好適である。当該確率は第1の投影データだけでなくノイズモデルとも考えられるので、復元された減衰成分画像の品質はさらに向上することになる。かかるノイズモデルは、第1の投影データに存在するノイズに依存する。優先的には、このノイズモデルは、ポアソンモデルである。さらに好ましいのは、当該ノイズモデルをポアソンモデルとし、第2の投影データを当該平均とすることである。
【0013】
本発明の他の態様において、供給されたエネルギ依存型の第1の投影データから関心領域の減衰成分画像を判定する判定装置は、前記投影データが減衰成分画像に依存するとしたモデルを用いてエネルギ依存型の第2の投影データを発生することにより前記関心領域の減衰成分画像を発生するための減衰成分画像発生ユニットを有し、前記減衰成分画像発生ユニットは、前記第1の投影データからの前記第2の投影データの偏差が小さくなるように前記減衰成分画像を発生するよう適合させられるものとして提供される。
【0014】
本発明の他の態様において、エネルギ依存型の投影データから関心領域の画像を形成するための画像形成方法は、前記関心領域のエネルギ依存型の第1の投影データを供給するステップを有し、前記投影データが減衰成分画像に依存するとしたモデルを用いてエネルギ依存型の第2の投影データを発生することにより前記関心領域の減衰成分画像を発生するステップを有し、前記減衰成分画像は、前記第1の投影データからの前記第2の投影データの偏差が小さくなるように発生されるものとして提供される。
【0015】
本発明の他の態様において、供給されたエネルギ依存型の第1の投影データから関心領域の減衰成分画像を判定するための判定方法は、前記投影データが減衰成分画像に依存するとしたモデルを用いてエネルギ依存型の第2の投影データを発生することにより前記関心領域の減衰成分画像を発生するステップを有し、前記減衰成分画像は、前記第1の投影データからの前記第2の投影データの偏差が小さくなるように発生されるものとして提供される。
【0016】
本発明の他の態様において、エネルギ依存型投影データから関心領域の画像を形成するためのコンピュータプログラムは、請求項1に記載の画像形成システムに、前記画像形成システムを制御するコンピュータにおいて当該プログラムが実行されるときに、請求項8に記載の方法のステップを実行させるためのプログラムコード手段を有するものとして提供される。
【0017】
本発明の他の態様において、供給されたエネルギ依存型の投影データから関心領域の減衰成分画像を判定するためのコンピュータプログラムは、請求項7に記載の判定装置に、前記判定装置を制御するコンピュータにおいて当該プログラムが実行されるときに、請求項9に記載の方法のステップを実行させるためのプログラムコード手段を有するものとして提供される。
【0018】
請求項1の画像形成システム、請求項7の判定装置、請求項9の判定方法、請求項8の画像形成方法、請求項10のコンピュータプログラム及び請求項11のコンピュータプログラムは、従属請求項に規定されているような同様及び/又は同一の好適実施例を有することが理解される。
【0019】
なお、本発明の好適実施例は、従属請求項のそれぞれの独立請求項との組み合わせとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下、本発明のこれらの態様及びその他の態様は、以下に説明する実施例により明らかになる。
【図1】本発明による関心領域を画像形成するための画像形成システムの概略図。
【図2】本発明による関心領域を画像形成するための画像形成方法を示すフローチャート。
【図3】減衰効果のスペクトルを概略的かつ例示的に示す図。
【図4】第2の投影データ値及びノイズモデルが付与された第1の投影データ値の確率を概略的かつ例示的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示されるエネルギ依存型投影データから関心領域の画像を形成するための画像形成システムは、この実施例では、コンピュータ断層撮影システムである。このコンピュータ断層撮影システムは、z方向に平行に延びる回転軸Rの周りを回転することの可能なガントリ1を含む。放射線源2、例えばX線管は、ガントリ1に実装される。この実施例において、放射線源2は、多色性放射線を発する。放射線源2は、放射線源2により発せられた放射線から円錐形の放射ビーム4を形成するコリメータ装置3が設けられる。他の実施例において、コリメータ装置3は、他の形状、例えば扇状の放射線ビームを形成するよう適合可能である。
【0022】
この放射線は、円筒状の検査ゾーン5における関心領域において、患者又は技術的被写体のようなオブジェクト(図示せず)を横切る。関心領域を横切った後、放射ビーム4は、エネルギ分解検出ユニット6に入射する。このユニットは、この実施例では、ガントリ1に実装される2次元検出表面を有する。他の実施例において、エネルギ分解検出ユニットは、1次元検出表面を有することができる。
【0023】
エネルギ分解検出ユニットは、例えば、入射フォトンを数えることの原則に基づいて動作し、異なるエネルギ窓においてフォトンの数を示す信号を出力する。このようなエネルギ分解検出ユニットは、例えば、Llopart, X.氏らの "First test measurements of a 64k pixel readout chip working in a single photon counting mode", Nucl. Inst. and Meth. A, 509 (1-3): 157-163, 2003及びLlopart, X.氏らの "Medipix2: A 64-k pixel readout chip with 55 μm square elements working in a single photon counting mode", IEEE Trans. Nucl. Sci. 49(5): 2279-2283, 2002に記述されている。好ましくは、このエネルギ分解検出ユニットは、少なくとも3つの異なるエネルギ窓に対して少なくとも2つのエネルギ分解検出信号を供給するように適合させられている。しかしながら、画像形成システムの感度及びノイズロバスト性を高めるために、非常に高いエネルギ分解能を有することが望ましい。
【0024】
ガントリ1は、モータ7により好ましくは一定だが調整可能な角速度で駆動される。他のモータ8は、オブジェクト、例えば検査ゾーン5における患者テーブルに配された患者を回転軸R又はz軸の方向と平行に移すために設けられる。これらモータ7,8は、例えば、放射線源2と検査ゾーン5、特に関心領域が螺旋軌道に沿って相対的に動くように制御ユニット9により制御される。また、オブジェクト又は検査ゾーン5特に関心領域が動かされず、X線源2が回転され、すなわちX線源2が関心領域に対して円形の軌道に沿って横断するようにすることも可能である。
【0025】
検出ユニット6により得られるデータは、エネルギ依存型の第1の投影データである。エネルギ依存型の第1の投影データは、供給されたエネルギ依存型の第1の投影データから関心領域の減衰成分画像及び/又は合成された減衰成分画像を判定するための判定装置10に供給される。また、判定装置10は、制御ユニット9により優先的に制御される。
【0026】
1つ又は複数の減衰成分画像及び/又は1つ又は複数の合成された減衰成分画像は、画像を表示するための表示ユニット11に供給される。
【0027】
放射線源2、検出ユニット6、ガントリ1、患者テーブル及びモータ7,8は、エネルギ依存型の第1の投影データを供給するための投影データ供給ユニットを形成する。この実施例において、放射線源2は、多色性放射線を発するとともに、検出ユニット6は、エネルギ分解されたエネルギ依存型の第1の投影データを検出する。したがって、この実施例において、異なるエネルギの投影データは、同時に測定可能である。しかし、他の実施例において、他の投影データ供給ユニットは、投影データ供給ユニットが関心領域のエネルギ依存型投影データを供給する限りにおいて用いられることが可能である。例えば、異なる放射線スペクトルを持つ2つ以上の測定値及び非エネルギ分解検出ユニットを、エネルギ依存型投影データを供給するために用いることができる。異なる放射線スペクトルは、例えば、異なる放射線スペクトルを有する少なくとも2つの放射線源を用いることによって及び/又は異なる管電圧を持つX線管を用いることによって及び/又は関心領域と当該放射線源との間の異なるフィルタを用いることによって、得ることができる。非エネルギ分解型の検出ユニットが用いられる場合、異なる放射線スペクトルに対応する投影データは順次測定されなければならない。
【0028】
次に、本発明によるエネルギ依存型投影データから関心領域の画像を形成するための画像形成方法の実施例を、図2に示されるフローチャートに基づいて詳しく説明する。
【0029】
ステップ101において、エネルギ依存型の第1の投影データが供給される。放射線源2は、回転軸R又はz方向の周りを回転し、関心領域は、動かされず、すなわち、放射線源2は関心領域の周りの円形軌道に沿って横切る。他の実施例において、放射線源2は、他の軌道、例えば関心領域に対して螺旋軌道に沿って動くことができる。放射線源2は、関心領域を横切る多色性放射線を発する。関心領域を横切った放射線は、検出ユニット6により検出され、この検出ユニットがエネルギ依存型の第1の投影データを発生する。
【0030】
エネルギ依存型の第1の投影データは、減衰成分発生ユニット12に伝送され、この発生ユニットは、ステップ102において関心領域の減衰成分画像を発生する。この発生は、投影データが減衰成分画像に依存するとしたモデルを用いてエネルギ依存型の第2の投影データを発生することによって行われ、減衰成分画像発生ユニット12は、第1の投影データからの第2の投影データの偏移が減るように減衰成分画像を改変するように適合させられる。
【0031】
当該投影データが減衰成分画像に依存するとしたモデルは、次の式によって表すことができる。
【数1】

【0032】
式(1)において、lt,λは、エネルギ窓t及び放射線方向λにおけるエネルギ依存型の第2の投影データのデータ値を示している。変数tは、異なるエネルギ窓を数えるものであり、すなわち、例えば検出ユニット6が3つのエネルギ窓を提供する場合には、tは、値1,2及び3を有する。変数λは、異なる放射線源位置から検出ユニット6の検出表面における検出画素の異なる位置への異なる放射線方向を示している。
【0033】
関数St(E)は、関心領域におけるオブジェクトのエネルギ依存性を伴わない当該画像形成システムのエネルギ依存性を示している。したがって、この実施例において、関数St(E)は、特に放射線源の、関心領域に入射する放射線のスペクトルと検出ユニットのtで示されるエネルギ窓のスペクトル感度との積である。関数An(E)は、減衰成分画像

を生じる減衰効果のエネルギ依存度である。
【0034】
図3は、関心領域に存在する可能性のある造影剤のような物質の光電効果A(E)、コンプトン効果A(E)及びKエッジA(E)のエネルギ依存性を概略的かつ例示的な形で示している。
【0035】
値Nは、モデルにおいて考えられている減衰効果の数を示している。例えば、関心領域に存在しうる造影剤のような物質の光電効果、コンプトン効果及びKエッジが考えられている場合、Nは3である。積分変数Eは、エネルギを示しており、積分変数sによる積分は、それぞれの放射線に沿った積分である。
【0036】
第1の投影データからの第2の投影データの偏移が減るような減衰成分画像の改変は、減衰成分画像が付与されたエネルギ依存型の第1の投影データとこれに伴うエネルギ依存型の第2の投影データとの可能性が最大になるように、減衰成分画像及びこれに伴うエネルギ依存型の第2の投影データとを改変することによって優先的に行われる。これは、各エネルギ窓におけるエネルギ依存型の第1の投影データの投影データ値毎に、第2の投影データのそれぞれの投影データ値が与えられかつこれに伴いそれぞれの減衰成分画像が与えられた投影データ値の可能性(確率)を判定し、各エネルギ窓における第1の投影データの投影データ値毎に判定される可能性(確率)の積が最大化されるように当該減衰成分画像及びこれによるエネルギ依存型の第2の投影データを改変することにより、優先的に行われる。
【0037】
エネルギ依存型の第2の投影データのt及びλにより示される投影データ値の確率Lt,λは、次の式によって定義することができる。
【数2】

【0038】
式(2)において、mt,λは、エネルギ依存型の第1の投影データの投影データ値を示し、N(mt,λ,lt,λ)は、エネルギ依存型の第2の投影データの投影データ値lt,λが与えられたエネルギ依存型の第1の投影データの投影データ値mt,λの確率を規定する。この確率N(mt,λ,lt,λ)は、エネルギ依存型の第1の投影データのノイズ、特に優先的にlt,λが平均とされたポアソンモデルをも考慮するものである。確率N(mt,λ,lt,λ)は、図4に概略的かつ例示的な形で示される。特に、図4は、第2の投影データ値lt,λ及びノイズモデルNが与えられた第1の投影データ値mt,λに対する確率Lt,λを概略的かつ例示的な形で示している。
【0039】
各エネルギ窓において投影データ値毎に判定された確率の積は、次の式によって定義することができる。
【数3】

【0040】
式(3)においては、エネルギ依存型の第1の投影データの投影データ値が測定された状況での、Tは、エネルギ窓のセットを示し、Λは、放射線の方向のセットを示している。
【0041】
式(3)に規定されるトータルの確率は、減衰成分画像

及びこれによる減衰成分画像

をもたらすエネルギ依存型の第2の投影データlt,λを変えることにより最大化される。式(3)により規定されるトータルの確率関数は、既知の数値法によって最大化することができる。
【0042】
判定された減衰成分画像は、ステップ103において合成減衰画像をもたらす減衰成分画像を合成する減衰成分画像合成ユニット13に伝送される。ステップ104において、この合成された減衰成分画像及び/又は102において発生された減衰成分画像の1つ又は複数は、ディスプレイ11に表示される。
【0043】
他の実施例において、画像形成システムは、減衰成分画像合成ユニットのない画像形成システムとすることができ、合成ユニット13及び103を省略することができる。この場合、ステップ102において発生された減衰成分画像の1つ又は複数は、ディスプレイ11に表示される。
【0044】
上述した実施例において、異なるエネルギ窓のエネルギ依存型の第1の投影データは、同時に測定される。しかし、異なるエネルギのエネルギ依存型の第1の投影データが順次測定される場合は、本発明による減衰成分画像の発生を行うことができる。したがって、例えば、異なる電圧での動作及び/又は異なるビーム濾過処理をなす1つ又は複数のX線管により順次に投影データを取り込むことによりエネルギ依存型の第1の投影データが与えられた場合でも、すなわち、患者のようなオブジェクトに係る又は画像形成システムの一部に係る望ましくない動きが原因で、関心領域におけるオブジェクトを経る同じ経路に対応する筈の異なるエネルギの投影データ値が、関心領域を通じるオブジェクトの同じ経路に対応しない場合でも、本発明による減衰成分画像の発生は適用可能であり、既知の方法により復元された画像よりも少ないアーチファクトの高品質の減衰成分画像が発生される。
【0045】
上述したように、式(1)において、St(E)は、関心領域におけるオブジェクトにより生じない投影データ供給ユニットのエネルギ依存性を示している。例えば、多色性放射線源及び異なるエネルギ窓を持つエネルギ分解検出ユニットが用いられる場合、St(E)は、当該放射線源の放出スペクトル及びそれぞれのエネルギ窓のエネルギ感度に依存し、特に、St(E)は、放射線源の放出スペクトルとそれぞれのエネルギ窓のエネルギ感度との積である。非エネルギ分解型検出ユニットと、異なる電圧での動作及び/又は異なるビーム濾過処理をなす1つ又は複数のX線管が用いられる場合、変数tは、用いられる管、電圧及び/又はビーム濾過の種々の組み合わせを示し、関数St(E)は、検出ユニットのエネルギ感度と、管、管電圧及び/又はビーム濾過処理のそれぞれの組み合わせにより発生した放出スペクトルに依存し、特に、St(E)は、検出ユニットのエネルギ感度と、管、管電圧及び/又はビーム濾過処理の対応の組み合わせにより発生された放出スペクトルとの積を有する。
【0046】
本画像形成システムは、関心領域に対して放射線源の円形又は螺旋状の軌跡をなすものとして上述してきたが、本発明は、特定の軌跡に限定されるものではない。投影データ供給ユニットは、関心領域のエネルギ依存型の投影データを供給するユニットとすることができる。
【0047】
開示された実施例の他の変形は、図面、開示内容及び従属請求項を検討することにより請求項記載の発明を実施する当業者により理解され達成されることのできるものである。請求項において、「有する」なる文言は、他の要素又はステップを排除せず、単数表現は、複数を排除するものではない。
【0048】
単一のユニットは、請求項に挙げた幾つかのアイテムの機能を満たしうるものである。或る特定の方策が相互に異なる従属請求項に挙げられている点は、これら方策の組み合わせが活用できないことを示すものではない。
【0049】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアの一部と共に又は当該一部として供給される光学記憶媒体又は固体媒体のような適切な媒体において格納/配信されうるものであるが、インターネット又は他の有線若しくは無線の電気通信システムを介するなどの他の形態にて配信されることも可能である。
【0050】
請求項における参照符号は、その範囲を限定するものと解釈してはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギ依存型投影データから関心領域の画像を形成するための画像形成システムであって、
・前記関心領域のエネルギ依存型の第1の投影データを供給するための投影データ供給ユニット
を有し、
・前記投影データが減衰成分画像に依存するとしたモデルを用いてエネルギ依存型の第2の投影データを発生することにより前記関心領域の減衰成分画像を発生するための減衰成分画像発生ユニットを有し、前記減衰成分画像発生ユニットは、前記第1の投影データからの前記第2の投影データの偏差が小さくなるように前記減衰成分画像を発生するよう適合させられる、
システム。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成システムであって、前記減衰成分画像発生ユニットは、前記減衰成分画像のうちの少なくとも2つが空間的に重なるように適合させられる、システム。
【請求項3】
請求項1に記載の画像形成システムであって、合成減衰成分画像をもたらす減衰成分画像を合成するための減衰成分画像合成ユニットをさらに有するシステム。
【請求項4】
請求項1に記載の画像形成システムであって、前記減衰成分画像発生ユニットは、前記第1の投影データからの前記第2の投影データの偏差が、前記減衰成分画像が付与された前記第1の投影データの確率が最大になるように前記減衰成分画像を発生することによって低減されるように、前記減衰成分画像を発生するよう適合させられる、システム。
【請求項5】
請求項4に記載の画像形成システムであって、前記投影データ供給ユニットは、エネルギ窓における投射データ値を有するエネルギ依存型の第1の投影データを供給するように適合させられ、前記減衰成分画像発生ユニットは、各エネルギ窓における前記第1の投影データの投影データ値毎に前記第2の投影データのそれぞれの投影データ値が付与される前記投影データ値の確率を判定し、各エネルギ窓における前記第1の投影データの投影データ値毎に判定された前記確率の積が最大になるように前記減衰成分画像を発生するよう適合させられる、システム。
【請求項6】
請求項4に記載の画像形成システムであって、前記減衰成分画像発生ユニットは、前記減衰成分画像が付与される前記第1の投影データの確率及びノイズモデルを判定するよう適合させられる、システム。
【請求項7】
供給されたエネルギ依存型の第1の投影データから関心領域の減衰成分画像を判定する判定装置であって、
前記投影データが減衰成分画像に依存するとしたモデルを用いてエネルギ依存型の第2の投影データを発生することにより前記関心領域の減衰成分画像を発生するための減衰成分画像発生ユニットを有し、前記減衰成分画像発生ユニットは、前記第1の投影データからの前記第2の投影データの偏差が小さくなるように前記減衰成分画像を発生するよう適合させられる、
装置。
【請求項8】
エネルギ依存型の投影データから関心領域の画像を形成するための画像形成方法であって、前記関心領域のエネルギ依存型の第1の投影データを供給するステップを有し、
前記投影データが減衰成分画像に依存するとしたモデルを用いてエネルギ依存型の第2の投影データを発生することにより前記関心領域の減衰成分画像を発生するステップを有し、前記減衰成分画像は、前記第1の投影データからの前記第2の投影データの偏差が小さくなるように発生される、
方法。
【請求項9】
供給されたエネルギ依存型の第1の投影データから関心領域の減衰成分画像を判定するための判定方法であって、
前記投影データが減衰成分画像に依存するとしたモデルを用いてエネルギ依存型の第2の投影データを発生することにより前記関心領域の減衰成分画像を発生するステップを有し、前記減衰成分画像は、前記第1の投影データからの前記第2の投影データの偏差が小さくなるように発生される、
方法。
【請求項10】
エネルギ依存型投影データから関心領域の画像を形成するためのコンピュータプログラムであって、請求項1に記載の画像形成システムに、前記画像形成システムを制御するコンピュータにおいて当該プログラムが実行されるときに、請求項8に記載の方法のステップを実行させるためのプログラムコード手段を有するコンピュータプログラム。
【請求項11】
供給されたエネルギ依存型の投影データから関心領域の減衰成分画像を判定するためのコンピュータプログラムであって、請求項7に記載の判定装置に、前記判定装置を制御するコンピュータにおいて当該プログラムが実行されるときに、請求項9に記載の方法のステップを実行させるためのプログラムコード手段を有するコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−525856(P2010−525856A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504928(P2010−504928)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際出願番号】PCT/IB2008/051471
【国際公開番号】WO2008/129474
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】