説明

エネルギ回生用制御回路および作業機械

【課題】エネルギ回収システムの省スペース化とコスト低減を図れるエネルギ回生用制御回路を提供する。
【解決手段】エネルギ回生用制御回路40は、メインコントロール弁33の出力ポート38と、並列に設置したブーム第1シリンダ17c1およびブーム第2シリンダ17c2との間に、ブームエネルギ回生用の回生制御用弁ブロック20を設置する。回生制御用弁ブロック20は、ブロック本体42の内部に、エネルギ回生に係わる複数の制御特性を集約したメインスプール43などの複数の弁を組み込み、上昇状態のブームが有する位置エネルギをブーム下降時にブーム第1シリンダ17c1からアキュムレータ41に蓄圧するとともに、ブーム上昇時にアキュムレータ41の蓄圧油をブーム第1シリンダ17c1およびブーム第2シリンダ17c2に直接放出する機能を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギ回生システムを有するエネルギ回生用制御回路およびその制御回路を備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルなどの作業機械において、作業装置の持つ位置エネルギを回収し、そのエネルギを油圧源やアクチュエータ動作のアシストに使用しているものがある。
【0003】
例えば、作業装置をブームシリンダにより上下動する場合、上げたブームを下げる際には、ブームシリンダのヘッド側の油はブームの位置エネルギにより高圧に押し出される。この高圧になった油は、回路中の絞りによって熱になったり、そのままタンクへ戻されたりすると無駄になるので、図6に示されるように、ブームシリンダ1のヘッド側で高圧になった油を、電磁式切換弁2、ポペット弁3およびチェック弁4を経てアキュムレータ5に蓄圧し、また、ブームシリンダ1などのアクチュエータを動かす際に、このアキュムレータ5からパイロット式切換弁6およびチェック弁7を経て、メインポンプ8からメインコントロール弁9に作動油を供給する吐出ラインにアキュムレータ蓄圧油を放出することで、ブームの位置エネルギを有効活用するようにしたエネルギ回生システムや、これに類似するエネルギ回生システムが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−163745号公報
【特許文献2】特開2008−121893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなエネルギ回生システムは、作業装置のアクチュエータ(ブームシリンダ1)とメインコントロール弁9との間に、アキュムレータ5と、このアキュムレータ5の蓄圧と放出とを切り換える切換弁2,6などと、それらの弁類を接続する配管などの部品が多くなり、設置スペースとコストが増加する問題がある。
【0006】
特に、省エネ化のためにエネルギロスをなくす必要があり、エネルギ回生システムの設置が望まれるものの、ハイブリッド化のための電気モジュールの設置などにより機体上の設置スペースは狭くなり、電気モジュールとエネルギ回生システムとの両立が困難であることから、エネルギ回生システムの設置が容易でない。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、エネルギ回収システムの省スペース化とコスト低減を図れるエネルギ回生用制御回路およびその制御回路を備えた作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された発明は、作業装置が有するエネルギを回生するエネルギ回生システムを有するエネルギ回生用制御回路において、エネルギ回生システムを構成する複数の弁が組み込まれた回生制御用弁ブロックを備え、この回生制御用弁ブロックは、エネルギ回生に係わる複数の制御特性が集約されたメインスプールを具備したエネルギ回生用制御回路である。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載のエネルギ回生用制御回路が適用される作業装置は、ブームシリンダにより上下動可能なブームを有し、回生制御用弁ブロックは、上昇状態のブームが有する位置エネルギをブーム下降時にブームシリンダからアキュムレータに蓄圧するとともに、ブーム上昇時にアキュムレータの蓄圧流体をブームシリンダに直接放出する機能を備えたものである。
【0010】
請求項3に記載された発明は、請求項2記載のエネルギ回生用制御回路が適用されるブームシリンダは、ブーム第1シリンダおよびブーム第2シリンダが並列に設置され、メインスプールは、ブーム第1シリンダからアキュムレータへの蓄圧流入流量を制御する流入流量制御特性と、ブーム第2シリンダからのアンロードを制御するアンロード制御特性と、ブーム第1シリンダとブーム第2シリンダの連通・分離を切換制御する切換制御特性と、アキュムレータからブーム第1シリンダおよびブーム第2シリンダへの放出流量を制御する放出流量制御特性とを具備したものである。
【0011】
請求項4に記載された発明は、請求項1乃至3のいずれか記載のエネルギ回生用制御回路におけるメインスプールが、コントローラからの電気信号を電磁比例弁により圧力信号に変換したパイロット圧により任意にストローク制御されるものである。
【0012】
請求項5に記載された発明は、機体と、この機体に搭載され2本のブームシリンダにより上下動可能なブームを有する作業装置と、機体および作業装置のいずれか一方に搭載された請求項1乃至4のいずれか記載の回生制御用弁ブロックを備えたエネルギ回生用制御回路とを具備し、回生制御用弁ブロックは、ブーム下げ時に1本のブームシリンダから回収された流体をアキュムレータに蓄圧し、ブーム上げ時にアキュムレータ内の流体を2本のブームシリンダに供給する制御特性を備えた作業機械である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、エネルギ回生システムの構成部品を1つの回生制御用弁ブロックに組み込んでまとめたことにより、エネルギ回生システムの構成部品を広範囲に点在させることなく簡素な配管取り回しをすることができ、省スペース化とコスト低減を図れる。さらに、エネルギの回生に必要な複数の制御特性を1本のメインスプールに集約したことによって、それぞれの制御で必要としていた制御アクチュエータの数を削減できる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、複数の制御特性を1本のメインスプールに集約した回生制御用弁ブロックによって、上昇状態のブームが有する位置エネルギをブーム下降時にブームシリンダからアキュムレータに蓄圧するとともに、ブーム上昇時にアキュムレータの蓄圧流体をブームシリンダに直接放出する機能を備えたので、ポンプ吐出ラインに放出する場合より、蓄圧エネルギを効率良く利用できる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、メインスプールが、ブーム第1シリンダからアキュムレータへの蓄圧流入流量を制御する流入流量制御特性と、ブーム第2シリンダからのアンロードを制御するアンロード制御特性と、ブーム第1シリンダとブーム第2シリンダの連結部の連通・分離を切換制御する切換制御特性と、アキュムレータからブーム第1シリンダおよびブーム第2シリンダへの放出流量を制御する放出流量制御特性とを具備しているので、1本のメインスプールにより、アキュムレータへの蓄圧やアキュムレータからの放出を切換制御できるとともに、アキュムレータへの蓄圧流入量やアキュムレータからの放出流量を効率良く制御できる。特に、流入流量制御特性では、1本のブーム第1シリンダからアキュムレータへの蓄圧流入流量を制御するとともに、放出流量制御特性では、アキュムレータからブーム第1シリンダおよびブーム第2シリンダの2本のブームシリンダへの放出流量を制御するので、アキュムレータへの蓄圧時は、作業装置の自重による位置エネルギを1本のブーム第1シリンダに集中させることで、このブーム第1シリンダから出力される蓄圧用の圧力を、2本のブーム第1シリンダおよびブーム第2シリンダから得られるブームシリンダ保持圧の2倍にしてアキュムレータに蓄圧でき、アキュムレータからのエネルギ開放時に大きなブーム作動圧を確保できる。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、メインスプールは、コントローラからの電気信号を電磁比例弁により圧力信号に変換したパイロット圧により任意にストローク制御されるので、コントローラからの電気信号を制御することで、メインスプールの動作特性を自在に制御できる。
【0017】
請求項5記載の発明によれば、回生制御用弁ブロックは、ブーム下げ時に1本のブームシリンダから回収された流体をアキュムレータに蓄圧し、ブーム上げ時にアキュムレータ内の流体を2本のブームシリンダに供給する制御特性を備えたので、ブーム下げ・蓄圧時は、作業装置の自重による位置エネルギを1本のブームシリンダに集中させることで、このブームシリンダから出力される蓄圧用の圧力を、2本のブームシリンダから得られるブームシリンダ保持圧の2倍にしてアキュムレータに蓄圧でき、ブーム上げ・エネルギ開放時に、土砂積み込みのブーム上げ時などで必要な作動圧を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るエネルギ回生用制御回路の一実施の形態を示す回路図である。
【図2】同上制御回路のメインスプール開口特性を示す特性図である。
【図3】同上制御回路のブーム下げ操作時の状態を示す回路図である。
【図4】同上制御回路のブーム上げ操作時の状態を示す回路図である。
【図5】同上制御回路を備えた作業機械の側面図である。
【図6】従来の制御回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を、図1乃至図5に示された一実施の形態に基いて詳細に説明する。
【0020】
図5は、作業機械としての油圧ショベルHEを示し、その機体10は、下部走行体11に対して旋回軸受部12を介して上部旋回体13が旋回モータにより旋回可能に設けられて構成されている。この機体10の上部旋回体13に動力装置14、キャブ15およびバケット作業用のフロント作業装置(以下、作業装置という)16が搭載されている。この作業装置16は、上部旋回体13にブーム17が上下方向回動自在に枢着され、このブーム17にアーム(スティック)18が回動自在に軸連結され、このアーム18にバケット19が回動自在に軸連結されている。そして、ブーム17すなわち作業装置16はブームシリンダ17cにより上下方向に回動され、アーム18はアームシリンダ18cにより回動され、バケット19はバケットシリンダ19cにより回動される。これらの各シリンダを作動する流体は油すなわち作動油である。
【0021】
ブームシリンダ17cから作業装置16の下降時に放出されるブームエネルギを回生するエネルギ回生システムを構成する複数の弁が組み込まれた回生制御用弁ブロック20が、ブーム17の根元背面などに取り付けられている。
【0022】
図1は、前記動力装置14と、上記ブームシリンダ17cとしての2本のブーム第1シリンダ17c1およびブーム第2シリンダ17c2を制御するメイン油圧回路の構成を示し、動力装置14は、エンジン21により第1ポンプ23および第2ポンプ24を駆動するようにしたもので、これらの第1ポンプ23および第2ポンプ24は、容量を可変制御されるポンプである。
【0023】
ブームシリンダ17cのメイン油圧回路は、第1ポンプ23および第2ポンプ24の吐出口が、メインコントロール弁33の供給ポート34,35にそれぞれ接続され、このメインコントロール弁33は、ブーム用第1スプール36およびブーム用第2スプール37を備え、その出力ポート38,39と、ブーム第1シリンダ17c1およびブーム第2シリンダ17c2との間に、作業装置16が有するエネルギを回生するエネルギ回生システムを有するエネルギ回生用制御回路40が設けられている。
【0024】
この制御回路40は、メインコントロール弁33中のブーム用第1スプール36およびブーム用第2スプール37の出力ポート38と、ブームシリンダ17cとして並列に設置されたブーム第1シリンダ17c1およびブーム第2シリンダ17c2との間に設置された前記ブームエネルギ回生用の回生制御用弁ブロック20を備えている。
【0025】
回生制御用弁ブロック20のアキュムレータ接続ポートAccにはエネルギ蓄積用のアキュムレータ41が接続されている。
【0026】
この回生制御用弁ブロック20は、上昇状態のブーム17が有する位置エネルギをブーム17の下降時にブーム第1シリンダ17c1からアキュムレータ41に蓄圧して回生するものであり、ブロック本体42の内部に、エネルギ回生システムを構成する複数の弁が組み込まれている。これらの弁の中心となるものが、エネルギ回生に係わる複数の制御特性が集約されたパイロット操作式比例動作形のメインスプール43である。
【0027】
このパイロット操作式比例動作形のメインスプール43は、コントローラ(図示せず)からの電気信号(電流)を電磁比例弁により圧力信号に変換したパイロット圧を、その一端または他端に受けて、任意にストローク制御されるもので、ブーム第1シリンダ17c1からアキュムレータ41への蓄圧流入流量を制御する流入流量制御特性と、ブーム第2シリンダ17c2からのアンロードを制御するアンロード制御特性と、ブーム第1シリンダ17c1とブーム第2シリンダ17c2の連通・分離を切換制御する切換制御特性と、アキュムレータ41からブーム第1シリンダ17c1およびブーム第2シリンダ17c2への放出流量を制御する放出流量制御特性とを具備している。
【0028】
メインスプール43の両端にそれぞれ接続されたパイロット通路44,45は、メインスプール43の操作量をそれぞれ調整する操作量調整用の電磁比例弁46,47を介して、パイロットポンプ(図示せず)に連通されたパイロット圧ポートPiと、タンク48に連通されたドレンポートDrとに、それぞれ接続されている。
【0029】
これらの電磁比例弁46,47は、ブーム17を操作するためのブームレバー操作量が上げ下げとも一定操作量より大きいときはコントローラ(図示せず)から出力される信号によりメインスプール43のパイロット圧を減少させるように制御するとともに、操作量が一定操作量より小さいときは上記減少制御を解除してブームレバー操作量に応じたパイロット圧によりメインスプール43をストローク制御するようにし、これにより、ブーム17の急激な動作を抑制するとともに、微操作性への悪影響を与えることなくエネルギ回生を行なえるようにしている。
【0030】
メインコントロール弁33の出力ポート38に接続されたコントロール弁ポートCvは、バイパスチェック弁51を介して一方のパイロット式ポペット形のドリフト低減弁52に接続され、また通路53を経て他方のパイロット式ポペット形のドリフト低減弁54に接続され、これらのドリフト低減弁52,54の上部パイロット圧室は、セレクタ弁55を介してタンク通路56に接続された、タンクポートTを経てタンク48に接続されている。
【0031】
そして、このセレクタ弁55を、ポートPaから入力されたブーム下げパイロット圧により、オフ位置からオン位置に操作すると、ドリフト低減弁52,54の上部パイロット圧室がタンク通路56に連通して圧力低下するので、ドリフト低減弁52,54内のポペットは、下方からの圧力により押し上げられて上昇し、ポペット下室がポペット側室に連通する。
【0032】
これらのドリフト低減弁52,54のそれぞれのポペット下室には、前記バイパスチェック弁51および前記通路53が接続されているとともに、メインスプール43に設けられた連結部43aにより連通可能なヘッド側通路57,58がそれぞれ接続され、また、これらのドリフト低減弁52,54のそれぞれのポペット側室は、ヘッド側通路59,60を経てブーム第1シリンダ17c1およびブーム第2シリンダ17c2のそれぞれの接続ポートCy1,Cy2に連通されている。これらのヘッド側通路59,60には、ラインリリーフ弁63,64がそれぞれ設けられている。
【0033】
メインスプール43の内部通路の1つは、メイクアップチェック弁68を介してポートMuに連通されているとともに、タンクポートTに連通されている。ポートMuは、回生制御用弁ブロック20の外部配管により、ブーム第1シリンダ17c1およびブーム第2シリンダ17c2のロッド側に連通されている。
【0034】
アキュムレータ接続ポートAccとメインスプール43の2つのポートとの間に設けられた、アキュムレータ通路70,70には、相互に逆方向の逆止作用を有するアキュムレータチェック弁72,73が介在されている。
【0035】
このように、アキュムレータ41の蓄圧と放出を切り換える切換弁として機能するメインスプール43と、エネルギ回生システムに必要な弁類などの複数の構成部品を1つの回生制御用弁ブロック20に組み込んでまとめ、この回生制御用弁ブロック20のブロック本体42内の通路で各弁類をつなぐことにより、これらの各弁類をつなぐ配管を排除する。
【0036】
図2は、回生制御用弁ブロック20のメインスプール43が有するブームエネルギの回生に必要な開口特性を示し、ブーム第1シリンダ17c1からアキュムレータ41への蓄圧流入流量を制御する流入流量制御特性Aと、ブーム第2シリンダ17c2からタンク48へのアンロードを制御するアンロード制御特性Bと、ブーム第1シリンダ17c1とブーム第2シリンダ17c2の連結部の連通・分離を切換制御する切換制御特性Cと、アキュムレータ41からブーム第1シリンダ17c1およびブーム第2シリンダ17c2への放出流量を制御する放出流量制御特性Dとを、1本のメインスプール43に集約する。
【0037】
切換制御特性Cの右側は、ブーム第1シリンダ17c1とブーム第2シリンダ17c2の連結部が全開状態であることを示し、切換制御特性Cの左側は、ブーム第1シリンダ17c1とブーム第2シリンダ17c2の連結部が衝撃防止のために徐々に閉じられることを示す。
【0038】
電磁比例弁46,47は、コントローラ(図示せず)に接続されて、このコントローラからの制御信号により制御される。
【0039】
次に、この図1および図2に示された制御回路の作用を図1乃至図4に基づき説明する。なお、以下の作動説明は、ブーム17が単動操作される場合である。
【0040】
(i)中立時(図1)
ブーム第1シリンダ17c1およびブーム第2シリンダ17c2のヘッド側の保持圧は、回生制御用弁ブロック20内のドリフト低減弁52,54により保持されている。
【0041】
回生制御用弁ブロック20内のメインスプール43に設けられた連結部43aによりブーム第1シリンダ17c1のヘッド側通路57とブーム第2シリンダ17c2のヘッド側通路58とが連通している。
【0042】
回生制御用弁ブロック20内のメインスプール43により、ブーム第1シリンダ17c1のヘッド側通路57からアキュムレータ接続ポートAccへの通路およびアキュムレータ接続ポートAccからブーム第1シリンダ17c1およびブーム第2シリンダ17c2へのヘッド側通路57,58への通路は閉じており、アキュムレータ41への油路は遮断されている。
【0043】
(ii)ブーム下げ・蓄圧時(図3)
ブーム操作レバーが下げ方向に操作されると、回生制御用弁ブロック20内のドリフト低減弁52,54が、ポートPaから入力されたブーム下げパイロット圧により圧抜き位置に切り換わったセレクタ弁55を経て機能解除されるとともに、メインコントロール弁33内のブーム用第1スプール36が下げ方向に切り換わり、第1ポンプ23の吐出油がブーム第1シリンダ17c1およびブーム第2シリンダ17c2のロッド側に供給される。
【0044】
回生制御用弁ブロック20内のメインスプール43がブーム下げ方向(図3の右方)へ移動し(これにより左室に切り換わり)、連結部43aが徐々に閉止するとともに、ブーム第1シリンダ17c1のヘッド側通路57からアキュムレータ通路70への油路が徐々に開き、同時に、ブーム第2シリンダ17c2のヘッド側通路58からタンクポートTおよびポートMuへの油路が徐々に開く。
【0045】
ブーム第1シリンダ17c1のヘッド側油は、回生制御用弁ブロック20内のヘッド側通路59、ドリフト低減弁52、ヘッド側通路57、メインスプール43内の通路、アキュムレータチェック弁73、アキュムレータ接続ポートAccを通り、アキュムレータ41に流れる。
【0046】
要するに、作業装置16の自重および第1ポンプ23の押込み圧により、ブーム第1シリンダ17c1のヘッド側の油はアキュムレータ41に蓄圧される。
【0047】
ブーム第2シリンダ17c2のヘッド側油は、回生制御用弁ブロック20内のヘッド側通路60、ドリフト低減弁54、通路53、ヘッド側通路58、メインスプール43内の通路を通り、回生制御用弁ブロック20のタンクポートTおよびポートMuに流れる。
【0048】
すなわち、ブーム第2シリンダ17c2のヘッド側から流出した油の一部は、タンクポートTにアンロード制御されてタンク48に戻され、また、ブーム第2シリンダ17c2のヘッド側から流出した油の残り量は、ポートMuからブーム第1シリンダ17c1およびブーム第2シリンダ17c2のロッド側に回生される。
【0049】
上記動作により、上昇状態にある作業装置16の位置エネルギと第1ポンプ23からの吐出圧エネルギとをアキュムレータ41に蓄圧しながら、ブーム17が下がる。
【0050】
ここで、連結部43aを徐々に閉止して、ブーム第1シリンダ17c1とブーム第2シリンダ17c2の連通を分離状態に切り換えるのは、作業装置16の位置エネルギを1本のブーム第1シリンダ17c1に集中させることで、このブーム第1シリンダ17c1から出力される蓄圧用の圧力を、ブーム第1シリンダ17c1およびブーム第2シリンダ17c2の2本から得られるブームシリンダ保持圧の2倍にして、アキュムレータ41に蓄圧し、次の土砂積み込みのブーム上げ・エネルギ開放時などで必要な作動圧を発生させるためである。
【0051】
(iii)ブーム上げ・エネルギ開放時(図4)
メインコントロール弁33内のブーム用第1スプール36およびブーム用第2スプール37が上げ方向に切り換わり、第1ポンプ23および第2ポンプ24の吐出油が、回生制御用弁ブロック20内のバイパスチェック弁51および通路53、ドリフト低減弁52,54、ヘッド側通路59,60を経て、ブーム第1シリンダ17c1およびブーム第2シリンダ17c2のヘッド側に供給される。
【0052】
回生制御用弁ブロック20内のメインスプール43がブーム上げ方向(図4の左方)へ移動し(これにより右室に切り換わり)、連結部43aが開口連通するとともに、アキュムレータ接続ポートAccからアキュムレータ通路70、アキュムレータチェック弁72、メインスプール43の内部通路を経てヘッド側通路57,58に連通する油路が徐々に開く。
【0053】
アキュムレータ41に蓄圧された油は、アキュムレータ接続ポートAccからアキュムレータ通路70、アキュムレータチェック弁72、メインスプール43の内部通路、ヘッド側通路57,58を経て、第1ポンプ23および第2ポンプ24からの吐出油と合流し、ドリフト低減弁52,54、ヘッド側通路59,60を経てブーム第1シリンダ17c1およびブーム第2シリンダ17c2のヘッド側に流れる。
【0054】
上記動作により、ブーム下げ・蓄圧時にブームシリンダ保持圧の2倍の圧でアキュムレータ41に蓄圧されたエネルギは、ブーム17の持ち上げ動力として効果的に用いられる。
【0055】
次に、図1乃至図4に示された制御回路の効果を説明する。
【0056】
エネルギ回生システムに必要な弁類などの構成部品を1つの回生制御用弁ブロック20に組み込んでまとめたことにより、エネルギ回生システムの構成部品を広範囲に点在させることなく簡素な配管取り回しをすることができ、省スペース化とコスト低減を図れる。
【0057】
さらに、ブームエネルギの回生に必要な複数の弁制御を1本のメインスプール43に集約したことによって、それぞれの制御で必要としていた制御アクチュエータ(電磁制御弁など)の数を削減できる。
【0058】
また、複数の制御特性A,B,C,Dを1本のメインスプール43に集約した回生制御用弁ブロック20によって複数の弁類を一体化したことにより、この回生制御用弁ブロック20のメインコントロール弁33への組付け(内蔵も可能)や、図5に示されるようにブーム17の根元部分の背面への回生制御用弁ブロック20の組付けなどが可能となり、さらに、上部旋回体13上の管理し易い他の場所へもコンパクトに設置できるので、メンテナンス性も向上する。
【0059】
他の利点としては、回生制御用弁ブロック20を標準システムに追加し、そのメインスプール43を切り換えるだけで通常制御からエネルギ回生制御に切り換わるようにすることにより、標準システムを共通使用でき、コスト面および信頼性を向上できるとともに、故障などに対するフェイルセーフ性を高めることができる。
【0060】
また、複数の制御特性A,B,C,Dを1本のメインスプール43に集約した回生制御用弁ブロック20は、上昇状態のブーム17が有する位置エネルギをブーム下降時に図3に示されるようにブーム第1シリンダ17c1からアキュムレータ41に蓄圧するとともに、ブーム上昇時に図4に示されるようにアキュムレータ41の蓄圧油をブーム第1シリンダ17c1およびブーム第2シリンダ17c2に直接放出する機能を備えたので、図6に示される従来例のようにポンプ吐出ラインに放出する場合より、蓄圧エネルギを効率良く利用できる。
【0061】
すなわち、1本のメインスプール43が、ブーム第1シリンダ17c1からアキュムレータ41への蓄圧流入流量をメインスプール43の変位方向およびストロークに応じて制御する流入流量制御特性Aと、ブーム第2シリンダ17c2からのアンロードをメインスプール43の変位方向およびストロークに応じて制御するアンロード制御特性Bと、ブーム第1シリンダ17c1とブーム第2シリンダ17c2の連結部43aの連通・分離をメインスプール43の変位方向およびストロークにより切換制御する切換制御特性Cと、アキュムレータ41からブーム第1シリンダ17c1およびブーム第2シリンダ17c2への放出流量をメインスプール43の変位方向およびストロークに応じて制御する放出流量制御特性Dとを具備しているので、1本のメインスプール43により、アキュムレータ41への蓄圧やアキュムレータ41からの放出を切換制御できるとともに、アキュムレータ41への蓄圧流入量やアキュムレータ41からの放出流量を効率良く制御できる。
【0062】
特に、回生制御用弁ブロック20の流入流量制御特性Aでは、ブーム下げ時に1本のブーム第1シリンダ17c1からアキュムレータ41への蓄圧流入流量を制御するとともに、放出流量制御特性Dでは、アキュムレータ41からブーム第1シリンダ17c1およびブーム第2シリンダ17c2の2本のブームシリンダへの放出流量を制御するので、ブーム下げ時のアキュムレータ41への蓄圧時は、作業装置16の自重による位置エネルギを1本のブーム第1シリンダ17c1に集中させることで、このブーム第1シリンダ17c1から出力される蓄圧用の圧力を、2本のブーム第1シリンダ17c1およびブーム第2シリンダ17c2から得られるブームシリンダ保持圧の2倍にしてアキュムレータ41に蓄圧でき、このアキュムレータ41内の蓄圧油をブーム上げ時の2本のブームシリンダに供給するエネルギ開放時に大きなブーム作動圧を確保でき、土砂積み込み作業でのブーム上げ時などで必要な作動圧を確保できる。
【0063】
切換制御特性Cの左側に示されるように、ブーム第1シリンダ17c1とブーム第2シリンダ17c2のヘッド側を連結するメインスプール43の連結部43aが全開状態から徐々に閉じられるため、両シリンダのヘッド側接続切換のモジュレーション化を図れ、ブーム動作の急変による衝撃を防止して操作性を改善できる。
【0064】
メインスプール43は、コントローラ(図示せず)からの電気信号(電流)を操作量調整用の電磁比例弁46,47により圧力信号に変換したパイロット圧により任意にストローク制御されるので、コントローラからの電気信号を制御することで、メインスプール43の動作特性を自在に制御できる。
【0065】
例えば、電磁比例弁46,47によって、作業装置16を操作するブームレバー操作量が上げ下げとも一定操作量より大きいときはメインスプール43のパイロット圧を減少させるように制御するので、大きな操作量による作業装置16の急激な動作を抑制できるとともに、ブームレバー操作量が上げ下げとも一定操作量より小さいときは上記減少制御を解除して、一定操作量以内では通常制御とするので、従来通りに微操作性への悪影響を与えることなく、すなわち微操作性を損なうことなくエネルギ回生を行なえる。
【0066】
本発明のエネルギ回生用制御回路は、クレーンのブーム制御にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、作業装置が有するエネルギを回生するエネルギ回生システムを有するエネルギ回生用制御回路およびその制御回路を搭載した油圧ショベルやクレーンなどの作業機械を製造、販売などする産業において、利用可能である。
【符号の説明】
【0068】
HE 作業機械としての油圧ショベル
10 機体
16 作業装置
17 ブーム
17c ブームシリンダ
17c1 ブームシリンダとしてのブーム第1シリンダ
17c2 ブームシリンダとしてのブーム第2シリンダ
20 回生制御用弁ブロック
40 エネルギ回生用制御回路
41 アキュムレータ
43 メインスプール
46,47 電磁比例弁
A 流入流量制御特性
B アンロード制御特性
C 切換制御特性
D 放出流量制御特性

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置が有するエネルギを回生するエネルギ回生システムを有するエネルギ回生用制御回路において、
エネルギ回生システムを構成する複数の弁が組み込まれた回生制御用弁ブロックを備え、
この回生制御用弁ブロックは、エネルギ回生に係わる複数の制御特性が集約されたメインスプールを具備した
ことを特徴とするエネルギ回生用制御回路。
【請求項2】
作業装置は、ブームシリンダにより上下動可能なブームを有し、
回生制御用弁ブロックは、上昇状態のブームが有する位置エネルギをブーム下降時にブームシリンダからアキュムレータに蓄圧するとともに、ブーム上昇時にアキュムレータの蓄圧流体をブームシリンダに直接放出する機能を備えた
ことを特徴とする請求項1記載のエネルギ回生用制御回路。
【請求項3】
ブームシリンダは、ブーム第1シリンダおよびブーム第2シリンダが並列に設置され、
メインスプールは、
ブーム第1シリンダからアキュムレータへの蓄圧流入流量を制御する流入流量制御特性と、
ブーム第2シリンダからのアンロードを制御するアンロード制御特性と、
ブーム第1シリンダとブーム第2シリンダの連通・分離を切換制御する切換制御特性と、
アキュムレータからブーム第1シリンダおよびブーム第2シリンダへの放出流量を制御する放出流量制御特性と
を具備したことを特徴とする請求項2記載のエネルギ回生用制御回路。
【請求項4】
メインスプールは、
コントローラからの電気信号を電磁比例弁により圧力信号に変換したパイロット圧により任意にストローク制御されるものである
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のエネルギ回生用制御回路。
【請求項5】
機体と、
この機体に搭載され2本のブームシリンダにより上下動可能なブームを有する作業装置と、
機体および作業装置のいずれか一方に搭載された請求項1乃至4のいずれか記載の回生制御用弁ブロックを備えたエネルギ回生用制御回路とを具備し、
回生制御用弁ブロックは、ブーム下げ時に1本のブームシリンダから回収された流体をアキュムレータに蓄圧し、ブーム上げ時にアキュムレータ内の流体を2本のブームシリンダに供給する制御特性を備えた
ことを特徴とする作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−13123(P2012−13123A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148585(P2010−148585)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(505236469)キャタピラー エス エー アール エル (144)
【Fターム(参考)】