説明

エポキシ樹脂組成物及びその硬化物

【課題】 硬化剤を不要とすることも可能な自己硬化型のエポキシ樹脂組成物、及び1液組成物でありながらも保存安定性が優れるエポキシ樹脂組成物を提供可能なエポキシ樹脂を開発し、それを用いたエポキシ樹脂組成物、及びこれらを硬化した硬化物を提供すること。
【解決手段】 芳香族性アセタール基(a1)とエポキシ基(a2)とを1分子中に有するエポキシ樹脂(A)を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物及びこれを硬化した硬化物。更に活性水素(b1)を有する硬化剤(B)を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物及びこれを硬化した硬化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業性が良好で、工業的な大量生産工程に好適に用いる事ができるエポキシ樹脂組成物とそれらの硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は種々の硬化剤で硬化させることにより、一般的に硬化時の低収縮性(寸法安定性)、電気絶縁性、耐薬品性などに優れた硬化物となることが知られている。最近のエレクトロニクス分野に代表される大量生産体制が求められる分野では、使用される接着剤や成形材料やフィルム材料の製造を簡略化して、短時間での大量生産化を実現できる合理的な材料への要求が強い。しかしながら、従来のエポキシ樹脂は、硬化させるため、硬化剤が必須成分として使用される、いわゆる2液型であることから組成物生産時には配合に多大な時間と経費を要し、改良が切望されている。
【0003】
これらの要求に対して、一液型のエポキシ樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)が、前記特許文献に開示されている該組成物は、汎用のエポキシ樹脂と酸無水物を組み合わせて配合していることから安定性が悪く、特に環境中の水分、温度を厳密に管理しなければならず、使用可能な時間も制約されて、作業上、工程管理上、多大な手間を要する問題があり、更なる改良が求められている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−67981号公報(2−3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、硬化剤を不要とすることも可能な自己硬化型のエポキシ樹脂組成物、及び1液組成物でありながらも保存安定性が優れるエポキシ樹脂組成物を提供可能なエポキシ樹脂を開発し、それを用いたエポキシ樹脂組成物及びこれらを硬化した硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するため、前記の特性に優れるエポキシ樹脂を求めて鋭意研究した結果、芳香環に結合したアセタール基を分子中に含有するエポキシ樹脂を用いることによって、前記の課題を解決できることを見いだし、本発明を完成した。
【0007】
すなわち本発明は、芳香族性アセタール基(a1)とエポキシ基(a2)とを1分子中に有するエポキシ樹脂(A)を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物、及びその硬化物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、硬化剤を不要とすることも可能な自己硬化型、及び1液型の組成物でありながらも、保存安定性が優れる組成物を提供可能なエポキシ樹脂を提供する事が出来、それを用いたエポキシ樹脂組成物及びこれらを硬化した硬化物を提供することができる。これらのエポキシ樹脂組成物は作業性、生産性に優れ、硬化物物性に優れる塗料、半導体封止材、プリント配線基板、コンポジット材料等として極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いるエポキシ樹脂(A)は、1分子中に芳香族性アセタール基(a1)とエポキシ基(a2)を有する化合物である。この芳香族性アセタール基(a1)は、加熱条件によって、容易に分解し、芳香族性水酸基に転化され、それがエポキシ基(a2)と反応するため、エポキシ樹脂(A)は硬化剤を不要とすることも可能な自己硬化型エポキシ樹脂となり得る。またこの芳香族性アセタール基(a1)は、常温下では極めて安定なため、保管中に重合が進んで増粘、或いはゲル化することも防げ、作業性と工程管理性に極めて優れるものである。
【0010】
また脂肪鎖の長い芳香族性アセタール基(a1)を有するエポキシ樹脂(A)は、その粘度が低下し、フィラーの高充填化が可能であり、かつ成形時の流動性も優れる。
【0011】
該エポキシ樹脂(A)の製造方法としては特に限定されるものではないが、例えば、多価ヒドロキシ化合物(x1)とビニルエーテル類(x2)とエピハロヒドリン類(x3)を反応させることによって容易に合成する事が出来る。具体的には、前記多価ヒドロキシ化合物(x1)中の水酸基の一部をビニルエーテル類(x2)中のビニルエーテル基と反応させて、部分アセタール化された変性多価ヒドロキシ化合物(以下、中間体と略記する。)を合成した後、アセタール化されていない水酸基をエピハロヒドリン類(x3)と反応させてグリシジルエーテル化する。例えば、フェノールノボラック樹脂をベースの多価ヒドロキシ化合物(x1)に選択した場合、下記化学反応式(1)
【0012】
【化1】

で表されるスキームで合成される。得られるエポキシ樹脂(A)は、下記化学反応式
【0013】
【化2】

で表されるように、芳香族性アセタール基(a1)が、加熱条件下で熱分解を起こして、遊離揮発して芳香族性水酸基に戻り、それがエポキシ基(a2)と反応することによって、硬化反応に至る。
【0014】
ここで得られるエポキシ樹脂(A)中の芳香族性アセタール基(a1)とエポキシ基(a2)とのモル比率は、得に限定されるものではないが、例えば、硬化剤を全く使用しない自己硬化システムであれば、芳香族性アセタール基(a1)/エポキシ基(a2)=100/50〜100/150の範囲であることが、得られる硬化物の耐熱性や強度などを鑑みて好ましい。さらに好ましくは、前記比率(a1)/(a2)=100/70〜100/130(モル比率)の範囲である。
【0015】
エポキシ樹脂(A)の出発物質である多価ヒドロキシ化合物(x1)としては、1分子中に2個より多い芳香族性水酸基を含有する芳香族系化合物であれば、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールAD、レゾルシン、ハイドロキノン、カテコール、ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、フェノール/ホルムアルデヒド重縮合物、フェノール/アセトアルデヒド重縮合物、フェノール/ベンズアルデヒド重縮合物、オルソクレゾール/ホルムアルデヒド重縮合物、オルソクレゾール/アセトアルデヒド重縮合物、1−ナフトール/ホルムアルデヒド重縮合物、2−ナフトール/ホルムアルデヒド重縮合物オルソクレゾール/アセトアルデヒド重縮合物、1−ナフトール/アセトアルデヒド重縮合物、2−ナフトール/アセトアルデヒド重縮合物、フェノール/サリチルアルデヒド重縮合物、オルソクレゾール/サリチルアルデヒド重縮合物、1−ナフトール/サリチルアルデヒド重縮合物、2−ナフトール/サリチルアルデヒド重縮合物等とこれらの置換基含有体等のフェノール類(ナフトール類)/アルデヒド類重縮合物類、フェノール/ジシクロペンタジエン重付加物、フェノール/トリシクロペネンタジエン重付加物、フェノール/テトラヒドロインデン重付加物、フェノール/4−ビニルシクロヘキセン重付加物、フェノール/5−ビニルノボルナ−2−エン重付加物、フェノール/α−ピネン重付加物、フェノール/β−ピネン重付加物、フェノール/リモネン重付加物、オルソクレゾール/ジシクロペンタジエン重付加物、オルソクレゾール/テトラヒドロインデン重付加物、オルソクレゾール/4−ビニルシクロヘキセン重付加物、オルソクレゾール/5−ビニルノボルナ−2−エン重付加物、オルソクレゾール/α−ピネン重付加物、1−ナフトール/ジシクロペンタジエン重付加物、1−ナフトール/4−ビニルシクロヘキセン重付加物、1−ナフトール/5−ビニルノルボルナジエン重付加物、1−ナフトール/α−ピネン重付加物、1−ナフトール/β−ピネン重付加物、1−ナフトール/リモネン重付加物、オルソクレゾール/β−ピネン重付加物、オルソクレゾール/リモネン重付加物等とこれらの置換基含有体等のフェノール類(ナフトール類)/ジエン類重付加物類、フェノール/p−キシレンジクロライド重縮合物、1−ナフトール/p−キシレンジクロライド重縮合物、2−ナフトール/p−キシレンジクロライド重縮合物、フェノール/ビスクロロメチルビフェニル重縮合物、オルトクレゾール/ビスクロロメチルビフェニル重縮合物、1−ナフトール/ビスクロロメチルビフェニル重縮合物、2−ナフトール/ビスクロロメチルビフェニル重縮合物とこれらの置換基含有体等のフェノール類/アラルキル樹脂類、などの分子量分布を有するアモルファス性重合化合物が挙げられる。またこれらは、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ハロゲン原子などの置換基をもつものであっても構わない。さらには、トリヒドロキシベンゼン、2,7−ジヒドロキシナフタレンが1位どうしでメチレン基を介して結合した2量体、1,1’,2,2’−テトラヒドロキシフェニロールエタンなどのモノマー型結晶性のポリヒドロキシ化合物であってもよい。これらの化合物(x1)としては、単独でも2種以上の混合物として使用してもよい。
【0016】
これらのなかでも、自己硬化性を高めるためには、1分子中に3個より多い芳香族性水酸基を含有する化合物が好ましい。耐熱性を重視する用途であれば、具体的には、フェノール/ホルムアルデヒド重縮合物、クレゾール/ホルムアルデヒド重縮合物、ナフトール/ホルムアルデヒド重縮合物、フェノール/ジシクロペンタジエン重縮合物、2,7−ジヒドロキシナフタレンが1位どうしでメチレン基を介して結合した2量体、1,1’,2,2’−テトラヒドロキシフェニロールエタンなどが好ましい。
【0017】
また前記ビニルエーテル類(x2)としては、1分子中に1個以上のビニルエーテル基を含有する化合物であれば、特に限定されないが、得られるエポキシ樹脂(A)の流動性を高める観点から、モノビニルエーテル類を主成分として使用することが好ましい。具体的に例示するならば、脂肪族モノビニルエーテル、脂環式モノビニルエーテル、環状化合物ビニルエーテル等が挙げられ、脂肪族モノビニルエーテルとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。脂環式ビニルエーテルとしては、例えば、シクロヘキシルモノビニルエーテル等が挙げられる。さらに、環状化合物ビニルエーテルとして、例えば、2,3−ジヒドロフラン、3,4−ジヒドロフラン、2,3−ジヒドロ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン、3、4−ジヒドロ−4、4−ジメチル−2H−ピラン−2−オン、3,4−ジヒドロ−2−エトキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−2−カルボン酸ナトリウム等が挙げられる。モノビニルエーテル類としては1種類でも、2種以上の混合物として使用しても良い。これらのなかでも、原料の入手容易性や芳香族性アセタール基(a1)の解離温度(水酸基に戻る反応が速やかに進行する温度)等の点からn−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテルが好ましい。また、前記モノビニルエーテル類に対して20モル%以下の量のジビニルエーテル類を改質効果を目的に使用しても構わない。前記ジビニルエーテル類としては、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1、4−ブタンジジオールジビニルエーテル、1、4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルなどが挙げられ、単独でも2種以上の混合物として使用しても良い。
【0018】
前記多価ヒドロキシ化合物(x1)と前記ビニルエーテル類(x2)との反応(多価ヒドロキシ化合物(x1)中の水酸基の一部をアセタール化する反応)について詳述する。この反応は芳香族性水酸基とビニルエーテル基との反応条件にのっとればよく、特に限定されるものではないが、例えば、多価ヒドロキシ化合物(x1)と所定量のビニルエーテル類(x2)とを仕込み、撹拌混合しながら加熱することによって目的の水酸基とビニルエーテル基が共存した中間体を得ることができる。この場合、必要に応じて、有機溶媒や触媒を使用することができる。使用できる有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族性有機溶媒や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系有機溶媒、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノールなどのアルコール系有機溶媒等を用いることができ、用いる原料や生成物の溶解度などの性状や反応条件や経済性等を考慮して適宜選択すればよい。有機溶媒の量としては、原料重量に対して、5〜500重量%の範囲で用いることが好ましい。
【0019】
また、前記触媒に関しては、通常、無触媒系においても、十分反応は進行するが、用いる原料の種類や得られる中間体の所望の特性、所望の反応速度等によっては、触媒を使用してもよい。その触媒の種類としては、通常、水酸基とビニルエーテル基の反応に用いられる触媒であれば特に限定されるものではないが、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸などの無機酸、燐酸エステル類、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、キシレンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、シュウ酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸など有機酸、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化スズ、塩化ガリウム、塩化チタン、臭化アルミニウム、臭化ガリウム、三弗化ホウ素エーテル錯体、三弗化ホウ素フェノール錯体などのルイス酸等が挙げられるが、反応速度向上効果や副反応抑制効果を考慮すると、燐酸エステル類が特に好ましい。添加量としては特に限定されないが、原料全重量に対して10ppm〜1重量%の範囲で用いることが好ましい。但し、触媒添加系においては、芳香環に対するビニル基の核付加反応を起こさないように、その種類や添加量、及び反応条件を選択する必要がある。
【0020】
反応条件としては、通常、室温から200℃、好ましくは50〜150℃の温度で、0.5〜30時間程度、加熱撹拌すればよい。この際、ビニルエーテル類(x2)の自己重合を防止するため、酸素含有雰囲気下での反応の方が好ましい。反応の進行程度は、ガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィー等を用いて、原料の残存量を測定することによって追跡できる。また有機溶媒を使用した場合は、蒸留等でそれを除去し、触媒を使用した場合は、必要によって失活剤等で失活させて、水洗や濾過操作によって除去する。
【0021】
上記反応における多価ヒドロキシ化合物(x1)とビニルエーテル類(x2)の反応比率としては、後述する硬化剤(B)を使用しない場合には、最終的に得られるエポキシ樹脂を用いた組成物中の芳香族性アセタール基(a1)とエポキシ基(a2)との比率が当量付近になるように設計すれば特に限定されるものではないが、中間体中の水酸基/芳香族性アセタール基=100/50〜100/150の範囲である事が、得られる硬化物の耐熱性に優れる理由で特に好ましい。
【0022】
該中間体をエポキシ化する方法は、種々のエピハロヒドリン類(x3)を用いた方法に従えば良く、特に限定されるものではないが、例えば、前記で得られた中間体とエピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン等のエピハロヒドリン類(x3)の溶解混合物に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物を添加し、または添加しながら20〜120℃で1〜10時間反応させる方法が挙げられる。エピハロヒドリン類(x3)の添加量としては、原料の中間体中の水酸基1当量に対して、通常0.3〜20当量の範囲で用いられる。
【0023】
前記アルカリ金属水酸化物はその水溶液を使用してもよく、その場合は該アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に減圧下、または常圧下連続的に水及びエピハロヒドリン類(x3)を留出させ、更に分液し水は除去しエピハロヒドリン類(x3)は反応系内に連続的に戻す方法でもよい。
【0024】
また中間体とエピハロヒドリン類(x3)との溶解混合物にテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加し50〜150℃で1〜5時間反応させて得られる該中間体のハロヒドリンエーテル化物にアルカリ金属水酸化物の固体または水溶液を加え、再び20〜120℃で1〜10時間反応させ脱ハロゲン化水素(閉環)させる方法でもよい。
【0025】
更に、反応を円滑に進行させるためにメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジオキサンなどのエーテル類、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒などを添加して反応を行うことが好ましい。溶媒を使用する場合のその使用量としては、エピハロヒドリン類(x3)の量に対し通常5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%である。また非プロトン性極性溶媒を用いる場合はエピハロヒドリン類(x3)の量に対し通常5〜100重量%、好ましくは10〜60重量%である。
【0026】
これらのエポキシ化反応の反応物を水洗後、または水洗無しに加熱減圧下、110〜250℃、圧力10mmHg以下でエピハロヒドリン類(x3)や他の添加溶媒などを除去することによりエポキシ樹脂(A)を得る事ができる。
【0027】
もちろん中間体を製造して、反応器から取り出すことなくして、そのままエピハロヒドリン類(x3)等の原料を仕込み、連続してグリシジルエーテル化するような合理的手段も用いることもできる。
【0028】
前記で得られたエポキシ樹脂(A)は、前述のように加熱によって芳香族性アセタール基(a1)が水酸基になり、この水酸基とエポキシ基(a2)とが反応して自己硬化するものであるため、硬化剤を使用しなくても硬化物を得る事が可能であるが、得られる硬化物の所望の性能や、作業性の向上等を目的として、その他のエポキシ樹脂、硬化剤や種々の添加剤、充填材等を配合する事も可能である。
【0029】
前記その他のエポキシ樹脂としては特に制限されるものではなく、種々の物を用いる事が出来、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、カテコール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等の液状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、ブロム化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などが挙げられ、単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。その他のエポキシ樹脂と前記エポキシ樹脂(A)を混合して使用する場合に於いては、本発明の効果を損なわない範囲として、エポキシ樹脂として前記エポキシ樹脂(A)が30重量%以上含有するように用いる事が好ましい。この時、後述する硬化剤を併用しない場合には、前記エポキシ樹脂(A)中の芳香族性アセタール基(a1)の含有量は、エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基(a2)よりも過剰に含有されている事が好ましい。
【0030】
前記硬化剤としては、エポキシ基と反応する事が出来る活性水素(b1)を有する硬化剤(B)を用いる事が好ましい。硬化剤(B)を併用する場合には、予め前記エポキシ樹脂(A)と混合して保存する、所謂1液型のエポキシ樹脂組成物としても良く、この時は保存安定性が良好であり、保管及び工程管理時の煩雑な環境管理を行わなくてもよいため、作業性、大量生産性に優れたエポキシ樹脂組成物となる。
【0031】
前記活性水素基(b1)を有する硬化剤(B)としては、特に限定されるものではなく、種々の化合物を使用する事ができるが、例えば、アミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノ−ル系化合物などを用いることができる。これらの例としては、アミン系化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミンなどの脂肪族ポリアミン類、メタキシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミンなどの芳香族ポリアミン類、1、3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミンなどの脂環族ポリアミン類等、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0032】
また、酸無水物系化合物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。
【0033】
また、フェノール系化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂やこれらの変性物等が挙げられる。また潜在性触媒として、イミダゾ−ル、BF−アミン錯体、グアニジン誘導体なども挙げられる。
【0034】
また、これらのアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノ−ル系化合物等の硬化剤(B)は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0035】
本発明のエポキシ樹脂組成物において硬化剤(B)の使用量としては、硬化が円滑に進行し、良好な硬化物物性が得られることから、エポキシ樹脂(A)中の芳香族性アセタール基(a1)とエポキシ基(a2)と、硬化剤(B)中の活性水素基(b1)の混合割合が、エポキシ基(a2)/[芳香族性アセタール基(a1)+活性水素基(b1)]=100/50〜100/150の範囲であることが好ましい。尚、前述のその他のエポキシ樹脂を併用する場合に於いては、エポキシ基としてエポキシ樹脂(A)中のエポキシ基(a1)とその他のエポキシ樹脂中のエポキシ基との合計量100モルに対して、芳香族性アセタール基(a1)と活性水素基(b1)との合計量が50〜150モルの範囲である事が好ましい。
【0036】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、更に硬化促進剤を適宜使用することもできる。硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩、等が挙げられ、これらは単独のみならず2種以上の併用も可能である。例えば、半導体封止材料用途としては、リン系ではトリフェニルホスフィン、アミン系では1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)などが、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性などが優れるために好ましい。
【0037】
前記硬化促進剤の添加量としては特に限定されないが、エポキシ樹脂と硬化剤の合計量に対して、0.05〜10重量%の範囲が好ましい。
【0038】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、無機質充填材を配合することができる。前記無機質充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。前記無機充填材の配合量を特に大きくする場合は溶融シリカを用いることが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め且つ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は難燃性を考慮して、高い方が好ましく、エポキシ樹脂組成物の全体量に対して65重量%以上が特に好ましい。また導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0039】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
【0040】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて難燃付与剤も添加できる。前記難燃付与剤としては種々のものが使用できるが、例えば、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールAなどのハロゲン化合物、赤リンや各種燐酸エステル化合物などの燐原子含有化合物、メラミン或いはその誘導体などの窒素原子含有化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、硼酸カルシウムなどの無機系難燃化合物が例示できる。
【0041】
前記難燃付与剤としては、例えば、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールAなどのハロゲン化合物、赤リンや各種燐酸エステル化合物などの燐原子含有化合物、メラミン或いはその誘導体などの窒素原子含有化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、硼酸カルシウムなどの無機系難燃化合物等が挙げられる。
【0042】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて有機溶媒を用いることができる。有機溶媒は粘度を下げて、流動性や成形性の向上を図るために用いられ、特にその種類は限定されるものではない。例示するならば、メタノール、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。その使用量は、エポキシ樹脂組成物の固形分値が20〜95重量%の範囲になることが好ましい。
【0043】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)、必要により用いられる硬化剤(B)、その他のエポキシ樹脂、硬化促進剤等を、得られる組成物の粘度に応じた攪拌方法を用いて均一に混合することによって得ることが出来る。本発明のエポキシ樹脂組成物の形状についてはなんら制限されるものではなく、用いるエポキシ樹脂(A)が液状であっても、併用するその他のエポキシ樹脂、硬化剤(B)、充填剤種及びその使用量によっては、得られるエポキシ樹脂組成物が常温で液状とならない場合もありうる。使用用途、所望の性能等によって、該組成物の形状を適宜選択すればよい。
【0044】
本発明のエポキシ樹脂組成物の使用用途としては、特に制限されるものではなく、例えば、プリント基板用、電子部品の封止材用、レジストインキ、導電ペースト、樹脂注型材料、接着剤、絶縁塗料等のコーティング材料等が挙げられ、これらの中でも、得られる硬化物の誘電特性や低吸湿率性に優れる点から、プリント基板用樹脂組成物、電子部品の封止材用樹脂組成物、レジストインキ、導電ペーストに好適に用いることができる。
【0045】
前記プリント基板用としては、特にプリプレグ用、銅張り積層板用、ビルドアッププリント基板の層間絶縁材料用に好適に用いることができる。
【0046】
本発明のエポキシ樹脂組成物をプリント基板用プリプレグ用樹脂組成物とするには、該樹脂組成物の粘度によっては無溶媒で用いることもできるが、有機溶剤を用いてワニス化することでプリプレグ用樹脂組成物とすることが好ましい。前記有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のアルコール性溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素性溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド等の非アルコール性極性溶媒等沸点160℃以下の溶剤が挙げられ、適宜に2種または、それ以上の混合溶剤として使用することができる。得られた該ワニスを、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などの各種補強基材に含浸し、用いた溶剤種に応じた加熱温度、好ましくは50〜170℃で加熱することによって、硬化物であるプリプレグを得ることができる。この時用いる樹脂組成物と補強基材の重量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60重量%となるように調整することが好ましい。
【0047】
本発明のエポキシ樹脂組成物から銅張り積層板用樹脂組成物を得るには、上記プリプレグ用樹脂組成物とする方法と同じであり、得られたプリプレグを、例えば特開平7−41543号公報に記載されているように積層し、適宜銅箔を重ねて、1〜10MPaの加圧下に170〜250℃で10分〜3時間、加熱圧着させることにより、銅張り積層板を得ることができる。
【0048】
本発明のエポキシ樹脂組成物からビルドアップ基板用層間絶縁材料を得る方法としては特に限定されないが、例えば特公平4−6116号公報、特開平7−304931号公報、特開平8−64960号公報、特開平9−71762号公報、特開平9−298369号公報などに記載の各種方法を採用できる。より具体的には、ゴム、フィラーなどを適宜配合した当該樹脂組成物を、回路を形成した配線基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる。その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する。前記めっき方法としては、無電解めっき、電解めっき処理が好ましく、また前記粗化剤としては酸化剤、アルカリ、有機溶剤等が挙げられる。このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成することにより、ビルドアップ基盤を得ることができる。但し、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行う。また、銅箔上で当該樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170〜250℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
【0049】
前記電子部品の封止材用としては、半導体チップの封止材用、アンダーフィル用、半導体の層間絶縁膜用に好適に用いることができる。
【0050】
本発明のエポキシ樹脂組成物を半導体封止材料用に調整するためには、エポキシ樹脂(A)、必要に応じて配合される硬化剤(B)、その他のエポキシ樹脂、カップリング剤、離型剤などの添加剤や無機充填材などを予備混合した後、押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に混合する手法が挙げられる。溶融混合型(無溶媒)組成物の場合は、該組成物を注型、或いはトランスファ−成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに50〜200℃で2〜10時間に加熱することにより硬化物を得ることができ、半導体パッケージ成形はこれに該当する。
【0051】
またテープ状封止剤として使用する場合には、前述の手法によって得られた樹脂組成物を加熱して半硬化シートを作製し、封止剤テープとした後、この封止剤テープを半導体チップ上に置き、100〜150℃に加熱して軟化させ成形し、170〜250℃で完全に硬化させる方法を挙げることができる。
【0052】
更にポッティング型液状封止剤として使用する場合には、前述の手法によって得られた樹脂組成物を半導体チップや電子部品上に塗布し、直接、硬化させればよい。
【0053】
本発明のエポキシ樹脂組成物をアンダーフィル樹脂として使用する方法についても特に限定されないが、特開平9−266221号公報や「エレクトロニクス分野のプラスチック」(工業調査会発行、1999年、27〜34頁)に記載されるような方法を採用できる。より具体的には、フリップチップ実装時に電極のついた半導体素子と半田のついたプリント配線基板との空隙に、本発明のエポキシ樹脂組成物を毛細管現象を利用してキャピラリーフロー法によって注入し硬化させる方法、予め基板ないし半導体素子上に本発明のエポキシ樹脂組成物を半硬化させてから、加熱して半導体素子と基板を密着させ、完全硬化させるコンプレッションフロー法等が挙げられる。この場合、本発明のエポキシ樹脂組成物は、有機溶剤を含有しない液状のエポキシ樹脂組成物の形態で使用するのが好ましい。特にキャピラリーフロー法を用いる場合には低粘度である必要があり、5000mPa・s以下の粘度であることが好ましい。当該樹脂組成物がこれを超える粘度であれば、室温〜100℃以下に加温して注入することもできる。
【0054】
本発明のエポキシ樹脂組成物を半導体の層間絶縁材料として使用する場合は、例えば特開平6−85091号公報の記載の方法が採用できる。層間絶縁膜に用いる場合は半導体に直接接することになるため、高温環境下において線膨張率の差によるクラックが生じないよう、絶縁材の線膨張率を半導体の線膨張率に近づけることが要求される。また、半導体の微細化、多層化、高密度化による信号遅延の問題に対応するため、絶縁材の低容量化技術が求められており、絶縁材を低誘電化することによってこの問題を解決することができる。当該樹脂組成物は、これらの要求を満たす特性を有するため好ましい。
【0055】
本発明のエポキシ樹脂組成物をレジストインキとして使用する場合には、例えば特開平5−186567号公報に記載の方法に準じて、レジストインキ用組成物とした後、スクリーン印刷方式にてプリント基板上に塗布した後、レジストインキ硬化物とする方法が挙げられる。
【0056】
本発明のエポキシ樹脂組成物を導電ペーストとして使用する場合には、例えば、特開平3−46707号公報に記載の微細導電性粒子を該樹脂組成物中に分散させ異方性導電膜用組成物とする方法、特開昭62−40183号公報、特開昭62−76215号公報、特開昭62−176139号公報などに開示されているような室温で液状である回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とする方法が挙げられる。
【0057】
本発明のエポキシ樹脂組成物を塗料用樹脂組成物として使用する場合には、例えば、エポキシ樹脂(A)、必要に応じて併用されるその他のエポキシ樹脂に顔料、着色剤、添加剤等を配合し、必要に応じて有機溶剤を加え、ペイントシェーカー、混合ミキサー、ボールミル等の装置を用いて十分に混合し、均一に分散させ、これに硬化剤(B)、硬化促進剤等を更に配合して均一にし、所望の粘度に有機溶剤等で調製する方法を挙げることができる。
【0058】
前記手法によって得られた塗料用に調製された樹脂組成物は、各種の塗装方法によって様々な基材に塗布することができ、特にその手法は制限されるものではなく、例えば、グラビアコーター、ナイフコーター、ロールコーター、コンマコーター、スピンコーター、バーコーター、刷毛塗り、ディッピング塗布、スプレー塗布、静電塗装等のコーティング方法が挙げられる。また、前記塗料用に調製された樹脂組成物を塗装した後の硬化方法についても特に制限されるものではない。
【0059】
本発明のエポキシ樹脂組成物を接着剤用樹脂組成物として使用する場合には、例えば、エポキシ樹脂(A)、必要に応じて併用される硬化剤(B)、その他のエポキシ樹脂、硬化促進剤、添加剤等を室温または加熱下で混合ミキサー等を用いて均一に混合することによって得ることができ、各種の基材に塗布した後、加熱下に放置することによって基材の接着を行うことができる。
【0060】
本発明のエポキシ樹脂組成物から複合材料を得るには、本発明のエポキシ樹脂組成物を粘度によっては無溶媒系で使用することが可能であるが、無溶媒系での扱いが困難な場合は、有機溶剤を用いてワニス化し、該ワニスを補強基材に含浸し、加熱してプリプレグを得た後、それを繊維の方向を少しずつ変えて、擬似的に等方性を持たせるように積層し、その後加熱することにより硬化成形する方法が挙げられる。前記有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のアルコール性溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素性溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド等の非アルコール性極性溶媒等沸点160℃以下の溶剤が挙げられ、適宜に2種または、それ以上の混合溶剤として使用することができる。加熱温度としては、用いる溶剤の種類を考慮して決定され、好ましくは50〜150℃とされる。補強基材の種類は特に限定されず、例えば炭素繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などが挙げられる。樹脂分と補強基材の割合も特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60重量%となるように調整するのが好ましい。
【0061】
本発明の硬化物は、本発明のエポキシ樹脂組成物を成形熱硬化させて得ることができ、成型物、積層物、注型物、接着剤、塗膜、フィルムなどの形態をもつ。例えば、溶融混合型の組成物の場合は、該組成物を注型、或いはトランスファ−成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに80〜250℃で2〜10時間に加熱することにより硬化物を得ることができ、半導体パッケージ成形はこれに該当する。またワニス状組成物の場合は、それを基材に塗装し加熱乾燥するなどして塗膜を得ることができ、塗料はこれに該当する。またまたそれをガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させ加熱乾燥してプリプレグを得て、それを熱プレス成形して得ることができ、プリント配線基板用やCFRP用の積層材料はこれに該当する。
【実施例】
【0062】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。尚、以下に記載の部及び%は、特に断りがない限り重量基準である。
【0063】
合成例1:下記構造式(I)で示される中間体の合成
【0064】
【化3】

(式中、nは繰り返し数の平均値を示し、約8である。)
【0065】
温度計、撹拌機を取り付けたフラスコにクレゾールノボラック樹脂(軟化点125℃、水酸基当量120g/eq)120g(水酸基1モル)とn−プロピルビニルエーテル43g(0.5モル)とメチルイソブチルケトン100gを仕込み、それに燐酸エステル触媒(大八化学製;AP−8)1gを添加して、80℃で10時間撹拌して反応させた。次いで真空下でその温度でメチルイソブチルケトンを回収し、芳香族性水酸基/芳香族性アセタール基=50/50(モル比率)の目的の中間体(I)(アセタール変性クレゾールノボラック樹脂、理論水酸基当量326g/eq)を得た。
【0066】
合成例2:下記構造式で示されるエポキシ樹脂(A−1)の合成
【0067】
【化4】

(式中、nは繰り返し数の平均値を示し、1〜10の範囲である。)
【0068】
温度計、滴下ロート、冷却管、攪拌機、加熱装置を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施しながら、上記で得られた中間体163g(芳香族性水酸基0.5当量)、エピクロルヒドリン232g(2.5モル)、n−ブタノール30g、テトラエチルベンジルアンモニウムクロライド1.0gを仕込み溶解させた。65℃に昇温した後に、共沸する圧力までに減圧して、49%水酸化ナトリウム水溶液41g(0.5モル)を5時間かけて滴下した、次いで同条件下で0.5時間攪拌を続けた。この間、共沸で留出してきた留出分をディーンスタークトラップで分離して、水層を除去し、油層を反応系内に戻しながら反応した。その後、未反応のエピクロルヒドリンを減圧蒸留して留去させた。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン550gとn−ブタノール55gとを加え溶解した。更にこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液10gを添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のpHが中性となるまで水100部で水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去して、目的のエポキシ基/芳香族性アセタール基の比率が約5/5(モル比率)である芳香族性アセタール基を分子中に含有するクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(A−1)を得た。得られたエポキシ樹脂(A−1)のエポキシ当量は410g/eqであった。
【0069】
合成例3:エポキシ樹脂(A−2)の合成
合成例1において、n−プロピルビニルエーテルを21.5g(0.25モル)に変更し、エポキシ化時に用いる中間体(I)を94gに変更した以外は、合成例1及び2と同様にして、目的のエポキシ基/芳香族性アセタール基の比率が約3/1(モル比率)である芳香族性アセタール基を分子中に含有するクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(A−2)を得た。得られたエポキシ樹脂(A−2)のエポキシ当量は250g/eqであった。
【0070】
合成例4:下記構造式(II)で示される中間体の合成
【0071】
【化5】

(式中、nは繰り返し数の平均値を示し、約7である。)
【0072】
合成例1においてクレゾールノボラック樹脂をフェノールノボラック樹脂(水酸基当量106g/eq、軟化点120℃)106gに変更した以外は、合成例1と同様にして、芳香族性水酸基/芳香族性アセタール基=50/50(モル比率)の目的の中間体(II)(アセタール変性フェノールノボラック樹脂、理論水酸基当量298g/eq)を得た。
【0073】
合成例5:下記構造式で示されるエポキシ樹脂(A−3)の合成
【0074】
【化6】

(式中、nは繰り返し数の平均値を示し、1〜10の範囲である。)
【0075】
合成例2において、アセタール変性クレゾールノボラック樹脂を合成例3で得られたアセタール変性フェノールノボラック樹脂149gに変更した以外は、合成例2と同様にして、目的のエポキシ基/芳香族性アセタール基の比率が約5/5(モル比率)である芳香族性アセタール基を分子中に含有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂(A−3)を得た。得られたエポキシ樹脂(A−3)のエポキシ当量は375g/eqであった。
【0076】
合成例6:エポキシ樹脂(A−4)の合成
合成例1において、n−プロピルビニルエーテルを21.5g(0.25モル)に変更し、エポキシ化時の中間体として中間体(II)を84g用いるようにに変更した以外は、合成例1及び2と同様にして、目的のエポキシ基/芳香族性アセタール基の比率が約3/1(モル比率)である芳香族性アセタール基を分子中に含有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂(A−4)を得た。得られたエポキシ樹脂(A−4)のエポキシ当量は242g/eqであった。
【0077】
実施例1〜4と比較例1〜3
上記で合成された2種類の芳香族性アセタール基を分子中に含有するエポキシ樹脂(A−1、−2、−3、−4)を、一般的なエポキシ樹脂と比較評価した。比較に用いたエポキシ樹脂は、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(A’−1、大日本インキ化学工業株式会社製;EPICLON N−665−EXP、エポキシ当量204g/eq)、フェノール−ジシクロペンタジエン重付加型エポキシ樹脂(A’−2、大日本インキ化学工業株式会社製;EPICLON HP−7200、エポキシ当量255g/eq)の2種類である。硬化剤にはフェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製 フェノライトTD−2131;軟化点80℃,水酸基当量104g/eq,B−1)を、硬化促進剤にはトリフェニルフォスフィン(TPP)を用いた。また表1の配合に従って、エポキシ樹脂と硬化剤と硬化促進剤をメチルエチルケトン(MEK)に溶解し、配合ワニスを調製した。その配合ワニスをシリコン板上にバーコーダーを用いて塗布して、それを220℃で1時間加熱して、硬化性を評価した。また得られた厚さ50μmのフィルムを用いて、耐熱性評価を行った。
【0078】
【表1】

【0079】
表1の脚注:
*1硬化性:配合ワニスを220℃×1時間の加熱処理後に、タック性がないものを○、タック性が残るものを×と評価。
*2保存安定性:配合ワニスを25℃で3日間保管し、エポキシ基の残存率(エポキシ当量の変化率から算出)を測定して評価。
*3ガラス転移温度:硬化物フィルムを動的粘弾性測定装置(DMA)で評価。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族性アセタール基(a1)とエポキシ基(a2)とを1分子中に有するエポキシ樹脂(A)を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
エポキシ樹脂(A)中の芳香族性アセタール基(a1)とエポキシ基(a2)とのモル比率が、芳香族性アセタール基(a1)/エポキシ基(a2)=100/50〜100/150の範囲である請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
エポキシ樹脂(A)が多価ヒドロキシ化合物(x1)とビニルエーテル類(x2)とエピハロヒドリン類(x3)との反応物である請求項2記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
更に活性水素基(b1)を有する硬化剤(B)とを含有する請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
エポキシ樹脂(A)中の芳香族性アセタール基(a1)とエポキシ基(a2)と、硬化剤(B)中の活性水素基(b1)との混合割合が、エポキシ基(a2)/[芳香族性アセタール基(a1)+活性水素基(b1)]=100/50〜100/150の範囲である請求項4記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
プリント基板用樹脂組成物である請求項1〜5の何れか1項記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
電子部品の封止材用樹脂組成物である請求項1〜5の何れか1項記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
レジストインキ用である請求項1〜5の何れか1項記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
導電ペースト用である請求項1〜5の何れか1項記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
層間絶縁材料用である請求項1〜5の何れか1項記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか1項記載のエポキシ樹脂組成物を硬化して得られることを特徴とする硬化物。

【公開番号】特開2006−8883(P2006−8883A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189562(P2004−189562)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】