説明

エマルション系局所治療用製剤の保存方式

水混和性又は水溶性界面活性剤、懸濁化剤及び非イオン性界面活性剤を含む油相に溶解された有効量の殺虫剤と、1種又は2種以上の保存剤を含む水相とを含む、微生物の増殖を阻害する局所用製剤であって、水相が特定のpHに緩衝化されている前記製剤である。製剤の保存システムによって阻害される微生物の種類が、水相が緩衝化されていない同等の製剤よりも広範であるpHに、水相を緩衝化することにより、エマルション製剤の全体的効果を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、製剤化学の分野に関する。より具体的には、本発明は、エマルション系局所治療用製剤の改良された保存方式、特に、エマルション系アベルメクチン製剤の改良された保存方式に関する。本発明はさらに、水相が酸性pH範囲に緩衝化されている局所用エマルションに関し、該酸性pH範囲内において、該保存方式により、製品の保存期間が、緩衝化されていない点を除き同等のエマルション系製品よりも顕著に延長されるとともに、治療活性物質がアベルメクチンである場合には、塩基触媒による異性化も阻害される。
【背景技術】
【0002】
エマルション製剤は、治療活性物質の局所送達に有用なビヒクルとして機能する。エマルションは、一体的な外観を有する単一の液体中に油相と水相とを組み合わせて含み、水性又は油性の局所治療用組成物では達成できない幾つかの利点を有している。第1に、エマルションは、油相と水相との混合により、親水性及び疎水性成分を単一の組成物中に製剤化することが可能である。第2に、エマルションは、油性成分を含むにもかかわらず、純粋な油性製剤ほど明白な油のような感触がないので、消費者の使用感がよい。
【0003】
第3に、おそらく局所治療に最も重要なことであるが、エマルションは、静止時には安定であるが、適用されるせん断応力の増加に伴って粘性が減少するというレオロジーを有する。これにより、容易な局所適用が可能となり、エマルションは、一旦適用されると、広がったり滴り落ちたりせずに、治療処置が必要な適用部位に留まる。
【0004】
これは、アタマジラミ処置のための局所用組成物において、特に有利な点である。この製品は、アタマジラミを除去するのに有効な時間、安全に適用部位に留まる必要があるからである。水性製品は、すぐに額や首に滴り落ちるため、適用時の使用感が悪く、効果的でもない。
【0005】
エマルションは、その所望のレオロジー特性を保持するために、安定性を維持する必要がある。油性成分と水性成分との分離は、粘性の低下を生じさせ、滴り落ちやすく、広がりやすく、油のような感触をもつ製品へと変化させるため、製品が適用部位に留まることができなくなる。エマルション系局所治療用製品は、意図された使用期間にわたり、安定性を維持する必要がある。
【0006】
治療活性物質も安定性を維持する必要がある。アベルメクチンは、塩基触媒による異性化を受けて、元の製品よりも生物活性が実質的に低減した2−エピマー不純物を形成することが知られている。
【0007】
さらに、局所適用に適する多数の油性成分及びその他のエマルション成分が、真菌、細菌等の微生物にとっての栄養源として機能する。製剤中の微生物増殖は、もし妨げられないならば、アタマジラミに噛まれた患者に対して感染リスクを生じさせ得る。さらに、生じた微生物産物は不快な臭い及び外観を呈し、それ以外にも、製品を皮膚接触に適さないものに変化させ得る。エマルション製剤の保存方式を改良する必要性が存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、細菌,酵母,真菌,カビ等の微生物の増殖に抵抗性を有する局所用製剤によって特徴付けられる。本発明の製剤は、一般的には、水混和性又は水溶性界面活性剤、懸濁化剤及び非イオン性界面活性剤を含む油相に溶解された有効量の殺虫剤と、1種又は2種以上の保存剤を含む水相とを含み、水相が緩衝化されていない又は水相の緩衝化が異なる点を除き同等の製剤と比較して本発明の製剤が多量の微生物の増殖に抵抗性又は殺菌性を有するpHに、水相が緩衝化されている。
【0009】
殺虫剤は、好ましくは、アベルメクチン、例えば、イベルメクチン,ドラメクチン,セラメクチン,アバメクチン又はそれらの組み合わせを含む。イベルメクチンが好ましい。殺虫剤は、スピノシン、例えば、スピノシン因子A,B,C,D,E,F,G,H,J,K,L,M,N,O,P,Q,R,S,T,U,V,W,Y又はそれらの組み合わせをさらに含むことができる。スピノサド(spinosad)が好ましいスピノシンである。イベルメクチンは、製剤の重量に対して約0.1〜約1%の濃度で含まれ得る。イベルメクチン及びスピノサドが使用される場合、それらは製剤の重量に対して約0.1%〜約5%の合計濃度で存在し得る。
【0010】
pHは、好ましくは、約4.5〜約6.2の範囲に緩衝化される。緩衝剤は、好ましくは、クエン酸及び/又はクエン酸ナトリウムであるか又はこれを含み、クエン酸は、製剤の重量に対して約0.01%〜約0.1%の濃度で、クエン酸ナトリウムは約1.0%〜約1.25%の濃度で添加することができる。
【0011】
油相は、製剤の重量に対して20%〜35%の懸濁化剤を含むことができ、懸濁化剤は、オリーブ油,シアバター又はそれらの組み合わせを含むことができる。オリーブ油は、製剤の重量に対して25%〜28%含まれ得る。シアバターは、製剤の重量に対して1%〜5%含まれ得る。油相は、製剤の重量に対して15%〜45%の非イオン性界面活性剤を含むことができ、非イオン性界面活性剤は、オレイルアルコール,ラノリンアルコール,ソルビタントリステアレート又はそれらの組み合わせを含むことができる。油相は、製剤の重量に対して10%〜20%の水混和性又は水溶性界面活性剤を含むことができ、水混和性又は水溶性界面活性剤は、ポリソルベート80,セチルアセテート,アセチル化ラノリンアルコール又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0012】
本発明の製剤は、好ましくは、保存剤、例えば、メチルパラベン及びプロピルパラベンを含み、それらは、製剤の重量に対して0.01〜2%の合計濃度で製剤中に含まれ得る。
【0013】
本発明の製剤は、コンディショナー、例えば、シクロメチコンを含むことができる。コンディショナーは、製剤の重量に対して1%〜5%の濃度で存在し得る。
【0014】
本発明はまた、微生物増殖、例えば、細菌、真菌、カビ及び/又は酵母の増殖に対する局所用エマルション製剤の抵抗性を向上させる方法によって特徴付けられる。本発明の方法は、一般的には、水相が緩衝化されていない又は過剰な酸性pH、中性pH若しくは塩基性pHに緩衝化されている点を除き同等の製剤と比較して本発明の製剤が多量の微生物増殖を阻害するpHに、エマルションの水相を緩衝化することを含む。好ましいエマルションとしては、明細書に記載されたエマルションが挙げられる。
【0015】
エマルションは、約4.5〜約6.2という好適なpH範囲に緩衝化することができる。エマルションの水相は、有効量のクエン酸及び/又はクエン酸ナトリウムを含む試薬を用いて緩衝化することができる。イベルメクチンを含む製剤を用いて本発明の方法を実施する場合、pHは、好ましくは、上記とともに又は上記の代わりに、塩基触媒によるイベルメクチンの異性化を阻害する。
【0016】
本発明はまた、対象、例えばヒトにおけるアタマジラミの感受性又は治療抵抗性菌株の寄生を処置する方法によって特徴付けられる。一般的には、本発明の方法は、アタマジラミの寄生の処置に十分な時間、対象に本発明の製剤の有効量を局所投与することを含む。好ましくは、本発明の製剤は、対象に単回局所投与される。処置時間は約1分〜約60分であり得るが、それよりも短い又は長い時間であってもよい。複数回投与される場合、各投与の間隔は、好ましくは5〜9日である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の方式、方法及びその他の態様に関して、様々な用語が明細書及び特許請求の範囲で用いられる。それらの用語の意義は、別段の規定がない限り、当業界における通常の意義である。
【0018】
明細書及び特許請求の範囲で用いられる単数形(英語の「a」,「an」及び「the」)には、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、複数形も含まれる。
【0019】
明細書で用いられる「約」という用語は、規定値からの±20%又は±10%、好ましくは±5%、さらに好ましくは±1%、さらに一層好ましくは±0.1%の変動値を含む意味である。
【0020】
本発明との関連において、エマルション製剤の抗微生物効果が、水相を緩衝化してpHを約4.5〜約6.2にすることにより向上することが観察された。したがって、本発明は、エマルションの水相が適宜緩衝化されることにより、微生物増殖に対する製剤の抵抗性が、水相が緩衝化されていない又は過剰な酸性pH、中性pH若しくは塩基性pHに緩衝化されている類似製剤と比較して向上している局所用エマルション製剤(例えば、保存剤を含む局所用エマルション製剤)によって特徴付けられる。本発明はまた、局所用エマルションの微生物抵抗性及び/又は抗微生物特性を向上させる方法によって特徴付けられる。
【0021】
本発明の局所用製剤は、治療活性成分を含む油相の水性分散液であり得る。水性分散液は、製剤調製者が所望するレオロジー特性に応じて、油中水型エマルション又は水中油型エマルションとして調製することができる。本発明の成分を油中水型又は水中油型エマルションとして調製する方法は、シャンプー、ヘアコンディショナー等のパーソナルケア製品の製剤化分野において当業者に周知である。
【0022】
本発明の製剤は、疎水性で水溶性が低い治療活性成分の局所適用に特に適している。この場合、治療活性成分は、好ましくは、該活性成分の水中での安定性を向上させる適当な物質中に溶解される。そのような物質は、水に容易に溶解するか、あるいは、水混和性であることが好ましく、その具体例としては、水溶性又は水混和性界面活性剤等の界面活性剤が挙げられる。水溶性又は水混和性界面活性剤としては、例えば、治療活性成分を溶解し、該活性成分を水中で安定化させることができる化合物が挙げられる。より好ましい局所用エマルションは、油相及び水相とともに、油相に溶解された活性成分を含む。油相は、好ましくは、3種類の成分:可溶化剤,非イオン性界面活性剤及び懸濁化剤を含む。
【0023】
活性物質
活性物質は、好ましくは、駆除剤(pesticide)又は殺虫剤(insecticide)であり、さらに好ましくはシラミを殺虫できる殺虫剤である。
【0024】
本発明のある態様は、アタマジラミの寄生を治療又は予防する薬剤として有用なアベルメクチンを含む局所用製剤に関し、寄生アタマジラミは、Pediculus humanus capitisの感受性又は治療抵抗性菌株であり得る。治療抵抗性菌株は、1種又は2種以上の駆除剤/殺虫剤、特にシラミ感染の処置に通常処方又は適用される駆除剤/殺虫剤に抵抗性を有する菌株である。好適なアベルメクチンの具体例としては、イベルメクチン,ドラメクチン,セラメクチン,アベルメクチンB1a,アベルメクチンB1b,セラメクチン,エプリノメクチン及びアバメクチンが挙げられるが、イベルメクチンがより好ましい。
【0025】
本発明の製剤は、1種又は2種以上のアベルメクチンを様々な濃度、例えば、製剤の重量に対して約0.005%〜約5%で製剤中に含むことができる。例えば、1%アベルメクチン製剤は、100ミリリットル(ml)の製剤容積あたり、1グラム(g)のアベルメクチンを含むことができる。
【0026】
幾つかの態様では、アベルメクチンは、製剤の重量に対して約0.1%〜約2%の濃度で存在する。本発明との関連において、0.25%,0.5%及び1%の濃度のイベルメクチンがアタマジラミのペルメトリン抵抗性菌株の殺虫効果を促進することが観察された。イベルメクチンは、80%を超える22,23−ジヒドロアベルメクチンB1a及び20%未満の22,23−ジヒドロアベルメクチンB1bの混合物として、好ましくは少なくとも90%の22,23−ジヒドロアベルメクチンB1a及び10%未満の22,23−ジヒドロアベルメクチンB1bの混合物として利用することができる。イベルメクチン等のアベルメクチンは、製剤中に、例えば、約0.05重量%〜5重量%,約0.1重量%〜2重量%又は約0.25重量%〜1重量%で溶解することができる。
【0027】
本発明の局所用製剤は、少なくとも1種のアベルメクチンと少なくとも1種のスピノシンとの組み合わせを含むことができる。スピノシンは、様々な濃度(重量/容積%)、例えば、本発明の製剤の重量に対して約0.005%〜約5%で存在することができる。スピノシンは、製剤中に、例えば、約0.05重量%〜5重量%,約0.1重量%〜5重量%,約0.1重量%〜2重量%又は約0.25重量%〜1重量%で溶解することができる。
【0028】
スピノシンの具体例としては、これらに限定されるわけではないが、スピノシン因子A,B,C,D,E,F,G,H,J,K,L,M,N,O,P,Q,R,S,T,U,V,W,Y又はそれらの組み合わせが挙げられる。スピノサドは、スピノシン因子であるスピノシンA及びスピノシンDの組み合わせを意味し、スピノシンAはスピノサドの約85%、スピノシンDはスピノサドの約15%含まれる。
【0029】
スピノシン及びアベルメクチンの組み合わせは、製剤の重量に対して約0.01〜約5%、好ましくは約0.1〜約5%、好ましくは約0.25%〜約2%、好ましくは0.5%〜3%含まれ得る。
【0030】
より好ましくは、殺虫剤又は殺虫剤の組み合わせは、エマルション製剤の油相に溶解され、溶解状態を維持している。好ましくは、活性物質は、溶液から沈殿しない。
【0031】
可溶化剤
エマルションの油相は、1種又は2種以上の可溶化剤を含むことができる。可溶化剤は、水溶性若しくは水混和性界面活性剤又はそれらの組み合わせを含むことができる。水溶性又は水混和性界面活性剤は、製剤の重量に対して少なくとも約10%含まれ得る。ある態様では、この薬剤は、製剤の重量に対して約10%〜約50%含まれ、別の態様では、この薬剤は、製剤の重量に対して約20%〜約50%含まれる。より好ましい態様では、この薬剤は、製剤の重量に対して約10%〜約20%含まれる。
【0032】
任意の適当な水溶性又は水混和性界面活性剤を用いることができる。非限定的な具体例としては、ポリソルベート80,セチルアセテート,アセチル化ラノリンアルコール又はそれらの組み合わせが挙げられる。Crodalan AWS(Croda Chemicalsから入手可能)は、ポリソルベート80,セチルアセテート及びアセチル化ラノリンアルコールを含む好適な試薬である。
【0033】
ポリソルベート80は、製剤中に、製剤の重量に対して約5%〜約25%,約10%〜15%,好ましくは約11.25%〜13.5で存在し得る。セチルアセテートは、製剤中に、製剤の重量に対して約0.5%〜10%,約1%〜4%,好ましくは約1.50%〜3.75%で存在し得る。アセチル化ラノリンアルコールは、製剤中に、製剤の重量に対して約0.10%〜3%,約0.5%〜約1%,好ましくは0.15%〜0.75%で存在し得る。
【0034】
幾つかの態様では、水溶性又は水混和性界面活性剤を治療活性成分の表面に結合させることにより、エマルションの水性環境における活性成分の安定性を確保することができる。本発明の幾つかの態様では、薬学的に許容されるグリコールを製剤中に30重量%未満,例えば、25重量%未満,20重量%未満,15重量%未満,10重量%未満又は5重量%未満の濃度で存在させることにより、治療活性成分を安定化させることができる。より好ましい幾つかの態様では、本発明の製剤は、グリコール、特にプロピレン又はポリエチレングリコールを含まない。
【0035】
懸濁化剤
エマルションの油相は、1種又は2種以上の懸濁化剤を含み得る。幾つかの態様では、脂肪油及び/又は脂質の組み合わせが、懸濁化剤として機能する。懸濁化剤の具体例としては、これらの限定されるわけではないが、オリーブ油,シアバター,ココバター,植物油等が挙げられる。オリーブ油は、3つの脂肪酸がグリセロール骨格に連結されたトリアシルグリセリドであり、シアバターは、主に、パルミチン酸,ステアリン酸,オレイン酸,リノール酸及びアラキジン酸から構成される。これらの脂肪酸は、頭皮からアタマジラミを除去するための「家庭薬」として用いられてきたが、アタマジラミを殺虫するわけではない。オリーブ油及びシアバターはともに、シラミ成虫の動きを鈍らせて、それらを除去する粘着性物質である。オリーブ油及びシアバターの組み合わせが好ましい懸濁化剤である。
【0036】
幾つかの態様では、オリーブ油は、製剤中に、製剤の重量に対して約20%〜30%,好ましくは約25%〜28%(例えば、約27.5%)の濃度で存在する。シアバターは、製剤中に、製剤の重量に対して約1%〜5%,好ましくは約2%の濃度で存在し得る。本発明の製剤及び方法に使用できるその他の公知の懸濁化剤の具体例としては、これらに限定されるわけではないが、ココナツオイル,ヤシ油,綿実油,植物油,大豆油,オリーブ油,ピーナッツ油,コーンオイル,ヒマワリ油,サフラワー油,ホホバ油,菜種油,シアバター,ココアバター,乳脂肪,アマランス油,アプリコット油,アルガン油,アボカド油,ババス油,ベン油,アルガロバ油,コリアンダー種子油,亜麻仁油(false flax oil),グレープ種子油,大麻油,カポック種子油,メドウフォーム種子油,オクラ種子油,エゴマ種子油,ケシ種子油,プルーンカーネルオイル,カボチャ種子油,キノア油,ラムティル(ramtil)油,ぬか油,ツバキ油,シスルオイル(thistle oil),小麦胚種油及びそれらの組み合わせが挙げられる。脂肪酸グリセリドの使用が可能であり、皮膚の保湿剤としての使用が知られている。
【0037】
非イオン性界面活性剤
エマルションの油相は、1種又は2種以上の非イオン性界面活性剤を含み得る。非イオン性界面活性剤の具体例としては、水−空気界面及び水−油界面に作用してエマルションの湿潤能,安定性,発泡性,レオロジー,帯電防止性,潤滑性及び表面調整(surface conditioning)性を向上させる化合物が挙げられる。本発明の幾つかの態様では、脂肪アルコール又は脂肪アルコールの混合物が非イオン性界面活性剤として機能し得る。製剤がボディソープ、シャンプー・コンディショナー等の最終製品で用いられる場合、非イオン性界面活性剤は、活性成分の安定性付与以外に、製剤の表面化学に関する様々な用途で用いられる。
【0038】
脂肪アルコールは、界面活性特性に加え、皮膚を滑らかにする皮膚軟化剤であり、水−空気界面及び水−油界面で作用して製剤の湿潤能,エマルション安定性,発泡性,レオロジー,帯電防止性,潤滑性及び表面調整(surface conditioning)性を向上させる。皮膚軟化剤には、皮膚から水分が失われるのを防止することにより、皮膚を柔軟かつ滑らかにする化合物が含まれる。好適な非イオン性界面活性剤の具体例としては、これらに限定されるわけではないが、オレイルアルコール,ラノリンアルコール,ソルビタントリステアレート,蜜ろう,エルシルアルコール,リシノリルアルコール(ricinolyl alcohol),アラキジルアルコール,カプリルアルコール,カプリン酸アルコール(capric alcohol),ベヘニルアルコール,ラウリルアルコール,ミリスチルアルコール,セチルアルコール,ステアリルアルコール,イソステアリルアルコール,オレイルアルコール,パルミトレイルアルコール,リノレイルアルコール,エライジルアルコール,エライドリノレイルアルコール,リノレニルアルコール,エライドリノレニルアルコール及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0039】
好ましい幾つかの態様では、本発明の製剤は、非イオン性界面活性剤を、製剤の重量に対して約10%〜35%、好ましくは約15%〜約24%、さらに好ましくは約18〜24%の合計濃度で含む。好ましい非イオン性界面活性剤の具体例としては、オレイルアルコール,ラノリンアルコール及びソルビタントリステアレートが挙げられる。幾つかの態様では、オレイルアルコールは、製剤中に、製剤の重量に対して約5%〜15%、好ましくは約10%存在し得る。ラノリンアルコールは、製剤中に、製剤の重量に対して約3%〜約15%、好ましくは約5%〜10%、さらに好ましくは約8%存在し得る。ソルビタントリステアレートとして、市販品であるGlycomul(登録商標)TS(Lonza, Inc.)又はSPAN 65(Merck Schuchardt OHGより販売)を利用可能である。ソルビタントリステアレートは低HLBエステル系界面活性剤であり、食品及び化粧品産業において多用途で用いられている。ソルビタントリステアレートの化学構造は、ヒドロキシル基及び3つの脂肪酸側鎖を有する五員環の環状エーテルとして定義される。ソルビタントリステアレートは、製剤中に、製剤の重量に対して約0.1%〜3%、好ましくは約0.5%存在し得る。
【0040】
コンディショナー
本発明の製剤には、シリコーン化合物を添加することができ、幾つかの態様では、シリコーン化合物は、好ましくはエマルションの油相に添加され、スキン又はヘアコンディショナーとして機能する。コンディショニング剤は、ヒトの髪の質感,手触り及び外観を変化させることができる。シリコーン化合物以外のコンディショニング剤も使用することができる。幾つかの態様では、シリコーン化合物は、揮発性シリコーン(その一例としてシクロメチコンが挙げられる)から選択することができる。製剤中のシクロメチコンは、髪に適用されるコンディショナー、例えばシャンプー−コンディショナーとして作用することができる。コンディショナーは、柔らかく絹のような触感を髪に与え、ほとんど残渣を残さずに迅速に蒸散する。シクロメチコンは、製剤中に、製剤の重量に対して約1%〜5%、好ましくは約3%含まれ得る。使用可能なコンディショナーの具体例としては、これらに限定されるわけではないが、シクロメチコン,ジメチコン,ヘキサメチルジシロキサン,オクタメチルトリシロキサン,デカメチルテトラシロキサン,ドデカメチルペンタシロキサン,ポリジメチルシロキサン及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0041】
保存剤
本発明の製剤は、好ましくは、微生物の増殖を阻害する及び/又は化学分解から製剤を保護する保存剤を含む。幾つかの態様では、保存剤は、パラベン類の化合物から選択することができる。好ましいパラベンの具体例としては、メチルパラベン,プロピルパラベン又はそれらの組み合わせが挙げられる。保存剤は、好ましくは、水溶性であり、好ましくは、エマルションの水相に含まれる。
【0042】
幾つかの態様では、本発明の製剤に含まれる保存剤の合計濃度は、製剤の重量に対して約0.05%〜約2%である。メチルパラベンは、製剤中に、製剤の重量に対して約0.01%〜2%、好ましくは約0.1〜約0.3%、さらに好ましくは約0.20%存在し得る。プロピルパラベンは、製剤中に、製剤の重量に対して約0.01%〜約1%、好ましくは約0.01%〜約0.5%、さらに好ましくは約0.05%〜約0.1%、さらに好ましくは約0.1%存在し得る。その他の好適な保存剤の具体例としては、これらに限定されるわけではないが、メチルパラベン,プロピルパラベン,エチルパラベン,ブチルパラベン,イソブチルパラベン,イソプロピルパラベン,ベンジルパラベン及びそれらの塩が挙げられる。
【0043】
pH調整剤及び緩衝剤
本発明の製剤は、好ましくは、約1.0〜約6.5のpHを有する。約4.0〜約6.5のpHが好ましく、約4.5〜約6.2のpHが好ましく、約4.5〜6.0のpHが好ましく、約5.0〜約6.0のpHがさらに好ましく、約5.3〜約5.8のpHがさらに一層好ましい。非常に好ましくは、ヒトの皮膚のpHである。水相を約4.5〜約6.2のpHに緩衝化できる緩衝剤は周知であり、当業者によって容易に理解される。そのような緩衝剤の具体例としては、クエン酸緩衝液,酢酸緩衝液,リン酸緩衝液,酒石酸緩衝液,フマル酸緩衝液,ジメチルグルタル酸緩衝液,コハク酸緩衝液,フタル酸緩衝液,マレイン酸緩衝液及びそれらの混合物が挙げられる。緩衝剤は、好ましくは、エマルションの水相を緩衝化できる、生物学的に許容可能なカルボキシレートを含み、その非限定的な具体例は上記と同様である。
【0044】
クエン酸及びクエン酸ナトリウムの組み合わせが好ましい。pH調整剤は、固体形態で直接、製剤に混合することができるし、液体の一部分として又は複数の薬剤を含む固体緩衝剤の一部分として加えることもできる。
【0045】
幾つかの態様において、クエン酸は、製剤中に、製剤の重量に対して約0.01%〜約0.1%、好ましくは約0.055%で含まれる。幾つかの態様において、これらの濃度のクエン酸は、製剤の重量に対して約1%〜約1.25%のクエン酸ナトリウム、好ましくはクエン酸の重量に対して約1.099%のクエン酸ナトリウムと組み合わせられる。クエン酸及び/又はクエン酸ナトリウムの量は、製剤が達すべき所望のpHに応じて変化させることができる。より好ましい態様において、約0.055重量%のクエン酸が、約1.099重量%又は約1.1重量%のクエン酸ナトリウムと組み合わせて用いられる。これらの物質は、保存剤から独立して、それ自体で抗菌活性を示し、幾つかの態様では、保存剤の代わりとして用いることができる。
【0046】
リン酸ナトリウム及び/又はリン酸一水素若しくは二水素ナトリウムも、クエン酸及び/又はクエン酸ナトリウムと組み合わせて用いることができる。その他の好適な緩衝剤としては、例えば、酢酸及び/又は酢酸ナトリウムを含むものが挙げられる。
【0047】
アベルメクチンが治療活性成分として用いられる幾つかの態様において、緩衝剤は、アベルメクチンの2−エピマーへの異性化を阻害する機能をも果たす。
【0048】
その他の好適な保存剤の具体例としては、安息香酸ナトリウム,イミダゾリジニル尿素(例えば、GERMALL PLUS等のGERMALLファミリーの保存剤),多価キレート剤(例えばEDTA)及びプロトン化の様々な段階に関連する化合物,並びにクエン酸及びそのナトリウム塩(それぞれ単独、又はナトリウム塩と遊離酸との組み合わせ)が挙げられる。その他の好適な保存剤が、製剤中に、パラベンと同一濃度範囲、例えば、約0.01重量%〜2重量%又は約0.01重量%〜約0.5重量%(例えば0.05重量%)の濃度で存在してもよい。
【0049】
湿潤剤(humectant)
幾つかの態様において、本発明の製剤は、湿潤剤をさらに含むことができる。湿潤剤は、吸湿物質であり、製剤の使用過程において及び皮膚、髪又は頭皮から製剤をリンスする前に、製剤が乾燥して固化することを防止する目的で用いられる。また、湿潤剤は、シャンプー及びコンディショナー製剤の保湿剤としても機能し得る。湿潤剤は、通常、複数の親水基、例えば、ヒドロキシル,アミン,カルボン酸基及びそのエステル等を有する分子であり、親水基は、水分子と水素結合を形成する能力を分子に与える。
【0050】
幾つかの態様において、本発明の製剤のその他の成分は、湿潤剤としての機能も兼ね備え、そのような成分としては、多数の非イオン性界面活性剤、例えば、これらに限定されるわけではないが、オレイルアルコール,ラノリンアルコール,アセチル化ラノリンアルコール等が挙げられる。別の態様において、湿潤剤は、グリセリン,グリセリルトリアセテート,ソルビトール,キシリトール,マルチトール,ポリデキストロース,キラヤ(quillaia),乳酸,尿素、及びこれらの混合物から選択される。
【0051】

溶解した治療活性成分、懸濁化剤、可溶化剤及び非イオン性界面活性剤を含む油相混合物を水中に分散させてもよいし、水を油相中に分散させてもよい。幾つかの態様において、水は脱イオン化されている。水は担体として機能し、当然に各製剤に含まれ得る。例示的な製剤において、水は、製剤中に、製剤の重量に対して約30%〜40%、好ましくは約30%〜約33%、さらに好ましくは約32%存在し得る。
【0052】
脱イオン化水に対して治療活性成分を含む油相を添加することにより、ミセルが活性成分の周囲に形成され、界面活性剤の親水性頭部が溶媒水分子と接触し、界面活性剤の疎水性尾部が活性成分と接触するように配列されている、活性成分のコロイド懸濁液が得られる。この調製物は、ボディソープ及びシャンプー−コンディショナーへの治療活性成分の送達に特に適しており、シャンプー−コンディショナーに対して好適な洗浄性及び流動性が与えられ、髪を良好なコンディションに保つことができる。
【0053】
本発明の製剤の具体例として、表1に記載された局所用エマルション製剤が挙げられるが、本発明の製剤はこれに限定されるわけではない。この製剤は、シャンプー−コンディショナー又はクリームに適しており、少なくとも有効量の治療活性成分を含むとともに、可溶化剤、水、懸濁化剤、界面活性剤、シリコーン化合物及び保存剤を任意の組み合わせ及び/又は濃度で含み、そのような組み合わせ及び/又は濃度は、本明細書に基づき当業者に理解され得る。
【0054】
表1に示す治療活性成分の濃度は0.50%(w/v)という特定濃度である。この濃度範囲は例示であり、本発明を実施する際に当業者が利用できる有効範囲を限定するものではない。
【0055】
【表1】

【0056】
明細書中に記載された用途に用いられる別の製剤を調製するために、成分、公知の等価成分、成分の組み合わせ及び各濃度に関する調整を容易に行うことができる。
【0057】
したがって、明細書中に記載された例示的な局所用製剤と類似する局所用製剤を調製するために、有効成分の濃度、局所用製剤の質感又はレオロジー、及び油中水型エマルション又は水中油型エマルション(例えば、シャンプー、クリーム、ゲル等)として製剤されるか否かに応じて、任意の成分の重量%を調整してもよいこと、並びに、成分は、異なる濃度で添加してもよいし、製剤から取り除いてもよいし、等価成分で置換してもよいことは、当業者に自明であろう。
【0058】
当業者は、その他の有用な物質を本発明の製剤に添加できることを理解するであろう。そのような有用な物質の具体例としては、これらに限定されるわけではないが、ビタミン、毛髪染料、栄養素、フケ防止剤等が挙げられる。当業者は、少なくとも1種の有用な物質が本発明の利点を無効にしないように、有用な物質又はその組み合わせを適宜選択することができる。
【0059】
本発明はまた、微生物増殖に対するエマルション製剤(例えば明細書中に記載又は例示された製剤)の抵抗性を向上させる方法、又はそれとは別に、製剤の抗微生物特性を向上させる方法によって特徴付けられる。本発明の方法は、一般的には、pHが緩衝化されていない又は異なるpHに緩衝化されている点を除き同等又は同一の製剤と比較して製剤中の保存剤が多量の微生物増殖を阻害するpHに、エマルションを緩衝化することを含む。本発明の製剤は、細菌、酵母、真菌、カビ等の増殖に対して、向上した抵抗性を示す。
【0060】
pHは、本発明の製剤又は使用される保存料の種類に応じて、塩基性、中性又は酸性に調整することができる。pHが酸性pHに緩衝化されることが好ましい。幾つかの態様において、水相は、約4.5〜約6.2のpHに緩衝化されるが、それよりも高い又は低いpHを用いてもよい。水相は、約5〜約6のpHに緩衝化することができるし、明細書中に記載されたその他のpHに緩衝化することもできる。
【0061】
本発明の方法は、有効量のクエン酸及び/又はクエン酸ナトリウムをエマルションの水相に添加することを含むことができる。そのような有効量は変更可能であるが、好ましくは、本発明の製剤の水相を、本発明の製剤の全体的な抗微生物効果を向上させるpHレベルとするのに十分な量である。非限定的な具体例において、水相は、本発明の製剤の重量に対して約0.01%〜約0.1%のクエン酸及び約1%〜約1.25%のクエン酸ナトリウムを含むことができる。これらの物質は、それ自体で、保存剤から独立して、抗微生物活性を示すことができ、幾つかの態様において、保存剤の代わりに用いることができる。
【0062】
幾つかの態様において、本発明の方法は、塩基触媒による活性成分の異性化を阻害するために適用される。この場合、本発明の製剤は、活性成分、例えばアベルメクチンの異性化を阻害するように緩衝化され得る。例えば、本発明の製剤がイベルメクチンを含む場合、本発明の方法は、塩基触媒によるイベルメクチンの異性化を阻害するのに十分なpHに製剤を緩衝化することを含み得る。明細書中に記載又は例示された製剤のような複合液体に関し、水相のpHの緩衝化が、水相に対する油相成分の一時的な曝露の点から、油相中の成分の安定性に影響を与え得るか否かは従来知られていなかった。塩基性pHは、アベルメクチンの異性化を誘導し得るので(Pivnichny, JV等 (1988) J. Agric. Food Chem. 36:826-8)、油相中に溶解されたアベルメクチンを含むエマルションの水相pHの酸性化は、アベルメクチンの異性化を阻害又は低減させると考えられる。従って、好ましくは、水相は緩衝化される。塩基触媒による活性物質の異性化を阻害するのに十分なpHは、使用される活性物質の種類に応じて変化し得る。イベルメクチンの場合、例えば、水相が約4.0〜約6.5のpH(明細書中に記載又は例示されたpH値を含む)に緩衝化されることが好ましく、ヒトの皮膚のpHに緩衝化されることがさらに好ましい。
【0063】
局所用製剤は、例えば、油相及び水相を別々に調製し(例えば、相ごとに成分を混合し)、次いで、当業界で慣用される適当な方法で油相及び水相を混合することにより調製することができる。油相及び水相を混合する際の様々な条件(例えば、温度、加熱及び冷却速度等)は、生じるエマルションの適当な分散性及び安定性が保証されるように、変更可能である。
【0064】
本発明はさらに、感受性又は処置抵抗性アタマジラミを予防又は除去する方法を包含する。抵抗性は、現在市場に出回っているいかなるアタマジラミ処置に対する抵抗性であってもよいし、それ以外の当業界で公知の抵抗性であってもよく、例えば、マラチオン抵抗性、リンデン抵抗性、除虫菊抵抗性又はペルメトリン抵抗性が挙げられる。本発明の方法は、アベルメクチンを含むとともに、スピノシンを含む又は含まない製剤を利用し、そのような製剤には、局所製剤、例えば、明細書中に記載又は例示された製剤が含まれる。
【0065】
一般的に、本発明の方法は、そのような処置を要する対象に有効量の局所用エマルション製剤を局所投与することを含み、該製剤は、アタマジラミの寄生を処置する(好ましくは除去する)のに十分な時間適用されることにより、該製剤又は該製剤中の保存剤の抗微生物特性を向上させ得るpHに緩衝化された水相を含む。非常に好ましくは、本発明の製剤は対象に単回投与されるが、対象又は医師の決定に応じて必要により複数回投与、例えば、2回、3回、4回又は5回以上投与してもよい。
【0066】
本発明の製剤は、例えばシャンプー−コンディショナーである場合、約7日間に、1回又は2回使用可能であるし(例えば、1日目の使用と、約5日目〜9日目の間の使用)、3回又は4回使用可能である(例えば、1日目の最初の適用と、その後、約5日間〜約9日間の間隔で行われる2、3又は4回目の適用)。各投与において、本発明の製剤は、寄生部位、例えば頭皮に適用され、約1分間〜約60分間又は約3分間〜約30分間、該部位に留まることができ、次いで、温水でリンスすることができる。また、本発明の製剤は、寄生部位、例えば頭皮に、約5分間〜約20分間又は約10分間〜約15分間、留まることができる。約10分間留まることがより好ましい。シャンプー−コンディショナーは、頭皮からシラミを除去する間、髪を良好なコンディションに保てるように製剤化されることが好ましい。
【0067】
本発明の方法は、いかなる動物に適用されてもよく、動物の具体例としては、愛玩動物及び家畜が挙げられる。ヒトが最も好ましい。
【0068】
アベルメクチン又はスピノシン濃度を上記のように変化させることにより、あるいはヒト対象の頭皮に適用される局所用製剤の量を増加させることにより、投与量を変化させることができる。本発明を実施する上でイベルメクチン及びスピノサドを含む製剤が有用である場合、イベルメクチン以外の公知のアベルメクチン及びスピノサド以外の公知のスピノシンが含まれてもよく、本発明の活性成分として利用可能である。
【0069】
投与量範囲は変更可能であり、本発明のイベルメクチン/スピノサド含有製剤の頭皮に対する単回適用量(投与量)は、好ましくは、約1ml〜約200mlの範囲をとり得る。幾つかの好ましい態様において、投与量は、約3ml〜約75ml、さらに好ましくは約50ml〜約120ml、さらに好ましくは約100ml〜約120mlである。投与量は、例えば髪の量及び/又は長さに応じて変更可能である。例えば、髪が長いほど、より多くの投与量が必要となる。
【0070】
幾つかの態様において、少なくとも約60mlの局所用製剤が、毛根全体を浸透するように、そして、頭皮全体を効果的に覆うように適用される。医師は、有効量のイベルメクチン及びスピノサドが対象に投与されるように、局所用製剤中のイベルメクチン及びスピノサド濃度及び/又は容積を変更可能である。
【0071】
本発明の別の態様は、本発明の局所用アベルメクチン製剤(スピノシンを含む又は含まない)又はイベルメクチン製剤(スピノサドを含む又は含まない)の複数回投与に関する。複数回投与には、最初の投与に加えて、少なくとも1回、2回、3回又は4回の追加投与が含まれ、1回又は可能であれば2回の追加投与が好ましい。
【0072】
当業界で知られているように、アタマジラミ寄生の処置だけでなく、ケジラミ又はコロモジラミ(body lice)寄生の処置にも、類似の治療計画が現在利用されている。これは、本発明のアベルメクチン含有製剤がアタマジラミの処置だけでなく、ケジラミ及びコロモジラミの人体への寄生の処置にも有効であることを示す証拠である。したがって、本発明の製剤は、ケジラミ及び/又はコロモジラミ寄生の処理に用いることができる。患部に適用され、アタマジラミの処置のために所望の時間、該患部に留まり、次いで、リンスすることができるクリームリンス又はローションに適した製剤を調製するために、本発明の製剤の主要成分を変更することができる。明細書中に記載された製剤を用いてアタマジラミを処置するために所望される複数回投与を実施してもよい。
【0073】
以下の実施例は、本発明の具体的態様をより詳細に説明するために提供されるものであり、本発明の例示であって、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0074】
実施例1
イベルメクチン含有シャンプーコンディショナーの調製
イベルメクチン及び/又はスピノサド含有製剤を、治療抵抗性シラミを除去するための局所用シャンプー−コンディショナーとして、次のように調製することができる:
【0075】
イベルメクチンの重量を測り、容器中の水混和性界面活性剤、すなわち15.00%(w/v)のポリソルベート80に予め溶解させる(以下「A相」という)。イベルメクチンが完全に界面活性剤中に溶解するまで、A相を混合しながら、一定温度(65℃)で加熱する。次いで、A相を、懸濁化剤、保存剤、非イオン性界面活性剤、湿潤剤(humectant)及びコンディショニング剤からなる水相Bを収容する容器に注ぐ。
【0076】
B相は、27.25%(w/v)のオリーブ油、2.00%(w/v)のシアバター、8.00%(w/v)のラノリンアルコール、3.00%(w/v)のシクロメチコン、0.50%(w/v)のソルビタントリステアレート、0.20%(w/v)のメチルパラベン、及び0.05%(w/v)のプロピルパラベンからなる。全ての成分が溶解及び/又は融解するまで、水相A及びBを混合しながら一定温度(85℃)で加熱する。同時に、0.055%(w/v)のクエン酸及び1.099%(w/v)のクエン酸ナトリウムで緩衝化した水からなるC相を、一定温度(85℃)で加熱する。A相及びB相を激しく混合しながら、ゆっくりとC相に加える。混合は、室温で又は室温付近の温度で、均一・均質な混合物が形成されるまで継続し、次いで、生じた混合物を包装する。
【0077】
実施例2
イベルメクチン含有エマルションの調製
イベルメクチンの重量を測り、水混和性界面活性剤であるCrodalan AWS 及びオレイルアルコールに溶解し、生じた溶液(A相)を60〜65℃に加熱する。それぞれ27.25%(w/v)のオリーブ油及び2.00%(w/v)のシアバター;8.00%(w/v)のラノリンアルコール及び0.50%(w/v)のソルビタントリステアレート;並びに3.00%(w/v)のシクロメチコンからなる、懸濁化剤、非イオン性界面活性剤及びコンディショニング剤(B相)を混合し、攪拌しながら75〜80℃に加熱し、全ての成分が溶解したことを確認する。同時に、0.055%(w/v)のクエン酸及び1.099%(w/v)のクエン酸ナトリウムで緩衝化した水と、メチル及びイソプロピルパラベンとからなるC相を十分に混合し、75〜80℃に加熱する。A相をB相と予め混合し、激しく混合する。次いで、C相に加える。均一・均質なブレンドが形成されるまで、混合を継続する。混合を継続しながら、ブレンドの温度を室温まで低下させ、その後、形成された製剤を包装する。
【0078】
実施例3
USP抗微生物効果試験
可溶化剤、非イオン性界面活性剤及び懸濁化剤を含む局所用イベルメクチンエマルションを調製し、米国薬局方(USP)第31章第51節(2008年)(参照により明細書中に組み込まれる)に準じて、抗微生物効果に関してスクリーニングした。下記表2に示すように、パラベン保存剤を含むとともに、クエン酸及びクエン酸ナトリウムを含む又は含まない10種類のエマルションを製剤化した。対照製剤は、クエン酸もクエン酸ナトリウムも含まないものとした。
【0079】
【表2−1】

【0080】
【表2−2】

【0081】
USPの下、公定基準は、表3に示す4種類のカテゴリーに分類されている。これらの製品に関する抗微生物効果の基準は、投与経路に基づいて変化する。
【0082】
【表3】

【0083】
USP試験では、以下の微生物:Candida albicans(ATCC No. 10231)、Aspergillus niger(ATCC No. 16404)、Escherichia coli(ATCC No. 8739)、Pseudomonas aeruginosa(ATCC No. 9027)及びStaphylococcus aureus(ATCC No. 6538)の培養が必要であり、試験で用いられる微生物は、ATCC初代培養物から除去された、5代を超える継代培養物であってはいけない。
【0084】
各容器に、調製及び標準化した微生物のうちの1種を接種し、混合した。接種に用いた懸濁液の容積は、製剤の容積の0.5%〜1.0%とした。接種後に製剤に加えられた試験微生物の濃度は、製剤1mLあたり1×105〜1×106cfuであった。
【0085】
接種した容器を表4に示す条件でインキュベートした。下記表5に示す適当な間隔で、各容器からサンプリングした。各試料に存在する菌数(cfu)は、適用される間隔に応じて平板計数法によって決定した。試験開始時に存在する1mLあたりの菌濃度(cfu)(計算値)を利用して、1mLあたりの菌濃度(cfu)のlog10値の変化を、適用される試験間隔において、微生物ごとに算出し、該変化を対数換算(log reduction)して表現した。
【0086】
【表4】

【0087】
表5に規定される基準が満たされるとき、抗微生物有効性の要件が満たされる。「増加なし」は、前回の測定値からのlog10値の増加が0.5以下であると定義される。
【0088】
【表5】

【0089】
表2から選択された製剤に関するUSP抗微生物効果試験の結果を下記表6に示す。「対照」である製剤(表2参照)は、制御された実験室条件下で数ヶ月間保存したときに、目に見えるカビの増殖を引き起こしたので(接種しない場合でさえも(データは示さない)、接種に対して十分な効果を有しないと判定した。次いで、対照製剤に若干変更を加えた製剤のCandida albicansに対するUSP抗微生物効果を試験したが、効果を示さないことが判明した。なお、表6中、EcはEscherichia coli;PaはPseudomonas aeruginosa;SaはStaphylococcus aureus;CaはCandida albicans;AnはAspergillus nigerを意味する。
【0090】
【表6】

【0091】
これらのデータは、製剤の保存システムによって阻害される微生物の種類が、水相が緩衝化されていない同等の製剤よりも広範であるpHに、エマルションの分散水相を緩衝化することにより、エマルション製剤の全体的効果を向上させ得ることを示す。
【0092】
本発明は、明細書中に記載された態様及び実施例に限定されず、特許請求の範囲と等価である範囲内において、変更及び修正を加えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水混和性又は水溶性界面活性剤、懸濁化剤及び非イオン性界面活性剤を含む油相に溶解された有効量の殺虫剤と、1種又は2種以上の保存剤を含む水相とを含む、微生物の増殖を阻害する局所用製剤であって、
水相が緩衝化されていない点を除き同等の製剤と比較して前記製剤が多量の微生物増殖を阻害するpHに、前記水相が緩衝化されている、前記製剤。
【請求項2】
前記殺虫剤がアベルメクチンを含む、請求項1記載の局所用製剤。
【請求項3】
前記アベルメクチンがイベルメクチン,ドラメクチン,セラメクチン,アバメクチン又はそれらの組み合わせである、請求項2記載の局所用製剤。
【請求項4】
前記殺虫剤がスピノシンをさらに含む、請求項2記載の局所用製剤。
【請求項5】
前記スピノシンが、スピノシン因子A,B,C,D,E,F,G,H,J,K,L,M,N,O,P,Q,R,S,T,U,V,W,Y及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項4記載の局所用製剤。
【請求項6】
前記pHが約4.5〜約6.2である、請求項1記載の局所用製剤。
【請求項7】
前記水相が、クエン酸及び/又はクエン酸ナトリウムを含む緩衝剤で緩衝化されている、請求項1記載の局所用製剤。
【請求項8】
前記水相が、前記製剤の重量に対して約0.01%〜約0.1%のクエン酸と、約1.0%〜約1.25%のクエン酸ナトリウムとを含む、請求項7記載の局所用製剤。
【請求項9】
前記懸濁化剤がオリーブ油,シアバター又はそれらの組み合わせを含む、請求項1記載の局所用製剤。
【請求項10】
前記非イオン性界面活性剤がオレイルアルコール,ラノリンアルコール,ソルビタントリステアレート又はそれらの組み合わせを含む、請求項1記載の局所用製剤。
【請求項11】
前記水混和性又は水溶性界面活性剤がポリソルベート80,セチルアセテート,アセチル化ラノリンアルコール又はそれらの組み合わせを含む、請求項1記載の局所用製剤。
【請求項12】
前記殺虫剤がイベルメクチンを、前記製剤の重量に対して約0.1〜約1%の濃度で含む、請求項1記載の局所用製剤。
【請求項13】
前記殺虫剤がイベルメクチン及びスピノサドを、前記製剤の重量に対して約0.1%〜約5%の合計濃度で含む、請求項4記載の局所用製剤。
【請求項14】
前記油相が、前記製剤の重量に対して20%〜35%の懸濁化剤を含む、請求項1記載の局所用製剤。
【請求項15】
前記油相が、前記製剤の重量に対して10%〜20%の水混和性又は水溶性界面活性剤を含む、請求項1記載の局所用製剤。
【請求項16】
前記油相が、前記製剤の重量に対して15%〜45%の非イオン性界面活性剤を含む、請求項1記載の局所用製剤。
【請求項17】
前記懸濁化剤が、前記製剤の重量に対して25%〜28%のオリーブ油と、前記製剤の重量に対して1%〜5%のシアバターとを含む、請求項9記載の局所用製剤。
【請求項18】
前記保存剤がメチルパラベン及びプロピルパラベンを、前記製剤の重量に対して0.01〜2%の合計濃度で含む、請求項1記載の局所用製剤。
【請求項19】
コンディショナーをさらに含む、請求項1記載の局所用製剤。
【請求項20】
前記コンディショナーがシクロメチコンを、前記製剤の重量に対して1%〜5%の濃度で含む、請求項19記載の局所用製剤。
【請求項21】
微生物増殖に対するエマルション製剤の抵抗性を向上させる方法であって、
水相が緩衝化されていない点を除き同等の製剤と比較して前記製剤が多量の微生物増殖を阻害するpHに、エマルションの水相を緩衝化することを含む、前記方法。
【請求項22】
前記製剤が請求項1記載の製剤である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記pHが約4.5〜約6.2である、請求項21記載の方法。
【請求項24】
前記エマルションの水相が、有効量のクエン酸及び/又はクエン酸ナトリウムで緩衝化されている、請求項21記載の方法。
【請求項25】
前記水相が、前記製剤の重量に対して約0.01%〜約0.1%のクエン酸と、約1%〜約1.25%のクエン酸ナトリウムとを含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記エマルションがイベルメクチンを含み、前記pHが塩基触媒によるイベルメクチンの異性化を阻害する、請求項23記載の方法。
【請求項27】
対象におけるアタマジラミの感受性又は治療抵抗性菌株の寄生を処置する方法であって、前記アタマジラミの寄生の処置に十分な時間、前記対象に請求項1記載の製剤の有効量を局所投与することを含む、前記方法。
【請求項28】
前記対象に前記製剤を単回局所投与することを含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記時間が約1分〜約60分である、請求項27記載の方法。
【請求項30】
前記対象に前記製剤を2,3又は4回局所投与することを含み、各投与の間隔が5〜9日である、請求項27記載の方法。

【公表番号】特表2012−507545(P2012−507545A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534743(P2011−534743)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/062500
【国際公開番号】WO2010/051348
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(511107706)トパズ ファーマシューティカルズ インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】