説明

エレベータ装置

【課題】火災等の緊急時においても、より安全な運転を可能にするエレベータ装置を提供する。
【解決手段】エレベータ装置は、乗籠と、前記乗籠を支持したメインロープと、前記乗籠に設置された巻上機と、前記巻上機に取り付けられ、前記メインロープが巻き掛けられるとともに、前記巻上機によって駆動される駆動シーブと、前記乗籠に設置され、前記乗籠が所定速度を超えて走行した時に前記巻上機へ供給される電源を制御可能な調速機とを具備した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、巻上機を備えたエレベータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ装置は、通常建物の屋上に機械室を有する。そしてその中に巻上機や制御盤等の主要機器が設置されている。これによりエレベータ装置は、火災等の緊急時でも熱の影響や消火活動による水の影響を極力受けないようになっている。
【0003】
近年、建物の制約条件を有利にするために、いわゆる機械室レスエレベータ装置が主流になりつつある。この機械室レスエレベータ装置では、今まで建物の屋上に設置されていた機械室が無く、それまで機械室に収まっていた巻上機や制御盤等の主要機器を昇降路内に設置している。また制御盤においては、建物のエレベータ乗り場付近に設置することもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−26388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような機械室レスエレベータ装置では、万が一に巻上機が設置してある場所の近傍で火災等が発生したとき、その熱の影響や消火活動による水の影響等により、巻上機等の主要機器がダメージを受けるおそれがある。巻上機等の主要機器がダメージを受けると、その機能が不完全になり、エレベータを正常運転することが難しい状況になるおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、火災等の緊急時においても、より安全な運転を可能にするエレベータ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、エレベータ装置は、乗籠と、前記乗籠を支持したメインロープと、前記乗籠に設置された巻上機と、前記巻上機に取り付けられ、前記メインロープが巻き掛けられるとともに、前記巻上機によって駆動される駆動シーブと、前記乗籠に設置され、前記乗籠が所定速度を超えて走行した時に前記巻上機へ供給される電源を制御可能な調速機とを具備した。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施形態のエレベータ装置の一例の正面図。
【図2】第1実施形態のエレベータ装置の一例を図1中のA方向から見た側面図。
【図3】第1実施形態のエレベータ装置の一つの変形例を示す側面図。
【図4】第2実施形態のエレベータ装置の一例を一部断面で示す側面図。
【図5】第3実施形態のエレベータ装置の一例を一部断面で示す正面図。
【図6】第4実施形態のエレベータ装置の一例の正面図。
【図7】第4実施形態のエレベータ装置の一例を図6中のB方向から見た側面図。
【図8】第5実施形態のエレベータ装置の一例を一部断面で示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係るエレベータ装置1について、図1及び図2を参照して説明する。エレベータ装置1は、例えば機械室レスエレベータ装置である。本実施形態に係るエレベータ装置1は、例えば災害発生時等に利用可能な緊急避難用エレベータ装置に用いられるが、それら以外のエレベータ装置に利用してもよい。
【0011】
図1は、エレベータ装置1を概略的に示す。図1に示すように、エレベータ装置1は、昇降路2内に配置された乗籠3を備える。乗籠3は、略水平に配置されたかご床4と、このかご床4の上に設けられ、乗客が乗り込むかご室5とを備える。
【0012】
かご室5は、複数の側面板6と、天井7とを備え、箱状に形成されている。複数の側面板6は、かご室5の周面を形成するようにかご床4の上に立設されている。天井7は、複数の側面板6の上端部の間に渡され、かご室5の上部を塞いでいる。
【0013】
図1に示すように、かご床4の下面には、巻上機架台10を介して巻上機11が設置されている。図2に示すように、巻上機11は、駆動軸12を有する。この駆動軸12には、駆動シーブ13が取り付けられている。駆動シーブ13は、巻上機11によって駆動される。駆動シーブ13には、メインロープ14が巻き掛けられている。駆動シーブ13は、巻上機11の駆動力をメインロープ14に伝達する。
【0014】
図1に示すように、駆動シーブ13の両側には、メインロープ14を案内する案内シーブ15が設けられている。図2に示すように、駆動シーブ13及び案内シーブ15は、乗籠3の下部、さらに言えば乗籠3の重心近くの下方に設けられている。駆動シーブ13及び案内シーブ15に巻き掛けられたメインロープ14は、乗籠3の下方を跨ぐように延びている。これにより、メインロープ14は、乗籠3の重心近くを支持している。
【0015】
図1に示すように、メインロープ14の一端部14aは、昇降路2の天井部2aに固定されている。なおメインロープ14の一端部14aは、鉄骨等による吊り元に固定されてもよい。メインロープ14は、かご室5の下方に設けられた案内シーブ15を通り、駆動シーブ13に巻き掛けられている。メインロープ14はさらに、昇降路2の天井部2aの近くに配置された返し車16まで延び、返し車16で折り返されて再び下方に延びている。そしてメインロープ14の他端部14bは、釣り合い錘17に連結されている。
【0016】
これにより、乗籠3に設置された巻上機11が駆動されることで、駆動シーブ13が回転され、メインロープ14が引っ張られる。これにより、乗籠3及び釣り合い錘17が昇降路2内を昇降動作する。
【0017】
図2に示すように、巻上機11は、この巻上機11を作動させるための電源21と、巻上機11を制動するブレーキ22とを有する。電源21はエレベータの主電源から電力が供給される。なお電源21は、巻上機11の内部に設けられてもよいし、巻上機11の外部に設けられてもよい。
【0018】
ブレーキ22は、例えば図示しないブレーキディスクとブレーキパッドとを有する。ブレーキ22は、電源21がONの状態でブレーキ開放を行い、巻上機11を駆動可能にする。一方でブレーキ22は、電源21が切られた時に作動し、例えばブレーキパッドをブレーキディスクに押し当てブレーキ制動を行う。これにより、電源21が切られると、巻上機11は強制的に停止する。
【0019】
図1に示すように、側面板6の昇降路2側には、制御盤24及び調速機25が設置されている。制御盤24は、巻上機11の動作を含むエレベータ装置1の全体を制御する。調速機25は、巻上機11へ供給される電源を制御可能である。図2に示すように、調速機25には、ガバナロープ26が巻き掛けられている。ガバナロープ26は、無端状に形成されるとともに、例えば昇降路2の天井近くからピット部2bの近くにまで垂下されている。
【0020】
昇降路2の天井部2aと、ピット部2bには、それぞれ調速機用回転車27が設置されている。なお調速機用回転車27は、例えば昇降路2の壁面部に設置されてもよい。ガバナロープ26の上端部及び下端部は、それぞれ調速機用回転車27に巻き掛けられている。これによりガバナロープ26に一定の張力が与えられている。
【0021】
ガバナロープ26は、連結レバー28によって例えばかご床4に連結されている。これにより、乗籠3の走行に同期してガバナロープ26が動く。なお図2中に2点鎖線で示すように、ガバナロープ26は、調速機25の本体フレーム(後述)に設けられた連結レバー28によって、調速機25に連結されてもよい。またガバナロープ26は、乗籠3の他の部位に連結されてもよい。更に言えば、ガバナロープ26は、動かないように昇降路2に固定されていてもよい。
【0022】
図2に示すように、調速機25は、本体フレーム31、ガバナシーブ32、回転おもり33、及びスイッチ34を備えている。本体フレーム31は、例えば側面板6に設置されている。ガバナシーブ32は、本体フレーム31に回転可能に支持されている。ガバナシーブ32は、ガバナロープ26に接触している。
【0023】
本体フレーム31には、例えば一対の案内シーブ35が設けられている。案内シーブ35は、ガバナシーブ32が空回りしないように、ガバナロープ26をガバナシーブ32に向けて押圧している。これにより、ガバナシーブ32は、ガバナロープ26の移動に伴って回転する。つまり、ガバナシーブ32は、乗籠3の走行速度(エレベータの走行速度)と同期して回転する。
【0024】
回転おもり33は、ガバナシーブ32に設けられている。回転おもり33は、ガバナシーブ32の遠心方向に変位可能に設けられている。回転おもり33は、図示しないばねによって、ガバナシーブ32の中心に向けて付勢されている。回転おもり33は、ガバナシーブ32の回転によって発生する遠心力により、ガバナシーブ32の遠心方向に変位する。
【0025】
図2に示すように、スイッチ34は、ガバナシーブ32の隣に設けられている。スイッチ34が操作されると、エレベータの主電源が切られ、巻上機11の電源21がOFFになる。回転おもり33は、例えばその先端に図示しない操作子を有する。操作子は、乗籠2の走行速度が予め設定された所定速度を超えたときに、ガバナシーブ32の遠心力により、スイッチ34に衝突する位置まで変位する。そしてその操作子は、スイッチ34に衝突することでスイッチ34を操作する。つまり、エレベータの速度が異常になったとき、操作子がスイッチ34を作動させて巻上機11の電源21が切られ、乗籠3が強制停止される。
【0026】
次に、エレベータ装置1の動作について説明する。
巻上機11に電源が入れられ、駆動シーブ13が回転運動し始めると、その駆動力がメインロープ14に伝達され、乗籠3の上下運動に変換される。このとき、巻上機11、制御盤24及び調速機25といった主要機器が、エレベータの運転に合わせて乗籠3とともに移動する。
【0027】
このような構成のエレベータ装置1によれば、火災等の緊急時においても、安全で確実な運転の実現が可能になる。
【0028】
本実施形態のエレベータ装置1は、巻上機11、調速機25及び制御盤24といった主要機器が乗籠3に設置されている。このため、巻上機11や調速機25、制御盤24等の主要機器の近くで火災等が発生した場合でも、乗籠3を移動させることで、これら主要機器を乗籠3とともに火災が起きていない位置まで移動させることができる。
【0029】
そのため、これら主要機器を火災等の熱や、消火活動による水から守ることができる。つまり、火災等の緊急時においても上記主要機器の機能が守られる。その結果、例えば緊急時における救出運転時等において、より安全で確実なエレベータの運転を可能にすることができる。
【0030】
本実施形態では、巻上機11は、かご室5の下側に配置されている。このため、巻上機11は、消火活動による水の影響等を受け難くなっており、より安全で確実なエレベータの運転が可能になっている。
【0031】
次に、エレベータ装置1の一つの変形例について、図3を参照して説明する。なおこの変形例は、第4実施形態を除く後述の全ての実施形態にも適用可能である。
【0032】
図3に示すように、本変形例に係るエレベータ装置1は、ガバナロープ26、及び調速機用回転車27を有しない。調速機25は、メインロープ14に隣接して設けられている。ガバナシーブ32は、メインロープ14に接しており、メインロープ14に対する乗籠3の移動によって回転する。
【0033】
このような構成によれば、上記第1実施形態と同様に、火災等の緊急時においても、安全で確実な運転の実現が可能になる。さらにこの変形例によれば、ガバナロープ26などの部品を省略することが可能になり、より低コストで、スペース的にも有利なエレベータ装置1を提供することができる。
【0034】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るエレベータ装置1について、図4を参照して説明する。なお上記第1実施形態の構成と同一または類似の機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。また、下記に説明する以外の構成は、上記第1の実施形態と同じである。
【0035】
乗籠3は、かご床4と、かご室5を有する。かご床4には、ブレーキ22及び巻上機11に臨む開口部41が設けられている。かご室5は、かご床4の上に設けられた床面42を有する。床面42は、かご床4の開口部41に通じる開口部43を有する。つまり、床面42は、ブレーキ22及び巻上機11に臨む開口部43を有する。
【0036】
床面42の開口部43には、開閉可能な蓋44が取り付けられる。この蓋44によって、通常状態では、床面42の開口部43は塞がれている。なお、かご床4の開口部41及び床面42の開口部43の位置や形状、大きさなどはそれぞれ特に限定されない。
【0037】
ブレーキ22は、当該ブレーキ22をかご室5内から手動で操作可能な操作レバー46を有する。操作レバー46は、ブレーキ22を手動で開放する操作機構の一例である。操作レバー46が操作されると、電源21が切られた状態でもブレーキ22の制動状態が解除される。なお、ブレーキ22を手動で開放する操作機構は、操作レバー46に限らず、例えばボタンや他のリンク機構などでもよく、具体的な構成は特に限定されない。
【0038】
図4に示すように、巻上機11の駆動軸12は、駆動シーブ13が取り付けられた第1端部12aと、この第1端部12aとは反対側となる第2端部12bとを有する。第2端部12bには、歯車47が設置されている。乗籠3は、この歯車47とかみ合う回転ハンドル48と、緊急時に回転ハンドル48が取り付けられる回転ハンドル取り付けベース49とを有する。
【0039】
回転ハンドル取り付けベース49は、回転ハンドル48を回転可能に支持する。回転ハンドル48を操作することで、かご室5内から巻上機11を手動で操作可能である。回転ハンドル48は、緊急時以外は、例えばかご床4の下側に収納されている。
【0040】
緊急時の場合は、まず床面42に設けられた蓋44が開かれ、かご床4の下側から回転ハンドル48が取り出される。そして、巻上機11の駆動軸12に設けられた歯車47に噛み合うように、回転ハンドル48を回転ハンドル取り付けベース49に取り付ける。その後、操作レバー46を操作することでブレーキ22を開放し、回転ハンドル48を回転させることで乗籠3を上下方向に手動にて運転する。
【0041】
このような構成のエレベータ装置1によれば、上記第1実施形態と同様に、火災等の緊急時においても、安全で確実な運転の実現が可能になる。
【0042】
本実施形態では、かご室5がブレーキ22に臨む開口部43を有し、ブレーキ22がかご室5内から操作可能である。これにより、緊急時においても、ブレーキ22を手動で開放し、乗籠3を移動可能な状態にすることができる。
【0043】
さらに本実施形態では、かご室5の開口部43を通じて、かご室5内から巻上機11を手動で操作可能である。これにより、万が一災害が発生し、エレベータの主電源が遮断された場合や、予備バッテリーによる運転が不可能となった場合でも、かご室5の中から乗籠3の移動が可能となり、最寄階や安全な位置へ退避することができる。
【0044】
なお、手動で巻上機11を操作する機構は、回転ハンドル48に限らず、例えばレバーなどでもよく、具体的な構成は限定されない。
【0045】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係るエレベータ装置1について、図5を参照して説明する。なお上記第1実施形態の構成と同一または類似の機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。また、下記に説明する以外の構成は、上記第1の実施形態と同じである。
【0046】
図5に示すように、本実施形態に係る乗籠3は、かご室5の下方にかご床下構造51を有する。かご床下構造51は、例えば箱状に形成され、かご室5の下方に機械室に相当する空間部52を形成する。巻上機11は、上記かご床下構造51をかご室5との間に挟んで乗籠3の下部に配置されている。
【0047】
さらに乗籠3は、乗籠3の下部に取り付けられ、乗籠3の下部に設置された機器の略全体を覆うカバー53を備えている。カバー53は、巻上機11、駆動シーブ13、及び案内シーブ15を覆う。またカバー53は、かご床下構造51の空間部52も覆ってもよい。
【0048】
このような構成のエレベータ装置1によれば、上記第1実施形態と同様に、火災等の緊急時においても、安全で確実な運転の実現が可能になる。
【0049】
本実施形態では、乗籠3は、かご室5と巻上機11との間に空間部52を形成するかご床下構造51を備えている。このため、巻上機11を発信源とする騒音や振動が、かご床下構造51の空間部52によって低減され、乗客が乗るかご室5に伝わり難くなる。
【0050】
さらに本実施形態では、乗籠3は、乗籠3の下部に取り付けられ、乗籠3の下部に設置された機器を覆うカバー53を備えている。このようなカバー53を乗籠3の下部に覆い被せることにより、巻上機11や駆動シーブ13、案内シーブ15から発生する騒音も低減することができる。さらにカバー53により、火災による熱の影響や消火活動による水の影響が巻上機11等に及び難くすることができる。
【0051】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係るエレベータ装置1について、図6及び図7を参照して説明する。なお上記第1実施形態の構成と同一または類似の機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。また、下記に説明する以外の構成は、上記第1の実施形態と同じである。
【0052】
図6に示すように、本実施形態に係るエレベータ装置1は、ガバナロープ26、及び調速機用回転車27を有しない。調速機25は、巻上機11と一体構造であり、かご室5の下側に配置されている。
【0053】
図7に示すように、調速機25は、第1実施形態のガバナシーブ32に相当する回転体61を有する。回転体61は、巻上機11の駆動軸12に取り付けられている。回転体61は、駆動軸12の回転に伴い、駆動軸12と一体に回転する。
【0054】
図6に示すように、乗籠3は、かご床4の下側に安全装置62を備えている。安全装置62は、非常止め装置63と、この非常止め装置63を作動させるリンク機構64とを有する。非常止め装置63は、乗籠3を案内するガイドレールに隣接して設けられ、非常時にガイドレールに押し付けられてブレーキを利かせる一対の楔65を有する。リンク機構64は、調速機25の回転体61の円周上に配置されている。
【0055】
図6に示すように、回転体61には、乗籠3の走行速度が予め設定された所定速度を超えたときに、リンク機構64を操作するリンク作動片66を備えている。リンク作動片66は、回転体61の遠心方向に変位可能に設けられている。リンク作動片66は、ばね67(付勢手段)によって、回転体61の中心に向けて付勢されている。
【0056】
リンク作動片66は、回転体61の回転によって発生する遠心力により、回転体61の遠心方向に変位し、回転体61の外周に飛び出す。この飛び出したリンク作動片66は、リンク機構64に当接することでリンク機構64を操作する。リンク機構64が操作されると、非常止め装置63が作動し、乗籠3が強制的に停止される。
【0057】
このような構成のエレベータ装置1によれば、上記第1実施形態と同様に、火災等の緊急時においても、安全で確実な運転の実現が可能になる。
【0058】
本実施形態では、調速機25は、駆動軸12に取り付けられ、駆動軸12の回転に伴って回転する。これにより、巻上機11と調速機25を一体構造にすることができる。巻上機11と調速機25を一体構造にできると、従来のシステムに比べ、より省スペース化が計られる。例えば、ガバナロープ26などを省略することが可能になる。
【0059】
さらに、巻上機11と調速機25を一体構造にできると、これらの機器をまとめてかご室5の下側に配置することができる。これら機器をかご室5の下側に配置することができると、これら機器が火災時等の消火活動による水の影響を受けにくくなり、より信頼性の高いエレベータシステムを提供することができる。
【0060】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態に係るエレベータ装置1について、図8を参照して説明する。なお上記第1実施形態の構成と同一または類似の機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。また、下記に説明する以外の構成は、上記第1の実施形態と同じである。
【0061】
図8に示すように、本実施形態に係る制御盤24は、一つの独立した箱型に形成されている。制御盤24は、制御基板71と、この制御基板71を収容したケース72とを有する。ケース72は、かご室5の側面板6に取り付けられるとともに、かご室5内に臨む第1開口部73と、かご室5外に臨む第2開口部74とを有する。
【0062】
第1開口部73及び第2開口部74は、それぞれ開閉可能な扉75によって閉じられている。非常時には、この扉75を開けることによって、かご室5の内側からでも、かご室5の外側からでも制御盤24の内部(例えば制御基板71)にアクセスすることができる。なお扉は、図8に示すような鉛直方向に開くものに限らず、水平方向に開くものでもよい。開口部73,74や扉75の大きさや形状、位置等は特に限定されるものではない。
【0063】
図8に示すように、制御盤24のケース72の内面及び扉75の内面には、断熱材76が設けられている。また、開口部73,74の周縁部と扉75の間には、図示しないパッキンが取り付けられている。これにより、制御盤24の耐熱構造と防水構造とが実現されている。
【0064】
このような構成のエレベータ装置1によれば、上記第1実施形態と同様に、火災等の緊急時においても、安全で確実な運転の実現が可能になる。
【0065】
本実施形態では、制御盤24が制御基板71と、この制御基板71を収容したケース72とを有する。これにより、制御盤24が火災等の災害時における熱の影響や、消火活動による水の影響を受け難い構造になっている。例えば制御盤24が断熱材76やパッキンを備えると、より熱の影響を受け難く、さらに防水性に優れた構造が実現されている。
【0066】
さらに本実施形態では、ケース72は、かご室5内に臨む第1開口部73と、かご室5外に臨む第2開口部74とを有する。これにより、災害時の状況により、制御盤24へのアクセス方法が選択可能となり、より一層緊急時の対応を向上させることができる。
【0067】
上記第1乃至第5の実施形態の構成によれば、機械室レスエレベータにおいて、災害時の緊急運転において、熱や水からの影響を受け難い構造とすることができ、より一層安全で、信頼性の高いエレベータ装置を提供することができる。
【0068】
以上、第1乃至第5の実施形態に係るエレベータ装置1ついて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。第1乃至第5の実施形態に係る各構成要素は、適宜組み合わせて用いることができる。例えば、第2実施形態の構成に対して、第3実施形態の構成と第4実施形態の構成とを組み合わせてもよい。
【0069】
また、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、巻上機11や制御盤24、調速機25は、かご室5の下側や側面板6に限らず、かご室5の上側にあってもよい。制御盤24は、必ずしも乗籠3に設置される必要は無く、エレベータ乗り場等、他の場所に設置されてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…エレベータ装置、3…乗籠、4…かご床、5…かご室、11…巻上機、12…駆動軸、13…駆動シーブ、14…メインロープ、21…電源、22…ブレーキ、24…制御盤、25…調速機、43…開口部、51…かご床下構造、52…空間部、53…カバー、71…制御基板、72…ケース、73…第1開口部、74…第2開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗籠と、
前記乗籠を支持したメインロープと、
前記乗籠に設置された巻上機と、
前記巻上機に取り付けられ、前記メインロープが巻き掛けられるとともに、前記巻上機によって駆動される駆動シーブと、
前記乗籠に設置され、前記乗籠が所定速度を超えて走行した時に前記巻上機へ供給される電源を制御可能な調速機と、
を具備したことを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、
前記巻上機は、前記電源が切られた時に作動するブレーキを備え、
前記乗籠は、乗客が乗るとともに、前記ブレーキに臨む開口部を有したかご室を備え、前記ブレーキが前記かご室内から操作可能であることを特徴とするエレベータ装置。
【請求項3】
請求項2の記載において、
前記かご室の開口部を通じて、前記巻上機が前記かご室内から手動で操作可能であることを特徴するエレベータ装置。
【請求項4】
請求項3の記載において、
前記乗籠は、前記かご室の下方に空間部を形成するかご床下構造を有し、
前記巻上機は、前記かご床下構造を前記かご室との間に挟んで前記乗籠の下部に配置されたことを特徴とするエレベータ装置。
【請求項5】
請求項4の記載において、
前記乗籠の下部に取り付けられ、前記巻上機を覆うカバーを備えたことを特徴とするエレベータ装置。
【請求項6】
請求項1または請求項5の記載において、
前記巻上機は、駆動軸を備え、
前記調速機は、前記駆動軸に取り付けられ、前記駆動軸の回転に伴って回転することを特徴とするエレベータ装置。
【請求項7】
請求項1の記載において、
当該エレベータ装置を制御する制御盤を備え、この制御盤は、前記乗籠に設置されたことを特徴とするエレベータ装置。
【請求項8】
請求項7の記載において、
前記乗籠は、乗客が乗るかご室を備え、
前記制御盤は、制御基板と、この制御基板を収容したケースとを有するとともに、前記かご室に取り付けられ、前記ケースは、前記かご室内に臨む第1開口部と、前記かご室外に臨む第2開口部とを有したことを特徴とするエレベータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−30933(P2012−30933A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172031(P2010−172031)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】