説明

エレベータ

【課題】機械室において、エレベータの災害対策用の動作を点検することを可能とするエレベータを提供することである。
【解決手段】災害が発生した場合に乗りかご20が災害対策用の動作を行うように予め設定されたエレベータ10であって、乗りかご20内の様子を撮影するかご内カメラ22と、エレベータ10の動作モードを通常モードまたは点検モードに切り替える切替スイッチ部32と、切替スイッチ部32を有する機械室8に設けられ、かご内カメラ22によって撮影された映像を表示する表示部34とを備え、かご内カメラ22は、動作モードが通常モードから点検モードへと切り替えられたときに、乗りかご20の災害対策用の動作を撮影する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータに係り、特に、災害が発生した場合に乗りかごが災害対策用の動作を行うように予め設定されたエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、商業施設等の様々な場所において、エレベータが設置されている。そして、地震や火災等といった災害が発生した際に、エレベータを利用している乗客の安全を確保するために種々の対策が講じられている。例えば、災害が発生した際の災害対策用の動作として、最寄階に乗りかごを停止させて扉開させるといった動作がある。また、このとき、乗りかご内のかご操作盤の表示画面に災害が発生している旨を視覚的に表示するといった動作もある。これにより、乗りかご内の乗客が乗りかごから降車して、非常階段等を利用して非難することも可能である。
【0003】
本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、地震によってエレベータが停止した時に点検運転を行って異常の有無を診断し、異常が無ければ復旧させるようにしたエレベータの地震時復旧装置が開示されている。そして、エレベータのかご、機械室及び昇降路の少なくとも一つに設けられ、点検運転時にエレベータの各機器を撮影する監視カメラと、上記監視カメラからの映像情報を入力する映像監視装置とを備えることが開示されている。そして、上記映像監視装置にインターネット網を介して接続され、予め保守会社から地震復旧対応の教育を受けたビルオーナー、管理人、住民等の一般人が使用する端末を備えることが開示されている。さらに、上記端末は、かご位置に対応した各機器の正常時を記憶した映像と、点検運転時の映像を表示することができ、正常時の記憶映像と点検運転時の映像を比較することにより異常の有無を判断できると述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−1494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、エレベータには、種々の災害対策用の動作が予め設定されていることがあるが、エレベータを長期間使用するためには、定期的にこれらの動作についても点検を行う必要がある。ところで、エレベータの点検作業を行う際には、機械室において、エレベータの動作モードを通常モードから点検モードに切り替えて、巻上機等について点検を行う場合があるが、このとき災害対策用の動作についても点検できると便利である。
【0006】
本発明の目的は、機械室において、エレベータの災害対策用の動作を点検することを可能とするエレベータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエレベータは、災害が発生した場合に乗りかごが災害対策用の動作を行うように予め設定されたエレベータであって、前記乗りかご内の様子を撮影する撮影部と、前記エレベータの動作モードを通常モードまたは点検モードに切り替えるモード切替部と、前記モード切替部を有する機械室に設けられ、前記撮影部によって撮影された映像を表示する表示部と、を備え、前記撮影部は、前記動作モードが前記通常モードから前記点検モードへと切り替えられたときに、前記乗りかごの前記災害対策用の動作を撮影することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るエレベータにおいて、前記災害対策用の動作は、前記災害が発生していることを前記乗りかご内の乗客に対して報知するための視覚的な表示であることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係るエレベータにおいて、前記災害対策用の動作は、前記乗りかごを予め定められた着床位置に停止させることであることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るエレベータにおいて、前記災害対策用の動作は、前記着床位置に停止した際の前記乗りかごの扉の開閉をさらに含むことが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るエレベータにおいて、前記撮影部は、前記乗りかご内の映像を音声とともに撮影し、前記災害対策用の動作は、前記災害が発生していることを前記乗りかご内の乗客に対して報知するための音声案内であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上記構成によれば、動作モードが通常モードから点検モードに切り替えられたときに、乗りかごの災害対策用の動作を撮影した映像が機械室に設けられる表示部に表示される。これにより、保守作業員は機械室において、当該映像を見ることで乗りかごの災害対策用の動作を点検することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る実施の形態において、エレベータを示す図である。
【図2】本発明に係る実施の形態において、エレベータの災害対策用の動作についての点検を行う手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を用いて、本発明に係る実施の形態を詳細に説明する。また、以下では、全ての図面において、同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0015】
図1は、エレベータ10を示す図である。エレベータ10は、主ロープ12と、釣合錘14と、巻上機16と、制御盤18と、乗りかご20と、乗場扉28と、昇降路30と、保守装置36とを有する。また、エレベータ10は、乗りかご20を各階27の間を昇降させることで乗客を移動させる。
【0016】
主ロープ12は、乗りかご20を吊るすためのロープであり、巻上機16に巻き掛けられている。そして、主ロープ12の一方端は乗りかご20に接続され、他方端は釣合錘14が接続されている。
【0017】
釣合錘14は、主ロープ12の他方端に接続され、主ロープ12の一方端に接続される乗りかご20との間でバランスを取るために必要な重量が設定される。
【0018】
巻上機16は、制御盤18の制御によって、巻き掛けられた主ロープ12を駆動させることで乗りかご20を昇降させるための装置である。巻上機16は、機械室8に配置されている。
【0019】
制御盤18は、乗りかご20の昇降速度や運行管理等を含んだエレベータ10全体の運行に関する制御を行う装置である。制御盤18は、動作モードが通常モードのときは、通常通りの運行制御を行う。また、制御盤18は、動作モードが点検モードのときは、保守点検のための運行制御を行い、例えば、エレベータ10(乗りかご20)の災害対策用の動作について点検するための制御についても行われる。なお、制御盤18は、機械室8に配置されている。
【0020】
ここで、エレベータ10が設置される施設が災害(例えば、地震)にあったときに備え、乗りかご20の災害対策用の動作が予め設定されている。乗りかご20の災害対策用の動作とは、例えば、図示しない災害検知センサによって災害が発生したことが検知されたときに、乗りかご20を最寄階に着床させて乗りかご扉26及び乗場扉28と開くとともに、かご操作盤24の表示画面242に「災害が発生していますので降車してください」と表示し、また、音声によっても同様の内容を報知する動作である。
【0021】
そして、制御盤18は、点検モードとなったときの、乗りかご20の災害対策用の動作について点検するための制御として、上記災害検知センサに擬似の災害検知信号を与えることで、乗りかご20の災害対策用の動作をテストで実行させる。
【0022】
乗りかご20は、制御盤18の制御によって、巻上機16が作動すると昇降路30内を昇降し、乗客を乗せるための構造物である。乗りかご20は、かご内カメラ22と、かご操作盤24と、乗りかご扉26とを含む。
【0023】
かご内カメラ22は、乗りかご20内の様子を乗りかご20内の音声とともに撮影するカメラであり、その撮影された映像データは、制御盤18及び保守装置36に伝送させる。また、かご内カメラ22は、乗りかご20内の全体の様子を撮影するのに適した位置、例えば、天井部の角部周辺に配置することができる。
【0024】
かご操作盤24は、乗りかご20内に乗り込んだ乗客が行先階を選択したり、乗りかご扉28を開閉したりするための押釦が配置されている。また、かご操作盤24には、上記押釦の他に、乗りかご20が位置している階やその他の情報を表示する表示画面242が取り付けられている。
【0025】
乗りかご扉26は、乗りかご20に設けられる扉であり、乗りかご20が各階27に着床した際に、当該着床階27の乗場扉28とともに開く。これにより、乗客が乗りかご20に対して乗り降りすることができる。
【0026】
乗場扉28は、各階27の乗場に設けられる扉であり、乗りかご20が着床した際に、乗りかご扉26とともに開く。これにより、乗客が乗りかご20に対して乗り降りすることができる。
【0027】
保守装置36は、本体部31と、切替スイッチ部32と、表示部34とを含む。保守装置36は、保守作業員が行うエレベータ10の保守点検作業を行うための装置であり、例えば、乗りかご20の災害対策用の動作が正常に動作しているか否かを点検するために用いられる。なお、保守装置36は、機械室8に配置されている。
【0028】
切替スイッチ部32は、エレベータ10の動作モードを通常モードまたは点検モードに切り替えるためのモード切替釦である。通常モードは、エレベータ10が通常通りの運行を行う動作モードである。点検モードは、エレベータ10が保守点検のために予め設定された動作モードである。
【0029】
表示部34は、かご内カメラ22が撮影した映像を表示するための表示装置である。また、表示部34は、保守作業員が映像を見ることで保守点検を行うために好適な画面サイズを有し、また、保守作業員が無理のない姿勢で見ることができる高さ位置に設定される。
【0030】
本体部31は、切替スイッチ部32によって切替られた動作モードを制御盤18に伝送する。これにより、制御盤18は当該動作モードに対応した制御を行う。また、本体部31は、切替スイッチ部32によって動作モードが通常モードから点検モードへと切り替えられたときに、乗りかご20内で災害対策用の動作を撮影するように、かご内カメラ22の撮影位置を変更する。具体的には、かご操作盤24の表示画面242と乗りかご扉26を好適に撮影可能な位置に変える。
【0031】
上記構成のエレベータ10の作用について、図1,2を用いて説明する。図2は、乗りかご20の災害対策用の動作についての点検を行う手順を示すフローチャートである。エレベータ10を長期間使用するためには、定期的にエレベータ10について種々の点検を行う必要がある。以下では、その保守点検作業の1つとして行われる乗りかご20の災害対策用の動作について点検について説明する。
【0032】
最初に、保守作業員は、機械室8内において、保守装置36の切替スイッチ部32を操作する。具体的には、エレベータ10の動作モードが通常モードから点検モードに切り替わるように、切替スイッチ部32を操作する(S10)。当該切替スイッチ部32の操作により、本体部31からの動作モードに関する情報を受け取った制御盤18は、点検モードに対応する制御を行う。具体的には、上記災害検知センサに擬似の災害検知信号を与えることで、乗りかご20の災害対策用の動作をテスト実行させる。
【0033】
そして、上記乗りかご20の災害対策用の動作を撮影するために、本体部31は、切替スイッチ部32によって動作モードが通常モードから点検モードへと切り替えられたときに、乗りかご20内で災害対策用の動作を撮影するように、かご内カメラ22の撮影位置を変更する。具体的には、かご操作盤24の表示画面242と乗りかご扉26を好適に撮影可能な位置に変える(S12)。そして、かご内カメラ22によって撮影された映像は、機械室8に配置された保守装置36の表示部34に表示される。これにより、保守作業員は、表示部34に表示された映像を見ることで、「乗りかご20を最寄階に着床しているか?」「乗りかご扉26及び乗場扉28と開いているか?」「表示画面242に乗客に対する報知のための表示がなされているか?」「乗客に対する報知のための音声案内が流れているか?」といったことを確認することで、乗りかご20の災害対策用の動作の点検を行うことができる。
【0034】
そして、保守作業員は、乗りかご20の災害対策用の動作について点検を終えた後に、再び、保守装置36について切替スイッチ部32を操作する。具体的には、エレベータ10の動作モードが点検モードから通常モードに切り替わるように、切替スイッチ部32を操作する(S14)。これにより、制御盤18は、通常通りの運行制御を行うため、エレベータ10の通常運転が復旧する。
【0035】
このように、保守作業員は、動作モードの切り替え及び乗りかご20の災害対策用の動作についての映像の確認について機械室8内で行うことができる。したがって、機械室8内で動作モードの切替を行う保守作業員とは別に乗りかご20の災害対策用の動作についての動作を確認するための保守作業員を手配する必要はない。つまり、一人の保守作業員で点検することができるため、保守の作業効率が向上する。また、機械室8において、乗りかご20の災害対策用の動作の点検以外の点検、例えば、巻上機16の点検も行うことができるため保守の作業効率が向上する。
【符号の説明】
【0036】
8 機械室、10 エレベータ、12 主ロープ、14 釣合錘、16 巻上機、18制御盤、20 乗りかご、22 かご内カメラ、23 保守装置、24 かご操作盤、26 乗りかご扉、28 乗場扉、30 昇降路、31 本体部、32 切替スイッチ部、34 表示部、36 保守装置、242 表示画面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
災害が発生した場合に乗りかごが災害対策用の動作を行うように予め設定されたエレベータであって、
前記乗りかご内の様子を撮影する撮影部と、
前記エレベータの動作モードを通常モードまたは点検モードに切り替えるモード切替部と、
前記モード切替部を有する機械室に設けられ、前記撮影部によって撮影された映像を表示する表示部と、
を備え、
前記撮影部は、
前記動作モードが前記通常モードから前記点検モードへと切り替えられたときに、前記乗りかごの前記災害対策用の動作を撮影することを特徴とするエレベータ。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータにおいて、
前記災害対策用の動作は、前記災害が発生していることを前記乗りかご内の乗客に対して報知するための視覚的な表示であることを特徴とするエレベータ。
【請求項3】
請求項1に記載のエレベータにおいて、
前記災害対策用の動作は、前記乗りかごを予め定められた着床位置に停止させることであることを特徴とするエレベータ。
【請求項4】
請求項3に記載のエレベータにおいて、
前記災害対策用の動作は、前記着床位置に停止した際の前記乗りかごの扉の開閉をさらに含むことを特徴とするエレベータ。
【請求項5】
請求項1に記載のエレベータにおいて、
前記撮影部は、前記乗りかご内の映像を音声とともに撮影し、
前記災害対策用の動作は、前記災害が発生していることを前記乗りかご内の乗客に対して報知するための音声案内であることを特徴とするエレベータ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−126469(P2012−126469A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276849(P2010−276849)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】