説明

エンコーダ用検出部およびエンコーダ

【課題】様々な環境下において使用でき常に安定した検出動作を行うことができるエンコーダ用検出部およびエンコーダを提供する。
【解決手段】検出部12のケース1202内に、第1、第2の目盛板44、46を設ける。ケース1202内外にわたって設けられた第2の光ファイバ48によって第1、第2の可動スリット56、58を介して第1、第2、第3の反射板50A、50B、50Cに互いに波長成分が異なる第1、第2、第3の光を照射させる。第1、第2、第3の反射板50A、50B、50Cで反射された各反射光をケース1202内外にわたって設けられた第2の光ファイバ48によってケース1202の外に導く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンコーダ用検出部およびエンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、モータの駆動軸の回転量を検出するエンコーダとしてロータリーエンコーダが用いられており、この種のエンコーダは、ケースと、このケースの内部に収容された目盛板、発光ダイオード、受光素子などを備えている。
そして、目盛板は、複数のスリットが形成され前記駆動軸の回転に連動して回転され、発光ダイオードはこの目盛板に臨ませて配置されて目盛板に光を照射させ、受光素子は、前記目盛板に臨ませて配置され前記発光ダイオードから発せられ前記スリットを通過した光を受光し、前記受光素子から出力される検出信号に基づいて回転量を検出するようにしている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−126599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来のエンコーダでは、エンコーダのケースの外部に設けられた電源と前記発光ダイオードを電源供給用のケーブルで接続するとともに、外部に設けられた信号処理回路と受光素子を検出信号伝達用のケーブルで接続している。
したがって、電源供給用のケーブルと発光ダイオードとの接続箇所、あるいは、信号伝達用のケーブルと受光素子との接続箇所には電気信号が現れていることから、引火性を有する塗料やガソリンなどを扱う防爆環境下で使用する上で不利があった。
また、放射線が発生する環境下では、放射線が発光ダイオードや受光素子にダメージを与えるため耐久性を確保する上で不利があった。
また、高電圧や高磁場が発生する環境下では、電圧や磁場が信号伝達用のケーブルで伝達される検出信号に影響を与えるため、回転量の検出を確実に行う上で不利があった。
また、エンコーダを構成する発光ダイオード、受光素子および目盛板が収容されたケースと、電源および検出回路とが離れた箇所に設置され、電源供給用のケーブルと検出信号伝達用のケーブルとが長くなると、それらケーブルを伝送される検出信号が外部からの電磁波ノイズの影響を受けやすくなり、検出回路によって検出される回転量に誤差が生じるおそれがある。
このような問題は、ロータリーエンコーダのみならず、同様の検出原理を用いるリニアエンコーダなどの他のエンコーダにおいても同様に発生している。
本発明はこのような事情に鑑みなされたもので、その目的は、様々な環境下において使用でき常に安定した検出動作を行うことができるエンコーダ用検出部およびエンコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明のエンコーダ用検出部は、ケースと、互いに波長成分が異なる第1、第2、第3の光を前記ケースの内外に導く光ファイバと、前記ケースに回転可能に設けられた回転軸と、前記回転軸に連結され前記ケース内に配設された第1の板体に、前記回転軸の周方向に沿って複数の第1可動スリットが一定のピッチPで形成された第1の目盛板と、前記回転軸の軸方向に間隔をおいて前記回転軸に連結され前記ケース内に配設された第2の板体に、前記回転軸の周方向の1箇所に1つの第2可動スリットが形成された第2の目盛板と、前記ケース内で、前記第1の目盛板と前記第2の目盛板との間に設けられ、前記第1可動スリットの移動軌跡上に対向して配置され前記第1の光と同じ波長成分の光のみを反射する第1の反射板と、前記ケース内で、前記第1の目盛板と前記第2の目盛板との間で前記第1の反射板との間に前記回転軸の周方向に隙間Gを空けて設けられ、前記第1可動スリットの移動軌跡上に対向して配置され前記第2の光と同じ波長成分の光のみを反射する第2の反射板と、前記ケース内で、前記第2の目盛板の前記第1、第2の反射板と反対側に設けられ、前記第2可動スリットの移動軌跡上に対向して配置され前記第3の光と同じ波長成分の光のみを反射する第3の反射板とを備え、前記光ファイバの先端は、前記第1の目盛板が前記第1、第2反射板に対向する面と反対の面に臨むように配置され、前記回転軸の周方向において、前記隙間Gは前記ピッチPの1/4であることを特徴とする。
また本発明のエンコーダは、互いに波長成分が異なる第1、第2、第3の光を出射する光源と、ケースと、前記光源から出射された第1、第2、第3の光を前記ケースの内外に導く光ファイバと、前記ケースに回転可能に設けられた回転軸と、前記回転軸に連結され前記ケース内に配設された第1の板体に、前記回転軸の周方向に沿って複数の第1可動スリットが一定のピッチPで形成された第1の目盛板と、前記回転軸の軸方向に間隔をおいて前記回転軸に連結され前記ケース内に配設された第2の板体に、前記回転軸の周方向の1箇所に1つの第2可動スリットが形成された第2の目盛板と、前記ケース内で、前記第1の目盛板と前記第2の目盛板との間に設けられ、前記第1可動スリットの移動軌跡上に対向して配置され前記第1の光と同じ波長成分の光のみを反射する第1の反射板と、前記ケース内で、前記第1の目盛板と前記第2の目盛板との間で前記第1の反射板との間に前記回転軸の周方向に隙間Gを空けて設けられ、前記第1可動スリットの移動軌跡上に対向して配置され前記第2の光と同じ波長成分の光のみを反射する第2の反射板と、前記ケース内で、前記第2の目盛板の前記第1、第2の反射板と反対側に設けられ、前記第2可動スリットの移動軌跡上に対向して配置され前記第3の光と同じ波長成分の光のみを反射する第3の反射板と、前記光ファイバから出射される前記反射光を前記互いに異なる波長成分を有する第1、第2、第3の反射光に分離する光分波器と、前記光分波器によって分離された前記第1、第2、第3の反射光をそれぞれ受光する第1、第2、第3の受光素子とを備え、前記光ファイバの先端は、前記第1の目盛板が前記第1、第2反射板に対向する面と反対の面に臨むように配置され、前記回転軸の周方向において、前記隙間Gは前記ピッチPの1/4であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ケースの内部に発光素子および受光素子が設けられておらず電気信号が現れることがないので、ケースを防爆環境下、放射線が発生する環境下、高電圧や高磁場が発生する環境下などに設置して使用でき、常に安定した検出動作を行う上で有利となる。
また、光を伝送する光ファイバが長くなったとしても、光ファイバを伝送される光は、外部からの電磁波ノイズの影響を受けることがなく、正確な検出量を得る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施の形態のエンコーダ10の構成を示す説明図である。
【図2】図1のXX断面図である。
【図3】第1の目盛板44の平面図である。
【図4】第2の目盛板46の平面図である。
【図5】(A)乃至(D)は、第1、第2の反射板50A、50Cと、第1の可動スリット56との位置関係を示す動作説明図である。
【図6】(A)乃至(C)は検出信号SA、SB、SCの波形図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は実施の形態のエンコーダ10の構成を示す説明図、図2は図1のXX断面図、図3は第1の目盛板44の平面図、図4は第2の目盛板46の平面図である。
【0009】
図1に示すように、本実施の形態では、エンコーダ10はモータ2の回転量を検出するロータリーエンコーダである。
エンコーダ10は、検出部12と、電装部14とを備えている。
検出部12は、モータ2に近接して配置されている。
電装部14は、検出部12から離間した箇所に配設されている。
検出部12は、1本の第1の光ファイバ16を介して電装部14に接続されている。
【0010】
(電装部14)
電装部14はケース1402を備えている。
ケース1402には、第1乃至第3の発光素子20A、20B、20Cと、電源22と、光合波器24と、光アイソレータ26と、光分波器28と、第1乃至第3の受光素子30A、30B、30Cと、検出回路32などが収容されている。
また、ケース1402にはその外面に臨ませて電装部側光コネクタ34が設けられ、第1の光ファイバ16と電装部14との接続は、第1の光ファイバ16の一端が電装部側光コネクタ34に連結されることでなされている。
第1乃至第3の発光素子20A、20B、20Cは、互いに異なる波長成分を有する第1、第2、第3の光を出射する。
本実施の形態では、第1乃至第3の発光素子20A、20B、20Cは発光ダイオードで構成されている。
例えば、第1の発光素子20Aから出射される第1の光は赤色光、第2の発光素子20Bから出射される第2の光は緑色光、第3の発光素子20Cから出射される第3の光は青色光である。
【0011】
電源22は、第1乃至第3の発光素子20A、20B、20Cに駆動電流(電源)を供給して発光させるものである。
【0012】
光合波器24は、第1乃至第3の発光素子20A、20B、20Cから出射される互いに波長が異なる第1、第2、第3の光を合成し、合成した光を光アイソレータ26に導くものである。
本実施の形態では、光合波器24は第1乃至第3の発光素子20A、20B、20Cから出射された赤、緑、青の各色の光を合成し白色光を光アイソレータ26に導く。
したがって、本実施の形態では、互いに波長成分が異なる第1、第2、第3の光を出射する光源が、第1乃至第3の発光素子20A、20B、20Cと光合波器24によって構成されている。
【0013】
光アイソレータ26は、光合波器24からの光を電装部側光コネクタ34、第1の光ファイバ16を介して検出部12に導くとともに、検出部12から第1の光ファイバ16、電装部側光コネクタ34を介して導かれた光を光分波器28に導くものである。
【0014】
光分波器28は、光アイソレーター26を介して導かれた光を、互いに異なる波長成分を有する第1乃至第3の光の3つの光に分離するように構成されている。
【0015】
第1、第2、第3の受光素子30A、30B、30Cは、光分波器28によって分離された第1、第2、第3の光をそれぞれ受光して検出信号を生成するものである。
本実施の形態では、各受光素子30A、30B、30Cはフォトダイオードで構成されている。
【0016】
検出回路32は、第1乃至第3の受光素子30A、30B、30Cから出力される第1、第2、第3の検出信号SA、SB,SC(図6)に基づいてモータ2の回転量に対応したデジタル信号を生成する。
【0017】
なお、図1において符号36は光合波器24と光アイソレータ26を接続する光ファイバ、符号38は光アイソレータ26と光分波器28を接続する光ファイバ、符号40は光アイソレータ26と電装部側光コネクタ34を接続する光ファイバを示す。
【0018】
(検出部12)
検出部12はケース1202を備えている。
ケース1202には、回転軸42と、第1の目盛板44と、第2の目盛板46と、第2の光ファイバ48と、第1、第2、第3の反射板50A、50B、50Cなどが収容されている。
また、ケース1202にはその外面に臨ませて検出部側光コネクタ52が設けられ、第1の光ファイバ16と検出部12との接続は、第1の光ファイバ16の他端が検出部側光コネクタ52に連結されることでなされている。
【0019】
回転軸42は、ケース1202内に設けられた軸受け部54によって回転可能に支持されている。
本実施の形態では、検出部12は、モータ2の回転量を検出するものであり、したがって、回転軸42の一端はモータ2の駆動軸に一体回転可能に連結され、回転軸42の他端に第1、第2の目盛板44、46が軸方向に間隔をおいて取り付けられている。
【0020】
第1の目盛板44は、図3に示すように、円板状の板体4402を有し、板体4402の回転中心は回転軸42の中心軸と一致している。
板体4402に回転軸42の周方向に沿って複数の第1の可動スリット56が形成されている。
複数の第1可動スリット56は光を透過し、それら第1可動スリット56を除く板体4402の部分は光を透過しないように構成されている。
第1可動スリット56は、回転軸42の周方向に沿った幅と、回転軸42の半径方向に沿った長さとを有する略矩形状を呈している。
複数の第1の可動スリット56は、回転軸42の周方向全周にわたって周方向に一定の間隔をおいて設けられている。
すなわち、第1の可動スリット56の隣り合うスリットの間の間隔(角度)、すなわち、ピッチPは一定となっている。
【0021】
第2の目盛板46は、図4に示すように、円板状の板体4602を有し、板体4602の回転中心は回転軸42の中心軸と一致している。
板体4602に回転軸42の周方向の1箇所に1つの第2の可動スリット58が形成されている。
第2の可動スリット58は光を透過し、第2の可動スリット58を除く板体4602の部分は光を透過しないように構成されている。
第2の可動スリット58は、第2の可動スリット58は第1の可動スリット56と同形同大の略矩形状を呈し、したがって、回転軸42の周方向に沿った幅と、回転軸42の半径方向に沿った長さとを有している。
第2の可動スリット58の回転軸42の半径方向における位置は、第1の可動スリット56の回転軸42の半径方向における位置と合致し、かつ、図2に示すように、第2の可動スリット58の回転軸42の周方向における位置は、複数の第1の可動スリット56のうちの1つの第1の可動スリット56の回転軸42の周方向における位置と合致している。
したがって、1つの第1可動スリット56と第2の可動スリット58とを介して光が通過可能となっている。
【0022】
第2の光ファイバ48は、その一端が検出部側光コネクタ52に接続され、他端に入出射面4802が設けられている。
第2の光ファイバ48は、光入出射面4802を、第1の目盛板44の第1可動スリット56に臨ませた状態でケース1202内に不図示の取り付け部材を用いて取着されている。
光入出射面4802は、第1、第2、第3の光を、第1の可動スリット56を介して第1、第2の反射板50A、50Bに照射してその反射光を取り込むと共に、第2の可動スリット58を介して第3の反射板50Cに照射してその反射光を取り込むものである。
第2の光ファイバ48は、光入出射面4802から取り込んだ第1、第2、第3の反射板50A、50B、50Cで反射された反射光を第1の光ファイバ16を介して電装部14へ導く。
したがって、本実施の形態では、第2の光ファイバ48は、互いに波長成分が異なる第1、第2、第3の光をケース1202の内外に導く光ファイバを構成している。
【0023】
第1、第2の反射板50A、50Bはケース1202内に不図示の取り付け部材を用いて取着されている。
第1、第2の反射板50A、50Bは、第1の目盛板44と第2の目盛板46との間に設けられ、第1可動スリット56の移動軌跡上に対向して配置されている。
したがって、第1、第2の反射板50A、50Bは、第1の目盛板44を挟んで第2の光ファイバ48の光入出射面4802と反対側に設けられ、言い換えると、第2の光ファイバ48の先端は、第1の目盛板44が第1、第2反射板50A,50Bに対向する面と反対の面に臨むように配置されている。
また、第1、第2の反射板50A、50Bは、回転軸42と直交する平面上に配置されている。
第1、第2の反射板50A、50Bは、それぞれ第1可動スリット56と同形同大の矩形状を呈し、第1、第2の反射板50A、50Bは、それらの長さ方向が第1可動スリット56および第2可動スリット58の長さ方向と平行している。
第1、第2の反射板50A、50Bは、回転軸42の周方向において、第2の光ファイバ48の光入出射面4802の中心軸Lを挟んで該中心軸Lからそれぞれ等しい距離をおいて配置されている。
第2の反射板50Bは、第1の反射板50Aとの間に回転軸42の周方向に隙間Gを空けて設けられ、隙間Gの寸法gは、第1可動スリット56のピッチPの1/4となっている。
回転軸42の軸方向から見て、隙間Gと、第2の可動スリット58の位置とが合致すると、1つの第1可動スリット56と隙間Gと第2の可動スリット58とを介して光が通過可能となる。
【0024】
第1の反射板50Aは、第1可動スリット56に臨む反射面5002Aを有し、この反射面5002Aが第1の光と同じ波長成分の光のみを反射し、かつ、それ以外の波長成分の光、すなわち、第2、第3の光を反射しないように構成されている。
第2の反射板50Bは、第1可動スリット56に臨む反射面5002Bを有し、この反射面5002Bが第2の光と同じ波長成分の光のみを反射し、かつ、それ以外の波長成分の光、すなわち、第1、第3の光を反射しないように構成されている。
【0025】
第3の反射板50Cは、ケース1202内に不図示の取り付け部材を用いて取着されている。
第3の反射板50Cは、第2の目盛板46の第1、第2の反射板50A,50Bと反対側に設けられ、第2可動スリット58の移動軌跡上に対向して配置されている。
第3の反射板50Cは、回転軸42と直交する平面上に配置されている。
第3の反射板50Cは、第1可動スリット58と同形同大の矩形状を呈し、第3の反射板50Cはその長さ方向が第2可動スリット58の長さ方向と平行している。
【0026】
第3の反射板50Cは、第2可動スリット58に臨む反射面5002Cを有し、この反射面5002Cが第3の光と同じ波長成分の光のみを反射し、かつ、それ以外の波長成分の光、すなわち、第1、第2の光を反射しないように構成されている。
【0027】
(動作)
次に動作について説明する。
図5(A)乃至(D)は、第1、第2の反射板50A、50Cと、第1の可動スリット56との位置関係を示す動作説明図である。
図6(A)乃至(C)は第1乃至第3の受光素子30A、30B、30Cによって検出された検出信号SA、SB、SCの波形図である。
【0028】
図1に示すように、電源22から第1乃至第3の発光素子20A、20B、20Cに電流が供給され各発光素子20A、20B、20Cから第1乃至第3の光が光合波器24に出射される。
第1乃至第3の光は、光合波器24で合成されて白色の光となり、この光は、光アイソレーター26、第1の光ファイバ16を介して第2の光ファイバ48に伝送され、図2に示すように、光入出射面4802から第1、第2の目盛板44、46に向けて出射される。
【0029】
図2、図5に示すように、第1、第2の目盛板44、46が矢印F方向に回転する場合について説明する。
図5(A)に示すように、1つの第1の可動スリット56が第1の反射面5002Aに合致した状態では、隣の第1の可動スリット56は第2の反射面5002Bに対して周方向において1/2重なった状態となる。
したがって、光入出射面4802から出射された光のうち、第1の光は、第1の反射面5002Aの面積の全て(100%)で反射され、第2の光は、第2の反射面5002Bの面積の1/2(50%)で反射される。
それら反射された第1、第2の光は、光入出射面4802から取り込まれ、第2の光ファイバ48、第1の光ファイバ16を介して電装部14へ導かれ、光アイソレータ26、光分波器28を介して第1、第2の受光素子30A、30Bで検出される。
その結果、図6(A)、(B)に示すように、第1、第2の受光素子30A、30Bから第1、第2の検出信号SA、SBが出力される。
なお、図5(A)の状態は、図6の時間t1に対応している。
【0030】
図5(B)に示すように、第1、第2の目盛板44、46の回転により、1つの第1の可動スリット56は、第1の反射面5002Aに対して周方向において3/4重なった状態となり、隣の第1の可動スリット56は第2の反射面5002Bに対して周方向において3/4重なった状態となる。
したがって、光入出射面4802から出射された光のうち、第1の光は、第1の反射面5002Aの面積の3/4(75%)で反射され、第2の光は、第2の反射面5002Bの面積の3/4(75%)で反射される。
その結果、図6(A)、(B)に示すように、第1、第2の検出信号SA、SBが出力され、図5(B)の状態は、図6の時間t2に対応している。
【0031】
図5(C)に示すように、さらなる第1、第2の目盛板44、46の回転により、1つの第1の可動スリット56は、第1の反射面5002Aに対して周方向において完全に外れた状態となり、隣の第1の可動スリット56は第2の反射面5002Bに対して周方向において1/2重なった状態となる。
したがって、光入出射面4802から出射された光のうち、第1の光は、第1の反射面5002Aに至らないため反射されず、第2の光は、第2の反射面5002Bの面積の1/2(50%)で反射される。
その結果、図6(A)、(B)に示すように、第1、第2の検出信号SA、SBが出力され、図5(C)の状態は、図6の時間t3に対応している。
【0032】
図5(D)に示すように、さらなる第1、第2の目盛板44、46の回転により、1つの第1の可動スリット56は、第1の反射面5002Aに対して1/2重なった状態となり、隣の第1の可動スリット56は第2の反射面5002Bに対して周方向において完全に外れた状態となる。
したがって、光入出射面4802から出射された光のうち、第1の光は、第1の反射面5002Aの面積の1/2(50%)で反射され、第2の光は、第2の反射面5002Bに至らないため反射されない。
その結果、図6(A)、(B)に示すように、第1、第2の検出信号SA、SBが出力され、図5(D)の状態は、図6の時間t4に対応している。
【0033】
上述のように、第1、第2の反射面5002A、5002Bで反射される第1、第2の光の光量は、第1、第2の反射面5002A、5002Bと第1の可動スリット56とが重なり合った面積に比例して変化し、したがって、第1、第2の受光素子30A、30Bで検出される第1、第2の検出信号SA、SBの大きさは、第1、第2の反射面5002A、5002Bと第1の可動スリット56とが重なり合った面積に比例して変化する。
この結果、回転軸42の回転に伴い、第1、第2の検出信号SA、SBの振幅が正弦波状に変化することになる。
また、第1可動スリット56の周方向において、第1、第2の反射板50A、50Bの間に形成される隙間Gの寸法gを、第1可動スリット56のピッチPの1/4としたことによって、第1、第2の検出信号SA、SBの位相差は90度となる。
検出回路32は、このように増減する第1、第2の検出信号SA、SBに基づいてモータ2の回転量に対応したデジタル信号を生成する。
回転軸42が正転した場合と、逆転した場合とでは、検出回路32によって得られるデジタル信号の一方に対する他方のデジタル信号の位相のずれが90度進み(+90度となり)、あるいは、90度遅れる(−90度となる)ことになり、検出回路32では、このような位相の変化に基づいて回転軸42の正転と反転とを判別し、その判別結果に対応した回転方向判別信号を前記カウンタ回路などに供給する。これにより、前記カウンタ回路によって回転方向に対応した回転量のデータが正しく求められることになる。
【0034】
また、図2に示すように、回転軸42の回転に伴い、第2の可動スリット58が第3の反射板50Cの反射面5002Cと合致すると、光入出射面4802から出射された光は、第1、第2の反射板50A、50Bの隙間Gを通過して第3の反射面5002Cに至り、第3の反射面5002Cによって第3の光のみが反射される。
反射された第3の光は、第1、第2の反射板50A、50Bの隙間を通過して光入出射面4802から取り込まれ、第2の光ファイバ48、第1の光ファイバ16を介して電装部14へ導かれ、光アイソレータ26、光分波器28を介して第3の受光素子30Cで検出される。
その結果、図6(C)に示すように、第3の受光素子30Cから第3の検出信号SCが出力される。
検出回路32は、このような検出信号Cに基づいて、第2の目盛板46、すなわち、回転軸42の回転角度の基準位置(絶対位置)を検出する。
【0035】
本実施の形態によれば、検出部12のケース1202内に、第1、第2の目盛板44、46を設け、ケース1202内外にわたって設けられた第2の光ファイバ48によって第1、第2の可動スリット56、58を介して第1、第2、第3の反射板50A、50B、50Cに互いに波長成分が異なる第1、第2、第3の光を照射させ、第1、第2、第3の反射板50A、50B、50Cで反射された各反射光をケース1202内外にわたって設けられた第2の光ファイバ48によってケース1202の外に導くことができる。
したがって、ケース1202の内部には、第1、第2の目盛板44、46と第2の光ファイバ48のみが設けられているため、ケース1202の内部に電気信号が現れることがないので、ケース1202を防爆環境下に設置し、かつ、第1の光ファイバ16に光を入射する第1乃至第3の発光素子20A、20B、20Cと、第1の光ファイバ16を介して光を受光する第1乃至第3の受光素子30A、30B、30Cとを防爆環境ではない環境下に設置すれば、防爆環境下においてエンコーダ10を使用することが可能となる。
【0036】
また、第1、第2の目盛板44、46と第2の光ファイバ48のみが収容されたケース1202を放射線が発生する環境下に設置し、かつ、第1乃至第3の発光素子20A、20B、20Cと、第1乃至第3の受光素子30A、30B、30Cを放射線が発生しない環境下に設置すれば、放射線が発光ダイオードや受光素子にダメージを与えることがなく、エンコーダ10の耐久性を確保する上で有利となる。
また、第1、第2の目盛板44、46と第2の光ファイバ48のみが収容されたケース1202を高電圧や高磁場が発生する環境下に設置し、かつ、第1乃至第3の発光素子20A、20B、20Cと、第1乃至第3の受光素子30A、30B、30Cを高電圧や高磁場が発生しない環境下に設置すれば、電圧や磁場が第1乃至第3の受光素子30A、30B、30Cから出力される検出信号に影響を与えることがないため、回転量の検出を確実に行うことができ常に安定した検出動作を行う上で有利となる。
また、検出部12と電装部14とが離れた箇所に設置され、第1の光ファイバ16が長くなったとしても、第1の光ファイバ16を伝送される光は、外部からの電磁波ノイズの影響を受けることがなく、検出回路32によって正確な回転量(検出量)を検出する上で有利となる。
すなわち、本実施の形態によれば、温度変化や振動、衝撃などの影響を受けることなく検出信号を得ることができ、したがって、正確な回転量(検出量)を検出する上で有利となる。
【0037】
また、本実施の形態では、第1乃至第3の発光素子20A、20B、20Cから出射される互いに異なる波長成分を有する第1乃至第3の光を光合波器24によって合成して、第1、第2の可動スリット58、58を介して第1、第2、第3の反射板50A、50B、50Cに照射させ、それら反射板50A、50B、50Cで反射された光を光分波器28によって第1、第2、第3の光に分離して第1乃至第3の受光素子30A、30B、30Cに導くようにしたので、検出部12と電装部14との間で光を伝送する第1の光ファイバ16が1本で済むため、構成の簡素化、光ファイバの引き回し作業の簡素化を図る上で有利となる。
【0038】
なお、本実施の形態では、検出部12のケース1202に設けた検出部側光コネクタ52と、電装部14のケース1402に設けた電装部側光コネクタ34とを第1の光ファイバ16で接続した場合について説明した。
しかしながら、検出部12と電装部14との間で第1、第2、第3の光およびそれらの反射光を伝送する構成は任意であり、例えば、検出部12のケース1202から第2の光ファイバ16をケース1202の外方に導出させ、第2の光ファイバ16の端部を電装部側光コネクタ34に接続してもよい。あるいは、ケース1202の外方に導出させた第2の光ファイバ16の中間箇所にコネクタを設け、それらコネクタを用いて検出部12と電装部14とを切り離しできるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10……エンコーダ、1202……ケース、28……光分波器、30A……第1の受光素子、30B……第2の受光素子、30C……第3の受光素子、42……回転軸、44……第1の目盛板、4402……第1の板体、46……第2の目盛板、4602……第2の板体、48……第2の光ファイバ、4802……光入出射面、50A……第1の反射板、50B……第2の反射板、50C……第3の反射板、56……第1可動スリット、58……第2可動スリット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
互いに波長成分が異なる第1、第2、第3の光を前記ケースの内外に導く光ファイバと、
前記ケースに回転可能に設けられた回転軸と、
前記回転軸に連結され前記ケース内に配設された第1の板体に、前記回転軸の周方向に沿って複数の第1可動スリットが一定のピッチPで形成された第1の目盛板と、
前記回転軸の軸方向に間隔をおいて前記回転軸に連結され前記ケース内に配設された第2の板体に、前記回転軸の周方向の1箇所に1つの第2可動スリットが形成された第2の目盛板と、
前記ケース内で、前記第1の目盛板と前記第2の目盛板との間に設けられ、前記第1可動スリットの移動軌跡上に対向して配置され前記第1の光と同じ波長成分の光のみを反射する第1の反射板と、
前記ケース内で、前記第1の目盛板と前記第2の目盛板との間で前記第1の反射板との間に前記回転軸の周方向に隙間Gを空けて設けられ、前記第1可動スリットの移動軌跡上に対向して配置され前記第2の光と同じ波長成分の光のみを反射する第2の反射板と、
前記ケース内で、前記第2の目盛板の前記第1、第2の反射板と反対側に設けられ、前記第2可動スリットの移動軌跡上に対向して配置され前記第3の光と同じ波長成分の光のみを反射する第3の反射板とを備え、
前記光ファイバの先端は、前記第1の目盛板が前記第1、第2反射板に対向する面と反対の面に臨むように配置され、
前記回転軸の周方向において、前記隙間Gは前記ピッチPの1/4である、
ことを特徴とするエンコーダ用検出部。
【請求項2】
前記第2の可動スリットの前記回転軸の半径方向における位置は、前記第1の可動スリットの前記回転軸の半径方向における位置と合致し、かつ、前記第2の可動スリットの前記回転軸の周方向における位置は、前記複数の第1の可動スリットのうちの1つの第1の可動スリットの前記回転軸の周方向における位置と合致している、
ことを特徴とする請求項1記載のエンコーダ用検出部。
【請求項3】
互いに波長成分が異なる第1、第2、第3の光を出射する光源と、
ケースと、
前記光源から出射された第1、第2、第3の光を前記ケースの内外に導く光ファイバと、
前記ケースに回転可能に設けられた回転軸と、
前記回転軸に連結され前記ケース内に配設された第1の板体に、前記回転軸の周方向に沿って複数の第1可動スリットが一定のピッチPで形成された第1の目盛板と、
前記回転軸の軸方向に間隔をおいて前記回転軸に連結され前記ケース内に配設された第2の板体に、前記回転軸の周方向の1箇所に1つの第2可動スリットが形成された第2の目盛板と、
前記ケース内で、前記第1の目盛板と前記第2の目盛板との間に設けられ、前記第1可動スリットの移動軌跡上に対向して配置され前記第1の光と同じ波長成分の光のみを反射する第1の反射板と、
前記ケース内で、前記第1の目盛板と前記第2の目盛板との間で前記第1の反射板との間に前記回転軸の周方向に隙間Gを空けて設けられ、前記第1可動スリットの移動軌跡上に対向して配置され前記第2の光と同じ波長成分の光のみを反射する第2の反射板と、
前記ケース内で、前記第2の目盛板の前記第1、第2の反射板と反対側に設けられ、前記第2可動スリットの移動軌跡上に対向して配置され前記第3の光と同じ波長成分の光のみを反射する第3の反射板と、
前記光ファイバから出射される前記反射光を前記互いに異なる波長成分を有する第1、第2、第3の反射光に分離する光分波器と、
前記光分波器によって分離された前記第1、第2、第3の反射光をそれぞれ受光する第1、第2、第3の受光素子とを備え、
前記光ファイバの先端は、前記第1の目盛板が前記第1、第2反射板に対向する面と反対の面に臨むように配置され、
前記回転軸の周方向において、前記隙間Gは前記ピッチPの1/4である、
ことを特徴とするエンコーダ。
【請求項4】
前記光源は、前記第1、第2、第3の光を発する第1、第2、第3の発光素子と、前記第1、第2、第3の発光素子から発せられた前記第1、第2、第3の光を合成する光合波器とを有する、
ことを特徴とする請求項3記載のエンコーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−281680(P2010−281680A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135163(P2009−135163)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000155724)株式会社雄島試作研究所 (34)
【Fターム(参考)】