説明

エンジンの冷却装置

【課題】エンジン始動時及びエンジンの稼働状況に応じて、オイル噴射ノズルからの冷却用オイルの噴射量及び、冷却用オイルの温度を調節して、エンジンの始動性向上と暖気期間の短縮及び、中小出力時の燃焼効率向上を図り、燃料消費率の向上を図る。
【解決手段】ピストンを冷却するオイルジェット装置において、オイル噴射ノズル8の上流側に配設されたオイルクーラ4と、該オイルクーラ4の上流側に配設されたオイルポンプ5と、オイル噴射ノズル8とオイルクーラ4との間に配設され、オイルクーラ4からの冷却用オイルをオイル噴射ノズル8側とオイルパン側とに分流する比率を調整する第1切替調整弁6と、冷却水温度センサ35、回転数センサ36及び負荷センサ37夫々の検出値によりピストン1の温度を算出するピストン温度算出マップに基づいて第1切替調整弁6を切替える油量調整マップ41を有したコントロールユニットとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのピストン冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にエンジンにおいては、ピストンに大きな熱負荷がかかるので、その熱負荷や、ピストンヘッドの高温によるノッキング等の異常燃焼を防止するために、ピストンの背面側に冷却用オイルを噴射して、ピストンヘッドの溶損や異常燃焼を防止する冷却装置が用いられている。
図9は、一般的なピストン冷却の要部の概要を示したもので、エンジンの回転中は、エンジンの駆動力によって駆動されるオイルポンプ5がエンジンのオイルパン(図示省略)からオイルを吸上げ、オイルクーラ4にてエンジンの冷却水によってオイルを冷却する。
オイルクーラ4で冷却されたオイルはオイル噴射ノズル8からピストン1の背面に噴射され、ピストン1を冷却する装置が用いられている。
【0003】
また、ピストンの冷却装置について、特開2006−29127号公報(特許文献1)が開示されている。
特許文献1によると、ピストンヘッド部1aに形成した内側の第1油路及び外側の第2油路からなる二重構造のクーリングチャンネルと、これらの第1又は、第2油路の内少なくとも何れか一方に対して機関冷却時に暖気オイルを供給する暖気オイル供給手段と、これら第1又は、第2油路の内の少なくとも何れか他方に対して、ピストン高温時に冷却オイルを供給する前記暖気オイル供給手段とで構成した技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−29127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、オイルポンプ5はエンジンのクランクシャフト(図示省略)にギヤトレインによって連結されているので、オイルポンプ5はエンジンのクランクシャフトが回転すると同時に作動している。
従って、エンジン始動時においては、オイルポンプは駆動しており、オイルパンの冷えた状態のオイルはオイルポンプによって、ピストン背面に噴射され、ピストンは冷却され続ける。
従って、ピストン頭部の熱は上昇が遅くなり、エンジンが最良の状態になるまでの時間を多く要し、始動性の悪化と共に、燃料消費量が多くなる不具合を有している。
また、特許文献1によると、機関冷却時に暖気オイルを供給する暖気オイル供給手段を設けており、オイルを温めるための昇温手段を有しており、装置のコストが嵩むと共に、燃料消費の面からも好ましくない。
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、エンジン始動時(エンジン冷状態時)及びエンジンの稼働状況に応じて、オイル噴射ノズルからの冷却用オイルの噴射量及び、冷却用オイルの温度を調節して、エンジン始動時はピストンの昇温を促進させ、中又は小出力時にはピストンの過冷却を防止して、エンジンの始動性向上と暖気期間の短縮及び、中又は小出力時の燃焼効率向上を図り、燃料消費率の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はかかる課題を解決するため、ピストンをオイルで冷却するオイルジェット装置を有するエンジンの冷却装置において、前記エンジンの温度を検知する冷却水温度センサと、前記エンジンの回転数を検知する回転数センサと、前記エンジンの負荷を検知する負荷センサと、前記エンジンのシリンダブロックに固定され、前記ピストンの背面に向け冷却用オイルを噴射するジェットノズルと、前記冷却用オイルの流通経路で、前記ジェットノズルの上流側に配設されたオイルクーラと、該オイルクーラの上流側で前記オイルクーラに冷却用オイルを圧送するオイルポンプと、前記ジェットノズルと前記オイルクーラとの間に配設され、前記オイルクーラからの冷却用オイルを前記ジェットノズル側とオイルパン側とに流す分流比率を調整する第1切替調整弁と、前記温度センサ、前記回転数センサ及び前記負荷センサ夫々の検出値により前記ピストンの温度を算出するピストン温度算出マップに基づいて前記第1切替調整弁を切替える油量調整マップを有したコントロールユニットとを備えたことを特徴とする。
【0008】
このような構成により、ピストン温度を算出して、ピストンの過冷却によるエンジンの始動性及び、燃料消費率の悪化を防止できる。
【0009】
また、本発明において好ましくは、前記冷却用オイルの前記流通経路において、前記オイルクーラと前記オイルポンプとの間に配設され、前記オイルポンプからの冷却用オイルを前記オイルクーラ側と、前記オイルクーラと前記第1切替調整弁との間に連結したバイパス回路側とに流す分流比率を決めて、前記バイパス回路通過後の冷却用オイルの温度調整する油温度調整マップに基づいて前記コントロールユニットにて第2切替調整弁を調整するとよい。
【0010】
このような構成により、オイルクーラに流れる冷却用オイルの量を調整することにより、オイル温度の細かい制御が可能となり、オイルの過剰な上昇を抑えることが可能となり、オイルの劣化を防止できる。
また、バイパス回路を設けたので、冷却用オイルを冷却しすぎて、ピストンを過冷却させることも防止できる。
【0011】
また、本発明において好ましくは、前記エンジンの始動時、又は中小負荷時において、前記ピストン温度算出マップで算出した値と、前記エンジンのシリンダ温度を検知するシリンダ温度センサ又は、及びシリンダヘッドの温度を検知するシリンダヘッド温度センサとによる検出値と比較して、差が閾値以上の場合には前記シリンダ温度センサ又は及び前記シリンダヘッドセンサの検出値を優先させることを特徴とする。
【0012】
このような構成により、エンジン運転時のシリンダ及び又は、シリンダヘッドの温度をリアルタイムに監視できるので、過渡運転時の細かな冷却制御が可能となり、効率用よい運転ができる。
さらに、エンジン始動初期のピストンの過冷却を防止して、初期における燃料消費率の向上が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
エンジン始動時(エンジン冷状態時)には、オイルポンプからのオイルをオイル噴射ノズルの手前で迂回させて、ピストンの冷却を中止しすることにより、ピストンの昇温を促進させることにより、エンジンの始動性向上と暖気期間の短縮による燃料消費率の向上と、コスト低減効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係るエンジン冷却装置の概略構成図を示す。
【図2】本発明の第1実施形態に係る切替バルブの制御フロー図を示す。
【図3】(A)は本発明の油量調整マップの構成図を示し、(B)はマップにおける流量比率を示す。
【図4】本発明の第2実施形態に係るエンジン冷却装置の概略構成図を示す。
【図5】本発明の第2実施形態に係る切替バルブの制御フロー図を示す。
【図6】(A)は本発明の油温調整マップの構成図を示し、(B)はマップにおける流量比率を示す。
【図7】本発明の第3実施形態に係るエンジン冷却装置の概略構成図を示す。
【図8】本発明の第3実施形態に係る切替バルブの制御フロー図を示す。
【図9】従来技術における説明図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。
但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0016】
(第1実施形態)
図1に示すように、エンジン本体内に形成されたシリンダ2内を上下に摺動するピストン1が配設されている。
ピストン1の上部にはシリンダ2を閉塞するようにシリンダヘッド3が取付けられている。シリンダヘッド3には燃焼室34に燃料を噴射する燃料噴射ノズル31と、シリンダに空気を導入する吸入バルブ32及び、燃焼ガスを排気する排気バルブ33が装着されている。
ピストン1の下方に、ピストン1の背面に向けて、オイル噴射ノズル8がエンジン本体(図示省略)に固定されている。
5はオイルポンプで、エンジンのクランクシャフト(図示省略)にギヤトレインを介して連結され、エンジン始動と同時に駆動され、エンジンのオイルパン10から冷却用オイルを吸上げる。
オイルクーラ4は一般的にはエンジン本体の側部に取付けられ、エンジンの冷却水によって冷却用オイルを冷却する。
6は第1切替調整弁で、オイルクーラ4から送出された冷却用オイルをオイル噴射ノズル8側とオイルパン10側に流す量をコントロールユニット30によって制御される。
コントロールユニット30は負荷センサ37(エンジントルク)、回転数センサ36、冷却水温度センサ35夫々の検出値によって、第1切替調整弁6を制御する。
【0017】
11は流通経路でエンジンが始動されると第1送油管111を介してオイルパン10から冷却用オイルをオイルポンプ5によって吸上げる。オイルポンプ5によって吸上げられた冷却用オイルは第2送油管112を介してオイルクーラ4内に圧送され、エンジンの冷却水によって冷却される。
冷却された冷却用オイルはエンジンの稼働状態によって、コントロールユニット30に配備されたオイル噴射ノズル8側とオイルパン10側に流す量の比率を決める油量調整マップ41に基づいて、第3送油管113の中間部に配設された第1切替調整弁6によって分流される。
分流された冷却用オイルの一方は、オイル噴射ノズル8側に流れ、ピストン1の背面側に噴射されピストン1を冷却する。
また、他方は、第4送油管114を介してオイルパン10に戻される。
【0018】
第1切替調整弁6の油量調整は、図2に示す第1切替調整弁6のバルブ制御フロー図によって行われる。
エンジンの稼働状況を冷却水温度センサ35、回転数センサ36、負荷センサ37によって得た検出値に基づいて、ピストン温度算出マップ20によって算出する。ピストン温度算出マップ20はピストン1の温度を実験値によって求め、横軸に回転数(rpm)、縦軸にトルク(T)を基軸にした、ピストン温度の特性曲線となっている。
負荷センサ37は燃料の噴射量又は、アクセルペダルの踏込み量等を計測する。
【0019】
ピストン温度算出マップ20によって算出された温度に基づいて、第1切替調整弁6の流量比率を油量調整マップ41にて決める。
図3(A)に示すように、油量調整マップ41は横軸にエンジン回転数(rpm)、縦軸にピストン温度(ピストン温度算出マップ20によって算出された温度)を基軸として桝目状のエリアに区切られている。
各エリアは第1切替調整弁の弁開度(流量比率)をA0,A1,A2,A3及び、A4の段階に区切ってある。
【0020】
そして、例えば、ピストン温度が低く、エンジンを始動した直後等の場合にはA0が選択される。
すると、図3(B)に示すように、コントロールユニット30はオイル噴射ノズル8側を0(ゼロ)にして、オイルパン10側流量を4(全量)に成るよう第1切替調整弁6のバルブ位置を調整する。
エンジンの暖気が進み、ピストン1の温度及び、エンジン回転数が上昇すると、A1,A2のエリアに進んでいき、エンジンの稼働状況(各センサからの検出値から判断)によって、オイル噴射ノズル8側とオイルパン10側へとの流量調整が実施される。
ピストン温度が高く、エンジン回転数が高い、即ち、高負荷運転状態の場合にはA4が選択され、オイル噴射ノズル8側を4(全量)にして、オイルパン10側流量を0(ゼロ)に成るよう第1切替調整弁6のバルブ位置が調整される。
【0021】
本実施形態によると、エンジンの稼働状況を冷却水温度センサ35、回転数センサ36、負荷センサ37によって得た検出値に基づいて、ピストン温度をピストン温度算出マップ20よって算出し、算出結果に基づいて、ピストン1への冷却用オイルの噴射量を細かく制御して、ピストン1の過冷却によるエンジン始動性及び燃料消費の悪化を最小限に抑制できる効果を有している。
【0022】
(第2実施形態)
図4に示した、第2実施形態に係るエンジン冷却装置の概略構成図に基づいて説明する。
尚、第1実施形態と同じものは、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0023】
流通経路12には、オイルパン10から第1送油管111を介して冷却用オイルをオイルポンプ5によって吸上げる。オイルポンプ5とオイルクーラ4とを連結する第2送油管112の中間部に、第2切替調整弁7が介装されている。
オイルクーラ4の流通経路12下流側には中間部に第1切替調整弁6を有した第3送油管113が配設されている。
さらに、下流側にはオイル噴射ノズル8が配設されている。
第1切替調整弁6はコントロールユニット40に配備されたオイル噴射ノズル8側とオイルパン10側に流す量の比率を決める油量調整マップ41に基づいて制御(分流)される。
制御(分流)された冷却用オイルの一方は、オイル噴射ノズル8側に流れ、ピストン1の背面側に噴射されピストン1を冷却する。
また、他方は、第4送油管114を介してオイルパン10に戻される。
【0024】
第2切替調整弁7には、一端が第3送油管113の第1切替調整弁6とオイルクーラ4との間に連通し、他端が第2切替調整弁7に連通したバイパス回路9が接続されている。
第2切替調整弁7は冷却用オイルをオイルクーラ4と、バイパス回路9とに分流させることにより、オイルクーラ4で冷却された冷却用オイルと、バイパス回路9を通過した冷却用オイルとが第3送油管113内で再度混合した際の温度を調整するために設けられている。
第2切替調整弁7は、エンジンの稼働状況を冷却水温度センサ35、回転数センサ36、負荷センサ37によって得た検出値に基づいて、ピストン温度算出マップ20によって算出し、算出結果に基づいてコントロールユニット40に備えられた油温度調整マップ51によって制御される。
第2切替調整弁7の油量調整は、図5に示す第2切替調整弁7のバルブ制御フロー図によって行われる。
エンジンの稼働状況を冷却水温度センサ35、回転数センサ36、負荷センサ37によって得た検出値に基づいて、ピストン温度算出マップ20によって算出する。
【0025】
ピストン温度算出マップ20によって算出された温度に基づいて、第2切替調整弁7の流量比率を油温度調整マップ51にて決める。
図6(A)に示すように、油温度調整マップ51は横軸にエンジン回転数(rpm)、縦軸にピストン温度(ピストン温度算出マップ20によって算出された温度)を基軸として桝目状のエリアに区切られている。
各エリアは第2切替調整弁の弁開度(分流比率)をB0,B1,B2,B3及び、B4の段階に区切ってある。
【0026】
そして、例えば、ピストン温度が低く、エンジンを始動した直後等の場合にはB0が選択される。
すると、図6(B)に示すように、コントロールユニット40はオイルクーラ側を0(ゼロ)にして、バイパス回路9側流量を4(全量)に成るよう第2切替調整弁7のバルブ位置を調整する。
エンジンの暖気が進み、ピストン1の温度及び、エンジン回転数が上昇すると、B1,B2のエリアに進んでいき、エンジンの稼働状況(各センサからの検出値から判断)によって、4側及び、バイパス回路9側夫々への流量比率が調整される。
ピストン温度が高く、エンジン回転数が高い、即ち、高負荷運転状態の場合にはB4が選択され、オイルクーラ4側を4(全量)にして、バイパス回路9側流量を0(ゼロ)に成るよう第2切替調整弁7のバルブ位置が調整される。
第1切替調整弁6の制御については、第1実施形態と同じなので、説明を省略する。
【0027】
本実施形態によると、オイルクーラ4のバイパス回路9を設け、エンジンの稼働状況を冷却水温度センサ35、回転数センサ36、負荷センサ37によって得た検出値に基づいて、ピストン温度をピストン温度算出マップ20よって算出し、算出されたピストン1の温度によってオイルクーラ4に流す量と、バイパス回路9に流す量を制御することにより、冷却用オイルの温度を細かく制御して、ピストン1の温度管理精度が向上させて、燃料消費悪化を防止できる。
【0028】
(第3実施形態)
第3実施形態に係るエンジン冷却装置の概略構成図を図8に基づいて説明する。
尚、第1及び、第2実施形態と同じものは、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0029】
流通経路12には、オイルパン10から第1送油管111を介して冷却用オイルをオイルポンプ5によって吸上げる。オイルポンプ5とオイルクーラ4とを連結する第2送油管には、第2切替調整弁7が介装されている。
オイルクーラ4の流通経路12の下流側には中間部に第1切替調整弁6を有した第3送油管113が配設され、さらに、下流側にはオイル噴射ノズル8が配設されている。
第2切替調整弁7には、一端が第3送油管113の第1切替調整弁6とオイルクーラ4との間に連通し、他端が第2切替調整弁7に連通したバイパス回路9が接続されている。
コントロールユニット50には、第1切替調整弁6を制御する油量調整マップ41と、第2切替調整弁7を制御する油温度調整マップ51が備えられている。
また、コントロールユニット50には、エンジンの稼働状況を得るため、冷却水温度センサ35、回転数センサ36、負荷センサ47及び、シリンダ温度センサ38(又は及びシリンダヘッド温度センサ39)が検知した検出値が導入される。
【0030】
図8の第1切替調整弁6及び、第2切替調整弁7のバルブ制御フロー図によって、本実施形態の制御を説明する。
エンジンの稼働状況を得るため、冷却水温度センサ35、回転数センサ36及び、負荷センサ47からの検出値に基づいてピストン温度算出マップ20にてピストン1の温度を算出する。
一方、シリンダ2に装着したシリンダ温度センサ38及び、シリンダヘッド(図示省略)に装着されたシリンダヘッド温度センサ39を配設し、夫々のセンサによって温度を直接検出している。
シリンダ温度センサ38の検出値と、シリンダヘッド温度センサ39の検出値とを比較して、高い方の温度を検出値Kとする。
ピストン温度算出マップ20にて算出したピストン温度算出値とを比較して差が閾値以上の場合には上記検出値Kを優先させてピストン1の温度として、油量調整マップ41及び、油温度調整マップ51の制御要素としている。
一方、差が閾値以上の場合にはピストン温度算出値を使用する。
油量調整マップ41及び、油温度調整マップ51の制御方法については、第2実施形態と同じなので、説明は省略する。
尚、本実施形態ではシリンダ温度センサ38の検出値と、シリンダヘッド温度センサ39の検出値を比較して高い方を優先させたが、シリンダ温度センサ38の検出値又は、シリンダヘッド温度センサ39の何れかを一方だけを用いてもよい。
その場合には、コスト低減が可能となる。
【0031】
本実施形態によると、シリンダ温度センサ38及び、シリンダヘッド温度センサ39を直接測定することにより、エンジンの環境(極寒地、高地等)においてはピストン温度算出マップ20で算出した温度と実態が異なることも考えられるので、実測値を油量調整マップ41及び、油温度調整マップ51の制御要素として、エンジン稼働時のシリンダ2及び、シリンダヘッドの温度をリアルタイムで監視できるので、過渡運転時の細かな冷却制御が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
ピストンの冷却装置を備えたエンジンの始動時に、ピストンの過冷却を防止して、エンジンの始動性及び、燃料消費の改善を行うエンジン冷却装置に用いられるとよい。
【符号の説明】
【0033】
1 ピストン
2 シリンダ
3 シリンダヘッド
4 オイルクーラ
5 オイルポンプ
6 第1切替調整弁
7 第2切替調整弁
8 オイル噴射ノズル
9 バイパス回路
11,12 流通経路
20 ピストン温度算出マップ
30、40,50 コントロールユニット
35 冷却水温度センサ
36 回転数センサ
37 負荷センサ
38 シリンダ温度センサ
39 シリンダヘッド温度センサ
41 油量調整マップ
51 油温度調整マップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンをオイルで冷却するオイルジェット装置を有するエンジンの冷却装置において、前記エンジンの温度を検知する冷却水温度センサと、前記エンジンの回転数を検知する回転数センサと、前記エンジンの負荷を検知する負荷センサと、前記エンジンのシリンダブロックに固定され、前記ピストンの背面に向け冷却用オイルを噴射するジェットノズルと、前記冷却用オイルの流通経路で、前記ジェットノズルの上流側に配設されたオイルクーラと、該オイルクーラの上流側で前記オイルクーラに冷却用オイルを圧送するオイルポンプと、前記ジェットノズルと前記オイルクーラとの間に配設され、前記オイルクーラからの冷却用オイルを前記ジェットノズル側とオイルパン側とに流す分流比率を調整する第1切替調整弁と、前記温度センサ、前記回転数センサ及び前記負荷センサ夫々の検出値により前記ピストンの温度を算出するピストン温度算出マップに基づいて前記第1切替調整弁を切替える油量調整マップを有したコントロールユニットとを備えたことを特徴とするエンジンの冷却装置。
【請求項2】
前記冷却用オイルの前記流通経路において、前記オイルクーラと前記オイルポンプとの間に配設され、前記オイルポンプからの冷却用オイルを前記オイルクーラ側と、前記オイルクーラと前記第1切替調整弁との間に連結したバイパス回路側とに流す分流比率を決めて、前記バイパス回路通過後の冷却用オイルの温度調整する油温度調整マップに基づいて前記コントロールユニットにて第2切替調整弁を調整するようにしたことを特徴とする請求項1記載のエンジンの冷却装置。
【請求項3】
前記エンジンの始動時、又は中小負荷時において、前記ピストン温度算出マップで算出した値と、前記エンジンのシリンダ温度を検知するシリンダ温度センサ又は、及びシリンダヘッドの温度を検知するシリンダヘッド温度センサとによる検出値と比較して、差が閾値以上の場合には前記シリンダ温度センサ又は及び前記シリンダヘッドセンサの検出値を優先させることを特徴とする請求項1記載のエンジンの冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−145021(P2012−145021A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3476(P2011−3476)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】