説明

エンジンの回転速度表示装置

【課題】 変速機を備えた車両の車両の変速回転表示装置を提供する。
【解決手段】 マニュアルトランスミッション10と、シフト位置を算出するとともに、算出したシフト位置と車速に基づきエンジン回転速度を算出するコントローラ2とを備えた車両において、コントローラが算出したエンジン回転速度を表示するエンジン回転速度表示手段1aを備え、前記コントローラは、シフト位置の切り換え時に、シフトレバーが現状のシフト位置から中立位置を経由した後に、各シフトゲート1x〜6xに設けられた所定位置(位置b、d)のいずれかに達した場合
に、そのシフトゲートに対応するシフト位置を新たなシフト位置とし、検出した車速に応じて設定される新たなシフト位置での目標エンジン回転速度をエンジン回転速度表示手段に表示する車両の変速回転表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの回転速度表示装置、特に変速時のエンジンの目標回転速度を表示する表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン回転速度検出手段とシフト位置検出手段により、車速およびシフト位置を検出し、これらを基にクラッチ係合時目標エンジン回転速度演算手段においてシフアップあるいはシフトダウンする際のクラッチ係合時目標エンジン回転速度を算出し、この目標エンジン回転速度を表示手段に表示する方法がある(特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平6−10030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来技術では、現在のシフト位置に対して1段下のシフト位置及び1段上のシフト位置での目標エンジン回転速度を表示しているのみであり、例えば、4速段から2速段へ変速パターン、いわゆる段飛び変速パターン時のクラッチ係合時目標エンジン回転速度(以下、目標エンジン回転速度という)の表示を行うことができないという課題がある。
【0004】
したがって、本発明の目的は、新たなシフト位置での目標エンジン回転速度を表示するエンジンの回転速度表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の車両の変速回転表示装置は、シフトレバーの操作とクラッチの操作を運転者が行うことにより変速が行われるマニュアルトランスミッションと、前記シフトレバーの位置を検出する位置検出手段と、車速を検出する車速センサと、前記位置検出手段の出力に基づきシフト位置を算出するとともに、算出したシフト位置と検出した車速に基づきエンジン回転速度を算出するコントローラとを備えた車両において、前記コントローラが算出したエンジン回転速度を表示するエンジン回転速度表示手段を備え、前記マニュアルトランスミッションは、各シフト位置に対応して形成されたシフトゲートを備え、前記シフトレバーは、このシフトゲートに沿って移動してシフト位置を切り換え、前記コントローラは、シフト位置の切り換え時に、前記シフトレバーが現状のシフト位置から中立位置を経由した後に、各シフトゲートに設けられた所定位置のいずれかに達した場合に、そのシフトゲートに対応するシフト位置を新たなシフト位置とし、検出した車速に応じて設定される新たなシフト位置での目標エンジン回転速度を前記エンジン回転速度表示手段に表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、シフトレバーが各シフトゲートの所定位置に達した時に目標エンジン回転速度をエンジン回転速度表示手段に表示するため、運転者は目標エンジン回転速度を参考にエンジン回転速度を調整してクラッチを係合し、スムースなクラッチの係合を達成することができる。また、本発明では、中立位置から各シフト位置に対応するシフトゲートの所定位置に達した場合に新たなシフト位置であると判断するため、段飛び変速パターンにも適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、第1の実施形態の変速機のシフト位置表示装置1の構成図である。本実施形態が対象とする変速機10は、シフトレバー10aを有する、いわゆるマニュアルトランスミッションであって、運転者によりクラッチの係合状態の切り換え操作、及びシフトバー10aによるシフト位置(変速段)の切り換え操作を行って変速を行う変速機である。
【0008】
変速機のシフト位置表示装置1は、図示しないエンジンの回転速度を表示、並びに目標とするエンジン回転速度を表示するタコメータ1aとタコメータ1aの表示を制御するメータコントローラ1bとを備える。さらに、メータコントローラ1bにエンジンの目標エンジン回転速度を演算して電気的信号として送信するコントローラ(以下、ECMという。)2を備える。車速を検出する車速センサ3と、エンジンと変速機間に設けられたクラッチ5aの係合状態をクラッチペダル5bの踏み込み状態から検出するクラッチセンサ5と、シフトレバー10aの位置を検出する位置検出手段6とを設け、これらの出力信号は、ECM2に入力され、ECM2は入力された信号に基づきタコメータ1aにエンジン回転速度と目標エンジン回転速度とを表示する。
【0009】
回転速度表示装置1に備えられるタコメータ1aは、例えばメータパネル内に設置され、現在のエンジン回転速度を表示するとともに、クラッチ5a非係合時にシフト位置を切り換える変速が行われた場合には、次に選択される新たなシフト位置での目標エンジン回転速度を表示する。
【0010】
ここで、目標エンジン回転速度とは、車速に応じて選択された各シフト位置への切り換え時に、切り換え前後での車速が一定となる新たなシフト位置でのエンジンの回転速度であり、低速側のシフト位置を選択するほど、その目標エンジン回転速度は高くなる。
【0011】
図2は、新たなシフト位置を検出するECM2のシフト位置検出方法を説明する図であり、4速段から3速段への変速を一例として示す。図中、1xから6xは、変速時にシフトレバー10aが移動するH型のシフトゲートを示し、このシフトゲート1xから6xは変速機10に設けられ、それぞれシフト位置の1速段から6速段に対応する。
【0012】
ECM2にシフトレバー10aの位置信号を出力する位置検出手段6は、シフトレバー10aの位置を図中、縦横2軸方向で検出し、検出結果をECM2に出力し、ECM2は、入力値からシフトレバー10aの位置、つまりシフト位置を算出する。以下、図2を用いて4速段から3速段への変速時のシフト位置の検出について説明する。
【0013】
図2中、aの位置ではECM2は、位置検出手段6の出力から4速段が現状のシフト位置と判断し、またクラッチセンサ5の出力からクラッチ5aは完全係合状態にあると判断する。この状態から変速のためにクラッチ5aを非係合状態にして、シフトレバー10aをシフトゲート4xに沿って図中上方向に移動すると中立位置、つまりニュートラル状態となる。ここで中立位置とは、それぞれのシンクロメッシュ機構が、各シフト位置に対応した変速ギヤのいずれとも係合していない状態となる位置である。
【0014】
そして、シフトレバー10aがさらに移動してシフトゲート3xのbの位置まで移動するとシンクロメッシュ機構のシンクロリングが3速段の変速ギヤに接触を開始する。ここで、ECM2は、予め各変速ギヤに備えられたシンクロリングが各変速ギヤに接触するシフトゲート1x〜6xの位置をbの位置として記憶しておく。
【0015】
ECM2は、記憶したbの位置にシフトレバー10aが移動した場合に、そのシフトゲートに対応したシフト位置に変速されたと判断する。そしてcの位置までシフトレバー10aが移動し、その後に運転者がクラッチ5aが係合し、3速段への変速が終了する。なお、変速の基準とした位置bは、シンクロリングが変速ギヤに接触するシフトレバー10aの位置としたが、これに限られない。
【0016】
なお、位置bの検出には、中立位置を検出する図示しないニュートラルセンサを用いてもよい。つまり、ニュートラルセンサにより、シンクロリングが各変速ギヤに接触する位置まで移動したことを検出し、変速ギヤがニュートラルから所定の変速ギヤに切り換わることを判断する。
【0017】
また、図2は4速段から3速段への変速を説明したが、段飛び変速を含め、他の変速段間の変速も同様に判断できることはいうまでもない。
【0018】
次に、変速時のシフトレバー10aのシフト位置とタコメータ1aの表示との関係を図2を用いて説明する。
【0019】
aからbまでの位置では、現状のエンジン回転速度を表示する。つまり、位置aでクラッチ5aは非係合状態となり、位置aからbの間は実際のエンジン回転速度であるアイドル回転速度を表示する。位置bでシンクロリングが3速段の変速ギヤに接触を開始し、4速段から3速段へ変速されたと判断した時に、タコメータ1aは、車速と3速段のギヤ比に応じて算出した目標エンジン回転速度と、実際のエンジン回転速度を表示する。さらに位置cで、クラッチ5aが非係合状態の場合には目標エンジン回転速度と実際のエンジン回転速度を表示し、クラッチ5aが係合された後は、タコメータ1aは実際のエンジン回転速度のみを表示する。
【0020】
なお、aからbの位置までは、実際のエンジン回転速度(=アイドル回転速度)
と、4速段でクラッチ5aが係合状態にあると仮定した場合の目標エンジン回転速度を表示するようにしてもよい。
【0021】
図3は、ECM2が実施するタコメータ1aのエンジン回転速度表示制御に関するフローチャートである。この制御は、クラッチ5aが係合された走行中にクラッチ5aが非係合状態となった場合に実施される。なお、クラッチ係合状態では、実際のエンジン回転速度のみをタコメータ1aは表示する。
【0022】
まずステップS1では、車速センサ3から車速を読み込み、また位置検出手段6からシフト位置を読み込む。次にステップS2では、読み込んだ車速とシフト位置からクラッチ5aを係合したと推定した時の目標エンジン回転速度を算出する。
【0023】
ステップS3では、クラッチセンサ5の出力に基づいてクラッチ5aの係合状態が非係合状態かどうかを判定する。非係合状態にあれば、運転者に変速の意思があるとしてステップS4に進み、係合状態にある場合には、変速の意思がないとして現在のエンジン回転速度を表示して制御を終える。
【0024】
ステップS4では、運転者が変速のためにシフトレバー10aを操作したかどうかを判定する。この判定は位置検出手段6の検出値に基づいて実施される。シフトレバー10aを操作して新たなシフト位置(変速段)に変速した場合、つまりシフトレバー10aが図2に示すbの位置に達した場合にはステップS5に進み、車速
と選択された新たなシフト位置からクラッチ5aを係合したと推定した時の目標エンジン回転速度を推定する。
【0025】
そして、続くステップS6では、タコメータ1aが目標エンジン回転速度と現状のエンジン回転速度(=アイドル回転速度)とを表示するようにタコメータ1aを制御する。運転者は、この目標エンジン回転速度を参照して、アクセルペダル踏み込み量を調整し、クラッチ5a係合後のエンジン回転速度が目標エンジン回転速度となるように制御する。運転者は、実際のエンジン回転速度を調整した上で、クラッチペダル5bを徐々に戻し、クラッチ5aを係合する。このようにクラッチ係合時のエンジン回転速度を、タコメータ1aに表示された目標エンジン回転速度を参照することでスムースな変速を行うことができる。
【0026】
またステップS4でシフトレバー10aの操作がされなかった場合には、ステップS7に進み、変速が行われなかったので現状のシフト位置でのエンジン回転速度をタコメータ1aに表示する。または、実際のエンジン回転速度に加えて、クラッチ5a係合状態でのエンジン回転速度を推定して、目標エンジン回転速度として表示してもよい。
【0027】
続くステップS8では、クラッチ5aが係合状態にあるかどうかをクラッチセンサ5の出力から判定し、係合状態にある場合には、シフトレバー10aが図2の位置cに達し、変速が終了したとしてステップS9に進み、タコメータ1aの表示を現状のエンジン回転速度のみに切り換える。一方、クラッチ5aの係合状態が非係合状態の場合には、変速が終了していないとしてステップS4に戻る。
【0028】
このように本実施形態では、変速時に、シフトレバー10aが中立位置から新たなシフト位置のシフトゲートの所定位置(例えば、図2の位置b)に達した時に新たな変速段へ変速がされたと判断する(ステップS4)。この時の所定位置(位置b)は、実際には新たなシフト位置への変速が完了していない状態であってよく、新たなシフト位置を迅速に判断することで、新たなシフト位置での車速に対応する目標エンジン回転速度をタコメータ1aに表示することができる。運転者は、タコメータ1aに表示された目標エンジン回転速度を確認して、エンジン回転速度を調整した上でクラッチ5aの係合操作を行うため、段飛び変速パターン時を含む変速時のショックを抑制することができる。
【0029】
図4は、第2の実施形態としての新たなシフト位置を検出するECM2のシフト位置検出方法とタコメータ1aの表示内容を説明する図である。図4は、H型状のシフトゲートにおいて、4速段から1速段への変速、いわゆる段飛び変速パターンの例を示す。
【0030】
まず、シフトレバー10aは、クラッチ5a非係合状態で4速段(位置a)から、4速段と3速段との間の中立位置に移動し(位置b)、さらに左右方向へ移動して1速段と2速段との間の中立位置(位置c)に移動する。この位置cに移動するまでのタコメータ1aの表示は、4速段でクラッチ5aが係合状態であると推定したときの目標エンジン回転速度と、クラッチ5aが実際のエンジン回転速度とを表示する。
【0031】
次にシフトレバー10aが位置cに移動すると、選択可能なシフト位置は1速段と2速段に限定される。ここで、タコメータ1aは、現状の変速段である4速段の変速比に近い2速段での目標エンジン回転速度と実際のエンジン回転速度を表示する。さらにシンクロリングが選択される1速段の変速ギヤに接触する位置dで、タコメータ1aの表示を1速段での目標エンジン回転速度と実際のエンジン回転速度とに切り換える。位置eで、クラッチ5aが係合されるとタコメータ1aの表示は
実際のエンジン回転速度の表示のみに切り換わる。
【0032】
なお、位置aからbの間を4速段、位置bからdを2速段、位置d以降を1速段での車速に対応したエンジン回転速度がタコメータ1aに表示されるようにしてもよい。また、他の変速段間への変速に適用することができ、例えば、4速段から6速段へ変速する場合には、5速段に対応したタコメータ1aの表示に切り換えた後に6速段に対応した表示とする。
【0033】
このように、シフトレバー10aを左右方向に移動させる必要のある変速の場合には、タコメータ1aの表示は、左右方向への移動後に選択される変速段のうち現状の変速段の変速比の近い方の変速段に対応したエンジン回転速度を表示した後に所望の変速段でのエンジン回転速度を表示するようにした。タコメータ1aの表示を選択される変速段に応じて段階的に切り換えることにより、運転者が変速段に応じた目標エンジン回転速度を段階的に認識することができる。
【0034】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内でさまざまな変更がなしうることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1の実施形態の変速機のシフト位置表示装置の構成図である。
【図2】新たなシフト位置を検出するECMのシフト位置検出方法を説明する図である。
【図3】ECMが実施するタコメータのエンジン回転速度表示制御に関するフローチャートである。
【図4】第2の実施形態の新たなシフト位置を検出するECMのシフト位置検出方法とタコメータの表示内容を説明する図である。
【符号の説明】
【0036】
1 シフト位置表示装置
1a タコメータ
1b メータコントローラ
2 ECM
3 車速センサ
5 クラッチセンサ
5a クラッチ
5b クラッチペダル
6 位置検出手段
10 変速機
10a シフトレバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフトレバーの操作とクラッチの操作を運転者が行うことにより変速が行われるマニュアルトランスミッションと、
前記シフトレバーの位置を検出する位置検出手段と、
車速を検出する車速センサと、
前記位置検出手段の出力に基づきシフト位置を算出するとともに、算出したシフト位置と検出した車速に基づきエンジン回転速度を算出するコントローラとを備えた車両において、
前記コントローラが算出したエンジン回転速度を表示するエンジン回転速度表示手段を備え、
前記マニュアルトランスミッションの前記シフトレバーは、各シフト位置に対応して形成されたシフトゲートに沿って移動してシフト位置を切り換え、
前記コントローラは、シフト位置の切り換え時に、前記シフトレバーが現状のシフト位置から中立位置を経由した後に、各シフトゲートに設けられた所定位置のいずれかに達した場合に、そのシフトゲートに対応するシフト位置を新たなシフト位置とし、検出した車速に応じて設定される新たなシフト位置での目標エンジン回転速度を前記エンジン回転速度表示手段に表示することを特徴とする車両の変速回転表示装置。
【請求項2】
前記マニュアルトランスミッションは、前記シフト位置に対応する各変速ギヤにシンクロメッシュ機構を備え、
前記所定位置は、前記シンクロメッシュ機構のシンクロリングが新たなシフト位置に対応する変速ギヤに接触するシフトゲートの位置であることを特徴とする請求項1に記載の車両の変速回転表示装置。
【請求項3】
前記新たなシフト位置での目標エンジン回転速度は、検出した車速と同一となるエンジン回転速度であることを特徴とする請求項1に記載の車両の変速回転表示装置。
【請求項4】
前記シフトゲートは、H型状に形成され、
前記コントローラは、
シフト位置の変更が前記シフトレバーの左右方向の移動を伴う場合には、前記エンジン回転速度表示手段が前記シフトレバーの左右方向の移動により選択可能となったシフト位置のうち、現状のシフト位置の変速比に近い変速比を備えたシフト位置での目標エンジン回転速度を表示し、その後、前記シフトレバーが選択可能となったシフトゲートのうちいずれかの前記所定位置に達した場合にそのシフトゲートに対応するシフト位置での目標エンジン回転速度を表示することを特徴とする請求項1または3に記載の車両の変速回転表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−30599(P2007−30599A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−214136(P2005−214136)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】