説明

エンジンの洗浄装置

【課題】エンジン20の構成部品を洗浄するエンジンの洗浄装置60において、洗浄対象部品50の損傷を抑制又は防止しつつ、ラジカルを洗浄対象部品50に供給して洗浄対象部品50を洗浄する。
【解決手段】洗浄対象部品50へ向かうガスが流れる上流側通路46のガスに過酸化水素を供給する過酸化水素供給器75と、上流側通路46における洗浄対象部品50の近傍で、過酸化水素供給器75により供給された過酸化水素をOHラジカルに分解する分解器65とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ等を利用してエンジンの構成部品を洗浄するエンジンの洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジン堆積物等を除去することによりエンジンを洗浄する洗浄技術が知られている。この種の洗浄技術として、例えば特許文献1に、プラズマを用いたデポジットの除去装置が記載されている。このデポジットの除去装置は、インジェクターの先端部分に生成されたデポジットをプラズマに暴露させる。デポジットは、プラズマ内の高い酸化力の活性種と反応して分解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−38023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の洗浄技術では、洗浄対象部品がプラズマに暴露される。そのため、洗浄対象部品がプラズマにより損傷するおそれがあった。また、マイクロ波を利用してプラズマを生成するので、マイクロ波が通過できない細孔内を洗浄することができなかった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、エンジンの構成部品を洗浄するエンジンの洗浄装置において、洗浄対象部品の損傷を抑制又は防止しつつ、ラジカルを洗浄対象部品に供給して洗浄対象部品を洗浄することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、エンジンの構成部品を洗浄対象部品とするエンジンの洗浄装置を対象とし、上記洗浄対象部品へ向かうガスが流れる上流側通路のガスに過酸化水素を供給する過酸化水素供給手段と、上記上流側通路における洗浄対象部品の近傍で、上記過酸化水素供給手段により供給された過酸化水素をOHラジカルに分解する分解手段とを備えている。
【0007】
第1の発明では、上流側通路における洗浄対象部品の近傍、つまり洗浄対象部品の直上流で、過酸化水素がOHラジカルに分解される。そのため、生存期間が短いOHラジカルが洗浄対象部品に到達し、洗浄対象部品の堆積物がOHラジカルにより酸化されて分解される。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、上記分解手段が、プラズマにより過酸化水素をOHラジカルに分解する。
【0009】
第2の発明では、プラズマにより過酸化水素がOHラジカルに分解される。
【0010】
第3の発明は、噴孔から燃料を噴霧するインジェクターを洗浄するエンジンの洗浄装置を対象とし、上記噴孔の出口近傍にプラズマが供給されるようにプラズマを生成するプラズマ生成手段と、上記インジェクターにおいて噴孔の内側を噴孔の外側よりも低圧に調節する圧力調節手段とを備え、上記インジェクターを洗浄する際に、上記圧力調節手段により噴孔の内側を噴孔の外側よりも低圧に調節すると共に、上記プラズマ生成手段によりプラズマを生成することにより、プラズマにより生成されたラジカルをインジェクターの噴孔の内側へ供給する。
【0011】
第3の発明では、インジェクターを洗浄する際に、噴孔の内側が噴孔の外側よりも低圧に調節されると共に、噴孔の出口近傍にプラズマが供給される。プラズマにより生成されたラジカルは、噴孔を通じてインジェクターの噴孔の内側へ供給される。その結果、ラジカルにより噴孔の内側の堆積物が分解され、噴孔の内側が洗浄される。
【0012】
第4の発明は、第3の発明において、上記圧力調節手段が、上記インジェクターにおける噴孔の内側の空間を該空間よりも低圧空間に連通させる。
【0013】
第4の発明では、インジェクターを洗浄する際に、インジェクターにおける噴孔の内側の空間が該空間よりも低圧空間に連通することで、噴孔の内側が噴孔の外側よりも低圧に調節される。
【0014】
第5の発明は、第3又は第4の発明において、上記インジェクターを洗浄する際に、上記プラズマ生成手段によりプラズマが供給される領域に過酸化水素を供給する過酸化水素供給手段を備えている。
【0015】
第5の発明では、プラズマが供給される領域に過酸化水素が供給される。従って、過酸化水素がプラズマにより分解されてOHラジカルが生成されるので、大量のOHラジカルが噴孔を通じてインジェクターの噴孔の内側へ供給される。
【発明の効果】
【0016】
第1、第2の各発明では、洗浄対象部品の直上流で過酸化水素を分解し、生存期間が短いOHラジカルが洗浄対象部品に到達するようにしている。そのため、洗浄対象部品をプラズマに暴露する場合に比べて洗浄対象部品の損傷を抑制でき、OHラジカルの供給により洗浄対象部品を洗浄することができる。
【0017】
また、上記第3乃至第5の各発明では、圧力調節手段を設けているので、噴孔の出口近傍で生成されたラジカルをインジェクターの噴孔の内側へ供給して、噴孔の内側を洗浄することができる。従って、インジェクターの噴孔の内側を洗浄可能な洗浄装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、実施形態1に係る内燃機関の縦断面図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る洗浄装置の概略構成図である。
【図3】図3は、実施形態3に係る内燃機関の縦断面図である。
【図4】図4は、実施形態4に係るインジェクターの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
<実施形態1>
【0020】
本実施形態1は、エンジン20の構成部品のうちEGRクーラ50を洗浄対象部品とするエンジンの洗浄装置60(以下、「洗浄装置」という。)である。洗浄装置60は本発明の一例である。以下では、洗浄装置60について説明する前に、まずエンジン20について説明する。
−エンジンの構成−
【0021】
本実施形態1のエンジン20は、ピストン23が往復動するレシプロタイプのエンジンである。エンジン20は、図1に示すように、シリンダブロック21とシリンダヘッド22とピストン23とを備えている。シリンダブロック21には、横断面が円形のシリンダ24が複数形成されている。
【0022】
各シリンダ24内には、ピストン23が往復自在に設けられている。ピストン23は、コネクティングロッドを介して、クランクシャフトに連結されている(図示省略)。クランクシャフトは、シリンダブロック21に回転自在に支持されている。各シリンダ24内においてシリンダ24の軸方向にピストン23が往復運動すると、コネクティングロッドがピストン23の往復運動をクランクシャフトの回転運動に変換する。
【0023】
シリンダヘッド22は、ガスケット18を挟んで、シリンダブロック21上に載置されている。シリンダヘッド22は、シリンダ24及びピストン23と共に、燃焼室10を区画する。
【0024】
シリンダヘッド22には、各シリンダ24に対して、スパークプラグ15が1つずつ設けられている。また、シリンダヘッド22では、各シリンダ24に対して、吸気ポート25及び排気ポート26が形成されている。吸気ポート25には、吸気バルブ27とインジェクター29とが設けられている。一方、排気ポート26には、排気バルブ28が設けられている。
【0025】
本実施形態1では、エンジン20が、排気ガス再循環装置40を備えている。排気ガス再循環装置40は、図2に示すように、EGR配管路45とEGRクーラ50を備えている。なお、図2において、白抜きの矢印は排気ガスの流れを表し、ハッチングされた矢印は冷却水の流れを表す。
【0026】
EGR配管路45は、排気側配管路46とEGRバルブ47と吸気側配管路48を備えている。排気側配管路46は、エンジン20の排気管に接続されている。排気側配管路46は、排気管を流れる排気ガスを取得する配管路である。EGRバルブ47は、排気側配管路46または吸気側配管路48に挿入され、EGR配管路45の排ガス流量を調整する。吸気側配管路48は、エンジン20の吸気管に接続されている。吸気側配管路48は、EGRクーラ50を通過した排気ガスを吸気管に流入させる配管路である。
【0027】
EGRクーラ50は、排気ガス流路51と冷媒流路52を備えている。排気ガス流路51は、複数の配管路により構成され、各配管路の入口が排気側配管路46に繋がり、各配管路の出口が吸気側配管路48に繋がる。排気ガス流路51は、冷媒流路52の内部に設けられている。排気ガス流路51は、EGR配管路45に比べて細い管路であり、内壁に比較的多くのデポジットが付着する。排気ガス流路51は、洗浄対象部品に相当する。
【0028】
一方、冷媒流路52は、冷媒が循環する冷媒回路に接続された配管路である。冷媒流路52を流れる冷媒は、排気ガス流路51を流れる排気ガスと熱交換を行う。EGRクーラ50は、冷媒と排気ガスの熱交換により、吸気管に戻す排気ガスの温度を制御する。
−洗浄装置の構成−
【0029】
洗浄装置60は、プラズマにより過酸化水素を分解して生成されるOHラジカルを用いてEGRクーラ50を洗浄する装置である。洗浄装置60は、例えば排気ガス再循環装置40の動作前に洗浄動作を行う。洗浄装置60は、プラズマ生成器65と過酸化水素供給器75を備えている。
【0030】
プラズマ生成器65は、過酸化水素供給器75から供給された過酸化水素をOHラジカルに分解する分解手段を構成している。プラズマ生成器65は、図3に示すように、パルス発生器66と電磁波用電源67と電磁波発振器68と混合器69と放電器70と制御装置71とを備えている。プラズマ生成器65は、放電器70の放電ギャップにおいて放電を生じさせると共に電磁波発振器68から発振されるマイクロ波を放電ギャップへ放射することにより、非平衡のマイクロ波プラズマを生成する。
【0031】
具体的に、パルス発生器66は、直流電源(図示省略)に接続されている。パルス発生器66は、例えばイグニッションコイルであり、制御装置71から放電信号を受けると、直流電源から印加された電圧を昇圧し、昇圧後の高電圧パルスを混合器69へ出力する。
【0032】
放電器70は、例えばスパークプラグである。放電器70は、パルス発生器66に電気的に接続された放電電極と、その放電電極との間に放電ギャップを形成する接地電極とを備えている。放電器70は、高電圧パルスを受けると、放電ギャップにおいてスパーク放電を生じさせる。放電器70は、放電器70の放電ギャップが排気側配管路46(上流側通路)におけるEGRクーラ50の近傍(つまり、EGRクーラ50の直上流)に位置している。
【0033】
電磁波用電源67は、直流電源に接続されている。電磁波用電源67は、制御装置71から電磁波発振信号(例えばTTL信号)を受けると、所定のデューティー比で所定の設定時間に亘って電磁波発振器68へパルス電流を出力する。
【0034】
電磁波発振器68は、例えばマグネトロンや半導体発振器である。電磁波発振器68は、電磁波用電源67に電気的に接続されている。電磁波発振器68は、パルス電流を受けると、混合器69にマイクロ波パルスを出力する。
【0035】
混合器69は、パルス発生器66から出力された高電圧パルスと、電磁波発振器68から出力されたマイクロ波パルスを混合して放電器70に出力する。
【0036】
プラズマ生成器65では、高電圧パルスとマイクロ波パルスが放電器70の放電電極に供給されると、放電ギャップでスパーク放電が生じ、そのスパーク放電により生じた放電プラズマに対して、放電電極からマイクロ波が照射される。放電電極は、電磁波用のアンテナとして機能する。スパーク放電により生じた放電プラズマは、マイクロ波のエネルギーを吸収して拡大する。このようにして、プラズマ生成器65は、EGRクーラ50の排気ガス流路51の直上流で非平衡のマイクロ波プラズマを生成する。
【0037】
過酸化水素供給器75は、EGRクーラ50へ向かう排気ガスが流れる排気側配管路46の排気ガスに過酸化水素を供給する。過酸化水素供給器75は、過酸化水素タンク76と過酸化水素噴射器77と供給ポンプ(図示省略)を備えている。過酸化水素タンク76には、過酸化水素の水溶液が貯留されている。過酸化水素噴射器77は、過酸化水素タンク76に接続されている。過酸化水素噴射器77は、排気側配管路46において放電器70に対向するように設けられている。過酸化水素噴射器77は、噴口が放電器70の放電ギャップを向いており、供給ポンプ(図示省略)によって過酸化水素タンク76から供給された過酸化水素を放電ギャップへ向けて噴射する。
−洗浄装置の動作−
【0038】
洗浄装置60は、EGRクーラ50の排気ガス流路51の内部を洗浄するための洗浄動作を行う。
【0039】
洗浄動作では、まずEGRバルブ47によりEGR配管路45の排気ガス流量が制御される。次に、過酸化水素供給器75が過酸化水素を放電器70の放電ギャップへ噴射すると同時に、プラズマ生成器65がマイクロ波プラズマを生成する。その結果、放電ギャップへ供給された液滴中の過酸化水素がマイクロ波プラズマにより分解されてOHラジカルが生成される。生成されたOHラジカルは生存時間が短い。しかし、EGRクーラ50の排気ガス流路51の直上流でOHラジカルが生成されるため、OHラジカルが排気ガス流路51に供給される。プラズマ生成器65は、OHラジカルが排気ガス流路51に到達するように配置されている。従って、排気ガス流路51のデポジットがOHラジカルにより分解され、排気ガス流路51が洗浄される。
【0040】
なお、EGRクーラ50内における排気ガス流路51の上流にプラズマ生成器65を配置してもよいし、過酸化水素供給器75もEGRクーラ50内における排気ガス流路51の上流に配置してもよい。
−実施形態1の効果−
【0041】
本実施形態1では、EGRクーラ50の排気ガス流路51の直上流で過酸化水素を分解し、生存期間が短いOHラジカルが排気ガス流路51に到達するようにしている。そのため、排気ガス流路51をプラズマに暴露する場合に比べて排気ガス流路51の損傷を抑制でき、OHラジカルの供給により排気ガス流路51を洗浄することができる。また、EGRクーラ50の目詰まりを予防でき、EGRクーラ50の汚れ付着による温度制御機能の低下を防止できる。
−実施形態1の変形例−
【0042】
実施形態1の変形例では、洗浄装置60が、EGRクーラ50以外のエンジン20の構成部品(例えば、EGRバルブ47)を洗浄対象部品としている。洗浄装置60は、EGR配管路45におけるEGRバルブ47の直上流に設けられている。この変形例によれば、EGRバルブ47に付着した汚れをOHラジカルにより分解洗浄できる。また、EGRバルブ47のつまりを予防でき、EGRバルブ47の動作不良を改善および予防できる。なお、排気管のセンサを洗浄対象部品としてもよい。
<実施形態2>
【0043】
本実施形態2は、インジェクター29の内部を洗浄するエンジンの洗浄装置60である。以下では、実施形態1と異なる点について説明する。
−エンジンの構成−
【0044】
本実施形態2のエンジン20は、図3に示すように、実施形態1とは異なり、インジェクター29が燃料を燃焼室10に直接噴射するタイプのエンジン(例えば、ディーゼルエンジン、直噴のガソリンエンジン)である。
【0045】
燃料噴射装置30は、図3及び図4に示すように、燃焼室10に燃料を噴射するインジェクター29と、インジェクター29へ供給する高圧燃料を蓄える蓄圧器32と、燃料タンク33の燃料を加圧して蓄圧器32に供給する供給ポンプ34とを備えている
【0046】
インジェクター29は、シリンダヘッド22における燃焼室10の天井面の中心に配置されている。インジェクター29の先端には、図4に示すように、燃焼室10に燃料を噴射するための複数の噴孔82が形成されている。インジェクター29では、ニードル弁80を軸方向に移動させることにより噴孔82が開閉される。インジェクター29の内側には、噴孔82の入口が開口する内部空間83が形成されている。
【0047】
蓄圧器32には、燃料供給管85が接続されている。燃料供給管85は、蓄圧器32と内部空間83とを連通している。燃料供給管85には開閉弁86が設けられている。
【0048】
燃料噴射装置30は、ニードル弁80の先端が弁座から離れると開状態になる。そうすると、蓄圧器32の燃料が、燃料供給管85を通じてインジェクター29の内部空間83(燃料経路)へ流入し、その内部空間83に流入した燃料が、各噴孔82を通じて燃焼室10へ噴射される。燃料噴射装置30は、使用期間が長くなるにつれて、噴孔82の内壁や内部空間83の内壁へデポジットが付着してゆく。
−洗浄装置の構成−
【0049】
洗浄装置60は、マイクロ波プラズマにより生成されるOHラジカルを用いてインジェクター29の内部を洗浄する装置である。洗浄装置60は、例えばエンジン20の始動前に洗浄動作を行う。
【0050】
洗浄装置60は、実施形態1と類似の構造のプラズマ生成器65(プラズマ生成手段)を備えるが、実施形態1とは異なり過酸化水素供給器75を備えていない。プラズマ生成器65は、放電器70の構造が実施形態1とは異なる。
【0051】
放電器70は、シリンダヘッド22に形成された取付孔に嵌め込まれている。放電器70の先端は、燃焼室10に繋がる噴孔91が開口するプラズマ生成空間90に露出している。プラズマ生成器65において、高電圧パルス及びマイクロ波パルスが混合器69を介して放電器70へ供給されると、プラズマ生成空間90でマイクロ波プラズマが生成され、プラズマ生成空間90の圧力が上昇する。その結果、プラズマが、噴孔91を通じて燃焼室10へ噴射される。プラズマは、インジェクター29の先端へ向けて噴射される。プラズマ生成器65は、プラズマジェット式に構成され、インジェクター29の噴孔82の出口近傍にプラズマを供給する。
【0052】
また、洗浄装置60は、インジェクター29の内部空間83の内圧を調節する内圧調節部81(圧力調節手段)を備えている。内圧調節部81は、インジェクター29の内部空間83のガスを排出するための排出通路87と、該排出通路87を開閉する排出バルブ88とを備えている。排出通路87における内部空間83とは逆側は、例えばエンジン20の排気管に接続されている。内圧調節部81は、排出バルブ88を開状態に設定することで、インジェクター29における噴孔82の内側の内部空間83を、該内部空間83よりも低圧の排気管に連通させる。内圧調節部81は、内部空間83の圧力を低下させて、インジェクター29において噴孔82の内側を噴孔82の外側よりも低圧に調節する。
−洗浄装置の動作−
【0053】
洗浄装置60は、インジェクター29の内部を洗浄するための洗浄動作を行う。洗浄動作では、内圧調節部81により噴孔82の内側を噴孔82の外側よりも低圧に調節すると共に、プラズマ生成器65によりマイクロ波プラズマを生成することにより、マイクロ波プラズマにより生成されたラジカルをインジェクター29の噴孔82の内側へ供給する。
【0054】
具体的に、洗浄動作では、クランクシャフトを回転させ、ピストン23をシリンダ24内で往復運動させる。そして、制御装置71は、ピストン23の位置が下死点にあることを感知すると、吸気バルブ27と排気バルブ28を閉じると同時に、排出バルブ88を開ける。このとき、インジェクター29では、ニードル弁80が弁座から離れた開状態になっている。また、燃料供給管85の開閉弁86は閉鎖されている。そうすると、ピストン23が上死点に向かう過程で、燃焼室10のガスが、噴孔82を通じてインジェクター29の内部空間83へ押し込まれ、その内部空間83のガスが排出通路87を通じてエンジン20の排気管へ排出される。
【0055】
他方、制御装置71は、ピストンが上死点へ向かう過程でマイクロ波プラズマが生成されるように洗浄装置60を制御する。マイクロ波プラズマは、噴孔91から噴射され、インジェクター29の噴孔82の出口近傍に供給される。その結果、マイクロ波プラズマにより生成されたラジカルが、燃焼室10のガスと共にインジェクター29の内部空間83へ流入し、そのラジカルによりインジェクター29の内部が洗浄される。
−実施形態2の効果−
【0056】
本実施形態2では、内圧調節部81を設けているので、噴孔82の出口近傍で生成されたラジカルをインジェクター29の噴孔82の内側へ供給して、噴孔82の内側を洗浄することができる。従って、インジェクター29の噴孔82の内側を洗浄可能な洗浄装置60を実現することができる。そして、デポジットの蓄積によるインジェクター29の目詰まり又は動作不良を防止できる。
−実施形態2の変形例1−
【0057】
実施形態2の変形例1では、洗浄動作の際に、プラズマ生成器65によりプラズマが供給される領域(つまり、インジェクター29の噴孔82の出口近傍)に過酸化水素を供給する過酸化水素供給器75を備えている。過酸化水素噴射器77は、シリンダヘッド22に取り付けられている。
【0058】
変形例1では、プラズマが供給される領域に過酸化水素が供給されるので、プラズマにより過酸化水素が分解されてOHラジカルが大量に生成される。従って、より多くのOHラジカルをインジェクター29の噴孔82の内側へ供給することができる。
−実施形態2の変形例2−
【0059】
実施形態2の変形例2では、排出通路87に排出ポンプが設けられている。排出ポンプは、洗浄動作の際に、インジェクター29の内部空間83のガスを強制的にエンジン20の排気管に排出する。変形例2では、洗浄動作の際に、排気バルブ28及び吸気バルブ27を閉じた状態で、クランクシャフトを回転させることなく、噴孔82を通じて内部空間83へ燃焼室10のガスを導入することができる。変形例2によれば、クランクシャフト回転による騒音や振動を抑制できる。
【0060】
なお、排出ポンプを使用せずに、プラズマ生成によって発生する熱で燃焼室10の圧力を高めて、燃焼室10とエンジン20の排気管とに圧力差を生じさせて、噴孔82を通じて内部空間83へ燃焼室10のガスを導入するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上説明したように、本発明は、プラズマ等を利用してエンジンの構成部品を洗浄するエンジンの洗浄装置について有用である。
【符号の説明】
【0062】
20 エンジン
50 EGRクーラ(洗浄対象部品)
60 洗浄装置
65 プラズマ生成器(分解手段)
75 過酸化水素供給器(過酸化水素供給手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの構成部品を洗浄対象部品とするエンジンの洗浄装置であって、
上記洗浄対象部品へ向かうガスが流れる上流側通路のガスに過酸化水素を供給する過酸化水素供給手段と、
上記上流側通路における洗浄対象部品の近傍で、上記過酸化水素供給手段により供給された過酸化水素をOHラジカルに分解する分解手段とを備えている
ことを特徴とするエンジンの洗浄装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記分解手段は、プラズマにより過酸化水素をOHラジカルに分解する
ことを特徴とするエンジンの洗浄装置。
【請求項3】
噴孔から燃料を噴霧するインジェクターを洗浄するエンジンの洗浄装置であって、
上記噴孔の出口近傍にプラズマが供給されるようにプラズマを生成するプラズマ生成手段と、
上記インジェクターにおいて噴孔の内側を噴孔の外側よりも低圧に調節する圧力調節手段とを備え、
上記インジェクターを洗浄する際に、上記圧力調節手段により噴孔の内側を噴孔の外側よりも低圧に調節すると共に、上記プラズマ生成手段によりプラズマを生成することにより、プラズマにより生成されたラジカルをインジェクターの噴孔の内側へ供給する
ことを特徴とするエンジンの洗浄装置。
【請求項4】
請求項3において、
上記圧力調節手段は、上記インジェクターにおける噴孔の内側の空間を該空間よりも低圧空間に連通させる
ことを特徴とするエンジンの洗浄装置。
【請求項5】
請求項3又は4において、
上記インジェクターを洗浄する際に、上記プラズマ生成手段によりプラズマが供給される領域に過酸化水素を供給する過酸化水素供給手段を備えている
ことを特徴とするエンジンの洗浄装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−157814(P2012−157814A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18852(P2011−18852)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(504293528)イマジニアリング株式会社 (51)
【Fターム(参考)】