説明

エンジンカバー

【課題】従来より消音効果が向上し、放熱を効率よく行うことが可能なエンジンカバーを提供する。
【解決手段】本発明のエンジンカバー10は、トレイ構造のカバー本体11の内部に発泡樹脂製の吸音材20を固定して備えている。そのカバー本体11には、外気を内側に導入して吸音材20とエンジン90との間に流動させるための空気導入口15及び空気排出口17が形成されている。また、吸音材20には、空気流動方向で前後するように1対の騒音導入口28,29が設けられ、それら1対の騒音導入口28,29の間を連絡するように吸音材20とカバー本体11との間にヘルムホルツ共鳴部屋27が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレイ構造のカバー本体の内部に吸音材を固定して備え、その吸音材を車両のエンジンに対向配置した状態で車両に固定されるエンジンカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にエンジンカバーを車両に取り付けると、エンジンの騒音は低下するが、エンジンの放熱が妨げられるという弊害が生じる。これに対し、カバー本体に空気導入口と空気排出口とを設けて、エンジンカバーとエンジンとの間の空気を流動させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−170241号公報(図4、図5、段落[0018],[0019])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した空気導入口等を備えた従来のエンジンカバーは、吸音材が単純な平板構造になっているので、十分な消音効果を得ることができなかった。これに対し、ヘルムホルツ共鳴部屋を吸音材に設けて消音効果を向上させることが考えられるが、袋小路構造の一般的なヘルムホルツ共鳴部屋を設けると、ヘルムホルツ共鳴部屋内に熱が溜まり、効率よく放熱を行えない事態が生じ得た。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、従来より消音効果が向上し、放熱を効率よく行うことが可能なエンジンカバーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明に係るエンジンカバー(10,10V)は、トレイ構造のカバー本体(11)の内部に発泡樹脂製の吸音材(20)を固定して備え、吸音材(20)を車両のエンジン(90)に対向配置した状態で車両に固定されるエンジンカバー(10,10V)において、カバー本体(11)に形成され、外部の空気をカバー本体(11)内に導入して吸音材(20)とエンジン(90)との間で流動させるための空気導入口(15)と、カバー本体(11)に形成され、カバー本体(11)内の空気を外部に排出するための空気排出口(17)と、吸音材(20)に形成されてエンジン(90)に向かって開口し、空気導入口(15)から空気排出口(17)への空気流動方向で前後するように配置された1対の騒音導入口(28,29)と、1対の騒音導入口(28,29)の間を連絡するように吸音材(20)の内部又は吸音材(20)とカバー本体(11)との間に形成され、1対の騒音導入口(28,29)から導入した騒音をヘルムホルツ共鳴により低下させることが可能なヘルムホルツ共鳴部屋(27)とを備えところに特徴を有する。
【0007】
なお、本発明における「エンジンに対向」は、「エンジンに離間して対向」と「エンジンに密着して対向」との両方の場合を含むものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のエンジンカバー(10,10V)において、吸音材(20)のうちエンジン(90)との対向面(23)には、複数の騒音低減用突部(24,24V)が形成され、空気導入口(15)からカバー本体(11)内に導入された空気が、騒音低減用突部(24,24V)同士の間の隙間(30)を流動するように構成したところに特徴を有する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載のエンジンカバー(10,10V)において、空気導入口(15)と空気排出口(17)とは、車両進行方向(X)で前後するように配置され、複数の騒音低減用突部(24)は、車両進行方向(X)に延びかつ横並びに配置された断面三角形の複数の三角突条(24)であるところに特徴を有する。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3に記載のエンジンカバー(10,10V)において、1対の騒音導入口(28,29)は、複数の三角突条(24)の全部又は一部を、長手方向の中間の2位置で横切るように形成され、吸音材(20)のうちエンジン(90)との対向面における1対の騒音導入口(28,29)の間に、複数の三角突条(24)よりエンジン(90)に接近又は密着したブロック部(26)が設けられたところに特徴を有する。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載のエンジンカバー(10,10V)において、空気導入口(15)は、カバー本体(11)のうちトレイ構造の底壁(14)に配置され、カバー本体(11)には、空気導入口(15)のうち車両進行方向(X)の後側の開口縁から外側斜め前方に張り出して、車両走行時に空気導入口(15)へと空気を案内するガイド片(16)が形成されたところに特徴を有する。
【0012】
請求項6の発明は、請求項5に記載のエンジンカバー(10,10V)において、吸音材(20)には、空気導入口(15)のうち後側の開口縁から立ち上がって後方に向かうに従って徐々にエンジン(90)に接近するように傾斜した内部ガイド斜面(21)が形成されたところに特徴を有する。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1乃至6の何れか1の請求項に記載のエンジンカバー(10,10V)において、空気導入口(15)の開度を変更可能な可動蓋(40)と、エンジン(90)の熱を受けて熱変形し、エンジン(90)の温度が上がるに従って空気導入口(15)の開度を大きくする一方、エンジン(90)の温度が下がるに従って空気導入口(15)の開度を小さくするように可動蓋(40)を駆動する開度変更部(41)とを備えたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0014】
[請求項1の発明]
請求項1のエンジンカバー(10,10V)では、エンジン(90)からの騒音を、吸音材(20)自体の消音効果で低下させることができると共に、騒音導入口(28,29)からヘルムホルツ共鳴部屋(27)内に取り込んで低下させることができる。これにより、単に吸音材(20)を設けただけの従来のものに比べて消音効果が向上する。また、カバー本体(11)の空気導入口(15)からカバー本体(11)内に空気を導入して吸音材(20)とエンジン(90)との間で流動させ、空気排出口(17)から外部に排出するので、吸音材(20)とエンジン(90)との間の熱がスムーズに排除される。しかも、ヘルムホルツ共鳴部屋(27)への騒音導入口(28,29)が空気流動方向で前後するように対をなして設けられているので、ヘルムホルツ共鳴部屋(27)内の空気が一方から他方の騒音導入口(28,29)へと流れて、熱の滞留が防がれる。即ち、本発明のエンジンカバー(10,10V)によれば、従来より消音効果が向上し、放熱も効率よく行うことが可能になる。
【0015】
[請求項2の発明]
請求項2のエンジンカバー(10,10V)では、ヘルムホルツ共鳴部屋(27)に加えて複数の騒音低減用突部(24,24V)も設けたので消音効果がさらに向上する。しかも、空気導入口(15)からカバー本体(11)内に導入された空気が騒音低減用突部(24,24V)同士の間の隙間(30)を流動するので、熱の滞留も防がれる。
【0016】
[請求項3の発明]
請求項3のエンジンカバー(10,10V)では、車両が走行すると空気導入口(15)からカバー本体(11)内に導入された空気が車両進行方向(X)の後方に移動して空気排出口(17)から排出される。また、吸音材(20)のうちエンジン(90)との対向面には騒音低減用突部(24)としての複数の三角突条(24)が車両進行方向(X)に延びているので、それら三角突条(24)同士の間の隙間(30)をスムーズに空気が流動し、効率よく熱を排除することができる。
【0017】
[請求項4の発明]
請求項4のエンジンカバー(10,10V)では、三角突条(24)同士の間の隙間(30)を流動してきた空気がブロック部(26)に衝突して一方の騒音導入口(28,29)に流れ込むので、確実にヘルムホルツ共鳴部屋(27)内の空気を流動させることができ、効率よく熱を排除することができる。
【0018】
[請求項5の発明]
請求項5のエンジンカバー(10,10V)では、空気導入口(15)はトレイ構造の底壁(14)に配置されているので、カバー本体(11)内に取り込んだ空気がエンジン(90)の外面に衝突して放熱を促進させることができる。また、空気導入口(15)の後側の開口縁からは、外側斜め前方に張り出したガイド片(16)が設けられているので、車両走行時に効率よく空気導入口(15)に空気を導入することができる。
【0019】
[請求項6の発明]
請求項6のエンジンカバー(10,10V)では、空気導入口(15)からカバー本体(11)内に導入された空気を、吸音材(20)の内部ガイド斜面(21)の案内によってスムーズにエンジン(90)側に流すことができる。
【0020】
[請求項7の発明]
請求項7のエンジンカバー(10,10V)では、エンジン(90)の温度が高いと空気導入口(15)の開度が自動的に大きくなるので、エンジン(90)の過熱が防止される。一方、エンジン(90)の温度が低いと空気導入口(15)の開度が自動的に小さくなるので、暖機が促進されて燃費が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係るエンジンカバーの斜視図
【図2】エンジンカバーの側断面図
【図3】図2のA−A切断面におけるエンジンカバーの断面図
【図4】図2のB−B切断面におけるエンジンカバーの断面図
【図5】第2実施形態のエンジンカバーの一部を拡大した側断面図
【図6】本発明の変形例に係る騒音低減用突部の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
以下、本発明の一実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態のエンジンカバー10は、トレイ構造のカバー本体11の内部に吸音材20を備えてなり、例えば、図2に示すように車両のエンジン90の下面に固定される。カバー本体11は、合成樹脂(例えば、PP,ナイロン、PBT)の成形品であって平面形状が略四角形になっている。また、カバー本体11の外縁部のうち車両進行方向Xの前端の1辺とその両側の2辺との計3辺には、固定フランジ12が形成されている。固定フランジ12は、上記3辺に沿って延びた帯状板を直交させてなり、全体が門形状になっている。また、固定フランジ12の各辺には、複数のボルト挿通孔12Aが貫通形成されている。そして、これらボルト挿通孔12Aに挿通したボルトにて、エンジンカバー10がエンジン90に固定される。
【0023】
カバー本体11のうち固定フランジ12に囲まれた部分の後端部は、図2に示すように、固定フランジ12よりエンジン90から離れる側に陥没した底上部壁13になっている。また、カバー本体11のうち固定フランジ12と底上部壁13とに四方を囲まれた範囲は、底上部壁13より更に陥没した底壁14になっている。また、これら底上部壁13及び底壁14は、固定フランジ12と平行な平坦な板状になっている。
【0024】
なお、固定フランジ12と底上部壁13との間の段差面は、下方に向かうに従って底上部壁13の中央側に迫り出すように傾斜している。また、底上部壁13と底壁14との間の段差面、及び、固定フランジ12と底壁14との間の段差面は、下方に向かうに従って底壁14の中央側に迫り出すように傾斜している。
【0025】
図1に示すように、底壁14には、その前側の縁部に沿って空気導入口15が形成されている。また、図2に示すように、空気導入口15のうち車両進行方向Xの後側の開口縁からは、外側斜め前方にガイド片16が張り出している。そのガイド片16は、空気導入口15と略同じ大きさになっていて、丁度、底壁14の一部を突片状に切り離して外側に折り曲げることでガイド片16と空気導入口15とが形成された構造になっている。また、底上部壁13とその両側の段差面とに3方を囲まれかつ後方に開放した開口は、本発明に係る空気排出口17になっている。
【0026】
吸音材20は、例えば、合成樹脂(例えば、ウレタン)の発泡成形品であって、空気導入口15における後側の開口縁から底上部壁13の後端寄り位置に亘る範囲に固着されている。吸音材20の前端部には、空気導入口15の後側の開口縁からエンジン90に向かって斜め後上方に傾斜した内部ガイド斜面21が備えられている。また、吸音材20の後端部は、カバー本体11の後端部より若干前側位置に配置されて底上部壁13から垂直に立ち上がった後端垂直面22になっている。
【0027】
図1に示すように、吸音材20のうち内部ガイド斜面21と後端垂直面22との間のエンジン対向面23には、車両進行方向Xに延びた断面三角形の三角突条24が複数横並びに設けられている。そして、これら三角突条24群における車両進行方向Xと直交する断面形状が、図3に示すように上下のピーク部分が丸みを帯びた三角波形状になっている。さらには、三角突条24の頂点は固定フランジ12におけるエンジン90との当接面を含む面に接する高さになっている。また、エンジン対向面23の両側縁部には、三角突条24の頂点と同じ高さのサイド平坦面25,25が形成されている。
【0028】
図1に示すように、吸音材20のエンジン対向面23のうち車両進行方向Xにおける前端寄り位置には、左右方向における一端側に寄った位置にブロック部26が設けられている。ブロック部26は、車両進行方向Xより左右方向が大きな長方形をなし、左右方向で複数の三角突条24を横切っている。また、ブロック部26の上面26Aは、平坦になっていて、図3に示すように三角突条24の頂点及びサイド平坦面25,25と同じ高さに位置している。
【0029】
図4に示すように、吸音材20とカバー本体11との間には、ブロック部26の下方に本発明に係るヘルムホルツ共鳴部屋27が形成される。また、図2に示すように、ヘルムホルツ共鳴部屋27にエンジン90からの騒音を取り込むための1対の騒音導入口28,29が、ブロック部26の前端面26F及び後端面26Bに沿って吸音材20を上下に貫通するスリット状に形成されている。
【0030】
詳細には、ヘルムホルツ共鳴部屋27及び1対の騒音導入口28,29は、図1及び図4に示すように、ブロック部26の左右方向の一端寄り位置から他端寄り位置に亘って形成されている。また、本実施形態のヘルムホルツ共鳴部屋27は、エンジンカバー10の厚さ方向に扁平になった略直方体状になっている。そして、図2に示すように、ヘルムホルツ共鳴部屋27の前側内面27Aと後側内面27Bは、若干傾斜している。具体的には、ヘルムホルツ共鳴部屋27の前側内面27Aは、エンジン対向面23における騒音導入口28の前側開口縁から連続し、ヘルムホルツ共鳴部屋27の下側内面27Cに向かうに従って後方に若干迫り出すように傾斜している。一方、ヘルムホルツ共鳴部屋27の後側内面27Bは、エンジン対向面23における騒音導入口29の後側開口縁から連続し、ヘルムホルツ共鳴部屋27の下側内面27Cに向かうに従って前方に若干迫り出すように傾斜している。また、ブロック部26の前端面26F及び後端面26Bの下端部は、エンジンカバー10の上下方向において前側内面27A及び後側内面27Bの中間に位置している。そして、それらブロック部26の前端面26F及び後端面26Bの下端部で騒音導入口28,29の開口面積が最小になっていて、ヘルムホルツ共鳴部屋27の車両進行方向Xと直交する切断面の開口面積が、騒音導入口28,29の最小の開口面積の例えば略2倍になっている。
【0031】
本実施形態のエンジンカバー10の構成に関する説明は以上である。次に、エンジンカバー10の作用効果について説明する。図2に示すように、エンジンカバー10は、吸音材20をエンジン90に対向させた状態でエンジン90の下面にボルトにて固定される。エンジンカバー10がエンジン90に固定されると、図4に示すように、吸音材20のブロック部26の上面26A、サイド平坦面25及び三角突条24群の頂点がエンジン90に接触した状態になる。そして、吸音材20とエンジン90との間に、三角突条24,24に左右を挟まれた複数のV字溝形状の隙間30が形成されると共に、図2に示すように1対の騒音導入口28,29がエンジン90の下面に対向した状態になる。
【0032】
さて、エンジン90を起動すると、エンジン90の騒音が吸音材20とエンジン90との間の複数のV字溝形状の隙間30で吸収されて低減されると共に、エンジン90の騒音が1対の騒音導入口28,29からヘルムホルツ共鳴部屋27に取り込まれて低減される。これらにより、単に吸音材20自体で騒音を吸音させるだけのものに比べて高い消音効果を得ることができる。
【0033】
ところで、エンジン90の温度が上昇してくると、エンジンカバー10とエンジン90との間の空気の温度も上昇する。しかしながら、車両を走行させたときに、図2の矢印で示すように、外気がガイド片16に案内されて空気導入口15内に流れ込み、内部ガイド斜面21にて案内されてエンジン90の下面に衝突し、複数のV字溝形状の隙間30に流れ込む。そして、一部のV字溝形状の隙間30に流れ込んだ空気が、吸音材20の前端から後端まで真っ直ぐ流れて空気排出口17からエンジンカバー10外に排出される。また、他の一部のV字溝形状の隙間30に流れ込んだ空気が、途中でブロック部26の前端面26Fに衝突して前側の騒音導入口28からヘルムホルツ共鳴部屋27へと流れ込み、後側の騒音導入口29、後側のV字溝形状の隙間30、空気排出口17へと流れてエンジンカバー10外に排出される。このように、吸音材20とエンジン90との間の隙間30の空気のみならず、ヘルムホルツ共鳴部屋27内の空気も流れて熱の滞留が防がれる。
【0034】
即ち、本実施形態のエンジンカバー10によれば、従来より消音効果が向上し、放熱も効率よく行うことが可能になる。また、空気導入口15から導入した空気をエンジン90の外面に衝突させるので放熱が促進される。さらに、空気導入口15からカバー本体11内に導入された空気を内部ガイド斜面21にて斜め後方に案内するので、スムーズにエンジン90と吸音材20との間の隙間30内へと空気が流れ込む。しかも、空気導入口15の後側開口縁から斜め前方外側にガイド片16を張り出したので、効率よく外気を空気導入口15に導入することができる。
【0035】
[第2実施形態]
図5には、本実施形態のエンジンカバー10Vのうち空気導入口15の周辺部分が拡大して示されている。同図に示すように、この実施形態のエンジンカバー10Vでは、前記したガイド片16の代わりに空気導入口15の後側開口縁にヒンジ40Hを介して可動蓋40が回動可能に連結されている。その可動蓋40が半開き状態で、カバー本体11の底壁14の上面と可動蓋40とに跨ってバイメタル41が取り付けられている。このバイメタル41は、エンジン90の熱で加熱されて膨張し、温度が上がるに従って空気導入口15の開度を大きくするように可動蓋40を回動させる。その他の構成に関しては、第1実施形態と同じであるので、重複した説明は省略する。本実施形態によれば、エンジン90の温度が高いと空気導入口15の開度が自動的に大きくなるので、エンジン90の過熱が防止される。一方、エンジン90の温度が低いと空気導入口15の開度が自動的に小さくなるので、暖機が促進されて燃費が向上する。
【0036】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0037】
(1)前記第1実施形態のエンジンカバー10は、エンジン90の下面に取り付けられるものであったが、エンジンの上面又は側面に取り付けられるエンジンカバーに本発明を適用してもよい。
【0038】
(2)前記第1実施形態のエンジンカバー10は、エンジン90にて固定されていたが、車両のエンジンルームにおけるエンジンとの対向面にエンジンカバーを固定してエンジンに対向配置してもよい。
【0039】
(3)前記第2実施形態のエンジンカバー10Vでは、本発明の「開度変更部」としてバイメタル41が備えられていたが、形状記憶合金やサーモスタットであってもよい。
【0040】
(4)前記第1実施形態では、吸音材20に本発明の「騒音低減用突部」として複数の三角突条24が備えられていたが、例えば、図6に示した複数の円錐状突部24Vを本発明の「騒音低減用突部」として備えてもよい。また、エンジンカバーのうちエンジンとの対向面を平坦にして本発明の「騒音低減用突部」を備えない構造にしてもよい。
【0041】
(5)前記第1実施形態では車両進行方向Xで前後するように空気導入口15と空気排出口17とが配置されていたが、車両進行方向Xと直交する方向に空気導入口と空気排出口とを配置してもよい。具体的には、カバー本体の一方と他方の側面に空気導入口と空気排出口とを分けて配置してもよい。
【符号の説明】
【0042】
10,10V エンジンカバー
11 カバー本体
13 底上部壁
14 底壁
15 空気導入口
15H ヒンジ
16 ガイド片
17 空気排出口
20 吸音材
21 内部ガイド斜面
22 後端垂直面
24 三角突条(騒音低減用突部)
24V 円錐状突部(騒音低減用突部)
26 ブロック部
27 ヘルムホルツ共鳴部屋
28,29 騒音導入口
30 隙間
40 可動蓋
41 バイメタル(開度変更部)
90 エンジン
X 車両進行方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレイ構造のカバー本体(11)の内部に発泡樹脂製の吸音材(20)を固定して備え、前記吸音材(20)を車両のエンジン(90)に対向配置した状態で前記車両に固定されるエンジンカバー(10,10V)において、
前記カバー本体(11)に形成され、外部の空気を前記カバー本体(11)内に導入して前記吸音材(20)と前記エンジン(90)との間で流動させるための空気導入口(15)と、
前記カバー本体(11)に形成され、前記カバー本体(11)内の空気を外部に排出するための空気排出口(17)と、
前記吸音材(20)に形成されて前記エンジン(90)に向かって開口し、前記空気導入口(15)から前記空気排出口(17)への空気流動方向で前後するように配置された1対の騒音導入口(28,29)と、
前記1対の騒音導入口(28,29)の間を連絡するように前記吸音材(20)の内部又は前記吸音材(20)と前記カバー本体(11)との間に形成され、前記1対の騒音導入口(28,29)から導入した騒音をヘルムホルツ共鳴により低下させることが可能なヘルムホルツ共鳴部屋(27)とを備えことを特徴とするエンジンカバー(10,10V)。
【請求項2】
前記吸音材(20)のうち前記エンジン(90)との対向面(23)には、複数の騒音低減用突部(24,24V)が形成され、
前記空気導入口(15)から前記カバー本体(11)内に導入された空気が、前記騒音低減用突部(24,24V)同士の間の隙間(30)を流動するように構成したことを特徴とする請求項1に記載のエンジンカバー(10,10V)。
【請求項3】
前記空気導入口(15)と前記空気排出口(17)とは、車両進行方向(X)で前後するように配置され、
前記複数の騒音低減用突部(24)は、前記車両進行方向(X)に延びかつ横並びに配置された断面三角形の複数の三角突条(24)であることを特徴とする請求項2に記載のエンジンカバー(10,10V)。
【請求項4】
前記1対の騒音導入口(28,29)は、前記複数の三角突条(24)の全部又は一部を、長手方向の中間の2位置で横切るように形成され、前記吸音材(20)のうち前記エンジン(90)との対向面における前記1対の騒音導入口(28,29)の間に、前記複数の三角突条(24)より前記エンジン(90)に接近又は密着したブロック部(26)が設けられたことを特徴とする請求項3に記載のエンジンカバー(10,10V)。
【請求項5】
前記空気導入口(15)は、前記カバー本体(11)のうちトレイ構造の底壁(14)に配置され、
前記カバー本体(11)には、前記空気導入口(15)のうち車両進行方向(X)の後側の開口縁から外側斜め前方に張り出して、車両走行時に前記空気導入口(15)へと空気を案内するガイド片(16)が形成されたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載のエンジンカバー(10,10V)。
【請求項6】
前記吸音材(20)には、前記空気導入口(15)のうち後側の開口縁から立ち上がって後方に向かうに従って徐々に前記エンジン(90)に接近するように傾斜した内部ガイド斜面(21)が形成されたことを特徴とする請求項5に記載のエンジンカバー(10,10V)。
【請求項7】
前記空気導入口(15)の開度を変更可能な可動蓋(40)と、
前記エンジン(90)の熱を受けて熱変形し、前記エンジン(90)の温度が上がるに従って前記空気導入口(15)の開度を大きくする一方、前記エンジン(90)の温度が下がるに従って前記空気導入口(15)の開度を小さくするように前記可動蓋(40)を駆動する開度変更部(41)とを備えたことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1の請求項に記載のエンジンカバー(10,10V)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−40912(P2012−40912A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182399(P2010−182399)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000204033)太平洋工業株式会社 (143)
【Fターム(参考)】