説明

エンジンシステム

【課題】第1に、低い発熱量の生成ガスを燃料ガスとした場合でも、支障なく安定運転可能となり、第2に、しかもこれが簡単容易な構成により、コスト面にも優れて実現される、エンジンシステムを提案する。
【解決手段】このエンジンシステム1は、燃料ガスAを使用し、エンジンがロータリーエンジン4よりなり、過給器5を備えている。燃料ガスAは、木質バイオマスB,VOC,廃食油,その他の炭化水素系化合物を、加熱,気化,改質して得られ、少なくとも水素や一酸化炭素を含有した生成ガスよりなる。又、過給器5に付随して、インタークーラー6が付設されており、ロータリーエンジン4の主軸には、隣接付設された発電機7が連結されている。そして例えば、燃料ガスAと空気Cが、混合器8にて混合された後、過給器5にて圧縮されてから、ロータリーエンジン4のハウジング9内へと供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンシステムに関する。すなわち、木質バイオマス,その他の炭化水素系化合物を加熱,気化,改質して得られた生成ガスを、燃料として使用するエンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
《技術的背景》
木質廃材等の木質バイオマス,その他の炭化水素系化合物を加熱,気化して得られた、木質バイオマスガス,その他の生成ガスについては、燃料としての有効利用が、最近注目を集めている。
すなわち、この種の生成ガスをエンジンの燃料ガスとして使用し、もって発電等に活用するシステムの構築が、最近大きなテーマとなっている。
【0003】
《従来技術》
ところで、現在開発,使用されているこの種従来例のエンジンシステムは、木質バイオマスガス,その他の生成ガスの種類毎の特殊仕様や、その用途毎の特殊仕様よりなると共に、自然給気のミクスチャー方式や特殊直噴方式のものが代表的である。
例えば、木質バイオマスガスを燃料ガスとして使用する場合は、各種のエンジントラブルの原因となる含有タールの除去対策が必要であり、その為の特殊専用仕様が付帯設備とされていた。又、タービンやボイラーの燃料ガスとして使用する場合は、それなりの特殊専用仕様の設備が設けられていた。
又、これらと共に、自然給気された空気と生成ガスとを、混合器を経由してディーゼルエンジン等に供給する方式や、特殊制御されるインジェクターを使用する方式、等々が採用されていた。又、軽油,A重油,LPG等が、補助燃料として併用されることも多かった。
【0004】
《先行技術文献情報》
このような従来例としては、例えば、次の特許文献1や特許文献2に示されたものが、挙げられる。
【特許文献1】特開2007−211764号公報
【特許文献2】特開2008−37902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような従来例については、次の問題が指摘されていた。
《第1の問題点》
第1に、この種の生成ガスは発熱量が低い場合が多々あり、エンジンシステムの安定運転に支障が生じる、という問題が指摘されていた。
すなわち、この種の生成ガスは、水素,一酸化炭素,更にはメタン,プロパン等の燃料成分の他、窒素,二酸化炭素,水蒸気等の不燃成分を含有するが、その成分量(組成比)は、生成ガスの種類に応じ様々である。例えば、木質バイオマスガスにあっても、原料となる木質バイオマスの種類により様々である。もって、生成ガスの発熱量も様々であり、発熱量変動も大きい。
そこで、前述したこの種従来例のエンジンシステムにあっては、燃料ガスとして使用される生成ガスの発熱量の低さや低下変動に起因して、エンジン駆動に必要な出力パワーが得られず、エンジンの燃焼,駆動,運転が困難化する事態が、多々発生していた。連続運転不能,エンジンストップの事態が発生していた。
もって、生成ガスの発熱量2,800kcal/Nm(11,721kJ/Nm)が、燃料ガスとしての使用の限界とされており、これを安定的に越える発熱量が必要とされており、それ以下については、燃料ガスとしてカロリー的に使用不能とされていた。
【0006】
《第2の問題点》
第2に、この種従来例のエンジンシステムについては、コスト面にも問題が指摘されていた。
すなわち、従来例のエンジンシステムは、前述したように、燃料ガスとして使用される生成ガスの種類や用途毎の特殊仕様,専用方式よりなっていたので、汎用性に乏しく設備コストやメンテナンスコストが嵩む、という問題が指摘されていた。又、前述したように生成ガスの発熱量の低さ等に起因して、軽油,A重油,LPG,その他の補助燃料が多用されており、この面からもメンテナンスコストが嵩む、という問題が指摘されていた。
【0007】
《本発明について》
本発明のエンジンシステムは、このような実情に鑑み、上記従来例の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、低い発熱量の生成ガスを燃料ガスとした場合でも、支障なく安定運転可能となり、第2に、しかもこれが簡単容易な構成により、コスト面にも優れて実現される、エンジンシステムを提案することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
《各請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段、つまり特許請求の範囲記載の技術的手段は、次のとおりである。まず、請求項1については次のとおり。
請求項1のエンジンシステムは、燃料ガスを使用するエンジンシステムであって、エンジンがロータリーエンジンよりなると共に、過給器を備えていること、を特徴とする。
請求項2については次のとおり。請求項2のエンジンシステムでは、請求項1において、該燃料ガスは、木質バイオマス,VOC,廃食油,その他の炭化水素系化合物を加熱,気化,改質して得られ、少なくとも水素や一酸化炭素を含有した生成ガスよりなること、を特徴とする。
請求項3については次のとおり。請求項3のエンジンシステムでは、請求項2において、該過給器に付随して、インタークーラーが付設されていること、を特徴とする。
請求項4については次のとおり。請求項4のエンジンシステムでは、請求項2において、該ロータリーエンジンの主軸に、隣接付設された発電機が連結されていること、を特徴とする。
【0009】
請求項5については次のとおり。請求項5のエンジンシステムでは、請求項2において、該燃料ガスと空気が、混合器にて混合された後、該過給器にて圧縮されてから、該ロータリーエンジンのハウジング内へと供給されること、を特徴とする。
請求項6については次のとおり。請求項6のエンジンシステムでは、請求項2において、空気が、該過給器にて圧縮された後、混合器にて該燃料ガスと混合されてから、該ロータリーエンジンのハウジング内へと供給されること、を特徴とする。
請求項7については次のとおり。請求項7のエンジンシステムでは、請求項2において、空気が、該過給器にて圧縮された後、該ロータリーエンジンのハウジング内へと供給されると共に、該燃料ガスが、インジェクターから該ロータリーエンジンのハウジング内に噴射されること、を特徴とする。
請求項8については次のとおり。請求項8のエンジンシステムでは、請求項2において、空気が、該ロータリーエンジンのハウジング内へと供給されると共に、該燃料ガスが、該過給器にて圧縮された後、インジェクターから該ロータリーエンジンのハウジング内に噴射されること、を特徴とする。
【0010】
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)このエンジンシステムには、木質バイオマス,その他の炭化水素系化合物を加熱,気化,改質した生成ガスが、燃料ガスとして供給される。
(2)この生成ガスの成分は様々であり、その発熱量も様々である。すなわち、水素や一酸化炭素を主成分とするが、メタン等を含有することもある反面、窒素や二酸化炭素等の不燃成分も含有する。
(3)そこで、このエンジンシステムは、過給器更にはインタークーラーを備えており、燃料ガスや空気を圧縮,過給して充填効率を増加させ、より多量の燃料ガスを燃焼可能とする。
(4)もって、燃料ガスとして供給される生成ガスの発熱量が低い場合でも、エンジン駆動に必要な出力パワーが得られるようになる。
(5)すなわち、生成ガスの発熱量が2,800kcal/Nmを下廻っても、燃料ガスとして使用可能となり、その下限は、1,600kcal/Nm、更には1,400kcal/Nm程度まで可能となる。
(6)なお、このエンジンシステムの第1例では、燃料ガスと空気が、混合器から過給器を介して、ロータリーエンジンへと供給される。第2例では、空気が、過給器を介した後、混合器で燃料ガスと混合されてから、ロータリーエンジンへと供給される。第3例では、空気が、過給器を介してロータリーエンジンへと供給され、燃料ガスが、インジェクターから噴射される。第4例では、空気がロータリーエンジンへと供給されると共に、燃料ガスが、過給器を介しインジェクターから噴射される。
(7)このエンジンシステムは、過給器,インタークーラー,混合器等を、ロータリーエンジンに組み込んだ、簡単容易な構成よりなる。しかも、発熱量の低い生成ガスでも、エンジン駆動に必要な出力パワーが得られるので、補助燃料の必要性が低下する。
(8)さてそこで、本発明のエンジンシステムは、次の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0011】
《第1の効果》
第1に、低い発熱量の生成ガスを燃料ガスとした場合も、支障なく安定運転が可能となる。
すなわち、本発明のエンジンシステムは、木質バイオマス,その他の炭化水素系化合物を加熱,気化,改質した生成ガスを、燃料ガスとすると共に、過給器更にはインタークーラーを備えている。
そこで、より多量の燃料を燃焼させることが可能となり、燃料ガスとして使用される生成ガスの発熱量が低い場合でも、エンジンの燃焼,駆動,運転が確保されるようになる。生成ガスの発熱量の低さや低下変動に起因して、前述したこの種従来例のエンジンシステムのように、連続運転不能,エンジンストップの事態が発生することは、大幅に解消される。
【0012】
《第2の効果》
第2に、しかもこれは、簡単容易な構成により、従来例に比しコスト面にも優れて実現される。
すなわち、本発明のエンジンシステムは、公知公用されている過給器,インタークーラー,混合器等を、汎用品のロータリーエンジンに組み込んだ簡単な構成よりなり、上述した第1の効果が容易に実現される。前述したこの種従来例のエンジンシステムのように、特殊仕様,専用方式を要することもなく、その分、設備コストやメンテナンスコストに優れている。しかも、軽油,A重油,LPG,その他の補助燃料の使用も、この種従来例に比し大幅削減され、この面からもメンテナンスコストに優れている。
このように、この種従来例に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
《図面について》
以下、本発明のエンジンシステムを、図面に示した発明を実施するための最良の形態に基づいて、詳細に説明する。
図1〜図4は、本発明を実施するための最良の形態の説明に供する。そして図1は、第1例の構成フロー図、図2は、第1例の構成説明図、図3は、第3例の構成説明図である。図4は、各例の構成ブロック図であり、(1)図は第1例、(2)図は第2例、(3)図は第3例、(4)図は第4例を示す。
【0014】
《燃料ガスAについて》
まず、図1を参照して、本発明のエンジンシステム1で使用される燃料ガスAについて、説明する。
この燃料ガスAとしては、例えば、木質バイオマス,VOC,廃食油,その他の炭化水素系化合物を、加熱,気化,改質して得られる生成ガスが代表的に使用され、少なくとも水素や一酸化炭素を含有している。
【0015】
これらについて更に詳述する。図示このエンジンシステム1では、木質廃材,木屑チップ,その他の木質バイオマスB,動植物系バイオマス,その他のバイオマス,VOC廃液,粗エタノール溶液,廃食油,灯油,又はその他の炭化水素系化合物から選択された1種類又は複数種類を、→ガス化炉2で加熱,気化したガスについて、→改質反応器3で水蒸気改質した生成ガス(改質ガス)が、→燃料ガスAとして供給,使用される。
勿論、使用される燃料ガスAは、このように加熱,気化,改質されて得られるものに限定されるものではなく、炭鉱や油田からの排出ガスも使用可能である。すなわち、炭鉱の例えば採炭現場付近等から排出される炭層ガスや、油田の例えば採油現場付近から排出される随伴ガスを、燃料ガスAとして直接使用することも可能である。
そして、このように燃料ガスAとして供給,使用される生成ガスは、その成分そして成分量(組成比)が、原料となる炭化水素系化合物の種類に応じ様々である。もって、その発熱量も様々であるが、低い発熱量よりなることも多い。
すなわち、水素(H)と一酸化炭素(CO)を主成分とすることが多いが、更にメタン(CH),エチレン(C),プロパン(C),ブタン(C10)等の高発熱量の低級炭化水素を含有することも多い(なお、上述した炭鉱や油田からの排出ガスの場合は、メタンを主成分とする)。その反面、これらの燃料成分と共に、窒素(N),二酸化炭素(CO),水蒸気(HO)等の不燃成分も、含有している。
【0016】
まず、図1中に示した木質バイオマスBの例について述べる。図1中に示した例では、木質バイオマスBが、熱分解炉よりなるガス化炉2に投入されて、熱分解され、→水素,一酸化炭素,二酸化炭素,窒素,水蒸気等を主成分とし、タール蒸気も含有した熱分解ガスつまり木質バイオマスガスへと、気化される。
それから、この木質バイオマスガスは、→改質反応器3へと供給され、タール蒸気が、高温加熱された熱の作用と充填された触媒の作用とに基づき、水蒸気更には空気中の酸素を酸化剤として反応して、→水素,一酸化炭素,二酸化炭素等に、水蒸気改質される。
もって、このようにタール成分が改質されてカロリーアップされた生成ガス(改質ガス)が、→燃料ガスAとしてエンジンシステム1へと供給される。
次に、VOCの例について述べる。揮発性有機化合物VOCとしては、例えばメチルエチルケトン,イソプロピルアルコール,酢酸エチル,酢酸ブチル,トルエン,キシレン,ベンゼン,エタノール,トリクロロエタン,リモネン等が、代表的である。
そしてVOCは、例えば溶剤等として使用され、VOC廃液として回収されることが多い。そしてVOC廃液は、→予熱器よりなるガス化炉2で気化され、→水蒸気とVOCガスの混合ガスとなって改質反応器3へと供給され、→前述に準じ水素,一酸化炭素,二酸化炭素等に水蒸気改質される。→もって、このような生成ガス(改質ガス)が、燃料ガスAとして使用される。
廃食油の例については、次の通り。使用済の植物油である廃食油は、植物性脂肪(不飽和脂肪)のトリグリセリドを主成分とする。そして廃食油は、→ガス化炉2で気化された後、水蒸気や加熱空気が圧入,混合されてから、→改質反応器3へと供給され、前述に準じ水素,一酸化炭素,二酸化炭素,更にはメタン,エチレン等に水蒸気改質される。→そして、このような生成ガス(改質ガス)が、燃料ガスAとして使用される。
このエンジンシステム1で使用される燃料ガスAは、このようになっている。
【0017】
《エンジンシステム1の概要について》
次に、図1〜図4を参照して、本発明のエンジンシステム1の概要について、説明する。このエンジンシステム1は、燃料ガスAを使用し、エンジンがロータリーエンジン4よりなると共に、過給器5を備えており、空気Cや燃料ガスAが過給器5を介して供給される。
又、多くの場合、この過給器5に付随してインタークーラー6が付設され、過給器5の下流側にインタークーラー6が介装されている。又図示例では、ロータリーエンジン4の主軸に、隣接付設された発電機7が連結されており、その駆動が発電用に出力されるが、勿論、電力以外の各種駆動エネルギー源としても利用可能である。
【0018】
このエンジンシステム1の各例については、次のとおり。まず、図1,図2,図4の(1)図に示した第1例のエンジンシステム1では、燃料ガスAと空気Cが、混合器8にて混合された後、過給器5にて圧縮されインタークーラー6にて冷却されてから、ロータリーエンジン4のハウジング9内へと、供給される。
図4の(2)図に示した第2例のエンジンシステム1では、空気Cが、過給器5にて圧縮されインタークーラー6にて冷却された後、混合器8において、別途加圧供給される燃料ガスAと混合されてから、ロータリーエンジン4のハウジング9内へと、供給される。
図3,図4の(3)図に示した第3例のエンジンシステム1では、空気Cが、過給器5にて圧縮されインタークーラー6にて冷却された後、ロータリーエンジン4のハウジング9内へと供給されると共に、別途加圧供給された燃料ガスAが、インジェクター10からロータリーエンジン4のハウジング9内に噴射される。
図4の(4)図に示した第4例のエンジンシステム1では、空気Cが、ロータリーエンジン4のハウジング9内へと加圧供給されると共に、燃料ガスAが、過給器5にて圧縮されインタークーラー6にて冷却された後、インジェクター10からロータリーエンジン4のハウジング9内に噴射される。この場合、予め加圧された空気Cが、吸気孔12からハウジング9内に供給されるか、又は、そのインジェクター10からハウジング9内に噴射される。
なお図示しないが、第5例として、燃料ガスAが、過給器5にて圧縮されインタークーラー6にて冷却された後、混合器8において、別途加圧供給されると空気Cと混合されてから、ロータリーエンジン4のハウジング9内へと供給する例も、考えられる。
エンジンシステム1の概要は、このようになっている。
【0019】
《ロータリーエンジン4について》
次に、図2,図3を参照して、このエンジンシステム1で使用されるロータリーエンジン4について、説明する。
ロータリーエンジン4は周知のごとく、ハウジング9内の燃焼室で、ローター11が偏心回転運動して動力を発生させ、もってその主軸に回転力を伝達する、間欠燃焼式・容積式の内燃機関である。そして、ローター11が1回転する毎に、ローター11の3面が、吸気工程,圧縮工程,膨張行程,排気工程の4サイクルにて作動し、このような工程が繰り返される。
又、ハウジング9の吸気工程サイドに吸気孔12が、排気工程サイドに排気孔13が、それぞれ1ポートずつ配設されると共に、圧縮,膨張行程サイドに、点火プラグ14が1個又は複数個配設されている。
【0020】
そして、図1,図2,図4の(1)図,(2)図の第1例,第2例,更には第5例のエンジンシステム1は、ミクスチャー方式つまり混合気供給方式よりなる。燃料ガスAと空気Cが、混合器8にて混合されてから、混合ガスの状態でロータリーエンジン4のハウジング9内へと、吸気孔12から供給される。
これに対し、図3,図4の(3)図,(4)図の第3例,第4例のエンジンシステム1は、直噴方式よりなる。燃料ガスAは、インジェクター10からロータリーエンジン4のハウジング9内へと直接噴射され、空気Cは、吸気孔12からハウジング9内に供給される。燃料ガスAと空気Cは、ハウジング9内に別々の場所から導入される。インジェクター10は、吸気孔12がローター11の回転により閉となった直後の圧縮工程当初サイドに、配設されている。
このエンジンシステム1のロータリーエンジン4は、このようになっている。
【0021】
《過給器5やインタークーラー6について》
次に、図1〜図3を参照して、このエンジンシステム1で使用される過給器5とインタークーラー6について、説明する。
まず、過給器5について述べる。過給器5として、図示例ではターボチャージャーが使用されており、排気側の排気孔13からの排気ガスDの圧力を利用して、タービン15を回転させることにより、シャフト16を介し同軸上のコンプレッサー17を回転させ、もって、吸気側の燃料ガスAや空気Cを圧縮,過給する。
例えば、自然給気の場合の空燃比(A/F)を14〜16とすると、過給により結果的に、1.5倍〜2倍から3倍程度の燃料ガスAを、ロータリーエンジン4のハウジング9に供給する。
ところで、使用されるターボチャージャーは、このように公知構造よりなるが、その機能,使用目的が、従来の公知例と本発明とでは相違している。すなわち公知例では、エンジン駆動を当然の前提としつつ、エンジンの更なる馬力,出力アップをその機能,目的として使用されてきたのに対し、本発明では、エンジン駆動に必要な出力パワー自体を得ることを、機能,目的として採用されている。
【0022】
次に、インタークーラー6について述べる。このように、燃料ガスAや空気Cの吸気をターボチャージャー等の過給器5で圧縮すると、その温度が上昇して体積が膨張しょうとするが、体積が膨張してしまうと密度が低下し実質的な量が減ってしまい、過給器5を採用した効果が半減してしまうことになる。
そこで周知のように、これらの回避を機能,使用目的として、過給器5の下流側にインタークーラー6を付設し、もって冷却により温度を例えば60〜65℃程度まで下げてから、ロータリーエンジン4のハウジング9へと供給するようになっている。インタークーラー6としては、ラジエーターに準じた空冷式や、冷却水を循環させる水冷式等、公知構造の放熱器が採用される。
ところで本発明では、燃料ガスA中に水素が主成分として含有されていることに鑑み、インタークーラー6による燃料ガスAの冷却は、ロータリーエンジン4に供給される前の段階において、高温化における水素の燃焼,爆発反応を予防する機能,使用目的も有している。このように本発明では、インタークーラー6の付設により、このエンジンシステム1の安全性が向上する。
過給器5やインタークーラー6は、このようになっている。
【0023】
《作用等》
本発明のエンジンシステム1は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
(1)このエンジンシステム1では、木質バイオマスB,VOC,廃食油,その他の炭化水素系化合物を、上流側のガス化炉2で加熱,気化し、改質反応器3で改質した生成ガス(改質ガス)が、燃料ガスAとして供給される(図1〜図4を参照)。
もって、下流側のエンジンシステム1のロータリーエンジン4が、燃料ガスA中の燃料成分である水素,一酸化炭素,メタン等を、燃料として運転される。
【0024】
(2)ところで、このような生成ガスよりなる燃料ガスAの成分や成分量(組成比)は、原料となる炭化水素系化合物の種類に応じ様々であり、その発熱量も様々で、低い発熱量のものも多い。
すなわち、水素と一酸化炭素を主成分とするが、メタンやプロパン等を含有することもある反面、窒素や二酸化炭素等の不燃成分も含有する。
【0025】
(3)そこで、このエンジンシステム1は、ターボチャージャー等の過給器5更にはインタークーラー6を備えており、吸気側の燃料ガスAや空気Cを圧縮,過給するようになっている(図1〜図4を参照)。
すなわち過給器5にて、燃料ガスAや空気Cについて、ロータリーエンジン4のハウジング9内への充填効率を増加させ、もって無過給の場合に比し、より多量の燃料ガスAを燃焼させることが可能となっている。
【0026】
(4)もって、燃料ガスAとして供給される生成ガスの発熱量が低い場合であっても、エンジン駆動に必要な出力パワーが得られるようになる。
すなわち、生成ガスつまり燃料ガスAの発熱量が低くても、圧縮により一定時間内により多量の燃料ガスAを、一定容積のハウジング9内に供給でき、その分、ロータリーエンジン4の回転数やトルクが向上し、出力アップとなる。もって、エンジンストップの事態発生は、大幅解消される。
【0027】
(5)このように、燃料ガスAとして使用可能な生成ガスの発熱量について、具体的には次のとおり。
すなわち、生成ガスの発熱量が、これまで限界とされていた2,800kcal/Nm(11,721kJ/Nm)を下廻るカロリーであっても、十分に燃料ガスAとして使用可能となる。使用可能なカロリー下限は、1,600kcal/Nm(6,698kJ/Nm)、更には1,400kcal/Nm(5,860kJ/Nm)程度まで、見込まれる。
【0028】
(6)なお、このエンジンシステム1の第1例では、燃料ガスAと空気Cが、混合器8から過給器5やインタークーラー6を介した後、吸気孔12からロータリーエンジン4のハウジング9内へと、供給される(図1,図2,図4の(1)図等を参照)。
第2例では、空気Cが、過給器5やインタークーラー6を介した後、混合器8で燃料ガスAと混合され、もって吸気孔12からハウジング9内へと、供給される(図4の(2)図を参照)。
第3例では、空気Cが、過給器5やインタークーラー6を介し吸気孔12からハウジング9内に、供給されると共に、燃料ガスAが、インジェクター10からハウジング9内に、噴射される(図3,図4の(3)図を参照)。
第4例では、空気Cが、吸気孔12からハウジング9内に、供給されると共に、燃料ガスAが、過給器5やインタークーラー6を介した後、インジェクター10からハウジング9内に、噴射される(図4の(4)図を参照)。
【0029】
(7)そして、このエンジンシステム1は、過給器5,インタークーラー6,混合器8等を、ロータリーエンジン4に組み込んでなり、簡単容易な構成よりなる。
しかも、発熱量の低い生成ガスを燃料ガスAとした場合でも、エンジン駆動に必要な出力パワーが得られるので、軽油,A重油,LPG,その他の補助燃料の必要性が大幅低下する。
本発明の作用等は、このようになっている。
【0030】
《過給器5としてスーパーチャージャーの使用について》
なお、以上説明した図示例では、過給器5としてターボチャージャーが使用されていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、スーパーチャージャーを使用することも可能である。
すなわち、スーパーチャージャー(メカニカルスーパーチャージャー:機械式過給器)は、ターボチャージャー(排気タービン式過給器)が、排気ガスDの流れを利用してタービン15を回転させて過給を行うのに対し、ロータリーエンジン4の回転出力軸(クランクシャフト)の回転駆動力を利用し、これに連結された機械式圧縮ポンプを作動させて過給を行う。
【0031】
過給器5として、スーパーチャージャーとターボチャージャーとを比較すると、次のとおり。
第1に、スーパーチャージャーは、ロータリーエンジン4のトルク性能が向上し、エンジン回転の低速時でも応答性が高い、という利点が知られている。
第2に、これに対しターボチャージャーは、本来捨てられる排気エネルギーを活用するので、エンジン出力を利用するスーパーチャージャーに比し、エンジン効率を低下させることがない、という利点が知られている。従って、燃料ガスAの発熱量が低い場合は、ターボチャージャーの方が対応容易である言える。
第3に、本発明のエンジンシステム1で使用する燃料ガスAは、水素が多量に含有されており、高温下での水素の燃焼,爆発反応回避に、留意する必要がある。
これに対しターボチャージャーでは、高温となる排気ガスD用のタービン15と、コンプレッサー17とが、シャフト16で連結されている。そこで、ターボチャージャーを過給器5として採用すると、排気ガスDの熱がコンプレッサー17側へと伝達され、もって、ロータリーエンジン4に供給される前の段階の燃料ガスA中の水素の燃焼,爆発を、誘発する虞が可能性としては存在する。特に、前述した第1例や第4例については、その虞があるとも言える。
これに対し、スーパーチャージャーを過給器5として採用した場合は、このような危険が一切なく、この面からは、ターボチャージャーより安全性に優れていると言える。
第4に、更にスーパーチャージャーでは、ターボチャージャーのように排気ガスDを利用しないので、排気ガスDの温度低下が回避される。従って、本発明のエンジンシステム1では、スーパーチャージャーを過給器5として採用すると、排気ガスDの熱を、改質反応器3における改質用に利用したり、ガス化炉2での加熱用に利用可能となる、という利点がある。
【実施例】
【0032】
ここで、本発明の実施例について、述べておく。この実施例では、発熱量の異なる2種類の生成ガスを燃料ガスAとし、もってテスト1,テスト2として、本発明のエンジンシステム1のロータリーエンジン4に供給して、それぞれのエンジン特性をテストした。
このテスト1,2には、図1,図2,図4の(1)図に示した第1例のエンジンシステム1を使用した。まず、テスト1,2のテスト条件については、次のとおり。
《テスト1のテスト条件》
・燃料ガスAの発熱量(LHV) :3,000kcal/Nm(12,558kJ /Nm
・空燃比(A/F) :15.4
・ブースト圧力(過給吸気圧力) :0.2kg/cm
・燃料ガスAの流量 :37.5Nm/hr
・燃料ガスAの補正流量 :33.8Nm/hr
・燃料ガスAの供給元圧力 :0.005MPa
・燃料ガスAのエンジン供給圧力 :1.5kPa
《テスト2のテスト条件》
・燃料ガスAの発熱量(LHV) :1,600kcal/Nm(6,698kJ/ Nm
・空燃比(A/F) :15.5
・ブースト圧力(過給吸気圧力) :0.12kg/cm
・燃料ガスAの流量 :44.0Nm/hr
・燃料ガスAの補正流量 :39.7Nm/hr
・燃料ガスAの供給元圧力 :0.024MPa
・燃料ガスAのエンジン供給圧力 :3kPa
【0033】
このようなテスト条件のもとで、テスト1およびテスト2について、ロータリーエンジン4のエンジン特性を計測した所、次の表1のデータが得られた。
このデータによると、燃料ガスAとして使用される生成ガスの発熱量が1,600kcal/Nm(6,698kJ/Nm)と低いテスト2についても、必要なエンジン特性が得られた。すなわち、テスト1の3,000kcal/Nm(12,558kJ/Nm)と、発熱量が従来より十分とされている場合に比し、ほぼ準じ得る程度の出力パワーが得られることが実証された。
このように、低い発熱量の生成ガスよりなる燃料ガスAでも、エンジンの燃焼,駆動,運転が可能となり、必要なエンジン特性つまり回転速度,トルク,そして出力が得られることが裏付けられた。
実施例では、これらが確認された。
【0034】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るエンジンシステムについて、発明を実施するための最良の形態の説明に供し、第1例の構成フロー図である。
【図2】本発明に係るエンジンシステムについて、発明を実施するための最良の形態の説明に供し、第1例の構成説明図である。
【図3】本発明に係るエンジンシステムについて、発明を実施するための最良の形態の説明に供し、第3例の構成説明図である。
【図4】本発明に係るエンジンシステムについて、発明を実施するための最良の形態の説明に供し、各例の構成ブロック図である。そして、(1)図は第1例、(2)図は第2例、(3)図は第3例、(4)図は第4例を、それぞれ示す。
【符号の説明】
【0036】
1 エンジンシステム
2 ガス化炉
3 改質反応器
4 ロータリーエンジン
5 過給器
6 インタークーラー
7 発電機
8 混合器
9 ハウジング
10 インジェクター
11 ローター
12 吸気孔
13 排気孔
14 点火プラグ
15 タービン
16 シャフト
17 コンプレッサー
A 燃料ガス
B 木質バイオマス
C 空気
D 排気ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを使用するエンジンシステムであって、エンジンがロータリーエンジンよりなると共に、過給器を備えていること、を特徴とするエンジンシステム。
【請求項2】
請求項1に記載したエンジンシステムにおいて、該燃料ガスは、木質バイオマス,VOC,廃食油,その他の炭化水素系化合物を加熱,気化,改質して得られ、少なくとも水素や一酸化炭素を含有した生成ガスよりなること、を特徴とするエンジンシステム。
【請求項3】
請求項2に記載したエンジンシステムにおいて、該過給器に付随して、インタークーラーが付設されていること、を特徴とするエンジンシステム。
【請求項4】
請求項2に記載したエンジンシステムにおいて、該ロータリーエンジンの主軸に、隣接付設された発電機が連結されていること、を特徴とするエンジンシステム。
【請求項5】
請求項2に記載したエンジンシステムにおいて、該燃料ガスと空気が、混合器にて混合された後、該過給器にて圧縮されてから、該ロータリーエンジンのハウジング内へと供給されること、を特徴とするエンジンシステム。
【請求項6】
請求項2に記載したエンジンシステムにおいて、空気が、該過給器にて圧縮された後、混合器にて該燃料ガスと混合されてから、該ロータリーエンジンのハウジング内へと供給されること、を特徴とするエンジンシステム。
【請求項7】
請求項2に記載したエンジンシステムにおいて、空気が、該過給器にて圧縮された後、該ロータリーエンジンのハウジング内へと供給されると共に、該燃料ガスが、インジェクターから該ロータリーエンジンのハウジング内に噴射されること、を特徴とするエンジンシステム。
【請求項8】
請求項2に記載したエンジンシステムにおいて、空気が、該ロータリーエンジンのハウジング内へと供給されると共に、該燃料ガスが、該過給器にて圧縮された後、インジェクターから該ロータリーエンジンのハウジング内に噴射されること、を特徴とするエンジンシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−203364(P2010−203364A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50939(P2009−50939)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(500561931)三井造船プラントエンジニアリング株式会社 (41)
【出願人】(593012181)東洋紡エンジニアリング株式会社 (20)
【出願人】(505252698)株式会社アイエムイー総合研究所 (14)
【Fターム(参考)】