説明

エンジン保護制御装置

【課題】エンジンの始動時に於ける急激な高回転をなくし、潤滑油の供給量不足によるエンジンの焼き付き及び破損を防止する。
【解決手段】コントローラ14によりスロットルボリューム12の設定電圧値を演算して目標回転数となるようにエンジン11の運転を制御するエンジン保護制御装置において、前記エンジン11の潤滑油の圧力を計測する潤滑油圧力検出手段17を備え、エンジン始動時には前記コントローラ14の指令信号により前記エンジン11をアイドルモードで始動させ、前記潤滑油圧力検出手段17による計測値が規定値よりも高くなった場合には前記アイドルモードを解除するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジン保護制御装置に関するものであり、特に、始動時におけるエンジンの保護を図ったエンジン保護制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
此種エンジン保護制御装置の従来例を図3に従って説明する。同図において、1は油圧ショベル等の建設機械に搭載されたエンジンであって、油圧ポンプ(図示せず)等を作動させる駆動源である。又、2はエンジン1に供給する燃料量を設定するスロットルボリュームであり、スロットルボリューム2には可変抵抗器3が設けられている。
【0003】
更に、スロットルボリューム2にはコントローラ4が接続され、該コントローラ4は可変抵抗器3の設定電圧値を読み取り、該設定電圧値に基づいてエンジン目標回転数を算出して、スロットルモータ5に指令信号を出力する。
【0004】
そして、スロットルモータ5はコントローラ4からの指令信号によりエンジン回転数が目標回転数となるように、エンジン1の燃料コントロールレバー6を動作制御し、これにより、所定のエンジン出力が得られるように構成されている。
【特許文献1】実開平5−30439号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のエンジン保護制御装置は、スロットルボリュームの可変抵抗器の設定電圧値をコントローラが読み取り、該コントローラからスロットルモータに指令信号を出力することにより、エンジンが目標回転数になるように制御している。
【0006】
しかし、エンジン始動時に、スロットルボリュームの位置によりエンジンがいきなり高回転で始動することがある。例えば、スロットルボリュームが100%開いた位置に設定された状態でエンジンを始動した場合には、エンジン回転数は始動と同時に急激に上昇して運転される。
【0007】
このようにエンジンがいきなり高回転で始動すると、特に長時間エンジンを稼働させていなかった場合、或いは、冬場の低温時にエンジンを始動した場合には、潤滑油の粘度が低下したままであるので、エンジンへの潤滑油の供給量不足(給脂の遅れ)が生ずる。この結果、クランクシャフト、ピストン及びタービン(ターボチャージャー)等の可動部に焼き付きが発生して破損する虞がある。
【0008】
そこで、エンジンの始動時に於ける急激な高回転をなくし、潤滑油の供給量不足によるエンジンの焼き付き及び破損を防止するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、コントローラによりスロットルボリュームの設定電圧値を演算して目標回転数となるようにエンジンの運転を制御するエンジン保護制御装置において、前記エンジンの潤滑油の圧力を計測する潤滑油圧力検出手段を備え、エンジン始動時には前記コントローラの指令信号により前記エンジンをアイドルモードで始動させ、前記潤滑油圧力検出手段による計測値が規定値よりも高くなった場合には前記アイドルモードを解除するように構成したことを
特徴とするエンジン保護制御装置を提供するものである。
【0010】
この構成によれば、潤滑油の圧力が低いエンジン始動時には、エンジンはコントローラの指令信号により回転数の低いアイドルモードで運転される。そして、所定時間経過後に潤滑油の圧力が高くなったとき、即ち、潤滑油圧力検出手段による計測値が規定値よりも高くなった場合には前記アイドルモードが解除されて、通常の運転状態にエンジンが制御される。依って、本発明では、エンジン始動時に急激な高回転域で運転されることが防止される。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明は、始動時にエンジンが高回転域で動作することを抑制できるので、特に長時間エンジンを稼働させていなかった場合、或いは、潤滑油の粘土が低い冬場の低温時にエンジンを始動した場合でも、エンジンへの潤滑油不足によるエンジンの焼き付き及び破損を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、エンジンの始動時に於ける急激な高回転をなくし、潤滑油の供給量不足によるエンジンの焼き付き及び破損を防止するという目的を達成するために、コントローラによりスロットルボリュームの設定電圧値を演算して目標回転数となるようにエンジンの運転を制御するエンジン保護制御装置において、前記エンジンの潤滑油の圧力を計測する潤滑油圧力検出手段を備え、エンジン始動時には前記コントローラの指令信号により前記エンジンをアイドルモードで始動させ、前記潤滑油圧力検出手段による計測値が規定値よりも高くなった場合には前記アイドルモードを解除するように構成したことにより実現した。
【実施例】
【0013】
以下、本発明に係る好適な一実施例を図1及び図2に従って説明する。本実施例は、エンジンの潤滑油不足によるタービン等の破損を防止するため、エンジンオイル圧が規定値以上に上がらないと、エンジン回転数が上がらないように制御することを特徴とする。
即ち、本実施例は、エンジンオイル圧力を監視することにより、エンジンオイルが十分に潤滑するまでは、強制的にエンジン回転数が低回転(アイドル)に設定され、以って、エンジンの焼き付きなどを未然に防止して、エンジンを保護できるように構成したものである。
なお、本実施例は油圧ショベル等の建設機械に搭載されたエンジン保護制御装置に適用したものであるが、本発明は建設機械のエンジン保護制御装置に限定されるべきではなく、建設機械以外のエンジン保護制御装置にも適用可能である。
【0014】
図1はエンジン保護制御装置の構成例を示す。同図において、符号11は油圧ショベル等の建設機械に搭載されたエンジンであって、該エンジン11は油圧ポンプ10等を作動させる駆動源として機能している。該油圧ポンプ10には、各種油圧アクチュエータを制御する複数のコントロールバルブ(図示せず)が接続されている。
【0015】
又、符号12はエンジン11に供給する燃料量を設定するスロットルボリュームであり、スロットルボリューム12には可変抵抗器13が設けられている。更に、スロットルボリューム12にはコントローラ14が接続され、該コントローラ14からの指令信号によって前記エンジン11の運転が制御されている。
【0016】
具体的には、コントローラ14は可変抵抗器13の設定電圧値を読み取り、該読み取った設定電圧値に基づいてエンジン目標回転数を算出して、スロットルモータ(エンジンコントロールアクチュエータ)15に指令信号を出力する。エンジン始動時には、スロット
ルボリューム15は、コントローラ14の指令信号によりエンジン11をアイドルモード(低回転運転モード)で運転させるが、エンジン潤滑油が規定値以上になると、エンジン回転数が目標回転数となるように、エンジン11の燃料コントロールレバー16を動作制御する。
【0017】
更に、本発明のエンジン保護制御装置は、潤滑油圧力検出手段として機能する圧力スイッチ17を備え、該圧力スイッチ17はコントローラ14に接続されている。エンジン運転中は、該圧力スイッチ17によりエンジン潤滑油の圧力が計測されるが、該エンジン潤滑油の圧力が、予め設定した規定値以下である場合には、圧力スイッチ17はオン信号を発生するように設定されている。
【0018】
しかし、エンジン潤滑油の圧力が規定値以上になると、圧力スイッチ17はオフ信号を発生する。該オフ信号はコントローラ14に出力されて、前記アイドルモードが解除されるように構成されている。即ち、エンジン11は最初アイドルモードで始動するが、エンジン潤滑油の圧力が規定値以上になると、前記アイドルモードが解除される。
【0019】
次に、上記エンジン保護制御装置の作用を図2のフローチャートに従って詳述する。先ず、エンジン始動の際は、前記潤滑油の圧力は規定値以下であるため、圧力スイッチ17はオン状態であり、エンジン11はアイドルモードで始動される(ステップS1 )。即ち、コントローラ14の指令信号によりエンジン11は低回転で始動する。
【0020】
そして、エンジン始動後では、コントローラ14は圧力スイッチ17から入力されるエンジンオイル圧の大きさに基づいて、前記アイドルモードを解除するか否かを判断する(ステップS2)。その結果、潤滑油の圧力が規定値以下、即ち、圧力スイッチ17がオンフ信号を発生している場合には、アイドルモードが継続される(ステップS3)。
【0021】
その後、所定時間経過してエンジン11が暖まると、潤滑油の圧力が規定値以上に上昇して、圧力スイッチ17はオフ信号を発生する(スイッチオフ状態)。そして、圧力スイッチ17のオフ信号がコントローラ14に出力されることにより、コントローラ14は前記アイドルモードを解除すべく指令信号を出力する(ステップS4)。
【0022】
従って、コントローラ14は、スロットルボリューム12の可変抵抗器13の設定電圧値を読み取り、該設定電圧値に基づいてエンジン目標回転数を算出して、スロットルモータ15に指令信号を出力する。これにより、エンジン回転数が目標回転数となるように、エンジン11の燃料コントロールレバー16が制御されるため、所定のエンジン出力が得られる。
【0023】
以上の如く本発明によると、エンジン11は、潤滑油の圧力が低い始動時には、コントローラ14の指令信号により回転数の低いアイドルモードで始動される。そして、所定時間経過して潤滑油の圧力が規定値以上に上昇すると、圧力スイッチ17がオン作動してその信号をコントローラ14に出力する。その結果、エンジン11に対する前記アイドルモードが解除されて、スロットルボリューム12の設定電圧値に対応した目標回転数となるように、通常の運転状態にエンジン11が制御される。
【0024】
斯くして、エンジン始動時に急激な高回転域で始動されることが抑制される。従って、特に長時間エンジンを稼働させていなかった場合、或いは、寒冷地などにおいて潤滑油の粘土が低い状態でエンジンを始動する場合でも、潤滑油の供給不足(給脂の遅れ)によるエンジン各部、すなわち、クランクシャフト、ピストン及びタービン(ターボチャージャー)等の可動部に焼き付き及び破損を発生することが確実に防止される。
又、エンジン始動後に潤滑油の圧力が規定値以上に上昇すると、アイドルモードが自動
的に解除されるので、経済的なエンジン制御運転が安定して維持される。
【0025】
上記実施例では、潤滑油圧力検出手段として圧力スイッチを採択したが、圧力スイッチに代えて圧力センサを採択してもよい。
【0026】
尚、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施例を示し、エンジン保護制御装置の構成を説明するブロック図。
【図2】一実施例に係るエンジン保護制御装置の動作を説明するフローチャート。
【図3】従来例に係るエンジン保護制御装置の構成を説明するブロック図。
【符号の説明】
【0028】
11 エンジン
12 スロットルボリューム
13 可変抵抗器
14 コントローラ
15 スロットルモータ
16 燃料コントロールレバー
17 圧力スイッチ(潤滑油圧力検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントローラによりスロットルボリュームの設定電圧値を演算して目標回転数となるようにエンジンの運転を制御するエンジン保護制御装置において、前記エンジンの潤滑油の圧力を計測する潤滑油圧力検出手段を備え、エンジン始動時には前記コントローラの指令信号により前記エンジンをアイドルモードで始動させ、前記潤滑油圧力検出手段による計測値が規定値よりも高くなった場合には前記アイドルモードを解除するように構成したことを特徴とするエンジン保護制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−97698(P2012−97698A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247928(P2010−247928)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【Fターム(参考)】