説明

エンジン出力制限カバー

【課題】電気的なワンタッチ切替えでなく、燃費を向上させるエンジン出力制限カバーを提供する。
【解決手段】油圧ショベル操作室の左右いずれかの側方または前方に突設された操作ボックス4においてその表面にエンジン出力を調整する回転つまみ6、操作レバー3、エンジンキーソケット5が更に突設された操作ボックス4にはめ込むカバーであって、表面上に表記ないし表示された視認部分(表記5a)を被覆しないように当該部分を開口し、かつ、回転つまみ6を最大出力とならないように所定位置まででその回転を規制するストッパー11を設けつつ、それ以外に関してはその移動にかかわらず干渉が発生しないように開口した窓部を有し、窓部以外の前記表面に沿って操作ボックスをその側周部まで連続的に延伸して覆ったことを特徴とするエンジン出力制限カバー10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン出力制限カバーに関し、特に、操作ボックスにはめ込み、物理的に油圧ショベルの駆動出力を制限するエンジン出力制限カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルはディーゼルエンジンを搭載し、車体自体の移動以外はそのエンジン出力を駆動力として用い、適宜、掘削等の作業をおこなう。
【0003】
ここで、近年の環境への配慮や、時として生じる原油高騰へ対応するため、いわゆるエコモードを搭載し、最大出力のたとえば80%までとして作業をおこなわせる油圧ショベルが存在する。これは、油圧ショベル運転席の左右いずれかまたは左右前方に配置されている操作ボックスやタッチパネル表示面においてワンタッチで電気的に切替え可能に構成されている。
【0004】
このエコモードによれば、簡便に燃料消費量を抑えることができる。
【0005】
しかしながら、従来の技術では以下の問題点があった。
エコモードは、簡便に切替え可能であるため、現場の操作者は、迅速かつ円滑な作業を実現すべく、ほとんどこのエコモードは用いられないという実態がある。特に、エコモードで作業を行ったか否かは検証できないため、いくら作業前に指導されても、現場でワンタッチ解除して、最初と最後にエコモードにするというつじつま合わせだけがなされるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-255414
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
すなわち、解決しようとする問題点は、電気的なワンタッチ切替えでなく、燃費を向上させる点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載のエンジン出力制限カバーは、油圧ショベル運転席の左右いずれかの側方または前方に突設された操作ボックスにおいてその表面にエンジン出力を調整する出力調整手段その他の操作手段が更に突設された操作ボックスにはめ込むカバーであって、前記表面上に表記ないし表示された視認部分を被覆しないように当該部分を開口し、かつ、出力調整手段を最大出力とならないように所定位置まででその移動を規制する規制部を設けつつ、他の操作手段に関してはその移動にかかわらず干渉が発生しないように開口した窓部を有し、窓部以外の前記表面に沿って操作ボックスをその側周部まで連続的に延伸して覆ったことを最も主要な特徴とする。
【0009】
すなわち、請求項1に係る発明は、操作ボックスの視認性を確保して、従来の使用感を維持したまま、エンジン出力を規制する。このとき、カバーが操作ボックスを被覆して密着しているため、操作者に対して、すぐに取り外せる別物という認識を想起させにくくなり、操作中にあえて外そうとしなくなる。また、操作ボックスは通常ある程度の大きさがあり、周縁部まで延伸したカバーは嵩張るものとなるため、あえてこれを取り外し、手狭な運転席中に投げ放すということをしにくくなり、この点からも、常時の装着が促進され、結果として燃費の向上を期待できることとなる。なお、規制部は表面から浮かせて構成しても良い。また、移動とは、直線的な往復のみならず回転を含むものである。
【0010】
また、請求項2に記載のエンジン出力制限カバーは、請求項1に記載のエンジン出力制限カバーにおいて、側周部端部の周縁に操作ボックスとの間の接合力を高める保持手段を設けたことを主要な特徴とする。
【0011】
すなわち、請求項2に係る発明は、振動の多い作業現場にて、カバーのはずれにくさを向上する。接合力とは、外れないことも意味するものであり、よって保持手段としては、係合爪であってもよいし、ゴムの滑り止めであってもよい。
【0012】
また、請求項3に記載のエンジン出力制限カバーは、請求項1または2に記載のエンジン出力制限カバーにおいて、出力調整手段がレバーまたは回転つまみとして構成されており、規制部が、レバーの移動量または回転つまみの回転量を所定位置で止める係止体として構成されていることを主要な特徴とする。
【0013】
すなわち、請求項3に係る発明は、カバーの構成を複雑化せず、簡単なモールド成形により製造が可能となる。
【0014】
また、請求項4に記載のエンジン出力制限カバーは、請求項1、2または3に記載のエンジン出力制限カバーにおいて、規制部が、最大出力の70%〜90%までのいずれかの位置で出力調整手段を規制するものであることを主要な特徴とする。
【0015】
すなわち、請求項4に係る発明は、通常の作業を十分に処理できるパワーを確保しつつ燃費向上が可能となる。これは、油圧ショベルは通常フルパワーの7割〜9割程度の出力でほとんどの作業ができるように設計されていることを反映したものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明(請求項1)によれば、操作ボックスの視認性を確保して、従来の使用感を維持したまま、エンジン出力を規制可能となる。また、本発明(請求項2)によれば、カバーの接合力が向上する。また、本発明(請求項3)によれば、カバーの構成を複雑化せず、簡単なモールド成形により製造が可能となる。また、本発明(請求項4)によれば、通常の作業を十分に処理できるパワーを確保しつつ燃費向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】油圧ショベルの操作室の概要斜視図である。
【図2】操作ボックスの構成例を示した図である。
【図3】エンジン出力制限カバーの構成例とその装着の様子を示した図である。
【図4】操作ボックスの他の構成例と、これにあわせたエンジン出力制限カバーを示した図である。
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、油圧ショベルの操作室の概観斜視図である。図2は、操作ボックスの構成例を示した図である。操作室1は、シート2の左右に操作レバー3(右レバー3R、左レバー3L)が設けられ、これによるバケット操作をおこなうようにしている。右レバー3Rは、操作ボックス4の上面に設けられており、操作ボックス4の上面には、この他、エンジンキーソケット5と、回転つまみ6がその表面に凸設されている。
【0019】
エンジンキーソケット5付近には、エンジンの操作を概念化した表記5aが施され、また、同様に回転つまみ6付近には、エンジン出力の程度を概念化した表記6aが施されている。エンジンキーをエンジンキーソケット5に差し込み、右回転することにより、エンジンが始動し、エンジンを切る場合は、エンジンキーを左回転させる。また、回転つまみ6を右回転するほどエンジン回転数は増大する。回転つまみ6を右に振り切ると、エンジンは最大出力となり、バケット操作等のパワーを最大限に発揮させることが可能となる。
【0020】
図3(a)は、本発明のエンジン出力制限カバーを示した斜視図であり、図3(b)は、その装着の様子を示した図である。カバー10は、操作ボックス4の上面から覆うようにはめ込むものであって、操作ボックス4の表面形状にほぼ追従した形状を有する。ただし、右レバー3R、エンジンキーソケット5および回転つまみ6部分に関しては、表記5aや表記6a部分も含めて開口しており、これらの操作は、回転つまみ6部分以外は、カバー10が装着されていないときと同様におこなうことができる。
【0021】
回転つまみ6に関しては、つまみ芯6bの回転量が8割の位置までで止まるストッパー11がカバー10に設けられている。すなわち、回転つまみ6以外の操作部は、カバー10の有無にかかわらず、何ら制約されず、かつ、回転つまみ6に関しては、8割までの回転は従来通りであり、8割以上は回転しないようになっている。
【0022】
カバー10の側周部は、突設されている操作ボックス4にある程度の深さまではまり込むようになっており、かつ、末端にはラバー12が設けられている。ラバー12があることにより、振動の多い操作室1内であってもカバー10は操作ボックス4から外れないようになっている。
【0023】
図4は、本発明のエンジン出力カバーの他の構成例および操作ボックスの例を示した図である。図示したように、操作ボックス4’は、操作レバー3とは別になっており、他のつまみが設けられている。カバー10’は、この操作ボックス4’に被覆するように構成されており、カバー10と同様に、ストッパー11’によりその回転量が規制される。ただし、この規制量は最大回転量の9割の場所としている。
【0024】
このカバー10’によっても、エンジン出力が最大とならないように、物理的なエコモードが達成されることとなる。
【0025】
なお、カバー10またはカバー10’は、本体部分は、ポリプロピレン製であって適宜モールド製法により簡便に製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、エンジン出力をレバーで調整するタイプのものにあっては、この動きを規制するようにストッパーを設けることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 操作室
2 シート
3 操作レバー
3L 左レバー
3R 右レバー
4 操作ボックス
5 エンジンキーソケット
5a 表記
6 回転つまみ
6a 表記
6b つまみ芯
10 カバー
11 ストッパー
12 ラバー



【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ショベル運転席の左右いずれかの側方または前方に突設された操作ボックスにおいてその表面にエンジン出力を調整する出力調整手段その他の操作手段が更に突設された操作ボックスにはめ込むカバーであって、
前記表面上に表記ないし表示された視認部分を被覆しないように当該部分を開口し、かつ、出力調整手段を最大出力とならないように所定位置まででその移動を規制する規制部を設けつつ、他の操作手段に関してはその移動にかかわらず干渉が発生しないように開口した窓部を有し、
窓部以外の前記表面に沿って、操作ボックスをその側周部まで連続的に延伸して覆ったことを特徴とするエンジン出力制限カバー。
【請求項2】
側周部端部の周縁に操作ボックスとの間の接合力を高める保持手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載のエンジン出力制限カバー。
【請求項3】
出力調整手段がレバーまたは回転つまみとして構成されており、
規制部が、レバーの移動量または回転つまみの回転量を所定位置で止める係止体として構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のエンジン出力制限カバー。
【請求項4】
規制部が、最大出力の70%〜90%までのいずれかの位置で出力調整手段を規制するものであることを特徴とする請求項1、2または3に記載のエンジン出力制限カバー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−9044(P2012−9044A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168365(P2011−168365)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3150125号
【原出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(509045368)有限会社土江重機 (1)
【Fターム(参考)】