説明

エンジン設備

【課題】動力を供給する主エンジン(2)と、電力を供給する補助エンジン(3)とを備え、少なくとも主エンジン(2)に排気駆動式過給機(6)が付設され、該過給機(6)が、主エンジン(2)の排気ガス流(8)に含まれるエネルギをタービン(7)において排気駆動式過給機(6)の圧縮機(9)を駆動するための機械エネルギに変換して、圧縮機(9)に供給された生空気質量流を圧縮し、増大された過給圧力で主エンジン(2)に供給するエンジン設備の熱効率を改善する。
【解決手段】主エンジン(2)と補助エンジン(3)を、主エンジン(2)に付設した排気駆動式過給機(6)によって圧縮した生空気質量流の一部を必要な場合に補助エンジン(3)に供給するように連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の前文に記載のエンジン設備、特に船舶用エンジン設備に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン設備として構成された船舶用エンジン設備は、一般に、特に2サイクルディーゼルエンジンとして形成された少なくとも1台の主エンジンと、特に4サイクルディーゼルエンジンとして形成された少なくとも1台の補助エンジンとを利用し、主エンジンは船舶の推進用動力、そして補助エンジンは船舶の電気系統用電力を供給すべく使われる。従来、かかるエンジン設備の少なくとも主エンジンに排気駆動式過給機が付設され、該過給機は、主エンジンの排気ガス流に含まれるエネルギをタービン内で排気駆動式過給機の圧縮機を駆動するための機械エネルギに変換し、圧縮機に供給された生空気質量流を圧縮し、大きな過給圧力で主エンジンに供給する。
【0003】
過給技術の開発進展により、益々高い過給効率が得られている。周辺条件が変わらないなら、エンジンを通る空気質量流量と排気ガス質量流量は、排気駆動式過給機の効率に比例して増大する。2サイクルディーゼルエンジンとして形成した主エンジンの場合、特に主エンジンの追加的な空気質量流や排気ガス質量流では、エンジン設備の熱効率の改善は達成されない。従来、余剰の排気ガス質量流は、所謂タービン複合エンジン設備において機械或いは電気エネルギを供給するタービンを駆動するために利用されている。
【0004】
かかるタービン複合エンジン設備により、エンジン設備全体の熱効率は向上するが、この種タービン複合エンジン設備は、高い建設費、高い設備費、厳しい点検要求、作業員の厳しい訓練並びに複雑な制御装置が必要と言う欠点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上述の問題を解消した新たなエンジン設備、特に新たな船舶用エンジン設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は請求項1に記載のエンジン設備、特に船舶用エンジン設備で解決される。本発明に基づき、主エンジンと補助エンジンが、主エンジンに付設された排気駆動式過給機で圧縮された生空気質量流の一部を所要時に補助エンジンに供給すべく連結される。
【発明の効果】
【0007】
ここで本発明の意味は、主エンジンと補助エンジンとの熱力学的連結を形成することにある。主エンジンに付属する排気駆動式過給機で圧縮した余剰空気を、バイパス空気質量流の形で導き、該質量流を、熱力学的効率を高めかつ有害物質の放出量を減少すべく補助エンジンで利用する。本発明により、エンジン全体のエネルギバランスが向上し、熱効率が高まる。本発明により、上述の欠点を持つタービン複合エンジン設備も不要になる。
【0008】
本発明の有利な実施態様を従属請求項および以下の実施例に示す。以下本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図1〜図3を参照して本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は本発明によるエンジン設備1、即ち船舶用エンジン設備の第1実施例を示す。この設備1は主エンジン2と補助エンジン3を備える。主エンジン2は2サイクルディーゼルエンジンとして形成され、船舶の推進用動力を供給するスクリュープロペラ4を駆動する。補助エンジン3は4サイクルディーゼルエンジンとして形成され、船舶の電気系統の運転に必要な電気エネルギを供給するための発電機5を駆動する。
【0011】
図1の実施例では、エンジン設備1の主エンジン2に排気駆動式過給機6を付設している。該過給機6はタービン7を利用している。主エンジン2の排気ガス流8が排気駆動式過給機6のタービン7内で膨張し、その際排気ガス流8に含まれるエネルギが、排気駆動式過給機6の圧縮機9を駆動する機械エネルギに変換される。タービン7内で膨張した排気ガス流は、煙突として形成した排気ガス排出管11を矢印10の方向に導かれる。
【0012】
排気駆動式過給機6のタービン7において排気ガス流8で発生された機械エネルギは、排気駆動式過給機6の圧縮機9において生空気質量流12を圧縮するために利用される。圧縮された生空気質量流12は、大きな過給圧力で矢印13の方向に主エンジン2に供給される。図1において、排気駆動式過給機6の圧縮機9と主エンジン2との間に、過給空気冷却器(インタクーラ)14が接続されている。
【0013】
ここで本発明の特徴は、図1のエンジン設備1の主エンジン2と補助エンジン3が熱力学的に連結され、詳しくは、主エンジン2に付設された排気駆動式過給機6で圧縮された生空気質量流の一部が、必要に応じ補助エンジン3にその熱効率を高めるべく供給されることにある。このため図1の実施例では、主エンジン2に付設された排気駆動式過給機6の圧縮機9と主エンジン2との間に分岐点15を設けている。該分岐点15は、過給空気冷却器14の下流側で主エンジン2のシリンダ上流に配置され、主エンジン2に付設された排気駆動式過給機6で圧縮された生空気質量流の一部を補助エンジン3に供給する。この結果、矢印16の方向にバイパス空気質量流が発生する。
【0014】
図1に示す如く、分岐点15と補助エンジン3との間に切換弁17が接続されている。該切換弁17の閉鎖時には、分岐点15でバイパス空気質量流が補助エンジン3に向けて分岐されない。切換弁17の閉鎖中、排気駆動式過給機6で圧縮された空気全部が主エンジン2に供給される。特に補助エンジン3が運転されず、主エンジン2が部分負荷運転されるエンジン設備1の運転状態では、切換弁17は完全に閉じられる。これに対し主エンジン2が全負荷運転され、補助エンジン3が運転されないとき、切換弁17が開位置に切り換えられ、分岐点15で矢印16の方向に分岐されたバイパス空気質量流が、排気ガス排出管11に直接矢印18の方向に導かれる。また補助エンジン3も運転される際、即ち主エンジン2と補助エンジン3との連結運転時、切換弁17は開位置に切り換えられ、分岐点15で矢印16の方向に分岐されたバイパス空気質量流が、補助エンジン3に向けて矢印19の方向に導かれる。図1の実施例では、切換弁17と補助エンジン3との間に補助エンジン3に対する過給空気冷却器20も組み入れている。補助エンジン3で発生した排気ガス流21は排気ガス排出管11に直接導かれる。主エンジン2と補助エンジン3の連結運転中、主エンジン2のシリンダ上流の圧力は、補助エンジン3のシリンダ上流の圧力に略相当し、補助エンジン3のシリンダ下流の圧力は略大気圧に相当する。
【0015】
図1の実施例では、補助エンジン3の必要燃焼空気量は、矢印16の方向に分岐された主エンジン2のバイパス空気質量流で完全に賄われる。補助エンジン3に固有の排気駆動式過給機は付設していない。図1の実施例で、エンジン設備1全体の効率を改善できる。補助エンジン3に付設する排気駆動式過給機を省略したことで、建設費と点検費を低減できる。図1の実施例で、補助エンジン3に付設した過給空気冷却器20を省くこともできる。かくして建設費と点検費を一層低減できる。図1の配置構造で、従来技術に比べ補助エンジン3の燃料消費量を少なくとも約10%減らせる。
【実施例2】
【0016】
図2は本発明に基づくエンジン設備22の第2実施例を示す。この設備22も、図1の実施例と同様に主エンジンと補助エンジンを備える。不要な重複説明を避けるべく、同一部分には同一符号を付している。以下、図2の実施例の、図1の実施例と異なる細部についてだけ説明する。第1実施例との共通部については先の説明を参照されたい。
【0017】
図2の実施例では、補助エンジン3に固有の排気駆動式過給機23を設けている。図2では、補助エンジン3に付設した排気駆動式過給機23の圧縮機24を、切換弁17と補助エンジン3の過給空気冷却器20との間に接続している。その結果所要時に分岐点15で矢印16の方向に分岐した主エンジン2のバイパス空気質量流を、補助エンジン3に付設した排気駆動式過給機23の圧縮機24に供給して再度圧縮する。この結果、過給空気の再冷却式二段圧縮が行われる。これに応じ、図2のエンジン設備22で、単段過給方式のレベルより高い二段圧縮比が得られる。単段タービンの結果として掃気圧力が大きく低下し、この低下は有効な給気交代作業の形で効率を高めるべく利用できる。図2の配置構造で、従来技術に比べ補助エンジン3の燃料消費量を少なくとも約20%減少できる。
【0018】
図2の実施例では、補助エンジン3の排気ガス流21を、補助エンジン3に付設した排気駆動式過給機23のタービン25に供給し、該過給機23で補助エンジン3の排気ガス流21を膨張させ、ガス流21に含まれるエネルギを、補助エンジン3に付設した排気駆動式過給機23の圧縮機24を駆動する機械エネルギに変換する。タービン25内で膨張した補助エンジン3の排気ガス流21は、排気ガス排出管11に矢印26の方向に導く。なお図2の実施例では、補助エンジンに対する生空気質量流を二段圧縮するが、補助エンジン3の排気ガス流と主エンジン2の排気ガス流との膨張は単段で実施している。
【実施例3】
【0019】
図3は、本発明によるエンジン設備27の他の実施例を示す。この設備27も同様に主エンジンと補助エンジンを用い、両エンジンを熱力学的に連結している。不要な重複説明を避けるべく、同一部分には同一符号を付している。以下、図3の実施例の、図1の実施例と異なる細部のみを説明する。共通部については上述の説明を参照されたい。
【0020】
図3の実施例では、補助エンジン3に固有の排気駆動式過給機28を付設し、補助エンジン3に付設した排気駆動式過給機28の圧縮機29と補助エンジン3の過給空気冷却器20との間に切換弁17を接続している。補助エンジン3に付設した排気駆動式過給機28は、主エンジン2に付設した排気駆動式過給機6と無関係に生空気質量流30を吸い込み圧縮する。図3から解る如く、補助エンジン3とこれに付設した排気駆動式過給機28のタービン32との間に、もう1つの切換弁31を接続している。該切換弁31の開き位置に応じ、補助エンジン3の排気ガス質量流21が、補助エンジン3に付設した排気駆動式過給機28のタービン32に矢印33の方向又は排気ガス排出管11に矢印34の方向に流れる。補助エンジン3の排気ガス流21を膨張させるべくタービン32に導く際、排気ガス流21内に含まれるエネルギを、補助エンジン3に付設した排気駆動式過給機28の圧縮機29を駆動するための機械エネルギに変換し、膨張した排気ガス流を矢印35の方向に排気ガス排出管11に流す。図3から解る如く、分岐点15と切換弁17との間に切換弁36付きのもう1つの分岐点を設けている。切換弁36の開き位置に応じ、分岐点15で分岐されたバイパス空気質量流は排気ガス排出管11に直接導かれる。
【0021】
それに応じて図3の実施例では、主エンジン2と補助エンジン3に各々固有の排気駆動式過給機6、28を付設している。両エンジンの切り離し運転時、切換弁17を閉じ、切換弁36を開き、もって、場合によっては、主エンジン2に付設した排気駆動式過給機6で発生した余剰の空気質量流を、切換弁36を経て排気ガス排出管11に直接導く。両エンジンの連結運転時、切換弁17を開き、主エンジン2に付設した排気駆動式過給機6で発生した余剰の空気質量流を、補助エンジン3で利用する。このバイパス空気質量流が補助エンジン3に十分な過給空気圧力を供給可能なら、本発明に従い、補助エンジン3に付設した排気駆動式過給機28を遮断する。この際、切換弁31を経て補助エンジン3の排気ガス流21を、矢印34の方向に排気ガス排出管11に直接導く。図3の実施例では、補助エンジン3に付設した排気駆動式過給機28が遮断可能なので、該過給機28の運転時間と負荷を減少させ、もって保守点検費も減少させ得る。主エンジン2と補助エンジン3の連結運転時、主エンジン2のシリンダ上流の圧力は補助エンジン3のシリンダ上流の圧力に略相当し、補助エンジン3のシリンダ下流の圧力は大気圧に略相当する。
【産業上の利用可能性】
【0022】
図1〜図3の全実施例は、エンジン設備1、22、27の主エンジン2と補助エンジン3を熱力学的に連結した点で共通している。主エンジン2に付設した排気駆動式過給機6で圧縮した空気質量流の一部を、熱効率を高めるべく補助エンジン3に導く。その際、補助エンジン3に付設する排気駆動式過給機を省略できる。また補助エンジン3に固有の排気駆動式過給機も配置できる。図1と3の実施例で、補助エンジン3の燃料消費量は少なくとも約10%、図2の実施例で少なくとも約20%減少する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に基づくエンジン設備の第1実施例のブロック図。
【図2】本発明に基づくエンジン設備の第2実施例のブロック図。
【図3】本発明に基づくエンジン設備の第3実施例のブロック図。
【符号の説明】
【0024】
1、22、27 エンジン設備、2 主エンジン、3 補助エンジン、4 スクリュープロペラ、5 発電機、6、23、28 排気駆動式過給機、7、25、32 タービン、8、21 排気ガス流、9、24、29 圧縮機、11 排気ガス排出管、12、30 生空気質量流、14、20 過給空気冷却器、15 分岐点、17、31、36 切換弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力を供給するための主エンジン(2)と、電力を供給するための補助エンジン(3)とを備え、少なくとも主エンジン(2)に排気駆動式過給機(6)が付設され、該過給機(6)が、主エンジン(2)の排気ガス流(8)に含まれるエネルギをタービン(7)において排気駆動式過給機(6)の圧縮機(9)を駆動するための機械エネルギに変換し、圧縮機(9)に供給された生空気質量流を圧縮し、増大した過給圧力で主エンジン(2)に供給するエンジン設備において、
主エンジン(2)および補助エンジン(3)が、主エンジン(2)に付設された排気駆動式過給機(6)により圧縮された生空気質量流の一部を、所要時補助エンジン(3)に供給するように連結されたことを特徴とするエンジン設備。
【請求項2】
主エンジン(2)に付設された排気駆動式過給機(6)の圧縮機(9)と主エンジン(2)との間に過給空気冷却器(14)が挿入され、該冷却器(14)と主エンジン(2)との間に分岐点(15)が設けられ、主エンジン(2)に付設された排気駆動式過給機(6)によって圧縮された生空気質量流の一部が前記分岐点(15)を介して補助エンジン(3)に導かれることを特徴とする請求項1記載のエンジン設備。
【請求項3】
分岐点(15)と補助エンジン(3)との間に少なくとも1つの切換弁(17)が接続されたことを特徴とする請求項2記載のエンジン設備。
【請求項4】
切換弁(17)と補助エンジン(3)との間に補助エンジン(3)に付設された過給空気冷却器(20)が接続されたことを特徴とする請求項3記載のエンジン設備。
【請求項5】
切換弁(17)と補助エンジン(3)との間に補助エンジン(3)に付設された排気駆動式過給機(23)が接続されたことを特徴とする請求項3又は4記載のエンジン設備。
【請求項6】
補助エンジン(3)に付設された排気駆動式過給機(23)が、補助エンジン(3)の排気ガス流に含まれるエネルギをタービン(25)において排気駆動式過給機(23)の圧縮機(24)を駆動するための機械エネルギに変換することを特徴とする請求項5記載のエンジン設備。
【請求項7】
補助エンジン(3)に付設された排気駆動式過給機(23)の圧縮機(24)と補助エンジン(3)との間に過給空気冷却器(20)が接続されたことを特徴とする請求項5又は6記載のエンジン設備。
【請求項8】
補助エンジン(3)に付設された排気駆動式過給機(28)の圧縮機(29)と補助エンジン(3)との間に切換弁(17)が接続されたことを特徴とする請求項3又は4記載のエンジン設備。
【請求項9】
主エンジン(2)に付設された排気駆動式過給機(6)で圧縮され、所要時に分岐される生空気質量流の一部が補助エンジン(3)に対し十分な過給圧力を有している場合、補助エンジン(3)に付設された排気駆動式過給機(28)が遮断されることを特徴とする請求項8記載のエンジン設備。
【請求項10】
補助エンジン(3)に付設された排気駆動式過給機(28)の圧縮機(29)と補助エンジン(3)との間にもう1つの切換弁(31)が接続されたことを特徴とする請求項8又は9記載のエンジン設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−2769(P2006−2769A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−172183(P2005−172183)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(390041520)エムアーエヌ、ベーウントヴエー、デイーゼル、アクチエンゲゼルシヤフト (59)
【氏名又は名称原語表記】MAN B&W DIESEL AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】