説明

エンドキシフェンの方法および組成物

本発明は、エンドキシフェンを含有する組成物、エンドキシフェンの製剤およびリポソーム、そのような薬剤および製剤の調製方法、ならびに乳癌や他の乳房疾患およびエンドキシフェンの影響を受けやすい疾患の治療のための、そのような薬剤および製剤の使用を提供する。特に、本発明の組成物は、エンドキシフェンのリポソーム、複合体、小胞、エマルション、ミセルおよび混合ミセルを含み、該組成物は、任意の様々な中性または荷電脂質、望ましくは、コレステロールおよびコレステロール誘導体、ステロール、ZおよびEグーグルステロン、リン脂質、脂肪酸、ビタミンD、ならびにビタミンEをさらに含有する。また、本発明は、エンドキシフェンの調製方法も提供する。本発明は、治療有効量のエンドキシフェンを含む新規製剤または組成物を投与することによって、乳癌および他の乳房関連疾患を治療および予防するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年11月21日に出願された米国仮特許出願第60/860,420号および2006年11月22日に出願された第60/860,788号の優先権を主張するものであり、その両方は、参照することにより本願明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、哺乳動物の疾患の治療におけるエンドキシフェンの使用に関する。また、本発明は、エンドキシフェンのリポソームと、複合体、小胞、エマルション、ミセルおよび混合ミセル等の他の製剤、調製方法、ならびに、例えば、ヒトおよび動物の乳房疾患の治療における使用に関する。本発明は、より具体的には、エンドキシフェンと脂質の複合体を含む組成物、調製方法、ならびに、乳房疾患、特に良性および悪性乳房疾患の治療のためのそれらの使用に関し、疾患退行を増強させ、乳癌を発症する患者の危険性を減少させる。本発明は、さらに、ヒトおよび動物疾患の治療において、エンドキシフェンを調製する方法ならびに発明の方法によって調製されたエンドキシフェンの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
米国では、毎年210,000人を越える女性が乳癌を発症する。米国の女性の8人に1人が、存命中に乳癌を発症するであろう。乳癌の約70パーセントは、エストロゲンによって刺激され、多くは、乳房組織におけるエストロゲンの作用を阻止するように設計された薬物であるタモキシフェンで治療される。
【0004】
タモキシフェンは、乳癌の長期かつ低用量療法用に処方される抗エストロゲン剤である。これは、全ての段階のホルモン受容体陽性の乳癌の内分泌治療に対して30年以上にわたって広く使用されている(1〜2)。また、タモキシフェンは、乳癌の予防にも認可されている(3)。女性において、タモキシフェンに関連する有害事象のうちの1つは、のぼせである。のぼせの危険性は、タモキシフェンを服用しない女性と比べて、服用する女性の間で2〜3倍高い(4)。選択的セロトニン再取り込み阻害剤(Selective serotonin-reuptake inhibitor:SSRI)抗うつ薬は、のぼせを治療するために処方される。しかしながら、パロキセチンおよびフルオキセチン等のある種のSSRIは、タモキシフェンを含む多くの薬物の代謝に重要な酵素であるシトクロムP450(CYP)2D6を阻害することが知られている(5)。CYP2D6を阻害する薬物の同時処方が、タモキシフェン有効性を損なう可能性があるという幅広い認識によって、タモキシフェン代謝および効果の理解が臨床診療を変えた。パロキセチンの同時投与は、タモキシフェン、4−ヒドロキシ−N−デスメチル−タモキシフェン(エンドキシフェン)の活性代謝物の血漿濃度を減少させることが既知である。
【0005】
エンドキシフェンは、タモキシフェンのCYP3A4媒介のN−脱メチル反応およびCYP2D6媒介のヒドロキシル化を介して産生される(例えば、図3参照)。CYP3A4またはCYP2D6、特にCYP2D6の基質であることができる任意の薬物、例えばSSRIは、エンドキシフェンのレベルを減少させ得(6)、したがって、タモキシフェンの治療的有用性を減少させる。したがって、そのような薬物−薬物相互作用を回避するため、それらを一緒に与えるべきではない。
【0006】
近年、エンドキシフェンは、乳癌細胞において抗エストロゲン性であり、タモキシフェンよりもより強力であることが分かっている(7)。タモキシフェンで治療される患者において、エンドキシフェンは、ヒト血漿中で、4−OH−タモキシフェン(1ng/mL)よりも高い濃度(12.4ng/mL)で存在する。エンドキシフェンにより影響を受ける遺伝子の大部分は、エストロゲン調節遺伝子である(8〜9)。例えば、タモキシフェンの代わりに、エンドキシフェンを使用することにより、CYP2D6に依存する幾つかの代謝段階が回避される。
【0007】
特に閉経前集団において、著しい全身性の副作用を及ぼさずに、乳房疾患を治療および予防する方法への強い必要性が存在する。特に、他の薬物療法との複合作用の影響を減少させる乳癌治療および予防への必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、抗癌剤等の活性薬剤の合成および使用のための方法および組成物を提供する。本発明は、特に癌の治療または予防と関連する用途における、エンドキシフェンの製剤および使用と関連する方法および組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一部の実施形態においては、本発明は、治療有効量のエンドキシフェンを含む組成物を調製するステップと、該組成物を投与するステップとを含む、疾患を治療する方法を提供する。一部の実施形態においては、該エンドキシフェンは、遊離塩基であるか、または塩の形態である。一部の好適な実施形態においては、該エンドキシフェンは、クエン酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、トリフルオロ酢酸塩、メタンスルホン酸塩、リン酸塩、硫酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、乳酸塩、およびギ酸塩から成る塩の群から選択される塩の形態である。一部の実施形態においては、該エンドキシフェンは、主に、E異性体、Z異性体、ならびにEおよびZ異性体の混合物から成る群から選択される形態である。
【0010】
一部の実施形態においては、本方法は、抗癌剤および少なくとも1つの脂質を含む複合体を調製するステップを含む。一部の実施形態においては、該抗癌剤は、エンドキシフェンである。一部の実施形態においては、本発明の化合物は、脂質と複合体化されない。一部の実施形態においては、該化合物は、遊離塩基の形態であるか、または塩の形態である。
【0011】
一部の実施形態においては、本発明は、エンドキシフェンを調製する方法であって、式5の化合物と酸とを反応させるステップであって、該化合物は、以下の構造:
【化1】

【0012】
を有する、上記ステップと、式5の化合物と酸との反応後に、該化合物をメチルアミンと反応させるステップとを含む。一部の実施形態においては、式5の化合物は、式4の化合物:
【化2】

【0013】
と、式3の化合物:
【化3】

【0014】
とを反応させることによって調製される。
【0015】
一部の実施形態においては、式3の化合物は、式1の化合物:
【化4】

【0016】
と、式2の化合物:
【化5】

【0017】
とを反応させることによって調製される。
【0018】
一部の実施形態においては、本発明は、上記のように、該エンドキシフェンを精製する方法を提供し、エンドキシフェンの精製調製物を生成するために、該エンドキシフェンを結晶化させるステップ、および/または該エンドキシフェンをクロマトグラフィーで処理するステップを含み、エンドキシフェンの精製調製物は、エンドキシフェンの主にE異性体、主にZ異性体、またはEおよびZ異性体の混合物を含有する。
【0019】
上記のように、一部の実施形態においては、本発明は、少なくとも1つの脂質を含むエンドキシフェン調製物を提供する。好適な実施形態においては、該少なくとも1つの脂質は、卵ホスファチジルコリン(EPC)、卵ホスファチジルグリセロール(EPG)、大豆ホスファチジルコリン(SPC)、水素化大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、コレステロール(Chol)、コレステロール硫酸およびその塩(CS)、コレステロールヘミコハク酸およびその塩(Chems)、コレステロールリン酸およびその塩(CP)、コレステリルホスホコリンおよび他のヒドロキシコレステロールまたはアミノコレステロール誘導体、コハク酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、コレステロールのポリエチレングリコール誘導体(コレステロール−PEG)、コプロスタノール、コレスタノール、コレスタン、コール酸、コルチゾール、コルチコステロン、ヒドロコルチゾン、およびカルシフェロール、Eグーグルステロン,Zグーグルステロン、EおよびZグーグルステロンの混合物、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド;ガラクト脂質、マンノ脂質、ガラクトレシチンから成る群から選択される炭水化物ベースの脂質;β−シトステロール、スチグマステロール、スチグマスタノール、ラノステロール、α−スピナステロール、ラソステロール、カンペステロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、ならびにジステアロイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロールおよびジオレオイルホスファチジルグリセロールのペグ化誘導体から成る群から選択される。
【0020】
一部の実施形態においては、本発明に係る組成物は、エンドキシフェン,コレステロールおよび/またはコレステロール誘導体、ならびに1つ以上のリン脂質を含む。一部の好適な実施形態においては、該組成物は、コレステロール誘導体を含み、該コレステロール誘導体は、硫酸コレステリルである。一部の実施形態においては、該リン脂質の少なくとも1つは、水素化大豆ホスファチジルコリンまたは大豆ホスファチジルコリンである。
【0021】
本発明の方法および組成物の一部の実施形態においては、該組成物は、粉末、溶液、エマルション、ミセル、リポソーム、脂質粒子、ゲル、およびペースト状から成る群から選択される形態を含む。一部の好適な実施形態においては、該組成物を調製するステップは、凍結乾燥形態の複合体を調製するステップを含む。一部の実施形態においては、凍結乾燥形態の複合体を調製するステップは、凍結保護物質を使用するステップを含み、該凍結保護物質は、トレハロース、マルトース、ラクトース、スクロース、グルコース、およびデキストランから成る群から選択される1つ以上の糖を含む。一部の実施形態においては、該組成物は、錠剤または充填カプセル剤を含み、該錠剤または充填カプセル剤は、腸溶被覆材料を任意に含んでいてもよい。
【0022】
本発明の治療方法の一部の実施形態においては、該疾患は、癌であるか、または発癌物質によって生じ、一方、一部の実施形態においては、該疾患は、良性乳房疾患である。
【0023】
一部の実施形態においては、該組成物を該対象に投与するステップは、経口、静脈内、皮下、経皮、非経口、腹腔内、直腸、膣内、および/または局所送達を含む。
【0024】
一部の実施形態においては、該組成物は、浸透促進剤を含み、該浸透促進剤は、少なくとも1つの飽和または不飽和脂肪酸エステルを含む。
【0025】
一部の実施形態においては、エンドキシフェンを含む組成物は、含水アルコールゲル、含水アルコール溶液、パッチ、クリーム、エマルション、ローション、軟膏剤、粉末または油に製剤化される。
【0026】
一部の実施形態においては、エンドキシフェンを含む組成物は、浸透促進剤、水性ビヒクル、アルコールビヒクルおよびゲル化剤を含有する含水アルコール組成物に製剤化される。
【0027】
一部の実施形態においては、該含水アルコール組成物は、中和剤を含む。
【0028】
一部の実施形態においては、該含水アルコール組成物は、約0.01重量%から0.20重量%のエンドキシフェン、約0.1重量%から2.0重量%、好ましくは0.5重量%から2.0重量%のミリスチン酸イソプロピル、約50.0重量%から80.0重量%、好ましくは約60.0重量%から75.0重量%のアルコール、約20.0重量%から60.0重量%、好ましくは25.0重量%から50.0重量%の水性ビヒクル、および約1.0重量%から10.0重量%、好ましくは約0.5重量%から5.0重量%のゲル化剤を含む。一部の実施形態においては、成分の割合は、該組成物の重量に基づく。
【0029】
一部の実施形態においては、該アルコールは、エタノールまたはイソプロパノールであり、無水形態で構成される。
【0030】
一部の実施形態においては、該水性ビヒクルは、リン酸緩衝溶液である。
【0031】
一部の実施形態においては、該ゲル化剤は、ポリアクリル酸、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロース以外のセルロース誘導体から成る群から選択される。
【0032】
一部の実施形態においては、該含水アルコール組成物は、中和剤をさらに含み、該中和剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、アミノメチルプロパノール、アルギニン、トロラミン、およびトロメタミンから成る群から選択され、該中和剤は、約1:1から約4:1の中和剤/ゲル化剤の比率で存在する。
【0033】
一部の実施形態においては、本発明は、上記の組成物のいずれかを準備するステップと、該組成物を細胞に曝露するように、該組成物を送達するステップとを含む、エンドキシフェンを送達する方法を提供する。
【0034】
一部の実施形態においては、該細胞は、インビボにある。
【0035】
本発明の一部の実施形態においては、宿主は、哺乳動物である。
【0036】
また、本発明は、哺乳動物におけるホルモン依存性乳癌を抑制する方法も提供し、該方法は、上記の組成物のいずれかを該哺乳動物に投与するステップを含む。
【0037】
本発明は、哺乳動物における癌を抑制する方法をさらに提供し、該癌は、哺乳動物における肺癌、大腸癌、乳癌、白血病、腎癌、メラノーマ、中枢神経系の癌、および前立腺癌を含むがこれらに限定されず、該方法は、上記の組成物のいずれかを、該哺乳動物(例えば、ヒト)に投与するステップを含む。
【0038】
本発明は、エンドキシフェンおよび少なくとも1つの脂質を含む治療有効量の複合体を含み、該エンドキシフェンが遊離塩基であるかまたは塩の形態である組成物をさらに提供する。
【0039】
一部の実施形態においては、エンドキシフェンを含む組成物は、含水アルコールゲル、含水アルコール溶液、パッチ、クリーム、エマルション、ローション、軟膏剤、粉末または油に製剤化される。
【0040】
一部の実施形態においては、エンドキシフェンを含む組成物は、浸透促進剤、水性ビヒクル、アルコールビヒクルおよびゲル化剤を含有する含水アルコール組成物に製剤化される。
【0041】
一部の実施形態においては、該含水アルコール組成物は、中和剤を含む。
【0042】
一部の実施形態においては、該含水アルコール組成物は、約0.01重量%から0.20重量%のエンドキシフェン、約0.1重量%から2.0重量%、好ましくは0.5重量%から2.0重量%のミリスチン酸イソプロピル、約50.0重量%から80.0重量%、好ましくは約60.0重量%から75.0重量%のアルコール、約20.0重量%から60.0重量%、好ましくは25.0重量%から50.0重量%の水性ビヒクル、および約1.0重量%から10.0重量%、好ましくは約0.5重量%から5.0重量%のゲル化剤を含む。一部の実施形態においては、成分の割合は、該組成物の重量による。
【0043】
本発明は、上述の組成物および方法に限定されない。本明細書の他の部分に記載される、または本開示を考慮して当業者により理解される上記の組成物および方法の変型例は、本発明の範囲内に包含されることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】化合物Iを図解する図である。
【図2】化合物3、5、およびIの合成に対する実施形態を図解する図である。
【図3】タモキシフェン代謝経路の一部を図解する図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
定義
本明細書で使用される「宿主」、「対象」および「患者」という用語は、研究、分析、テスト、診断または治療されるヒトおよび非ヒト動物(例えば、イヌ、ネコ、雌ウシ、ウマ、ヒツジ、家禽、魚、甲殻類等)を含むがこれらに限定されない、任意の動物を指す。
【0046】
本明細書で使用される「宿主」、「対象」および「患者」という用語は、特に明記しない限り、同じ意味で使用される。
【0047】
本明細書で使用される「癌の危険性がある対象」という用語は、例えば、事前の既往歴、遺伝データ等によって、癌を発症する危険性があると特定された対象を指す。
【0048】
本明細書で使用される「抗癌剤」という用語は、癌を治療または予防するために使用される薬剤を指す。そのような薬剤は、小分子、薬物、抗体、医薬品等を含むが、これらに限定されない。
【0049】
本明細書において使用される、「有効量」という用語は、有益または所望の結果をもたらすのに十分な、活性組成物(例えば脂質製剤中の成分として提供される医薬化合物または組成物)の量を指す。有効量は、1回以上の投与、塗布、または用量で投与され得、特定の製剤または投与経路に限定されることは意図しない。
【0050】
本明細書において使用される、薬剤、組成物、または化合物を参照して使用される、「活性な」または「医薬的に活性な」という用語は、投与または塗布により、有益な、所望の、または期待される結果をもたらす、薬剤を指す。投与は、1回以上の投与、塗布、または用量であり得、特定の製剤または投与経路に限定されることは意図しない。該用語は、活性のいずれの特定レベルにも限定されない。
【0051】
「薬剤」および「化合物」という用語は、本明細書において同義的に使用され、帰属特性を有する任意の原子、分子、混合物、またはより複雑な組成物を指す。例えば、「活性薬剤」または「活性化合物」は、投与または塗布により、有益な、所望の、または期待される結果をもたらす、任意の原子、分子、調合剤、混合物等を指す。
【0052】
本明細書で使用される「治療する」という用語は、特定の障害、疾患、傷害または状態に関連する症状を予防、治癒、または軽減/予防するために、療法を投与するステップを含む。
【0053】
本明細書で使用される「治療」という用語または文法的均等物は、疾患(例えば、癌)の症状の改善および/または回復、あるいは疾患の発生の危険性の減少を包含する。本発明のスクリーニング方法で使用される時に、疾患に付随する任意のパラメータに改善をもたらす化合物は、それによって、治療用化合物として特定され得る。「治療」という用語は、治療処置および予防または防止対策の両方を指す。例えば、本発明の組成物および方法での治療から利益を享受し得る人は、疾患および/または障害(例えば、癌、または癌と一致する症状もしくは病状)をすでに有している人、ならびに疾患および/または障害が(例えば、本発明の予防治療を用いて)予防される人を含む。
【0054】
本明細書で使用される「疾患の危険性がある」という用語は、特定の疾患をきたす素因のある対象(例えば、ヒト)を指す。この素因は、遺伝的(例えば、遺伝性障害等の疾患をきたす特定の遺伝的傾向)であり得るか、または他の要因(例えば、年齢、体重、環境条件、環境に存在する有害な化合物への曝露等)に起因し得る。したがって、本発明は、任意の特定の危険性に限定されることを意図するものはなく、本発明は、任意の特定の疾患に限定されることを意図するものでもない。
【0055】
本明細書で使用される「疾患に罹患する」という用語は、特定の疾患をきたす対象(例えば、ヒト)を指す。本発明は、任意の特定の徴候もしくは症状、または疾患に限定されることを意図するものではない。したがって、本発明は、あらゆる範囲の疾患(例えば、無症状の兆候から完全に症状を呈する疾患)をきたす対象を包含することが意図され、対象は、特定の疾患に付随する、少なくともいくらかの兆候(例えば、徴候および症状)を呈する。
【0056】
本明細書で使用される「疾患」および「病的状態」という用語は、通常の機能の性能を妨害もしくは変更する、生きている動物またはそのあらゆる器官もしくは組織の通常の状況のあらゆる機能障害に付随し、環境要因(心的外傷、身体外傷、栄養障害、工業災害、または気候等)、特定の感染因子(虫、細菌、またはウイルス等)、生物の固有の障害(種々の遺伝子異常等)、またはこれらのおよび他の要因の組み合わせに対する反応であり得る、状況、徴候、および/または症状を説明するために、同じ意味で使用される。
【0057】
本明細書において使用される、「投与」という用語は、薬物、プロドラッグ、もしくは他の活性薬剤、または治療的処置(例えば本発明の組成物)を、生理系(例えば対象またはインビボ、インビトロ、もしくはエキソビボの細胞、組織、および器官)に与える行為を指す。人体への投与の模範的な経路は、眼(眼科)、口(経口)、皮膚(経皮)、鼻(経鼻)、肺(吸入)、直腸、膣、口腔粘膜(口腔)、耳、注射(例えば静脈、皮下、腫瘍内、腹腔内等)等を介してであり得る。投与は、1回以上の投与、塗布、または用量であり得、特定の投与経路に限定されることは意図しない。
【0058】
本明細書において使用される、「同時投与」という用語は、対象への少なくとも2つの薬剤(例えば異なる活性化合物を含有する、2つの別個の脂質組成物)または療法の投与を指す。一部の実施形態において、2つ以上の薬剤または療法の同時投与は、同時である。他の実施形態において、第1の薬剤/療法は、第2の薬剤/療法の前に投与される。当業者は、使用される様々な薬剤または療法の、製剤および/または投与経路が異なり得ることを理解する。同時投与に適した用量は、当業者には容易に決定され得る。一部の実施形態において、薬剤または療法が同時投与される場合、それぞれの薬剤または療法は、それらの単独投与に適したものよりも、低用量で投与される。したがって、同時投与は、薬剤または療法の同時投与が、潜在的に有害な(例えば有毒)薬剤の必須用量を低減する実施形態において特に望ましい。
【0059】
本明細書において使用される、「有毒」という用語は、毒物の投与前の同一細胞または組織と比較して、対象、細胞または組織に対する任意の悪影響または有害な影響を指す。
【0060】
本明細書で使用される「医薬的に精製された」という用語は、製薬学的用途のための調製物の十分な純度または質の組成物を指す。
【0061】
本明細書で使用される「精製された」という用語は、除去した成分に対する精製された成分の比が、出発組成物において大きくなるように、少なくとも1つの他の成分(例えば、出発組成物からの別の成分(例えば、植物もしくは動物組織、環境試料等)、混入物、合成前駆体、または副生物等)を除去するための出発組成物の処理を指す。
【0062】
本明細書において使用される、「医薬組成物」という用語は、組成物を、特にインビボ、インビトロ、またはエキソビボの診断または治療用途に適するようにする、活性薬剤(例えば活性医薬化合物)と、不活性または活性の担体(例えばリン脂質)との組み合わせを指す。
【0063】
本明細書において使用される、「医薬的に許容される」または「薬理学的に許容される」という用語は、対象に投与された場合、薬害反応、例えば毒性、アレルギー、または免疫学的反応を実質的に発生しない、組成物を指す。
【0064】
本明細書において使用される、「局所的に」という用語は、本発明の組成物の、皮膚の表面、ならびに粘膜細胞および組織(例えば歯槽、口腔、舌、咀嚼、あるいは鼻粘膜、および管腔器官または体腔の内側を覆う他の組織および細胞)への塗布を指す。
【0065】
本明細書において使用される、「医薬的に許容される担体」という用語は、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、エマルジョン(例えば油/水型または水/油型エマルジョン等)、および様々な種類の湿潤剤、あらゆる溶媒、分散媒、コーティング、ラウリル硫酸ナトリウム、等張剤および吸収遅延剤、崩壊剤(例えばジャガイモ澱粉または澱粉グリコール酸ナトリウム)等を含む、標準的な医薬担体のうちのいずれかを指すが、それらに限定されない。本組成物は、安定剤および保存料もまた含み得る。担体、安定剤、およびアジュバントの実施例については、(例えばMartin, Remington's Pharmaceutical Sciences, 15th Ed., Mack Publ. Co., Easton, Pa. (1975)を参照されたく、参照により本明細書に組み込まれる)。さらに、特定の実施形態において、本発明の組成物は、園芸または農業用途向けに製剤化され得る。そのような製剤には、浸漬液、散布剤、種子粉衣、茎部注入、散布剤、およびミストを含む。
【0066】
本明細書において使用される、「医薬的に許容される塩」という用語は、標的対象(例えば哺乳動物の対象、および/またはインビボもしくはエキソビボの細胞、組織もしくは器官)において生理学的に耐性のある、本発明の化合物の(例えば酸または塩基との反応により得られる)いずれかの塩を指す。本発明の化合物の「塩」は、無機または有機の酸および塩基から得られ得る。酸の例には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン−p−スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、スルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ベンゼンスルホン酸等が含まれるが、それらに限定されない。シュウ酸等の他の酸は、それ自体では医薬的に許容されないが、本発明の化合物およびそれらの医薬的に許容される酸付加塩を得る際、中間体として有用な、塩の調製において用いられ得る。
【0067】
塩基の例には、アルカリ金属(例えばナトリウム)水酸化物、アルカリ土類金属(例えばマグネシウム)水酸化物、アンモニア、および式NWの化合物(式中、WがC1−4アルキルである)等が含まれるが、それらに限定されない。
【0068】
塩の例には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、二グルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、フルコヘプタン酸塩(flucoheptanoate)、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パルモン酸塩(palmoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、ウンデカン酸塩等が含まれるが、それらに限定されない。塩の他の例は、Na、NH、およびNW(式中、WはC1−4アルキル基)等の好適な陽イオンと化合した、本発明の化合物の陰イオンを含む。治療用途向けに、本発明の化合物の塩は、医薬的に許容されるものとして、企図される。しかしながら、医薬的に許容されない酸および塩基の塩もまた、例えば、医薬的に許容される化合物の調製または精製において使用され得る。
【0069】
治療用途のために、本発明の化合物の塩は、医薬的に許容されると意図される。しかしながら、また、医薬的に許容されない酸および塩基の塩は、医薬的に許容される化合物の調製または精製において使用され得る。
【0070】
物質または組成物に関連して使用される、本明細書で使用される「含水アルコール」という用語は、該物質または組成物が、水およびアルコールの両方を含むことを示唆する。
【0071】
本明細書で使用される「ゲル化剤」という用語は、液体(例えば、水または緩衝溶液等の水溶液)中に溶解、懸濁または分散される時に、ゼラチン状半固体(例えば、滑沢性ゲル)を形成する組成物を指す。ゲル化剤の例は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルグアー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、カルボメルク、アルギン酸、ゼラチン、およびポロキサマーを含むが、これらに限定されない。
【0072】
組成物に関連して使用されるような、本明細書で使用される「乾燥」という用語は、化学反応をもはや促進しないレベルまで、溶剤成分または成分を除去することを指す。また、乾燥された組成物に関連して使用されるような用語も使用される(例えば、乾燥調製物または乾燥組成物)。当業者であれば、組成物が、例えば、凍結乾燥後に、残留溶剤もしくは水分含量を有しながら「乾燥」され得、または乾燥工程の完了後に、例えば、大気から吸湿的に水分を吸収し得ることを理解する。「乾燥」という用語は、吸湿性の吸収による水分含量の増加を伴う組成物を包含する。
【0073】
本明細書で使用される「保護剤」という用語は、活性薬剤が特定の条件(例えば、乾燥、凍結)に曝露される時に、活性薬剤(例えば、抗癌剤)の活性または完全性を保護する組成物または化合物を指す。一部の実施形態においては、保護剤は、凍結工程時に活性薬剤を保護する(つまり、これは「凍結保護物質」である)。保護剤の例は、脱脂乳固形分、トレハロース、グリセロール、ベタイン、スクロース、グルコース、ラクトース、デキストラン、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ポリビニルプロピレン、グルタミン酸カリウム、グルタミン酸ナトリウム、Tween20界面活性剤、Tween80界面活性剤、およびアミノ酸塩酸塩を含むが、これらに限定されない。
【0074】
本明細書で使用される「賦形剤」という用語は、活性成分の調製物に添加された不活性成分(つまり、医薬的に活性でない)を指す。本明細書に記述したゲル化および保護剤は、概して「賦形剤」と称し得る。
【0075】
本明細書で使用される「キット」という用語は、材料を送達するために任意の送達系を指す。キナーゼ活性または阻害アッセイとの関連において、そのような送達系は、ある位置から別の位置への、反応試薬および/または補助材料(例えば、緩衝液、アッセイを行うための書面での指示等)の貯蔵、運搬、または送達を可能にする系を含む。例えば、キットは、関連反応試薬および/または補助材料を含有する1つ以上のエンクロージャ(例えば、箱)を含む。本明細書で使用される「区分化キット」という用語は、それぞれが全キット成分の下位区分を含有する2つ以上の別々の容器を備える送達系を指す。容器は、対象レシピエントに一緒にまたは別々に送達され得る。例えば、第1の容器は、アッセイに使用するための薬剤を含有し得、第2の容器は、試験化合物との比較基準を含有し得る。「区分化キット」という用語は、Federal Food, Drug,and Cosmetic Act(連邦食品医薬品化粧品法)の520(e)条によって規制されているAnalyte Specific Reagent (ASR)を含有するキットを包含することが意図されるが、それに限定されない。事実、それぞれが全キット成分の下位区分を含有する2つ以上の別々の容器を備える任意の送達系は、「区分化キット」という用語に含まれる。対照的に、「組み合わせキット」は、単一容器中(例えば、所望の成分のそれぞれを収容する単一の箱中)に、反応アッセイの全ての成分を含有する送達系を指す。「キット」という用語は、区分化キットおよび組み合わせキットの両方を含む。
【0076】
発明の詳細な説明
本発明は、式Iのエンドキシフェンを、例えば、哺乳動物の宿主に送達するための組成物および方法を提供する。本発明の一部の実施形態においては、エンドキシフェンは、E異性体であり、一方、他の実施形態においては、それは、Z異性体であり、さらに他の実施形態においては、それは、EおよびZ異性体の混合物である。
【化6】

【0077】
本発明の例は、エンドキシフェン、エンドキシフェンの類似体、およびエンドキシフェンの誘導体を含み、エンドキシフェン、タモキシフェン、および4−ヒドロキシタモキシフェンを含むが、これらに限定されない。また、本発明は、パクリタキセル、ドセタキセル、メルファラン、クロルメチン、リン酸エストラムスチン、ウラムスチン、イホスファミド、マンノムスチン、トリホスファミド、ストレプトゾトシン、ミトブロニトール、ミトキサントロン、メトトレキサート、フルオロウラシル、シタラビン、テガフル、イドキシド、タキソール、パクリタキセル、ダウノマイシン、ダウノルビシン、ブレオマイシン、アンホテリシン、カルボプラチン、シスプラチン、BCNU、ビンクリスチン、カンプトセシン、SN−38、ドキソルビシン、およびエトポシド等の他の抗腫瘍薬とともに使用される。また、ビカルタミド、エキセメスタン、ホルメスタン、レトロゾール、アナストラゾールおよびそれらの類似体等の癌治療において使用されるステロイド性および非ステロイド性阻害剤も含む。
【0078】
式Iのエンドキシフェンは、本発明の治療に使用するための任意の所望の方法によって調製することができるが、一部の実施形態においては、本発明は、エンドキシフェンを調製するための特定の方法を提供する。本発明の好適な一方法を図2に示す。この方法において、4−ブロモフェノールを、酸(例えば、硫酸等)の存在下において、3,4−ジヒドロピランと反応させて、化合物を得る。化合物は、次いで、マグネシウムと反応させて、適切な無水溶剤(例えば、テトラヒドロフラン等)に入れる。これに続いて、1−[4−(2−クロロエトキシ)フェニル]−2−フェニル−1−ブタノンと反応させて、化合物を得、適切な溶剤(例えば、メタノール等)中の酸の存在下における脱水/脱保護で、化合物を得る。適切な溶剤(例えば、イソプロパノール等)中の生成された化合物のメチルアミンとの反応は、エンドキシフェンIをもたらす。
【0079】
本発明の一部の実施形態においては、エンドキシフェンのEおよびZ異性体の混合物は、エンドキシフェンのEおよびZ異性体の精製調製物を生成するように分離することができる。本発明におけるエンドキシフェンのEおよびZ異性体の分離は、例えば、結晶化、液体カラムクロマトグラフィ(liquid column chromatography:LC)、または高圧液体カラムクロマトグラフィ(high pressure liquid column chromatography:HPLC)による精製によって行うことができる。
【0080】
エンドキシフェンのEおよびZ異性体の分離のために本発明において用いることができる適切な溶剤は、ヘキサン、ヘプタン等、ベンゼン、トルエン、酢酸エチル、アセトニトリル;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロメタン等の塩素化溶剤;ケトン、例えば、アセトン、2−ブタノン等;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルブチルエーテル、およびテトラヒドロフラン等のエーテル;メタノール、エチルアルコール、およびイソプロピルアルコール等のアルコール;ならびに水等を含むが、これらに限定されない。結晶化のための溶剤は、単一溶剤として、またはヘキサン−酢酸エチル、クロロホルム−アセトン、クロロホルム−メタノール、ジクロロメタン−メタノール等の溶剤の混合物として使用することができる。本発明において2つの溶剤の混合物を使用する場合、1つの溶剤の別の溶剤に対する比率の例は、例えば、9:1対1:9等(例えば、8:2、7:3、6:4、5:5、4:6、3:7、2:8、1:9等)の範囲内である。しかしながら、本発明において使用するための混合物は、これらの比率、または2つの溶剤のみを含む混合物に限定されない。
【0081】
本発明に係るエンドキシフェンの調製において使用される溶剤は、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、アセトニトリル、N,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、ピリジン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、2−ブタノン、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、酢酸エチル等を含むが、これらに限定されない。
【0082】
本発明に係るエンドキシフェンの調製において使用される酸は、硫酸、塩酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、硝酸等を含むが、これらに限定されない。
【0083】
本発明の中間体および最終生成物は、ヘキサンペンタン、ヘプタン、酢酸エチル、塩化メチレン、クロロホルム、メタノール、アセトン等の単一の一般的有機溶剤またはその混合物を使用して、カラムクロマトグラフィで精製することができる。
【0084】
上記のように、本発明の中間体および最終生成物は、一部の実施形態においては、結晶化によって精製され得る。中間体および生成物の結晶化において使用される溶剤は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素;ベンゼン、トルエン、酢酸エチル、アセトニトリル;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロメタン等の塩素化溶剤;ケトン、例えば、アセトン、2−ブタノン等;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;メタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール等を含むが、これらに限定されない。結晶化のための溶剤は、単一溶剤としてまたは溶剤の混合物として使用することができる。例示的な混合物は、例えば、ヘキサン−酢酸エチル、クロロホルム−アセトン、クロロホルム−メタノール、ジクロロメタン−メタノール等を含む。本発明において2つの溶剤の混合物を使用する場合、1つの溶剤の別の溶剤に対する比率の例は、例えば、9:1対1:9等(例えば、8:2、7:3、6:4、5:5、4:6、3:7、2:8、1:9)の範囲内である。しかしながら、本発明において使用するための混合物は、これらの比率、または2つの溶剤のみを含む混合物に限定されない。
【0085】
本発明の1つの目的は、少なくとも90%純粋または少なくとも95%純粋または少なくとも98%純粋または少なくとも99%純粋または少なくとも100%純粋等の少なくとも80%純度を有するEエンドキシフェンまたはZエンドキシフェンを提供することである。
【0086】
本発明の別の目的は、例えば、酸性水溶液中の可溶化されたエンドキシフェンを提供することである。エンドキシフェンを可溶化するための適切な酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸等を含むが、これらに限定されない。エンドキシフェンを含む酸性溶液pHは、塩基または緩衝液で調整することができる。塩基および緩衝液の例は、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、一リン酸ナトリウム、二リン酸ナトリウム、三リン酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、酢酸アンモニウム等を含むが、これらに限定されない。一部の実施形態においては、エンドキシフェンを可溶化するために共溶剤を使用することもできる。共溶剤の例は、エタノール、イソプロパノール、Tween20およびポリソルベート等の界面活性剤等を含むが、これらに限定されない。
【0087】
特定の好適な実施形態においては、本発明に係るエンドキシフェンを含有する組成物のpHは、約4.0から約8.0、好ましくは約5.0から約8.0、最も好ましくは約5.5から約7.5である。
【0088】
一部の実施形態においては、本発明は、エンドキシフェンまたはエンドキシフェン−脂質複合体を、哺乳動物の宿主に送達するための組成物および方法に関する。任意の適切な量のエンドキシフェンを複合体形成に使用することができる。適切な量のエンドキシフェンは、本発明の複合体に安定して取り込むことができるそれらの量である。
【0089】
一部の実施形態においては、本発明の組成物は、複合体が、望ましくは脂質または脂質の混合物を含有する、エンドキシフェンを有する脂質複合体を含む。複合体は、他の形態を除外することなく、例えば、ミセル、小胞またはエマルションの形態であることができる。本発明のミセルは、単量体、2量体、重合体または混合ミセルの形態であることができる。ミセルおよびエマルションを含む複合体は、主に、50nm〜20ミクロンのサイズの範囲内、好ましくは50nm〜5ミクロンのサイズの範囲内にある。複合体において、活性薬剤は、共有結合、疎水結合、静電結合、水素結合、または他の結合によって脂質に結合することができ、薬物が、脂質構造の内部に単に封入される場合にも、結合しているとみなされる。
【0090】
エンドキシフェン−脂質複合体は例えば、コレステロールもしくはコレステロール誘導体またはコレステロールとコレステロール誘導体の混合物を含有し得る。本発明において使用されるコレステロール誘導体は、ヘミコハク酸コレステリル、コハク酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、リノール酸コレステリル、エイコサペンタエン酸コレステリル、リノレン酸コレステリル、アラキドン酸コレステリル、パルミチン酸コレステリル、ステアリン酸コレステリル、ミリスチン酸コレステリル、コレステロールのポリエチレングリコール誘導体(コレステロール−PEG)、水溶性コレステロール(例えば、コレステロールメチル−β−シクロデキストリン)、コプロスタノール、コレスタノール、またはコレスタン、コール酸、コルチゾール、コルチコステロンもしくはヒドロコルチゾンならびに7−デヒドロコレステロールを含む。
【0091】
一部の好適な実施形態においては、組成物はまた、α−,β−,γ−トコフェロール、ビタミンE、カルシフェロール、ヘミコハク酸α−トコフェロール(THS)等のα−,β−,γ−トコフェロールの有機酸誘導体、コハク酸α−トコフェロールおよび/またはそれらの混合物も含む。
【0092】
他の一部の好適な実施形態において、本発明のエンドキシフェン−脂質複合体は、ステロールを含有する。本発明において使用されるステロールは、β−シトステロール、スチグマステロール、スチグマスタノール、ラノステロール、α−スピナステロール、ラソステロール、カンペステロールおよび/またはそれらの混合物を含む。
【0093】
また、本発明の組成物は、遊離脂肪酸および/または該脂肪酸の塩もしくはエステルを有するエンドキシフェン複合体も含む。好適な脂肪酸は、約CからC34、好ましくは約Cから約C24の炭素鎖長を有するものに及び、とりわけ、テトラ酸(C4:0)、ペンタン酸(C5:0)、ヘキサン酸(C6:0)、ヘプタン酸(C7:0)、オクタン酸(C8:0)、ノナン酸(C9:0)、デカン酸(C10:0)、ウンデカン酸(C11:0)、ドデカン酸(C12:0)、トリデカン酸(C13:0)、テトラデカン(ミリスチン)酸(C14:0)、ペンタデカン酸(C15:0)、ヘキサデカン(パルミチン)酸(C16:0)、ヘプタデカン酸(C17:0)、オクタデカン(ステアリン)酸(C18:0)、ノナデカン酸(C19:0)、エイコサン(アラキジン)酸(C2O:0)、ヘンエイコサン酸(C21:0)、ドコサン(ベヘン)酸(C22:0)、トリコサン酸(C23:0)、テトラコサン酸(C24:0)、10−ウンデセン酸(C11:1)、11−ドデセン酸(C12:1)、12−トリデセン酸(C13:1)、ミリストレイン酸(C14:1)、10−ペンタデセン酸(C15:1)、パルミトレイン酸(C16)、オレイン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2)、リノレン酸(C18:3)、エイコセン酸(C20)、エイコサジエン酸(C20:2)、エイコサトリエン酸(C20:3)、アラキドン酸(cis−5,8,11,14−エイコサテトラエン酸)、およびcis−5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸を含む。また、他の脂肪酸を組成物中に用いることもできる。そのようなものの例は、エタン(または酢)酸、プロパン(またはプロピオン)酸、ブタン(または酪)酸、ヘキサコサン(またはセロチン)酸、オクタコサン(またはモンタン)酸、トリアコンタン(またはメリシン)酸、ドトリアコンタン(またはラッセル)酸、テトラトリアコンタン(またはゲダ)酸、ペンタトリアコンタン(またはセロプラスチン)酸等の飽和脂肪酸、trans−2−ブテン(またはクロトン)酸等のモノエテン不飽和脂肪酸、cis−2−ブテン(またはイソクロトン)酸、2−ヘキセン(またはイソヒドロソルビン)酸、4−デカン(またはオブツケイ)酸、9−デカン(またはカプロレイン)酸、4−ドデセン(またはリンデン)酸、5−ドデセン(またはデンチセチン)酸、9−ドデセン(またはラウロレイン)酸、4−テトラデセン(またはツズ)酸、5−テトラデセン(またはフィゼテリン)酸、6−オクタデセン(またはペトロセレン)酸、trans−9−オクタデセン(またはエライジン)酸、trans−11−オクタデセン(またはバクセン)酸、9−エイコセン(またはガドレイン)酸、11−エイコセン(またはゴンド)酸、11−ドコセン(またはセトレン)酸、13−ドコセン(またはエルカ)酸、15−テトラコセン(またはネルボン)酸、17−ヘキサコセン(またはキシメン)酸、21−トリアコンテン(またはルメキン)酸等のモノエテン不飽和脂肪酸、2,4−ペンタジエン(またはβ−ビニルアクリル)酸、2,4−ヘキサジエン(またはソルビン)酸、2,4デカジエン(またはスチルリン)酸、2,4−ドデカジエン酸、9,12−ヘキサデカジエン酸、cis−9,cis−12−オクタデカジエン(またはα−リノール)酸、trans−9,trans−12−オクタデカジエン(またはリノールエライジン)酸、trans−10,trans−12−オクタデカジエン酸、11,14−エイコサジエン酸、13,16−ドコサジエン酸、17,20−ヘキサコサジエン酸等のジエン不飽和脂肪酸、6,10,14−ヘキサデカトリエン(またはヒラゴニン)酸、7,10,13−ヘキサデカトリエン酸、cis−6,cis−9−cis−12−オクタデカトリエン(またはγ−リノール)酸、trans−8,trans−10−trans−12−オクタデカトリエン(またはβ−カレンジン)酸、cis−8,trans−10−cis−12−オクタデカトリエン酸、cis−9,cis−12−cis−15−オクタデカトリエン(またはα−リノレン)酸、trans−9,trans−12−trans−15−オクタデカトリエン(またはα−リノレンエライジン)酸、cis−9,trans−11−trans−13−オクタデカトリエン(またはα−エレオステアリン)酸、trans−9,trans−11−trans−13−オクタデカトリエン(またはβ−エレオステアリン)酸、cis−9,trans−11−cis−13−オクタデカトリエン(またはプニカ)酸、5,8,11−エイコサトリエン酸、8,11,14−エイコサトリエン酸等のトリエン不飽和脂肪酸、4,8,11,14−ヘキサデカテトラエン酸、6,9,12,15−ヘキサデカテトラエン酸、4,8,12,15−オクタデカテトラエン(またはモロクチン)酸、6,9,12,15−オクタデカテトラエン酸、9,11,13,15−オクタデカテトラエン(またはα−またはβ−パリナリン)酸、9,12,15,18−オクタデカテトラエン酸、4,8,12,16−エイコサテトラエン酸、6,10,14,18−エイコサテトラエン酸、4,7,10,13−ドコサテトラエン酸、7,10,13,16−ドコサテトラエン酸、8,12,16,19−ドコサテトラエン酸等のテトラエン不飽和脂肪酸、4,8,12,15,18−エイコサペンタエン(またはティムノドン)酸、4,7,10,13,16−ドコサペンタエン酸、4,8,12,15,19−ドコサペンタエン(またはクルパノドン)酸、7,10,13,16,19−ドコサペンタエン、4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸、4,8,12,15,18,21−テトラコサヘキサエン(またはニシン)酸等のペンタおよびヘキサエン不飽和脂肪酸、3−メチルブタン(またはイソ吉草)酸、8−メチルドデカン酸、10−メチルウンデカン(またはイソラウリン)酸、11−メチルドデカン(またはイソウンデシル)酸、12−メチルトリデカン(またはイソミリスチン)酸、13−メチルテトラデカン(またはイソペンタデシル)酸、14−メチルペンタデカン(またはイソパルミチン)酸、15−メチルヘキサデカン、10−メチルヘプタデカン酸,16−メチルヘプタデカン(またはイソステアリン)酸、18−メチルノナデカン(またはイソアラキジン)酸、20−メチルヘンエイコサン(またはイソベヘン)酸、22−メチルトリコサン(またはイソリグノセリン)酸、24−メチルペンタコサン(またはイソセロチン)酸、26−メチルヘプタコサン(またはイソモナトニック)酸、2,4,6−トリメチルオクタコサン(またはマイコセランまたはマイコセロシン)酸、2−メチル−cis−2−ブテン(アンゲリカ)酸、2−メチル−trans−2−ブテン(またはチグリン)酸、4−メチル−3−ペンテン(またはピロテレブ)酸の分枝鎖脂肪酸等を含む。
【0094】
一部の好適な実施形態においては、エンドキシフェン−脂質複合体は、リン脂質を含有する。任意の適切なリン脂質またはリン脂質の混合物を使用することができる。例えば、リン脂質は、自然源から得るか、化学的に合成することができる。適切なリン脂質は、別々にまたは組み合わせで使用される、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジン酸(PA)、スフィンゴミエリン等を含むが、これらに限定されない。ホスファチジルグリセロールは、短鎖または長鎖を有し、飽和または不飽和であり、例えばジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジアラキドノイルホスファチジルグリセロール、短鎖ホスファチジルグリセロール(C−C8)、およびそれらの混合物等である。ホスファチジルコリンの例は、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジアラキドノイルホスファチジルコリン、卵ホスファチジルコリン、大豆ホスファチジルコリンまたは水素化大豆ホスファチジルコリンを含み、それらの混合物を使用してもよい。
【0095】
一態様によれば、本発明は、エンドキシフェンならびにモノ、ジおよびトリグリセリドの誘導体を含む組成物を提供する。グリセリドの例は、1−オレオイル−グリセロール(モノオレイン)および1,2−ジオクタノイル−sn−グリセロールを含む。
【0096】
本発明の別の態様は、ホスファチジルエタノールアミン、好ましくはジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルチオエタノール、N−ビオチニルホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルエチレングリコールを含むがこれらに限定されない、官能性リン脂質を有するエンドキシフェンの複合体を形成する方法を提供する。
【0097】
本発明の別の態様は、炭水化物ベースの脂質を有するエンドキシフェンの複合体を形成する方法を提供する。炭水化物ベースの脂質の例は、ガラクト脂質、マンノ脂質、ガラクトレシチン等を含むが、これらに限定されない。
【0098】
他の好適な実施形態において、エンドキシフェン−脂質複合体は、ステロールを含む。本発明において使用されるステロールは、β−シトステロール、スチグマステロール、スチグマスタノール、ラノステロール、α−スピナステロール,ラソステロール、カンペステロールおよび/またはそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0099】
本発明の別の態様は、グーグリピッドおよび任意の適切なリン脂質を有するエンドキシフェンの複合体を形成する方法を提供する。グーグリピッド、またはグーグルは、ムクルミルラの木に由来する天然物質である。ムクルミルラは、粘着性樹脂を生成し、これが加工されてグーグリピッドが得られる。この抽出は、関節炎および肥満症を治療するために、アーユルヴェーダ(Aryuvedic)医学において何千年もの間使用されている。グーグリピッドは、概して少なくとも2.5%の量で存在している、ZおよびEグーグルステロン等のステロール化合物の源である(10)。ZおよびEグーグルステロンは、化学的に合成することができ、したがって、これらのステロンの純粋形態を有することが必要とされる製剤において使用することができる。例えば、2006年11月6日に出願された米国特許出願第60/856,952号、および2007年11月6日に出願されたPCT/US07/83832号を参照し、どちらも参照により本願明細書に組み込まれる。
【0100】
本発明のさらに別の態様は、ペグ化リン脂質等のリン脂質誘導体を有するエンドキシフェンの複合体を形成する方法を提供する。本発明において使用されるペグ化脂質の例は、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジオレオイルホスファチジルグリセロール等のポリエチレングリコール(ペグ化、PEG)誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0101】
他の態様において、エンドキシフェンおよびポリエチレングリコール(PEG)ならびに1つ以上の脂質を含む組成物を提供する。
【0102】
さらに他の態様によれば、本発明は、1つ以上の脂質を有するエンドキシフェン複合体を含む組成物を提供する。例として、エンドキシフェン、コレステロールまたはコレステロール誘導体および1つ以上のリン脂質を含む組成物が挙げられるが、これらに限定されない。組成物の他の例は、エンドキシフェン、β−シトステロール、および1つ以上のリン脂質を含む。一部の好適な実施形態においては、本発明の組成物は、エンドキシフェン、および水素化大豆ホスファチジルコリンまたは大豆ホスファチジルコリンを含む。
【0103】
「ポリエチレングリコール(PEG)」という用語は、低級アルキレンオキサイド、特に、高分子の少なくとも1端にエステル化可能なヒドロキシル基を有するエチレンオキサイド(ポリエチレングリコール)の高分子、ならびにエステル化可能なカルボキシ基を有するそのような高分子の誘導体を含む。200〜20,000の範囲の平均分子量のポリエチレングリコールが好ましく、500〜2000の範囲の平均分子量を有するものが、特に好ましい。
【0104】
本発明の別の態様は、炭水化物ベースの脂質を有するエンドキシフェンの複合体を形成する方法を提供する。炭水化物ベースの脂質の例は、ガラクト脂質、マンノ脂質、ガラクトレシチン等を含むが、これらに限定されない。
【0105】
本発明の組成物の一部の実施形態においては、エンドキシフェン、好ましくは1mg/mLから約20mg/mLまたは1mg/mLから10mg/mL等の約0.5mg/mLから約25mg/mL、より好ましくは1mg/mLから5mg/mLの濃度の水中のエンドキシフェン、を含む複合体が形成される。
【0106】
一部の実施形態においては、本発明の組成物は、総脂質の約2.5%から約90%、好ましくは、総脂質の重量の約2.5から約50%、またはより好ましくは、総脂質の重量の約10%から約50%を含有する。
【0107】
ある実施形態において、本発明の組成物は、好ましくは、1:1から1:20モル比または1:1から1:30モル比または1:1から1:40モル比または1:1から1:50モル比、1:1から1:60モル比、1:1から1:70モル比、1:1から1:80モル比、1:90モル比等の1:1から1:100のモル比で、エンドキシフェンおよび脂質を含有する。
【0108】
本明細書に挙げた比率、例えば、組成物中の成分のモル比は、一例として提供され、本発明を正確な増分比、例えば、組成物中の成分の整数比に制限するものではない。例えば、約1:10から1:90の比率の範囲は、1:11、1:25、1:89等のみならず、約1:10から1:90(例えば、1:53.637)での任意の比率またはその間の任意の比率を含むが、これらに制限されない。
【0109】
ある実施形態において、本発明の組成物は、好ましくは、エンドキシフェンならびに水素化大豆ホスファチジルコリン、または大豆ホスファチジルコリン、およびコレステロールもしくはコレステロール誘導体を含有する。そのような組成物は、好ましくは約1:1から1:5モル比で、より好ましくは約1:1モル比から約1:2モル比で、エンドキシフェンおよびコレステロールまたはコレステロール誘導体を含む。
【0110】
本発明のさらに別の態様は、ペグ化リン脂質等のリン脂質誘導体を有するエンドキシフェンの複合体を形成することである。例としては、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジオレオイルホスファチジルグリセロール等のポリエチレングリコール(PEG)誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
一部の好適な実施形態においては、水素化大豆ホスファチジルコリンまたはホスファチジルコリンを含有する組成物中の、エンドキシフェンと水素化大豆ホスファチジルコリンまたは大豆ホスファチジルコリンとのモル比は、約1:10から1:90、例えば、約1:10から1:80または1:10から1:70または1:10から1:60または1:10から1:50または1:10から1:40および1:10から1:30である。特に好適な実施形態において、エンドキフェンと水素化大豆ホスファチジルコリンまたは大豆ホスファチジルコリンとのモル比は、1:10から1:60である。
【0112】
一部の実施形態においては、本発明の組成物は、好ましくは、1:1から1:20比または1:1から1:30比または1:1から1:40比または1:1から1:50比、または1:1から1:60比、または1:1から1:70比、および1:1から1:80比、あるいは1:1から1:90比等の1:1から1:100比の重量比を有する、エンドキシフェンおよび総脂質を含有する。
【0113】
一部の実施形態においては、本発明の方法は、例えば水等の水溶液中で、エンドキシフェンおよび脂質を一緒に可溶化するまたは懸濁するステップを含む。エンドキシフェン−脂質複合体溶液は、複合体のサイズ分布を制御するために、適切なフィルタを用いて濾過することができる。
【0114】
一部の実施形態においては、本方法は、水中で脂質を一緒に混合し、次いで、エンドキシフェンを添加するステップを含み得る。エンドキシフェン−脂質複合体溶液は、複合体のサイズ分布を制御するために、適切なフィルタを用いて濾過することができる。
【0115】
一部の実施形態においては、本方法はまた、クロロホルムもしくはエタノールまたは任意の他の医薬的に許容される溶剤等の有機溶剤中で、エンドキシフェンおよび脂質を混合し、溶剤を蒸発させて、脂質相または脂質薄膜を形成するステップも含む。次いで、脂質相を水または水溶液で水和させる。水溶液の例は、0.9%塩化ナトリウム、デキストロース、スクロース等の糖を含有する溶液を含むが、これらに限定されない。水和した溶液は、複合体のサイズ分布を制御するために、適切なフィルタを用いて濾過することができる。
【0116】
一部の実施形態においては、本方法は、有機溶剤中で脂質を混合し、溶剤を蒸発させて、脂質相または脂質薄膜を形成するステップを含む。次いで、脂質相を、エンドキシフェンを含有する水溶液で水和させる。水溶液は、エンドキシフェンに加えて、塩化ナトリウムまたはデキストロース、スクロース等の糖をさらに含有し得る。水和した溶液は、複合体のサイズ分布を制御するために、適切なフィルタを用いて濾過することができる。
【0117】
他の実施形態においては、本発明の方法は、結果として生じる本発明の組成物が、エンドキシフェン、および1つ以上の脂質を含有するように、任意の順序で、かつ任意の適切な溶剤中で、エンドキシフェンと1つ以上の脂質を混合するステップを含む。
【0118】
一部の実施形態においては、本発明の調製方法は、30〜100℃、好ましくは30〜80℃、より好ましくは30〜60℃の範囲に及ぶ温度で、エンドキシフェン、および脂質を含む組成物を加熱するステップを含む。
【0119】
一部の実施形態においては、本発明の組成物のpHは、約3から約11の範囲に及ぶが、pH3.5から約8が好ましく、pH4.0からpH7.5が特に好ましい。特定のpHを有する水溶液は、適した緩衝液を含む水から調製することができる。好適な緩衝液は、リン酸一ナトリウムおよび第二リン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウムの混合物を含むが、これらに限定されない。本発明において使用される他の緩衝液は、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、酢酸アンモニウム、クエン酸ナトリウム、トリス(ヒドロキシ−メチル)アミノエタン、安息香酸ナトリウム等を含む。
【0120】
エンドキシフェンおよび水素化大豆ホスファチジルコリンまたは大豆ホスファチジルコリンを含有する組成物中の、エンドキシフェンと水素化大豆ホスファチジルコリンまたは大豆ホスファチジルコリンとのモル比は、1:10から1:80または1:10から1:80または1:10から1:60または1:10から1:50または1:10から1:40および1:10から1:30等の1:10から1:90である。好適な実施形態においては、エンドキシフェンと水素化大豆ホスファチジルコリンまたは大豆ホスファチジルコリンとのモル比は、1:5から1:60である。
【0121】
上記のように、組成物は、濾過して、濾液から所望のサイズ範囲の複合体粒径を得ることができる。本発明において使用されるフィルタは、濾液から所望のサイズ範囲の複合体を得るために使用することができるものを含む。例えば、複合体は、形成されて、その後、各粒子が約5ミクロン未満の直径を有する複合体を得るために、5ミクロンフィルタを用いて濾過することができる。あるいは、1μm、500nm、200nm、100nmまたは他のフィルタを、約1μm、500nm、200nm、100nmの直径または任意の適切なサイズ範囲をそれぞれ有する複合体を得るために、使用することができる。
【0122】
所望される場合、エンドキシフェン−脂質複合体は、例えば、エバポレーションまたは凍結乾燥によって乾燥することができる。本発明のある実施形態において、エンドキシフェン−脂質複合体は、糖等の1つ以上の凍結保護物質とともに凍結乾燥することができる。好適な実施形態においては、糖は、トレハロース、マルトース、ラクトース、スクロース、グルコース、およびデキストランを含むが、これらに限定されない。特に好適な実施形態において、トレハロースおよび/またはスクロースが使用される。凍結乾燥は、減圧下で行われ、エンドキシフェン脂質調製の事前の凍結の有無にかかわらずに行うことができる。所望される場合、複合体は、水、生理食塩水、デキストロースおよび緩衝液を含む、任意の所望の溶剤中に懸濁することができる。
【0123】
本発明の組成物を用いて使用される医薬品調製物は、錠剤、カプセル剤、丸剤、糖衣錠、坐剤、溶剤、懸濁剤、エマルション、軟膏剤、およびゲル剤を含むが、これらに限定されない。経口投与のための、エンドキシフェンまたはエンドキシフェン脂質複合体の好適な形態は、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、粉剤、シロップ剤、水溶液、懸濁剤等を含む。局所適用および坐剤のための、エンドキシフェンまたはエンドキシフェン−脂質複合体の好適な形態は、ゲル剤、油、およびエマルションを含み、例えば、ポリエチレングリコール、ある種の脂肪、およびエステル、高含量の多価不飽和脂肪酸ならびにそれらの誘導体等の適切な水溶性または不水溶性賦形剤の添加によって形成される。誘導体は、モノ、ジおよびトリグリセリドならびにそれらの脂肪族エステル(例えば、魚油、植物油等)、またはこれらの物質の混合物を含む。適切な賦形剤は、薬物複合体が、治療用途を可能にするよう十分安定したものである。
【0124】
所望される場合、エンドキシフェンまたはエンドキシフェン−脂質複合体を含有する組成物は、それを胃酸から保護するために、腸溶性カプセル内に被包することができる。「腸内」という用語は、小腸を指し、および腸溶被覆は、それが小腸に到達する前の薬物療法の放出を防ぐ。腸溶被覆の多くは、酸性pHで安定であるが、より高いpHで急速に分解する表面を存在させることによって機能する。エンドキシフェンまたはエンドキシフェン−脂質複合体を含有する組成物で充填されたカプセルの腸溶被覆は、当技術分野において既知の方法で行うことができる。
【0125】
本発明のエンドキシフェン−脂質複合体は、様々なサイズであることができ、または実質的に均一なサイズであることができる。例えば、複合体は、約1mm未満の平均直径を有することができ、ミクロンまたはサブミクロンの範囲にある。一部の好適な実施形態においては、複合体は、0.2μm未満または0.1μm未満等の約5μm未満の平均直径を有する。
【0126】
また、本発明で概説される技術は、任意の他の水不溶性薬物のために使用され得る。本発明の方法および組成物は、2006年10月10日に出願された米国特許出願第60/850,446号、2007年10月10日に出願されたPCT出願第PCT/US07/80984号、2006年11月6日に出願された米国特許出願第60/856,952号、2007年11月6日に出願されたPCT出願第PCT/US07/83832号に開示される方法および組成物と併せて使用され、これらの全ては、参照することによりそれら全体が本願明細書に組み込まれる。
【0127】
本発明の組成物は、乳癌および乳房関連疾患を治療するために用いることができる。例えば、本発明の組成物は、良性乳房疾患と診断された患者に投与され得る。本明細書で使用される「良性乳房疾患」という用語は、乳房組織内の様々な非悪性異常を指す。異常は、本来、増殖性または非増殖性であり得る。本発明の組成物によって治療可能な例示的な良性乳房疾患は、腺症、嚢胞、管拡張症、線維腺腫、線維症、過形成、化生および他の線維嚢胞性変化を含む。それらの有病率に起因して「変化」または「状態」と称されるこれらの各疾患は、明確な組織学的および臨床的特徴を有する。
【0128】
「腺症」は、胸の全身性腺疾患を指す。これは、典型的に、通常より多くの腺を含有する胸小葉の拡大を伴う。「硬化性腺症」または「線維性腺症」において、拡大した小葉は、瘢痕様の線維組織によって変形する。
【0129】
「嚢胞」は、液体または半固体物質が充填された異常嚢である。胸内の嚢胞は、小葉構造から発生する胸上皮細胞に覆われている。それらは、胸腺内部の過剰液体として始まるが、周囲の乳房組織に伸展する割合までに成長し、痛みを生じさせ得る。「線維嚢胞性」は、顕著な量の線維性結合組織によって取り囲まれる、またはその内部にある嚢胞性病変である。
【0130】
「管拡張症」は、脂質および細胞残屑による乳管の拡張を指す。管の破裂は、顆粒球および血漿細胞による浸潤を誘発する。
【0131】
「線維腺腫」は、腺上皮に由来し、増殖性線維芽細胞および結合組織の顕著な間質を含有する良性腫瘍を指す。
【0132】
「線維症」は、単に、胸の線維組織の突出物を指す。
【0133】
「過形成」は、腫瘍形成なく、細胞の幾つかの層が基底膜の内側を覆う細胞の過成長を指す。過形成は、乳房組織の大部分を増大させる。「上皮過形成」では、乳管および小葉の内側を覆う細胞が関与しており、用語「管過形成」および「小葉過形成」につながる。組織学的決定に基づいて、過形成は、「通常」または「非定型」と特徴付けられ得る。
【0134】
「化生」は、1つの種類の分化した組織が、別の種類の分化した組織に形質転換する現象を指す。化生は、環境変化に起因することが多く、細胞がより変化に耐えることを可能にする。
【0135】
本発明の組成物は、任意の剤形で、および活性化合物エンドキシフェンを、インビボの乳房エストロゲン受容体に送達する任意の系を介して投与され得る。一部の実施形態においては、本発明の組成物は、例えば、角質層、表皮および真皮層を介して、薬物を患者の皮膚の表面から微小循環に送達する等の、「経皮投与」によって送達される。これは、概して、濃度勾配を下回る拡散によって達成される。拡散は、細胞内浸透(細胞を通じて)、細胞間浸透(細胞間)、経付属器的浸透(毛包、汗腺、および皮脂腺を通じて)、または上記の任意の組み合わせを介して生じ得る。
【0136】
本発明のエンドキシフェン組成物の経皮投与は、それが、全身性の薬物曝露および体全体にわたってエストロゲン受容体を非特異的に活性化させることによる危険性を減少させるために、有利な場合がある。これは、エンドキシフェンの局所適用では、主として局所組織に吸収されるためである。エンドキシフェンを含有する本発明の組成物が、乳房に経皮的に適用される場合、その中の多くのエストロゲン受容体に恐らくは起因して、高い濃度が乳房組織内に蓄積するであろう。エンドキシフェンの組成物は、あるゆる皮膚表面、好ましくは、一方または両方の乳房に適用され得る。投与される日用量は、エンドキシフェンの吸収係数、所望される乳房組織濃度、および超過すべきではない血漿濃度に基づいて初回に推定することができる。初回量は、個人応答に応じて、各患者で最適化され得る。
【0137】
経皮投与は、様々な方法で達成することができる。例えば、(i)ある量の製剤を、皮膚の特定の領域に適用する場合に、軟膏剤、エマルション、ゲル、ローション、クリーム等を形成するために、エンドキシフェンの組成物を、適切な医薬的担体、および任意に浸透促進剤と混合する、(ii)当技術分野において既知の技術に従って、エンドキシフェンの組成物を、パッチまたは経皮送達系に取り込む等である。
【0138】
経皮薬物投与の有効性は、薬物濃度、適用の表面積、適用の持続時間、皮膚温度、皮膚の水分量、以前の照射、薬物の物理化学的特性、および製剤と皮膚との間の薬物の分配等の多くの要因に依存する。一部の実施形態においては、例えば、経皮的有効性を増強させるために、組成物または複合体は、その物理化学的特性を可逆的に変化させて角質層の抵抗性を減少させることによって、角質層内の水分量を変化させることによって、共溶剤の役割を果たすことによって、または細胞内空間における脂質もしくはタンパク質の組織化を変化させることによって、経皮吸収を向上させる浸透促進剤を含む。そのような促進剤は、アルコール、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、脂肪酸および脂肪アルコールならびにそれらの誘導体、ヒドロキシル酸、ピロリドン、尿素、植物油、精油、ならびにそれらの混合物等の有機溶剤を含むが、これらに限定されない。化学的促進剤に加えて、物理的方法が経皮吸収を増強させることができる。例えば、密封包帯は、皮膚の水分量増加を誘発する。他の物理的方法は、イオントフォレーシスおよびソノフォレーシスを含み、これは、それらのサイズおよびイオン特徴のために吸収されにくい薬物の吸収を増強させるために、それぞれ電場および高周波数超音波を使用する(12〜13)。医薬分野に携わる者は、経皮送達のための正しい有効な投与量を実現する種々の要因および方法を容易に操作することができる。
【0139】
経皮投与のために、エンドキシフェンを含有する本発明の製剤または組成物は、軟膏剤、エマルション(ローション)、クリーム、ゲル、粉末、油または同様の製剤の形態で送達され得る。一部の実施形態においては、製剤は、大豆油,からし油、扁桃油、オリーブ油、ラッカセイ油,ピーナッツ油、杏仁油、ラッカセイ油、ヒマシ油、菜種油等の植物油、動物性脂肪、DMSO、ラノリンリポイド、リン脂質、パラフィン類等の炭化水素、ワセリン、ワックス、レシチン,界面活性剤乳化剤、カロチン、アルコール、グリセロール、グリセロールエーテル、グリセリン、グリコール、グリコールエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、不揮発性脂肪アルコール、酸、エステル、揮発性アルコール化合物、タルク、尿素、セルロース誘導体、着色剤、抗酸化剤および保存料等を含むがこれらに限定されない、賦形剤添加物を含む。
【0140】
一部の実施形態においては、エンドキシフェンを含有する本発明の製剤または組成物は、経皮パッチとして送達され得る。パッチは、(i)溶液不浸透性裏当て箔、(ii)腔を有する層状要素、(iii)微多孔または半透膜、(iv)自己粘着層、および(v)任意に、除去可能な裏当て薄膜を含み得る。腔を有する層状要素は、裏当て箔および膜によって形成され得る。代替としてパッチは、(i)溶液不浸透性裏当て箔、(ii)リザーバとしての開放気孔発泡体、閉鎖気孔発泡体、組織様層または繊維ウェブ様層、(iii)粘着層、および(iv)任意に、除去可能な裏当て薄膜を含み得る。
【0141】
一部の好適な実施形態においては、エンドキシフェンを含有する本発明の組成物は、含水アルコールゲルに製剤化され、エンドキシフェンの量は、ゲル100グラム当たり0.001001から1.0グラムまで様々であり得、最も好ましくはゲル100グラム当たり0.01から0.20グラムの範囲内であり得る。
【0142】
他の実施形態においては、本発明の組成物は、浸透促進剤として1つ以上の脂肪酸エステルを含む。脂肪酸エステル浸透促進剤の非常に好ましい例の1つは、ミリスチン酸イソプロピルである。ミリスチン酸イソプロピルをゲル中で使用する場合、量は、例えば、ゲル100グラム当たり0.11から5.0グラム、好ましくはゲル100グラム当たり0.5から2.0グラムの範囲であり得る。
【0143】
別の好適な実施形態において、エンドキシフェンを含有する本発明の組成物はまた、アルコールビヒクル等の1つ以上の非水性ビヒクルを含有し得る。非水性ビヒクルの例は、酢酸エチル、エタノール、およびイソプロパノール、好ましくはエタノールおよびイソプロパノールを含む。これらの非水性ビヒクルは、使用される活性薬剤エンドキシフェンおよび任意の他の浸透促進剤の両方を溶解するために有用であり得る。また、それらは、好ましくは、皮膚と接触すると急速に蒸発できるように、低沸点を有し、好ましくは、大気圧で100℃未満である。特に、エタノールは、皮膚との接触後に急速に蒸発させることによって、エンドキシフェンの経皮吸収に効果的に寄与し得る。ゲル製剤中の絶対的非水性ビヒクルの量は、35重量%から99重量%、好ましくは50%から85%、より好ましくは60%から75%の範囲である。
【0144】
別の好適な実施形態において、本発明の組成物または製剤は、親水性分子の可溶化を可能にし、皮膚の加湿を促進する水性ビヒクルを含む。また、水性ビヒクルは、pHを調節することもできる。水性ビヒクルは、リン酸緩衝溶液(例えば、第二リン酸ナトリウムまたはリン酸一ナトリウム)を含むリン酸緩衝溶液、クエン酸緩衝溶液(例えば、クエン酸ナトリウムまたはクエン酸カリウム)および精製水を含む、アルカリ化および塩基性緩衝溶液を含む。水性ビヒクルの量は、好ましく、医薬的組成物の0.1重量%から65重量%、より好ましくは15%から50%、さらにより好ましくは25%から40%の範囲である。
【0145】
他の実施形態においては、本発明の組成物は、組成物または製剤の粘性を増大させるために、または可溶化剤として機能するために、1つ以上のゲル化剤を含む。これは、ゲル化剤の性質に応じて、製剤の0.1重量%から20重量%、より好ましくは0.5%から5%を構成し得る。ゲル化剤は、カルボマー、セルロース誘導体、ポロキサマーおよびポロキサミンであり得る。好適なゲル化剤は、キトサン、デキストラン、ペクチン、天然ガムおよびエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロース誘導体である。最も好適なゲル化剤は、ヒドロキシプロピルセルロースである。
【0146】
本発明の組成物は、上記のようなゲル化剤、特に事前に中和されていないアクリルポリマーを含んでもよく、また中和剤も含み得る。中和剤/ゲル化剤の比率は、10:1から0.1:1、好ましくは7:1から0.5:1、より好ましくは4:1から1:1の間で異なる。ポリマーの存在下における中和剤は、ビヒクルに可溶である塩を形成すべきである。また、中和剤は、電荷の中和およびポリマー塩の形成時に、ポリマー鎖の最適な膨張を可能にすべきである。中和剤は、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アミノメチルプロパノール、トロラミン、およびトロメタミンを含む。当業者は、組成物または製剤において使用するゲル化剤の種類に従って、中和剤を選択するであろう。しかしながら、セルロース誘導体をゲル化剤として使用する時は、中和剤は必要とされない。
【0147】
一部の実施形態においては、本発明の組成物は、他の疾患を治療するために用いられ、薬物療法は、喘息治療薬、抗不整脈薬、抗真菌薬、降圧剤、抗癌剤、抗生物質、抗糖尿病薬、抗ヒスタミン薬、抗寄生虫薬、抗ウイルス薬,強心配糖体、ホルモン、免疫療法、抗低血圧薬、ステロイド、鎮静剤および鎮痛薬、精神安定薬、ワクチン、ならびに細胞表面受容体遮断薬から成る群の、誘導体化により、親油性の化合物または親油性にされた化合物から選択される。
【0148】
下記のリストおよびその他本明細書に記載したものを含む、本明細書に記載した公報、特許出願、および特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が、それぞれ参照によって個別かつ明確に組み込まれることが示され、本願明細書に記述されるのと同様に、参照することにより組み込まれる。
【0149】
(特に以下の特許請求の範囲との関連で)本発明について記載する文脈における、「a」、および「an」、および「the」という用語、および類似の指示対象の使用は、本明細書において別途指示されるか、文脈により明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を対象とすると解釈されるべきである。「〜を含む(含有する)」、「〜を含む」、「〜を有する」、および「〜を含有する(含む)」という用語は、別途指摘のない限り、制約のない用語(つまり、「〜を含むが、それらに限定されない」を意味する)として、解釈されるものとする。本明細書において提供される、あらゆる例、または例を示す言葉(例えば「〜等」)の使用は、単に、本発明の理解をより容易にすることが意図され、別途言及のない限り、本発明の範囲に制限を課すことはない。本明細書における、いかなる言葉遣いも、いずれかの非言及要素を、本発明の実施に必須であることを示していると、解釈されるべきではない。
【0150】
本発明を実施するための、発明者らに知られる最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態が記載される。これらの好ましい実施形態の変形物は、そのような変形物を適切に利用する当業者には明白であり、発明者らは、本発明が、本明細書に具体的に記載されたのとは別の方法で、実施することを意図する。したがって、本発明は、適用法令により許可される、本明細書に添付される特許請求の範囲に示される発明の全ての変形物および同等物を含む。さらに、上記要素の、それらの全ての可能性のある変形物の形態での、あらゆる組み合わせが、本明細書において別途指示されるか、文脈により明らかに矛盾しない限り、本発明により包含される。
【0151】
実施例
以下の実施例は、本発明をさらに例証するものであって、いかようにもその範囲を限定すると解釈されない。
【実施例1】
【0152】
化合物3の合成
【化7】

【0153】
4−ブロモフェノールブルー(、1kg)および3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(、1.5L)を、丸底フラスコ内で一緒に混合し、0℃まで冷却した。硫酸(1mL)を室温より低い温度に維持しながら滴下した。溶液を室温で1時間撹拌した。反応溶液を、ヘキサンで希釈し、水(1L)と、続いて5%重炭酸ナトリウム溶液(1L)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過して、50〜55℃で真空において蒸発させ、油(1.55Kg)を得た。ヘキサン(300mL)を油に添加し、摩砕して、白色固体を得た。懸濁液は、濾過して、冷ヘキサン(100mL)で洗浄し、乾燥させる前に、0℃まで冷却して、30分間撹拌した。収量1.32Kg。
【実施例2】
【0154】
化合物5の合成
【化8】

【0155】
削り屑状マグネシウム(115g)を、無水テトラヒドロフラン(1L)を含有する10Lの4つ口丸底フラスコに添加した。混合物を55℃まで加熱した。ヨウ素チップ(約5)と、続いて臭化エチル(5mL)を1つのロット内に添加した。化合物(1.1kg)をTHF(2L)中に溶解した。200mLのこの溶液を、Mg−THF懸濁液中に1度に添加した。反応が30分後に始まり、還流を開始した。化合物の残留溶液は、1.5時間にわたって還流温度を維持しながら滴下した。反応混合物は、2時間さらに還流し、室温まで冷却した。THF(1.5L)中(2−クロロエトキシフェニル)フェニルブタノン(、870g)は、30〜35℃の温度を維持しながら1時間にわたって滴下した。反応混合物は、4時間さらに還流し、室温まで冷却した。反応混合物を氷冷の50%塩酸(3L)に注いだ。有機層を分離し、水層をTHF(3×500mL)で抽出した。有機層を組み合わせ、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過して濃縮し、油としてのを得た。これはさらに精製することなく、次のステップに使用した。収量−1.57kg。
【実施例3】
【0156】
化合物6の合成
【化9】

【0157】
化合物(、1.57kg)をメタノール(6L)中に溶解し、濃塩酸(1.57kg)を添加した。溶液を5時間還流させた。メタノールを真空で除去し、ジクロロメタン(5L)を添加した。有機層を分離した。水層をジクロロメタン(2×500mL)で抽出した。有機層を組み合わせ、水(2L)、5%NaHCO3水溶液(2L)、水(2L)で洗浄して、硫酸ナトリウムで乾燥させた。木炭を添加して、濾過した。溶剤を減圧下で除去し、油(1.38kg)を得た。油は、激しく撹拌しながらヘキサン(5L)で摩砕し、固形生成物としてを得、これを濾過して乾燥させた。収量1.07kg。
【実施例4】
【0158】
化合物Iの合成
【化10】

【0159】
イソプロパノール(500mL)中の化合物6(50g)の溶液に、モノメチルアミン(300mL)を添加し、70〜75℃の温度を維持しながら24時間加熱した。反応の完了は、TLC(トルエン:トリエチルアミン、7:3)によってモニターした。溶剤を真空で除去した。水(500mL)を残留物に添加し、ジイソプロピルエーテル(DIPE、500mL)で抽出した。有機層を分離し、水層をDIPE(200mL)で逆抽出した。有機層を組み合わせて、水(500mL)、5%重炭酸ナトリウム(500mL)水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させて、濾過した。溶剤を真空で除去し、粘着性残留物を得た。酢酸エチル(50mL)を添加し、残留物を完全に溶解するように加熱した。溶液を室温まで冷却し、ヘキサン(50mL)を添加して、12時間撹拌した。固体は、濾過して、冷酢酸エチル−ヘキサン(1:1、10mL)混合物で洗浄した。生成物Iは、高真空下で一晩乾燥させた。収量25g。
【実施例5】
【0160】
エンドキシフェン溶液
エンドキシフェン溶液(1mg/mL)は、0.2%氷酢酸(10mL)中でエンドキシフェン(10.3mg)を可溶化することによって調製した。溶液のpH(約5.75)は、1N水酸化ナトリウム(300μL)で調整した。
【実施例6】
【0161】
エンドキシフェン溶液
エンドキシフェン溶液(5mg/mL)は、2%氷酢酸(8.6mL)中でエンドキシフェン(100mg)を可溶化することによって調製した。溶液は、5%デキストロース(10.97mL)で希釈した。溶液のpH(約5.56)は、5N水酸化ナトリウム(430μL)で調整した。
【実施例7】
【0162】
エンドキシフェン複合体
エンドキシフェン、硫酸コレステリル、および大豆レシチンの懸濁液を、水中で成分を一緒に混合し、例えば、高圧ホモジナイザーを使用して、均質化することによって生成した。結果として生じる懸濁液は、0.2μmフィルタを用いて濾過し、次いで、7.5%スクロース溶液と混合し、バイアルまたはバルク中で凍結乾燥することができる。結果として生じる複合体の粒径は、標準的な手順を使用して、例えば、Nicomp粒子測定器380を使用して決定する。
【実施例8】
【0163】
エンドキシフェン複合体
エンドキシフェンおよび大豆レシチンの懸濁液を、水中で成分を一緒に混合し、例えば、高圧ホモジナイザーを使用して、均質化することによって生成した。結果として生じる懸濁液は、0.2μmフィルタを用いて濾過し、次いで7.5%スクロース溶液と混合し、バイアルまたはバルク中で凍結乾燥することができる。粒径は、標準的な手順を使用して、例えば、Nicomp粒子測定器380を使用して決定する。
【実施例9】
【0164】
毒性試験
エンドキシフェンは、実施例6に従って製剤化し、雄性Balb/cマウスにおいて毒性を試験した。100mg/kgまたは50mg/kgでの単回試験量を、マウスに静脈内投与した。全てのマウスは100mg/kg用量レベルで死亡したのに対して、全ての動物は50mg/kg用量レベルで生存し、有意な体重減少はなかった。また、マウスは、エンドキシフェンを含まないビヒクル対照を用いた対照群においても生存した。反復投与毒性試験を、75mg/kgの蓄積用量で、25mg/kgの用量を3日間継続的に投与して行った。この群の全ての動物が生存した。結果は、合計数あたりの生存マウス数として、以下の表に報告する。
【表1】

【実施例10】
【0165】
エンドキシフェンは、様々な腫瘍細胞に対して抗増殖活性を示す
エンドキシフェンを、非小細胞肺癌、乳癌、前立腺癌、メラノーマ癌、卵巣癌、CNS癌、腎癌および大腸癌からの種々の癌細胞株に対する抗増殖活性について試験した。細胞は、エンドキシフェン(10nMから10μM)と共に数日間(3〜7)インキュベートし、増殖の阻害を、SRBまたはMTT染色方法で測定した。結果は、10から100%の範囲のエンドキシフェンの存在下において、有意な細胞の増殖阻害を示した。エンドキシフェンの、異なる腫瘍細胞内における増殖阻害または細胞死滅の誘発は、ヒトの癌療におけるエンドキシフェンの有用性を示す。
【実施例11】
【0166】
エンドキシフェンは、エストラジオール依存性の乳房腫瘍成長を阻害する
タモキシフェンは、エストラジオール依存性の乳癌異種移植片増殖を拮抗することが知られている(15)。経口剤形中のエンドキシフェン塩基およびエンドキシフェン−クエン酸塩は、エストラジオール依存性のMCF−7異種移植片増殖の阻害に関して同様に試験することができる。動物実験のために、4から6週齢および体重20から24gの雌性ヌードマウス(Bom:NMRI−nu/nu)を、異種移植片実験ごとに標準的なプロトコルに従って使用する。そのような手順の例は、以下の通りである。
【0167】
MCF−7異種移植片を、エストラジオールで処置した卵巣摘出の胸腺欠損ヌードマウスにおいて確立した元の腫瘍からの移植可能な腫瘍の継代によって発生させる(16〜17)。
【0168】
無作為に繁殖させた雌性胸腺欠損マウスを、両側的に卵巣摘出し、腫瘍材料の埋め込み前に、2週間回復させる。MCF−7腫瘍断片(サイズ1×1×1mm)のs.c.移植を、麻酔下で行う。腫瘍の直径は、カリパス様の機械器具を使用して、例えば週1回等、定期的に測定し、腫瘍量(V)を、経験式V=(長さ×幅)/2に従って計算する。各群の体積中間値を、初回の腫瘍体積に対して規準化し、相対的な腫瘍体積が得られる。全ての実験において、担腫瘍マウスは、エストラジオール補給[吉草酸エストラジオール(E2D)、0.5mg/kg、週1回、筋肉内]を受ける。この補給は、ヒトの状態(卵胞期に応じて25〜600pg/mL)に相当する血清E2(25〜984pg/mL)の生理的濃度をもたらす。
【0169】
物質:以下の物質を使用する。すなわち、E2D、タモキシフェンおよびエンドキシフェン。
【0170】
治療法:MCF−7移植動物全ては、週に1回E2D(0.5mg/kg)注射を受ける。4週後、ホルモン補給腫瘍が、直径で約0.7〜0.8cm(180〜250mm)に成長した時に、マウスを、それぞれ5〜10匹のマウスの4つの治療群にランダム化する。5〜10匹のマウスを、E2D単独についての基線対照として屠殺する。
【0171】
治療群は、次の通りである。(i)E2D補給(0.5mg/kg週1回、筋肉内)、(ii)E2D補給(0.5mg/kg週1回、筋肉内)に加えてタモキシフェン、1日当たり(0.5mg〜2mg)/マウス、強制経口により週5回、(iii)E2D補給(0.5mg/kg週1回、筋肉内)に加えてエンドキシフェン、1日当たり(0.5mg〜2mg)/マウス、強制経口により週5回、(iv)E2D補給の中止。
【0172】
この乳癌腫瘍モデルにおける腫瘍増殖の抑制は、ヒトの乳癌治療における治療効果を示す(15)。
【実施例12】
【0173】
エンドキシフェンは、エストロゲンの子宮肥大作用を最小化させる
タモキシフェンは、動物およびインビトロモデルにおいて強力な抗エストロゲン作用を有する非ステロイド薬であることが知られている。この薬理学的特性は、乳房組織内のエストロゲン受容体をめぐってエストロゲンと競合し、子宮、腟および卵巣へのエストロゲンの刺激作用を阻害する薬物の能力に関連する(18)。
【0174】
エンドキシフェン(0.1mg〜2mg)を、エストラジオールの子宮肥大作用の減少を決定するために、28日間にわたり1日1回経口投与する。約50日齢および体重19〜20gの雌性BALB/cマウスを取得し(例えば、Charles−River,Inc.から)、温度(23±1℃)および光(12時間の光/1日)でケージごとに4匹から5匹を収容する。萎縮変化をマウスにおいて観察する。ビヒクル対照、タモキシフェンおよびエンドキシフェン等の3つの群がある。動物(5〜10匹のマウス)を、各群に無作為に割り当てる。タモキシフェンまたはエンドキシフェンの強制経口による用量(例えば、0.1mg〜2mg)での、無傷のマウスの毎日の処置は、子宮および腟体重の進行性阻害を導くことが予期される。
【0175】
そのような結果は、エンドキシフェンが、タモキシフェンよりもエストロゲンの子宮肥大作用をより良好に最小化させること、およびエンドキシフェンが、有効な抗エストロゲンとして使用されることを示すであろう。また、エストロゲンによって刺激される子宮体重増加のエンドキシフェン遮断を、未成熟ラットにおいて実証することができる。上記の作用を示すエンドキシフェン調製物は、乳癌の治療、子宮内膜症、平滑筋腫および良性乳房疾患等の他のエストロゲン感受性状態の治療、ならびに男性および女性における他のエストロゲン応答性状状態の治療における用途がある。
【実施例13】
【0176】
増殖性乳癌細胞におけるKi−67抗原発現の、エンドキシフェンによる減少
Ki−67は、核非ヒストンタンパク質である。この抗原は、静止細胞内に存在せず、増殖性細胞内に発現し、バイオマーカーとして使用される(19〜20)。経口または注射可能な形態において、エンドキシフェン塩基またはエンドキシフェン−クエン酸塩を、異種移植片乳癌腫瘍モデル(例えば、上記のような)に、ならびに乳癌患者に与える。Ki−67の免疫化学的定量は、患者からのならびに実施例11に記述した担腫瘍マウスからの乳癌組織に由来する腫瘍細胞で行なう。MIB−1、またはDAKO,Carpenteria,CA等の商業的供給源から入手可能な同様の抗体を、抗原の免疫化学的局在化のために使用する。動物および/または乳癌患者におけるKi−67抗原発現の減少は、乳癌の治療におけるエンドキシフェンの適応性を実証する。
【実施例14】
【0177】
エンドキシフェンは、乳癌のIGF−1レベルを低下させる
タモキシフェンが、ヒトについて血中インスリン様成長因子I(IGF−1)のレベルを低下させることが知られている。IGF−1は、代替バイオマーカーとして使用されており、乳癌患者の治療におけるタモキシフェンの有効性を予測する(21)。本発明のエンドキシフェン調製物の作用を試験するために、エンドキシフェン塩基またはエンドキシフェン−クエン酸塩を、乳癌腫瘍を有する実験動物に経口で投与するか、または注入する。対照におけるIGF−1レベルの濃度および異種移植した乳房腫瘍を、既存のアッセイ(例えば、Diagnostics Systems Laboratories, London, UKまたはDAKO, Carpenteria, CAからのELISAキット)でモニターする。エンドキシフェンは、1週間に5日、1日当たり0.5mg〜2mgを強制経口投与する。IGF−1レベルの低下および腫瘍増殖減少は、乳癌に対する代替マーカーとしてのIGF−1の有用性を示唆する。
【実施例15】
【0178】
エンドキシフェンはビカルタミド誘発の女性化乳房および乳房痛の発生を予防する
ビカルタミド(CasodexR)は、男性における前立腺癌を治療するために使用される。IGF−1が、前立腺癌の促進および進行に関与し得るという根拠が増加している。また、タモキシフェン等の抗エストロゲン薬が、IGF−1レベルを低下させ、前立腺癌患者におけるビカルタミド誘発の女性化乳房を予防することも知られている(22)。エンドキシフェンは、タモキシフェン抗エストロゲンの活性代謝物であるため、ビカルタミドとともに、移植のためのエンドキシフェン含有シラスティック持続放出カプセルまたは経口量のエンドキシフェン(1mg〜10mg/日)は、ビカルタミド誘発の女性化乳房および乳房痛の発生を予防することが期待される。
【0179】
参考文献





【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの脂質を有するまたは有しない、抗癌剤を含む治療有効量の複合体を含む組成物を調製するステップを含む、疾患の治療方法。
【請求項2】
前記抗癌剤がエンドキシフェンであり、前記エンドキシフェンは遊離塩基であるかまたは塩の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エンドキシフェンが、クエン酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、トリフルオロ酢酸塩、メタンスルホン酸塩、リン酸塩、硫酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、乳酸塩、およびギ酸塩から成る塩の群から選択される塩の形態である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記エンドキシフェンが、主に、E異性体、Z−異性体、ならびにEおよびZ異性体の混合物から成る群から選択される形態である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
エンドキシフェンを調製する方法であって、
(i)式5の化合物と酸とを反応させるステップであって、式5の化合物は、構造:
【化1】

を有する、上記ステップと、
(i)式5の化合物と酸との反応後に、前記化合物をメチルアミンと反応させるステップと
を含む方法。
【請求項6】
式5の化合物が、式4の化合物:
【化2】

と、式3の化合物:
【化3】

とを反応させることによって調製される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
式3の化合物が、式1の化合物:
【化4】

と、式2の化合物:
【化5】

とを反応させることによって調製される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項5に記載のエンドキシフェンを精製する方法であって、
(a)エンドキシフェンを結晶化させるステップ、および/または
(b)エンドキシフェンをクロマトグラフィーで処理するステップ
を含み、エンドキシフェンの精製調製物を生成し、前記エンドキシフェンの精製調製物は、主にエンドキシフェンのE異性体、主にZ異性体、またはEおよびZ異性体の混合物を含有する、上記方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの脂質が、卵ホスファチジルコリン(EPC)、卵ホスファチジルグリセロール(EPG)、大豆ホスファチジルコリン(SPC)、水素化大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、コレステロール(Chol)、コレステロール硫酸およびその塩(CS)、コレステロールヘミコハク酸およびその塩(Chems)、コレステロールリン酸およびその塩(CP)、コレステリルホスホコリンおよび他のヒドロキシコレステロールまたはアミノコレステロール誘導体、コハク酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、コレステロールのポリエチレングリコール誘導体(コレステロール−PEG)、コプロスタノール、コレスタノール、コレスタン、コール酸、コルチゾール、コルチコステロン、ヒドロコルチゾン,およびカルシフェロール、E−グーグルステロン、Z−グーグルステロン、E−およびZ−グーグルステロンの混合物、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド;ガラクト脂質、マンノ脂質、ガラクトレシチンから成る群から選択される炭水化物ベースの脂質;β−シトステロール、スチグマステロール、スチグマスタノール、ラノステロール、α−スピナステロール、ラソステロール、カンペステロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、ならびにジステアロイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロールおよびジオレオイルホスファチジルグリセロールのペグ化誘導体から成る群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、エンドキシフェン、コレステロールおよび/またはコレステロール誘導体、ならびに1つ以上のリン脂質を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物がコレステロール誘導体を含み、前記コレステロール誘導体は硫酸コレステリルである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記リン脂質の少なくとも1つが、水素化大豆ホスファチジルコリンまたは大豆ホスファチジルコリンである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物が、粉末、溶液、エマルション、ミセル、リポソーム、脂質粒子、ゲル、およびペースト状から成る群から選択される形態を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
複合体を含む組成物を調製するステップが、凍結乾燥形態で前記複合体を調製するステップを含む、請求項1または13に記載の方法。
【請求項15】
凍結乾燥形態で複合体を調製するステップが、凍結保護物質を使用するステップを含み、前記凍結保護物質は、トレハロース、マルトース、ラクトース、スクロース、グルコース、およびデキストランから成る群から選択される1つ以上の糖を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が錠剤または充填カプセル剤を含み、前記錠剤または充填カプセル剤は腸溶被覆材料を任意に含んでいてもよい、請求項1または2に記載の方法。
【請求項17】
前記疾患が、癌である、または発癌物質によって生じる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項18】
前記疾患が良性乳房疾患である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項19】
前記対象に組成物を投与するステップが、経口、静脈内、皮下、経皮、非経口、腹腔内、直腸、膣内、および/または局所送達を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物が浸透促進剤を含み、前記浸透促進剤は少なくとも1つの飽和または不飽和脂肪酸エステルを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項21】
エンドキシフェンを含む組成物が、含水アルコールゲル、含水アルコール溶液、パッチ、クリーム、エマルション、ローション、軟膏剤、粉末または油に製剤化される、請求項2に記載の方法。
【請求項22】
エンドキシフェンを含む組成物が、浸透促進剤、水性ビヒクル、アルコールビヒクルおよびゲル化剤を含有する含水アルコール組成物に製剤化される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記含水アルコール組成物が中和剤を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記含水アルコール組成物が、
(i)約0.01重量%から0.20重量%のエンドキシフェンと、
(ii)約0.1重量%から2.0重量%、好ましくは0.5重量%から2.0重量%のミリスチン酸イソプロピルと、
(iii)約50.0重量%から80.0重量%、好ましくは約60.0重量%から75.0重量%のアルコールと、
(iv)約20.0重量%から60.0重量%、好ましくは25.0重量%から50.0重量%の水性ビヒクルと、
(v)約1.0重量%から10.0重量%、好ましくは約0.5重量%から5.0重量%のゲル化剤と
を含み、成分の割合は、前記組成物の重量基準である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記アルコールがエタノールまたはイソプロパノールであり、無水形態で構成される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記水性ビヒクルがリン酸緩衝溶液である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記ゲル化剤が、ポリアクリル酸、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロース以外のセルロース誘導体から成る群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記含水アルコール組成物が中和剤をさらに含み、前記中和剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、アミノメチルプロパノール、アルギニン、トロラミン、およびトロメタミンから成る群から選択され、前記中和剤は、約1:1から約4:1の中和剤/ゲル化剤の比率で存在する、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
請求項1〜28のいずれかに記載の組成物を準備するステップと、前記組成物を細胞に曝露するように、前記組成物を送達するステップとを含む、エンドキシフェンを送達する方法。
【請求項30】
前記細胞がインビボにある、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
宿主が哺乳動物である、請求項1および30に記載の方法。
【請求項32】
哺乳動物におけるホルモン依存性乳癌を抑制する方法であって、請求項1、2および24に記載の組成物を、前記哺乳動物に投与するステップを含む、上記方法。
【請求項33】
哺乳動物における癌を抑制する方法であって、前記癌が、哺乳動物における肺癌、大腸癌、乳癌、白血病、腎癌、メラノーマ、中枢神経系の癌、および前立腺癌から成る群から選択され、請求項1、2または24に記載の組成物を、前記哺乳動物に投与するステップを含む、上記方法。
【請求項34】
前記哺乳動物がヒトである、請求項31、32または33に記載の方法。
【請求項35】
エンドキシフェンおよび少なくとも1つの脂質を含む治療有効量の複合体を含む組成物であって、前記エンドキシフェンは、遊離塩基であるかまたは塩の形態である、上記組成物。
【請求項36】
エンドキシフェンを含む組成物が、含水アルコールゲル、含水アルコール溶液、パッチ、クリーム、エマルション、ローション、軟膏剤、粉末または油に製剤化される、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
エンドキシフェンを含む組成物が、浸透促進剤、水性ビヒクル、アルコールビヒクルおよびゲル化剤を含有する含水アルコール組成物に製剤化される、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記含水アルコール組成物が中和剤を含む、請求項36に記載の組成物。
【請求項39】
前記含水アルコール組成物が、
(i)約0.01重量%から0.20重量%のエンドキシフェンと、
(ii)約0.1重量%から2.0重量%、好ましくは0.5重量%から2.0重量%のミリスチン酸イソプロピルと、
(iii)約50.0重量%から80.0重量%、好ましくは約60.0重量%から75.0重量%のアルコールと、
(iv)約20.0重量%から60.0重量%、好ましくは25.0重量%から50.0重量%の水性ビヒクルと、
(v)約1.0重量%から10.0重量%、好ましくは約0.5重量%から5.0重量%のゲル化剤と
を含み、成分の割合は、前記組成物の重量基準である、請求項36に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−510327(P2010−510327A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538518(P2009−538518)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/085443
【国際公開番号】WO2008/070463
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(509103303)ジャイナ ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】