説明

オイルポンプ構造

【課題】オイルポンプ構造において、そのポンプケーシングに、吸入油路及び/又は吐出油路を形成すべくポンプケーシング外端面に開口する加工穴が穿設されても、その加工穴の開口端を塞ぐ封止部材を、ポンプケーシングに近接する補機を利用した簡単な構造で確実に抜け止めできるようにする。
【解決手段】吸入油路Li及び吐出油路Loのうちの少なくとも一方を形成するために、ポンプケーシングCには、そのポンプケーシングCの外端面に開口する加工穴Hが穿設され、その加工穴Hには、該加工穴の外方開口端Haを塞ぐ封止部材Pが液密に挿入され、その封止部材Pの外端には、ポンプケーシングCに近接配置されてトランスミッションハウジングMに結合される補機Bの外端面Bmfが対向していて、その補機Bにより該封止部材Pの加工穴Hからの抜け出しが阻止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機を収納するトランスミッションハウジングに結合されたポンプケーシングに、そのポンプケーシング内のポンプ室に開口する吸入ポート及び吐出ポートと、それら吸入ポート及び吐出ポートをトランスミッションハウジングの吸入口及び吐出口にそれぞれ連通させる吸入油路及び吐出油路とを設けたオイルポンプ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記オイルポンプのポンプケーシングは、トランスミッションハウジングに結合されるベース部材と、吸入ポート及び吐出ポートを形成するカバープレートと、そのカバープレートを挟んでベース部材に結合され内部にポンプ室を有するポンプボディとを備えるものが既に知られている(例えば、下記特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−301929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のオイルポンプ構造においては、そのポンプケーシングのベース部材及びポンプボディ間に、焼結体等で形成されるカバープレートを特別に介設して、そのカバープレートとベース部材との間に吸入油路及び吐出油路を画成するようにしているため、それだけ部品点数が増え、コストが嵩む問題があった。
【0005】
そこでカバープレートを省略して、吸入油路及び吐出油路をそれらがベース部材の内部を貫通するように設け、その少なくとも一方の油路の一部を、ベース部材の外端面に開口する加工穴で構成して、その加工穴の外方開口端を後付けの封止部材で塞ぐことが考えられる。そして、その封止部材として、例えば加工穴の外方開口端に螺挿、締結されたシーリングボルトを用いた場合には、被締結部(例えばシーリングワッシャ、加工穴のネジ部等)のヘタリや変形等でシーリングボルトの軸力低下、延いてはシール機能の低下が生じる可能性があり、その上、上記加工穴に封止部材を単に挿入しただけの場合と比べて加工工数や締付工数が増え、コスト増となる等の問題がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑み提案されたものであり、上記問題を簡単な構造で解決することができる低コストのオイルポンプ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、変速機を収納するトランスミッションハウジングに結合されたポンプケーシングに、そのポンプケーシング内のポンプ室に開口する吸入ポート及び吐出ポートと、それら吸入ポート及び吐出ポートを前記トランスミッションハウジングの吸入口及び吐出口にそれぞれ連通させる吸入油路及び吐出油路とを設けてなるオイルポンプ構造において、前記吸入油路及び吐出油路のうちの少なくとも一方を形成するために、前記ポンプケーシングには、そのポンプケーシングの外端面に開口する加工穴が穿設され、その加工穴には、該加工穴の外方開口端を液密に塞ぐ封止部材が挿入され、その封止部材の外端には、前記ポンプケーシングに近接配置されて前記トランスミッションハウジングに結合される補機の外端面が対向していて、その補機により該封止部材の前記加工穴からの抜け出しが阻止されることを特徴とする。
【0008】
また請求項2の発明は、変速機を収納するトランスミッションハウジングに結合されたポンプケーシングに、そのポンプケーシング内のポンプ室に開口する吸入ポート及び吐出ポートと、それら吸入ポート及び吐出ポートを前記トランスミッションハウジングの吸入口及び吐出口にそれぞれ連通させる吸入油路及び吐出油路とを設けてなるオイルポンプ構造において、前記吸入油路及び吐出油路のうちの少なくとも一方を形成するために、前記ポンプケーシングには、そのポンプケーシングの外端面に開口する加工穴が穿設され、その加工穴には、該加工穴の外方開口端を液密に塞ぐ封止部材が挿入され、その封止部材の外端に対向して該封止部材の前記加工穴からの抜け出しを阻止するストッパ壁が、前記トランスミッションハウジングに一体に形成されることを特徴とする。
【0009】
また請求項3の発明は、請求項1の発明の前記構成に加えて、前記補機が、前記トランスミッションハウジング内に収容される自動変速機にオイルポンプの吐出油を調圧して供給可能な油圧制御弁を内蔵したバルブボディであることを特徴とする。
【0010】
また請求項4の発明は、請求項1〜3の何れかの発明の前記構成に加えて、前記ポンプケーシングが、前記トランスミッションハウジングに一側面が結合されるベース部材と、前記ポンプ室を内部に有して前記ベース部材の他側面に結合されるポンプボディとを備え、前記吸入油路及び吐出油路が、前記ベース部材の内部を貫通するように前記ポンプケーシングに設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、オイルポンプに近接配置されてトランスミッションハウジングに結合される補機を利用した簡単な構造で、吸入油路又は吐出油路の一部となる加工穴からの封止部材の抜け出しを確実に防止でき、また請求項2の発明によれば、トランスミッションハウジングに一体に形成したストッパ壁を利用した簡単な構造で、前記封止部材の抜け出しを確実に防止できる。しかもその各発明によれば、封止部材の取付けに当たっては、これを単に加工穴の外方開口端に挿入するだけでよく、封止部材と加工穴にネジ部を特設したり或いは封止部材を特別に締付けたりする必要はないから、コスト節減及び組立作業性の向上に大いに寄与することができる。
【0012】
また特に請求項3の発明によれば、オイルポンプに隣接配置されることが機能上、望ましいとされる自動変速機用のバルブボディを、上記封止部材に対する抜け止め手段に兼用できるので、上記加工穴をポンプケーシングに、その穴の外方開口端をバルブボディ側に向かせるよう配設するだけで、既存のオイルポンプ及びバルブボディのレイアウトの大幅変更を伴わずして封止部材の確実な抜け止め構造が得られ、更なるコスト節減に寄与することができる。その上、バルブボディは、一般に頑丈な耐圧構造であって、封止部材からの反力を安定強固に受け止めることができるので、封止部材の抜け止め手段に兼用するに当たり、該ボディを特別に補強する必要はない。
【0013】
また特に請求項4の発明によれば、吸入油路及び吐出油路が、ベース部材の内部を貫通するようにポンプケーシングに設けられるので、ベース部材及びポンプボディ間にカバープレートを特別に介設しなくても、ベース部材自体に吸入油路及び吐出油路を難なく形成可能となり、それだけ部品点数が減り、コスト節減に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用した車載パワーユニットの第1実施例を示す要部縦断面図(図2の1−1線断面図)
【図2】図1の2−2線拡大断面図
【図3】オイルポンプ及びその周辺部を示す斜視図(図1の3矢視より見た斜視図)
【図4】図2の4−4線拡大断面図
【図5】図2の5−5線拡大断面図
【図6】ポンプケーシングのうち、ポンプボディをベース部材より取り外した状態を示す図2対応図
【図7】本発明を適用した車載パワーユニットの第2実施例の要部を示す断面図(図4対応図)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1〜図6は、本発明の第1実施例を示すものであって、その図1〜図3において、自動車の図示しない車体に搭載されるパワーユニットは、エンジンEと、そのエンジンEのクランク軸1にトルクコンバータTCを介して入力側が連動、連結される自動変速機Tとを備えており、その自動変速機Tの出力側は図示しない伝動機構を介して車輪側に接続される。前記自動変速機Tとしては、例えば従来公知のベルト式無段変速機あるいは多段の変速段を有する歯車式自動変速機が用いられる。
【0017】
エンジンEのエンジンブロック2の一側に結合されるミッションケースは、自動変速機Tが少なくとも収容されるトランスミッションハウジングMを含むものであり、そのトランスミッションハウジングMには、自動変速機T及びトルクコンバータTCの相互間を区画する仕切壁Maが一体に形成される。またその仕切壁Maの、自動変速機T側の壁面には、オイルポンプOPのポンプケーシングCと、そのオイルポンプOPの吐出油を調圧して自動変速機T及びトルクコンバータTCに供給する油圧制御弁を内蔵したバルブボディBとが互いに近接した状態で、且つシールプレートSを該壁面との間に挟むようにして接合、固定される。
【0018】
そのオイルポンプOPのポンプ軸3は、トルクコンバータTCのトルコンケース4(特にポンプインペラ)と一体に回転する連結軸5にチェーン伝動機構6を介して連動、連結されており、また前記トルコンケース4はクランク軸1に連動、連結されていてクランク軸1と一体に回転する。従って、エンジンEの運転中、オイルポンプOPはクランク軸1により回転駆動される。
【0019】
チェーン伝動機構6は、前記仕切壁Maの、自動変速機構T側の壁面に沿うように配設されるものであって、それは、仕切壁Maに軸受を介して回転自在に支持され且つ前記連結軸5にスプライン嵌合された駆動スプロケット6aと、仕切壁Maに軸受を介して回転自在に支持され且つ前記ポンプ軸3にスプライン嵌合された被動スプロケット6bと、その両スプロケット6a,6b間に懸回された無端状チェーン6cとで構成される。
【0020】
尚、図1において、符号7は、トルクコンバータTCの出力軸であって、自動変速機Tの入力部に結合されており、また符号8は、トルクコンバータTCの図示しないステータと嵌合して回り止めを行うと共にトルクコンバータTCとそれの制御系との間での作動油の受け渡しを行うステータシャフトであって、仕切壁Maに固定されている。
【0021】
次に図4〜図6も併せて参照して、オイルポンプOPの具体的構造を説明する。
【0022】
このオイルポンプOPのポンプケーシングCは、前記仕切壁Maに一側面が複数のボルトb1で結合される板状のベース部材Cbと、そのベース部材Cbの他側面に結合されたポンプボディCpとより構成される。そして、そのポンプボディCpは、ベース部材Cbに一側面が接合されるポンプボディ本体10と、このポンプボディ本体10の他側面に接合されるポンプカバー11とで構成され、それらポンプボディ本体10及びポンプカバー11は、複数のボルトb2でベース部材Cbに共締めされる。
【0023】
ベース部材Cbの前記一側面(即ち仕切壁Maとの対向面)には、チェーン伝動機構6の前記被動スプロケット6bに対応した凹面15が形成される。またベース部材Cbは、ポンプボディCbよりもバルブボディB側に長く形成されている。
【0024】
前記ポンプボディ本体10には、その両側面に開口する円形孔10aが形成され、その円形孔10aには、内周に複数の内歯を有するアウタロータ9oの外周が回転自在に嵌合される。更にそのアウタロータ9oの内歯には、外周にアウタロータ9oの歯数より少ない複数の外歯を有するインナロータ9iの外歯が噛合しており、両ロータ9i,9oの回転中心は所定量オフセットしている。
【0025】
前記円形孔10aの軸方向一端側はポンプカバー11により、またその軸方向他端側はベース部材Cbによりそれぞれ塞がれており、またそのベース部材Cbの、円形孔10aに臨む一側面には、図6に明示されるようにオイルポンプOPの吸入ポートi及び吐出ポートoがポンプ軸3と同心の円弧溝状に、しかも周方向に位相をずらして凹設される。
【0026】
そして、インナロータ9iには、ポンプ軸3が一体的に回転するよう嵌合、連結されており、そのポンプ軸3の回転に応じて両ロータ9i,9oが連動回転し、その際に両ロータ9i,9oの対向周面間に画成されるポンプ室12が容積変化しつつ移動することで、吸入ポートiからポンプ室12へのオイル吸込作用と、ポンプ室12から吐出ポートoへのオイル吐出作用とがスムーズに発揮される。尚、これは、従来周知のトロコイドポンプの作動原理に基づくものであり、それ以上の詳細な説明は省略する。
【0027】
トランスミッションハウジングMの仕切壁Maの、自動変速機T側の壁面には、チェーン伝動機構6(被動スプロケット6b及びチェーン6c)を避けた位置で、吸入口Mi及び吐出口Moが開口しており、吸入口Miは、トランスミッションハウジングM内の図示しない油溜に連通しており、また吐出口Moは、隣接するバルブボディB内の図示しない油圧制御弁の油圧導入部に連通している。そして、ベース部材Cbには、前記吸入ポートi及び吐出ポートoをトランスミッションハウジングM(仕切壁Ma)の前記吸入口Mi及び吐出口Moにそれぞれ連通させる吸入油路Li及び吐出油路Loが設けられる。
【0028】
前記吸入油路Liは、図5に示すように、吸入口Miと吸入ポートiとを直線的に連通させるべく、ベース部材Cbを斜めに横切るように延びている。
【0029】
一方、前記吐出油路Loは、図4に示すようにベース部材Cbをその長手方向に縦通して延びる、ドリル加工による加工穴としての縦穴Hと、その縦穴H及び吐出口Mo間を連通する、同じくドリル加工による横穴H′とで構成される。前記縦穴Hは、その長手方向一端がベース部材Cbの外端面に開口し、またその他端が吐出ポートoに開口している。また前記縦穴Hには、該穴Hの外方開口端Haを塞ぐ封止部材としてのプラグPが液密に挿入されており、そのプラグPの外端には、補機としてのバルブボディBの外端面Bmfが対向していて、そのバルブボディBにより該プラグPの前記縦穴Hからの抜け出しが阻止される。
【0030】
前記プラグPは、縦穴Hの内周面に嵌合する円柱状のプラグ本体Pmと、そのプラグ本体Pmの外端部外周に一体に連設された鍔部Pfとで構成され、プラグ本体Pmの中間部外周には、縦穴Hの内周面に液密に圧接する環状シール部材16が嵌着される。前記鍔部Pfは、それの座面がベース部材Cbの外端に係合することで、プラグPの縦穴Hへの挿入限界を規定するものである。
【0031】
前記バルブボディBは、トランスミッションハウジングMの仕切壁Maに一側面が複数のボルトb3で結合されるバルブボディ本体Bmと、そのバルブボディ本体Bmの他側面に複数のボルトb4で結合されるボディカバーBcとより構成されており、それらバルブボディ本体Bm及びボディカバーBc間の空間に前記油圧制御弁が配備される。
【0032】
バルブボディ本体Bmは、図示例ではダイキャスト鋳造されており、その外端面Bmfには、型抜きをスムーズに行うための抜き勾配が僅かに形成される。これに対し、プラグPの、前記外端面Bmfとの対向端面には、球面状の凸部Pbが形成されており、これにより、斜面となる外端面BmfとプラグPの端面との面当たりを良好なものとし、両者の接触部の応力緩和が図られる。
【0033】
次に前記実施例の作用を説明する。エンジンEの運転中、オイルポンプOPは、クランク軸1の出力がトルコンケース4、連結軸5、チェーン伝動機構6を介してポンプ軸3に伝達されることで、ポンプ作動する。このとき、オイルポンプOPへは、トランスミッションハウジングM内の図示しない油溜から同ハウジングMの吸入口Mi、ポンプケーシングC(ベース部材Cb)の吸入油路Li及び吸入ポートiを経てポンプ室12内にオイルが吸い込まれ、一方、そのオイルポンプOPからの吐出油は、ポンプケーシングC(ベース部材Cb)の吐出ポートo及び吐出油路Loを経てトランスミッションハウジングMの吐出口Moに供給され、そこから前記仕切壁Maの壁内を通ってバルブボディB内の図示しない油圧制御弁やトルクコンバータTCに供給される。
【0034】
ところで前記仕切壁Maの、オイルポンプOPに対応した部分と、オイルポンプOPとの間には、チェーン伝動機構6の被動スプライン6bやチェーン6cが介在しているため、当該部分にトランスミッションハウジングM側の吸入口Miや吐出口Moを開口させることはできず、即ち、その吸入口Miや吐出口Moを図示例のようにオイルポンプOPからその径方向外方に少々離間させた位置(即ち被動スプライン6bやチェーン6cを避けた位置)に開口させる必要がある。そのため、本実施例では、当該部分に位置する吸入ポートi及び吐出ポートoと、それらから離間したトランスミッションハウジングM側の吸入口Mi及び吐出口Moとを、ポンプボディCpよりも長いベース部材Cbに設けた吸入油路Li及び吐出油路Loでそれぞれ接続するようにしている。しかも本実施例では、その吸入油路Li及び吐出油路Loが、前記した通りの油路構造となっていて、ベース部材Cbにその内部を貫通するよう形成されているので、ベース部材Cb及びポンプボディCp間に、吸入ポート及び吐出ポートを有するカバープレートを特別に介設しなくても、ベース部材Cb自体に吸入油路Li及び吐出油路Loを難なく形成可能となり、それだけ部品点数が減り、コスト節減に寄与することができる。
【0035】
また前記実施例において、特に吐出油路Loは、図4に示すように、ベース部材Cbをその長手方向に縦通してその外端面に開口する加工穴としての縦穴Hと、その縦穴H及び吐出口Mo間を連通する横穴H′とで構成されているが、前記縦穴Hには、その外方開口端Haを塞ぐプラグPが液密に挿入され、そのプラグPの外端にはバルブボディBの外端面Bmfが近接、対向しているため、そのバルブボディBによりプラグPの縦穴Hからの抜け出しを確実に阻止可能である。
【0036】
しかもそのプラグPの取付けに当たっては、オイルポンプOPの組立工程で、予めベース部材Cbにドリル加工された縦穴HにプラグPを、それの外端鍔部Pfの座面がベース部材Cbの外面に当接する迄、単に挿入するだけでよく、即ち、プラグPと縦穴Hにネジ部を特設したり或いはプラグPを特別に締付けたりする必要はないから、コスト節減及び組立作業性の向上が図られる。そして、このようにしてプラグPの組付けが終わったオイルポンプOPのベース部材Cbと、前記油圧制御弁を内蔵したバルブボディbとを、互いに近接させた状態で仕切壁Maの所定位置に結合、固定する。
【0037】
しかる後、オイルポンプOPを試験的に作動させ、その吐出圧を吐出油路Lo内に作用させると、その吐出圧でプラグPが外方に移動するが、その外端の凸部PbがバルブボディBの外端面Bmfに当接するまでプラグPが所定量tだけ移動したところで、該プラグPのそれ以上の移動、抜け出しがバルブボディBにより確実に規制される。
【0038】
而して、本実施例では、オイルポンプOPに隣接又は近接配置されることが機能上、望ましいとされる自動変速機用のバルブボディBを、上記プラグPに対する抜け止め手段に兼用している。そのため、加工穴としての上記縦穴HをポンプケーシングC(ベース部材Cb)に、その穴Hの外方開口端HaがバルブボディB側を向くように配設するだけで、既存のオイルポンプOP及びバルブボディBのレイアウトの大幅変更を伴わずしてプラグPの確実な抜け止め構造が得られ、更なるコスト節減が達成可能となる。
【0039】
その上、バルブボディBは、一般的に頑丈な耐圧構造であって、プラグPからの反力を安定強固に受け止めることができるので、プラグPに対する抜け止め手段に兼用するに当たり、該ボディBを特別に補強する必要はない。
【0040】
次に図7を参照して、本発明の第2実施例について説明する。前記した第1実施例では、封止部材としてのプラグPの加工穴Hからの抜け出しを阻止するための抜け止め手段として、補機即ちバルブボディBを用いたものを示したが、本第2実施例では、その抜け止め手段として、バルブボディBに代えて、トランスミッションハウジングMに一体に形成したストッパ壁20を用いている。即ち、プラグPの外端に対向して該プラグPの加工穴Hからの抜け出しを阻止するストッパ壁20が、前記仕切壁Maの自動変速機T側の壁面に一体に隆起形成されており、そのストッパ壁20の、プラグPとの対向側面20fがストッパ面とされる。
【0041】
而して、この第2実施例によれば、トランスミッションハウジングM(仕切壁Ma)に一体に設けたストッパ壁20を利用した簡単な構造で、プラグPの加工穴Hからの抜け出しを確実に防止できるので、前記した第1実施例と同等の効果が期待できる。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0043】
例えば、前記実施例では、ポンプケーシングC(ベース部材Cb)に設けられる吸入ポートi及び吐出ポートoのうち、吐出ポートoの一部を、ベース部材Cbの外面に開口する加工穴(縦穴H)で形成して、その穴Hの外方開口端Haを封止部材としてのプラグPで塞ぐようにしたものを示したが、本発明では、吸入ポートiの一部を同様の加工穴で形成して、その穴の外方開口端をプラグで塞ぐようにしてもよく、更に両ポートi,oを両方とも同様の構成にしてもよい。
【0044】
また前記実施例では、オイルポンプOPの吐出油を調圧して自動変速機T及びトルクコンバータTCに供給するようにしたものを示したが、本発明では、オイルポンプの吐出油を、自動変速機TやトルクコンバータTCに供給することに代えて(或いは加えて)、エンジンEの被潤滑部に供給したり、或いは手動変速機の被潤滑部に供給するようにしてもよい。
【0045】
また前記第1実施例では、封止部材(プラグP)に対する抜け止め手段に兼用される補機として、オイルポンプOPの吐出油を調圧して自動変速機Tに供給する油圧制御弁を内蔵したバルブボディBを例示したが、本発明では、オイルポンプOPに隣接又は近接してトランスミッションハウジングMに結合される、他の機能を有する補機を抜け止め手段に兼用してもよい。
【符号の説明】
【0046】
B・・・・・補機としてのバルブボディ
C・・・・・ポンプケーシング
Cb・・・・ベース部材
Cp・・・・ポンプボディ
H・・・・・加工穴としての縦穴
Ha・・・・外方開口端
i・・・・・オイルポンプの吸入ポート
M・・・・・トランスミッションハウジング
Mi・・・・吸入口
Mo・・・・吐出口
Li・・・・吸入油路
Lo・・・・吐出油路
o・・・・・オイルポンプの吐出ポート
P・・・・・封止部材としてのプラグ
T・・・・・自動変速機
12・・・・ポンプ室
20・・・・ストッパ壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機(T)を収納するトランスミッションハウジング(M)に結合されたポンプケーシング(C)に、そのポンプケーシング(C)内のポンプ室(12)に開口する吸入ポート(i)及び吐出ポート(o)と、それら吸入ポート(i)及び吐出ポート(o)を前記トランスミッションハウジング(M)の吸入口(Mi)及び吐出口(Mo)にそれぞれ連通させる吸入油路(Li)及び吐出油路(Lo)とを設けてなるオイルポンプ構造において、
前記吸入油路(Li)及び吐出油路(Lo)のうちの少なくとも一方を形成するために、前記ポンプケーシング(C)には、そのポンプケーシング(C)の外端面に開口する加工穴(H)が穿設され、その加工穴(H)には、該加工穴(H)の外方開口端(Ha)を塞ぐ封止部材(P)が液密に挿入され、その封止部材(P)の外端には、前記ポンプケーシング(C)に近接配置されて前記トランスミッションハウジング(M)に結合される補機(B)の外端面(Bmf)が対向していて、その補機(B)により該封止部材(P)の前記加工穴(H)からの抜け出しが阻止されることを特徴とするオイルポンプ構造。
【請求項2】
変速機(T)を収納するトランスミッションハウジング(M)に結合されたポンプケーシング(C)に、そのポンプケーシング(C)内のポンプ室(12)に開口する吸入ポート(i)及び吐出ポート(o)と、それら吸入ポート(i)及び吐出ポート(o)を前記トランスミッションハウジング(M)の吸入口(Mi)及び吐出口(Mo)にそれぞれ連通させる吸入油路(Li)及び吐出油路(Lo)とを設けてなるオイルポンプ構造において、
前記吸入油路(Li)及び吐出油路(Lo)のうちの少なくとも一方を形成するために、前記ポンプケーシング(C)には、そのポンプケーシング(C)の外端面に開口する加工穴(H)が穿設され、その加工穴(H)には、該加工穴(H)の外方開口端(Ha)を塞ぐ封止部材(P)が液密に挿入され、その封止部材(P)の外端に対向して該封止部材(P)の前記加工穴(H)からの抜け出しを阻止するストッパ壁(20)が、前記トランスミッションハウジング(M)に一体に形成されることを特徴とするオイルポンプ構造。
【請求項3】
前記補機(B)は、前記トランスミッションハウジング(M)内の自動変速機(T)にオイルポンプ(OP)の吐出油を調圧して供給可能な油圧制御弁を内蔵したバルブボディであることを特徴とする、請求項1に記載のオイルポンプ構造。
【請求項4】
前記ポンプケーシング(C)は、前記トランスミッションハウジング(M)に一側面が結合されるベース部材(Cb)と、前記ポンプ室(12)を内部に有して前記ベース部材(Cb)の他側面に結合されるポンプボディ(Cp)とを備え、
前記吸入油路(Li)及び吐出油路(Lo)は、前記ベース部材(Cb)の内部を貫通するように前記ポンプケーシング(C)に設けられることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載のオイルポンプ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−57675(P2012−57675A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199891(P2010−199891)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】