説明

オペアンプ

【課題】出力電圧におけるひずみを低減すること。
【解決手段】制御回路27は、第1の差動対21と高電位電源VDとの間に接続されたトランジスタTP11に流れるバイアス電流ia1と等しい電流ia3を高電位電源VDとノードN13との間に生成する。また、制御回路27は、バイアス電圧VG1に応じた電流ib2をノードN13とグランドGNDとの間に生成する。ノードN13は、トランジスタTP13に接続され、電流源として動作するトランジスタTP12は、トランジスタTP13に流れる電流ia5と等しいバイアス電流ia2を第2の差動対22に供給する。そして、制御回路27は、入力電圧VPがゲートに供給されるトランジスタTN33により、ノードN13とグランドGNDとの間に流れる電流を制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
オペアンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レイル・ツー・レイル(RAIL to RAIL)型オペアンプは、2つの差動対を有し、高電位側電圧と低電位側電圧との間の電圧範囲とほぼ等しい入力電圧範囲が設定される。例えば、図5に示すオペアンプ10は、互いに異なる導電型のトランジスタからなる2つの差動対11,12を有する。差動対11は、カレントミラー回路13と接続されている。差動対12は、カレントミラー回路14,15を介してカレントミラー回路13と接続されている。そして、カレントミラー回路13により生成した電圧が出力トランジスタ16のゲートに供給され、出力端子17から出力電圧VOを出力する。
【0003】
また、別のオペアンプは、互いに同じ導電型のトランジスタからなる2つの2つの差動対を有する(例えば、特許文献1参照)。
そして、各差動対に供給するバイアス電流を、入力電圧に応じて相補的に切り替える。例えば、図5に示すオペアンプ10の場合、入力電圧が高電位電圧側の場合には差動対12にバイアス電流を供給し、入力電圧が低電位電圧側の場合には差動対11にバイアス電流を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3110743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5に示す従来例のオペアンプ10において、差動対11はカレントミラー回路13に直接的に接続されている。一方、差動対12はカレントミラー回路14,15を介してカレントミラー回路13に接続されている。このため、図6(a)に示すように、差動対11が動作する時の入力電圧VP1に対する出力電圧VO1の遅延時間d1に対し、差動対12が動作するときの入力電圧VP2に対する出力電圧VO2の遅延時間d2が大きくなる。このため、図6(b)に示すように、両差動対11,12を動作させるような振幅の入力電圧VP3の場合、出力電圧VO3の波形に歪みが生じる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、第1の入力電圧を受ける第1の入力トランジスタと第2の入力電圧を受ける第2の入力トランジスタを含む第1の差動対と、前記入力トランジスタと同極性の入力トランジスタを含む第2の差動対と、前記第1及び第2の入力トランジスタの間の接続点と第1の電源との間に接続され、ゲートにバイアス電圧が供給され、第1のバイアス電流が流れる電流供給トランジスタと、前記第1の電源と中間ノードとの間の第1の経路に前記第1のバイアス電流と等しい第1の電流を生成し、前記中間ノードと第2の電源との間の第2の経路に前記バイアス電圧に応じた第2の電流を生成し、前記中間ノードは、前記第1の経路と異なる第3の経路にて前記第1の電源と接続され、前記第2の入力電圧に応じて前記中間ノードと前記第2の電源との間の電流量を制限する制御回路と、前記第3の経路に流れる第3の電流と等しい第2のバイアス電流を前記第2の差動対に供給する電流源と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一観点によれば、出力電圧における歪みを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第一実施形態のオペアンプを示す回路図である。
【図2】第二実施形態のオペアンプを示す回路図である。
【図3】カレントミラー回路の説明図である。
【図4】第三実施形態のオペアンプを示す回路図である。
【図5】従来例のオペアンプを示す回路図である。
【図6】(a)(b)は従来例のオペアンプの動作波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第一実施形態)
以下、第一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、オペアンプ20は、反転入力端子(負入力端子)P1に第1の入力電圧VNが印加され、非反転入力端子(正入力端子)P2に第2の入力電圧VPが印加される。
【0010】
このオペアンプ20は、2つの差動対21,22を含む。入力端子P1,P2は第1の差動対21に接続されている。また、入力端子P1,P2は、NチャネルMOSトランジスタTN1,TN2を介して第2の差動対22に接続されている。
【0011】
第1の差動対21は、ソースが互いに接続されたPチャネルMOSトランジスタTP1,TP2を含む。両トランジスタTP1,TP2は、それぞれの電気的特性が互いに同じとなるように形成されている。
【0012】
トランジスタTP1のゲートは入力端子P1に接続され、第1の入力電圧VNが供給される。トランジスタTP2のゲートは入力端子P2に接続され、第2の入力電圧VPが供給される。両トランジスタTP1,TP2のソースはPチャネルMOSトランジスタTP11のドレインに接続されている。トランジスタTP11のソースは高電位電圧に設定される電源線(以下、高電位電源VDという)に接続されている。トランジスタTP11のゲートにはバイアス電圧VG1が供給される。第1の差動対21には、トランジスタTP11からバイアス電流ia1が供給される。
【0013】
第2の差動対22は、第1の差動対21と同じ導電型のトランジスタを含む。つまり、第2の差動対22は、ソースが互いに接続されたPチャネルMOSトランジスタTP3,TP4を含む。両トランジスタTP3,TP4は、それぞれの電気的特性が互いに同じとなるように形成されている。
【0014】
入力端子P1はトランジスタTN1のゲートに接続されている。トランジスタTN1は、ドレインが高電位電源VDに接続され、ソースがトランジスタTP3のゲートに接続されている。入力端子P2はトランジスタTN2のゲートに接続されている。トランジスタTN2は、ドレインが高電位電源VDに接続され、ソースがトランジスタTP4のゲートに接続されている。両トランジスタTN1,TN2は、それぞれの電気的特性が互いに同じとなるように形成されている。
【0015】
第2の差動対22に含まれるトランジスタTP3,TP4のソースはPチャネルMOSトランジスタTP12のドレインに接続され、トランジスタTP12のソースは高電位電源VDに接続されている。第2の差動対22には、トランジスタTP12からバイアス電流ia2が供給される。
【0016】
第1の差動対21は、カレントミラー回路23と接続されている。カレントミラー回路23は、NチャネルMOSトランジスタTN11,TN12を含む。差動対21に含まれるトランジスタTP1のドレインはトランジスタTN11のドレインに接続されている。同様に、差動対21に含まれるトランジスタTP2のドレインはトランジスタTN12のドレインに接続されている。
【0017】
第2の差動対22は、第1の差動対21と同様に、カレントミラー回路23に接続されている。即ち、トランジスタTP3のドレインはトランジスタTN11のドレインに接続され、トランジスタTP4のドレインはトランジスタTN12のドレインに接続されている。
【0018】
カレントミラー回路23の両トランジスタTN11,TN12のソースは、低電位電圧に設定される電源線(以下、グランドGNDという)に接続されている。トランジスタTN11はドレインとゲートが互いに接続され、トランジスタTN11のゲートはトランジスタTN12のゲートと接続されている。
【0019】
入力電圧VP,VNを受ける第1の差動対21、第1の差動対21に供給するバイアス電流ia1が流れるトランジスタTP11、第1の差動対21と接続されたカレントミラー回路23は、差動増幅回路(第1の差動増幅回路)として動作する。この差動増幅回路の出力端子となるノード、つまり、トランジスタTP2とトランジスタTN12との間のノードN11は、出力回路24に接続されている。
【0020】
また、第2の差動対22、第2の差動対22に供給するバイアス電流ia2が流れるトランジスタTP12、第2の差動対22と接続されたカレントミラー回路23は、差動増幅回路(第2の差動増幅回路)として動作する。この差動増幅回路の出力端子となるノードは、上記した第1の差動増幅回路の出力端子となるノードと共通のノードN11である。
【0021】
出力回路24は、NチャネルMOSトランジスタTN13と抵抗R1を含む。抵抗R1の第1端子は高電位電源VDに接続され、第2端子はトランジスタTN13のドレインに接続されている。トランジスタTN13のソースはグランドGNDに接続され、ゲートはノードN11に接続されている。抵抗R1とトランジスタTN13のドレインとの間のノードN12は出力端子P3に接続されている。
【0022】
上記トランジスタTP11のゲートは電圧生成回路25に接続されている。
電圧生成回路25は、PチャネルMOSトランジスタTP21と定電流源31を含む。トランジスタTP21のソースは高電位電源VDに接続され、ゲートとドレインが互いに接続されている。また、トランジスタTP21のゲートはトランジスタTP11のゲートに接続されている。トランジスタTP21のドレインは定電流源31の第1端子に接続され、定電流源31の第2端子はグランドGNDに接続されている。
【0023】
トランジスタTP11とトランジスタTP21は、カレントミラー回路に含まれる。従って、トランジスタTP11のゲートには、トランジスタTP21のゲート電圧と等しいバイアス電圧VG1が供給される。トランジスタTP11は、トランジスタTP21の電気的特性と同じ電気的特性を持つように形成されている。従って、トランジスタTP11は、そのドレイン電圧が制限を受けないとき、定電流源31が流す電流iP1と等しい第1のバイアス電流ia1をトランジスタTP1,TP2、すなわち第1の差動対21に供給する。尚、トランジスタTP11のドレイン電圧に対する制限は、後述する。
【0024】
上記トランジスタTN1,TN2のソースは電流源26に接続されている。
電流源26は、定電流源32と、NチャネルMOSトランジスタTN21〜TN23を含む。定電流源32の第1端子は高電位電源VDに接続され、定電流源32の第2端子はトランジスタTN21のドレインに接続されている。トランジスタTN21〜TN23のソースはグランドGNDに接続されている。トランジスタTN21〜TN23のゲートは互いに接続されている。また、トランジスタTN21は、ゲートとドレインが互いに接続されている。
【0025】
このように接続されたトランジスタTN21〜TN23は、カレントミラー回路を構成する。両トランジスタTN22,TN23は、互いに同じ電気的特性を持つように形成されている。従って、トランジスタTN22とトランジスタTN23は、互いに同じ値の電流iN1,iN2を流す。
【0026】
トランジスタTN22のドレインはトランジスタTN1のソースに接続されている。従って、トランジスタTN1,TN22は、高電位電源VDとグランドGNDとの間に直列接続される。このような直列回路は、トランジスタTN1のソースに、トランジスタTN1のゲートに供給される電圧に対し、そのトランジスタTN1のゲート−ソース間の電圧Vgsだけ低い電圧を生じさせる。トランジスタTN1のソース電圧は、第2の差動対22に含まれるトランジスタTP3のゲートに供給される。
【0027】
同様に、トランジスタTN23のドレインはトランジスタTN2のソースに接続されている。従って、トランジスタTN2,TN23は、高電位電源VDとグランドGNDとの間に直列接続され、この直列回路は、トランジスタTN2のソースに、トランジスタTN2のゲートに供給される電圧から、トランジスタTN2のゲート−ソース間電圧Vgsだけ低下した電圧を生じさせる。トランジスタTN2のソース電圧は、第2の差動対22に含まれるトランジスタTP4のゲートに供給される。
【0028】
従って、トランジスタTN1,TN2,TN21〜TN23及び定電流源32は、入力電圧VN,VPを、一定電圧(トランジスタTN1,TN2のゲート−ソース間電圧Vgs)だけ、低電位電圧側にシフトした電圧を、第2の差動対22に供給する。このように、トランジスタTN1,TN2,TN21〜TN23及び定電流源32は、電圧シフト回路に含まれる。
【0029】
そして、第2の差動対22に含まれるトランジスタTP3,TP4のゲートには、第1の差動対21に含まれるトランジスタTP1,TP2のゲートに供給される電圧(入力電圧VN,VP)から低電位電圧側に一定電圧シフトされた電圧VNa,VPaが供給される。この電圧シフト量、つまり入力電圧VNと電圧VNaとの差は、トランジスタTN1のゲート−ソース間電圧と等しい。同様に、入力電圧VPと電圧VPaとの差(電圧シフト量)は、トランジスタTN2のゲート−ソース間電圧と等しい。そして、トランジスタTN1,TN2は、入力電圧VN,VPを一定電圧(ゲート−ソース間電圧Vgs)だけ低下させた電圧VNa,VPaを生成する。
【0030】
そして、第1の差動対21に含まれる入力トランジスタTP1,TP2は、カレントミラー回路23に含まれるトランジスタTN11,TN12と接続されている。これらトランジスタTN11,TN12は、第2の差動対22に含まれる入力トランジスタTP3,TP4と接続されている。即ち、第1の差動対21と第2の差動対22は、1つのカレントミラー回路23に対して直接的に接続されている。
【0031】
図1に示すトランジスタTN1,TN2は、電流iN1,iN2により一定のゲート−ソース間電圧Vgsにて動作しており、変換動作を行うものではない。従って、入力信号に対する出力信号(入力電圧VN,VPに対する電圧VNa,VPa)の伝達時間は、カレントミラー回路における伝達時間よりも短くなる。従って、入力端子P2から出力端子P3までの伝達時間について、第1の差動対21と第2の差動対22がそれぞれ動作するときの伝達時間の相互の差は、図5に示す差動対11,12がそれぞれ動作するときの伝達時間の相互の差よりも少なくなる。
【0032】
このため、入力電圧VPに対する出力電圧Voutの遅れについて、第1の差動対21と第2の差動対22がそれぞれ動作するときの遅れの相互の差は、図5に示す差動対11,12がそれぞれ動作するときの遅れの相互の差よりも小さくなる。このため、オペアンプ20は、第1の差動対21の動作範囲と、第2の差動対22の動作範囲とにまたがるような振幅の入力電圧VPに対して、出力電圧Voutの波形歪みを抑制することができる。
【0033】
オペアンプ20は第2の差動対22に供給するバイアス電流ia2を制御する制御回路27を含む。
制御回路27は、PチャネルMOSトランジスタTP31〜TP33、NチャネルMOSトランジスタTN31〜TN33を含む。
【0034】
トランジスタTP31のソースは高電位電源VDに接続され、ドレインはトランジスタTP32のソースに接続されている。トランジスタTP31のゲートはトランジスタTP11のゲートと、トランジスタTP33のゲートに接続されている。トランジスタTP11のゲートは電圧生成回路25のトランジスタTP21のゲートに接続されている。従って、トランジスタTP21,TP11,TP31,TP33のゲートは、互いに接続されている。従って、トランジスタTP31,TP33のゲートには、トランジスタTP11と同様に、トランジスタTP21のゲート電圧(バイアス電圧VG1)が供給される。
【0035】
トランジスタTP33のソースは高電位電源VDに接続され、ドレインはカレントミラー回路28に接続されている。各トランジスタTP21,TP11,TP31,TP33は、互いに同じ電気的特性を持つように形成されている。トランジスタTP21,TP11,TP31,TP33は、カレントミラー回路に含まれる。
【0036】
トランジスタTP32のドレインはトランジスタTN33のドレインに接続され、ゲートは非反転入力端子P2に接続されている。従って、トランジスタTP32のゲートには入力電圧VPが供給される。そして、トランジスタTP32は、第1の差動対21に対応し、この第1の差動対21に含まれ入力電圧VPが供給されるトランジスタTP2におけるソース電圧と等しいソース電圧が生じるように形成されている。
【0037】
カレントミラー回路28はトランジスタTN31,TN32を含む。トランジスタTN31のドレインはトランジスタTP33のドレインに接続され、トランジスタTN31のソースはグランドGNDに接続されている。トランジスタTN31のゲートは、同トランジスタTN31のドレインと、トランジスタTN32のゲートに接続されている。トランジスタTN31とトランジスタTN32は、互いに同じ電気的特性を持つように形成されている。
【0038】
トランジスタTN32のソースはグランドGNDに接続され、ドレインはトランジスタTN33のソースに接続されている。トランジスタTN33のドレインはトランジスタTP32のドレインに接続されている。トランジスタTN33のゲートは非反転入力端子P2に接続されている。従って、トランジスタTN33のゲートには、入力電圧VPが供給される。
【0039】
トランジスタTN33とトランジスタTP32の間のノードN13は、トランジスタTP13のドレインに接続されている。トランジスタTP13は、第2の差動対22に対してバイアス電流ia2を流すトランジスタTP12と同じ導電型のトランジスタ、つまり本実施形態ではPチャネルMOSトランジスタである。トランジスタTP13のゲートは同トランジスタTP13のドレインと、トランジスタTP12のゲートに接続され、トランジスタTP13のソースは高電位電源VDに接続されている。
【0040】
両トランジスタTP13,TP12はカレントミラー回路に含まれる。両トランジスタTP13,TP12は、互いに同じ電気的特性を持つように形成されている。従って、トランジスタTP12は、トランジスタTP13に流れる電流と等しい値のバイアス電流ia2を流す。
【0041】
次に、上記のように構成されたオペアンプ20の動作を説明する。
尚、オペアンプ20は、出力端子P3から入力端子P1へ帰還をかけて使用される。以下では、ボルテージホロア接続したときの動作を説明する。
【0042】
電圧生成回路25に含まれるトランジスタTP21のゲートは、制御回路27のトランジスタTP33のゲートに接続されている。制御回路27のトランジスタTP33は、電圧生成回路25のトランジスタTP21と同様に接続されている。従って、トランジスタTP33のドレイン電流ia4は、トランジスタTP21のドレイン電流、即ち定電流源31が流す電流iP1と等しい電流となる。この電流ia4は、トランジスタTN31に流れる。
【0043】
トランジスタTN31のゲートは、トランジスタTN31のドレインと、トランジスタTN32のゲートに接続されている。従って、両トランジスタTN31,TN32のドレイン電圧が互いに等しいとき、トランジスタTN32には、トランジスタTN31に流れる電流ib1(トランジスタTP33のドレイン電流ia4)と等しい電流ib2が流れる。そして、この電流ib2の電流値は、電圧生成回路25に含まれる定電流源31が流す電流iP1の電流値と等しい。
【0044】
また、電圧生成回路25に含まれるトランジスタTP21のゲートは、トランジスタTP11,TP31,TP33のゲートに接続されている。そして、電圧生成回路25に含まれる定電流源31は、一定の電流iP1を流す。従って、各トランジスタTP11,TP31は、制限を受けないとき、定電流源31の電流iP1と等しい電流ia1,ia3を流す。第1の差動対21は、トランジスタTP11を介して供給されるバイアス電流ia1に応じて動作し、入力電圧VN,VPに応じた出力電圧Voutが出力される。
【0045】
カレントミラー回路28に含まれるトランジスタTN32のドレインは、トランジスタTN33を介してノードN13に接続されている。このノードN13には、トランジスタTP32のドレインと、トランジスタTP13のドレインが接続されている。そして、トランジスタTP32には、トランジスタTP31のドレイン電流ia3が流れる。このドレイン電流ia3の値は、上記の制限を受けないとき、トランジスタTN32に流れる電流ib2の値と等しい。従って、トランジスタTP13からノードN13に向って電流が流れない、つまり、トランジスタTP13のドレイン電流はゼロとなる。このため、トランジスタTP13とカレントミラー接続されたトランジスタTP12のドレイン電流ia2はゼロとなる。従って、第2の差動対22に対するバイアス電流ia2がゼロとなるため、この第2の差動対22は、動作しない。
【0046】
つまり、入力電圧VPに応じてトランジスタTP11,TP31に電流制限が加わらないとき、第1の差動対21は動作し、第2の差動対22は動作しない。従って、オペアンプ20は、第1の差動対21の動作によって、入力電圧VN,VPに応じた出力電圧Voutを出力する。
【0047】
上記したように、第1の差動対21にバイアス電流ia1を流すトランジスタTP11のソースは高電位電源VDに接続され、ドレインはトランジスタTP1,TP2のソースに接続されている。そして、トランジスタTP1のゲートには、入力電圧VNが供給され、トランジスタTP2のゲートには、入力電圧VPが供給される。
【0048】
第1の差動対21にバイアス電流ia1が供給されるとき、トランジスタTP2のソース電圧は、入力電圧VPに応じて変化する。トランジスタTP2のソースはトランジスタTP11のドレインに接続されているため、トランジスタTP11のドレイン電圧は、入力電圧VPに応じて変化する。
【0049】
入力電圧VPが高電位電源VDの電圧レベルに近づくと、この入力電圧VPに応じてトランジスタTP2のソース電圧、つまりトランジスタTP11のドレイン電圧が上昇する。そして、トランジスタTP11のソース−ドレイン間電圧が、トランジスタTP11の電気的特性(しきい値電圧等)に応じて設定される電圧より小さくなると、トランジスタTP11における電流量が低下する。
【0050】
制御回路27のトランジスタTP32は、第1の差動対21に含まれるトランジスタTP2のソース電圧と等しい電圧をそのソース端子に発生する。このトランジスタTP32のソースはトランジスタTP31のドレインに接続されている。従って、トランジスタTP32のソース電圧は、トランジスタTP11のドレイン電圧と等しくなる。つまり、トランジスタTP31のドレイン電圧は、トランジスタTP11のドレイン電圧と同様に、入力電圧VPによる制限を受ける。
【0051】
トランジスタTP31は、トランジスタTP11の電気的特性と同じ特性を持つ。従って、トランジスタTP11が入力電圧VPによる制限を受けるとき、トランジスタTP11に流れる電流量と等しい量の電流がトランジスタTP31に流れる。つまり、制御回路27は、第1の差動対21に供給するバイアス電流ia1と等しい電流ia3を生成する。この電流ia3は、トランジスタTP31が制限を受ける分、制限を受けないときの電流量、即ちトランジスタTP33のドレイン電流ia4よりも少なくなる(ia3(=ia1)<ia4)。
【0052】
トランジスタTP33のドレイン電流ia4は、カレントミラー回路28に供給される。そして、カレントミラー回路28に含まれるトランジスタTN32は、そのドレイン電圧が制限されていないとき、トランジスタTN31のドレイン電流ib1(トランジスタTP33のドレイン電流ia4)と等しいドレイン電流ib2を流す。
【0053】
すると、高電位電源VDとノードN13との間には、トランジスタTP31のバイアス電流ia3が流れる。一方、ノードN13と低電位電源(グランドGND)との間には、トランジスタTN32のバイアス電流ib2が流れる。この電流ib2の値は、トランジスタTP33のドレイン電流ia4の値と等しく、トランジスタTP31のドレイン電流ia3の値より大きい。従って、電流ia3と電流ia1の差分値と等しい電流ia5が、トランジスタTP13に流れる。そして、トランジスタTP12は、トランジスタTP13に流れる電流ia5と等しいバイアス電流ia2を第2の差動対22に供給する。
【0054】
バイアス電流ia2の値は、トランジスタTP13に流れる電流ia5の値と等しく、この電流ia5の値は、電流ia3と電流ia4の差分値と等しい。電流ia3の値とバイアス電流ia1の値は互いに等しい。更に、電流ia4の値は、電圧生成回路25の定電流源31が流す電流iP1の値と等しい。
【0055】
更に入力電圧VPが上昇すると、トランジスタTP11における電流量がゼロ、つまりトランジスタTP11から第1の差動対21に対してバイアス電流ia1を供給できなくなる。このとき、トランジスタTP33は、制限を受けないため、上記と同様に、電圧生成回路25における電流iP1と等しいドレイン電流ia4を流す。従って、トランジスタTP13には、電流iP1と等しい電流ia5が流れ、第2の差動対22には、トランジスタTP12を介して、電流iP1と等しいバイアス電流ia2が供給される。
【0056】
従って、制御回路27は、第1の差動対21に供給するバイアス電流ia1の値と、第2の差動対22に供給するバイアス電流ia2の値の合計値を、電圧生成回路25における電流iP1の値と等しくするように、両バイアス電流ia1,ia2を制御する。
【0057】
第1の差動対21には入力電圧VN,VPが直接供給され、第2の差動対22には、トランジスタTN1,TN2を介して入力電圧VN,VPが供給される。トランジスタTN1は、電流iN1を受け、安定したゲート−ソース間電圧Vgsを発生させる。従って、第2の差動対22に含まれるトランジスタTP3のゲートには、入力電圧VNからトランジスタTN1のゲート−ソース間電圧Vgs低下した電圧VNaが供給される。同様に、トランジスタTP4のゲートには、入力電圧VPからトランジスタTN2のゲート−ソース間電圧Vgs低下した電圧VPaが供給される。
【0058】
入力電圧VN,VPにより第1のバイアス電流ia1がゼロ、つまり第1の差動対21が動作しないとき、第2の差動対22は、入力電圧VN,VPより低い電圧VNa,VPaが供給されるため、それらの電圧VNa,VPaにより動作する。従って、オペアンプ20は、電圧VNa,VPaに応じて動作する第2の差動対22により、電圧Voutを出力する。
【0059】
上記トランジスタTP11,TP31は、入力電圧VPが高電位電源VDに近い電圧のとき、その入力電圧VPによる制限を受ける。
即ち、トランジスタTP2のソース電圧は、ゲートに供給される入力電圧VPより、そのトランジスタTP2のゲート−ソース間電圧Vgs高い電圧となる。このため、トランジスタTP11のドレイン−ソース間電圧Vdsは、トランジスタTP11のドレイン電圧、即ちトランジスタTP2のソース電圧から高電位電源VDの電圧を引いた電圧となる。
【0060】
トランジスタTP11の動作領域は、ドレイン−ソース間電圧Vdsと、トランジスタTP11の特性(しきい値電圧Vth)やゲートに加わる電圧などに関係より、オフ領域、オン領域(線形領域,飽和領域)に分けられる。トランジスタTP11は、そのソース−ドレイン間電圧Vdsが、トランジスタTP11のゲート−ソース間電圧Vgsから閾値電圧Vthを減算した値より大きい(Vds>Vgs−Vth)の時、トランジスタTP11は、線形領域で動作し、ドレイン電流ia1は、ゲート−ソース間電圧Vgsに比例する。つまり、トランジスタTP11は、ゲート電圧に応じて電圧生成回路25の電流iP1と等しい電流を流せなくなり、入力電圧VPの上昇に従って、トランジスタTP11のドレイン電流ia1は減少する。
【0061】
このトランジスタTP11のドレイン電流ia1が減少するときの入力電圧VPは、トランジスタTP11,TP2の特性に対応し、高電位電源VDの近傍の電圧である。従って、高電位電源VDと低電位電源(グランドGND)により設定される入力電圧範囲において、入力電圧VN,VPが高電位電源VDに近い電圧から低電位電源の電圧までの間、第1の差動対21により出力電圧Voutが出力される。そして、第2の差動対22は、入力電圧VN,VPが高電位電源VDの電圧に近い僅かな電圧範囲において、動作する。
【0062】
このため、高電位電源VDと低電位電源(グランドGND)により設定される入力電圧範囲において、中心電圧(=VD/2)付近のように、多くの使用状態において入力電圧VN,VPが取りうる値の範囲では、第1の差動対21と第2の差動対22との間の切り替えは行われない。このため、2つの差動対21,22における動作の切り替えに起因する出力電圧Voutの歪みの発生を抑制することができる。
【0063】
トランジスタTP31,TP33は、ソース−ドレイン間電圧、つまりドレイン電圧に応じた量のドレイン電流を流す。従って、トランジスタTP31が、入力電圧VPがゲートに供給されるトランジスタTP32によりドレイン電圧の制限を受けるとき、トランジスタTP33のドレイン電流ia4よりもトランジスタTP31のドレイン電流ia3が少なくなる。トランジスタTP33のドレイン電流ia4は、カレントミラー回路28に供給される。
【0064】
カレントミラー回路におけるミラー比は、カレントミラー回路に含まれるトランジスタの電気的特性(例えばサイズに基づく特性)と、ソース−ドレイン間電圧に応じて決定される。カレントミラー回路28に含まれるトランジスタTN31,TN32は、互いに同じ電気的特性を有し、それぞれのソースがグランドGNDに接続されている。従って、カレントミラー回路28に含まれるトランジスタTN31,TN32それぞれのドレイン電圧が制限を受けないとき、トランジスタTN32は、トランジスタTN31のドレイン電流ib1と等しい電流ib2を流す。
【0065】
上記したように、カレントミラー回路28において、入力側のトランジスタTN31のドレイン電圧は、このトランジスタTN31の電気的特性(サイズ)と、トランジスタTN31に流れる電流、即ちトランジスタTP33のドレイン電流ia4により決定される電位である。カレントミラー回路28の出力電流を流すトランジスタTN32のドレインはトランジスタTN33のソースに接続され、トランジスタTN33のゲートには入力電圧VPが供給されている。従って、トランジスタTN32のドレイン電圧は、トランジスタTN33のソース電圧と等しく、トランジスタTN33のゲートに供給される入力電圧VPに応じた値(入力電圧VP−トランジスタTN33のゲート−ソース間電圧Vgs)となる。
【0066】
従って、トランジスタTN33により、トランジスタTN32のドレイン電圧をトランジスタTN31のドレイン電圧より低くする。これにより、トランジスタTN32のドレイン電流ib2は、トランジスタTN31のドレイン電流ib1(トランジスタTP33のドレイン電流ia4)より少なくなる。
【0067】
トランジスタTN33のドレインとトランジスタTP32との間のノードN13に対して、高電位電圧VDからノードN13に向って電流ia3が流れ、ノードN13からグランドGNDに向って電流ib2が流れる。従って、トランジスタTP31のドレイン電流ia3がトランジスタTN32のドレイン電流ib2より多い間、ノードN13に向ってトランジスタTP13から電流が流れないため、トランジスタTP12を介してバイアス電流ia2は流れない。
【0068】
即ち、トランジスタTN33は、カレントミラー回路28に含まれる出力側のトランジスタTN32のドレイン電圧を制限することにより、第2の差動対22に対するバイアス電流ia2の量を抑制する。これにより、入力電圧VPにおいて、第1の差動対21と第2の差動対22が同時に動作する電圧範囲を更に狭くする、つまり第1の差動対21と第2の差動対22の同時動作を抑制することで、出力電圧Voutの歪みの発生を抑制することができる。
【0069】
また、トランジスタTN33は、上記の電圧シフト回路における不具合を解消する。即ち、入力電圧VN,VPが低くなると、トランジスタTN1,TN2のゲート−ソース間電圧VgsによってトランジスタTN22,TN23のドレイン−ソース間電圧Vdsが確保することができなくなる。すると、トランジスタTN22,TN23に、設定通りの電流iN1,iN2が流れなくなる。すると、入力電圧VN,VPに対し、第2の差動対22に供給する電圧VNa,VPaの差分、つまりシフト量が、設定と異なることになる。この結果、入力電圧VN,VPに対応しない分配比率で差動対22のトランジスタTP3,TP4に電流が流れることになり、出力電圧Voutに誤差(オフセット)が生じる。
【0070】
これに対し、入力電圧VPがゲートに供給されるトランジスタTN33は、トランジスタTP32と同様に、トランジスタTN32のドレイン電圧を制限する。つまり、入力電圧VPが低いとき、トランジスタTN33のソース電圧が、入力電圧VPに対して、トランジスタTN33のゲート−ソース間電圧Vgsにより、低下する。このトランジスタTN33のソースはトランジスタTN32のドレインに接続されている。従って、トランジスタTN32のソース−ドレイン間電圧Vdsは、入力電圧VPによる制限を受ける。その結果、トランジスタTN32のドレイン電流ib2は、トランジスタTN31のドレイン電流ib1よりも少なくなる。
【0071】
従って、トランジスタTN33は、ノードN13とグランドGNDとの間に流れる電流ib2を、高電位電源VDとノードN13との間に流れる電流ia3よりも少なくすることで、トランジスタTP13からノードN13に向って電流ia5が流れるのを防ぐ。これにより、第2の差動対22にバイアス電流ia2が流れるのを防ぐことができるため、出力電圧Voutに誤差(オフセット)が生じるのを低減することができる。
【0072】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)制御回路27は、第1の差動対21と高電位電源VDとの間に接続されたトランジスタTP11に流れるバイアス電流ia1と等しい電流ia3を高電位電源VDとノードN13との間に生成する。また、制御回路27は、バイアス電圧VG1に応じた電流ib2をノードN13とグランドGNDとの間に生成する。ノードN13は、トランジスタTP13に接続され、電流源として動作するトランジスタTP12は、トランジスタTP13に流れる電流ia5と等しいバイアス電流ia2を第2の差動対22に供給する。そして、制御回路27は、入力電圧VPがゲートに供給されるトランジスタTP32により、ノードN13とグランドGNDとの間に流れる電流を制限する。その結果、第1の差動対21にバイアス電流ia1が供給されるとき、その電流ia1と等しい電流ia3がノードN13に流れ込み、トランジスタTP13からノードN13には電流が流れないため、第2の差動対22に対するバイアス電流ia2はゼロとなる。このため、第1の差動対21の動作時に第2の差動対22が同時することを防止することができ、出力電圧Voutに歪みが生じることを低減することができる。
【0073】
(2)第1の入力電圧VNは、第1の差動対21の入力トランジスタTP1のゲートに直接供給され、トランジスタTN1を介して第2の差動対22の入力トランジスタTP3のゲートに供給される。同様に、第2の入力電圧VPは、第1の差動対21の入力トランジスタTP2のゲートに直接供給され、トランジスタTN2を介して第2の差動対22の入力トランジスタTP4のゲートに供給される。トランジスタTN1,TN2は、電流源26により流れる電流iN1,iN2により、電圧シフトする。この電圧シフトに要する時間は、カレントミラー回路の動作時間と比べて少ない。また、トランジスタTN1におけるシフト量と、トランジスタTN2におけるシフト量は、両トランジスタTN1,TN2のサイズを大きくすることにより相対的な差を小さくすることができる。その結果、第2の差動対22が動作するときの入力電圧VN,VPの変化に対する出力電圧Voutの変化の遅れは、第1の差動対21が動作するときの遅れとほぼ等しくなり、出力電圧Voutの波形に歪みが生じることを低減することができる。
【0074】
(3)トランジスタTP11は、ゲート電圧に応じて電圧生成回路25の電流iP1と等しい電流を流せなくなり、入力電圧VPの上昇に従って、トランジスタTP11のドレイン電流ia1は減少する。ドレイン電流ia1の減少にしたがって第2の差動対22に供給されるバイアス電流ia2が増加し、第2の差動対22が動作する。そして、第2の差動対22は、入力電圧VN,VPが高電位電源VDの電圧に近い僅かな電圧範囲において、動作する。このため、高電位電源VDと低電位電源(グランドGND)により設定される入力電圧範囲において、中心電圧(=VD/2)付近のように、多くの使用状態において入力電圧VN,VPが取りうる値の範囲では、第1の差動対21と第2の差動対22との間の切り替えは行われない。このため、2つの差動対21,22における動作の切り替えに起因する出力電圧Voutの歪みの発生を抑制することができる。
【0075】
(第二実施形態)
以下、第二実施形態を図2,3に従って説明する。尚、この第二実施形態において、第一実施形態と同じ構成部材については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0076】
図2に示すように、オペアンプ20aは、電圧生成回路25aと制御回路27aを含む。
電圧生成回路25aは、PチャネルMOSトランジスタTP21,TP22と、定電流源31を含む。トランジスタTP22は、トランジスタTP21と定電流源31との間に接続されている。即ち、トランジスタTP22のソースはトランジスタTP21のドレインに接続され、トランジスタTP22のドレインは定電流源31の第1端子に接続されている。そして、トランジスタTP21のゲートは、トランジスタTP22のゲートと、トランジスタTP22のドレインに接続されている。
【0077】
制御回路27aは、PチャネルMOSトランジスタTP31〜TP34、NチャネルMOSトランジスタTN31〜TN33を含む。
トランジスタTP34は、電圧生成回路25aのトランジスタTP22と同様に接続されている。即ち、トランジスタTP34のソースはトランジスタTP33のドレインに接続され、トランジスタTP34のドレインはトランジスタTN31のドレインに接続されている。トランジスタTP34のゲートはトランジスタTP33のゲートに接続されている。トランジスタTP34は、トランジスタTP22の電気的特性と同じ特性を持つように形成されている。
【0078】
トランジスタTP21,TP11,TP31,TP33は、カレントミラー回路に含まれる。このカレントミラー回路は、トランジスタTP22,TP34を含む。
このように構成されたカレントミラー回路の動作を説明する。図3は、この動作の説明図である。
【0079】
図3に示すトランジスタTP51〜TP54は、PチャネルMOSトランジスタである。トランジスタTP51のソースは高電位電源VDに接続され、トランジスタTP51のドレインはトランジスタTP52のソースに接続されている。トランジスタTP51のゲートは、トランジスタTP52のゲート及びドレインと、トランジスタTP53のゲートに接続されている。トランジスタTP52のドレインは定電流源41に接続されている。定電流源41は定電流iAを流すように構成されている。
【0080】
トランジスタTP53のソースは高電位電源VDに接続され、トランジスタTP53のドレインはトランジスタTP54のソースに接続されている。トランジスタTP54のゲートには電圧VBが供給される。
【0081】
トランジスタTP51とトランジスタTP53は、互いに同じ電気的特性を持つように形成される。同様に、トランジスタTP52とトランジスタTP54は、互いに同じ電気的特性を持つように形成される。
【0082】
図3に示す回路において、トランジスタTP51のゲート電圧VAとすると、各電圧VA,VBの関係に対し、トランジスタTP54に流れる電流iBは、
VA>VBのとき、iA<iBとなり、
VA=VBのとき、iA=iBとなり、
VA<VBのとき、iA>iB
となる。
【0083】
このため、図2に示すオペアンプ20aでは、トランジスタTP21のゲート電圧をVG1とすると、
VG1>VPのとき、ia3>ia4となり、
VG1=VPのとき、ia3=ia4となり、
VG1<VPのとき、ia3<ia4
となる。
【0084】
従って、入力電圧VPがトランジスタTP21(TP31)のゲート電圧VG1より高いとき、トランジスタTP31のドレイン電流ia3と比べ、トランジスタTP33のドレイン電流ia4が多くなる。そして、入力電圧VPが電圧VG1より低いとき、電流ia3と比べ電流ia4が少なくなる。従って、トランジスタTN33は、カレントミラー回路28の出力側であるトランジスタTN32のドレイン電流ib2を効率よく低減する。
【0085】
つまり、トランジスタTN33は、高電位電源VDとノードN13との間に流れる電流ia3よりも、ノードN13と低電位電源との間に流れる電流ib2を少なくし、トランジスタTP13からノードN13に向って流れる電流をゼロ(=0)とする。このため、電流ib2が電流ia3よりも多くなる場合が少なくなるため、第2の差動対22にバイアス電流ia2が流れるのを防ぐことができ、出力電圧Voutに誤差(オフセット)が生じるのを低減することができる。
【0086】
また、入力電圧VPが電圧VG1より低いとき電流ia3より電流ia4が少ないため、入力電圧VPがグランドGNDと等しいか近いときに、トランジスタTP13を介して電流ia5が流れないようにすることができる。これにより、入力電圧VN,VPが低いときにおける出力電圧Voutの波形に歪みが生じるのを防ぐことができる。
【0087】
以上記述したように、本実施形態によれば、上記実施形態の効果に加え、以下の効果を奏する。
(4)電圧生成回路25aは、直列接続されたトランジスタTP21,TP22を含み、両トランジスタTP21,TP22のゲートは互いに接続されるとともに定電流源31に接続されている。制御回路27aは、トランジスタTP12のゲートに接続されてゲートにバイアス電圧VG1が供給されるトランジスタTP33,TP34を備える。第2の入力電圧VPがバイアス電圧VG1より低いとき、トランジスタTP33.TP34に流れる電流ia4は、第1の差動対21に対するバイアス電流ia1と等しい電流ia3よりも少なくなる。そして、電流ia4と等しい電流ib2が,カレントミラー回路28により、ノードN13とグランドGNDとの間に流れる。従って、ノードN13とグランドGNDとの間に流れる電流ib2は、高電位電源VDとノードN13との間に流れる電流ia3よりも少なくなり、トランジスタTP13からノードN13に向って電流が流れなくなる(ia5=0)ため、第2の差動対22に対するバイアス電流ia2はゼロとなる。このため、第1の差動対21の動作時に第2の差動対22が同時に動作することを防止することができ、出力電圧Voutに歪みが生じることを低減することができる。
【0088】
(第三実施形態)
以下、第三実施形態を図4に従って説明する。尚、この第三実施形態において、第一,第二実施形態と同じ構成部材については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0089】
図4に示すように、オペアンプ20bの制御回路27bは、トランジスタTN34を含む。このトランジスタTN34のソースはカレントミラー回路28に含まれるトランジスタTN31のドレインに接続され、ドレインはトランジスタTP34のドレインに接続され、ゲートには入力電圧VPが供給されている。そして、カレントミラー回路28に含まれるトランジスタTN31,TN32のゲートはトランジスタTN34のドレインに接続されている。
【0090】
このトランジスタTN34は、カレントミラー回路28とノードN13との間に接続されたトランジスタTN33と互いに同じ電気的特性を持つように形成されている。従って、トランジスタTN34のゲート−ソース間電圧は、トランジスタTN33のゲート−ソース間電圧と等しくなる。この結果、カレントミラー回路28において、入力側のトランジスタTN31のドレイン電圧は、出力側のトランジスタTN32のドレイン電圧と等しくなる。つまり、入力側のトランジスタTN31におけるソース−ドレイン間電圧は、出力側のトランジスタTN32におけるソース−ドレイン間電圧と等しくなる。このため、カレントミラー回路28は、入力側と出力側とのカレントミラー比が1:1となり、カレントミラー比を安定させることができる。
【0091】
また、カレントミラー回路28に含まれるトランジスタTN31,TN32のゲートは、トランジスタTN34のドレインに接続されている。そして、カレントミラー回路28のカレントミラー比は、入力電圧VPの変動によらず、安定している。
【0092】
従って、トランジスタTP13を介してノードN13に流れる電流ia5の電流量は、制御回路27bに含まれるトランジスタTP31,TP32による電流ia3と、トランジスタTP33,TP34による電流ia4の関係により決定される。このため、電流ib2が電流ia3よりも多くなる場合が更に少なくなるため、第2の差動対22にバイアス電流ia2が流れるのを防ぐことができ、出力電圧Voutに誤差(オフセット)が生じるのを低減することができる。
【0093】
以上記述したように、本実施形態によれば、上記各実施形態の効果に加え、以下の効果を奏する。
(5)制御回路27bは、トランジスタTN34を含む。このトランジスタTN34のゲートには入力電圧VPが供給される。トランジスタTN34は、入力電圧VPがゲートに供給されるトランジスタTN33とともに、カレントミラー回路28に含まれるトランジスタTN31,TN32のドレイン電圧を制御する。その結果、トランジスタTN32のドレイン電圧とトランジスタTN31のドレイン電圧が互いに等しくなり、カレントミラー回路28のカレントミラー比が安定する。この結果、トランジスタTP13を介してノードN13に流れる電流ia5の電流量は、制御回路27bに含まれるトランジスタTP31,TP32による電流ia3と、トランジスタTP33,TP34による電流ia4の関係により決定される。そして、電流ib2が電流ia3よりも多くなる場合が更に少なくなるため、第2の差動対22にバイアス電流ia2が流れるのを防ぐことができ、出力電圧Voutに誤差(オフセット)が生じるのを低減することができる。
【0094】
尚、上記各実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
・上記形態の制御回路は、第2の入力電圧VPに応じて電流制限を行うようにしたが、第1の入力電圧VNに応答して動作するようにしてもよい。
【0095】
・上記各形態では、差動対21,22に含まれるトランジスタをPチャネルMOSトランジスタとしたが、NチャネルMOSトランジスタとしてもよい。この場合、図1,図3,図4に示す各トランジスタについて、PチャネルMOSトランジスタとNチャネルMOSトランジスタとを互いに入れ替えることは言うまでもない。
【0096】
上記各実施形態に関し、以下の付記を開示する。
(付記1)
第1の入力電圧を受ける第1の入力トランジスタと第2の入力電圧を受ける第2の入力トランジスタを含む第1の差動対と、
前記入力トランジスタと同極性の入力トランジスタを含む第2の差動対と、
前記第1及び第2の入力トランジスタの間の接続点と第1の電源との間に接続され、ゲートにバイアス電圧が供給され、第1のバイアス電流が流れる電流供給トランジスタと、
前記第1の電源と中間ノードとの間の第1の経路に前記第1のバイアス電流と等しい第1の電流を生成し、前記中間ノードと第2の電源との間の第2の経路に前記バイアス電圧に応じた第2の電流を生成し、前記中間ノードは、前記第1の経路と異なる第3の経路にて前記第1の電源と接続され、前記第2の入力電圧に応じて前記中間ノードと前記第2の電源との間の電流量を制限する制御回路と、
前記第3の経路に流れる第3の電流と等しい第2のバイアス電流を前記第2の差動対に供給する電流源と、
を備えたことを特徴とするオペアンプ。
(付記2)
前記制御回路は、
前記バイアス電圧がゲートに供給され、前記第1の電源に接続され、前記第1の電流が流れるトランジスタと、
前記第1の電流を流すトランジスタのドレインにソースが接続され、ドレインが前記中間ノードに接続され、ゲートに前記第2の入力電圧が供給されるトランジスタと、
前記バイアス電圧がゲートに供給され、前記第1の電源に接続され、前記バイアス電圧に応じた第4の電流が流れるトランジスタと、
前記第4の電流を受け、前記第3の電流を生成するカレントミラー回路と、
を含むことを特徴とする付記1に記載のオペアンプ。
(付記3)
前記制御回路は、前記中間ノードと前記カレントミラー回路との間に接続され、ゲートに前記第2の入力電圧が供給されるトランジスタを含むことを特徴とする付記2に記載のオペアンプ。
(付記4)
定電流源と、前記第1の電源と前記定電流源との間に直列接続された2つのトランジスタとを含み、前記2つのトランジスタのゲートは互いに接続されるとともに前記定電流源に接続され、前記ゲート電圧を生成する電圧生成回路を備え、
前記制御回路は、
前記第4の電流を流すトランジスタと前記カレントミラー回路との間に接続され、ゲートに前記バイアス電圧が供給されるトランジスタと、
を含むことを特徴とする付記2又は3に記載のオペアンプ。
(付記5)
前記カレントミラー回路の入力側トランジスタのドレインに接続され、ゲートに前記第2の入力電圧が供給されるトランジスタを含み、
前記カレントミラー回路に含まれるトランジスタのゲートは前記トランジスタのドレインに接続される、
ことを特徴とする付記2〜4の何れか一項に記載のオペアンプ。
(付記6)
前記第1の入力電圧と前記第2の入力電圧をそれぞれ電圧シフトして前記第2の差動対に供給する電圧シフト回路を含むことを特徴とする付記1〜5の何れか一項に記載のオペアンプ。
(付記7)
前記電圧シフト回路は、
前記第1の入力電圧をゲートに受け、ドレインが前記第1の電源に接続され、ソースが前記第2の差動対に含まれる第3の入力トランジスタのゲートに接続された第1のシフトトランジスタと、
前記第2の入力電圧をゲートに受け、ドレインが前記第1の電源に接続され、ソースが前記第2の差動対に含まれる第4の入力トランジスタのゲートに接続された第2のシフトトランジスタと、
前記第1のシフトトランジスタと前記第2のシフトトランジスタに電流を流す定電流源と、
を備えたことを特徴とする付記6に記載のオペアンプ。
(付記8)
前記第1の差動対及び前記第2の差動対に接続されたカレントミラー回路と、
前記カレントミラー回路の出力ノードにゲートが接続され、ソースが前記第2の電源に接続され、ドレインが出力端子に接続されたトランジスタと、
を含むことを特徴とする付記1〜7の何れか一項に記載のオペアンプ。
【符号の説明】
【0097】
21 第1の差動対
22 第2の差動対
27 制御回路
TP12 トランジスタ(電流源)
VN 第1の入力電圧
VP 第2の入力電圧
TP1 第1の入力トランジスタ
TP2 第2の入力トランジスタ
TP3 入力トランジスタ
TP4 入力トランジスタ
TP11 電流供給トランジスタ
ia1 第1のバイアス電流
ia2 第2のバイアス電流
ia3 第1の電流
ib2 第2の電流
ia5 第3の電流
VG1 バイアス電圧
VD 第1の電源
GND グランド(第2の電源)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入力電圧を受ける第1の入力トランジスタと第2の入力電圧を受ける第2の入力トランジスタを含む第1の差動対と、
前記入力トランジスタと同極性の入力トランジスタを含む第2の差動対と、
前記第1及び第2の入力トランジスタの間の接続点と第1の電源との間に接続され、ゲートにバイアス電圧が供給され、第1のバイアス電流が流れる電流供給トランジスタと、
前記第1の電源と中間ノードとの間の第1の経路に前記第1のバイアス電流と等しい第1の電流を生成し、前記中間ノードと第2の電源との間の第2の経路に前記バイアス電圧に応じた第2の電流を生成し、前記中間ノードは、前記第1の経路と異なる第3の経路にて前記第1の電源と接続され、前記第2の入力電圧に応じて前記中間ノードと前記第2の電源との間の電流量を制限する制御回路と、
前記第3の経路に流れる第3の電流と等しい第2のバイアス電流を前記第2の差動対に供給する電流源と、
を備えたことを特徴とするオペアンプ。
【請求項2】
前記制御回路は、
前記バイアス電圧がゲートに供給され、前記第1の電源に接続され、前記第1の電流が流れるトランジスタと、
前記第1の電流を流すトランジスタのドレインにソースが接続され、ドレインが前記中間ノードに接続され、ゲートに前記第2の入力電圧が供給されるトランジスタと、
前記バイアス電圧がゲートに供給され、前記第1の電源に接続され、前記バイアス電圧に応じた第4の電流が流れるトランジスタと、
前記第4の電流を受け、前記第3の電流を生成するカレントミラー回路と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のオペアンプ。
【請求項3】
前記制御回路は、前記中間ノードと前記カレントミラー回路との間に接続され、ゲートに前記第2の入力電圧が供給されるトランジスタを含むことを特徴とする請求項2に記載のオペアンプ。
【請求項4】
定電流源と、前記第1の電源と前記定電流源との間に直列接続された2つのトランジスタとを含み、前記2つのトランジスタのゲートは互いに接続されるとともに前記定電流源に接続され、前記ゲート電圧を生成する電圧生成回路を備え、
前記制御回路は、
前記第4の電流を流すトランジスタと前記カレントミラー回路との間に接続され、ゲートに前記バイアス電圧が供給されるトランジスタと、
を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載のオペアンプ。
【請求項5】
前記カレントミラー回路の入力側トランジスタのドレインに接続され、ゲートに前記第2の入力電圧が供給されるトランジスタを含み、
前記カレントミラー回路に含まれるトランジスタのゲートは前記トランジスタのドレインに接続される、
ことを特徴とする請求項2〜4の何れか一項に記載のオペアンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−80245(P2012−80245A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222219(P2010−222219)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】