説明

オレフィン系重合体およびその製造方法

【課題】耐熱性、靭性などの機械物性等に優れたオレフィン系重合体を提供する。
【解決手段】3−メチル−1−ペンテン含有量が50重量%以上、炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィン含有量50重量%未満を含んで成るオレフィン系重合体であって、i)極限粘度([η])の値が0.1〜30dl/gであり、ii)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との割合(Mw/Mn)が1.0〜3.5の範囲にあることを特徴とするオレフィン系重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオレフィン系重合体に関し、さらに詳しくは、耐熱性に優れ、特定の分子量分布を有するオレフィン系共重合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン系重合体は、加工性、耐薬品性、電気的性質、機械的性質などに優れているため、押出成形品、射出成形品、中空成形品、フィルム、シートなどに加工され、日用雑貨、台所用品、包装用フィルム、繊維・不織布、家電製品、機械部品、電気部品、自動車部品など、多方面の用途に供されている。特に特開平6−032952号公報等で公知の4-メチル-1-ペンテン等の分岐型オレフィンを含むオレフィン系重合体は、透明性、ガス透過性、耐薬品性とともに耐熱性に優れた樹脂として、医療器具、耐熱電線、耐熱食器など様々な分野で利用されている。特開平8−165451号公報、特開平9−176562号公報では、3−メチルブテン、3−メチルペンテン等を含むオレフィン重合体が耐熱性に優れた樹脂である旨記載されている。
【0003】
こうしたオレフィン系重合体は、遷移金属化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒、いわゆるチーグラー型触媒を用いて製造されるのが一般的である。しかし、重合体の分子量などの組成が均一でないため、靭性等の機械物性、強度が低下してしまい、製品として改良すべき問題があった。
【0004】
このため、成形性に優れ、耐衝撃性、耐熱性、外観性、剛性および引張り破断伸びに優れるような高耐熱性オレフィン系重合体が製造できれば、その工業的価値は極めて大きく、そのようなオレフィン系重合体の出現が切望されている。
【0005】
他方、オレフィン系エラストマーであるオレフィン系重合体は、衝撃吸収性、ヒートシール性等に優れた材料として、単独で用いられる以外に、上記オレフィン系重合体の改質材としても用いられている。
【0006】
しかしながら従来のオレフィン系エラストマーは、耐熱性などの熱的性質が必ずしも充分ではなかった。また従来は、分子量が小さいために物性が不十分であるといった問題点があった。このため、耐熱性に優れると共に、高分子量化によって各種物性バランスに優れた新規なオレフィン系重合体が製造できれば、その工業的価値は極めて大きく、そのようなオレフィン系重合体の出現が切望されている。

【特許文献1】特開平6−032952号公報
【特許文献2】特開平8−165451号公報
【特許文献3】特開平9−176562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らはこのような従来技術のもと検討した結果、特定の触媒を用いてオレフィン系樹脂を製造すれば、耐熱性に優れ、従来供されていた重合体の課題を克服した新規なオレフィン系重合体が得られることを見出して本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るオレフィン系重合体は、3−メチル−1−ペンテン含有量が50重量%以上、炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィン含有量50重量%未満を含んで成るオレフィン系単独または共重合体であって、i)極限粘度([η])の値が0.1〜30dl/gであり、ii)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との割合(Mw/Mn)が1.0〜3.5の範囲にあることを特徴とするオレフィン系重合体である。
【0009】
また本発明は、該オレフィン系重合体を、特定構造の触媒を用いて製造することを特徴とする、オレフィン系重合体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るオレフィン系重合体は、耐熱性、靭性などの機械物性等に優れたオレフィン系重合体である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係るオレフィン系重合体について具体的に説明する。
【0012】
3−メチル−1−ペンテン含有量が50重量%以上、炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィン含有量50重量%未満を含んで成るオレフィン系重合体である。
【0013】
本発明において用いられる、炭素原子数2〜20のオレフィンとしては、例えば直鎖状または分岐状のα-オレフィン、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、非共役ポリエン、官能化ビニル化合物などが挙げられる。
【0014】
直鎖状または分岐状のα-オレフィンとして具体的には、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどの炭素原子数2〜20、好ましくは2〜10の直鎖状のα-オレフィン;例えば3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセンなどの好ましくは5〜20、より好ましくは5〜10の分岐状のα-オレフィンが挙げられる。
【0015】
環状オレフィンとしては、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、ビニルシクロヘキサンなどの炭素原子数3〜20、好ましくは5〜15のものが挙げられる。
【0016】
芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、およびα-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレンなどのモノまたはポリアルキルスチレンが挙げられる。
【0017】
共役ジエンとしては、例えば1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエンなどの炭素原子数4〜20、好ましくは4〜10のものが挙げられる。
【0018】
非共役ポリエンとしては、例えば1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン(DMDT)、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペンル-2-ノルボルネン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエンなどの炭素原子数5〜20、好ましくは5〜10のものが挙げられる。
【0019】
官能化ビニル化合物としては、水酸基含有オレフィン、ハロゲン化オレフィン、アクリル酸、プロピオン酸、3−ブテン酸、4−ペンテン酸、5−ヘキセン酸、6−ヘプテン酸、7−オクテン酸、8−ノネン酸、9−デセン酸などの不飽和カルボン酸類、アリルアミン、5−ヘキセンアミン、6−ヘプテンアミンなどの不飽和アミン類、(2,7−オクタジエニル)コハク酸無水物、ペンタプロペニルコハク酸無水物および上記不飽和カルボン酸類にある化合物の例示において、カルボン酸基をカルボン酸無水物基に置き換えた化合物などの不飽和酸無水物類、上記不飽和カルボン酸類にある化合物の例示において、カルボン酸基をカルボン酸ハライド基に置き換えた化合物などの不飽和カルボン酸ハライド類、4−エポキシ−1−ブテン、5−エポキシ−1−ペンテン、6−エポキシ−1−ヘキセン、7−エポキシ−1−ヘプテン、8−エポキシ−1−オクテン、9−エポキシ−1−ノネン、10−エポキシ−1−デセン、11−エポキシ−1−ウンデセンなどの不飽和エポキシ化合物類などが挙げられる。
【0020】
上記水酸基含有オレフィンとしては、水酸基含有のオレフィン系化合物であれば特に制限は無いが、例えば末端水酸化オレフィン化合物が挙げられる。
【0021】
末端水酸化オレフィン化合物として具体的には、例えばビニルアルコール、アリルアルコール、水酸化−1−ブテン、水酸化−1−ペンテン、水酸化−1−ヘキセン、水酸化−1−オクテン、水酸化−1−デセン、水酸化−1−ドデセン、水酸化−1−テトラデセン、水酸化−1−ヘキサデセン、水酸化−1−オクタデセン、水酸化−1−エイコセンなどの炭素原子数2〜20、好ましくは2〜10の直鎖状の水酸化α-オレフィン;例えば水酸化−3−メチル−1−ブテン、水酸化−4−メチル−1−ペンテン、水酸化−3−メチル−1−ペンテン、水酸化−3−エチル−1−ペンテン、水酸化−4,4−ジメチル−1−ペンテン、水酸化−4−メチル−1−ヘキセン、水酸化−4,4−ジメチル−1−ヘキセン、水酸化−4−エチル−1−ヘキセン、水酸化−3−エチル−1−ヘキセンなどの好ましくは5〜20、より好ましくは5〜10の分岐状の水酸化α-オレフィンが挙げられる。
【0022】
上記ハロゲン化オレフィンとして具体的には、例えば塩素、臭素、よう素等周期律表第17族原子を有する、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化−1−ブテン、ハロゲン化−1−ペンテン、ハロゲン化−1−ヘキセン、ハロゲン化−1−オクテン、ハロゲン化−1−デセン、ハロゲン化−1−ドデセン、ハロゲン化−1−テトラデセン、ハロゲン化−1−ヘキサデセン、ハロゲン化−1−オクタデセン、ハロゲン化−1−エイコセンなどの炭素原子数2〜20、好ましくは2〜10の直鎖状のハロゲン化α-オレフィン;例えばハロゲン化−3−メチル−1−ブテン、ハロゲン化−4−メチル−1−ペンテン、ハロゲン化−3−メチル−1−ペンテン、ハロゲン化−3−エチル−1−ペンテン、ハロゲン化−4,4−ジメチル−1−ペンテン、ハロゲン化−4−メチル−1−ヘキセン、ハロゲン化−4,4−ジメチル−1−ヘキセン、ハロゲン化−4−エチル−1−ヘキセン、ハロゲン化−3−エチル−1−ヘキセンなどの好ましくは5〜20、より好ましくは5〜10の分岐状のハロゲン化α-オレフィンが挙げられる。
【0023】
3−メチル−1−ペンテンとともに用いられる上記オレフィン類は、1種類であっても良く、2種類以上の組合せで用いることもできる。
【0024】
本発明に係るオレフィン系重合体は、例えばNMR等を用いた測定によって明らかとなるその立体規則性は、アイソタクティシティーが50%以上、あるいはシンジオタクティシティーが50%以上のポリオレフィンのいずれであってもよい。好ましくはアイソタクティシティーあるいはシンジオタクティシティーから選ばれるいずれかのタクティシティーが70%以上のポリオレフィンである。
【0025】
本発明に係るオレフィン系重合体の分子量は、デカリン中で測定される極限粘度([η])の値が0.1〜30dl/gである。より好ましくは0.2〜20dl/gである。また、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)がポリスチレン換算で1,000〜10,000,000である。より好ましくは1,500〜5,000,000である。また重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との割合(Mw/Mn)は、1.0〜3.5の範囲である。Mw/Mnの値が大きいと、該重合体の靭性等の機械物性を発現するのに不利である。該重合体のMw/Mnの値が1.0〜3.5の範囲にあれば、靭性等の機械物性を発現するのに有利であり、工業的に価値がある。該重合体のMw/Mnの値は好ましくは1.0〜3.0の範囲であり、より好ましくは1.0〜2.8の範囲である。
【0026】
次に、本発明に係るオレフィン系重合体を詳細に説明する。
<重合体A>
本発明に係るオレフィン系重合体Aは、3−メチル−1−ペンテン含有量が50重量%以上、炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィン含有量が50重量%未満から成るオレフィン系重合体である。一般に、炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィン含有量が増加していけば、該重合体の融点は低下する傾向に有る。本発明に係るオレフィン系重合体AのDSCで測定した融点(Tm)は、観測されなくても良い。
【0027】
<重合体B>
本発明に係るオレフィン系重合体Bは、3−メチル−1−ペンテン含有量が80重量%以上、炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィン含有量10重量%未満を含んで成るオレフィン系重合体である。本発明に係るオレフィン系重合体BのDSCで測定した融点(Tm)は、260℃以上である。オレフィン系重合体の融点が高ければ、該重合体に耐熱性を付与するために有利である。該オレフィン系重合体のDSCで測定した融点(Tm)は、好ましくは270℃以上であり、更に好ましくは280℃以上である。
【0028】
本発明に係るオレフィン系重合体Bの、デカン可溶部量の割合は10重量%以下である。デカンにより抽出される量が多いと、成型加工性の悪化を招き工業的に不利である。デカン可溶部量の割合は、好ましくは5重量%以下であり、より好ましくは3重量%以下である。更に好ましくは1重量%以下である。
【0029】
本発明に係るオレフィン系重合体が共重合体である場合は、好ましくは共重合モノマー連鎖分布のランダム性を示すパラメータB値が、1.0〜1.5好ましくは1.0〜1.3より好ましくは1.0〜1.2である。
【0030】
このパラメータB値はコールマン等(B.D.Cole-man and T.G.Fox, J. Polym.Sci., Al,3183(1963) )により提案されており、以下のように定義される。
B=P12/(2P1 ・P2
ここで、P1 、P2 はそれぞれ第1モノマー、第2モノマー含量分率であり、P12は全二分子連鎖中の(第1モノマー)−(第2モノマー)連鎖の割合である。なおこのB値は1のときベルヌーイ統計に従い、B<1のとき共重合体はブロック的であり、B>1のとき交互的である。

次に、本発明に係るオレフィン系重合体の製造方法について説明する。
【0031】
本発明に係るオレフィン系重合体の製造に用いられるオレフィン重合触媒は、三塩化チタン触媒、マグネシウム担持型チタン触媒、メタロセン触媒など従来公知の触媒が挙げられ、例えば国際公開特許WO01/53369、WO01/27124、特開平3−193796あるいは特開平02−41303中に記載の触媒が好適に用いられる。
【0032】
本発明にかかるオレフィン系重合体の製造には、下記一般式[1]、[2]または[3]で表されるメタロセン化合物を用いたオレフィン重合触媒が好適に用いられる。
【0033】
【化1】

【0034】
【化2】

【0035】
(式[1]または[2]中、R2は炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R1、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12は水素、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R3からR10までの隣接した置換基は互いに結合して環を形成してもよく、Aは一部不飽和結合および/または芳香族環を含んでいてもよい炭素数2〜20の2価の炭化水素基であり、AはYと共に形成する環を含めて2つ以上の環構造を含んでいてもよく、Mは周期表第4族から選ばれた金属であり、Yは炭素またはケイ素であり、Qはハロゲン、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選んでもよく、jは1〜4の整数である。)
【0036】
本発明において、上記一般式[1]または[2]のR2は、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基から選ばれる。また上記一般式[1]または[2]のR1、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12は水素、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0037】
炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜20のアリールアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアルキルアリール基であり、1つ以上の環構造を含んでいてもよい。その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、1,1-ジエチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1,1,2,2-テトラメチルプロピル、sec-ブチル、tert-ブチル、1,1-ジメチルブチル、1,1,3-トリメチルブチル、ネオペンチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシル、1-メチル-1-シクロヘキシル、1-アダマンチル、2-アダマンチル、2-メチル-2-アダマンチル、メンチル、ノルボルニル、ベンジル、2-フェニルエチル、1-テトラヒドロナフチル、1-メチル-1-テトラヒドロナフチル、フェニル、ナフチル、トリル等が挙げられる。
【0038】
ケイ素含有炭化水素基としては、好ましくはケイ素数1〜4、炭素数3〜20のアルキルまたはアリールシリル基であり、その具体例としては、トリメチルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、トリフェニルシリル等が挙げられる。なお、R2は立体的に嵩高い置換基であることが好ましく、炭素数4以上の置換基であることがより好ましい。
【0039】
フルオレン環上のR3からR10までの隣接した置換基は、互いに結合して環を形成してもよい。そのような置換フルオレニル基として、ベンゾフルオレニル、ジベンゾフルオレニル、オクタヒドロジベンゾフルオレニル、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル等を挙げることができる。
【0040】
また、フルオレン環上のR3からR10の置換基は、合成上の容易さから左右対称、すなわちR3=R10、R4=R9、R5=R8、R6=R7であることが好ましく、無置換フルオレン、3,6-二置換フルオレン、2,7-二置換フルオレンまたは2,3,6,7-四置換フルオレンであることがより好ましい。ここでフルオレン環上の3位、6位、2位、7位はそれぞれR5、R8、R4、R9に対応する。
【0041】
上記一般式[1]のR11とR12は、水素、炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよい。好ましい炭化水素基の具体例としては、上記と同様のものを挙げることができる。
【0042】
Yは炭素またはケイ素である。一般式[1]の場合は、R13とR14はYと結合し、架橋部として置換メチレン基または置換シリレン基を構成する。好ましい具体例としては、上記と同様のものを挙げることができる。
【0043】
一般式[2]の場合は、 Yは一部不飽和結合および/または芳香族環を含んでいてもよい炭素数2〜20の2価の炭化水素基Aと結合し、シクロアルキリデン基またはシクロメチレンシリレン基等を構成する。好ましい具体例としては、上記と同様のものを挙げることができる。
【0044】
本発明において、一般式[1]または[2]のMは、周期表第4族から選ばれる金属であり、Mとしてはチタニウム、ジルコニウム、ハフニウムが挙げられる。Qはハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、アニオン配位子、または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選ばれる。
【0045】
ハロゲンの具体例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素であり、炭化水素基の具体例としては、上記と同様のものを挙げることができる。アニオン配位子の具体例としては、メトキシ、tert−ブトキシ、フェノキシ等のアルコキシ基、アセテート、ベンゾエート等のカルボキシレート基、メシレート、トシレート等のスルホネート基等が挙げられる。孤立電子対で配位可能な中性配位子の具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物、またはテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1、2−ジメトキシエタン等のエーテル類が挙げられる。これらのうち、Qは同一でも異なった組み合わせでもよいが、少なくとも一つはハロゲンまたはアルキル基であるのが好ましい。
【0046】
本発明における上記メタロセン化合物の具体例としては、WO01/27124中に例示される化合物が好適に挙げられるが、特にこれによって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0047】
本発明にかかるオレフィン系重合体は、下記一般式[3]で表されるメタロセン化合物を用いたオレフィン重合触媒によっても好適に製造される。
【0048】
【化3】

【0049】
(式中、M1は周期表第4族の遷移金属原子を示し、R1は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数1〜6の炭化水素基を示し、R2、R4、R5およびR6は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子またはR1と同様の炭素原子数1〜6の炭化水素基を示し、R3は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数6〜16のアリール基を示す。X1およびX2はハロゲン、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選んでもよく、Yは炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基、炭素原子数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO−、−Ge−、−Sn−、−NR−、−PR−、−P(O)R−、−BR−、−AlR−(但し、Rは互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基、炭素原子数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、水素原子、ハロゲン原子または窒素原子に炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基が1個または2個結合した窒素化合物残基である)を示す。)
式中、M1は周期表第4族の遷移金属原子を示し、具体的にはチタン、ジルコジルコニウムまたはハフニウムであり、好ましくはジルコニウムである。R1は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数1〜6の炭化水素基を示し、具体的にはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシルなどのアルキル基;ビニル、プロペニルなどのアルケニル基などが挙げられる。これらのうちインデニル基に結合した炭素原子が1級のアルキル基が好ましく、さらに炭素原子数1〜4のアルキル基が好ましく、特にメチル基およびエチル基が好ましい。
【0050】
2、R4、R5およびR6は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子またはR1と同様の炭素原子数1〜6の炭化水素基を示す。R3は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数6〜16のアリール基を示し、具体的にはフェニル、α-ナフチル、β-ナフチル、アントリル、フェナントリル、ピレニル、アセナフチル、フェナレニル、アセアントリレニル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニリルなどが挙げられる。これらのうちフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリルであることが好ましい。これらのアリール基は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子;メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル、アイコシル、ノルボルニル、アダマンチルなどのアルキル基;ビニル、プロペニル、シクロヘキセニルなどのアルケニル基;ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピルなどのアリールアルキル基;フェニル、トリル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ビフェニリル、α-またはβ-ナフチル、メチルナフチル、アントリル、フェナントリル、ベンジルフェニル、ピレニル、アセナフチル、フェナレニル、アセアントリレニル、テトラヒドロナフチル、インダニルなどのアリール基などの炭素原子数1〜20の炭化水素基;トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリフェニルシリルなどの有機シリル基で置換されていてもよい。
【0051】
1およびX2は、互いに同一でも異なっていてもよく、前記一般式(1)および(2)中のQと同義である。これらのうち、ハロゲン原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。Yは炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基、炭素原子数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO−、−Ge−、−Sn−、−NR−、−PR−、−P(O)R−、−BR−、−AlR−(但し、Rは互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基、炭素原子数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、水素原子、ハロゲン原子または窒素原子に炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基が1個または2個結合した窒素化合物残基であり、これらのうち、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のアルキレン基、2価のホウ素原子含有ボロニル基であることが好ましく、2価のケイ素含有基、2価のアルキレン基であることがより好ましく、アルキルシリレン、アルキルアリールシリレン、アリールシリレン、アルキルアルキレン、アリールアルキレンであることがより好ましい。
【0052】
上記一般式(3)で表されるメタロセンの具体的な例としては、特開2002−155019号公報記載のメタロセン化合物を例示することができるが、特にこれによって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0053】
また上記のような化合物中のジルコニウムをチタンまたはハフニウムに代えた化合物を挙げることもできる。本発明では、メタロセンのラセミ体が触媒成分として用いられるが、R型またはS型を用いることもできる。このようなメタロセンは、Journal of Organometallic Chem.288(1985)、第63−67頁、ヨーロッパ特許出願公開第0,320,762号明細書に準じて製造することができる。
【0054】
本発明における上記メタロセン化合物の具体例としては、WO01/27124中に例示される化合物が好適に挙げられるが、特にこれによって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0055】
本発明の方法にかかるオレフィン系重合体の製造が、メタロセン触媒を用いて行なわれる場合、触媒成分は
(A)上記一般式[1]または[2]で表されるメタロセン化合物と、
(B)(B-1) 有機金属化合物、
(B-2) 有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B-3) メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物、
さらに必要に応じて、
(C)微粒子状担体
から構成される、一般に公知の方法で重合触媒として用いることが出来、例えばWO01/27124記載の方法を採用することが出来る。
【0056】
本発明では、重合は溶解重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法いずれにおいても実施できる。液相重合法においては、不活性炭化水素溶媒を用いてもよく、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などを挙げることができ、重合に用いる4−メチル−1−ペンテンを含んだオレフィン類自身を溶媒として用いることもできる。
【0057】
重合を行うに際して、成分(A)は、反応容積1リットル当り、通常10-8〜10-2モル、好ましくは10-7〜10-3モルとなるような量で用いられる。
【0058】
成分(B-1) は、成分(B-1) と、成分(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(B-1) /M〕が、通常0.01〜5000、好ましくは0.05〜2000となるような量で用いられる。成分(B-2) は、成分(B-2) 中のアルミニウム原子と、成分(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(B-2) /M〕が、通常10〜5000、好ましくは20〜2000となるような量で用いられる。成分(B-3) は、成分(B-3) と、成分(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(B-3) /M〕が、通常1〜10、好ましくは1〜5となるような量で用いられる。
【0059】
また、このようなオレフィン重合触媒を用いたオレフィンの重合温度は、通常−50〜400℃、好ましくは10〜300℃、より好ましくは10〜250℃の範囲である。重合温度が低すぎると単位触媒あたりの重合活性が低下してしまい、工業的に好ましくない。
【0060】
重合圧力は、通常常圧〜10MPaゲージ圧、好ましくは常圧〜5MPaゲージ圧の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
【0061】
重合に際して生成ポリマーの分子量や重合活性を制御する目的で水素を添加することができ、その量はオレフィン1kgあたり0.001〜100NL程度が適当である。
【0062】
本発明において、4-メチル-1-ペンテンとともに重合反応に供給されるオレフィンとしては、炭素数2〜20のオレフィン、特に炭素数2〜10のα−オレフィンが好ましい。具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、ビニルシクロヘキサン、スチレン等が挙げられる。
【0063】
また、さらにブタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン等の炭素数4〜20のジエン、あるいは、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン、メチルノルボルネン、テトラシクロドデセン、メチルテトラシクロドデセン等の環状オレフィン、あるいは、アリルトリメチルシラン、ビニルトリメチルシラン等のケイ素含有オレフィン等が挙げられる。
【0064】
これらの4-メチル-1-ペンテンを含むオレフィンは、単独で重合しても、2種類以上の組み合わせで重合してもよい。このような共重合体として、4-メチル-1-ペンテン単位が80ないし100重量%、及びエチレン及び/または他のα−オレフィン単位が20ないし0重量%からなる共重合体がある。
【0065】
(用途)
本発明に係るオレフィン系重合体は、耐熱性、離型性、光学特性、電気特性、耐薬品性、対候性,靭性等の機会物性に優れたオレフィン系重合体であり、カレンダー成形、押出成形、射出成形、ブロー成形、プレス成形、スタンピング成形などの各種成型よって加工することができ、射出成型品、中空容器、フィルムシート、繊維等の用途はもとより、その用途としては制限無く用いることができる。
【0066】
本発明に係るオレフィン系重合体は、各種産業資材、理化学実験器具、耐熱食器等の食品容器、剥離用材、電線、各種キャップ等の一般消費材等の用途に好適に用いることが出来る。
【0067】
加工品としては、具体的には、ドアトリム、インストルメントパネル等の自動車内装部品、バンパー、マッドガード等の自動車外装部品のような自動車用部材に例示される自動車用内外装材またはガソリンタンク、ホットプレート、炊飯ジャー、ポットのボディーや洗濯機等の家電製品部材、バッテリー容器等の容器、注射器の注射筒、アンプル、シャーレ等の医療用器具、高圧ゴムホース用マンドレル、LEDモールド、電子レンジ食器、鮮度保持パックなど、各種成型加工品に好適に用いられる。
【0068】
フィルムシートは、透明性、外観、機械強度特性に優れた保護フィルムシートとして制限無く好適に用いられる。また、得られるシート、フィルムなどを用いて、電子回路基盤製造に用いられる離型フィルムとして用いられる。さらに不織布積層体、紙にラミネートされた積層体などの成形体を得ることもできる。本発明に係るフィルムまたはシートは、組成の異なる2層以上の層から成る多層構造のフィルムまたはシートであって、これらの層のうち少なくとも1層が前記した本発明に係るオレフィン系重合体から成る層であり、外観、機械強度特性に優れたフィルムまたはシートとして好適に用いられる。オレフィン系重合体を用いて得られるフィルムまたはシートは、特に透明性、耐熱性、防雲性に優れるため、農業用および食品用ラップフィルム、ベーキングカートンとして好ましい。また合成皮革用離型紙としても好適に用いられる。
【0069】
本発明に係るオレフィン系重合体を用いた繊維としては、特に制限は無く用いることができるが、ロープ用繊維、不織布用繊維として好適に用いられる。特に耐熱バッテリーセパレータとして好適に用いられる。またフィラメントは、例えば溶融した組成物を、紡糸口金を通して押出すことにより製造することができる。
【0070】
中空容器としては特に制限は無く用いることができるが、この中空容器は、透明性、機械強度特性に優れており、固体洗剤容器をはじめ、液体洗剤や化粧水用の容器、食品、飲料水用容器として好適に用いられる。
【0071】
本発明に係るオレフィン系重合体は、本発明以外の熱可塑性樹脂とを含んでなる重合体組成物として、建材・土木用成形体、電気電子部品、医療用成形体、雑貨成形体などの成形体として、好適に用いられる。
【0072】
本発明に係るオレフィン系重合体は通常単独で用いてもよいし、水酸化マグネシウムなどの無機充填材またはビニルトリメトキシシランなどの架橋剤と併用して用いることができる。本発明においては、水酸化マグネシウムなどの無機充填材、ビニルトリメトキシシランなどの架橋剤と併用して用いることもできる。必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲において、各種の添加剤、例えば軟化剤、安定剤、充填剤、酸化防止剤、結晶核剤などを配合することができる。
【0073】
本発明に係るオレフィン系重合体と磁性粉を混練することにより、優れた磁気記録用素材を得ることができる。この場合、オレフィン系重合体と磁性粉との配合比率(オレフィン系ブロック共重合体/磁性粉:重量比)は、99/1〜10/90であることが好ましい。また、これらはプラスチックマグネットとして文房具などに好ましく用いることができる。
【0074】
本発明では必要に応じて、無機フィラーを添加して使用することもできる。これらの添加量は、接着性樹脂100重量部に対して、前記オレフィン系ブロック共重合体は通常5〜50重量部、好ましくは5〜20重量部であり、無機フィラーは通常10〜60重量部、好ましくは20〜40重量部であることが望ましい。
【0075】
本発明に係るオレフィン系重合体は、樹脂、ゴム、潤滑油用基材、ワックス、セメントまたはインキ・塗料とを含むオレフィン系重合体組成物であってもよい。
【0076】
本発明に係るオレフィン系重合体は、本発明以外の熱可塑性樹脂とを含んでなる分散体として、水性樹脂分散体、油性樹脂分散体として、好適に用いられる。熱可塑性樹脂の配合量は特に限定されないが、熱可塑性樹脂100重量部に対し、上記オレフィン系重合体を、通常0.01〜150重量部、必要に応じて充填剤を0.01〜300重量部、好ましくはオレフィン系重合体を0.1〜20重量部、充填剤を0.1〜40重量部、さらに好ましくはオレフィン系重合体を0.5〜10重量部、充填剤を0.5〜20重量部の量で用いることが好ましい。
【0077】
本発明で見出されたオレフィン系重合体は、耐熱性、靱性等の機械物性に優れた材料として、工業的に極めて価値がある。
【0078】
以下に実施例を示し、さらに本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0079】
本発明において、重合体の融点(Tm)は、示差走査熱量測定(DSC)によって、溶融状態で保持した重合体サンプルを、20℃まで冷却して5分間保持した後に、10℃/分で昇温させたときの結晶溶融ピークから算出した。
分子量(Mw、Mn)は、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー:ポリスチレン換算)により測定した。
デカン可溶部量は、重合体をn−デカンで150℃、2時間処理した後に室温に戻し、n−デカンに溶解した重量%を測定した。
極限粘度[η]は135℃デカリン中で測定を行った。
【実施例1】
【0080】
攪拌器を備え、十分に窒素置換した内容積500mlのガラス製重合器に、3−メチル−1−ペンテン(400ml)を導入し、温度を45℃に保った。メチルアルモキサン(MAO、アルベマール社製、10%トルエン溶液)4mmol[Al]で活性化されたイソプロピル(3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド(6.2mg)を加え、温度を45℃に保ちながら5時間重合を行った。メタノールを重合器内に導入して重合を終了し、重合液を2Lの塩酸含有のメタノール中に注ぎ込み、濾過によりポリマーを回収した。得られたポリマーは減圧下80℃で10時間乾燥し、2.5gのポリマーが得られた。ポリマーはTm=323.1℃、[η]=0.79(dl/g)であった。GPCで測定したMw/Mnは2.7であった。このポリマーのデカン可溶部量の割合は0.9重量%であった。
【実施例2】
【0081】
攪拌器を備え、十分に窒素置換した内容積500mlのガラス製重合器に、3−メチル−1−ペンテン(400ml)を導入し、温度を45℃に保った。メチルアルモキサン(MAO、アルベマール社製、10%トルエン溶液)4mmol[Al]で活性化されたジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド(6.3mg)を加え、水素ガスを3NL/時で導入しながら、温度を45℃に保ち1時間重合を行った。メタノールを重合器内に導入して重合を終了し、重合液を2Lの塩酸含有のメタノール中に注ぎ込み、濾過によりポリマーを回収した。得られたポリマーは減圧下80℃で10時間乾燥し、22.7gのポリマーが得られた。ポリマーはTm=316.7℃、[η]=0.38(dl/g)であった。GPCで測定したMw/Mnは1.6であった。
【実施例3】
【0082】
攪拌器を備え、十分に窒素置換した内容積500mlのガラス製重合器に、3−メチル−1−ペンテン(300ml)を導入し、温度を45℃に保った。メチルアルモキサン(MAO、アルベマール社製、10%トルエン溶液)4mmol[Al]で活性化されたエチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド(5.2mg)を加え、エチレンガスを20NL/時で導入しながら、温度を45℃に保ち1時間重合を行った。メタノールを重合器内に導入して重合を終了し、重合液を2Lの塩酸含有のメタノール中に注ぎ込み、濾過によりポリマーを回収した。得られたポリマーは減圧下80℃で10時間乾燥し、38.7gのポリマーが得られた。NMR測定から求めたポリマー中のエチレン含量は32mol%であり、ポリマー融点は観測されず、[η]=0.71(dl/g)であった。GPCで測定したMw/Mn=2.4であった。得られたポリマーのB値は1.11であった。
【0083】
〔比較例1〕
イソプロピル(3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド(6.2mg)の代わりに、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(3.0mg)を用いた以外は、実施例1と同様に重合を行なった。0.7gのポリマーが得られた。ポリマーの融点は観測されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−メチル−1−ペンテン含有量が50重量%以上、炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィン含有量50重量%未満を含んで成るオレフィン系単独または共重合体であって、i)極限粘度([η])の値が0.1〜30dl/gであり、ii)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との割合(Mw/Mn)が1.0〜3.5の範囲にあることを特徴とするオレフィン系重合体。
【請求項2】
3−メチル−1−ペンテン含有量が80重量%以上、炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィン含有量10重量%未満を含んで成るオレフィン系重合体であって、i)極限粘度([η])の値が0.1〜30dl/gであり、ii)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との割合(Mw/Mn)が1.0〜3.5の範囲にあり、iii)DSCで測定した融点(Tm)が260℃以上であり、iv)デカン可溶部量の割合が10重量%以下であることを特徴とする請求項1記載のオレフィン系重合体。
【請求項3】
周期表第4族の遷移金属を含んでなる有機金属化合物を含む触媒系を用いて製造することを特徴とする、請求項1乃至2に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至2のいずれかに記載のオレフィン系重合体を含んで成る射出成形品。
【請求項5】
請求項1乃至2のいずれかに記載のオレフィン系重合体を含んで成るフィルムシート。
【請求項6】
請求項1乃至2のいずれかに記載のオレフィン系重合体を含んで成る繊維。
【請求項7】
請求項1乃至2のいずれかに記載のオレフィン系重合体を含んで成る中空容器。

【公開番号】特開2007−161876(P2007−161876A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−359872(P2005−359872)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】