説明

オレフィン系重合体の製造方法およびオレフィン系重合体

【課題】比較的簡便な操作で重合触媒成分に由来する金属分残渣、特にはアルミニウム分残渣が低減されたオレフィン系重合体を得ることができるオレフィン系重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】有機アルミニウム化合物を含有する触媒系の存在下に溶液重合を行なうオレフィン系重合体の製造方法であり、(I)上記触媒系の存在下、オレフィン系単量体を、炭化水素溶媒中で重合する重合工程と、(II)重合反応溶液に活性プロトンを有する含酸素化合物を添加する工程と、(III)水層のpHが9〜13となるように、重合反応溶液に、水およびアルカリ性物質を添加し、混合した後、該アルカリ性水層を除去するアルカリ洗浄工程と、(IV)上記水層が除去された重合反応溶液からオレフィン系重合体を得る重合体分離工程とを含むことを特徴とするオレフィン系重合体の製造方法、および当該製造方法により得られるオレフィン系重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系重合体の製造方法およびオレフィン系重合体に関する。より詳しくは、重合触媒成分に由来する金属分残渣が低減されたオレフィン系重合体の製造方法および当該製造方法により得られるオレフィン系重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
重合触媒を用いた溶液重合法は、反応の制御性がよく、均一性の高い重合体が得られることから、オレフィン系重合体の製造に好適に使用される重合方法の1つである。しかし、溶液重合は、様々な利点を有する一方、重合反応溶液に、重合触媒成分が溶け込んでいる場合には、得られる重合体に重合触媒成分に由来する金属成分が残存しやすいという問題を有している。
【0003】
特に、重合触媒の活性化のために、有機アルミニウム化合物に代表される助触媒を併用することがあるが、その場合、有機アルミニウム化合物等の助触媒の使用量は、重合触媒に比べて多いのが通常であるため、オレフィン系重合体中のアルミニウム成分の含有量が極めて多くなるという問題があった。このようなアルミニウム等の金属成分残渣は、オレフィン系重合体の特性を低下させることがあるため、十分に除去する必要がある。
【0004】
上記問題を解決するための方法として、たとえば特許文献1、2には、重合反応溶液を塩酸・アセトン混合溶液または塩酸・メタノール混合溶液に投入して、重合触媒成分を可溶化処理する方法が記載されている。しかしながら、当該方法では塩酸を用いているため、設備が腐食されるという問題を生じる。
【0005】
また、特許文献3には、重合反応溶液に水やメタノール等の活性水素含有化合物を添加して、触媒中の金属に由来する析出物を生成させた後、さらに必要に応じて、活性白土や珪藻土を添加して、上記析出物を濾過により分離する方法が開示されている。しかし、当該方法によれば、濾過残渣の処理等を行なう必要が生じ、工程がより煩雑となる。
【0006】
さらに特許文献4では、重合反応溶液を、重合体の貧溶媒であるアセトン等に注ぎ、重合体と金属成分残渣とを析出させた後、得られた析出物から重合体を、該重合体の良溶媒であるトルエンで抽出する方法が提案されている。しかし、当該方法においては、溶媒使用量が多く、また、重合体の収量を上げるために複数回の抽出操作が必要であり、生産性が低いという問題がある。
【特許文献1】特開2000−230024号公報
【特許文献2】特開2002−206005号公報
【特許文献3】特開平11−116614号公報
【特許文献4】特開平11−158225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる状況に鑑みなされたものであり、その目的は、比較的簡便な操作で重合触媒成分に由来する金属分残渣、特にはアルミニウム分残渣が低減されたオレフィン系重合体を得ることができるオレフィン系重合体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、有機アルミニウム化合物を含有する触媒系の存在下に溶液重合を行なうオレフィン系重合体の製造方法であり、以下の工程:
(I)上記触媒系の存在下、1種または2種以上のオレフィン系単量体を、炭化水素溶媒中で重合する重合工程と、
(II)重合反応溶液に活性プロトンを有する含酸素化合物を添加する工程と、
(III)水層のpHが9〜13となるように、重合反応溶液に、水およびアルカリ性物質を添加し、混合した後、該アルカリ性水層を除去するアルカリ洗浄工程と、
(IV)上記水層が除去された重合反応溶液からオレフィン系重合体を得る重合体分離工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明のオレフィン系重合体の製造方法は、上記工程(III)の後に、重合反応溶液に水を添加し、混合した後、水層を除去する水洗工程をさらに有することが好ましい。
【0010】
ここで、上記触媒系は、オレフィン重合用金属化合物触媒と助触媒の有機アルミニウム化合物とを含有していてもよい。この場合、上記工程(II)における活性プロトンを有する含酸素化合物の添加量は、上記オレフィン重合用金属化合物触媒の金属原子1モルあたり、0.1〜1500モルであることが好ましい。
【0011】
また、上記工程(III)における、添加される水およびアルカリ性物質の合計量は、上記工程(II)で得られた重合反応溶液100質量部に対して、10〜100質量部であることが好ましく、上記水洗工程における、添加される水の量は、上記工程(III)で得られた重合反応溶液100質量部に対して、10〜100質量部であることが好ましい。
【0012】
上記工程(III)および/または上記水洗工程における混合は、混合温度20〜200℃、攪拌動力0.1〜2.0kW/m3の条件下で行なわれることが好ましい。
【0013】
上記オレフィン重合用金属化合物触媒は、下記一般式(1)で表されるメタロセン系化合物であってもよい。
【0014】
【化1】

【0015】
(上記式(1)中、M1は、元素の周期律表の第4族の遷移金属原子を示し、Aは元素の周期律表の第16族の原子を示し、Jは、元素の周期律表の第14族の原子を示す。Cp1はシクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基である。X1、X2、R1、R2、R3、R4、R5およびR6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、置換シリル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基または2置換アミノ基を示す。R1、R2、R3、R4、R5およびR6は任意に結合して環を形成してもよい。)
上記オレフィン系単量体の少なくとも1種は、炭素原子数2〜20のα−オレフィンであってもよい。
【0016】
また、本発明は、上記いずれかの製造方法により得られるオレフィン系重合体を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、触媒系に含まれる重合触媒成分に由来する金属分残渣、特にはアルミニウム分残渣が低減されたオレフィン系重合体を得ることができる。また、本発明によれば、油水分離という簡便な操作で金属分残渣を除去できることから、本発明のオレフィン系重合体の製造方法は、経済性にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、有機アルミニウム化合物を含有する触媒系の存在下に溶液重合を行なうオレフィン系重合体の製造方法であり、以下の工程:
(I)上記触媒系の存在下、1種または2種以上のオレフィン系単量体を、炭化水素溶媒中で重合する重合工程と、
(II)重合反応溶液に活性プロトンを有する含酸素化合物を添加する工程と、
(III)水層のpHが9〜13となるように、重合反応溶液に、水およびアルカリ性物質を添加し、混合した後、該アルカリ性水層を除去するアルカリ洗浄工程と、
(IV)上記水層が除去された重合反応溶液からオレフィン系重合体を得る重合体分離工程と、を含むことを特徴とする。以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
<重合工程(I)>
本工程は、有機アルミニウム化合物を含有する触媒系の存在下、1種または2種以上のオレフィン系単量体を、炭化水素溶媒中で重合する工程である。本発明で用いる触媒系としては、オレフィン系単量体を重合可能な触媒系であって、触媒成分として有機アルミニウム化合物を含むものであれば特に限定されるものではない。有機アルミニウム化合物は、当該触媒系中にオレフィン重合用触媒として含まれていてもよく、原料中の不純物の除去のために含まれてもよく、あるいは助触媒として含まれていてもよい。本発明で用いる触媒系の具体的な態様としては、(A)オレフィン重合用金属化合物触媒、(B)助触媒としての有機アルミニウム化合物、および/または(C)ホウ素化合物を含む触媒系を挙げることができる。以下、(A)〜(C)について説明する。
【0020】
((A)オレフィン重合用金属化合物触媒)
本発明で用いられるオレフィン重合用金属化合物触媒(A)としては、遷移金属化合物を挙げることができ、特に、一般式MLan-a(式中、Mは元素の周期律表の第4族またはランタナイド系列の遷移金属原子である。Lはシクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基またはヘテロ原子を含有する基であり、少なくとも一つはシクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基である。ふつう複数のLは互いに架橋しているが、特にLがインデニル形アニオン骨格の場合は架橋していなくてもよい。Xはハロゲン原子、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。nは遷移金属原子の原子価を表し、aは0<a≦nなる整数である。)で表されるメタロセン系化合物を好ましく用いることができる。これらは、単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0021】
上記一般式MLan-aで表されるメタロセン系化合物の中でも、下記一般式(1):
【0022】
【化2】

【0023】
(式(1)中、M1は元素の周期律表の第4族の遷移金属原子を示し、Aは元素の周期律表の第16族の原子を示し、Jは元素の周期律表の第14族の原子を示す。Cp1はシクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基である。X1、X2、R1、R2、R3、R4、R5およびR6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、置換シリル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基または2置換アミノ基を示す。R1、R2、R3、R4、R5およびR6は任意に結合して環を形成してもよい。)で示されるメタロセン系化合物がより好ましい。
【0024】
一般式(1)において、M1で示される遷移金属原子とは、元素の周期律表(IUPAC無機化学命名法改訂版1989)の第4族の遷移金属元素を示し、たとえばチタニウム原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子などが挙げられる。好ましくはチタニウム原子またはジルコニウム原子である。
【0025】
置換基Cp1として示されるシクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基としては、たとえばη5−(置換)シクロペンタジエニル基、η5−(置換)インデニル基、η5−(置換)フルオレニル基などである。具体的には、η5−シクロペンタジエニル基、η5−メチルシクロペンタジエニル基、η5−ジメチルシクロペンタジエニル基、η5−トリメチルシクロペンタジエニル基、η5−テトラメチルシクロペンタジエニル基、η5−エチルシクロペンタジエニル基、η5−n−プロピルシクロペンタジエニル基、η5−イソプロピルシクロペンタジエニル基、η5−n−ブチルシクロペンタジエニル基、η5−sec−ブチルシクロペンタジエニル基、η5−tert−ブチルシクロペンタジエニル基、η5−n−ペンチルシクロペンタジエニル基、η5−ネオペンチルシクロペンタジエニル基、η5−n−ヘキシルシクロペンタジエニル基、η5−n−オクチルシクロペンタジエニル基、η5−フェニルシクロペンタジエニル基、η5−ナフチルシクロペンタジエニル基、η5−トリメチルシリルシクロペンタジエニル基、η5−トリエチルシリルシクロペンタジエニル基、η5−tert−ブチルジメチルシリルシクロペンタジエニル基、η5−インデニル基、η5−メチルインデニル基、η5−ジメチルインデニル基、η5−エチルインデニル基、η5−n−プロピルインデニル基、η5−イソプロピルインデニル基、η5−n−ブチルインデニル基、η5−sec−ブチルインデニル基、η5−tert−ブチルインデニル基、η5−n−ペンチルインデニル基、η5−ネオペンチルインデニル基、η5−n−ヘキシルインデニル基、η5−n−オクチルインデニル基、η5−n−デシルインデニル基、η5−フェニルインデニル基、η5−メチルフェニルインデニル基、η5−ナフチルインデニル基、η5−トリメチルシリルインデニル基、η5−トリエチルシリルインデニル基、η5−tert−ブチルジメチルシリルインデニル基、η5−テトラヒドロインデニル基、η5−フルオレニル基、η5−メチルフルオレニル基、η5−ジメチルフルオレニル基、η5−エチルフルオレニル基、η5−ジエチルフルオレニル基、η5−n−プロピルフルオレニル基、η5−ジ−n−プロピルフルオレニル基、η5−イソプロピルフルオレニル基、η5−ジイソプロピルフルオレニル基、η5−n−ブチルフルオレニル基、η5−sec−ブチルフルオレニル基、η5−tert−ブチルフルオレニル基、η5−ジ−n−ブチルフルオレニル基、η5−ジ−sec−ブチルフルオレニル基、η5−ジ−tert−ブチルフルオレニル基、η5−n−ペンチルフルオレニル基、η5−ネオペンチルフルオレニル基、η5−n−ヘキシルフルオレニル基、η5−n−オクチルフルオレニル基、η5−n−デシルフルオレニル基、η5−n−ドデシルフルオレニル基、η5−フェニルフルオレニル基、η5−ジ−フェニルフルオレニル基、η5−メチルフェニルフルオレニル基、η5−ナフチルフルオレニル基、η5−トリメチルシリルフルオレニル基、η5−ビス−トリメチルシリルフルオレニル基、η5−トリエチルシリルフルオレニル基、η5−tert−ブチルジメチルシリルフルオレニル基などが挙げられ、好ましくはη5−シクロペンタジエニル基、η5−メチルシクロペンタジエニル基、η5−tert−ブチルシクロペンタジエニル基、η5−テトラメチルシクロペンタジエニル基、η5−インデニル基、またはη5−フルオレニル基である。一般式(1)において、Aとして示される元素の周期律表の第16族の原子としては、たとえば酸素原子、硫黄原子、セレン原子などが挙げられ、好ましくは酸素原子である。
【0026】
一般式(1)において、Jとして示される元素の周期律表の第14族の原子としては、たとえば炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子などが挙げられ、好ましくは炭素原子またはケイ素原子である。
【0027】
置換基X1、X2、R1、R2、R3、R4、R5またはR6におけるハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが例示され、好ましくは塩素原子または臭素原子であり、より好ましくは塩素原子である。
【0028】
置換基X1、X2、R1、R2、R3、R4、R5またはR6におけるアルキル基としては、炭素原子数1〜20のアルキル基が好ましく、たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ペンタデシル基、n−エイコシル基などが挙げられ、より好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基またはアミル基である。
【0029】
これらのアルキル基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子で置換された炭素原子数1〜20のアルキル基としては、たとえばフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、ヨードメチル基、ジヨードメチル基、トリヨードメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、クロロエチル基、ジクロロエチル基、トリクロロエチル基、テトラクロロエチル基、ペンタクロロエチル基、ブロモエチル基、ジブロモエチル基、トリブロモエチル基、テトラブロモエチル基、ペンタブロモエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロドデシル基、パーフルオロペンタデシル基、パーフルオロエイコシル基、パークロロプロピル基、パークロロブチル基、パークロロペンチル基、パークロロヘキシル基、パークロロオクチル基、パークロロドデシル基、パークロロペンタデシル基、パークロロエイコシル基、パーブロモプロピル基、パーブロモブチル基、パーブロモペンチル基、パーブロモヘキシル基、パーブロモオクチル基、パーブロモドデシル基、パーブロモペンタデシル基、パーブロモエイコシル基などが挙げられる。またこれらのアルキル基はいずれも、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアラルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0030】
置換基X1、X2、R1、R2、R3、R4、R5またはR6におけるアラルキル基としては、炭素原子数7〜20のアラルキル基が好ましく、たとえばベンジル基、(2−メチルフェニル)メチル基、(3−メチルフェニル)メチル基、(4−メチルフェニル)メチル基、(2,3−ジメチルフェニル)メチル基、(2,4−ジメチルフェニル)メチル基、(2,5−ジメチルフェニル)メチル基、(2,6−ジメチルフェニル)メチル基、(3,4−ジメチルフェニル)メチル基、(3,5−ジメチルフェニル)メチル基、(2,3,4−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,5−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,6−トリメチルフェニル)メチル基、(3,4,5−トリメチルフェニル)メチル基、(2,4,6−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,5−テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,6−テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)メチル基、(ペンタメチルフェニル)メチル基、(エチルフェニル)メチル基、(n−プロピルフェニル)メチル基、(イソプロピルフェニル)メチル基、(n−ブチルフェニル)メチル基、(sec−ブチルフェニル)メチル基、(tert−ブチルフェニル)メチル基、(n−ペンチルフェニル)メチル基、(ネオペンチルフェニル)メチル基、(n−ヘキシルフェニル)メチル基、(n−オクチルフェニル)メチル基、(n−デシルフェニル)メチル基、(n−デシルフェニル)メチル基、(n−ドデシルフェニル)メチル基、(n−テトラデシルフェニル)メチル基、ナフチルメチル基、アントラセニルメチル基などが挙げられ、より好ましくはベンジル基である。これらのアラルキル基はいずれもフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアラルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0031】
置換基X1、X2、R1、R2、R3、R4、R5またはR6におけるアリール基としては、炭素原子数6〜20のアリール基が好ましく、たとえばフェニル基、2−トリル基、3−トリル基、4−トリル基、2,3−キシリル基、2,4−キシリル基、2,5−キシリル基、2,6−キシリル基、3,4−キシリル基、3,5−キシリル基、2,3,4−トリメチルフェニル基、2,3,5−トリメチルフェニル基、2,3,6−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリメチルフェニル基、2,3,4,5−テトラメチルフェニル基、2,3,4,6−テトラメチルフェニル基、2,3,5,6−テトラメチルフェニル基、ペンタメチルフェニル基、エチルフェニル基、n−プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、sec−ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、n−ペンチルフェニル基、ネオペンチルフェニル基、n−ヘキシルフェニル基、n−オクチルフェニル基、n−デシルフェニル基、n−ドデシルフェニル基、n−テトラデシルフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基などが挙げられ、より好ましはフェニル基である。これらのアリール基はいずれもフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアラルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0032】
置換基X1、X2、R1、R2、R3、R4、R5またはR6における置換シリル基とは炭化水素基で置換されたシリル基であって、ここで炭化水素基としては、たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などの炭素原子数1〜10のアルキル基、フェニル基などのアリール基などが挙げられる。かかる炭素原子数1〜20の置換シリル基としては、例えばメチルシリル基、エチルシリル基、フェニルシリル基などの炭素原子数1〜20の1置換シリル基、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、ジフェニルシリル基などの炭素原子数2〜20の2置換シリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ−n−プロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリ−n−ブチルシリル基、トリ−sec−ブチルシリル基、トリ−tert−ブチルシリル基、トリ−イソブチルシリル基、tert−ブチル−ジメチルシリル基、トリ−n−ペンチルシリル基、トリ−n−ヘキシルシリル基、トリシクロヘキシルシリル基、トリフェニルシリル基などの炭素原子数3〜20の3置換シリル基などが挙げられ、好ましくはトリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、またはトリフェニルシリル基である。これらの置換シリル基はいずれもその炭化水素基が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアラルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0033】
置換基X1、X2、R1、R2、R3、R4、R5またはR6におけるアルコキシ基としては、炭素原子数1〜20のアルコキシ基が好ましく、たとえばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペントキシ基、ネオペントキシ基、n−ヘキソキシ基、n−オクトキシ基、n−ドデソキシ基、n−ペンタデソキシ基、n−イコソキシ基などが挙げられ、より好ましくはメトキシ基、エトキシ基、またはt−ブトキシ基である。これらのアルコキシ基はいずれもフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアラルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0034】
置換基X1、X2、R1、R2、R3、R4、R5またはR6におけるアラルキルオキシ基としては、炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基が好ましく、たとえばベンジルオキシ基、(2−メチルフェニル)メトキシ基、(3−メチルフェニル)メトキシ基、(4−メチルフェニル)メトキシ基、(2,3−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,4−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,5−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,6−ジメチルフェニル)メトキシ基、(3,4−ジメチルフェニル)メトキシ基、(3,5−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,5−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,6−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,4,5−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,4,6−トリメチルフェニル)メトキシ基、(3,4,5−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4,5−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4,6−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(ペンタメチルフェニル)メトキシ基、(エチルフェニル)メトキシ基、(n−プロピルフェニル)メトキシ基、(イソプロピルフェニル)メトキシ基、(n−ブチルフェニル)メトキシ基、(sec−ブチルフェニル)メトキシ基、(tert−ブチルフェニル)メトキシ基、(n−ヘキシルフェニル)メトキシ基、(n−オクチルフェニル)メトキシ基、(n−デシルフェニル)メトキシ基、(n−テトラデシルフェニル)メトキシ基、ナフチルメトキシ基、アントラセニルメトキシ基などが挙げられ、より好ましくはベンジルオキシ基である。これらのアラルキルオキシ基はいずれもフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアラルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0035】
置換基X1、X2、R1、R2、R3、R4、R5またはR6におけるアリールオキシ基としては、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基が好ましく、たとえばフェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、3−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、2,3−ジメチルフェノキシ基、2,4−ジメチルフェノキシ基、2,5−ジメチルフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、3,4−ジメチルフェノキシ基、3,5−ジメチルフェノキシ基、2,3,4−トリメチルフェノキシ基、2,3,5−トリメチルフェノキシ基、2,3,6−トリメチルフェノキシ基、2,4,5−トリメチルフェノキシ基、2,4,6−トリメチルフェノキシ基、3,4,5−トリメチルフェノキシ基、2,3,4,5−テトラメチルフェノキシ基、2,3,4,6−テトラメチルフェノキシ基、2,3,5,6−テトラメチルフェノキシ基、ペンタメチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、n−プロピルフェノキシ基、イソプロピルフェノキシ基、n−ブチルフェノキシ基、sec−ブチルフェノキシ基、tert−ブチルフェノキシ基、n−ヘキシルフェノキシ基、n−オクチルフェノキシ基、n−デシルフェノキシ基、n−テトラデシルフェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基などが挙げられる。これらのアリールオキシ基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアラルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0036】
置換基X1、X2、R1、R2、R3、R4、R5またはR6における2置換アミノ基とは2つの炭化水素基で置換されたアミノ基であって、ここで炭化水素基としては、たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などの炭素原子数1〜10のアルキル基、フェニル基などの炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数7〜10のアラルキル基などが挙げられる。かかる炭素原子数1〜10の炭化水素基で置換された2置換アミノ基としては、例えばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、ジ−sec−ブチルアミノ基、ジ−tert−ブチルアミノ基、ジ−イソブチルアミノ基、tert−ブチルイソプロピルアミノ基、ジ−n−ヘキシルアミノ基、ジ−n−オクチルアミノ基、ジ−n−デシルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビストリメチルシリルアミノ基、ビス−tert−ブチルジメチルシリルアミノ基などが挙げられ、好ましくはジメチルアミノ基、またはジエチルアミノ基である。
【0037】
置換基R1、R2、R3、R4、R5、およびR6は、任意に結合して環を形成していてもよい。
【0038】
好ましくはR1は、アルキル基、アラルキル基、アリール基または置換シリル基である。また、好ましくはX1およびX2は、それぞれ独立にハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基または2置換アミノ基であり、さらに好ましくはハロゲン原子である。
【0039】
((B)有機アルミニウム化合物)
本発明で用いられる有機アルミニウム化合物(B)としては、助触媒として用いられる従来公知の有機アルミニウム化合物を用いることができ、たとえばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、ジイソブチルヘキシルアルミニウム、ジイソブチルオクチルアルミニウム、イソブチルジヘキシルアルミニウム、イソブチルジオクチルアルミニウムなどのほか、テトラメチルジアルミノキサン、テトラエチルジアルミノキサン、テトラブチルジアルミノキサン、テトラヘキシルジアルミノキサン、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、ヘキシルアルミノキサン等の有機アルミニウムオキシ化合物を挙げることができる。これらは、単独で用いてよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
((C)ホウ素化合物)
本発明で用いられる触媒系においては、(C)ホウ素化合物は任意成分である。(C)ホウ素化合物としては、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を挙げることができる。これらは、単独で用いてよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
上記各触媒成分の使用量は特に限定されるものではない。(B)有機アルミニウム化合物の重合反応溶液中の濃度は、Al原子換算で、通常0.1〜20μmol/g、好ましくは0.1〜10μmol/g、より好ましくは、0.1〜5μmol/gである。
【0042】
次に、本発明で用いられるオレフィン系単量体について説明する。本発明で用いられるオレフィン系単量体としては従来公知のものを用いることができ、たとえば、α−オレフィン、アルケニル芳香族炭化水素、ビニル置換脂環式炭化水素、環状オレフィンなどを挙げることができる。
【0043】
上記α−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、3−メチル−1−ヘプテン、3−メチル−1−オクテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ヘプテン、3,3−ジメチル−1−オクテン、3,4−ジメチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ヘキセン、3,4−ジメチル−1−ヘプテン、3,4−ジメチル−1−オクテン、3,5−ジメチル−1−ヘキセン、3,5−ジメチル−1−ヘプテン、3,5−ジメチル−1−オクテン、3,6−ジメチル−1−ヘプテン、3,6−ジメチル−1−オクテン、3,7−ジメチル−1−オクテン、3,3,4−トリメチル−1−ペンテン、3,3,4−トリメチル−1−ヘキセン、3,3,4−トリメチル−1−ヘプテン、3,3,4−トリメチル−1−オクテン、3,4,4−トリメチル−1−ペンテン、3,4,4−トリメチル−1−ヘキセン、3,4,4−トリメチル−1−ヘプテン、3,4,4−トリメチル−1−オクテンなどを挙げることができる。
【0044】
α−オレフィンとして、好ましくは炭素原子数2〜20のα−オレフィンであり、より好ましくは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンであり、特に好ましくは、エチレン、プロピレンである。
【0045】
上記アルケニル芳香族炭化水素としては、炭素原子数8〜27のアルケニル芳香族炭化水素が好ましく、スチレン、2−フェニルプロピレン、2−フェニルブテン、3−フェニルプロピレン等のアルケニルベンゼン;p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−エチルスチレン、m−エチルスチレン、o−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、3−メチル−5−エチルスチレン、p−第3級ブチルスチレン、p−第2級ブチルスチレン等のアルキルスチレン;1−ビニルナフタレン等のアルケニルナフタレン等を挙げることができる。より好ましくは、スチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−第3級ブチルスチレン、2−フェニルプロピレン、1−ビニルナフタレンであり、特に好ましくはスチレンである。
【0046】
上記ビニル置換脂環式炭化水素とは、脂環式炭化水素化合物の一部がビニル基で置換された化合物を指し、たとえば、ビニルシクロプロパン、ビニルシクロブタン、ビニルシクロペンタン、アリルシクロヘキサン、アリルシクロペンタン、アリルシクロオクタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタン、ビニルシクロオクタン、5−ビニル−2−ノルボルネン、1−ビニルアダマンタン、4−ビニル−1−シクロヘキセンなどが挙げられ、好ましくはビニルシクロヘキサンである。
【0047】
上記環状オレフィンとしては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン等の単環状オレフィン;3−メチルシクロペンテン、4−メチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン等の置換単環状オレフィン;ノルボルネン、1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン等の多環状オレフィン;5−メチルノルボルネン等の置換多環状オレフィンが挙げられる。
【0048】
好ましく用いられる環状オレフィンとしては、ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−エチルノルボルネン、5−ブチルノルボルネン、5−シクロヘキシルノルボルネン、5−フェニルノルボルネン、5−ベンジルノルボルネン、テトラシクロドデセン、トリシクロデセン、トリシクロウンデセン、ペンタシクロペンタデセン、ペンタシクロヘキサデセン、8−メチルテトラシクロドデセン、8−エチルテトラシクロドデセン、5−アセチルノルボルネン、5−アセチルオキシノルボルネン、5−メトキシカルボニルノルボルネン、5−エトキシカルボニルノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニルノルボルネン、5−シアノノルボルネン、8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8−メチル−8−テトラシクロドデセン、8−シアノテトラシクロドデセンを挙げることができ、より好ましくは、ノルボルネン、テトラシクロドデセンである。上記したこれらのオレフィン系重合体は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
本工程の重合反応に用いられる炭化水素溶媒としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素等が挙げられ、これらの2種以上を混合しても構わない。また、単量体が炭化水素化合物である場合は、該単量体を溶媒として用いてもよい。
【0050】
ここで、本発明における溶液重合は、好ましくは、上記触媒系、オレフィン系単量体および生成するオレフィン系重合体が炭化水素溶媒中に溶解した状態で重合反応が進行するものである。重合反応の重合温度は、通常50〜200℃程度であり、重合時間は、5秒〜72時間程度である。また、本工程における重合反応溶液の反応終了時におけるオレフィン系重合体濃度は、重合反応溶液中、通常、2〜40質量%である。
【0051】
<活性プロトン含有含酸素化合物添加工程(II)>
本工程は、重合反応溶液に活性プロトンを有する含酸素化合物を添加する工程である。活性プロトンを有する含酸素化合物の添加により、重合反応が停止する。活性プロトンを有する含酸素化合物としては、たとえばアルコールを挙げることができ、アルコールとしては、たとえばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、1、2−エタンジオール、1、2−ブタンジオール、1、4−ブタンジオール、グリセリン、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等が挙げられ、これらの2種以上を混合して用いてもよい。好ましくは、エタノール、2−プロパノール、2−ブタノール、イソブタノールである。
【0052】
活性プロトンを有する含酸素化合物の添加量は、重合反応溶液の均一性を維持できる量、すなわち、触媒成分および触媒成分に由来する物質が析出しない量である。該添加量は、金属残渣をより低減する観点から、重合反応溶液中の(A)オレフィン重合用金属化合物触媒の金属原子1モルあたり、好ましくは、0.1〜1500モルであり、より好ましくは、0.2〜100モルである。なお、析出物の有無は目視により判断される。活性プロトンを有する含酸素化合物を添加する温度は、通常、30〜200℃である。また、活性プロトンを有する含酸素化合物は、攪拌下で添加することが好ましい。
【0053】
<アルカリ洗浄工程(III)>
本工程は、重合反応溶液に、水およびアルカリ性物質を添加して混合した後、該アルカリ性水層を除去する工程である。本工程において、重合反応溶液をアルカリ性水溶液で洗浄することにより、重合反応溶液に含まれる触媒系由来の金属成分、特には有機アルミニウム化合物由来のアルミニウム分が当該アルカリ性水層側に抽出され、重合反応溶液中の金属成分を低減される。このような金属成分の低減手段は、油水分離を行なうという非常に簡便な操作であるため、生産性や経済性が向上に寄与する。
【0054】
上記アルカリ性物質としては、たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属の水酸化物が挙げられる。
【0055】
添加される水およびアルカリ性物質の合計量は、重合反応溶液に添加され、混合された後のアルカリ性水層のpHが9〜13、好ましくは10〜13、より好ましくは11〜13となるような量である。当該下限範囲をはずれると、効率的に金属成分、特にアルミニウム成分が水層側に抽出されない傾向にあり、当該上限範囲をはずれると、重合液からのアルカリ成分の除去が困難になったり、装置が腐食される可能性があり好ましくない。また、添加される水およびアルカリ性物質の合計量は、排出あるいは処理される水層量はできるだけ少ないことが好ましいことから、上記工程(II)で得られた重合反応溶液100質量部に対して、10〜100質量部であることが好ましい。水とアルカリ性物質との使用量比は、上記pHが達成できる限り特に制限されるものではなく、アルカリ性物質/(水およびアルカリ性物質の合計量)(質量%)で0.01〜3%とすることができるが、上記好ましい水およびアルカリ性物質の合計量を考慮すると、0.03〜1%であることが好ましい。
【0056】
水およびアルカリ性物質を添加した後の重合反応溶液との混合は、通常20〜200℃の温度で行なわれる。また、該混合時の攪拌動力は0.1〜2.0kW/m3であることが好ましい。攪拌動力が2.0kW/m3を超えると、アルカリ性水層を分離する際の分液性が悪くなる傾向にある。
【0057】
アルカリ性水層の除去は、上記混合後、好ましくは適宜の時間静置した後に、分液して液液分離することにより行なうことができる。
【0058】
ここで、金属残渣をより低減する観点から、上記工程(III)に引き続いて、重合反応溶液に水を添加し、混合した後、水層を除去する水洗工程を設けることが好ましい。添加される水の量は、上記と同様の理由から、上記工程(III)で得られた重合反応溶液100質量部に対して、10〜100質量部であることが好ましい。また、上記工程(III)と同様に、水を添加した後の重合反応溶液との混合は、通常20〜200℃の温度で行なわれ、該混合時の攪拌動力は0.1〜2.0kW/m3であることが好ましい。
【0059】
<重合体分離工程(IV)>
本工程は、上記水層が除去された重合反応溶液からオレフィン系重合体を得る工程である。重合反応溶液からオレフィン系重合体を得る方法としては、重合体と溶媒とを分離する公知の方法、たとえば、加熱減圧濃縮器等の直脱装置によって溶媒を除去する方法、重合反応溶液をオレフィン系重合体の貧溶媒中に投入し、オレフィン系重合体を析出、分離する方法等が挙げられる。
【0060】
本発明の製造方法により得られたオレフィン系重合体は、触媒系に由来する金属成分、特には有機アルミニウム化合物に由来するアルミニウム成分残渣の含有量が低減された重合体である。本発明のオレフィン系重合体は、金属成分残渣に伴う特性低下が大幅に抑制されており、各種分野における材料等として好適に用いることができる。たとえば、本発明により得られた環状オレフィン系重合体は、光ディスク基板、カメラ用レンズなどの光学材料の分野、ブリスターバック用シートなどの包装材料の分野に好適に用いられる。
【0061】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
<実施例1>
内容積5リットル撹拌機付きオートクレーブを真空にした後、水素を154mL、重合溶媒としてヘキサンを3リットル、オレフィン系単量体としてビニルシクロヘキサンを650mLを仕込み、反応器を80℃まで昇温した。続いて、エチレンを8.4MPaに調節しながらフィードし、系内が安定した後、トリイソブチルアルミニウム2.0mmol、特開平9−87313号公報の実施例64に記載されている方法に従って合成したジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド1.5μmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート4.5μmolを続けて投入して重合を開始した(工程(I))。5分後エタノールを10mL投入することにより重合を停止した(工程(II))。
【0063】
次に、上記重合反応溶液1000gに、水酸化ナトリウム0.2gおよび水400mLからなるアルカリ性水溶液を、攪拌しながら添加し、50℃で30分間攪拌混合した。この際、攪拌回転数は400rpm、攪拌動力は0.3kW/m3とした。混合後の水層のpHは、11.5であった。ついで、5分間の静置の後、水層を分液により分離除去した(工程(III))。次に、水400mLを重合反応溶液に添加した後、同様にして攪拌混合、静置した後、分液により水層を分離除去した。最後に、重合反応溶液を5mmHgの減圧下、60℃で真空乾燥させて重合溶媒を除去し、オレフィン系重合体を得た(工程(IV))。得られたオレフィン系重合体中のAlおよびNa原子の含有量(ppm)をIPC発光分析法(測定装置:パーキンエルマー社製ICP−AES)により測定した。結果を表1に示す。また、上記工程(III)の条件を表1にまとめた。
【0064】
【表1】

【0065】
<実施例2〜6>
上記工程(III)における条件を表1に記載した値としたこと以外は、実施例1と同様にしてオレフィン系重合体を得た。AlおよびNa原子の含有量(ppm)をIPC発光分析法により測定した結果を表1に示す。なお、工程(III)で用いたアルカリ性水溶液中の水酸化ナトリウムの濃度は、実施例1と同じである。
【0066】
<比較例1>
工程(III)において、アルカリ性水溶液の代わりに水400mLを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてオレフィン系重合体を得た。AlおよびNa原子の含有量(ppm)をIPC発光分析法により測定した結果を表1に示す。
【0067】
表1に示されるように、本発明の製造方法によれば、アルカリ洗浄によりアルミニウム成分が効率的に水層に抽出除去されるため、Al含有量が5ppm以下と極めて低いオレフィン系重合体が得られることがわかる。また、Na原子についても、低減されていることがわかる。この効果もまた、アルカリ洗浄によるものと考えられる。さらに、実施例1〜6では、工程(III)での分液速度が大きく、分液性が大幅に改善されているが、これは、アルカリ洗浄によりアルミニウムを水溶性にしており、油層と水層との間に中間層が存在しないことによるものである。一方、比較例1では、アルカリ性物質を用いていないため、アルミニウム成分は水酸化アルミニウムの微粒子の形態で水に不溶となり、油層と水層との間に中間層を形成する。該中間層が分液性悪化の原因である。また、比較例1では、アルミニウム成分の水層への抽出ができておらず、重合体中のAl含有量は極めて高くなっている。なお、表1における「分液速度」とは、工程(III)における油水混合状態の液を静置する際に生成する水層の単位時間(h)あたりの高さ(m)の変化を意味する。
【0068】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機アルミニウム化合物を含有する触媒系の存在下に溶液重合を行なうオレフィン系重合体の製造方法であって、以下の工程(I)〜(IV)を含むオレフィン系重合体の製造方法。
(I)前記触媒系の存在下、1種または2種以上のオレフィン系単量体を、炭化水素溶媒中で重合する、重合工程、
(II)重合反応溶液に活性プロトンを有する含酸素化合物を添加する工程、
(III)水層のpHが9〜13となるように、重合反応溶液に、水およびアルカリ性物質を添加し、混合した後、該アルカリ性水層を除去する、アルカリ洗浄工程、および、
(IV)前記水層が除去された重合反応溶液からオレフィン系重合体を得る、重合体分離工程。
【請求項2】
前記工程(III)の後に、重合反応溶液に水を添加し、混合した後、水層を除去する、水洗工程をさらに有する、請求項1に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項3】
前記触媒系は、オレフィン重合用金属化合物触媒と助触媒の有機アルミニウム化合物とを含有し、前記工程(II)における活性プロトンを有する含酸素化合物の添加量は、前記オレフィン重合用金属化合物触媒の金属原子1モルあたり、0.1〜1500モルである、請求項1または2に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項4】
前記工程(III)における、添加される水およびアルカリ性物質の合計量は、前記工程(II)で得られた重合反応溶液100質量部に対して、10〜100質量部である、請求項1〜3のいずれかに記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項5】
前記水洗工程における、添加される水の量は、前記工程(III)で得られた重合反応溶液100質量部に対して、10〜100質量部である、請求項2〜4のいずれかに記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項6】
前記工程(III)および/または前記水洗工程における混合は、混合温度20〜200℃、攪拌動力0.1〜2.0kW/m3の条件下で行なわれる、請求項1〜5のいずれかに記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項7】
前記オレフィン重合用金属化合物触媒は、下記一般式(1)で表されるメタロセン系化合物である、請求項3〜6のいずれかに記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【化1】

(上記式(1)中、M1は、元素の周期律表の第4族の遷移金属原子を示し、Aは元素の周期律表の第16族の原子を示し、Jは、元素の周期律表の第14族の原子を示す。Cp1はシクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基である。X1、X2、R1、R2、R3、R4、R5およびR6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、置換シリル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基または2置換アミノ基を示す。R1、R2、R3、R4、R5およびR6は任意に結合して環を形成してもよい。)
【請求項8】
前記オレフィン系単量体の少なくとも1種は、炭素原子数2〜20のα−オレフィンである、請求項1〜7のいずれかに記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法により得られるオレフィン系重合体。

【公開番号】特開2008−231261(P2008−231261A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73277(P2007−73277)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】