説明

オンデマンド結晶構造成長

少なくとも1つの結晶化核形成部位が配置された表面を有する基板を備える装置。この装置はさらに、第2の表面を有する第2の基板を備える。第2の表面は、結晶化開始材料をアモルファス状態または初期結晶状態で維持するように構成される。結晶化核形成部位は、結晶化開始材料にある性質を与えるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、表面に結晶構造を形成する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配向、表面被覆率、位置、形状、または組成などのあらかじめ選択された性質を有する結晶を大量生産する処理が必要とされて久しい。現在の処理では、結晶は、配向が無作為で位置がよく制御されていない状態で形成される。所望の配向の結晶は、手作業で取り上げられ、次いで、その結晶で構成されることになる装置まで運ばれるか、あるいは、別個に成長が行われ、所望の配向に仕上げられ、次いで、必要とされる位置に置かれる。手作業で結晶を選択するやり方は、複数のトランジスタを1枚の基板表面に組み付ける場合など、装置の大量生産には実用的ではない。さらに、こうした結晶はその取扱と輸送において損傷を受けることがあり、それによって、装置の収率が減り、装置製作のコストおよび時間が余計にかかる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
上記で論じた欠点に対処するために、一実施形態では装置が提供される。この装置は、少なくとも1つの結晶化核形成部位が配置された表面を有する基板を備える。この装置は、第2の表面を有する第2の基板も備える。第2の表面は、結晶化開始材料をアモルファス状態または初期結晶状態で維持するように構成される。結晶化核形成部位は、結晶化開始材料にある性質を与えるように構成される。
【0004】
別の実施形態では方法が提供される。この方法は、結晶化核形成部位が配置された表面を伴う基板を提供するステップを含む。この方法は、結晶化開始材料と第2の基板の第2の表面とを接触させるステップも含む。第2の表面は、結晶化開始材料が結晶化核形成部位と接触するまで結晶化開始材料をアモルファス状態または初期結晶状態で維持する。この方法はさらに、結晶化核形成部位によって与えられた結晶化開始材料の性質を変化させることによって、結晶化核形成部位上で結晶化開始材料から結晶構造を成長させるステップを含む。
【0005】
これらの実施形態は、以下の詳細な説明を添付の図と併せ読めば最もよく理解されよう。様々な特徴は、説明をわかりやすくするために、原寸に比例していないこともあるし、大きさが任意に拡大または縮小されていることがある。以下、下記の説明を添付の図面とともに参照する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
上記で説明した欠点の少なくとも一部は、結晶化核形成部位を使用してオンデマンドで結晶構造が形成される実施形態によって解決される。結晶化核形成部位により、結晶化開始材料がアモルファス材料から結晶になるか、あるいは、ある結晶多形から別の結晶多形に変化する。多形とは、化学組成は同じだが格子構造が異なる別の結晶、あるいは、格子構造は同じだが巨視的な形状が異なる別の結晶を指す。さらに、結晶化核形成部位の化学組成を変えることによって、結晶構造に様々な所定の性質を与えることができる。さらに、所望の場合には、結晶化開始材料をその結晶前状態で維持するように構成された表面と開始材料を接触させることによって、開始材料を長期間保存することができる。
【0007】
本明細書で用いる結晶構造という用語は、材料を構成する原子、イオン、または分子が3次元の広い範囲にわたって内部で秩序だったパターンを形成する固体材料を指す。結晶構造は、単結晶または晶子(例えば、寸法の1つまたは複数が微細な微小結晶)とし得る。
【0008】
本明細書で用いるアモルファス材料という用語は、物質を構成する原子、イオン、または分子が3次元の広い範囲にわたって内部で秩序だって配列されていない液体または固体の物質を指す。ある材料がアモルファスか否かを判断するのに用いる手順は当業者には周知であろう。例えば、アモルファス材料のX線による粉体パターンには識別可能なピークがない。ある種の場合には、アモルファス材料は、その物質の溶液を含み得る。他の場合には、アモルファス材料は、その物質の溶解物であり、溶媒をほとんど含まない(例えば、1重量%未満)ものとし得る。
【0009】
一実施形態では装置が提供される。図1に、装置の例100の断面図を示す。装置100は、少なくとも1つの結晶化核形成部位115を伴う表面110を有する基板105を備える。装置100は、結晶化開始材料120も備える。結晶化核形成部位125は、結晶化開始材料120にある性質を与えるように構成される。
【0010】
装置100がさらに、第2の表面130を有する第2の基板125を備えると有利である。第2の表面130は、結晶化開始材料120をアモルファス状態または特定の初期結晶状態で維持するように構成し得る。これは、装置100を使用する前の期間、開始材料120を保存状態で保持したい場合に不可欠な利点である。
【0011】
装置100の別の不可欠な特徴は、結晶化核形成部位115が開始材料120にある性質を与えることができることである。こうして与えられた性質は、結晶化開始材料120から形成される結晶構造135によって示される。例えば、図1に示す装置100では、ここではアモルファス材料である結晶化開始材料120の一部の性質が、結晶構造135が形成されることによって変化している。
【0012】
こうして与えられる性質は、開始材料120と結晶構造135とを区別する構造的な特性とすることができ、その数は任意である。この性質は、核形成部位115によってあらかじめ決められている。例えば、こうして与えられる性質は、結晶構造135の結晶配向とし得る。別の例として、こうして与えられる性質は、結晶化開始材料120から形成される結晶構造135の所定の結晶形態とし得る。本明細書で用いる結晶形態という用語は、結晶構造面の組合せによって形成される巨視的な形状を指す。結晶構造135の結晶形態の例には、角錐、角柱、正六面体、八面体、四面体、十二面体、または斜方六面体などの多角体形状構造がある。先に述べたように、結晶構造135は、アモルファスまたは結晶性の開始材料120から形成することができる。前者の場合、与えられる性質は、アモルファスから所定の結晶形態の形成を経由した結晶への遷移とし得る。後者の場合、与えられる性質は、ある結晶形態から異なる所定の結晶形態への遷移とし得る。
【0013】
結晶化核形成部位115の化学組成および形状は、開始材料120に所望の性質を与えるように構成される。例として、炭酸カルシウムなどの無機化合物を含むアモルファス材料である開始材料120を考える。与えられる所望の性質は、アモルファス炭酸カルシウムから方解石結晶への遷移である。この性質を与えるために、結晶化核形成部位115は、図1に示すような自己組織化単分子膜140を含み得る。図1に示す自己組織化単分子膜140は、アクリル炭化水素鎖142、この場合はアルキル鎖を含む。それぞれの鎖142は、一端144が官能基で終端する。他端146は、基板表面110に固定し得る。例えば、アルカン鎖142の固定端146は、金で被覆された基板表面110との共有結合が容易になるようにチオール基で終端し得る。
【0014】
結晶化核形成部位115の化学組成は、開始材料120に所定の結晶配向の性質を与えるように構成することができる。図1にさらに示すように、自己組織化単分子膜140は、化学式が−S−(CH−COOの複数の分子を含み得る。ここで、アルカン鎖142の機能化端144は、カルボン酸官能基に相当し、固定端146はチオール基に相当する。nは、鎖142中の−CH−単位の数である。10個または他の偶数(例えば、n=2、4、6など)個の−CH−単位を有するようにアルカン鎖142を構成することによって、(11l)核形成面(例えば、lは約2〜5)を有する斜方六面体結晶構造135を与えることができる。15個または他の奇数(例えば、n=1、3、5など)個の−CH−単位を有するようにアルカン鎖142を構成することによって、(01l)核形成面(例えば、lは約3)を有する斜方六面体を与えることができる。
【0015】
もちろん、自己組織化単分子膜140は、異なる官能基(例えば、ホスホン酸、スルホン酸、またはヒドロキシル)を伴う端部144を有する分子、または鎖の長さが異なる(例えば、nは1〜20)分子を含み得る。それによって、開始材料120に他の性質(例えば、異なる配向)を与えることができる。
【0016】
開始材料120は、1種または複数種の添加物150も含み得る。添加物150は、無機または有機の分子あるいはポリマーを含み得る。添加物150は、結晶化核形成部位115によって与えられる性質の1つまたは複数に影響を及ぼし得る。例えば、部位115を添加物含有開始材料120に暴露すると、形成される結晶構造135は異なる結晶形態となり得る。このように、添加物150の濃度または種類を調整することによって、添加物150は結晶構造135の性質に影響を及ぼすことができる。上記で示したのと同じ例について続けると、アモルファス炭酸カルシウム開始材料120には、(例えば、約50重量%の)マグネシウムを含む添加物150を含めることができる。マグネシウム含有アモルファス炭酸カルシウム開始材料120に、カルボン酸により機能化されたアルカン鎖を含む自己組織化単分子膜140が暴露されると、種子形状の方解石結晶構造135が形成される。これは、マグネシウムを含まないアモルファス炭酸カルシウム開始材料120の場合と異なっており、マグネシウムを含まない開始材料の場合には類似の条件下で斜方六面体形状の方解石結晶構造135が形成される。
【0017】
先に述べたように、アモルファス状態または特定の結晶多形で結晶化開始材料120を維持するように構成された第2の基板125において開始材料120を保存状態で保持すると有利となり得る。本実施例では、図1に示すように、第2の基板125の表面130は、こうした機能を実施するように構成された第2の自己組織化単分子膜160を含み得る。第2の自己組織化単分子膜160は、第1の自己組織化単分子膜140と同じタイプの分子で構成し得る。しかし、これら2つの自己組織化単分子膜140、160の化学組成は同じではない。例えば、図1に示すように、各アルキル鎖162は、一端164がヒドロキシ官能基で終端し、他端166が第2の基板の金で被覆された表面130にチオール基を介して固定される。開始材料120の性質は、開始材料120を保持する第2の表面130が、結晶化核形成部位115を有する第1の表面110に接触するときに与えられる。
【0018】
結晶構造135を表面110にパターン化された分布で形成することができる。これは、例えば、表面110の複数の所定の場所170に結晶化核形成部位115を形成することによって行う。
【0019】
図2に、第2の装置の例200の断面図を示す。同様の参照番号を用いて、図1に示す装置に類似の装置200の要素を示す。図2は、有機開始材料120に所望の性質を与えるように結晶化核形成部位115の化学組成を構成し得るやり方を示す。この実施例では、開始材料120は、有機半導体分子を含むアモルファス材料である。開始材料120は、図に示すようにアントラセンなどの有機半導体分子を含み得るが、他の場合には、開始材料は、テトラセンまたはペンタセンなどの他の有機半導体分子を含み得る。
【0020】
この場合も、与えられる性質は、アモルファス構造から結晶構造への遷移とし得る。この性質を与えるために、結晶化核形成部位115は、チオフェニル、ビフェニルチオール、またはテルフェニルチオールなどのオリゴフェニレンからなる自己組織化単分子膜140を含み得る。図2に示すように、テルフェニルチオールのチオール基は、第1の基板の金表面110に付着する固定端146として働くことができる。他の場合には、自己組織化単分子膜140は、当業者には周知の他の材料を含み得る。
【0021】
図2にさらに示すように、性質を変化させる所望の時間と場所まで開始材料120を保存状態で保持することができる。図に示すように、アントラセンからなる開始材料120は、アモルファス状態で、第2の基板125の第2の表面130に付着した第2の自己組織化単分子膜160によって保持される。図に示すように、第2の自己組織化単分子膜160は、アルキルチオールを含む。例えば、自己組織化単分子膜160は、化学式が−S−(CH−CHのアルカンチオールを含み得る。式中、mは1〜20の範囲である。別の例として、自己組織化単分子膜160は、化学式が−S−(CH−Rの機能化されたアルカンチオールを含み得る。式中、lは1〜20の範囲であり、Rはアミン(NH)基、ヒドロキシル(OH)基、カルボン酸(COOH)基、または他の官能基である。もちろん、他の実施形態では、第2の自己組織化単分子膜160は、第1の自己組織化単分子膜140とまったく同じではないが類似の分子を含み得る。例えば、第2の自己組織化単分子膜160は、メルカプトプリンからなる分子を含むことができ、それによって、開始材料120の溶液をアモルファス相の状態でスピンコートすることができ、有利である。
【0022】
図3に、第3の装置の例の断面図を示す。この場合も、同様の参照番号を用いて、図1に示す装置に類似の装置300の要素を示す。この実施形態では、結晶化開始材料120は組織置換材料であり、結晶化核形成部位115は、基板105の開口310内の表面110に配置される。図3に示すように、基板105は、開口310を有する組織、例えば、歯320(または骨)を含み得る。開口310は、例えば、破損または虫歯によって歯320に形成された損傷領域とし得る。例えば、開口310内の複数のくぼみおよび溝を伴う欠損部位を含む粗い表面110では、その表面エネルギーが本来大きいことにより、様々な化学的かつ物理的な処理がより活発に促進される。そのため、小さな晶子との親和性が高くなり、結晶化核形成部位115として働き得る。表面エネルギーが大きいことから、この部位は、溶液状態の他の化学種と選択的に相互作用し得る。例えば、この部位は、粗い表面110に選択的に吸着する特別な生物有機分子で前処理することができ、それによって、核形成処理がさらに容易になる。
【0023】
開始材料120は、アモルファスまたは結晶性のリン酸カルシウムとし得る。例えば、開始材料120は、カルシウムイオンおよびリン酸イオンからなる形成が容易で安定なゾルゲル溶液とし得る。開始材料120を結晶化核形成部位115に接触させると、アモルファスゾル溶液からヒドロキシアパタイトを含む結晶構造135への遷移に対応する性質変化が起きる。さらに、結晶化核形成部位115は、粗い表面110を有する開口310内にのみ配置される。その結果、結晶構造135は、開口310内にのみ形成され、基板105の他の領域では形成されない。
【0024】
もちろん、上記で説明した装置の実施形態と同様に、開始材料120は、それを第2の基板125の第2の表面130に接触させることによって、初期のアモルファスまたは結晶の構成で維持することができる。例えば、第2の基板125は、リン酸終端アルキルチオール、アデノシン三リン酸(ATP)、リンペプチド、または重リン酸塩を含む第2の表面130を有する充填具330などのアプリケータとし得る。
【0025】
開始材料120は、様々な添加物150も含み得る。例えば、オワンクラゲ由来の緑色蛍光タンパク質などの蛍光分子を添加物150として含めることができ、それによって、開始材料120または結晶構造135の可視化が容易になる。タンパク質(例えば、アビジンやビオチン)を添加物150として含めることができ、それによって、生体適合性および基板105の表面110との結合が改善される。薬品(例えば、抗生物質やイブプロフェン)を添加物150として含めることができ、それによって組織炎症がなくなる。
【0026】
図4に、第4の装置の例400の断面図を示す。同様の参照番号を用いて、図1に示す装置に類似の装置400の要素を示す。図4に示すように、装置400は、基板105の表面110に配置された1つまたは複数の電気回路405を含み得る。電気回路405は、1つまたは複数の電界効果トランジスタ410、例えば、有機電界効果トランジスタ(OFET)を含み得る。トランジスタ410の半導体層415は結晶構造135を含む。そのため、電界効果トランジスタ410の能動チャネル420は結晶構造135で構成される。
【0027】
結晶構造135は、上記で論じた、例えば、図1および図2の状況の結晶化開始材料120から形成される結晶または晶子のいずれかからなり得る。例えば、結晶構造135は、アントラセン、テトラセン、またはペンタセンなどの有機半導体分子を含み得る。従来の微細パターン化法を用いて、基板表面110の分離された領域425に結晶化核形成部位115を被着させることができる。これにより、複数の物理的に分離された結晶化核形成部位115を設けることができる。それによって、選択された領域425のみに結晶構造135が形成され、そのため、1回の工程で複数の半導体層415を形成することができる。例えば、装置400のある種の実施形態では、基板表面110に1次元または2次元の結晶構造135アレイを成長させることができる。こうすると、表面110での複数のトランジスタ410の形成が容易になり得る。
【0028】
結晶構造135はさらに、上記で論じたように、結晶化核形成部位115によって与えられる性質を変化させる添加物150を含み得る。例えば、開始材料が結晶構造に変換されるときに、添加物が結晶構造135全体にわたって均質に分布するように、開始材料に添加物を含めると有利になり得る。
【0029】
トランジスタ410は、動作可能な回路405を実現するための他のデバイス・コンポーネントを含み得る。図4に示すトランジスタ410は、ソース電極430およびドレイン電極435、ゲート440およびゲート誘電体層450を含む。これらのコンポーネントを形成するための適当な従来材料は当業者には周知であろう。例えば、平面基板105は、シリコンで作製することもできるし、プラスチック、例えば、ポリエチレン・テレフタレート(PET)などのより可撓性の有機材料で作製することもできる。ゲート440は、ドープしたシリコンを含み得る。他の場合には、可撓性デバイスの形成により助けとなる材料、例えば、インジウム・スズ酸化物(ITO)を使用し得る。同様に、ゲート誘電体層450は、酸化シリコン、またはポリブチル・メタクリレート(PBMA)のような高分子誘電体などのより可撓性の材料を含み得る。ソース電極430およびドレイン電極435は、金その他の導電性金属、または導電性ポリマーなどの非金属を含み得る。
【0030】
ある種の場合には、ゲート誘電体層450を第2の結晶構造455で構成することもできる。第2の結晶構造455は、半導体層415の結晶構造135を形成するのに用いたのと同様のやり方で形成し得る。当然のことながら、ゲート誘電体層450の結晶構造455は、半導体層415の結晶構造135とは異なる化学組成を有する。
【0031】
図5に、第5の装置の例500の断面図を示す。同様の参照番号を用いて、図1に示す装置に類似の装置500の要素を示す。光回路505は、基板105の表面110にある。図5に示す光回路505は、偏光ビームスプリッタ510を備える。結晶構造135は、偏光ビームスプリッタ510の複屈折材料520を含む。複屈折材料520は、入射光ビーム525を2つの出力構成要素530、535に分割するように構成される。ある種の好ましい実施形態では、複屈折材料520は、図1の状況で先に説明したのと同様に形成される方解石結晶を含む。
【0032】
光回路505は、装置500を動作可能にするための他の従来コンポーネント、例えば、光ファイバ540、光525、530、535を偏光ビームスプリッタ510に結合させ、また、それから分離させるレンズ、レーザなどの送信機550、および受信機560、565も含み得ることが当業者には理解されよう。さらに、結晶構造135を含むコンポーネントを、光ファイバ通信、液晶ディスプレイ、または他の光学システムに有利に組み込み得る方法が当業者には理解されよう。例えば、結晶構造135を偏光結合器で使用する方法は、当業者には即座に明らかであろう。
【0033】
別の実施形態では方法が提供される。図6に、方法の例600の流れ図を示す。ステップ610で、1つまたは複数の結晶化核形成部位が配置された表面を伴う基板が提供される。この基板は、図1〜図5の状況で先に論じた材料を含めて任意の従来材料を含み得る。この基板は、図4に示すようなOFET410の場合には、下部のゲート440および誘電体層450などのデバイス・コンポーネント層も含み得る。結晶化核形成部位は、図1〜図5の状況で先に論じた材料のいずれかを含み得る。例えば、結晶化核形成部位はそれぞれ、自己組織化単分子膜、結晶種、あるいは結晶核形成を誘起する他の有機分子または生物有機分子を含み得る。
【0034】
ステップ620では、結晶化核形成部位を有する基板表面を結晶化開始材料に暴露する。ステップ630は、開始材料の性質を変化させることによって、結晶化核形成部位上で結晶構造を成長させることを含む。
【0035】
結晶化開始材料は、図1〜図5の状況で先に論じた材料のいずれかを含み得る。例えば、結晶化開始材料は、結晶化核形成部位に接触すると結晶構造に変換される固体または液体のアモルファス材料を含み得る。あるいは、結晶化開始材料は、結晶化核形成部位に接触すると所望の結晶構造に変換される第2の結晶構造を含み得る。開始材料の性質を変化させることは、開始材料をアモルファス状態から結晶構造に、あるいは、初期結晶構造から異なる結晶構造に変化させることを含み得る。
【0036】
ステップ630で成長させる結晶構造は、晶子または結晶とし得る。例えば、図1〜図5の状況で先に論じたように、結晶構造は、無機または有機の結晶、有機半導体、誘電体、複屈折、または組織置換用の材料を含み得る。
【0037】
図6にさらに示すように、ある種の場合には、ステップ640で開始材料に添加物を導入することが望ましい。この添加物は、結晶化核形成部位によって与えられる性質を改変し、また、結晶構造に新しい性質を与えるのに使用し得る。例えば、添加物は、図1〜図5の状況で先に論じたように、イオン、ドーパント、タンパク質、ポリマー、蛍光分子、または薬物の1つまたは複数とし得る。
【0038】
また、図6に示すように、この方法は、結晶化開始材料を第2の基板の第2の表面に接触させるステップ650を含み得る。第2の表面は、結晶化開始材料をアモルファス状態または所望の結晶構造と異なる結晶状態で維持する。第2の表面は、図1〜図5の状況で先に論じたような第2の自己組織化単分子膜を含み得る。
【0039】
ステップ660で、結晶成長を停止させる。結晶化は、例えば、開始材料がすべて結晶構造に変換されたときに停止し得る。複数の物理的に分離した結晶化核形成部位があるとき、晶子成長は、結晶化核形成部位を互いに十分に物理的に分離し、結晶化をあまり長時間継続させないようにすることによって、成長中の晶子が相互に融合する前に停止し得る。あるいは、各結晶化核形成部位に所定量の開始材料を接触させて、所与のサイズの結晶構造を提供することもできる。
【0040】
他の場合には、所望の時期に、結晶と相互作用し、結晶表面を不動態化する添加物を導入して、結晶成長を抑制することができ、それによって、結晶のサイズおよび形態が制限される。さらに他の場合には、結晶成長を継続させて、相互接続された結晶網構造を形成することももちろん可能である。例えば、複数の場所で開始された結晶成長を、晶子が連晶するか、あるいは互いに融合して、相互接続された晶子網構造が形成されるまで継続させることができる。ある種の場合には、この方法を用いて、物理的に分離し、かつ相互接続された結晶化核形成部位の網構造を基板表面の様々な領域に形成することができる。
【0041】
結晶構造を成長させる場所と時間を選択することによって、この方法を用いて様々なコンポーネントを生成することができる。例えば、方法600は、結晶構造を構成する組織置換材料を生成するステップ670を含み得る。あるいは、方法600は、結晶構造を光回路または電気回路の1つのコンポーネントにするように基板上に回路を生成するステップ680を含み得る。例えば、この結晶構造は、図4に示すような回路内の電界効果トランジスタの能動チャネルまたは誘電体層を形成し得る。あるいは、この結晶構造は、図5に示すような回路の複屈折材料または他の光コンポーネントを形成し得る。
【0042】
本発明を詳細に説明してきたが、本発明の範囲から逸脱せずに、本明細書において様々な変更、置換、および改変を加えることができることが当業者には理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】装置の例の断面図である。
【図2】第2の装置の例の断面図である。
【図3】第3の装置の例の断面図である。
【図4】第4の装置の例の断面図である。
【図5】第5の装置の例の断面図である。
【図6】方法の例の流れ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの結晶化核形成部位が配置された表面を有する基板と、
第2の表面を有する第2の基板とを備える装置であって、
前記第2の表面は、結晶化開始材料をアモルファス状態または初期結晶状態で維持するように構成され、
前記結晶化核形成部位は、前記結晶化開始材料にある性質を与えるように構成される、装置。
【請求項2】
前記結晶化開始材料はアモルファス材料を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記結晶化核形成部位は自己組織化単分子膜を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記結晶化開始材料は組織置換材料を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記表面上に電気的または光学的な回路をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
結晶化核形成部位が配置された表面を伴う基板を提供するステップと、
前記結晶化開始材料と第2の基板の第2の表面とを接触させるステップとを含む方法であって、
前記第2の表面は、前記結晶化開始材料が前記結晶化核形成部位と接触するまで結晶化開始材料をアモルファス状態または初期結晶状態で維持し、前記方法はさらに、
前記結晶化核形成部位によって与えられた前記結晶化開始材料の性質を変化させることによって、前記結晶化核形成部位上で前記結晶化開始材料から結晶構造を成長させるステップを含む、方法。
【請求項7】
前記第2の表面は、前記結晶化開始材料が前記結晶化核形成部位と接触するまで前記結晶化開始材料を前記アモルファス状態で維持する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記結晶化核形成部位は自己組織化単分子膜を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記性質を変化させることは、前記開始材料をアモルファス状態から前記結晶構造に変化させることを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記結晶構造が光学的または電気的な回路のコンポーネントになるように前記基板上に前記回路を生成するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−518260(P2009−518260A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543455(P2008−543455)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/045834
【国際公開番号】WO2007/064789
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(596092698)ルーセント テクノロジーズ インコーポレーテッド (965)
【Fターム(参考)】