説明

オーディオ信号処理回路およびチャージポンプ回路の制御方法

【課題】正負電源を利用したオーディオシステムにおける消費電力を低減する。
【解決手段】ボリウム回路8は、入力オーディオ信号S1をボリウム設定値S3に応じた利得で増幅する。チャージポンプ回路2は、正の電源電圧Vddを反転し、負の電源電圧Vssを生成する。メインアンプ4は、正の電源電圧Vddと負の電源電圧Vssを電源電圧として受け、ボリウム回路8から出力されるオーディオ信号S2を増幅する。チャージポンプ回路2は、負の電源電圧Vssの電圧値をボリウム設定値S3に応じて変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ信号処理回路に関し、特にオーディオ信号を増幅するアンプに対する電源供給技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドホンやスピーカを駆動するアンプ、液晶パネルのドライバをはじめとするさまざまな回路が、その動作に正負の両極性の電源電圧を必要とする。携帯電話端末やPDA(Personal Digital Assistant)、デジタルカメラ、携帯型オーディオプレイヤなどの小型情報端末には、電池電圧から負電圧を生成する反転型のチャージポンプ回路が利用される。
【0003】
図1は、一般的な正負電源を利用したオーディオシステムの構成を示す回路図である。オーディオシステム300は、ヘッドアンプやスピーカアンプ(これらは、メインアンプまたはパワーアンプとも総称される)302、反転型チャージポンプ回路304、スピーカ306を備える。メインアンプ302はたとえば反転アンプであり、入力電圧Vinを反転増幅し、出力電圧Voutをスピーカ306へと供給する。メインアンプ302は、電池電圧Vddを正の電源電圧として受ける。反転型チャージポンプ回路304は、電池電圧Vddを反転し、メインアンプ302の負の電源電圧Vssを生成する。
【特許文献1】特開2001−186754号公報
【特許文献2】特開2007−174785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メインアンプ302に入力されるオーディオ信号の振幅は、ボリウム値に応じて変化するところ、反転型チャージポンプ回路304の出力電圧、つまりメインアンプ302の負電源は固定されていた。かかる状況においてはボリウムが非常に小さく設定された場合に、メインアンプ302の出力信号の振幅と、電源電圧Vssに大きな差が生じ、無駄な電力を消費することとなっていた。また電力消費は発熱を意味するため、発熱対策を施す必要がある。
【0005】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、その包括的な目的のひとつは、オーディオシステムにおける消費電力の低減にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、オーディオ信号処理回路に関する。オーディオ信号処理回路は、入力オーディオ信号をボリウム設定値に応じた利得で増幅するボリウム回路と、正の電源電圧を反転し、負の電源電圧を生成するチャージポンプ回路と、正の電源電圧と負の電源電圧を電源電圧として受け、ボリウム回路から出力されるオーディオ信号を増幅するメインアンプと、を備える。チャージポンプ回路は、負の電源電圧の電圧値を、ボリウム設定値に応じて変化させる。
【0007】
メインアンプの前段のボリウム回路で設定されたボリウム値は、メインアンプで増幅されるオーディオ信号の振幅と対応している。そこでボリウム設定値が小さいほど、負の電源電圧の絶対値を小さくし、ボリウム設定値が大きいほど、負の電源電圧の絶対値を大きくすることにより、オーディオ信号の歪みを抑制しつつ、無駄な消費電力を低減できる。
【0008】
チャージポンプ回路は、フライングキャパシタと、出力キャパシタと、フライングキャパシタを正の電源電圧で充電する第1経路に設けられた複数のスイッチと、フライングキャパシタに蓄えられた電荷を、出力キャパシタに転送する第2経路に設けられた複数の第2スイッチと、第1経路に設けられた複数のスイッチと第2経路に設けられた複数のスイッチを交互にオン、オフさせる制御回路と、を含んでもよい。制御回路は、出力キャパシタの一端に発生する出力電圧がボリウム設定値に応じた目標値と一致するように、第1経路の複数のスイッチ、第2経路の複数のスイッチの少なくともひとつのオン時間を変化させてもよい。
【0009】
この態様によると、ボリウム設定値に応じた負の電源電圧を好適に生成することができる。
【0010】
制御回路は、一端に出力電圧が印加され、他端の電位が固定された抵抗と、抵抗に流れる電流を電圧に変換する電流電圧変換回路と、電流電圧変換回路によって生成された電圧を、ボリウム設定値に応じた基準電圧と比較するコンパレータと、を含み、コンパレータによる比較結果に応じて、オン時間を変化させてもよい。
出力電圧は負電圧であるため、そのままでは信号処理が困難である。そこで出力電圧を電流に変換することにより、オン時間の制御に必要な信号処理を行うことができる。
【0011】
制御回路は、一端に出力電圧が印加され、他端の電位が固定された抵抗と、抵抗に流れる電流を、ボリウム設定値に応じた基準電流と比較するコンパレータと、を含んでもよい。制御回路は、コンパレータによる比較結果に応じて、オン時間を変化させてもよい。
【0012】
本発明の別の態様は正の電源電圧を反転して負の電源電圧を生成し、オーディオ信号を増幅するメインアンプに供給するチャージポンプ回路の制御方法に関する。この制御方法は、メインアンプの前段に設けられたボリウム回路に設定されるボリウム設定値を取得するステップと、ボリウム設定値に応じてチャージポンプ回路の昇圧率を調節するステップと、を備える。
【0013】
本発明の別の態様も、チャージポンプ回路の制御方法に関する。この制御方法は、メインアンプの前段に設けられたボリウム回路に設定されるボリウム設定値を取得するステップと、ボリウム設定値に応じた目標値と負の電源電圧とを比較するステップと、目標値と負の電源電圧の比較結果にもとづいて、チャージポンプ回路を構成する複数のスイッチの少なくともひとつのオン時間を調節するステップと、を備える。
【0014】
これらの態様の方法によれば、メインアンプの負の電源電圧を、オーディオ信号の振幅に追従させることができ、メインアンプの消費電力を低減できる。
【0015】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、オーディオシステムの消費電力を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0018】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0019】
図2は、本発明の実施の形態に係るオーディオシステム1の構成を示すブロック図である。オーディオシステム1は、チャージポンプ回路2、メインアンプ4、スピーカ6、ボリウム回路8を備える。
【0020】
ボリウム回路8は、可変利得増幅器、あるいは可変アテネータを含んで構成され、入力オーディオ信号S1を可変利得で増幅する(または減衰させる)。ボリウム回路8の利得は、ボリウム設定値S3に応じて設定される。
【0021】
チャージポンプ回路2は、正の電源電圧Vddを反転し、負の電源電圧Vssを生成する。メインアンプ4には、正の電源電圧Vddと負の電源電圧Vssが電源電圧として供給されている。メインアンプ4は、ボリウム回路8から出力されるオーディオ信号S2を所定の利得で増幅する。メインアンプ4によって増幅されたオーディオ信号Voutは負荷であるスピーカ6へと供給される。なお、スピーカ6は、ヘッドホン、イヤホンなどであってもよい。
【0022】
チャージポンプ回路2の昇圧率は、離散的(段階的)あるいは連続的に可変に構成されている。チャージポンプ回路2は、負の電源電圧Vssの電圧値を、ボリウム設定値S3に応じて変化させる。より具体的には、ボリウム設定値S3が小さいほど、言い換えればメインアンプ4へ入力されるオーディオ信号S2の振幅が小さいほど、負の電源電圧Vssの絶対値を小さくし、反対にボリウム設定値S3が大きいほど、言い換えればオーディオ信号S2の振幅が大きいほど、負の電源電圧Vssの絶対値を大きくする。
【0023】
以上がオーディオシステム1の全体構成である。続いてその動作を説明する。図3は、図2のオーディオシステム1の動作波形図である。図3には電源電圧Vddと負の電源電圧Vssの間をスイングするメインアンプ302の出力電圧Voutが示されている。出力電圧Voutの最大値と電源電圧Vddの電位差ΔV1および出力電圧Voutの最小値と負の電源電圧Vssの電位差ΔV2は、スピーカ306からの出力に寄与しない成分である。図2のオーディオシステム1によれば、負の電源電圧Vssをボリウム設定値S3(出力電圧Voutの振幅)に追従させることができ、電位差ΔV2が小さくすることにより消費電力を低減できる。さらには発熱量を低減できるためオーディオシステム1を搭載する電子機器の設計が容易となる。また、電位差ΔV2としてある程度の余裕をもたせることにより、オーディオ信号の歪みも抑制することができる。
【0024】
図4は、チャージポンプ回路2の構成例を示す回路図である。チャージポンプ回路2は、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3、第4スイッチSW4、制御回路10、フライングキャパシタCf、出力キャパシタCoを備える。チャージポンプ回路2は、入力端子P1に印加される入力電圧Vddの極性を反転し、負の電圧Vssを生成する。
【0025】
チャージポンプ回路2は、フライングキャパシタCfおよび出力キャパシタCoを除く部材が半導体基板上に集積化される。制御IC20のキャパシタ端子P2、P3の間には、フライングキャパシタCfが外付けされる。出力キャパシタCoは、その一端が接地され、その他端がキャパシタ端子P4と接続される。
【0026】
第1スイッチSW1は、入力端子P1とフライングキャパシタCfの一端P2の間に設けられる。第2スイッチSW2は、フライングキャパシタCfの一端P2と、接地端子GNDの間に設けられる。第3スイッチSW3は、フライングキャパシタCfの他端P3と接地端子GNDの間に設けられる。第4スイッチSW4は、フライングキャパシタCfの他端P3と、出力キャパシタCoの他端P4の間に設けられる。
【0027】
第1スイッチSW1および第3スイッチSW3のペアは、入力電圧VddによってフライングキャパシタCfを充電する経路(第1経路)上に設けられる。つまり、第1スイッチSW1および第3スイッチSW3が同時にオンすると、フライングキャパシタCfの一端P2に第1スイッチSW1を介して入力電圧Vddが印加され、その他端P3に第3スイッチSW3を介して接地電圧GNDが印加される。その結果、フライングキャパシタCfの両端間の電圧ΔVは、Vddに近い値となる。第1スイッチSW1、第3スイッチSW3がオンの状態を第1状態φ1という。
【0028】
第2スイッチSW2および第4スイッチSW4のペアは、フライングキャパシタCfに蓄えられた電荷を、出力キャパシタCoに転送する経路(第2経路)上に設けられる。つまり、第2スイッチSW2および第4スイッチSW4を同時にオンすると、フライングキャパシタCfの高電位側の端子P2が接地され、低電位側の端子P3が、第4スイッチSW4を介して出力キャパシタCoの一端P4に接続される。その結果、フライングキャパシタCfに蓄えられた電荷が、出力キャパシタCoに転送され、出力キャパシタCoの一端P4には、−Vdd付近の負電圧Vssが発生する。第2スイッチSW2、第4スイッチSW4がオンの状態を第2状態φ2という。
【0029】
制御回路10は、第1スイッチSW1および第3スイッチSW3のペアと、第2スイッチSW2および第4スイッチSW4のペアと、を交互にオン、オフさせる。すなわち上述の第1状態φ1と第2状態φ2を交互に繰り返す。制御回路10には所定の周波数のクロックCKが入力される。制御回路10は、クロックCKがハイレベルの期間を第1状態φ1に割り当て、ローレベルの期間を第2状態φ2に割り当てる。ハイレベルとローレベルは反対に割り当てられてもよい。なお第1状態φ1から第2状態φ2への遷移の途中、および第2状態φ2から第1状態φ1への遷移の途中において、すべてのスイッチがオフとなるデッドタイムを設けてもよい。
【0030】
制御回路10は、出力キャパシタCfの一端P4に発生する出力電圧Vssに応じて、第1経路上の複数のスイッチSW1、SW3、第2経路上の複数のスイッチSW2、SW4の少なくともひとつのオン時間を変化させる。より具体的には、出力電圧Vssが、ボリウム設定値S3に応じた目標値と一致するように、第1スイッチSW1〜第4スイッチSW4の少なくともひとつのオン時間を変化させる。
【0031】
以下では、第2スイッチSW2のオン時間を調節する場合を説明する。ドライバDRV1は、クロックCKがハイレベルの期間、第1スイッチSW1をオンする。同様にドライバDRV3は、クロックCKがハイレベルの期間、第3スイッチSW3をオンする。一方、ドライバDRV2、DRV4はそれぞれ、クロックCKがローレベルの期間、第2スイッチSW2、第4スイッチSW4をオンする。
【0032】
なお、出力電圧Vssは負電圧であるため、ドライバDRV1およびDRV2は、接地電圧0V〜電源電圧Vdd間の電圧を出力し、ドライバDRV3およびDRV4は、負電源Vss〜ある中間電圧Vb(Vb<Vdd)の間の電圧を出力する必要がある。
【0033】
ドライバDRV2には、出力電圧Vssが入力される。ドライバDRV2は、クロックCKのローレベルの期間を上限として、第2スイッチSW2のオン時間Ton2を出力電圧Vssにもとづいて調節する。つまり、第2スイッチSW2のゲート信号は、出力電圧Vssにもとづいてパルス幅変調される。
【0034】
第2スイッチSW2のオン時間Ton2を調節すると、フライングキャパシタCfから出力キャパシタCoに転送される電荷量を調節することができ、負荷電流ILの変動に起因する出力電圧Vssの変動を抑制することができる。
【0035】
なお、オン時間を変化させるスイッチは、第2スイッチSW2に限定されず、別のスイッチのオン時間を調整しても同様の効果を得ることができる。
【0036】
図5は、図4のチャージポンプ回路2の動作状態を示すタイムチャートである。タイムチャートの各波形は、ハイレベルがオンを、ローレベルがオフを示す。第2スイッチSW2のオン時間が調節されることにより、電圧Vssをボリウム設定値S3に応じた目標値付近に保つことができる。
【0037】
図6は、図4のチャージポンプ回路2のドライバDRV2の構成例を示す回路図である。ドライバDRV2は、レジスタ30、DAC32、コンパレータ34、ANDゲート36、バッファ38を含む。
【0038】
監視回路12は、負の電源電圧Vssを、正の監視電圧Vmoniに変換する。たとえば監視回路12は、電源電圧Vssをk(kは負の値)倍する。
【0039】
ドライバDRV2には、監視電圧Vmoniが監視回路12から供給される。レジスタ30には、ボリウム設定値S3が書き込まれる。書き込まれたボリウム設定値S3は、ボリウム回路8に供給されるとともに、DAC32へと入力される。DAC32はボリウム設定値S3をデジタル/アナログ変換し、基準電圧Vrefを生成する。
【0040】
コンパレータ34は、基準電圧Vrefと監視電圧Vmoniを比較する。コンパレータ34は、Vref<Vmoniのときハイレベル、Vref>Vmoniのときローレベルを出力する。
【0041】
なお監視回路12が負の電源電圧Vssに応じた電圧Vmoniではなく、それに応じた電流を出力する場合、コンパレータ34は、ボリウム設定値S3に応じた基準電圧Irefと、負の電源電圧Vssに応じた電流とを比較してもよい。
【0042】
ANDゲート36は、反転クロックCK#(#は論理反転を示す)と、コンパレータ34の出力信号S4の論理積を生成する。バッファ38は、ANDゲート36の出力信号S5にもとづいて第2スイッチSW2を駆動する。
【0043】
図6の構成によれば、負の電源電圧Vssを、目標値(−Vref/k)付近に安定化することができる。たとえば監視回路12が負の電源電圧Vssをk=−0.5倍する場合、負の電源電圧Vssは、−2×Vref付近に安定化される。
【0044】
図7(a)、(b)は、負の出力電圧Vssをモニタする監視回路12a、12bの構成を示す回路図である。図7(a)の監視回路12aは、トランジスタQ1〜Q3、抵抗R1、R2を備える。
【0045】
トランジスタQ1はNPN型バイポーラトランジスタであり、ベースが接地される。抵抗R1は、一端に出力電圧Vssが印加され、他端がトランジスタQ1のエミッタと接続される。つまり抵抗R1の他端の電位は、−Vbeに固定される。つまり抵抗R1には、 Is=(−Vss−Vbe)/R1
で与えられる電流が流れる。トランジスタQ2、Q3はカレントミラー回路を形成し、抵抗R1に流れる電流Isを定数倍して折り返す。抵抗R2は、カレントミラー回路の出力電流Is’の経路上に設けられる。抵抗R2には、
Vmoni=Is’×R2
で与えられる電圧降下が発生する。この電圧降下は、チャージポンプ回路2の出力電圧Vssに応じた値をとる。図4のドライバDRV2は、監視電圧Vmoniにもとづいて第2スイッチSW2のオン時間Ton2を調節する。たとえば電圧比較器によって監視電圧Vmoniを所定の基準電圧と比較してもよい。この場合、ドライバDRV2は比較結果にもとづいてオン時間Ton2を変化させる。あるいは、抵抗R2による電流電圧変換処理を経ずに、電流比較器によって電流IsまたはIs’を直接、所定の基準電流と比較してもよい。
【0046】
図7(b)の監視回路12bは、トランジスタM1〜M4および定電流源CSを含む差動増幅器13と、トランジスタM5、M6および抵抗R3、R4を備える。差動増幅器13の非反転入力端子(+)には接地電圧(0V)が印加される。抵抗R3は、一端が反転入力端子(−)と接続され、他端には監視対象の電圧Vssが印加される。トランジスタM5は電源端子と抵抗R3の間に設けられる。トランジスタM6は、ゲートおよびソースがそれぞれ、トランジスタM5のそれらと共通に接続される。抵抗R4はトランジスタM6と接地端子の間に設けられる。トランジスタM5、M6のゲートは、トランジスタM1とM3の接続点の電位でバイアスされる。
【0047】
この構成において、差動増幅器13の反転入力端子(−)は、非反転入力端子(+)の電位(0V)と一致するようにフィードバックがかかる。その結果、抵抗R3には、
Is=Vss/R3
で与えられる電流が流れる。この電流IsがトランジスタM5、M6によってコピーされ、電流Is’として抵抗R4に供給される。抵抗R4に生ずる電圧降下が、監視電圧Vmoniとして出力される。つまり、負電圧を正の監視電圧Vmoniに変換してドライバDRV2へと出力することができる。
【0048】
上記実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例を説明する。
【0049】
チャージポンプ回路2やドライバDRV2、監視回路12それぞれの構成は、上述したものに限定されるものではなく、その他の構成を用いてもよい。
【0050】
図4のチャージポンプ回路2は、出力電圧Vssがフィードバックされ、それを目標値としてスイッチのオン時間が調節される形式であった。しかしながらチャージポンプ回路2の形式はこれに限定されない。たとえばチャージポンプ回路2は、昇圧率が−1倍と−0.5倍(さらには−1.5倍、−2倍、…)の多段階にて切りかえ可能であり、オープンループで動作する構成であってもよい。このような昇圧率が離散的に切りかえ可能なチャージポンプ回路は公知技術を用いることができる。
【0051】
実施の形態にもとづき、特定の語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】一般的な正負電源を利用したオーディオシステムの構成を示す回路図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るオーディオシステムの構成を示すブロック図である。
【図3】図2のオーディオシステムの動作波形図である。
【図4】チャージポンプ回路の構成例を示す回路図である。
【図5】図4のチャージポンプ回路の動作状態を示すタイムチャートである。
【図6】図4のチャージポンプ回路のドライバの構成例を示す回路図である。
【図7】図7(a)、(b)は、負の出力電圧をモニタする監視回路の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0053】
1…オーディオシステム、2…チャージポンプ回路、4…メインアンプ、6…スピーカ、8…ボリウム回路、SW1…第1スイッチ、SW2…第2スイッチ、SW3…第3スイッチ、SW4…第4スイッチ、10…制御回路、12…監視回路、DRV…ドライバ、Cf…フライングキャパシタ、Co…出力キャパシタ、S1…入力オーディオ信号、S3…ボリウム設定値、30…レジスタ、32…DAC、34…コンパレータ、36…ANDゲート、38…バッファ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力オーディオ信号をボリウム設定値に応じた利得で増幅するボリウム回路と、
正の電源電圧を反転し、負の電源電圧を生成するチャージポンプ回路と、
前記正の電源電圧と前記負の電源電圧を電源電圧として受け、前記ボリウム回路から出力されるオーディオ信号を増幅するメインアンプと、
を備え、
前記チャージポンプ回路は、前記負の電源電圧の電圧値を、前記ボリウム設定値に応じて変化させることを特徴とするオーディオ信号処理回路。
【請求項2】
前記チャージポンプ回路は、
フライングキャパシタと、
出力キャパシタと、
前記フライングキャパシタを前記正の電源電圧で充電する第1経路に設けられた複数のスイッチと、
前記フライングキャパシタに蓄えられた電荷を、前記出力キャパシタに転送する第2経路に設けられた複数の第2スイッチと、
前記第1経路に設けられた複数のスイッチおよび前記第2経路に設けられた複数のスイッチを交互にオン、オフさせる制御回路と、
を含み、
前記制御回路は、前記出力キャパシタの一端に発生する出力電圧が前記ボリウム設定値に応じた目標値と一致するように、前記第1経路の複数のスイッチ、前記第2経路の複数のスイッチの少なくともひとつのオン時間を変化させることを特徴とする請求項1に記載のオーディオ信号処理回路。
【請求項3】
前記制御回路は、
一端に前記出力電圧が印加され、他端の電位が固定された抵抗と、
前記抵抗に流れる電流を電圧に変換する電流電圧変換回路と、
前記電流電圧変換回路によって生成された電圧を、前記ボリウム設定値に応じた基準電圧と比較するコンパレータと、
を含み、前記コンパレータによる比較結果に応じて、前記オン時間を変化させることを特徴とする請求項2に記載のオーディオ信号処理回路。
【請求項4】
前記制御回路は、
一端に前記出力電圧が印加され、他端の電位が固定された抵抗と、
前記抵抗に流れる電流を、前記ボリウム設定値に応じた基準電流と比較するコンパレータと、
を含み、前記コンパレータによる比較結果に応じて、前記オン時間を変化させることを特徴とする請求項2に記載のオーディオ信号処理回路。
【請求項5】
正の電源電圧を反転して負の電源電圧を生成し、オーディオ信号を増幅するメインアンプに供給するチャージポンプ回路の制御方法であって、
前記メインアンプの前段に設けられたボリウム回路に設定されるボリウム設定値を取得するステップと、
前記ボリウム設定値に応じて前記チャージポンプ回路の昇圧率を調節するステップと、
を備えることを特徴とする制御方法。
【請求項6】
正の電源電圧を反転して負の電源電圧を生成し、オーディオ信号を増幅するメインアンプに供給するチャージポンプ回路の制御方法であって、
前記メインアンプの前段に設けられたボリウム回路に設定されるボリウム設定値を取得するステップと、
前記ボリウム設定値に応じた目標値と、前記負の電源電圧とを比較するステップと、
前記目標値と前記負の電源電圧の比較結果にもとづいて、前記チャージポンプ回路を構成する複数のスイッチの少なくともひとつのオン時間を調節するステップと、
を備えることを特徴とする制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−130135(P2010−130135A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300457(P2008−300457)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】