説明

カプセル化されたフレーバーを含んでなる脂肪、ろう又は脂をベースとする食品原材料

【課題】脂肪又は油と、前記脂肪又は油で分散されているフレーバーカプセルとを含んでなる食品原材料又は全食品製品。
【解決手段】前記フレーバーカプセルは、微生物、包囲しているマトリックス成分及び主に微生物内部に存在する少なくとも1つのフレーバーを含んでなる。前記食品又は食品原材料は、それ自体として使用されることができるか、又は常用の食品製品のコーティング又はフィリングとして使用されることができる。脂肪又は油をベースとする本発明の食品原材料は、フレーバーがカプセル化されていない類似した食品原材料と比較した場合に、増加したフレーバー強度を有する。前記フレーバーは食品又は食品原材料を摂取する際に直ちに放出される。フレーバーの特別なカプセル化のために、前記食品原材料は、食品製造プロセスの間の高められた温度によるフレーバー蒸発に対して十分に耐性である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、カプセル化されたフレーバーの技術分野に関し、かつカプセル化されたフレーバーを含んでなる脂肪又は油をベースとする食品原材料に関する。より詳細には、本発明は、脂質及びフレーバーカプセルを含んでなる食品又は食品原材料に関する。本発明は、さらに、食品原材料をコーティング又はフィリングとして含んでなる食品製品に関する。
【背景技術】
【0002】
フレーバー化合物は、多数の揮発性かつ疎水性の小型分子を含み、これらは、製造、分配又は貯蔵のプロセスの間に蒸発により、食品製品から消失する傾向にある。フレーバーの蒸発による損失は、例えば、疎水性フレーバー用のキャリヤーとして脂肪又は油を使用することにより、減少されることができ、かつ、結果として、フレーバーは、脂肪又は油をベースとするコーティング又はフィリングの形で食品にしばしば適用される。しかしながら、脂質マトリックス中に閉じ込められているフレーバーは、摂取する間に放出されることができず、かつ口腔の味蕾と相互作用することなく、脂肪滴と一緒にしばしば飲み込まれる。このようにして、実質的な量のフレーバー分子は、知覚されることなく摂取され、かつ油又は脂肪中に分散されたフレーバーを含んでなる食品製品のフレーバープロフィールは、高いフレーバー負荷にもかかわらず貧弱になりうる。
【0003】
他方では、複合カプセル化系は、貯蔵安定でかつ容易に適用できる方法で高濃度のフレーバーを提供するためにしばしば使用される。しかしながら、フレーバーのカプセル化の欠点は、口腔中で噛む間に全てのカプセル化されたフレーバーを適時放出することが制御し難いことである。場合により、カプセル化されたフレーバーは、それらのカプセル化マトリックスから放出されず、故に摂取する間に食品製品のフレーバープロフィールに付け加わらないが、しかしカプセル化された形で飲み込まれる。選択的に、フレーバーは、カプセル化マトリックスから早すぎて放出され、その後に蒸発を通じて失われうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2005/067733A1号パンフレット
【特許文献2】WO2006/006003A1号パンフレット
【特許文献3】欧州特許出願(EP-A1)公開第1454534号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】T.J.Suzuki, Y.Kudo, J.Comput.-Aided Mol. Design (1990), 4, 155-198
【非特許文献2】"Perfume and Flavor Chemicals" Steffen Arctander, 1969
【非特許文献3】J. R. P. Bishop他, "Microencapsulation in yeast cells", J. Microencapsulation, 1998, 第15巻, no.6, 761-773
【非特許文献4】L. Prosky他, J. Assoc. Off. Anal. Chem. 71, 1017-1023 (1988)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、フレーバーが、食品製品の製造、分配又は貯蔵の間に失われないようにしてフレーバーを食品製品に添加する問題に取り組むものである。重要なことには、周囲温度を上回る温度を含む製造プロセスの間に、揮発性フレーバーの損失が防止されるべきである。そのうえ、本発明は、フレーバーを、摂取する間にフレーバー知覚及び/又はフレーバー強度が増加されるようにして提供する目標を有する。
【0007】
本発明のより詳細な目標は、噛む間に、フレーバーが直ちに放出され、かつ口腔の味蕾と接触し、かつ脂質ベースの油又は脂肪に結合したままではないようにして脂質ベース内部のフレーバーを提供することである。
【0008】
より詳細には、本発明の目標は、脂質ベース、例えば油中に分散されている場合に、疎水性フレーバーをカプセル内部で保持することができる一方で、カプセルから脂質ベース中へ放出されることを防止することができるフレーバーカプセルを提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目標は、食品製品を摂取する間のフレーバー強度が、フレーバーを添加する既存の方法と比較して増加されるようにして、食品製品にフレーバーを添加することである。
【0010】
本発明の別の目標は、高い量の脂肪又は油を有する食品原材料又は食品中のフレーバーを安定化することである。特に、この種類の食品製品の製造、貯蔵又は貯蔵寿命の間に、フレーバーの蒸発は防止される必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
際立つことには、本発明の発明者らは、微生物、マトリックス成分及び少なくとも1つのフレーバーをベースとするフレーバーカプセルが脂質と混合され、かつ食品製品に、例えば食品製品を脂質でコーティング又はフィリングすることにより、適用される場合に、疎水性フレーバーですら、フレーバーカプセル中に保持され、かつ包囲する脂質環境中へ拡散しないことを見出した。この形で、フレーバーは、カプセル化されたままであり、かつ揮発性フレーバーの蒸発は、フレーバーカプセルを含んでなる脂質又は食品製品が、周囲温度を上回る温度に、例えば加熱、乾燥又は焼成により、暴露される場合ですら防止される。
【0012】
意外なことに、脂質ベース中のフレーバーの安定なカプセル化は、カプセルが水と接触するや否や妨害される。水又は口腔の唾液と接触する際に、及び脂質の存在で、フレーバーは、フレーバーカプセルから直ちに放出される。脂質を含んでなり、かつさらに微生物、マトリックス成分及び少なくとも1つのフレーバーをベースとするフレーバーカプセルを含んでなる食品製品又は食品原材料は、摂取する際に際立つフレーバーインパクト又は総合的なフレーバー強度を提供する。
【0013】
それに応じて、本発明は、第一態様において、脂質相と、前記脂質相中に分散されていて、微生物、マトリックス成分及び少なくとも1つのカプセル化されたフレーバーを含んでなるフレーバーカプセルとを含んでなる食品又は食品原材料を提供する。
【0014】
さらなる態様において、本発明は、本発明によるコーティング又はフィリングを含んでなる食品製品に関する。
【0015】
さらに別の態様において、本発明は、フレーバーを食品製品に適用する方法、及び/又は食品製品を製造する方法を提供し、前記方法は、食品製品を本発明の食品原材料でコーティング及び/又はフィリングする段階を含んでなる。
【0016】
好ましい実施態様の詳細な説明
本発明は、脂質と、前記脂質中に分散されていて、微生物、マトリックス成分及び少なくとも1つのカプセル化されたフレーバー化合物を含んでなるフレーバーカプセルとを含んでなる食品又は食品原材料に関する。
【0017】
本明細書に関連する範囲内で"含んでなる(comprises)"という言葉は、"とりわけ含む(includes, among other things)"の意味にとられる。この言葉は、"のみからなる(consists only of)"と解釈されることを意図するものではない。
【0018】
微生物、炭水化物成分及び少なくとも1つのカプセル化されたフレーバーを含んでなるカプセルは、国際公開WO2005/067733A1号及びWO2006/006003A1号パンフレットに開示されており、これらは本明細書に参照により完全に取り込まれる。
【0019】
本発明に関連して、"フレーバー"という用語は、単独のフレーバリング分子、又は幾つかのフレーバリング剤を含んでなる組成物に関係しうる。好ましくは、フレーバー組成物という用語は、好ましくは異なるlogP値を有する、少なくとも2つのフレーバー化合物の組成物に関係する。より好ましくは、前記組成物は、logP>2を有する少なくとも1つのフレーバー化合物及び/又はlogP≦2を有する少なくとも1つのフレーバー化合物を含んでなる。
【0020】
logPという用語は、カプセル化すべき特定のフレーバー化合物のオクタノール/水分配係数に関係する。本発明のためには、計算されたlogP(=clogP)値が参照される。この値は、ソフトウェアT.Suzuki, 1992, CHEMICALC 2, QCPE Program No 608, Department of Chemistry, Indiana Universityにより計算される。T.J.Suzuki, Y.Kudo, J.Comput.-Aided Mol. Design (1990), 4, 155-198も参照。
【0021】
故に"フレーバー"という用語は、所望の味覚効果を付与する、単独で又は他の化合物との組合せで使用される化合物を意味する。フレーバーとみなされるためには、当業者により、所望の方法で組成物の味を改変することができると認識されていなければならない。そのような組成物は、経口摂取されるものであり、それ故にしばしば食品、栄養組成物等である。
【0022】
教科書"Perfume and Flavor Chemicals" Steffen Arctander、著者により刊行、1969は、当業者に知られた香料及びフレーバーの集まりであり、かつ参照によりその全体が本明細書に明示的に取り込まれる。この教科書の分子は、本発明のカプセル中にカプセル化されるために適している。
【0023】
また、フレーバーという用語は、三叉神経の媒介により知覚される化合物、例えば吸熱性(cooling)化合物、唾液分泌性化合物、刺激性化合物及び刺痛性(tingling)化合物を含む。
【0024】
本発明のためには、"フレーバーカプセル"又は"カプセル"という用語は、微生物、マトリックス成分及び少なくとも1つのカプセル化されたフレーバーをベースとするカプセルに関係する。
【0025】
本発明の実施態様によれば、微生物、マトリックス成分及び少なくとも1つのフレーバーをベースとするカプセルは、
a)酵母を水と混合して、水性混合物を得る段階、
b)フレーバーを水性混合物に添加する段階、
c)フレーバーを含む水性混合物を、フレーバーの少なくとも一部が微生物中へ入るまで撹拌する段階、
d)マトリックス成分を、少なくとも部分的にカプセル化されたフレーバーを含んでなる水性混合物に添加する段階、及び
e)生じる混合物を乾燥する段階
を含んでなる方法により製造される。
【0026】
段階a)、b)及びc)は、例えば、酵母細胞体中へのフレーバリングの混入を例1〜6に開示する欧州特許出願(EP-A1)公開第1454534号明細書から、当業者によく知られている。類似して、J. R. P. Bishop他は、"Microencapsulation in yeast cells", J. Microencapsulation, 1998, 第15巻, no.6, 761-773に、パン酵母中への高濃度の精油のカプセル化を開示する。それに応じて、酵母及び油の水性懸濁液は混合され、このことは油が細胞壁及び膜を通じて自由に入り、かつ細胞内部に不動的に残留することを可能にする。
【0027】
本発明の好ましい実施態様によれば、微生物は、無損傷の細胞壁を有する。好ましくは、微生物は、細胞壁を含んでなる真菌性又は細菌性の微生物であり、より好ましくはこれは酵母細胞である。微生物の細胞壁は、効率的にカプセル化し、かつフレーバーを細胞中に保持するために、基本的に無損傷である必要がある。
【0028】
そのうえ、好ましくは、内因性の細胞内成分は、依然として微生物中に存在する。言い換えれば、微生物は好ましくは、細胞内成分を溶出するか又は洗い流すためにプロテアーゼ及び/又は酸及び/又は塩基(OH-)で処理されていない。
【0029】
好ましくは、微生物及び水を含んでなる水性混合物は、使用される生物及び装置のタイプに応じて、固形分10〜30質量%、好ましくは15〜25質量%の懸濁液である。
【0030】
本発明に関連して、百分率又は部は一般的に、他に示されていない限り、例えば水溶液を基準として乾物の質量百分率又は質量部又は固形分の百分率であり、ここで、百分率は、水を含めた全溶液の部に関係する。
【0031】
段階b)に従い、少なくとも1つのフレーバーは、水性混合物に添加される。もちろん、フレーバーは、より早く、例えば、酵母及び水と共に、添加されることもできる。フレーバーは、通常、疎水性溶剤、例えば精油又は油中に溶解されたフレーバー中に存在し、故に、フレーバーの添加は乳濁液の形成を必然的に伴いうる。それに応じて、乳化剤、界面活性剤及び/又は安定剤は、例えば、水性液体に添加されることもできる。好ましくは、水性液体中の微生物対フレーバーの乾燥質量比は、1:1〜5:1、好ましくは1.4:1〜4:1の範囲内である。
【0032】
段階c)に従い、微生物、水及びカプセル化すべき材料を含んでなる水性混合物はついで、好ましくは、1〜6時間、撹拌される。本発明に関連して撹拌(Stirring)は、かき混ぜ(agitating)又は混合のような作用にも関係する。段階c)の完了後に、実質的な量のカプセル化すべき材料は、細胞壁を通じて微生物中へ入っている。それに応じて、実施態様において、カプセル化されたフレーバーは、微生物の細胞壁の内部に存在する。
【0033】
段階d)に従い、マトリックス成分は水性混合物に添加される。国際公開(WO-A1)第2006/006003号パンフレットに列挙されているように、多様な可能なマトリックス成分が使用されることができ、これらは参照により本明細書に全て取り入れられる。それに応じて、炭水化物、タンパク質及び他の材料、例えば塗膜形成要素は、適したマトリックスを提供するために使用されることができる。好ましくは、マトリックス成分は、炭水化物を含んでなり、より好ましくは、マトリックス成分は、炭水化物少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも80質量%を含有する。好ましくは、炭水化物は、二糖類、オリゴ糖類及び/又は多糖類を含む。好ましくは、マトリックス成分を形成している炭水化物は、水溶性である。"水溶性の"という用語は、炭水化物が、L. Prosky他, J. Assoc. Off. Anal. Chem. 71, 1017-1023 (1988)により記載された方法により、少なくとも50%可溶であることを意味する。
【0034】
好ましくは、マトリックス成分は、デキストリン、より好ましくはマルトデキストリン及び/又はコーンシロップを含んでなる。最も好ましくは、マトリックス成分は、6〜25、好ましくは11〜22、最も好ましくは12〜20の平均デキストロース当量を有する、マルトデキストリン及び/又はコーンスターチシロップを含んでなる。DE>約12を有するマルトデキストリンは、親水性フレーバーをカプセル化するのにもより適している。
【0035】
また、マトリックス成分は、例えば、デンプン、デンプン誘導炭水化物、食物繊維を含んでなっていてよく、これらは好ましくは水溶性である。例えば、マトリックス成分は、capsul(登録商標)、National Starch -Food Innovation(ニュージャージー、USA)から商業的に入手可能な化工デンプンを含んでなっていてよい。
【0036】
本方法の段階e)は、生じる混合物の乾燥を提供する。乾燥は、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、流動床乾燥及び/又はオーブン乾燥により実施されることができる。好ましくは、乾燥段階は、噴霧乾燥により実施される。
【0037】
上記で与えられた段階a)〜e)の後に、微生物、マトリックス成分及び少なくとも1つのカプセル化されたフレーバーをベースとする乾燥されたフレーバーカプセルが提供されることができる。好ましくは、前記カプセルは、微生物、マトリックス及び少なくとも1つのフレーバーから本質的になり、後者は、微生物内部に及び場合によりマトリックス中にも位置している。マトリックス成分は一般的に、微生物の周囲にフィルム又は別の層を形成する。好ましくは、マトリックス成分は、微生物の細胞壁の外側表面上に位置している。
【0038】
フレーバーカプセルは好ましくは、カプセル化されたフレーバー8〜25質量%、より好ましくは12〜24質量%、さらにより好ましくは15〜23質量%及び最も好ましくは18〜22質量%を含んでなる。
【0039】
上記で得られるような微生物及びマトリックス成分をベースとするフレーバーカプセルは、先行技術に比較して実質的な利点を有する。特に、それらは、それらが異なる疎水性及び/又は親水性を有する異なるフレーバー分子を含んでなるフレーバー組成物をカプセル化するのに適しているという点で、マトリックス成分の欠いているカプセルよりも有利である。この場合に、マトリックス成分は、親水性フレーバーをより多く保留するのに適している一方で、疎水性フレーバーは、酵母細胞の原形質膜内部、特にリン脂質二分子膜内部にカプセル化される。このようにして、カプセルは、例えば、カプセル化された酵母のみをベースとするカプセルよりも、より円熟したフレーバープロフィールを提供するのに適している。
【0040】
食品又は食品原材料は、好ましくは脂質マトリックス(=脂質相)中のカプセルの一様な分散が得られるまで、フレーバーカプセルを脂質と混合することにより製造されることができる。室温で固体である場合には、脂質は、脂質中のカプセルの添加前に加熱されてよい。脂質及びフレーバーカプセル以外の成分、例えば以下に挙げられるものは、脂質をカプセルと混合する段階の前、その段階中又はその段階後の任意の段階で添加されることができる。
【0041】
本発明による食品又は食品原材料はさらに、脂質相を含んでなる。この相は、例えば、任意の種類の脂質、例えば食用又は食品用の脂肪、例えば、水素化された及び水素化されていない脂肪、脂肪酸エステル、カカオ脂及びカカオ脂代用品、油及び/又はろう、例えばカルナウバ、水素化されたひまし油、パラフィン等を含んでなっていてよい。前記脂質は室温(RT=25℃)で固体であってよいか、又はこの脂質はRTで液体であってよい。
【0042】
食品原材料は、脂質及びフレーバーカプセルからなっていてよいが、しかしながら、この食品原材料はしばしば、他の成分を含んでなる。故に、実施態様において、本発明の食品又は食品原材料は、脂質少なくとも5質量%を含んでなる。好ましくは、この食品又は食品原材料は、脂質を少なくとも10質量%、より好ましくは脂質を少なくとも20%又は30%及び最も好ましくは少なくとも40質量%含んでなる。例えば、本発明の食品又は食品原材料は、脂質を50質量%より多く、又は60質量%より多く含んでなっていてよい。
【0043】
食品又は食品原材料はさらに、所望の場合には、任意の種類の充填剤又は食品原材料を含んでなっていてよい。例えば、食品又は食品原材料は、炭水化物、タンパク質、オリゴペプチド、アミノ酸、又はその他の食品用材料を含んでなっていてよい。例えば、食品又は食品原材料は、変性された炭水化物、例えば化工デンプン、繊維及びその他を含んでなる。
【0044】
本発明の実施態様において、本発明の食品又は食品原材料はさらに、スクロース、フルクトース、グルコース、マルトース、タガトース又は他の甘味料を含んでなる。"他の甘味料"という用語は、人工甘味剤、例えばスクラロース、アセスルファムK、アスパルテーム、サッカリンナトリウム、サイクラミン酸ナトリウム、及びポリオール、例えばグリセリン、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、キシリトール、エリトリトールを含む。
【0045】
好ましくは、本発明の食品又は食品原材料は、
・脂質 5〜99.99質量%、好ましくは10〜90.00質量%、
・フレーバーカプセル 0.01〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%、及び、場合により、
・別の材料、ただし水を除く 0〜80質量%、好ましくは0.1〜70質量%
を含んでなる。
【0046】
本発明の食品又は食品原材料が、任意の可能なフィリング又は他の食品用材料の存在に関して限定的でない一方で、これは好ましくは少量の水を含有するか又は水を含有しない。意外なことに、カプセル化、温度保護及び食品原材料中のフレーバーの放出の利益は、フレーバーカプセルと水との相互作用があまり無いか又は無いという事実に関連している。脂質及び水の存在で、カプセルのセル壁はその構造を変化させ、かつカプセル化されたフレーバーは、迅速に放出される傾向にある。フレーバーの放出は、カプセル中の酵母の細胞壁が水約7〜13質量%を含有し、かつ脂質とさらに接触すれば、観察される。故に本発明の概念は、フレーバーが、食品又は食品原材料が口腔中の唾液に暴露されたときのみ、放出されることを規定する。
【0047】
故に、実施態様において、本発明の食品又は食品原材料は、水20質量%未満を含んでなる。好ましくは、これは、水15%未満、より好ましくは8%未満、さらにより好ましくは7%未満及び最も好ましくは5%未満を含んでなる。最も好ましくは、本発明の食品原材料は、実質的に水不含である。
【0048】
本発明の食品又は食品原材料の好ましくは低い含水量は、食品又は食品原材料の水分活性(Aw)に関して表現されることもできる。好ましくは、本発明の食品又は食品原材料は、0.7未満、好ましくは0.5未満、より好ましくは0.3未満、最も好ましくは0.2未満の水分活性Awを有する。水分活性は、Aqualab CX-2 装置(Decagon Devices、Inc.、Pullman、ワシントン、USA、又は、選択的にスイスにおいて入手可能なNovasina装置、型式Aw Sprint RS50を用いる)を用いて好ましくは測定される。この装置は、ユーザーズマニュアルに従って使用されるべきである。特に、この装置に接続される恒温水浴は、20℃に調節される。試料がこのためのチャンバ中で恒温調節されれば、手順を開始する。手順の終了時に、温度が依然として20±0.5℃であることをチェックする。
【0049】
本発明の食品又は食品原材料は、上記で定義されたように、単にあまり水を有しない一方で、そしてまたより多くの水を含有するより複雑な食品製品中の成分として使用されることができ、その場合に、水は本発明の食品原材料中のカプセルから物理的に分離される。例えば、水中油型乳濁液を含有する食品製品が構想されうるものであり、その場合に、本発明の食品原材料は油性相であって、その中に分散されたカプセルを有し、故に乳濁液の水性部分から保護される。
【0050】
しかしながら、例えば、食品又は食品原材料は、乾燥形で貯蔵されるが、しかし摂取する少し前に水性液体(例えば水、ミルク、ジュース)で再構成されるように製造された製品であってよい。摂取する少し前は、摂取する約1〜5時間又は0.1〜59分前を意味する。再構成の際に、フレーバーは、カプセルから放出されうるが、しかし、摂取者には依然として利用できる、それというのも、フレーバーの損失が、摂取までの短時間で少ないからである。そのような製品の例は、以下により詳細に述べるような、粉末化された製品、例えば粉末スープ、ソース、朝食用飲料である。
【0051】
本発明の食品又は食品原材料の好ましくは低い含水量に関して、脂質及びフレーバー付けされたカプセル以外である任意の食品用材料(タンパク質、炭水化物)は、周囲空気からの水を引きつけない及び/又は蓄積しないものから好ましくは選択されるか、又はもしもそれらがそうするものである場合には、水蓄積能力を有する他の材料は少ない量で好ましくは存在する。
【0052】
本発明の食品又は食品原材料中のフレーバーカプセルの利点は、周囲温度を上回る温度の存在での蒸発又は崩壊によるフレーバー損失の効率的な保護である。意外なことに、一般的に揮発性のフレーバーは、カプセルが280℃までの高められた温度に暴露される場合ですら、微生物及びマトリックス成分をベースとするカプセル内部にカプセル化されたままである。
【0053】
故に、本発明の実施態様において、食品又は食品原材料は、製造プロセスの間に>20℃の温度にかけられることにより特徴付けられる。別の実施態様において、食品又は食品原材料は、製造プロセスの間に>80℃の温度にかけられる。好ましくは、食品又は食品原材料は、製造プロセスの間に少なくとも30、40、50、60、70、80、90、100、120、140、180、200、220、250又は270℃の温度にかけられる。
【0054】
上記で定義される周囲温度は、食品製造において使用される任意の手段を用いて適用されることができる。
【0055】
例えば、食品原材料は、食品原材料の脂質内部でのフレーバーカプセルの分散を促進するために、30〜80℃に加熱されてよい。この手順は、脂質が、室温で固体である脂肪である場合及び加熱が、脂肪が液化してフレーバーカプセルを脂肪と容易に混合するのを可能にする場合に、特に好ましい。
【0056】
さらに加えて、本発明の食品原材料が、他の食品材料と組み合わされて最終食品製品が製造される場合には、脂質及びフレーバーカプセルを含んでなる本発明の食品原材料は、それを最終食品製品に添加するために加熱される必要がありうる。これは特に、コーティングプロセスを有する場合であり、ここで、コーティング材料は、それを食品製品上へ適用するために加熱されるか又は溶融される。その後の冷却段階の間に、コーティングは、例えば食品製品の表面上で、凝固しうるか又は凝結しうる。
【0057】
さらに、本発明の食品原材料を含んでなる食品消費者最終製品は、例えば、嗜好性を増加させる目的のため又は食品製品の病原菌負荷を減少させるために、食品原材料と組み合わされた後に、加熱される必要がありうる。故に、高められた温度は、例えば、溶融、煮沸、乾燥、揚げ、焼成、トースト、ペースト化、滅菌のようなプロセスを含んでいてよい。これらの手順は、当業者に知られており、かつここではより詳細に述べる必要はない。本発明の特別な利点は、常用の食品加工法が、本発明の食品原材料の存在のために改変される必要がないことである。
【0058】
実施態様において、本発明の食品は、菓子、スプレッド、ファットフィリング、ファットコーティング、スプレーコーティング、ろうコーティング、チョコレートコーティング、スパイシング剤(spicing agent)、粉末栄養組成物、ショートニング、マーガリン及び/又は製パン用ドライミックスである。
【0059】
他の実施態様において、本発明は、コーティング、フィリング、又は食品製品中の乳濁液の油性相である食品原材料に関する。本発明の食品原材料は、本質的な成分として脂質を含有し、故に、任意の種類の食品製品のフィリング又はコーティングとして特に適している。
【0060】
それに応じて、態様において、本発明は、コーティング又はフィリングとして、本発明の食品原材料を含んでなる食品製品に関する。
【0061】
明らかに、本発明の食品又は食品原材料の温度抵抗性に関する前記の利点は、コーティング又はフィリングとして、本発明の食品原材料を含んでなる食品製品にもあてはまる。それに応じて、実施態様によれば、本発明は、本発明の食品原材料をコーティング又はフィリングとして含んでなり、製造プロセスの間に、それぞれ>25℃又は100℃超の温度に、又は食品原材料について前に開示された温度にかけられる、食品製品も提供する。
【0062】
実施態様において、食品製品は、パイ、ケーキ、スナック、ファットフィルドプレッツェル又はクラッカー、ファットフィルドビスケット、及び/又はエクレアタイプの製品からなる群から選択される充填された食品製品である。
【0063】
他の実施態様において、食品製品は、加糖製品、例えばペストリー、ケーキ、パイ、キャンデー、ハードボイルドキャンデー、チューインガム(ペレット及びスティックを含む)、グミーベアー(gummi bears)、ジェリーベリー(jelly bellies)、圧縮タブレットから選択されるコーティングされた食品製品である。それに応じて、これらの又は他の食品製品は、コーティングとして本発明の食品原材料を含んでなる。
【0064】
コーティングされた食品製品は、セイボリーな食品、例えばピザ、クラッカー、スナック、クラッカー、パン、ポテトチップ、押し出されたスナック又はパフスナック、スナックヌードルであってもよい。
【0065】
本発明の食品原材料での食品製品のコーティング又はフィリングは、常用のコーティング又はフィリング技術を用いて実施されることができる。油又は脂肪のような脂質でのコーティングに一般的に使用されるコーティング又はフィリング装置が使用されることができる。
【0066】
本発明のフレーバーカプセルも含んでなる脂質コーティングを適用するのに適しているコーティング装置の例は、例えば、吹付け装置、コーティングパン(Brucks(登録商標)、Bruccoma L/GII、ドイツ)、コーティングガン(Binks(登録商標) 95G Gravity Speed Spray Gun)、流動床装置(Niro Aeromatic、スイス)である。
【0067】
フィリングを食品製品に適用するのに適しているフィリング装置の例は、押出機、例えば、スクリュー押出機、ピストン、APV Baker's(Petersborough、PE4 7AP、UK)、成形押出機(Hosokawa Bepex GmBH、74211 Leingarten、ドイツ)である。
【0068】
本発明は目下、次の例を用いて説明されるが、しかしこれらの例に限定されない。
【実施例】
【0069】
例1
酵母、マルトデキストリン及びカプセル化されたフレーバーをベースとするカプセルの製造
噴霧乾燥させた酵母(Aventine Renewable Energy Company, USA) 100gを、水375g中に分散させた。フレーバー(NovaMint FreshMint(登録商標)、Firmenich SA、スイスから商業的に入手可能、商用番号506038T)75gを添加し、この混合物を、ブレード撹拌機中で150rpmで一定撹拌しながら50℃で4時間にわたり保持する。その後、マルトデキストリン(DE 18) 150gを添加し、全水性混合物が均質になるまで混合した。
【0070】
この混合物を、ついで、Niro mobile minor(登録商標)上で210℃の入口温度及び90℃の出口温度で、10ml/分のフィード速度で噴霧乾燥させた。微生物、マトリックス成分及び少なくとも1つのフレーバーをベースとするカプセルの粉末が得られる。プロセスの終了時に、フレーバーカプセルは、酵母40質量%、マルトデキストリン40質量%及び液体フレーバー20質量%を含んでいた。
【0071】
同じ手順を、ミントフレーバーの代わりに、それぞれ、液体バターフレーバー及び液体ピザフレーバーを用いて2回繰り返す。それに応じて、Firmenich、スイスから商業的に入手可能なバターフレーバー又はピザフレーバー(商用番号:それぞれ334550 01NF及び700543 02T)75gを、上記で概説したのと同じ手順で使用して、微生物及びマトリックス成分をベースとするカプセル中にカプセル化されたバターフレーバー及びピザフレーバーを得た。噴霧乾燥させたバター味又はピザ味のカプセルは、酵母40質量%、マルトデキストリン40質量%及び液体フレーバー20質量%を含んでなり、それ故に純粋な液体フレーバーと比較して5分の1のフレーバーを含んでいた。
【0072】
例2
カプセル化されたフレーバー及びカプセル化されていないフレーバーを含んでなるファットフィリングの製造
食品製品のフィリング又はコーティングとして使用されることができるファットベースを、Hobart(登録商標)ミキサー(型式N-50、カナダ)中で周囲温度で、菓子T)糖100gを植物ココヤシ脂(Astra cocofat、Unilever、スイス)100gと混合することにより製造する。フレーバー付けしたファットフィリングの2つの系列を製造し、双方の系列は、以下に質量百分率で示された、純液体フレーバー及び上記の例1において得られたカプセル化されたフレーバーを含んでなっていた:
系列1
試料1:Liquid NovaMint FreshMint(登録商標)フレーバー(例1参照): 0.05質量%
試料2:例1において得られたフレーバーカプセル: 0.25質量%
故に、第一系列の2つのファットフィリングは等負荷のミントフレーバーを含有していた。
【0073】
系列2
試料3:Liquid NovaMint FreshMint(登録商標)フレーバー(例1参照): 0.05質量%
試料4:例1において得られたフレーバーカプセル: 0.10質量%。
【0074】
第二系列のファットフィリング番号4は、フレーバーカプセル(試料4)を含んでなるフィリングが実際には、カプセルの組成物(例1参照)が添加される前のフィリング(試料1〜3)のいずれよりも3分の1少ないフレーバーを含有する点で相違する。
【0075】
フレーバー付けしたファットフィリングの官能評価
例2において得られた2つの系列のそれぞれのファットフィリングを、20人の訓練されたパネリストにより1つの試験セッションで盲検を行った。試験設計は、強度格付け法と統計学的評価のための対応のあるt−検定法とを準備した。
【0076】
それに応じて、パネリスト全員が、2つの可能な紹介順序の一方の小さなスプーン1杯のファットフィリングを味見し、他方が続き、これを等しい回数で紹介した(10人のパネリストは試料1で開始し、かつ10人のパネリストは最初に試料2を味見した)。被験者に、ミントフレーバーがより強い方の試料を識別するように求めた。対のうちの1つの試料について、被験者に、1〜10(0=ミントフレーバーなし、10=強いミントフレーバー)の範囲のスケールでミント強度を格付けするようにも求めた。また、被験者に、製品の差異を記載するように求めた。
【0077】
結果 系列1:
四人(4)の被験者は、試料1(液体フレーバー)を最も強いものとして選択し、かつ16人の被験者は、試料2(フレーバーカプセルを含んでなる)を最も強いものとして見出した。故に、酵母、マトリックス成分及び少なくとも1つのフレーバーを含んでなるカプセルでフレーバー付けしたファットフィリングは、カプセル化されていない液体の形の同じ量のフレーバーを含んでなるファットフィリングよりも、著しく(p=0.0118)より強いフレーバー強度を有する。
【0078】
結果 系列2:
10人の被験者は、試料1(液体フレーバー)を最も強いものとして選択し、かつ10人の被験者は、試料1よりも60質量%少ないフレーバーを含有する試料2(フレーバーカプセルを含んでなる)を最も強いものとして見出した。故に、酵母、マトリックス成分及び少なくとも1つのフレーバーを含んでなるカプセルでフレーバー付けしたファットフィリングは、カプセル化されていない液体フレーバーをより多く含有するファットフィリングと同じ強度を有する。
【0079】
酵母及びマトリックス成分中にカプセル化されたフレーバーが、このようにカプセル化されていないフレーバーであるフレーバーよりも強く知覚されるという観察された事実は、摂取する間の口腔中でカプセル化されたフレーバーのより良好な放出に関連すると結論付けられる。脂質マトリックス中に分散されたフレーバーは、マトリックスに結合されたままでありうる一方で、カプセル化されたフレーバーは、唾液及び包囲している脂質と接触する際に、崩壊され(disrupted)、かつフレーバーが味蕾と容易に接触するようになる。
【0080】
例3
コーティングされたクラッカー
この例の目的は、双方とも同じフレーバー負荷を有する液体フレーバー及びカプセル化されたフレーバーの油分散液でコーティングされた焼成した物品を製造することである。
類似した量の活性フレーバー成分を含有する植物油中のフレーバー分散液の2つの系列を、以下の手順に従い製造した。
【0081】
第一系列:液体バターフレーバー及びカプセル化されたバターフレーバーを含んでなる油分散液
1. カプセル化されたバターフレーバー(例1参照)1.0gを液体キャノーラ油99gに添加し、65.5℃に加熱し、十分に撹拌した。
2. 液体バターフレーバー0.2gを、液体キャノーラ油99.8gに添加し、65.5℃に加熱し、十分撹拌した。
【0082】
これにより、それぞれがバターフレーバー0.2gを含有する2つの100gの量のバターフレーバー/油混合物を生じた。
【0083】
第二系列:液体ピザフレーバー及びカプセル化されたピザフレーバーを含んでなる油分散液
上記の系列1と同じ手順に従い、かつ同じ量を用いて、ピザフレーバー(例1参照)を、Neobee(登録商標)油に添加して、それぞれがピザフレーバー0.2gを含有する2つの100gの量のピザ味の油混合物を得た。
【0084】
ついで、油分散液中のフレーバーを、既製のクラッカーの表面に、ハンドポンプトリガースプレーを用いて、クラッカー100gあたりフレーバー分散液10gの割合で適用した。これにより、クラッカーに添加されている0.02%バターフレーバー又はピザフレーバーを生じた。使用されるクラッカーは、無塩のManischewitz Matzo(登録商標) クラッカーミニチュアであった。前記クラッカーは好ましかった、それというのも、それらは添加されたフレーバー又は脂肪又は油を含有せず、かつ本質的に無漂白小麦粉及び水からなり、その際にフレーバーの評価にとって理想的にするからである。
【0085】
油/フレーバー分散液の添加後に、クラッカーを、このクラッカー中への油の吸収を促進するために、連続オーブン中で220°F(104.4℃)で10分間加熱した。油は、クラッカー及びその他の焼成した物品に、外観、味及び口当たりの特性を高めるため、並びに粒子、例えば塩又はシーズニングを焼成した物品表面に付着させるのを助けるために典型的に適用される。別個に適用されるか、又は焼成プロセスから残留して存在する熱は、クラッカーによる油の吸収を促進する。
【0086】
クラッカーを室温に冷却させ、ついでテクスチャーを保護するために包装した。
【0087】
フレーバー付けしたクラッカーの官能評価
上記で得られたクラッカーを、3人の訓練したパネリストにより味覚盲験法において試験した。各被験者に、その後に味見した対のバター味及びピザ味のクラッカーのバターフレーバー強度又はピザフレーバー強度を評価するように求めた。
【0088】
カプセル化されたフレーバーを有するクラッカーは、液体フレーバーでフレーバー付けしたクラッカーに比較して、バターフレーバー強度及びピザフレーバー強度に関してはるかにより強いとみなされた。カプセル化されたフレーバーでフレーバー付けしたクラッカーは、フレーバーが類似した用量で適用された場合に、カプセル化されていないフレーバーでフレーバー付けしたクラッカーと比較して、より強いフレーバーインパクト及びより長く持続するフレーバーを有していた。これらの改善は、酵母−カプセル化されたフレーバーの熱安定な性質に帰因する。
【0089】
例4
ミント味のミルクチョコレートの製造
フレーバー付けしたミルクチョコレートを、次のプロトコルに従い製造する:
・Pyrex(登録商標)ガラスビーカー(1000ml)中に、ミルクチョコレート(Carma、ミルクチョコレート、Duebendorf、スイス)を入れ、これをマイクロ波中で46〜48℃の温度にして溶融させる。
・ミルクチョコレートを27〜29℃に冷却する
・ミルクチョコレートを30〜32℃に再加熱する
・フレーバーを添加し、それを十分混合する
・空の型に流し込む
・チョコレートが硬く固まるまで待ち、室温で型からそっと取り出す。
【0090】
使用したフレーバーは次のものである:
試料1: ミルクチョコレートの0.06質量%での液体ミントフレーバー(例1)
試料2: ミルクチョコレートの0.30質量%でのミント味のカプセル(例1)。
【0091】
ミント味のミルクチョコレートの官能評価
例2に記載されたのと同じプロトコルを使用したが、10人のパネリストが2g単位の液体−フレーバー付けしたチョコレート(試料1)対カプセル−フレーバー付けしたチョコレート(試料2)を味見した点で相違する。
【0092】
試料1は、初期に良好なミントフレーバーインパクトを有し、これが食べる間に徐々に減少されると知覚された。
【0093】
試料2は、初期により低いミントフレーバーインパクトを提供し、これは、その全体的なミント強度が試料1よりも高くなるまで徐々に増加した。
【0094】
例5
ミント味のミルクチョコレートクリスピーケーキの製造
チョコレートコーティングを有するケーキを、次の手順に従い製造した:
・Pyrex(登録商標)ガラスビーカー(1000ml)中にミルクチョコレート(Carma、ミルクチョコレート、Duebendorf、スイス)100gを入れ、それをマイクロ波中で46〜48℃の温度にして溶融させる
・ミルクチョコレートを27〜29℃に冷却する
・ミルクチョコレートを30〜32℃に再加熱する
・フレーバーを添加し、十分混合する
・フレーバーを有するミルクチョコレート15gを秤量し、それをフレーバー付けされていないライスクリスピーケーキの頂面に平らに塗る
・ミルクチョコレートが、室温でフレーバー付けされていないライスクリスピーケーキの頂面で硬く固まるまで待つ。
【0095】
使用したフレーバーは次のものである:
試料1:ミルクチョコレートの0.08質量%での液体ミントフレーバー(例1)
試料2:ミルクチョコレートの0.40質量%でのミント味のカプセル(例1)。
【0096】
ミント味のミルクチョコレートクリスピーケーキの官能評価
例2及び4に記載されたのと同じプロトコルを実施したが、5人のパネリストが1つの試験セッションに参加し、かつ試料サイズがコーティングされたケーキ3gであったという点で相違した。
【0097】
官能評価の結果は、カプセル化されたフレーバーを含んでなるフレーバー付けしたミルクチョコレート(例6)単独:試料2については、液体のカプセル化されていないフレーバーを含有する試料1よりも、より低い初期のインパクトを有したが、しかし味見の全時間にわたって全体的により強いミントフレーバー強度を有していた。
【0098】
例1〜5の結論
上記の実験は、脂質を含有するフィリング又はコーティングのような食品又は食品原材料が、微生物、マトリックス成分及び少なくとも1つのカプセル化されたフレーバーをベースとするフレーバーカプセルで有利にフレーバー付けされることができることを示している。実質的に水不含である油又は脂肪をベースとする食品又は食品原材料中で、フレーバーは効率的にカプセル化されることができ、かつ脂質マトリックス中へのフレーバー拡散は防止される。摂取する際に、おそらく口腔中の唾液(水)と接触するために、フレーバーは、これらのカプセルから直ちに放出され、かつ高められたフレーバー強度は、摂取者により知覚される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質相と、前記脂質相中に分散されていて、微生物、マトリックス成分及び少なくとも1つのカプセル化されたフレーバーを含んでなるフレーバーカプセルとを含んでなる、食品又は食品原材料。
【請求項2】
食品製品用のコーティング又はフィリングである、請求項1記載の食品原材料。
【請求項3】
水20質量%未満を含んでなる、請求項1記載の食品又は食品原材料。
【請求項4】
脂質を少なくとも5質量%含んでなる、請求項1記載の食品又は食品原材料。
【請求項5】
さらにスクロース、フルクトース、グルコース、マルトース及び/又は甘味料を含んでなる、請求項1又は2のいずれか1項記載の食品又は食品原材料。
【請求項6】
製造プロセスの間に>20℃の温度にかけられる、請求項1から5までのいずれか1項記載の食品又は食品原材料。
【請求項7】
製造プロセスの間に>80℃の温度にかけられる、請求項1から6までのいずれか1項記載の食品又は食品原材料。
【請求項8】
菓子、スプレッド、ファットフィリング、ファットコーティング、スプレーコーティング、ろうコーティング、チョコレートコーティング、スパイシング剤、粉末栄養組成物、ショートニング、マーガリン及び/又は製パン用ドライミックスの群から選択される、請求項1から7までのいずれか1項記載の食品。
【請求項9】
請求項2記載のコーティング及び/又はフィリングを含んでなる、食品製品。
【請求項10】
請求項1から7までのいずれか1項記載の食品原材料をフィリングとして含んでなる、食品製品。
【請求項11】
ペストリー、ケーキ、パイ、スナック、ファットフィルドプレッツェル及びファットフィルドクラッカーからなる群から選択される、請求項10記載の食品製品。
【請求項12】
請求項1から7までのいずれか1項記載の食品原材料をコーティングとして含んでなる、食品製品。
【請求項13】
ペストリー、ケーキ、パイ、キャンデー、ハードボイルドキャンデー、チューインガム、グミーベアー、ジェリーベビー、ピザ、クラッカー、パン、ポテトチップ、押し出されたスナック又はパフスナック、スナックヌードル及びスナックから選択される、請求項12記載の食品製品。
【請求項14】
製造プロセスの間に>25℃の温度にかけられる、請求項9から13までのいずれか1項記載の食品製品。
【請求項15】
製造プロセスの間に>80℃の温度にかけられる、請求項9から14までのいずれか1項記載の食品製品。
【請求項16】
微生物が無損傷の細胞壁を有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の食品又は食品原材料。
【請求項17】
カプセル化されたフレーバーが、微生物の細胞壁内部に存在する、請求項1から7までのいずれか1項記載の食品又は食品原材料。
【請求項18】
マトリックス成分が、微生物の細胞壁の外側表面上に位置している、請求項1から7までのいずれか1項記載の食品又は食品原材料。
【請求項19】
フレーバーカプセルが、
a)微生物を水と混合して水性混合物を得る段階、
b)少なくとも1つのフレーバーを水性混合物に添加する段階、
c)フレーバーを含む水性混合物を、フレーバーの少なくとも一部が微生物中へ入るまで撹拌する段階、
d)マトリックス成分を、少なくとも部分的にカプセル化されたフレーバーを含んでなる水性混合物に添加する段階、及び
e)生じる混合物を乾燥する段階
を含んでなる方法により得られることのできる、請求項1から7までのいずれか1項記載の食品又は食品原材料。
【請求項20】
食品製品を請求項1から7及び16から19までのいずれか1項記載の食品原材料でコーティング及び/又はフィリングする段階を含んでなることを特徴とする、食品製品を製造する方法。

【公開番号】特開2010−239977(P2010−239977A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173743(P2010−173743)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【分割の表示】特願2008−509543(P2008−509543)の分割
【原出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1,route des Jeunes, CH−1211 Geneve 8, Switzerland
【Fターム(参考)】