説明

カメラの姿勢変化の検知方法及びその装置

【課題】静止部に固定的に設置されたカメラにより撮像された画像を処理して何らかを情報を得る場合にその情報の精度の低下を招くような事態を比較的簡単な処理で精度良く安定して検知する。
【解決手段】姿勢変化検知装置4は、静止部に固定的に設置されたカメラ1により撮像された画像のうちの所定領域の画像信号に基づいて、前記所定領域内の直線をハフ変換処理により検出する。姿勢変化検知装置4は、前記検出された直線を示すパラメータρ,θに基づいて、カメラ1の姿勢変化の有無を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静止部に固定的に設置されたカメラの姿勢変化(カメラの向きの変化)を検知する検知方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1に開示された車載用カメラ装置では、振動や接触等により車両に対するカメラの取り付け位置が初期設定位置に対して経時的に変化してカメラ軸の位置ずれを起こした場合に正確な画像処理を行うことができない場合があることに鑑み、カメラで撮像された画像からカメラの軸がどこを向いているか推測し、その結果に応じて、画像処理を行うための原点補正を行う。そして、この車載用カメラ装置では、具体的には、撮像画像中から、フロントガラスに設けた原補正ターゲットの像又はボンネット上のマスコットの像を認識してその位置を画像処理により検出するか、あるいは、カーナビゲーションのデータから自車が平坦な直線路を走行中であることを知った上で自車両が平坦な直線路を走行中にカメラ部で路面の白線や路肩や街灯などから消失点(白線や路肩や街灯など互いに平行に配置されているものをそれぞれ直線で結ぶと無限遠方で交わる点)を画像処理により算出し、ターゲット位置又は消失点位置の初期位置に対するずれを求め、このずれから原点補正を行う。また、この車載用カメラ装置では、そのずれが補正できないほど大きければ、警報装置を用いて運転者に警告する。
【0003】
また、下記の特許文献2に開示された監視カメラシステムでは、カメラで撮像した画像から目的の対象を画像処理により検出し、その検出位置の画面の所定位置からのずれを求め、そのずれに応じてカメラの姿勢制御を行い、目的の対象を画面の所定位置に補足する。
【0004】
さらに、従来から、特許文献1に開示されたような車載用カメラや特許文献2に開示されたような姿勢制御を行うカメラとは異なり、静止部に固定的に設置されたカメラも提供されている。このようなカメラの例として、道路やトンネル等に設置された交通状態を監視する監視カメラを挙げることができる。このような監視カメラで撮像された画像は、単に画像表示されるに留まらず、撮像した画像から画像処理して、例えば交通量、避走の有無、落下物の有無、火災の有無などの種々の情報を得るためにも用いられている。
【0005】
従来は、静止部に固定的に設置されたカメラでは、車載用カメラ装置の場合などや目標対象の動きに追従して姿勢を変えることを前提とするカメラと異なり、一旦設置するとカメラの姿勢は当然に全く変化しないものと考えるのが、常識となっていた。
【0006】
したがって、静止部に固定的に設置されたカメラでは、車載用カメラ装置と異なり、カメラの姿勢変化に対する何らの配慮もなされていなかった。
【特許文献1】特開2004−247979号公報
【特許文献2】特開平9−181961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、静止部に固定的に設置されたカメラで撮像された画像を処理して前述したような種々の情報を得る場合、長期に渡る使用などによって、当該情報の精度が低下してしまう場合があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、静止部に固定的に設置されたカメラにより撮像された画像を処理して何らかを情報を得る場合にその情報の精度の低下を招くような事態を比較的簡単な処理で精度良く安定して検知することができる検知方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した常識に反して、静止部に固定的に設置されたカメラであっても、車両通過に伴う振動やその他の原因でカメラの姿勢は初期の姿勢から変化してしまう場合があり、それに起因して、静止部に固定的に設置されたカメラで撮像された画像を処理して前述したような種々の情報を得る場合、長期に渡る使用などによって、当該情報の精度が低下してしまうことが、判明した。
【0010】
このような原因の究明の結果、静止部に固定的に設置されたカメラの姿勢変化を検知することによって、静止部に固定的に設置されたカメラにより撮像された画像を処理して何らかを情報を得る場合にその情報の精度の低下を招くような事態を検知することができることが、判明した。
【0011】
ところが、静止部に固定的に設置されたカメラの姿勢変化の検知を、特許文献1,2のカメラ装置に準じて特別なターゲットの認識や消失点の算出などによって行おうとすると、処理が複雑となったり、いちいちターゲットを設置する手数を要したり、カメラの設置場所によっては消失点の算出が不可能であったりする。
【0012】
これに対し、本発明者の研究の結果、静止部に固定的に設置されたカメラにより撮像された画像の所定領域(初期的に直線部が存する領域)からハフ変換処理により直線を検出し、この直線を示す少なくとも1つのパラメータに基づいてカメラの姿勢変化を検知することで、カメラの姿勢変化を比較的簡単な処理で精度良く安定して検知することができることが判明した。
【0013】
すなわち、カメラの視野内には通常は直線部又は直線部とみなせる部分が存在する。例えば、カメラが交通状況を監視する監視カメラである場合、カメラの視野内には、このような直線部等として、車道の白線やガードレールなどの、道路と歩道(あるいは監査路など)の境界線を挙げることができる。そして、カメラの姿勢が変化すると、撮像画像中の前記直線部等の位置や傾きが変化する。したがって、特別なターゲット等を設置することなく、撮像画像中の前記直線部等の位置や傾きが変化したか否かによって、カメラの姿勢変化を検知することができる。そして、画像中の直線の検出をハフ変換処理により行うと、線が実線でも破線でも一部がかすれていても抽出でき、線の太さにばらつきがあっても検出でき、しかも、ハフ変換処理自体は周知の処理であって比較的簡単な処理である。したがって、静止部に固定的に設置されたカメラにより撮像された画像の所定領域(初期的に直線部が存する領域)からハフ変換処理により直線を検出し、この直線を示す少なくとも1つのパラメータに基づいてカメラの姿勢変化を検知することで、カメラの姿勢変化を簡単な処理で精度良く安定して検知することができるのである。
【0014】
本発明は、このような研究の結果に基づいてなされたものである。すなわち、前記課題を解決するため、本発明の第1の態様によるカメラの姿勢変化の検知方法は、画像を撮像し静止部に固定的に設置されたカメラの姿勢変化を検知する検知方法であって、前記カメラにより撮像された画像のうちの所定領域の画像信号に基づいて、前記所定領域内の直線をハフ変換処理により検出し、前記検出された直線を示す少なくとも1つのパラメータに基づいて、前記カメラの姿勢変化の有無を判定するものである。
【0015】
この第1の態様によれば、前述した研究の結果に従い、静止部に固定的に設置されるカメラの姿勢変化(ひいては、そのカメラにより撮像された画像を処理して何らかを情報を得る場合においてその情報の精度の低下を招くような事態)を、比較的簡単な処理で精度良く安定して検知することができる。
【0016】
本発明の第2の態様によるカメラの姿勢変化の検知方法は、前記第1の態様において、前記ハフ変換処理の前に前記所定領域の画像に対してエッジ検出処理を行い、該エッジ検出処理された画像に対して前記ハフ変換処理を行うものである。
【0017】
この第2の態様によれば、ハフ変換処理の前にエッジ検出処理を行うので、より精度良く直線を検出することができ、ひいては、より精度良くカメラの姿勢変化を検知することができる。
【0018】
本発明の第3の態様によるカメラの姿勢変化の検知装置は、画像を撮像し静止部に固定的に設置されたカメラの姿勢変化を検知する検知装置であって、前記カメラにより撮像された画像のうちの所定領域の画像信号に基づいて、前記所定領域内の直線をハフ変換処理により検出する直線検出部と、前記直線検出部により検出された直線を示す少なくとも1つのパラメータに基づいて、前記カメラの姿勢変化の有無を判定する判定部と、を備えたものである。
【0019】
この第3の態様によれば、前述した研究の結果に従い、静止部に固定的に設置されるカメラの姿勢変化を、比較的簡単な処理で精度良く安定して検知することができる。
【0020】
本発明の第4の態様によるカメラの姿勢変化の検知装置は、前記第3の態様において、前記直線検出部は、前記ハフ変換処理の前に前記所定領域の画像に対してエッジ検出処理を行うエッジ検出部を含み、前記直線検出部は、前記エッジ検出部によりエッジ検出処理された画像に対して前記ハフ変換処理を行うものである。
【0021】
この第4の態様によれば、ハフ変換処理の前にエッジ検出処理を行うので、より精度良く直線を検出することができ、ひいては、より精度良くカメラの姿勢変化を検知することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、静止部に固定的に設置されるカメラの姿勢変化を比較的簡単な処理で精度良く安定して検知することができ、ひいては、そのカメラにより撮像された画像を処理して何らかを情報を得る場合においてその情報の精度の低下を招くような事態を比較的簡単な処理で精度良く安定して検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明によるカメラの姿勢変化の検知方法及びその装置について、図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施の形態による姿勢変化検知装置4等を示す概略ブロック図である。
【0025】
図1に示す例では、交通状況を監視するためのCCDカメラ等のカメラ1からの画像信号が、分配器2により2つに分配される。本実施の形態による姿勢変化検知装置4は、分配器2で分配されたカメラ1からの画像信号を受け、カメラ1の姿勢変化を検知する。分配器2で分配された他方の画像信号は、その画像信号を処理して、例えば、交通量、避走の有無、落下物の有無、火災の有無などの情報を得る公知の画像処理装置3に供給される。なお、図面には示していないが、カメラ1からの画像信号は、その画像を監視者が目視し得るように画像表示するためにも用いられる。
【0026】
カメラ1は、図面には示していないが、例えばトンネル内の天井又は高所の壁等の静止部に固定的に設置されている。カメラ1が撮像する画像の一例を図3に示している。なお、図3には、処理対象領域を示す四角形(台形)も、撮像画像に重ね合わせて示している。
【0027】
本実施の形態による姿勢変化検知装置4は、図1に示すように、カメラ1からの画像アナログ信号を画素ごとに所定階調のデジタル信号に変換するA/D変換器5と、デジタル信号に変換された画像(画像信号)を記憶する画像メモリ6と、画像メモリ6からの画像に対して後述する処理を行う処理部7とを備えている。図面には示していないが、処理部7は、後述する動作を実現するように、マイクロコンピュータ及び他の電子回路等で構成されている。
【0028】
次に、本実施の形態による姿勢変化検知装置4の動作について、図2に示すフローチャートを参照して説明する。
【0029】
まず、初期設定として、カメラ1が撮像する画像中における処理対象領域を設定する(ステップS1)。この設定は、カメラ1及び姿勢変化検知装置4を設置する際に行われる。この設定は、例えば、処理部7にパーソナルコンピュータを接続し、そのパーソナルコンピュータにカメラ1から撮像画像を表示させ、設定者がその画像を見ながらマウス等により処理対象領域を指示することで、その処理対象領域を示す情報が処理部7の内部メモリ(図示せず)に格納されるようにすることによって、行うことができる。なお、処理対象領域の設定後にパーソナルコンピュータは取り外される。処理対象領域は、例えば車道の白線やガードレールなどの、道路と歩道(あるいは監査路など)の境界線などの、直線部(破線のような断続したものでもよい。)又は直線部とみなせる部分を含むように設定される。処理対象領域は、自動車等による隠蔽(オクルージョン)が発生しない領域とすることが好ましい。図3中には、処理対象領域の例を四角形(台形)で示している。
【0030】
次に、処理部7は、カメラ1からの画像を1枚サンプリングし(ステップS2)、サンプリングした画像を画像メモリ6に格納させる。
【0031】
次いで、処理部7は、ステップS1でサンプリングした画像中の処理対象領域に対して、Sobelフィルタなどを用いてエッジ検出処理を行う(ステップS3)。このとき、処理対象領域に対してのみエッジ検出処理が行われるので、他の領域のエッジは抽出されない。
【0032】
引き続いて、処理部7は、ステップS3で得られたエッジ画像を2値化する(ステップS4)。この2値化は、予め設定していた固定閾値を用いて行ってもよいし、各種の可変閾値決定手法を用いて行ってもよい。
【0033】
その後、処理部7は、ステップS4で得られた画像に対してハフ(Hough)変換処理を行い、前記処理対象領域内の直線を検出し、検出された直線を示すパラメータρ,θを得る(ステップS5)。
【0034】
ここで、図4及び図5を参照して、このハフ変換処理について簡単に説明する。図4は、x−y平面での直線を示す図である。x−y平面は撮像された画像の座標系であり、各画素に(x,y)の座標が与えられる。ある座標(x,y)を通る直線群は、下記の数1により表される。
【0035】
【数1】

【0036】
ここで、ρ,θは原点から直線への距離と角度である。数1をρ,θに関する方程式と考え、その軌跡をθ−ρ空間に描くと図5のようになる。こうした軌跡をハフ曲線という。ステップS4で得られた画像の各画素に対し、この写像を行い、θ−ρ空間に描いていく。図4の(a,b)はθ−ρ空間では、下記の数2で表される曲線となる。
【0037】
【数2】

【0038】
多くのハフ曲線が交差する点は同一直線上に多数の特徴点がのっていることを示している。θ−ρ空間内のハフ曲線上の1点で、交差本数の多い点を(ρ,θ)としたとき、(ρ,θ)を用いた下記の数3によって定義される直線が画像中に存在するとみなすことができる。
【0039】
【数3】

【0040】
この原理を利用して、直線を検出することができる。図5は、ハフ変換を行ったθ−ρ平面画像であり、このθ−ρ平面内の交差本数の最も多い点を数3の直線で表して1本の直線が検出される。本実施の形態では、ステップS5において、ステップS4で得られた画像に対してハフ(Hough)変換処理を行い、検出した1本の直線を示すパラメータρ=ρ、θ=θを得る。
【0041】
次に、処理部7は、最初にステップS2を開始してから予め定めた一定時間を経過したか(すなわち、順次サンプリングした所定数の画像についてステップS2〜S5の処理が完了したか)否かを判定する(ステップS6)。経過していなければステップS2へ戻り、経過していればステップS7へ移行する。
【0042】
ステップS7において、処理部7は、各サンプリング画像についてステップS5で得たパラメータρ,θに基づいて、初期状態(カメラ1の初期の姿勢)を示す初期値を決定する。この初期値として、例えば、各サンプリング画像についてステップS5で得たパラメータρの平均値(中央値でもよい)及び各サンプリング画像についてステップS5で得たパラメータθの平均値(中央値でもよい)を得る。なお、姿勢変化の検知精度を高める上で、このように複数のサンプリング画像について得られたパラメータρ,θの平均値や中央値などを採用することが好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、1つのサンプリング画像について得たパラメータρ,θを初期値として採用してもよい。
【0043】
以上説明したステップS1〜S7は初期動作であり、この初期動作の後に、ステップS8以降で実際の検知動作を行う。
【0044】
ステップS8において、処理部7は、カメラ1からの画像を1枚サンプリングする。
【0045】
次に、処理部7は、ステップS3と同様に、ステップS8でサンプリングした画像中の処理対象領域に対して、エッジ検出処理を行う(ステップS9)。
【0046】
引き続いて、処理部7は、ステップS4と同様に、ステップS9で得られたエッジ画像を2値化する(ステップS10)。
【0047】
その後、処理部7は、ステップS5と同様に、ステップS10で得られた画像に対してハフ変換処理を行い、前記処理対象領域内の直線を検出し、検出された直線を示すパラメータρ,θを得る(ステップ11)。
【0048】
次に、処理部7は、ステップS11で得たパラメータρ,θをステップS7で決定した初期値ρ,θと比較して、カメラ1の現在の状態(ステップS8で最新にサンプリングされた画像が撮像されたときのカメラ1の向き)が、カメラ1の初期状態と異なる状態であるか否かを判定する(ステップS12,S13)。具体的には、例えば、処理部7は、現在の状態が初期状態と異なる状態であるか否かを判定するための指標値LをステップS12で算出し、この指標値Lを所定値と比較することで現在の状態が初期状態と異なる状態であるか否かをステップS13で判定する。
【0049】
前記指標値Lとしては、例えば、下記の数4で示される値を用いることができる。数4において、ΔρはステップS7で決定したρの初期値とステップS11で得たρの値との差を示し、ΔθステップS7で決定したθの初期値とステップS11で得たθの値との差を示す。
【0050】
【数4】

【0051】
前記指標値Lとして、数4で示される値に代えて、ρとθに重みを加えた下記数5で示される値を用いてもよい。数5において、wはρに対する重み係数、wはθに対する重み係数である。
【0052】
【数5】

【0053】
前記指標値Lとして数4又は数5に示される値を採用した場合、処理部7は、ステップS13で、指標値Lが所定値以上である場合は現在の状態が初期状態と異なる(すなわち、カメラ1の姿勢が変化した)と判定し、指標値Lが所定値より小さい場合は現在の状態が初期状態と同じである(すなわち、カメラ1の姿勢が変化していない)と判定すればよい。
【0054】
ステップS13で初期状態と同じであると判定されると、ステップS8へ戻る。一方、ステップS13で初期状態と異なると判定されると、ステップS14へ移行する。
【0055】
ステップS14において、処理部7は、カメラ1の姿勢が変化した旨を示す姿勢変化検知信号を出力し、処理を終了する。この姿勢変化検知信号に応答して、警報を発する警報部を設け、例えば、管理センタの管理者にカメラ1の姿勢が変化した旨を警報することができる。管理者は、カメラ1の姿勢を元に戻したり、カメラ1の姿勢に応じて画像処理装置3の必要な初期設定をやり直したりする。これにより、画像処理装置3からの情報の精度が低下した事態が継続してしまうのを防止することができる。
【0056】
ここで、本発明者が行った実験の結果について、図6〜図18を参照して説明する。
【0057】
本発明者は、本実施の形態による姿勢変化検知装置4を実際に作製し、トンネル内に設置されたカメラ1の姿勢(向き)を経過時間に従って初期状態→状態1→状態2→・・・→状態9と順次変化させて、カメラ1の姿勢変化の検知に関するデータを得た。
【0058】
図6は初期状態でのカメラ1の撮像画像の一例、図7は状態1でのカメラ1の撮像画像の一例、図8は状態2でのカメラ1の撮像画像の一例、図9は状態3でのカメラ1の撮像画像の一例、図10は状態4でのカメラ1の撮像画像の一例、図11は状態5でのカメラ1の撮像画像の一例、図12は状態6でのカメラ1の撮像画像の一例、図13は状態7でのカメラ1の撮像画像の一例、図14は状態8でのカメラ1の撮像画像の一例、図15は状態9でのカメラ1の撮像画像の一例を、それぞれ示す。図6〜図15には、その画像からハフ変換処理により検出された直線、及び、その直線を示すパラメータρ,θの値も、撮像画像に重ね合わせて示している。
【0059】
図16は、各状態における各サンプリング画像について図2中のステップS11で得たρを示している。図17は、各状態における各サンプリング画像について図2中のステップS11で得たθを示している。図18は、各状態における各サンプリング画像について図2中のステップS12で得た数4で示される指標値Lを示している。
【0060】
図16及び図17から、カメラ1の姿勢が初期の姿勢から変化すると、ρもθも変化することがわかる。また、図18から、カメラ1の姿勢が初期の姿勢から変化すると、指標値Lが大きくなることがわかる。図18に示す例では、カメラ1の姿勢が初期の姿勢から変化すると指標値Lが50以上となっているため、図2中のステップS13で用いる閾値を、例えば、0より若干大きい値から、50より若干小さい値までの範囲内において、適当な値とすることで、カメラ1の姿勢変化を適切に検知することができることがわかる。
【0061】
本実施の形態によれば、静止部に固定的に設置されたカメラ1により撮像された画像の所定領域(処理対象領域)からハフ変換処理により直線を検出し、この直線を示す少なくとも1つのパラメータに基づいてカメラ1の姿勢変化を検知するので、カメラ1の姿勢変化を比較的簡単な処理で精度良く安定して検知することができる。したがって、本実施の形態によれば、画像処理装置3がカメラ1により撮像された画像を処理して交通量等の情報を得る場合においてその情報の精度の低下を招くような事態を、比較的簡単な処理で精度良く安定して検知することができる。また、図2中のステップS8のエッジ検出処理は必ずしも必要ではないが、本実施の形態では、このエッジ検出処理を行うので、より精度良く直線を検出することができ、ひいては、より精度良くカメラ1の姿勢変化を検知することができる。
【0062】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。
【0063】
例えば、前記実施の形態では、ハフ変換処理により検出された直線を示す2つのパラメータρ,θの両方に基づいてカメラ1の姿勢変化の有無を判定しているが、本発明では、いずれか一方のパラメータのみに基づいてカメラ1の姿勢変化の有無を判定してもよい。
【0064】
また、前記実施の形態では、図2中のステップS8でサンプリングした1枚の画像毎にステップS13でカメラ1の姿勢変化の有無を判定しているが、本発明では、ステップS7の初期状態の決定の場合と同様に、順次サンプリングされた複数の画像についてそれぞれ得たパラメータρ,θを総合的に勘案して(具体的には、例えば、ρの平均値(又は中央値)やθの平均値(又は中央値)を用いて)、カメラ1の姿勢変化の有無を判定してもよい。
【0065】
さらに、前記実施の形態では、姿勢変化検知装置4は画像処理装置3とハードウエアが別個に構成されているが、本発明では、例えば、両者のハードウエアを共通化して、画像処理装置3に姿勢変化検知装置4の機能を実現するソフトウエアを搭載して、姿勢変化検知装置4と画像処理装置3とを一体化してもよい。
【0066】
さらにまた、前記実施の形態では、1台の姿勢変化検知装置4が1台のカメラ1の姿勢変化を検知しているが、本発明では、複数台のカメラからの画像信号を順次切り替えて1つの姿勢変化検知装置4に循環的に入力させ、1台の姿勢変化検知装置4によって、複数台のカメラの姿勢変化を順次検知するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施の形態による姿勢変化検知装置等を示す概略ブロック図である。
【図2】図1に示す姿勢変化検知装置の動作を示す概略フローチャートである。
【図3】撮像画像の一例と処理対象領域を示す図である。
【図4】ハフ変換処理の原理を説明するためのx−y平面図である。
【図5】ハフ変換処理の原理を説明するためのθ−ρ平面図である。
【図6】撮像画像の一例を示す図である。
【図7】撮像画像の他の例を示す図である。
【図8】撮像画像の更に他の例を示す図である。
【図9】撮像画像の更に他の例を示す図である。
【図10】撮像画像の更に他の例を示す図である。
【図11】撮像画像の更に他の例を示す図である。
【図12】撮像画像の更に他の例を示す図である。
【図13】撮像画像の更に他の例を示す図である。
【図14】撮像画像の更に他の例を示す図である。
【図15】撮像画像の更に他の例を示す図である。
【図16】カメラの各状態における各サンプリング画像について得たρを示す図である。
【図17】カメラの各状態における各サンプリング画像について得たθを示す図である。
【図18】カメラの各状態における各サンプリング画像について得た指標値Lを示す図である。
【符号の説明】
【0068】
1 カメラ
2 分配器
3 画像処理装置
4 姿勢変化検知装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を撮像し静止部に固定的に設置されたカメラの姿勢変化を検知する検知方法であって、
前記カメラにより撮像された画像のうちの所定領域の画像信号に基づいて、前記所定領域内の直線をハフ変換処理により検出し、
前記検出された直線を示す少なくとも1つのパラメータに基づいて、前記カメラの姿勢変化の有無を判定することを特徴とするカメラの姿勢変化の検知方法。
【請求項2】
前記ハフ変換処理の前に前記所定領域の画像に対してエッジ検出処理を行い、該エッジ検出処理された画像に対して前記ハフ変換処理を行うことを特徴とする請求項1記載のカメラの姿勢変化の検知方法。
【請求項3】
画像を撮像し静止部に固定的に設置されたカメラの姿勢変化を検知する検知装置であって、
前記カメラにより撮像された画像のうちの所定領域の画像信号に基づいて、前記所定領域内の直線をハフ変換処理により検出する直線検出部と、
前記直線検出部により検出された直線を示す少なくとも1つのパラメータに基づいて、前記カメラの姿勢変化の有無を判定する判定部と、
を備えたことを特徴とするカメラの姿勢変化の検知装置。
【請求項4】
前記直線検出部は、前記ハフ変換処理の前に前記所定領域の画像に対してエッジ検出処理を行うエッジ検出部を含み、
前記直線検出部は、前記エッジ検出部によりエッジ検出処理された画像に対して前記ハフ変換処理を行うことを特徴とする請求項3記載のカメラの姿勢変化の検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−251336(P2007−251336A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−68922(P2006−68922)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【出願人】(390010054)小糸工業株式会社 (136)
【Fターム(参考)】