説明

カメラ装置及び情報配信装置

【課題】ネットワーク帯域を圧迫することなく、アラーム発生時点から所定時間遡って高画質の映像情報を得られるようにする。
【解決手段】カメラ装置20を、撮像部21と、該撮像部21で生成された映像信号を少なくとも含む時系列情報の圧縮処理を行う映像信号処理部22と、該映像信号処理部22で圧縮処理された時系列情報を一定の周回送出期間記憶するリングバッファ部23A,23Bと、該リングバッファ部23A,23Bに記憶された時系列情報を外部に出力する通信部27と、制御部25から構成する。この制御部25は、時系列情報の送出要求を受信したとき、送出要求を受信した時を基点として、リングバッファ部23Aに記憶されている所定時間前からの時系列情報を、通信部を通じてネットワークに出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ装置及び情報配信装置に関し、特にネットワークカメラを用いた監視カメラ等に適用して好適なカメラ装置及び情報配信装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
近年、ネットワークに接続できるネットワークインターフェースを備え、撮影した映像をネットワークを通じて送信する、カメラ装置が普及している。このようなカメラ装置は、ネットワークカメラなどと呼ばれ、個々にIP(Internet Protocol)アドレスを持っている。このカメラ装置は、ネットワークに直接接続され、内臓のWebサーバ、FTP(File Transfer Protocol)サーバ、FTPクライアント、電子メールクライアントを有し、アラーム管理、プログラム機能をはじめとして、その他多くの機能を備えている。このようなカメラ装置を利用して、ユーザは遠く離れた場所からでも携帯電話端末やパーソナルコンピュータ(以下、「PC」と称する。)上でリアルタイムに映像や画像を見たり、携帯電話端末やPCに映像データを保存したり、映像や画像を管理したりすることが可能である。このようなカメラ装置は、防犯・防災用のほか、ペットや子供の監視などに利用されその用途は広範にわたっている。
【0003】
上記カメラ装置を用いて、監視対象に異常が発生した場合に映像情報をファイル形式で記録したり、表示したりすることが行われている。例えば、カメラ装置に異常を検知するセンサを取り付けておいて、センサが異常の発生を検知したときに、映像信号とともに異常発生を示すアラーム信号をネットワーク経由で監視装置に送出する。そして、アラーム信号を受信した監視装置では、そのアラーム信号を基にして、異常発生の瞬間からの映像情報を記録したり、表示装置に表示したりできる技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
上記特許文献1に記載されているものは、カメラ装置からネットワークを介して監視装置に常に映像情報を送る必要があるが、ネットワークでは、単位時間に伝達できる情報は限られているため、一つのネットワークに多数のカメラ装置を接続すると、常時高画質の映像情報を送ることはできなくなる。このため、アラームに応じて映像情報の画質を制御する技術が提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。特許文献2に記載されたものは、一つのネットワークに複数のカメラ装置が接続されている形態において、あるカメラ装置でアラームが発生すると同一のネットワークに接続されている他のカメラ装置にアラーム信号を伝送し、他のカメラ装置が出力するデータ量を制限することにより、当該カメラ装置から出力できる伝送データ量すなわち画質を確保するというものである。
【0005】
【特許文献1】特開2001−231028号公報
【特許文献2】特開2005−269141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1及び2に記載されたものでは、アラームが発生する前の映像を受信側において高画質で記録、表示することはできない。受信側で高画質の映像を得ようとすれば、カメラ装置からネットワークへ常に高画質の映像信号を伝送しなければならず、ネットワークの帯域を圧迫してしまうので、現実的には実用が困難であるという問題があった。
【0007】
また、従来カメラ装置は、アラーム発生前の映像情報をある規格のファイルとしてしか取り出せず、ストリーム形式のデータ(以下、「ストリームデータ」と称す。)として取り出していなかった。そのため、監視装置や記録装置等の受信側での扱いが煩雑になるという問題があった。なお、ここでいうファイル形式のデータとは、長さが有限で情報の終わりが明確であり、これに対して、ストリーム形式のデータは、情報の終わりが明確になっていない情報を指している。
【0008】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、ネットワークの帯域を効率よく利用することで、通常時のネットワークの帯域を圧迫することなく、情報要求時点から所定時間遡って所望の品質の情報を得られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のカメラ装置は、撮像部と、該撮像部で生成された映像信号を少なくとも含む時系列情報の圧縮処理を行う映像信号処理部と、該映像信号処理部で圧縮処理された時系列情報を、一定の周回送出期間記憶するリングバッファ部と、該リングバッファ部に記憶された時系列情報を外部に出力する通信部と、時系列情報の送出要求を受信したとき、送出要求を受信した時を基点として、リングバッファ部に記憶されている所定時間前からの時系列情報を、通信部を通じてネットワークに出力するよう制御する制御部と、を有することを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、カメラ装置は、アラーム発生時点から所定時間遡って情報を受信側に送ることができる。
【0011】
また、上記の発明において、好ましくは、映像信号処理部は、上記撮像部からの映像信号に対して圧縮処理を施し、第1の映像信号を含む時系列情報と第2の映像信号を含む時系列情報を生成する。また上記リングバッファ部は、映像信号処理部で生成された第1の映像信号を含む時系列情報を一定期間記憶する第1のリングバッファ部と、第2の映像信号を含む時系列情報を一定期間記憶する第2のリングバッファ部と、から成る。さらに上記制御部は、第1のモードのとき、第1のリングバッファ部に記憶された第1の映像信号を含む時系列情報をネットワークに出力し、第2のモードのとき、第2のリングバッファ部に記憶された第2の映像信号を含む所定時間前からの時系列情報をネットワークに出力する、ことを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、カメラ装置は、第1のモードでは、第1の映像信号を含む時系列情報をネットワークに出力し、第2のモードでは、第2の映像信号を含む時系列情報をネットワークに出力するので、受信側においてモードに応じて異なる映像信号を含む時系列情報を取得できる。
【0013】
また、本発明の情報配信装置は、時系列情報の圧縮処理を行う信号処理部と、該信号処理部で圧縮処理された時系列情報を、一定の周回送出期間記憶するリングバッファ部と、該リングバッファ部に記憶された時系列情報を外部に出力する通信部と、時系列情報の送出要求を受信したとき、送出要求を受信した時を基点として、リングバッファ部に記憶されている所定時間前からの時系列情報を、通信部を通じてネットワークに出力するよう制御する制御部と、を有することを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、情報配信装置は、アラーム発生時点から所定時間遡って情報を受信側に送ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、送信側の情報配信装置から送信する過去の時系列情報の品質を、モード毎に切り換えることができる。例えば、情報配信装置にカメラ装置を用いた場合、通常時には低画質の映像情報を送出し、アラーム発生時等に時系列情報の送出要求を受信したときには高画質の映像情報を送出することができる。このように、ネットワーク帯域を効率よく利用し、通常時の帯域を圧迫することなく基準時から所定時間遡ってデータ転送速度の大きな情報を要求元に送信することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態に係る監視システムを説明するブロック図である。監視システム10は、カメラ装置20、記録装置40及び監視装置50が、ネットワーク30を介して接続された構成となっている。ネットワーク30としては、例えばTCP/IPプロトコルを利用するインターネット等の電気通信回線網やLANなどを適用できる。
【0018】
このうち、カメラ装置20は、撮像部21(撮像部)、映像信号処理装置22(映像信号処理部)、リングバッファ装置23A,23B(リングバッファ部)、外部入力装置24、主演算装置25(制御部)、バス26及びネットワーク制御装置27(通信部)から構成される。
【0019】
撮像部21は、例えばCCD(Charge Coupled Devices)などの撮像素子を備え、図示しない光学レンズを介して取り込んだ監視対象の光学像を光電変換して電気信号を生成する。その電気信号を必要に応じて増幅した後にアナログ/デジタル変換を行ってデジタル映像信号を生成し、該デジタル映像信号を映像信号処理装置22に送る。
【0020】
映像信号処理装置22は、入力されたデジタル映像信号について、例えばMPEG(Moving Picture Experts Group)により規格化されたMPEG−2システムやMPEG−4システム等の規程に従いトランスポートストリーム形のデータ圧縮を行う。そして、圧縮処理後のデジタル映像信号を、圧縮処理内容に応じて適宜リングバッファ装置23A,23Bのいずれかに送る。本実施形態では、高画質(高解像度)を維持して圧縮処理されたデジタル映像信号をリングバッファ装置23Aに記憶し、圧縮処理されてリングバッファ装置23Aに記憶されたものと比較して低画質(低解像度)のデジタル映像信号をリングバッファ装置23Bに記憶する。このように、デジタル映像信号を、一旦リングバッファ装置23A,23Bに格納することで、ネットワーク30の混雑具合(トラフィック)に伴う、伝送速度の揺らぎが吸収される。
【0021】
また、映像信号処理装置22は、撮像部21より取得したデジタル映像信号における隣接するフレームの画像を比較して差異を検出する等、所定の画像処理を実施して監視対象の異常を検出することができる。そして、検出結果をリングバッファ装置23A又は23Bに出力するとともに、主演算装置25に通知し、主演算装置25で検出結果に基づいて異常発生を検知する。映像信号処理装置22における画像処理で検出される異常としては、例えば不審者等の動体検知、個体カウント、混雑状況等に関するものが挙げられる。
【0022】
主演算装置25は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサからなり、RAM(Random Access Memory)をワークエリアとして使用し、ROMに記録されているプログラムに従って所定の制御及び演算を行う。主演算装置25は、外部からデジタル映像信号の送出要求を受信すると、リングバッファ装置23A,23Bに格納されたデジタル映像信号のいずれかもしくは両方を、ROMに記憶されているプログラムに従って、順次ネットワーク制御装置27を通じてネットワーク30に接続された記録装置40や監視装置50に向けて送出する。このとき、通常のモード(第1のモード)では、リングバッファ装置23Bに記憶されている低画質のデジタル映像信号をネットワーク30へ出力し、アラーム等が発生したなどの特別なモード(第2のモード)では、リングバッファ23Aに記憶されている高画質のデジタル映像信号をネットワーク30へ出力する。
【0023】
ネットワーク制御装置27は、カメラ装置20とネットワーク30の間でデータを仲介するインターフェースとして機能するものである。なお、ネットワーク制御装置27は、有線通信又は無線通信のいずれかの規格に対応しており、カメラ装置20はネットワーク制御装置27を通じてネットワーク30に対し有線又は無線による接続が可能である。
【0024】
外部入力装置24は、監視対象の異常を検出するためのセンサ装置60からのセンサ情報を受信し、バス26を介してセンサ情報を主演算装置25に送るインターフェースとして機能する。
【0025】
センサ装置60は、検出部であるセンサ62と出力装置61から構成され、カメラ装置20の近く又はカメラ装置20に直接取り付けられる。センサ62がセンサの種類に応じた情報を検出し、その検出信号を出力装置61でカメラ装置20に出力できるデータ形式に変換してカメラ装置20の外部入力装置24に入力する。主演算装置25は、センサ装置60から供給される各センサ情報が所定値を超えるなど所定の条件を満たす場合、異常であると判定する。例えば、センサ62として、降水、風速、気温及び気圧などの気象データを検出するもの、波高計、地震計、ドアセンサなどが挙げられる。
【0026】
さらに、カメラ装置20は、マイクロホンを備え、撮像部21で監視対象の映像情報を取得すると同時に、カメラ装置20周辺の音声情報を収音する。音声情報についても映像信号処理装置22で適宜圧縮処理が行われる。主演算装置25は、マイクロホンで収音した音声情報の音量が所定値を超えるなど所定の条件を満たすとき、異常であると判定する。これにより、モニタ上の映像に変化がなくても、音声の変化から異常発生を検知することができる。
【0027】
このようにカメラ装置20は、内蔵する撮像部21で生成したデジタル映像信号を映像信号処理装置22に送り、該デジタル映像信号の圧縮処理を行う。圧縮処理されたデジタル映像信号は、圧縮処理内容に応じてリングバッファ装置23A,23Bのいずれかに格納される。そして、主演算装置25の制御の基で監視対象の状況に応じて格納順に、ネットワーク制御装置27からネットワーク30へと送出される。
【0028】
次に、記録装置40について説明する。記録装置40は、カメラ装置20が出力するデジタル映像信号を、ネットワーク30を介して受信し、記録するものである。記録装置40は、主演算装置41、ネットワーク制御装置43及び外部記録装置44から構成され、各装置がバス42により相互にデータ通信可能に接続されている。外部記録装置44としては、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリ、もしくはCD−ROMやDVDなどの外部記録媒体が適用される。記録装置40は、カメラ装置20から送出されたデジタル映像信号を記録する場合、内包するネットワーク制御装置43を通じてデジタル映像信号を受信し、主演算装置41の制御に基いて外部記録装置44に記録する。
【0029】
続いて、監視装置50について説明する。監視装置50は、カメラ装置20が出力するデジタル映像信号を、実時間(リアルタイム)で受信し、表示するものである。監視者は、監視装置50に表示された映像を見て、監視対象の監視を行うことができる。監視装置50は、主演算装置51、ネットワーク制御装置53、LCD(Liquid Crystal Display)等の映像表示装置54及びポインティングデバイス等の操作装置55から構成され、各装置がバス52によりデータ通信可能に接続されている。
【0030】
監視装置50は、カメラ装置20から順次送出される映像データを閲覧する場合、内包するネットワーク制御装置53を通じてカメラ装置20からの映像データを受信し、主演算装置51もしくは図示しない映像信号処理装置により当該デジタル映像信号を伸張処理した後、映像表示装置54に表示する。
【0031】
なお、記録装置40に記録された映像データを監視装置50で閲覧する場合は、例えば監視者が操作装置55を操作するなどしてネットワーク30を通じて監視装置50から記録装置40に記録されている圧縮処理された状態のデジタル映像信号を呼び出す。そして、監視装置50は、記録装置40から取得したデジタル映像信号を、上記と同様の処理を行った後に映像表示装置54に表示する。
【0032】
ここで、カメラ装置20を構成するリングバッファ装置23A,23Bについて説明する。リングバッファ装置は、FIFO(First-In First-Out)方式メモリの一つであり、RAMのアドレス指定を工夫してエンドレス構成を実現することで、論理的にリング状に形成されたメモリである。リングバッファ装置は、データ書き込みポインタと読み出しポインタを持ち、書き込み時は書き込みポインタの示すアドレスに順次格納し、読み出し時は読み出しポインタの示すアドレスから順番に読み出すことで、バッファとして機能する。このようなリングバッファ装置は、例えば通信路が混雑していてすぐに送信できないような回線へ、ストリーム形式の映像データなど常に絶え間なく生成される情報を送信するときに用いられるものである。以下、本実施形態のカメラ装置20がネットワーク30に送出する映像データは、トランスポートストリームなどのストリーム形式の映像データとする。
【0033】
図2を参照して、リングバッファ装置の動作を説明する。ここでは一例として、映像データを静止画で12枚格納できるリングバッファ装置を取り上げて説明する。各領域に記載された時刻情報(t,t+1,・・・)は、それぞれの領域にデータが書き込まれた時刻を表している。なお、本例ではリングバッファ装置23Aについて説明するが、リングバッファ装置23Bは、記録される映像データの画質が異なるのみで、動作はリングバッファ装置23Aと同様であるので、説明を割愛する。
【0034】
図2(A)は、リングバッファ装置23Aがある時刻tから時刻(t+10)までの連続静止画を格納している状態において、現在、主演算装置25により時刻(t+11)の映像データを格納しながら、時刻(t+5)の映像データが取り出されている様子を示すものである。ここで格納される映像データは映像信号処理装置22によって圧縮処理されたデジタル映像信号であり、取り出される映像データは、過去に圧縮処理されたものである。取り出された映像データは、主演算装置25の制御の下、ネットワーク制御装置27からネットワーク30へ送出される。
【0035】
次の時刻(t+12)では、図2(B)に示されるように、既にネットワーク30へ送出された時刻tの圧縮された映像データが時刻(t+12)の映像データで上書きされると同時に、時刻(t+6)の映像データが読み込まれてネットワーク30へ送出される。同様に、図2(C)に示されるように、既にネットワーク30へ送出された時刻(t+1)の圧縮された映像データが時刻(t+13)の映像データで上書きされると同時に、時刻(t+7)の映像データが読み込まれてネットワーク30へ送出される。このように同じ処理が繰り返されることで、順次リングバッファ装置23Aからネットワーク30へ映像データが送出される。
【0036】
一般にネットワークは、その混雑状況により、常時連続して情報を送り出せるとは限らない。そのような場合であっても、リングバッファ装置は、格納された映像情報がネットワークに送出されるのを待たずに、新たな映像情報の書き込みを滞りなく行うことができたり、映像情報の書き込みを待たずに先に格納された映像情報をネットワークに送出したりできるため、広く一般に用いられている。
【0037】
従来のシステムであれば、このリングバッファ装置を予想されるネットワークの混雑状況に応じた記憶容量を持つメモリから構成しておいて、受信側で高画質な映像情報が必要なときは、前述の手順で映像情報をネットワークに情報を常時、流し続ける必要があった。
【0038】
これに対し、本発明によるシステムでは、十分な記憶容量と周回送出期間を持つリングバッファ装置23Aをカメラ装置20に用意し、高画質な映像情報をカメラ装置20内で記憶させる。ここで周回送出期間とは、ある領域にデータが書き込まれてから別のデータで書き換えられるまでの周期を指している。本実施形態では、一例としてデータが書き込まれて消去されるまでの周回送出期間を1分間とする。その一方で、ネットワーク30の混雑具合に応じた記憶容量及び周回送出期間を持つ別のリングバッファ装置23Bを用意する。
【0039】
なお、高画質の映像情報を記憶するリングバッファ装置23Aは、要求に応じて映像情報を外部に出力するので、周回送出期間を長めに設定してもよい。また、リングバッファ装置23Bは、低画質の映像情報を記憶して順次出力するのみなので、周回送出期間を短めに設定してもよい。
【0040】
通常時(第1のモード)は、該リングバッファ装置23Bに記憶されたデータ量すなわちデータ転送速度の小さい低画質の映像情報をネットワーク30に流し、その映像情報を基に記録装置40で記録したり、監視装置50で監視したりする。そして、データ量(データ転送速度)の大きい高画質の映像情報を送出するよう要求されたとき(第2のモード)、リングバッファ装置23Bの低画質の映像情報に代えてリングバッファ装置23Aから高画質な映像情報をネットワーク30に送出する。
【0041】
例えば、監視装置50を用いて対象を監視している監視者が異常に気づいた場合、ネットワーク30を介して、監視者がカメラ装置20に対して異常が発生した時を基点として所定時間前、例えば10秒前からの映像データの送出を要求する。カメラ装置20の主演算装置25は、高画質の映像データを記憶したリングバッファ装置23Aから過去10秒まで遡って映像データを取り出し、監視装置50にその映像データを送信する。この手順により、監視者は異常発生前後の高画質の映像情報を得、その内容を確認することができる。
【0042】
ここで、カメラ装置20から監視装置50に映像データを送信する際に、主演算装置25はネットワーク30の帯域に空きがあるか否かを判定する。ネットワーク30の帯域に空きがあると判断した場合、主演算装置25は、上記映像データの送出要求を受信した時点より過去の映像データを、リングバッファ装置23Aに書き込んだときの時間間隔(時間幅)より短い時間間隔でリングバッファ装置23Aから読み出し、ネットワーク30へ出力する。このように、実時間より短い時間間隔で映像データを送出することにより、受信側では実際に映像の撮影にかかった時間より早く映像データを受信することができる。
【0043】
例えば、毎秒30フレームのインターレース方式で、垂直走査周波数が60Hzの映像信号の場合、通常時、1/60秒単位で書き込み、読み込みを行う。これに対して、実時間より短い時間間隔で読み出しを行う場合、例えば2倍速であれば1/120秒単位で読み込みを行うことになる。
【0044】
さらに、過去の映像データをネットワーク30に送出した後、主演算装置25は、引き続き現在の時間に追いつくまで、リングバッファ装置23Aに書き込んだときの時間間隔より短い時間間隔で当該リングバッファ装置23Aから映像データを読み出し、ネットワーク30へ出力する。このようにすることで、監視装置50は、リングバッファ装置23Aから高画質の映像データを実時間より短い時間で取得して早送りで再生し、早送り再生している映像データの時刻が現在の映像データと一致した時点で、リアルタイムの映像データの閲覧に切り換えるなどといった動作も可能である。このように、受信側が過去の映像データを取得時に、撮像に要した実時間より短い時間間隔で映像データを取得し、さらに過去の映像データを早送りすることで、監視者はアラーム発生前の映像からつなぎ目なくリアルタイム映像の監視に戻ることができる。
【0045】
なお、カメラ装置20が送出した映像データを記録装置40で記録する場合、記録装置40が監視者の操作による監視装置50からの異常通知、センサ装置60による異常通知、映像信号処理装置22での画像処理による異常発見などといったアラームを受け、ネットワーク30を介してカメラ装置20に対し例えば10秒前からの映像データを要求する。すなわちカメラ装置20に対して高画質の映像データの送出を要求する。そして、カメラ装置20に高画質の映像データの送出要求が通知されたとき、アラーム発生10秒前からの映像データが記録装置40に送られ、当該アラーム発生10秒前の映像データを含むアラーム発生前後の映像データを記録装置40に記録する。
【0046】
次に、本実施形態のカメラ装置を用いた監視システムよるネットワーク帯域の効率的な使用形態を説明する。
【0047】
図3は、従来の監視システム80による情報伝達方式の説明図であり、カメラ装置82,83,84が、ネットワーク30に接続されている様子を模式的に表している。各カメラ装置82〜84とネットワーク30を繋ぐ線の太さは、各カメラ装置82〜84から出力される高画質の映像データ85〜87の帯域を模式的に表し、また、ネットワーク30の直径はネットワーク帯域を模式的に表す。この例では太線で表示されており、各カメラ装置82〜84からそれぞれ出力される映像データ85〜87は高画質である。従来方式であると、受信側でアラームが発生する前の高画質の映像データをカメラ装置から取得するには、カメラ装置82〜84から高画質の映像データ85〜87を常時送信する必要があるため、ネットワーク30の帯域を圧迫していた。
【0048】
図4は、本実施形態の監視システム10の一部を模式的に示したものである。カメラ92,93,94は、カメラ装置20と同一構成でありその説明は割愛する。リングバッファ装置95,96,97の線の太さは、カメラ装置92〜94の各々に記憶される高画質の映像データの帯域を模式的に表している。また、各カメラ装置92〜94とネットワーク30を繋ぐ線の太さは、各カメラ装置92〜94から出力される映像データ101,102,103,104の帯域を模式的に表す。
【0049】
本実施形態の監視システム10において、主演算装置25の制御により、リングバッファ装置95,96,97に、周回送出期間に応じて一定時間の高画質の映像データを記憶させ、同時に低画質の映像データ101〜103をネットワーク30に送信している。カメラ装置92でアラームが発生した場合、受信側の記録装置40(図1参照)がカメラ装置92にアラームが発生したことを検知し、記録装置40からカメラ装置92に対し高画質な映像データの送信を要求する。あるいは、監視者が監視装置50(図1参照)のモニタ上で異常発生に気づき、操作装置55を操作しカメラ装置92に高画質な映像データを要求する。カメラ装置92は、リングバッファ装置95に格納された高画質の映像データ104をアラーム発生の一定時間前まで遡って受信側へ向けて送信し、受信側ではアラーム前の高画質な映像データを取得する。
【0050】
このように、本発明によるカメラ装置は、通常時には低画質の映像データを送り、アラーム発生時等、高画質の映像データ送出指示があったときのみ高画質の映像データをネットワークに送出するので、ネットワークの限られた帯域を効率的に利用し混雑を抑えることができる。
【0051】
ところで、上述した第1のモードから第2のモードに遷移するのではなく、リングバッファ装置23Bから低画質の映像情報を切れ目なく送信しながら、同時にリングバッファ装置23Aから高画質の映像情報を切れ目なく送信する第3のモードへ遷移する、ようにしてもよい。
【0052】
リングバッファ装置23Aの映像データは、リングバッファ装置23Bのものより高画質であるため、通常時に異なる画質の映像データを同時に必要とはしないが、ストリーム形式のデータの場合、連続した映像データが望まれる。具体的には、一旦、低画質の映像データを切って高画質の映像データを取得すると、その部分に切れ目が生じてしまったり、後の処理で各映像データのタイムスタンプを見て切れ目なく繋ぐ処理が必要になったりする。それにより、連続再生に必要な映像データが欠落する可能性があったり、映像データを切れ目なく繋ぐ処理に手間がかかったりするので、連続した映像データが望ましい。
【0053】
なお、上述した実施形態の変形例として、次のようなものが考えられる。
<第1変形例>
カメラ装置は、記録装置40又は監視者の操作による監視装置50からの要求によってある時点より前、つまり過去の高画質な映像データの送出を行うのではなく、カメラ装置自身の判断で過去の高画質な映像データを送出するようにする。例えば、カメラ装置内部の映像信号処理装置22で画像処理を行い監視対象の異常を検知したり、センサ装置60から供給される検出信号が所定の閾値を超えるなど監視対象の異常を示すものであったりした場合に、カメラ装置が受信側からの送出要求を待つことなく高画質な映像データをネットワークに送出する。これにより、送信側のカメラ装置自身が映像データの送出の是非を判断するので、受信側からの送出要求を待つ遅延時間をなくし、監視対象の異常に即座に反応して迅速に高画質の映像データの送信を行うことができる。
【0054】
<第2変形例>
上記実施形態においては、時系列情報として、リアルタイムで視聴できるストリーム形式の映像データについて説明した。これに限らず、時間軸を持つ情報であればよく、例えば映像信号処理部22でデジタル映像信号を画像処理して得られる動体検知、個体カウント、混雑状況等の時系列の付随情報であったり、マイクロホンで収音した音声情報であったり、センサ装置60で取得した時系列情報であったりする場合や、それらの複合形態が考えられる。
【0055】
例えば、センサ装置60で取得した降水情報を基に、カメラ装置20の主演算装置25が時系列の降水量画像データを作成し、これをネットワーク30に送出するなどが考えられる。カメラ装置は、映像データにこれらの時系列情報の一つ又は複数の組合せを付加して送出してもよいし、映像データを除いた時系列情報のみを送出するようにしてもよい。さらに、受信側の装置又は監視者が、映像データ又は映像データを除く時系列情報、あるいは双方を含む情報のいずれを選択できるようにすると、状況に応じて必要な情報を取得できるので監視の精度及び効率が向上する。
【0056】
<第3変形例>
平常時、受信側では映像データをまったく取得せず、アラームをきっかけにアラーム発生前の高画質の映像データを取得するようにする。このようにすると、平常時はネットワークに余分な映像データが流れないので、ネットワークの混雑を回避できる。
【0057】
以上説明したように、本発明は、カメラ装置からネットワークに高画質の映像データを常時送信し続けることなく、画像処理によるアラームの検出、カメラ装置に取り付けられたセンサ装置のセンサ情報に基くアラームの検出、及び監視者の操作によるアラームの発生等、アラームの検出もしくは発生以前の高画質な映像データを取得でき、その映像データを再生、記録できる。このように、カメラ装置に一時的に一定期間の映像データなどの時系列情報を記憶し、アラームに応じて過去の情報より順次取得する構成としたので、平常時のネットワーク帯域を圧迫することなくアラーム発生前後の映像データを効果的に取得することができる。さらに映像データをストリーム形式データ等の時系列情報にして取り扱うようにしているので、ファイル形式のデータと比較して、記録装置や監視装置での扱いが煩雑となることを解消できる。
【0058】
また、監視者が異常に気づいたときに、リングバッファ装置が持つ周回送出期間内の所定時間だけ戻って、再度映像情報を確認することができる。このとき、過去の映像情報を早送りすることで、つなぎ目なくリアルタイム映像の監視に戻ることができる。
【0059】
なお、本発明のカメラ装置をネットワークカメラに適用した例について説明したが、PCに接続され、リアルタイムで画像転送の可能なUSB(Universal Serial Bus)、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)1394等のインターフェースを持った、Web(World Wide Web)カメラなどのカメラ装置にも適用できる。
【0060】
その他、本発明は、上述した実施の形態の例に限定されるものではなく、カメラ装置に代えて、撮像部を持たず情報の配信のみを行う情報配信装置に使用するなど、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形、変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態に係る監視システムを説明するブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るリングバッファ装置の動作説明図である。
【図3】従来の情報伝達方式の説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る、リングバッファ装置を用いた情報伝達の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0062】
10…監視システム、20…カメラ装置、21…撮像部、22…映像信号処理部、23A,23B…リングバッファ装置、25…主演算装置、27…ネットワーク制御装置、30…ネットワーク、40…記録装置、50…監視装置、60…センサ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像部と、
前記撮像部で生成された映像信号を少なくとも含む時系列情報の圧縮処理を行う映像信号処理部と、
前記映像信号処理部で圧縮処理された時系列情報を一定の周回送出期間記憶するリングバッファ部と、
前記リングバッファ部に記憶された前記時系列情報を外部に出力する通信部と、
前記時系列情報の送出要求を受信したとき、前記送出要求を受信した時を基点として、前記リングバッファ部に記憶されている所定時間前からの時系列情報を、前記通信部を通じて出力するよう制御する制御部と、
を有することを特徴とするカメラ装置。
【請求項2】
前記映像信号処理部は、前記撮像部からの映像信号に対して圧縮処理を施し、第1の映像信号を含む時系列情報と第2の映像信号を含む時系列情報を生成し、
前記リングバッファ部は、前記映像信号処理部で生成された前記第1の映像信号を含む時系列情報を一定期間記憶する第1のリングバッファ部と、前記第2の映像信号を含む時系列情報を一定期間記憶する第2のリングバッファ部と、から成り、
前記制御部は、第1のモードのとき、前記第1のリングバッファ部に記憶された前記第1の映像信号を含む時系列情報をネットワークに出力し、第2のモードのとき、前記第2のリングバッファ部に記憶された前記第2の映像信号を含む所定時間前からの時系列情報を前記ネットワークに出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載のカメラ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記時系列情報の送出要求を受信したことにより、前記第1のモードから前記第2のモードに遷移するよう制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載のカメラ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記時系列情報の送出要求を受信したことにより、前記第1のモードから第3のモードへ遷移し、
前記第1のリングバッファ部に記憶された前記第1の映像信号を含む時系列情報を前記ネットワークに出力し、同時に前記第2のリングバッファ部に記憶された前記第2の映像信号を含む所定時間前からの時系列情報を前記ネットワークに出力するよう制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載のカメラ装置。
【請求項5】
前記時系列情報に含まれる前記第2の映像信号による画像は、前記第1の映像信号による画像よりも高画質である、
ことを特徴とする請求項2に記載のカメラ装置。
【請求項6】
前記制御部は、撮影対象に異常が発生したことが検出されたことにより、前記第1のモードから前記第2のモードに遷移するよう制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載のカメラ装置。
【請求項7】
前記制御部は、撮影対象に異常が発生したことが検出されたことにより、前記第1のモードから前記第3のモードに遷移し、
前記第1のリングバッファ部に記憶された前記第1の映像信号を含む時系列情報を前記ネットワークに出力し、同時に前記第2のリングバッファ部に記憶された前記第2の映像信号を含む所定時間前からの時系列情報を前記ネットワークに出力するよう制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載のカメラ装置。
【請求項8】
前記時系列情報は、前記映像信号処理部において前記映像信号による画像を画像処理して生成された差異情報を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のカメラ装置。
【請求項9】
マイクロホンを更に備え、
前記時系列情報は、前記マイクロホンより得られる音声信号を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のカメラ装置。
【請求項10】
センサ装置を更に備え、
前記時系列情報は、前記センサ装置より得られる情報を基に生成される画像情報を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のカメラ装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記ネットワークの帯域に空きがあると判定した場合、前記送出要求を受信した時点から過去の時系列情報を、前記リングバッファ部に書き込まれたときの時間間隔より短い時間間隔で前記リングバッファ部から読み出し、前記ネットワークへ出力する、
ことを特徴とする請求項2に記載のカメラ装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記過去の時系列情報を前記ネットワークに送出した後、前記送出要求時点から現在までの時系列情報を、前記リングバッファ部に書き込まれたときの時間間隔より短い時間間隔で前記リングバッファ部から読み出し、前記ネットワークへ出力する、
ことを特徴とする請求項11に記載のカメラ装置。
【請求項13】
時系列情報の圧縮処理を行う信号処理部と、
前記信号処理部で圧縮処理された前記時系列情報を、一定の周回送出期間記憶するリングバッファ部と、
前記リングバッファ部に記憶された前記時系列情報を外部に出力する通信部と、
前記時系列情報の送出要求を受信した場合、前記送出要求を受信した時を基点として、前記リングバッファ部に記憶されている所定時間前からの時系列情報を、前記通信部を通じて出力するよう制御する制御部と、
を有することを特徴とする情報配信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−263370(P2008−263370A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104080(P2007−104080)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】