説明

カラーフィルタの製造方法、固体撮像素子の製造方法、及び固体撮像素子

【課題】撮像素子基板上に集光機能を有するカラーフィルタを効率的に作製する。
【解決手段】撮像素子基板20上に、光電変換素子毎に対応する開口22aを有する格子状の分離壁22を形成し、その開口22aにカラーレジスト42を塗布、露光および現像してカラーフィルタを作製する。カラーレジスト42の露光は、所定のマスク開口52を有するフォトマスク50を用いた縮小倍率rの縮小投影露光により行う。また、フォトマスク50は、分離壁22の開口22aの面積をSとしたとき、マスク開口52の開口面積Smが、Sm<S/rであるものを用い、分離壁22の表面位置57におけるカラーレジスト42の露光面積が分離壁22の開口22aの面積以下となるように、露光光Lを分離壁22の表面位置57よりも上方位置56で集光させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子に備えられているカラーフィルタの製造方法およびそのカラフィルタの製造方法を用いた固体撮像素子の製造方法および固体撮像素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子として現在広く用いられている通常の表面照射型CMOSイメージセンサでは、画素の開口効率を向上させ、結像光束を可能な限り画素ごとの光電変換部に導くべく、被写体光の入射面にマイクロレンズが敷設されている。これによって、マイクロレンズが敷設されていない場合に比べて開口効率が向上し光電変換効率も向上する。
【0003】
しかし近年では画素サイズの縮小に伴い、マイクロレンズだけでなくカラーフィルタにもレンズ機能を付与した設計が注目されている。
特許文献1ではカラーフィルタの各画素間にカラーフィルタよりも低屈折率な材料、もしくは各画素間を空隙として集光機能を持たせることが提案されている。また特許文献2〜6でも同様の提案がなされている。なお、カラーフィルタ間に分離壁を設ける構造は特許文献7でも提案されているように古くから提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−295125号公報
【特許文献2】特開2009−111225号公報
【特許文献3】特開2010−67827号公報
【特許文献4】特開2010−67828号公報
【特許文献5】特開2010−204154号公報
【特許文献6】特許第4741015号
【特許文献7】特開平3−282403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜7において提案されている分離壁付きカラーフィルタの作製方法はいくつかの手法があり、それぞれ問題点がある。
【0006】
特許文献7では、最初に分離壁を作製後カラーフィルタになる層を塗布により形成し、選択的に露光した後で分離壁上に載っている余分なカラーフィルタ材料を分離壁表面が露出するまでエッチングした後、現像することでフィルタを形成している。ところが本製造方法ではカラーフィルタを塗布、露光、エッチバック、現像、と通常の露光現像工程の途中にドライエッチング工程が入ることになるために、製造方法が複雑で長くなること、エッチング制御が困難であること、工程が長く複雑になるために歩留悪化の原因になっている。
【0007】
特許文献1、2では最初にカラーフィルタアレイを作製しておき、フォトレジストで分離壁となる領域を開口、ドライエッチングにてカラーフィルタ間に溝を形成し、低屈折率材料を塗布・硬化させて作製している。ところが本製造方法では低屈折率材料を塗布したときに溝の中に上手く入っていかずに気泡が残ってしまい、それが硬化の際に膨張して、表面に突沸した跡が形成されてしまい、これが散乱ロスや混色の原因になっている。
【0008】
特許文献5では最初に分離壁を作製後、非感光性材料によるカラーフィルタを順に作製し、最後にCMP(化学的研磨)によりカラーフィルタアレイを作製している。ところが本製造方法はCMPによる残膜厚制御が困難で、歩留悪化の原因になっている。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、分離壁を備えた集光機能を有するカラーフィルタを効率的に作製することができるカラーフィルタ層の製造方法を提供することを目的とするものである。また、本発明は、分離壁を備えた集光機能を有するカラーフィルタを備えた画素ピッチが小さくなっても混色が小さな固体撮像素子およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のカラーフィルタの製造方法は、回路基板上に複数の光電変換素子を備えてなる撮像素子基板上に、2色以上のカラーフィルタと、該各色のカラーフィルタを隔てて分離する透明な分離壁とからなるカラーフィルタ層を製造する方法であって、
前記撮像素子基板上に、前記光電変換素子毎に対応する開口を有する格子状の分離壁を形成する工程と、
前記格子状の分離壁の開口にカラーレジストを塗布する塗布工程と、
該カラーレジストを露光する露光工程と
前記露光されたカラーレジストを現像する現像工程とを含み、
前記露光工程において、所定のマスク開口を有するフォトマスクを用い、該マスク開口を前記分離壁の開口位置に対応させて縮小投影させることにより前記カラーレジストの露光を行うものとし、
前記フォトマスクとして、前記マスク開口の開口面積Smが、前記分離壁の開口の面積をS、前記縮小投影の縮小倍率をrとしたとき、Sm<S/rであるものを用い、
前記分離壁の表面位置における前記カラーレジストの露光面積が前記分離壁の開口の面積以下となるように、露光光を前記分離壁の表面位置よりも上方位置で集光させることを特徴とする。
【0011】
なお、前記カラーレジストの塗布、露光および現像工程は、各色毎に繰り返して行うことにより、複数色を備えたカラーフィルタ層を得ることができる。
【0012】
前記分離壁の表面位置における前記カラーレジストの露光面積が、前記分離壁の開口の面積とほぼ一致するように、前記露光光を集光させることが好ましい。
【0013】
前記塗布工程において、前記カラーレジストにより前記分離壁の開口が満たされ、前記分離壁の表面が覆われるまで該カラーレジストを塗布することが好ましい。
【0014】
本発明の固体撮像素子は、回路基板上に複数の光電変換素子を備えてなる撮像素子基板上にカラーフィルタ層を備えてなる固体撮像素子の製造方法であって、
前記回路基板上に前記複数の光電変換素子を形成して撮像素子基板を作製し、
前記複数の光電変換素子上に前記カラーフィルタ層を、本発明のカラーフィルタの製造方法により製造することを特徴とする。
【0015】
本発明の固体撮像素子は、回路基板上に複数の光電変換素子を備えてなる撮像素子基板と、
前記複数の光電変換素子の上方に配された、2色以上のカラーフィルタおよび該各色のカラーフィルタを隔てて分離する透明な分離壁からなるカラーフィルタ層とを備え、
前記カラーフィルタが平凸レンズ形状を有していることを特徴とするものである。
【0016】
前記光電変換素子の光電変換層は、有機材料から構成されるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のカラーフィルタの製造方法によれば、カラーレジストの露光工程において、所定のマスク開口を有するフォトマスクを用い、マスク開口を分離壁の開口位置に対応させて縮小投影させることによりカラーレジストの露光を行うものとし、フォトマスクとして、マスク開口の開口面積Smが、分離壁の開口の面積をS、前記縮小投影の縮小倍率をrとしたとき、Sm<S/rであるものを用い、分離壁の表面位置におけるカラーレジストの露光面積が分離壁の開口の面積以下となるように、露光光を分離壁の表面位置よりも上方位置で集光させることにより、その後現像により得られるフィルタの形状を上に凸の形状(平凸レンズ形状)とすることができる。現像後にエッチングの処理が不要であり、効率的にカラーフィルタを製造することができる。
【0018】
本発明の固体撮像素子によれば、撮像素子基板上に各色のカラーフィルタを隔てて分離する透明な分離壁を備えたカラーフィルタ層を備えており、さらには、各カラーフィルタの形状が平凸レンズ状であることにより、集光性が格段に向上し、隣接画素間のクロストークを大幅に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のカラーフィルタの製造方法を用いて製造される固体撮像素子の構造を示す模式断面図
【図2】本発明のカラーフィルタ製造方法の実施形態を示す工程図
【図3A】フォトマスクを用いた縮小投影露光を示す模式図
【図3B】フォトマスクおよび格子状分離壁を模式的に示す平面図
【図4】従来のカラーフィルタ製造方法を示す工程図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0021】
図1は本発明のカラーフィルタの製造方法を用いて製造される固体撮像素子の一実施形態の概略構成を示す断面図である。
【0022】
図1に示すように、固体撮像素子10は、半導体回路基板11と、半導体回路基板11上に二次元アレイ状に形成された複数の画素電極(下部電極)12と、複数の画素電極12上に連続し形成された有機材料からなる光電変換層14と、光電変換層14上に形成された、複数の画素電極に対向する対向電極であり、単一層として設けられた共通電極(上部電極)16とを備えている。なお、また、上部電極16の上には透明な絶縁層18が積層されており、ここでは、半導体回路基板11から絶縁層18までを含めて撮像素子基板20と称する。撮像素子基板20の絶縁層18上に、2色以上(本実施形態においては3色)のカラーフィルタ21r、21g、21bと各色のカラーフィルタ21r、21g、21bを隔てて分離する透明な分離壁22とからなるカラーフィルタ層CFが設けられ、さらにカラーフィルタ層CF上には低反射層25が設けられている。
【0023】
以下、各構成要素についての詳細を説明する。
【0024】
(半導体回路基板)
半導体回路基板11は、n型シリコン基板1(以下、単に基板1とする。)の表面にp型のウェル領域2を備え、ウェル領域2にはn型の不純物拡散領域3が複数形成されている。不純物拡散領域3は、回路基板11上に形成される画素電極12と対応して二次元アレイ状に形成されている。また、ウェル領域2の表面において、不純物拡散領域3の近傍には、該不純物拡散領域3に蓄積した電荷に応じた信号を出力する信号読出し部4が設けられている。
【0025】
信号読出し部4は、不純物拡散領域3に蓄積された電荷を電圧信号に変換して出力する回路であって、例えば公知のCCDやCMOS回路によって構成することができる。
【0026】
さらに、基板1のウェル領域2が形成された表面上に絶縁層5が積層されている。絶縁層5の上には、平面視略矩形状の画素電極12が複数、所定の間隔で配列形成されている。各画素電極12は、絶縁層5を貫通するように形成された導電性材料からなる接続部6を介して、基板1の不純物拡散領域3に電気的に接続されている。
【0027】
撮像素子10は、光電変換層14に光が入射されると、光電変換層14で発生した電荷(正孔及び電子)のうち、例えば、正孔を上部電極16に移動させ、電子を下部電極12に移動させるように、下部電極12及び上部電極16間には、図示しない電圧供給部によってバイアス電圧が印加される。この場合、上部電極16を正孔捕集電極とし、下部電極12を電子捕集電極としている。
【0028】
(電極)
上部電極16及び下部電極12は、光電変換層14との密着性や、電子親和力や、イオン化ポテンシャル、安定性等を考慮して選ばれる。
上部電極16及び下部電極12の作製には、その材料によって種々の方法が用いられるが、例えばITOの場合、電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、化学反応法(ゾルーゲル法など)、酸化インジウムスズの分散物の塗布などの方法で膜形成される。ITOの場合、UV−オゾン処理、プラズマ処理などを施すことができる。
上部電極16は、光電変換層14に光を入射させる必要があるため、透明な導電性材料で構成されている。ここで、透明電極材料は、例えば波長が約420nm〜約660nmの範囲の可視光域で約80%以上の透過率であるものが好ましい。
【0029】
上部電極16の具体的な材料としては、例えば、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性金属酸化物、あるいは金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、シリコン化合物およびこれらとITOとの積層物などが挙げられ、好ましくは、導電性の金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からITO、ZnO、InO、が好ましい。
【0030】
下部電極12は、導電性材料であればよく、透明である必要はない。しかし、下部電極12の下方の基板1側にも光を透過させることが必要である場合には、下部電極12も透明電極材料で構成することが必要となる。このとき、下部電極12の透明電極材料としては、上部電極16と同様に、ITOを用いることが好ましい。
【0031】
(光電変換層)
有機材料による光電変換層14は、厚みが0.1μmから1.0μmの範囲となるように成膜されている。光電変換層14の層厚は薄いほどイメージセンサの混色には有効となるが、光吸収とのトレードオフがあり、実質的には0.5μm程度が最適な層厚となる。
【0032】
光電変換層14を構成する機材料としては、例えば電子写真の感光材料に用いられているような、様々な有機半導体材料を用いることができる。その中でも、高い光電変換性能を有すること、分光する際の色分離に優れていること、長時間の光照射に対する耐久性が高いこと、真空蒸着を行いやすいこと、等の観点から、キナクリドン骨格を含む材料やフタロシアニン骨格を含む有機材料が特に好ましい。
【0033】
光電変換層14を構成する有機材料は、p型有機半導体及びn型有機半導体の少なくとも一方を含んでいることが好ましい。例えば、p型有機型半導体及びn型有機半導体として、それぞれキナクリドン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、及びフルオランテン誘導体のいずれかを特に好ましく用いることができる。
【0034】
光電変換層14を有機材料で構成すれば、シリコン基板などに形成したフォトダイオードを光電変換部として用いる構成に比べて、可視光に対する光吸収係数が大きい。このため、光電変換層14に入射した光が吸収されやすくなる。この性質によれば、光電変換層14に斜めに入射した光も隣接する画素部へ漏れにくくなり、画素部で光電変換されることになり、透過効率の向上とクロストークの抑制を図ることができる。
【0035】
なお、1つの画素電極、および該画素電極上の光電変換層および上部電極により1つの光電変換素子が構成る。
【0036】
(絶縁層)
絶縁層18は、Al23、SiO2、SiN、またはこれらの混合膜などから構成することができる。
【0037】
(カラーフィルタ層)
図1に示すように、カラーフィルタ層CFは、それぞれ異なる波長の光を透過する複数のカラーフィルタを有する。ここでは、カラーフィルタCFは赤/青/緑色の顔料、もしくは染料の入った有機材料によるカラーフィルタ21r、21g、21bが画素毎に配置され、各カラーフィルタ21r、21g、21b間にはカラーフィルタ材料よりも屈折率が小さな透明材料で構成される分離壁22が設けられている。
【0038】
カラーフィルタ21r、21g、21bは、それぞれ異なる波長の光を透過するものであり、カラーフィルタ21rは、入射光のうち赤色光を透過する構成を有するR光カラーフィルタとして機能する。同様にカラーフィルタ21gは、入射光のうち緑色光を透過する構成を有するG光カラーフィルタとして、カラーフィルタ21bは、入射光のうち青色光を透過する構成を有するB光カラーフィルタとして機能する。
【0039】
複数のカラーフィルタ21r,21g,21bは、各画素部にいずれか1つが含まれ、画素部の配列に応じてベイヤー配列などのカラーパターンで配列されている。
【0040】
カラーフィルタの屈折率は赤青緑の各色で異なり、また入射光の波長によっても異なるものであるが、カラーフィルタ21r、21g、21bのいずれも入射光波長(少なくともその可視光域の波長(400nm〜700nm)に対し1.5〜1.8の範囲内の屈折率を有する。
また、それぞれのカラーフィルタ21r、21g、21bの厚みは0.3μm〜1.0μmの範囲内としている。
【0041】
カラーフィルタ21r,21g,21bは、その断面構造が上に凸な形状をしており、平凸レンズの機能を有している。
【0042】
本発明のカラーフィルタの製造方法の実施形態を説明する。
図2は本発明の実施形態のカラーフィルタの製造方法を示す工程図である。
まず、撮像素子基板20上に低屈折率材料40を塗布し、硬化させる。低屈折率材料40としては、フッ素系材料を用いたものや中空シリカ、多孔質シリカを配合したものなどが市販されているのでこれらを用いればよい。続いてフォトレジスト41を用いて分離壁を形成するための格子状パターンを形成し(図2の工程a)、本パターンをマスクとしてドライエッチングにより低屈折率材料40による格子状の分離壁22を形成する(図2の工程b)。
【0043】
分離壁22が形成された基板20上に分離壁22の開口22aを埋め込むようにカラーレジスト42を塗布する(図2の工程c)。
カラーレジスト42の際には、図2に示すように、分離壁22の開口22aが満たされ、分離壁22の表面を覆う程度にカラーレジスト42を塗布することが好ましい。
本実施形態においては、最初にG光カラーフィルタ用のカラーレジスト42を塗布している。
【0044】
さらにカラーレジストの選択的露光および現像を行う。G光フィルタを形成する部分のみを選択的に露光する。図2の工程dはカラーレジストの露光工程を示すものである。
【0045】
カラーレジスト42の露光は、ステッパもしくはスキャナにてフォトマスクのパターンを所定の縮小倍率r(r<1)で縮小投影させて行う。図3Aは縮小投影露光を説明するための模式図である。
図3Aに示すように、ガラス等の透明な基板51にCrなどによる遮光膜53が開口52を有するパターン状に形成されてなるフォトマスク50を用い、UV光などの露光光Lをフォトマスク50上から照射して、フォトマスク50を透過した露光光を、縮小投影レンズ系55を介して、所定の縮小倍率でカラーレジスト42に投影する。
【0046】
図3Bはカラーレジストの露光に用いられるフォトマスク50と格子状の分離壁22を模式的に示す平面図である。フォトマスク50は、一度に露光したい画素だけに光が当たるように開口52が形成されている。このようなフォトマスクを用いて露光位置をずらしながら、全域に亘って選択的露光を行う。ここでは、一例としてベイヤ配列の場合のG光カラーフィルタ形成用の開口パターンを示している。R光カラーフィルタ、B光カラーフィルタの形成の場合には、それぞれに応じた開口パターンのフォトマスクを用いる。
【0047】
フォトマスク50の開口52の面積Smは、格子状の分離壁22の開口22aの面積Sに応じて設計されている。
本発明のカラーフィルタの製造方法においては、マスク開口面積Smが縮小投影レンズ系55による縮小倍率をrとしたとき、分離壁22の開口22aの面積Sに対し、Sm<S/rを満たすフォトマスク50を用いることを特徴としている。図3Bのフォトマスク50に示す破線54で囲まれた領域が分離壁22の開口22aの面積S/rである。
【0048】
また、図2の工程dに示すように、露光光Lを集光位置(フォーカス位置)56が分離壁22の表面位置57よりも上方となるように集光する。露光光Lはフォーカス位置56から徐々に広がるが、このとき、分離壁22の表面位置57における投影像の大きさ(露光面積)が開口22aの面積Sと同等以下となるようにフォーカス位置を制御する。なお、分離壁22の表面位置57における投影像の大きさは開口22aの面積と同一であることが望ましい。
【0049】
図2の工程dにおいて、カラーレジスト42の露光光Lによる露光領域は破線で示す領域となる。分離壁表面上のレジストには露光光が当たらないように制御されており、このように露光されたカラーレジスト42を現像することにより、カラーフィルタ表面の分離壁に隣接する端部が丸くなり、図2の工程eに示すように、上に凸形状のG光カラーフィルタ21gを形成することができる。
【0050】
このカラーレジスト塗布、露光、現像の工程を、引き続き、R光カラーフィルタ、B光カラーフィルタと、色毎に繰返し行い、図2の工程fに示すような3色のカラーフィルタを備えたカラーフィルタ層CFを形成することができる。
各フィルタの形状を断面において上に凸形状となるものとすることにより、フィルタ自身に凸レンズの集光機能を持たせることができ、撮像素子における集光効率を向上させることができる。
【0051】
従来の露光方法では、カラーレジストを露光する際には作製したい画素サイズ(ここでは、格子状分離壁22の開口面積S)とフォトマスクの開口の面積Smとの関係が、Sm=S/rであるフォトマスクを用いて、カラーレジスト表面もしくは内部でフォーカス位置が合うようにして露光していた。
例えば、図4の工程d’に示すように、分離壁の高さ位置57にフォーカス位置が一致するように露光光Lが集光され、この集光位置における投影像がの大きさが、格子状分離壁22の開口22aの面積Sに等しくなるように露光される。
【0052】
しかしこの従来の方法で露光・現像を行うと図4の工程e’に示すように、フィルタ21g’は分離壁に隣接する表面に鋭角な部分28が形成されたものとなり、断面形状が平凹レンズ形状になってしまう。
各色フィルタをこの手順で繰返し作製すると、図4の工程f’に示すように、いずれのフィルタ21r’、21g’、21b’についても平凹レンズ形状となり、各フィルタの端部近傍に入射した光が隣の画素に進入し混色の原因となる。
【0053】
このような平凹レンズ形状に形成されるフィルタの混色の問題を解決するために、前述の特許文献7では現像前に表面をエッチングすることで分離壁及び画素上にある余剰分を現像前に除去しているが、このエッチングは残膜厚の制御が困難であり、再現性が乏しいという問題があった。
【0054】
上述の通り、本発明のカラーフィルタの製造方法によれば、現像後にエッチングを行うことなく、図2の工程fに示すように、各色カラーフィルタの形状を平凸レンズ状とすることができ、再現性もよく、製造効率よくカラーフィルタ層CFを製造することができる。
【0055】
(低反射層)
低反射層25は空気中からカラーフィルタCFに光がダイレクトに入射する場合の反射損失を低減するために備えられる。カラーフィルタCFに用いる材料の屈折率(例えば、3色のフィルタの屈折率の平均値)をncとした場合、低反射層25としては√ncとなる屈折率を有する材料を選択し、層厚は可視光のほぼ中心波長となる550nmの1/4膜厚となるようにすればよい。
例えば、本素子の場合ではカラーフィルタCFの屈折率が1.5〜1.8であることから1.28前後の屈折率を有する材料を用い、厚さは550/4/1.28=107nmとなることから、約0.1μmとすればよい。
【0056】
以上の構成の固体撮像素子の製造方法は、回路基板11上への下部電極層、光電変換層および上部電極層等の形成方法は特に限定されず、撮像素子基板20上へのカラーフィルタ層の作製は、上述のカラーフィルタの項において説明した製造方法を用いて行えばよい。
【0057】
固体撮像素子10のカラーフィルタ層CFは、各カラーフィルタ21r、21g、21bがそれぞれ凸レンズ形状を有し、集光機能を有するものであるため、従来の分離壁を備えたカラーフィルタ層を備えた固体撮像素子と比較して、集光効率を向上させることができると共に、隣接画素間のクロストークを大幅に抑制することができる。
【0058】
上記実施形態においては、光電変換膜が有機材料による例を示したが、これに限定するものではなく、シリコン材料でもよい。特に近年開発された裏面照射型の固体撮像素子でも本発明は有効である。
【0059】
また、固体撮像素子としては、さらなる集光率の向上を図るために、マイクロレンズを併用してもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 固体撮像素子
11 半導体回路基板
12 下部電極(画素電極)
14 有機光電変換層
16 上部電極(共通電極)
18 絶縁層
20 撮像素子基板
21r、21g、21b カラーフィルタ
22 格子状分離壁
22a 格子状分離壁の開口
CF 分離壁付きカラーフィルタ層
40 低屈折率材料
41 フォトレジスト
42 カラーレジスト
50 フォトマスク
52 フォトマスクの開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板上に複数の光電変換素子を備えてなる撮像素子基板上に、2色以上のカラーフィルタと、該各色のカラーフィルタを隔てて分離する透明な分離壁とからなるカラーフィルタ層を製造するカラーフィルタ製造方法であって、
前記撮像素子基板上に、前記光電変換素子毎に対応する開口を有する格子状の分離壁を形成する工程と、
前記格子の分離壁の開口にカラーレジストを塗布する塗布工程と、
該カラーレジストを露光する露光工程と
前記露光されたカラーレジストを現像する現像工程とを含み、
前記露光工程において、所定のマスク開口を有するフォトマスクを用い、該マスク開口を前記分離壁の開口位置に対応させて縮小投影させることにより前記カラーレジストの露光を行うものとし、
前記フォトマスクとして、前記マスク開口の開口面積Smが、前記分離壁の開口の面積をS、前記縮小投影の縮小倍率をrとしたとき、Sm<S/rであるものを用い、
前記分離壁の表面位置における前記カラーレジストの露光面積が前記分離壁の開口の面積以下となるように、露光光を前記分離壁の表面位置よりも上方位置で集光させることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項2】
前記分離壁の表面位置における前記カラーレジストの露光面積が、前記分離壁の開口の面積とほぼ一致するように、前記露光光を集光させることを特徴とする請求項1記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項3】
前記塗布工程において、前記カラーレジストにより前記分離壁の開口が満たされ、前記分離壁の表面が覆われるまで該カラーレジストを塗布することを特徴とする請求項1または2記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項4】
回路基板上に複数の光電変換素子を備えてなる撮像素子基板上にカラーフィルタ層を備えてなる固体撮像素子の製造方法であって、
前記回路基板上に前記複数の光電変換素子を形成して撮像素子基板を作製し、
前記複数の光電変換素子上に前記カラーフィルタ層を、請求項1から3いずれか1項記載のカラーフィルタの製造方法により製造することを特徴とする固体撮像素子の製造方法。
【請求項5】
回路基板上に複数の光電変換素子を備えてなる撮像素子基板と、
前記複数の光電変換素子の上方に配された、2色以上のカラーフィルタおよび該各色のカラーフィルタを隔てて分離する透明な分離壁からなるカラーフィルタ層とを備え、
前記カラーフィルタが平凸レンズ形状を有していることを特徴とする固体撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−76859(P2013−76859A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216855(P2011−216855)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】