説明

カラーフィルター用着色剤組成物およびカラーフィルター基板。

【課題】酸性顔料を使用する場合においても、コントラストが高く表面粗さの小さいカラーフィルターを提供する。
【解決手段】顔料、第1のポリマー、第2のポリマー、および溶媒を含有してなるカラーフィルター用着色剤組成物において、顔料が酸性顔料であり、かつ第2のポリマーが一般式(1)で示されるポリアミド酸アミドであるカラーフィルター用着色剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカラーフィルター用着色剤組成物およびそれを用いたカラーフィルター基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、カラーフィルターの着色パターンを形成する着色剤組成物は、顔料を樹脂中に分散させる顔料分散法により得られる。耐熱性、耐光性に優れたカラーフィルターの着色パターンを形成することのできる着色剤組成物として、ポリアミド酸の有機溶媒溶液に顔料を分散した着色剤組成物が知られている(特許文献1,2)。
【0003】
その際、使用する顔料は液晶表示装置のバックライト特性に合うよう選択され、2種類以上の顔料を一定の割合で調色して用いられることが多い。例えばカラーフィルターのR(レッド)画素は、赤色、オレンジ色、黄色の顔料を2種類以上選び、一定の割合で調色して用いられる。同様にG(グリーン)画素も、緑色、オレンジ色、黄色の顔料を2種類以上選び、調色して用いられる。同様にB(ブルー)画素も、青色、紫色の顔料を2種類以上選び、調色して用いられる。顔料はこのように要求される色度特性から選ばれるが、使用する顔料や、顔料の組み合わせ、調色比によっては安定に顔料が分散せず、凝集し、画素塗膜の透過率、コントラストの低下や表面粗さの増大を引き起こし、液晶表示装置の表示品位を低下させる。
【0004】
このような問題を解決するために、側鎖に塩基性基を有するポリマーを含有させることが提案されている(特許文献3)。
【0005】
しかしながら、現在カラーフィルターにおいてはコントラストが高いことが重要になってきており、着色剤組成物での微細顔料の分散安定化がより重要になってきている。特にその微細顔料が酸性顔料であるときには従来の方法では十分な分散安定化を行うことができず、コントラストの低下や表面粗さの増大を引き起こしてしまう。
一方ポリアミド酸のカルボン酸を変性し、特性を変えることは以前から研究されており、樹脂組成物の作成方法についても詳細に報告がなされている(特許文献4)。
またポリアミド酸エステルを顔料分散に使用することも報告されているが、これはラクトン類への溶解性を高めること、ならびに感光性を付与することを目的とするものであり、本発明の意図する目的とは異なるものである(特許文献5)。
【特許文献1】特開昭60−184202号公報
【特許文献2】特開昭60−184203号公報
【特許文献3】特開2002−285068号公報
【特許文献4】特開平04−218051号公報
【特許文献5】特開平08−092496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、微細な酸性顔料を用いた場合においても分散安定化させ、コントラストの低下や表面粗さの増大を起こさず、表示性能が良好な液晶表示装置を実現するために好適なカラーフィルターおよび着色剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の着色剤組成物およびカラーフィルターが優れた特性を有することを見出した。
1.顔料、第1のポリマー、第2のポリマー、および溶媒を含有してなるカラーフィルター用着色剤組成物において、顔料が酸性顔料であり、かつ第2のポリマーが下記一般式(1)で示されるポリアミド酸アミドであることを特徴とするカラーフィルター用着色剤組成物。
【0008】
【化1】

【0009】
(ここで、Rは4価の有機基、Rは2価の有機基、Rは1価の有機基、Rは1価の有機基または水酸基であり、RおよびRは各々同じであっても異なっていても良い。また、l、m、nはそれぞれ独立して1以上の整数である。)
2.前記ポリアミド酸アミドのアミド化率が、15%以上、50%未満であることを特徴とする1項記載のカラーフィルター用着色剤組成物。
3.前記第1のポリマーがポリアミド酸であって、前記一般式(1)で示されるポリアミド酸アミドが、第1のポリマーに使用されるポリアミド酸と同一の構造を有するポリアミド酸にアミノ基を有する化合物を反応させたものであることを特徴とする1項あるいは2項に記載のカラーフィルター用着色剤組成物。
4.透明基板上に1項〜3項のいずれかに記載のカラーフィルター用着色剤組成物を塗布、パターン形成することにより得られたカラーフィルター基板。
【発明の効果】
【0010】
本発明に挙げられた着色剤組成物を用いることにより、酸性顔料を使用する場合においても、コントラストが高く表面粗さの小さいカラーフィルターを提供することができる。そのカラーフィルターを用いることにより、表示特性が良好な液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明において、着色剤組成物は、少なくとも1種の酸性顔料と第2のポリマーとしてポリアミド酸アミド樹脂を含有することが必要である。
【0012】
本発明でいう酸性顔料とは、0.1mol/LのNaCl水溶液中にて顔料のζ電位が0となるpH(以下等電点)を測定すると、等電点が7以下になる顔料のことである。また顔料とは別に顔料誘導体を用いることにより等電点が7以下になる場合も酸性顔料といえる。顔料誘導体は顔料に直接処理しても、分散時に添加してもよい。
【0013】
本発明で使用できる顔料としては、以下に代表的な顔料の具体例をカラーインデックス(CI)ナンバーで示すが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0014】
黄色顔料の例としては、ピグメントイエロ−(以下PYと略す)12、13、17、20、24、83、86、93、95、109、110、117、125、129、137、138、139、147、148、150、153、154、166、168、185などを使用することができ、また、オレンジ色顔料の例としては、ピグメントオレンジ(以下POと略す)13、36、38、43、51、55、59、61、64、65、71などを使用することができ、また、赤色顔料の例としては、ピグメントレッド(以下PRと略す)9、48、97、122、123、144、14 9、166、168、177、179、180、19 2、209、215、216、217、220、22 3、224、226、227、228、240、254などを使用することができ、また、紫色顔料の例としてはピグメントバイオレット(以下PVと略す)19、23、29、30、32、37、40、50などを使用することができ、また、青色顔料の例としては、ピグメントブル−(以下PBと略す)15、15:3、15:4、15:6、22、60、64などを使用することができ、また緑色顔料の例としてはピグメントグリ−ン(以下PGと略す)7、10、36、などを使用することができ、また、黒色顔料の例としてはピグメントブラック7、カーボンブラック、チタンブラックなどを使用することができる。
【0015】
本発明において、第2のポリマーとして使用されるポリアミド酸アミドとしては次の一般式(1)で表されるものがあげられる。
【0016】
【化2】

【0017】
(ここで、Rは4価の有機基、Rは2価の有機基、Rは1価の有機基、Rは1価の有機基または水酸基、l、m、nはそれぞれ独立して1以上の整数である。)
なお、一般式(1)において、l、m、nは、ポリマー全体における3種類の構造体の比率を表すものであり、ポリマーがブロック共重合体であることを示すものではない。
【0018】
本発明におけるポリアミド酸アミドの使用量としては、特に限定されるものではないが、第1のポリマーと第2のポリマーの総量に対して12%以下であることが好ましく、より好ましくは6%以下である。総量に対するポリアミド酸アミドの割合が12%より多くなると、輝度(XYZ表色系におけるY)の低下が大きくなってしまう。
【0019】
本発明において、ポリアミド酸アミドの製法に関しては特に限定されるものでは無いが、(1)テトラカルボン酸二無水物ならびにジアミノ化合物を反応させたポリアミド酸とアルキルアミン類あるいはアニリン類を反応させる製法、あるいは(2)アルキルアミン類あるいはアニリン類とテトラカルボン酸二無水物の反応物をジアミノ化合物と反応させる方法が容易である(特許文献4)。
【0020】
本発明において、ポリアミド酸アミドのアミド化率に関しては15%以上、50%未満であることが好ましく、さらに25%以上であることが好ましい。アミド化率が15%未満であると分散安定化が十分でなく、コントラストの低下や表面荒さの増大を防ぐ効果が十分ではない。またアミド化率が50%以上の場合は輝度(Y)の低下が大きくなる。
【0021】
ここで、アミド化率はポリアミド酸において主鎖のアミド結合に用いられていないカルボキシル基がアミン類あるいはアニリン類と反応した割合のことであり、一般式(1)においては次式により、計算される。
[アミド化率(%)]=((2l+m)/(2l+2m+2n))×100
本発明において、アミド酸アミドあるいはアミド酸に用いることのできるテトラカルボン酸二無水物としては、たとえば脂肪族系または脂環式系のものを用いることができ、その具体的な例として、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,5−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ビシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオンなどが挙げられる。また、芳香族系のものを用いると、耐熱性の良好なポリイミドに変換しうるポリイミド前駆体組成物を得ることができ、その具体的な例として、3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4´−オキシジフタル酸無水物、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3”,4,4”−パラターフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3”,4,4”−メタターフェニルテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。また、フッ素系のものを用いると、短波長領域での透明性が良好なポリイミドに変換しうるポリイミド前駆体組成物を得ることができ、その具体的な例として、4,4´−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物などが挙げられる。なお、本発明は、これらに限定されずにテトラカルボン酸二無水物が1種または2種以上用いられる。
【0022】
本発明において、アミド酸アミドあるいはアミド酸に用いることのできるジアミンとしては、たとえば脂肪族系または脂環式系のものを用いることができ、その具体的な例として、エチレンジアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4´−ジアミノ−3,3´−ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4´−ジアミノ−3,3´−ジメチルジシクロヘキシルなどが挙げられる。また、芳香族系のものを用いると、耐熱性の良好なポリイミドに変換しうるポリイミド前駆体組成物を得ることができ、その具体的な例として、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、3,4´−ジアミノジフェニルエーテル、4,4´−ジアミノジフェニルメタン、3,3´−ジアミノジフェニルメタン、4,4´−ジアミノジフェニルスルホン、3,3´−ジアミノジフェニルスルホン、4,4´−ジアミノジフェニルサルファイド、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、ベンジジン、3,3´−ジメチルベンジジン、3,3´−ジメトキシベンジジン、o−トリジン、4,4”−ジアミノターフェニル、1,5−ジアミノナフタレン、3,3´−ジメチル−4,4´−ジアミノジフェニルメタン、4,4´−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エ−テル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンなどが挙げられる。また、フッ素系のものを用いると、短波長領域での透明性が良好なポリイミドに変換しうるポリイミド前駆体組成物を得ることができ、その具体的な例として、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどが挙げられる。
【0023】
本発明において、ポリアミド酸アミドあるいはアミド酸に用いることのできるアルキルアミン類あるいはアニリン類(HNR、R:1価の有機基、R:1価の有機基あるいは水酸基)としては限定するものではないが、たとえば一級アミンとしてブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ベンジルアミン、4−エチルアニリンなどがあげられ、二価のものとしてはジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジエタノールアミン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリンなどが挙げられる。本発明は、これらに限定されずにアルキルアミン類あるいはアニリン類が1種または2種以上用いられる。
【0024】
また、さらに別の添加剤として、一般式(2)
【0025】
【化3】

【0026】
(式中のRは炭素数1〜10の2価の有機基、R、R、RおよびRは炭素数1〜10の1価の有機基でこれらは同一であっても異なっていてもよい。)
で示されるシロキサンジアミンを用いると、無機基板との接着性を良好にすることができる。
シロキサンジアミンは、通常、全ジアミン中の1〜20モル%量用いる。シロキサンジアミンの量が少なすぎれば接着性向上効果が発揮されず、多すぎれば耐熱性が低下する。シロキサンジアミンの具体例としては、ビス−3−(アミノプロピル)テトラメチルシロキサンなどが挙げられる。本発明は、これらに限定されずにジアミンが1種または2種以上用いられる。
【0027】
本発明において好ましく用いられる溶剤としては、ポリアミド酸アミドを溶解すれば特に制限はなく、一般的な有機溶剤を用いることができる。有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールエーテル系極性溶剤、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド系極性溶剤、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトンなどのラクトン類、エタノール、ブタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのプロピレングリコール誘導体類等などを使用することができる。これらの溶剤は単独で用いることもできるし、1種または2種以上を混合して用いることもできる。
【0028】
ポリアミド酸アミドの溶解性を考慮すると前記アミド系極性溶剤、前記ラクトン類などの極性有機溶剤を溶媒の総量に対して50%以上用いることが好ましい。着色剤組成物の塗布性および着色膜の表面の均一性を良好にする目的で、あるいは、顔料の分散性を良好にする目的で、本発明において、着色剤組成物に界面活性剤を添加することができる。界面活性剤の添加量は、顔料に対して、好ましくは0.001〜10wt%、さらに好ましくは0.01〜1wt%である。添加量が少なすぎると、塗布性、着色膜表面の均一性の改良、あるいは顔料の分散性改良の効果がなく、多すぎると、逆に塗布性の不良、あるいは顔料の凝集が起こる。かかる界面活性剤の具体例としては、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミンなどの陰イオン界面活性剤、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドなどの陽イオン界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタインなどの両性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ソルビタンモノステアレートなどの非イオン界面活性剤などが使用される。かかる界面活性剤は、1種または2種以上混用することができる。かかる界面活性剤の添加は、顔料の分散工程中またはその工程の前後のどの時点でも行うことができる。しかし、添加の時点により顔料の分散性が変わる場合があるので、注意を要する。
【0029】
次に前記着色剤組成物を使用した場合の、カラーフィルターの作製法の一例を説明する。
着色剤組成物を基板上に塗布する方法としては、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ダイコーター、スクリーン印刷法などで基板に塗布する方法、基板を着色剤組成物中に浸漬する方法、着色剤組成物を基板に噴霧するなどの種々の方法を用いることができる。基板としては通常、ソーダガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラスなどの透明基板や、シリコン、ガリウム−ひ素などの半導体基板などが用いられるが、特にこれらに限定されない。なお、基板上に着色剤組成物を塗布する場合、シランカップリング剤などの接着助剤で基板表面を処理しておくと、着色膜と基板の接着力を向上させることができる。
【0030】
このような方法で透明基板上に塗布した後、風乾、加熱乾燥、真空乾燥などにより、ポリイミド前駆体着色膜を形成する。加熱乾燥の場合、オーブン、ホットプレートなどを使用し、好ましくは50〜180℃の範囲、より好ましくは80〜120℃で、30秒〜3時間行う。温度が低すぎる場合、溶剤がなかなか蒸発せず、逆に温度が高すぎると、現像液への溶解性が低下する。このようにして得られたポリイミド前駆体着色膜に、通常の湿式エッチングによりパターンを形成する。まず、ポリイミド前駆体着色膜上にポジ型フォトレジストを塗布し、フォトレジスト被膜を形成する。続いて、該フォトレジスト被膜上にマスクを置き、露光装置を用いて紫外線を照射する。露光後、ポジ型フォトレジスト用アルカリ現像液により、フォトレジスト被膜とポリイミド前駆体着色膜のエッチングを同時に行う。エッチング後、不要となったフォトレジスト被膜を剥離する。ポリイミド前駆体着色膜は、その後、加熱処理することによって、ポリイミド着色膜に変換される。加熱処理は、好ましくは空気中、窒素雰囲気中、あるいは、真空中などで、好ましくは150〜450℃、さらに好ましくは180〜350℃、特に好ましくは200〜320℃の温度のもとで、0.5〜5時間、連続的または段階的に行われる。
【0031】
以上の工程をR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の3色の着色剤組成物および必要に応じてブラックの着色剤組成物について行うと、液晶表示装置用カラーフィルターを作製することができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、実施例中に記載された測定法は以下に示すとおりである。
【0033】
(測定法)
<コントラスト>
バックライト(明拓システム)上で色彩輝度計(トプコンBM−5A)にて2度視野で試料の平行ニコルの輝度と直行ニコルの輝度を測定し、平行ニコルの輝度と直行ニコルの輝度との比をコントラストとした。
【0034】
<表面粗さ>
東京精密株式会社製、サ−フコム1400Dにて中心線平均粗さ(Ra)を測定した。
【0035】
<色度>
大塚電子株式会社製、MCPD−2000にて2度視野、C光源で測定した。なお、C光源とは、国際照明委員会(CIE) が規定した標準光Cである。これは色温度は6740° Kであり、一定の規定で点灯したガス入りタングステン電球に規定のフィルターをかけることにより得られる。この光の性質は青空の光を含む昼光に相当する。又、2度視野とは、0°〜2°までの範囲の視野のことを指す。そして、C光源および2°視野とは、C光源の光を測定対象物に透過させたときの透過光を、前記C光源の光が前記測定対象物を垂直に貫いた光軸を0°とし、且つ、測定対象物を基点としたとき、透過側において、0〜2°の範囲内の視野の透過光線について測定(透過光線色度測定)することを意味する。
A.ポリアミド酸(第1のポリマー)溶液の作製工程
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル 190.2g(0.95mol当量)およびビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン 12.4g(0.05mol当量)をγ−ブチロラクトン 1400g、N−メチル−2−ピロリドン 575.6gと共に3000mlの4つ口フラスコに仕込み、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物 288.3g(0.98mol当量)を添加し、70℃で3時間反応させた後、無水フタル酸 3.0gを添加し、さらに70℃で2時間反応させ、20質量%のポリアミド酸溶液(PA)を得た。
B.ポリアミド酸アミド(第2のポリマー)溶液の作製工程
ポリアミド酸溶液(PA)246.95gを500mlの3つ口フラスコに仕込み、80℃に上昇させた後、ベンジルアミン 2.14gを添加し、30分間攪拌した後、γ−ブチロラクトンを8.56g添加してポリアミド酸アミド溶液(PAA−1)を得た。
【0036】
ポリアミド酸溶液(PA)246.95gを500mlの3つ口フラスコに仕込み、80℃に上昇させた後、ベンジルアミン 4.29gを添加し、30分間攪拌した後、γ−ブチロラクトンを17.16g添加してポリアミド酸アミド溶液(PAA−2)を得た。
【0037】
ポリアミド酸溶液(PA)246.95gを500mlの3つ口フラスコに仕込み、80℃に上昇させた後、ベンジルアミン 6.43gを添加し、30分間攪拌した後、γ−ブチロラクトンを25.72g添加してポリアミド酸アミド溶液(PAA−3)を得た。
【0038】
ポリアミド酸溶液(PA)246.95gを500mlの3つ口フラスコに仕込み、80℃に上昇させた後、ベンジルアミン 15.00gを添加し、30分間攪拌した後、γ−ブチロラクトンを60.00g添加してポリアミド酸アミド溶液(PAA−4)を得た。
【0039】
ポリアミド酸溶液(PA)246.95gを500mlの3つ口フラスコに仕込み、80℃に上昇させた後、ヘキシルアミン 6.07gを添加し、30分間攪拌した後、γ−ブチロラクトンを24.28g添加してポリアミド酸アミド溶液(PAA−5)を得た。
【0040】
【表1】

【0041】
C.アクリルポリマー溶液(AP1)の作製
始めにメタクリル酸メチルを33重量部、スチレンを33重量部、メタクリル酸を34重量部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)を3重量部、および、γ−ブチロラクトンを150重量部重合容器中に仕込み、90℃にて2時間攪拌し、さらに液温を100℃に上げ、1時間反応させた。次に、得られた溶液にメタクリル酸グリシジルを33重量部、ジメチルベンジルアミン1.2重量部、および、p−メトキシフェノール0.2重量部添加し、90℃で4時間攪拌し、反応終了時にγ−BLを50g添加して、アクリルポリマー溶液(AP1)を得た(固形分40質量%)。得られたアクリルポリマー溶液(AP1)の樹脂酸価は80.0(mgKOH/g)、重量平均分子量(Mw)は22000であった。
D.着色剤組成物の調整
実施例1
PB15:6(酸性処理) 70g、PV23(塩基性処理) 10g、ポリアミド酸アミド溶液(PAA−1) 50g、ならびにγ−ブチロラクトン 870gをガラスビーズ1000gとともにホモジナイザーを用い、7000rpmで30分間分散処理後、ガラスビーズを濾過により除去し、顔料分散液(PD−1)を得た。
【0042】
顔料分散液(PD−1) 25g、ポリアミド酸溶液(PA) 30g、γ−ガンマーブチロラクトン 35g、ならびに3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール 10gを100ccのポリ容器に入れ、ボールミルにて1時間攪拌し、着色剤組成物(CP−1)を得た。
【0043】
実施例2
顔料分散液に用いる樹脂をポリアミド酸アミド(PAA−1)溶液からポリアミド酸アミド溶液(PAA−2)に変えた以外は実施例1と同様にして、顔料分散液(PD−2)を得た。
【0044】
顔料分散液(PD−1)を顔料分散液(PD−2)に変えた以外は実施例1と同様にして着色剤組成物(CP−2)を得た。
【0045】
実施例3
顔料分散液に用いる樹脂をポリアミド酸アミド溶液(PAA−1)からポリアミド酸アミド溶液(PAA−3)に変えた以外は実施例1と同様にして、顔料分散液(PD−3)を得た。
【0046】
顔料分散液(PD−1)を顔料分散液(PD−3)に変えた以外は実施例1と同様にして着色剤組成物(CP−3)を得た。
【0047】
実施例4
顔料分散液に用いる樹脂をポリアミド酸アミド溶液(PAA−1)からポリアミド酸アミド溶液(PAA−4)に変えた以外は実施例1と同様にして、顔料分散液(PD−4)を得た。
【0048】
顔料分散液(PD−1)を顔料分散液(PD−4)に変えた以外は実施例1と同様にして着色剤組成物(CP−4)を得た。
【0049】
実施例5
顔料分散液に用いる樹脂をポリアミド酸アミド溶液(PAA−1)からポリアミド酸アミド溶液(PAA−5)に変えた以外は実施例1と同様にして、顔料分散液(PD−5)を得た。
【0050】
顔料分散液(PD−1)を顔料分散液(PD−5)に変えた以外は実施例1と同様にして着色剤組成物(CP−5)を得た。
【0051】
実施例6
PB15:6(酸性処理) 7g、PV23(塩基性処理) 1g、ポリアミド酸アミド溶液(PAA−3) 10g、ならびにγ−ブチロラクトン 82gをガラスビーズ100gとともにホモジナイザーを用い、7000rpmで30分間分散処理後、ガラスビーズを濾過により除去し、顔料分散液(PD−6)を得た。
【0052】
顔料分散液(PD−6) 25g、ポリアミド酸溶液(PA) 28.75g、γ−ガンマーブチロラクトン 36.25g、ならびに3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール 10gを100ccのポリ容器に入れ、ボールミルにて1時間攪拌し、着色剤組成物(CP−6)を得た。
【0053】
実施例7
PB15:6(酸性処理) 7g、PV23(塩基性処理) 1g、ポリアミド酸アミド溶液(PAA−3) 20g、ならびにγ−ブチロラクトン 72gをガラスビーズ100gとともにホモジナイザーを用い、7000rpmで30分間分散処理後、ガラスビーズを濾過により除去し、顔料分散液(PD−7)を得た。
【0054】
顔料分散液(PD−7) 25g、ポリアミド酸溶液(PA) 26.25g、γ−ガンマーブチロラクトン 38.75g、ならびに3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール 10gを100ccのポリ容器に入れ、ボールミルにて1時間攪拌し、着色剤組成物(CP−6)を得た。
【0055】
実施例8
顔料分散液(PD−3) 25g、アクリルポリマー溶液(AP1)7.5g 多官能アクリルモノマー“DPHA”(日本化薬製)3g、光重合開始剤“イルガキュア907”(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)1.5g、γ−ガンマーブチロラクトン 53g、ならびに3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール 10gを100ccのポリ容器に入れ、ボールミルにて1時間攪拌し、着色剤組成物(CP−8)を得た。
【0056】

比較例1
PB15:6(酸性処理) 7g、PV23(塩基性処理) 1g、ポリアミド酸溶液(PA) 5g、ならびにγ−ブチロラクトン 87gをガラスビーズ100gとともにホモジナイザーを用い、7000rpmで30分間分散処理後、ガラスビーズを濾過により除去し、顔料分散液(PD−8)を得た。
【0057】
顔料分散液(PD−8) 25g、ポリアミド酸(PA) 30g、γ−ガンマーブチロラクトン 35g、ならびに3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール 10gを100ccのポリ容器に入れ、ボールミルにて1時間攪拌し、着色剤組成物(CP−9)を得た。
【0058】
E.ポリイミド着色膜形成膜
着色剤組成物(CP−1)〜(CP−7)、(CP−9)を無アルカリガラス基板上スピンコートし、オーブンを用いて120℃で10分間加熱乾燥して、ポリイミド前駆体膜を得た。この膜上にポジ型フォトレジスト(東京応化社製OFPR−800)を塗布し、80℃で20分間加熱乾燥して膜厚1μmのレジト膜を得た。紫外線露光機を用い、クロム製のフォトマスクを介して紫外線を照射した。露光後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドの2.38wt%の
水溶液からなる現像液に浸漬し、フォトレジストおよびポリイミド前駆体着色被膜の現像を同時に行った。エッチング後、不要となったフォトレジスト層をメチルセロソルブアセテートで剥離した。さらにこのようにして得られたポリイミド前駆体着色被膜をオーブンを用いて300℃で30分間加熱処理し、ポリイミド着色被膜を得た。
【0059】
F.アクリル着色膜の形成
着色剤組成物(CP−8)を無アルカリガラス基板上スピンコートし、オーブンを用いて90℃で10分間加熱乾燥して塗膜を得た。紫外線露光機を用い、クロム製のフォトマスクを介して紫外線を照射した。露光後、水酸化カリウムの5wt%の水溶液からなる現像液に浸漬し、パターニングされた塗膜を得た。さらにこのようにして得られた着色膜をオーブンを用いて220℃で30分間加熱処理し、アクリル着色膜を得た。
【0060】
G.膜特性評価
E,Fにより得られた膜の色度を測定し、色度座標yが0.1となる膜厚において、表面粗さ、コントラストならびに輝度(XYZ表色系におけるY)を測定した。
【0061】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、第1のポリマー、第2のポリマー、および溶媒を含有してなるカラーフィルター用着色剤組成物において、顔料が酸性顔料であり、かつ第2のポリマーが下記一般式(1)で示されるポリアミド酸アミドであることを特徴とするカラーフィルター用着色剤組成物。
【化1】

(ここで、Rは4価の有機基、Rは2価の有機基、Rは1価の有機基、Rは1価の有機基または水酸基であり、RおよびRは各々同じであっても異なっていても良い。また、l、m、nはそれぞれ独立して1以上の整数である。)
【請求項2】
前記ポリアミド酸アミドのアミド化率が、15%以上、50%未満であることを特徴とする請求項1記載のカラーフィルター用着色剤組成物。
【請求項3】
前記第1のポリマーがポリアミド酸であって、前記一般式(1)で示されるポリアミド酸アミドが、第1のポリマーに使用されるポリアミド酸と同一の構造を有するポリアミド酸にアミノ基を有する化合物を反応させたものであることを特徴とする請求項1あるいは2に記載のカラーフィルター用着色剤組成物。
【請求項4】
透明基板上に請求項1〜3のいずれかに記載のカラーフィルター用着色剤組成物を塗布、パターン形成することにより得られたカラーフィルター基板。

【公開番号】特開2008−9013(P2008−9013A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−177588(P2006−177588)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】