説明

カラーフィルタ用感光性樹脂組成物およびこれを用いたカラーフィルタ

【課題】低コストであり、特性をさらに向上させたカラーフィルタ用感光性樹脂組成物およびこれを用いたカラーフィルタを提供すること。
【解決手段】(A)ノボラック樹脂のフェノール性水酸基にα,β−不飽和カルボン酸とエポキシ基含有アルコールとからなるエポキシ基を含むエステルを該水酸基に対して当量以下の量で反応させ、該エステルのエポキシ基が開裂して生じた水酸基に多塩基酸および/または多塩基酸無水物を該開裂して生じた水酸基の当量に対して当量以下の量で反応させて得ることができる変性ノボラック樹脂、(B)光重合開始剤、(C)顔料および(D)溶剤を含有するカラーフィルタ用感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーテレビ、液晶表示素子、固体撮像素子、カメラ等に使用される光学的カラーフィルタの製造、特に、RGBの着色画素部の形成に使用されるカラーフィルタ用感光性樹脂組成物およびこれを用いたカラーフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来はカラーフィルタ用感光性樹脂組成物の樹脂バインダーとして、ポリヒドロキシスチレン、アクリル酸共重合型ポリマー等を使用していた。アクリル酸共重合型ポリマーは、透明性は高いが耐熱性に乏しいという欠点があった。そのため、耐熱性を高めるためにカルド構造(9,9−ビスフェニルフルオレン)骨格を組み入れたポリマーも提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−069754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ポリヒドロキシスチレンは耐熱性が不十分であり、ポストベークした際の樹脂の透明性に劣り、パターンのエッジ形状にも劣る。アクリル酸共重合形ポリマー、特にカルド構造骨格を組み入れたポリマーは高価格であり、低価格化が求められているフラットパネルディスプレイ(FPD)用の材料として用いるのは原材料に係るコストが高くなるため不都合である。そこで、低価格で利用できるノボラック樹脂をベースとして感度、解像性、現像性、耐久性等の物性を向上させたカラーフィルタ用感光性樹脂組成物およびこれを用いて作製したカラーフィルタが必要とされている。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、低コストであり、かつフォトリソグラフィー工程に要求される適度の耐熱性を有するのみならず、感度、解像性、現像性、耐久性等の特性をさらに向上させたカラーフィルタ用感光性樹脂組成物およびこれを用いたカラーフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のカラーフィルタ用感光性樹脂組成物は、(A)ノボラック樹脂のフェノール性水酸基にα,β−不飽和カルボン酸とエポキシ基含有アルコールとからなるエポキシ基を含むエステルを該水酸基に対して当量以下の量で反応させ、該エステルのエポキシ基が開裂して生じた水酸基に多塩基酸および/または多塩基酸無水物を該開裂して生じた水酸基の当量に対して当量以下の量で反応させて得た変性ノボラック樹脂、(B)光重合開始剤、および(C)顔料(D)溶剤を含有することを特徴とする。
【0007】
本発明のカラーフィルタは、基板上に上記本発明のカラーフィルタ用感光性樹脂組成物から形成されたカラーパターンを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のカラーフィルタ用感光性樹脂組成物は、ベースレジンとして、ノボラック樹脂のフェノール性水酸基にα,β−不飽和カルボン酸とエポキシ基含有アルコールとからなるエポキシ基を含むエステルを該水酸基に対して当量以下の量で反応させ、このエステルのエポキシ基が開裂して生じた水酸基に多塩基酸および/または多塩基酸無水物を、この開裂して生じた水酸基の当量に対して当量以下の量で反応させて得た変性ノボラック樹脂を使用しているため、フォトリソグラフィー工程に要求される適度の耐熱性を有しており扱い易い材料であるだけでなく、さらに、十分な感度、解像性、現像性、耐久性等の特性、特に優れた耐熱性(形状安定性)、透明性およびエッジ形状を得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明にかかるカラーフィルタ用感光性樹脂組成物およびカラーフィルタの実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
本発明のカラーフィルタ用感光性樹脂組成物に用いる(A)成分は、ノボラック樹脂のフェノール性水酸基に対してα,β−不飽和カルボン酸とエポキシ基含有アルコールとからなるエポキシ基を含むエステルを該水酸基に対して当量以下の量で反応させ、該エステルのエポキシ基が開裂して生じた水酸基に多塩基酸および/または多塩基酸無水物を該開裂して生じた水酸基の当量に対して当量以下の量で反応させて得ることができる。
【0011】
上記(A)成分の製造過程において、ノボラック樹脂のフェノール性水酸基にα,β−不飽和カルボン酸とエポキシ基含有アルコールとからなるエポキシ基を含むエステルを該水酸基に反応させることによって、α,β−不飽和カルボン酸とエポキシ基含有アルコールとからなるエステルで変性された変性部分(第1の変性部分)が生じ、その際、付加されたエポキシ基含有エステルのエポキシ基が開裂して水酸基を生じる。この開裂により生じた水酸基に多塩基酸および/または多塩基酸無水物を反応させると、上記変性部分に多塩基酸および/または多塩基酸無水物がエステル結合したエステルを含むように変化する。すなわち、ノボラック樹脂は上記第1の変性部分の水酸基に多塩基酸および/または多塩基酸無水物がエステル結合により結合した部分に相当する第2の変性部分を有するように変性される。上記(A)成分の変性ノボラック樹脂としては、完全に変性されて第2の変性部分のみが側鎖に存在するものが好ましいが、製造上の都合により、実際には、若干の未変性部分と第1の変性部分とが混在しているものであってもよい。
【0012】
ノボラック樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、キシレノールノボラック樹脂、トリメチルフェノールノボラック樹脂等のいずれも使用できるが、クレゾールノボラック樹脂が好ましい。
【0013】
上記変性ノボラック樹脂は好ましくは下記一般式(I)で表される。
【0014】
【化1】

【0015】
上記式(I)において、R1はα,β−不飽和カルボン酸とエポキシ基含有アルコールとからなるエステル化合物に相当する第1の変性基を表し、R2はR1のエポキシ基含有アルコールのエポキシ基が開裂して生じた水酸基に多塩基酸および/または多塩基酸無水物が反応して生じる第2のエステルに相当する第2の変性基を表し、a、bおよびcはそれぞれ0または1であり、xは前記第1の変性基で変性されたノボラック樹脂の部分のモル分率、yは前記第2の変性基で変性されたノボラック樹の部分のモル分率、zは未変性のノボラック樹脂の部分のモル分率をそれぞれ示し、0≦x<0.2、0.6≦y≦1、0≦z<0.2、x+y+z=1である。好ましくは、0≦x<0.15、0.7≦y≦1、0≦z<0.15、x+y+z=1である。x、y、zが上記の範囲であれば、十分な感度、解像性、現像性、耐久性等の特性、特に優れた耐熱性(形状安定性)、透明性およびエッジ形状を得ることができる。a=0、b=0、c=0の場合、変性ノボラック樹脂はフェノールノボラック樹脂をベースとしており、a=1、b=1、c=1の場合はクレゾールノボラック樹脂をベースとしている。a、b、cがこれら以外の場合は、変性ノボラック樹脂は混合フェノール/クレゾールノボラック樹脂をベースとしている。なお、上記式(I)において、第1の変性基で変性されたノボラック樹脂の部分、第2の変性基で変性されたノボラック樹脂の部分および未変性部分は任意の組み合わせで分布しており、上記式(I)はそれぞれの部分がブロック共重合していることを示すものではない。
【0016】
第1のエステルを構成するα,β−不飽和カルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸等を挙げることができる。アクリル酸が好ましい。α,β−不飽和カルボン酸は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
第1のエステルを構成する、エポキシ基含有アルコールは、2,3−エポキシプロパノール(以下、グリシジルアルコールということもある)、3,4−エポキシブタノール、2,3−エポキシプロパノール等の末端にエポキシ基を有するアルコールである。2,3−エポキシプロパノールが好ましい。
【0018】
第1のエステルの例としては、2,3−エポキシプロピルアクリレート(グリシジルアクリレート)、2,3−エポキシプロピルメタクリレート(グリシジルメタクリレート)、3,4−エポキシブチルアクリレート、3,4−エポキシブチルメタクリレート等が挙げられる。2,3−エポキシプロピルアクリレートが好ましい。
【0019】
ノボラック樹脂に対する上記第1のエステル化合物の割合は、ノボラック樹脂のフェノール性水酸基の当量に対して当量以下、好ましくは0.99〜0.1当量、さらに好ましくは0.99〜0.2当量である。上記範囲内であれば、優れた特性、特に優れた耐熱性(形状安定性)、透明性およびエッジ形状を得ることができる。
【0020】
上記ノボラック樹脂と上記第1のエステル化合物の反応、すなわち上記第1の変性部分を生成する反応は、エポキシ基と水酸基との反応による公知のエーテル形成反応により行うことができる。例えば、この反応は、ノボラック樹脂とエポキシ基含有エステルとを100℃で6時間撹拌加熱することにより行うことができる。有機溶剤、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、カルビトール、ソルベッソ#150等に溶解させた状態で上記反応を行うことが望ましい。反応を制御し易いからである。また、重合禁止剤、例えばハイドロキノン、メトキノンを添加してもよい。重合禁止剤を添加すると、反応中のゲル化が抑制しやすくなる。
【0021】
第1のエステルのエポキシ基が開裂して生じる水酸基に反応させる多塩基酸および/または多塩基酸無水物としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸等を挙げることができる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。多塩基酸および/または多塩基酸無水物として特に好ましいのは無水テトラヒドロフタル酸である。
【0022】
第1のエステルのエポキシ基が開裂して生じる水酸基と多塩基酸および/または多塩基酸無水物の反応、すなわち、上記第2の変性部分を生成する反応は、上記第1のエステルのエポキシ基が開裂して生じる水酸基の当量に対して、多塩基酸および/または多塩基酸無水物を当量以下、好ましくは0.1〜0.99当量、さらに好ましくは0.15〜0.95当量の割合で用いることにより行うことができる。上記範囲内であれば、優れた特性、特に優れた耐熱性(形状安定性)、透明性およびエッジ形状が得られる。
【0023】
上記第2の変性部分を生成する反応は公知のエステル形成反応により行うことができる。この反応も、上記第1の変性部分を生成する反応と同様に、有機溶剤、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、カルビトール、ソルベッソ#150等に溶解させた状態で行うことが望ましい。また、重合禁止剤、例えばハイドロキノン、メトキノンを添加してもよい。
【0024】
このようにして得られる変性ノボラック樹脂の好ましい分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で100〜300、000、好ましくは2、000〜100、000、特に10、000〜15、000である。
【0025】
また、前記変性ノボラック樹脂は、比較的高分子量(例えば10、000〜15、000)であっても、アルカリ可溶速度が速いため、感光性樹脂組成物に用いた場合に、基材の周辺部でのレジスト残りを少なくすることができる。さらに、溶剤への親和性も高く、異物の発生を抑制することができる。そしてさらに溶剤への親和性が高いため、上記感光性樹脂組成物は、エッチバックリンス(EBR)処理(基板への感光性樹脂組成物の塗布後、基板の周辺部、縁辺部及び裏面部の少なくとも一部から不要な被膜を洗浄液で洗浄して除去する処理)を容易に行うことができ好ましい。
【0026】
さらに、分子量を10、000〜15、000程度にすることにより、前記変性ノボラック樹脂を用いた感光性樹脂組成物は、回転塗布時の平坦化性を高くすることができ、bead(ビード)の発生を抑制することができる。
【0027】
前記変性ノボラック樹脂は下記一般式(II)で表されるノボラック樹脂が好ましい。
【0028】
【化2】


(式中、a、b、c、x、y、zは前記と同じである。)
【0029】
また、前記変性ノボラック樹脂は下記一般式(III)で表されるクレゾールノボラック樹脂が好ましい。
【0030】
【化3】



(式中、x、y、zは前記と同じである。)
【0031】
上記(A)成分は本発明のカラーフィルタ用感光性樹脂組成物の固形分中に1質量%〜10質量%、さらに好ましくは質量%〜8質量%配合される。上記(A)成分の含有量を1質量%以上にすることにより塗布後に乾燥性を高め乾燥した感光性樹脂層が得られ易くなり、また、硬化後の樹脂の強度を十分得ることができる。一方、上記(A)成分の含有量が10質量%以下にすることにより、現像性を向上させることができる。
【0032】
本発明のカラーフィルタ用感光性樹脂組成物に用いる(B)成分の光重合開始剤としては、例えば、2,2−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4'、5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール(以下、B−CIM(保土ヶ谷化学社製))、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4'−ビスジメチルアミノベンゾフェノン(以下、ミヒラーズケトン)、4,4'−ビスジエチルアミノベンゾフェノン(以下、EAB−F(保土ヶ谷化学社製))、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−ベンゾイル−4'−メチルジメチルスルフィド、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4−ジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシルエステル、4−ジメチルアミノ安息香酸−2−イソアミルエステル、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−メトキシエチルアセタール、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4'−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、p−ジメチルアミノアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メトキシ)スチリル−s−トリアジン等のトリアジン化合物などを挙げることができる。
【0033】
また、上記の他に、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサンテン、2−メチルチオキサンテン、2−イソプロピルチオキサンテン等のイオウ化合物や、2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類や、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物や、2−メルカプトベンゾイミダール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物等を用いることもできる。
【0034】
これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
上記光重合開始剤は、その1種または2種以上を本発明の感光性樹脂組成物の固形分中に0.1質量%〜5質量%の範囲で含有することが好ましい。
【0036】
本発明において、上記(C)成分の顔料の好適な例としては、例えば特開昭60−237403号公報あるいは特開平4−310901号公報に記載された下記のものを挙げることができる。
【0037】
すなわちこれらをカラーインデックス(C.I.)ナンバーで表示すると、黄色顔料としてはC.I.20,C.I.24,C.I.83,C.I.86,C.I.93,C.I.109,C.I.110,C.I.117,C.I.125,C.I.137,C.I.138,C.I.147,C.I.148,C.I.153,C.I.154,C.I.166,C.I.168等が挙げられる。
【0038】
また、橙色顔料としてはC.I.36,C.I.43,C.I.51,C.I.55,C.I.59,C.I.61等、赤色顔料としてはC.I.9,C.I.97,C.I.122,C.I.123,C.I.149,C.I.168,C.I.177,C.I.180,C.I.192,C.I.215,C.I.216,C.I.217,C.I.220,C.I.223,C.I.224,C.I.226,C.I.227,C.I.228,C.I.240等が挙げられる。
【0039】
さらに、紫色顔料としてはC.I.19,C.I.23,C.I.29,C.I.30,C.I.37,C.I.40,C.I.50等、青色顔料としてはC.I.15,C.I.15:6,C.I.22,C.I.60,C.I.64等、緑色顔料としてはC.I.7,C.I.36等、茶色顔料としてはC.I.23,C.I.25,C.I.26等が挙げられる。
【0040】
上記の各顔料は透明性が高く、しかも耐熱性、耐候性および耐薬品性に優れている。
また、チタンブラック、カーボンブラック等の黒色顔料を用いることもできる。この黒色顔料を用いた場合には、ブラックマトリクスを形成することができる。
【0041】
前記顔料は、感光性樹脂固形分中に0.1質量%〜5質量%の範囲で含有することが好ましい。この範囲が0.1質量%以上でカラーフィルタを形成することにより、発色波長以外の光を十分に遮光することができ、また10質量%以下にすることにより感光性成分の量を十分確保できるため、パターン形成能を向上させることができる。
【0042】
本発明のカラーフィルタ用感光性樹脂組成物に、さらに付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物((E)成分)を添加することが好ましい。ここで、「付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物」(以下、「エチレン性化合物」という。)とは、光重合性黒色組成物が所定波長の光線の照射を受けたとき、光重合開始剤の作用により付加重合硬化するようなエチレン性不飽和二重結合を少なくとも1つ有する化合物であって、前記のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体又は側鎖若しくは主鎖にエチレン性不飽和二重結合を有する重合体である。また、前記単量体はいわゆる高分子物質に相対する差違化した概念であって、狭義の「単量体」にとどまらず、二量体、三量体、オリゴマーを含有する。
【0043】
この単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸、脂肪族(ポリ)ヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、芳香族(ポリ)ヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、不飽和カルボン酸と多価カルボン酸および前述の脂肪族(ポリ)ヒドロキシ化合物、芳香族(ポリ)ヒドロキシ化合物等の多価ヒドロキシ化合物とのエステル化反応により得られるエステル、不飽和カルボン酸アミド、不飽和カルボン酸ニトリル等が挙げられる。
【0044】
具体的にはメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、グリセロールアクリレート、グリセロールメタクリレート、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、カルドエポキシジアクリレート、カルドエポキシジメタクリレート、これら例示化合物のアクリレート、メタクリレートを、フマレート、マレエート、クロトネート、イタコネートに代えたものや、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、ヒドロキノンモノアクリレート、ヒドロキノンモノメタクリレート、ヒドロキノンジアクリレート、ヒドロキノンジメタクリレート、レゾルシンジアクリレート、レゾルシンジメタクリレート、ピロガロールジアクリレート、ピロガロールトリアクリレート、アクリル酸とフタル酸およびジエチレングリコールとの縮合物、アクリル酸とマレイン酸およびジエチレングリコールとの縮合物、メタクリル酸とテレフタル酸およびペンタエリスリトールとの縮合物、アクリル酸とアジピン酸およびブタンジオールとグリセリンとの縮合物、エチレンビスアクリルアミド、エチレンビスメタクリルアミド、フタル酸ジアリルのアリルエステル、ジビニルフタレートなどが有用である。
【0045】
また、側鎖もしくは主鎖にエチレン性不飽和二重結合を有する重合体としては、例えば、不飽和二価カルボン酸とジヒドロキシ化合物との重縮合反応により得られるポリエステル、不飽和二価カルボン酸とジアミンとの重縮合反応により得られるポリアミド、イタコン酸、プロピリデンコハク酸、エチリデンマロン酸とジヒドロキシ化合物との重縮合反応により得られるポリエステル、イタコン酸、プロピリデンコハク酸、エチリデンマロン酸とジアミンとの重縮合反応により得られるポリアミド、フェノールノボラック型エポキシアクリレート、フェノールノボラック型エポキシメタクリレート、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート、クレゾールノボラック型エポキシメタクリレート、ビスフェノールA型エポキシアクリレート、ビスフェノールS型エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートオリゴマー、ウレタンメタクリレートオリゴマーなどが挙げられる。前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂にさらに多塩基酸無水物を反応させたものであってもよい。また、側鎖にヒドロキシ基やハロゲン化アルキル基のごとき反応活性を有する官能基を有する重合体、例えばポリビニルアルコール、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリエピクロルヒドリンなどとアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸との高分子反応により得られる重合体なども使用できる。中でも、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの単量体を特に好ましく用いることができる。
【0046】
上記エチレン性化合物は、感光性樹脂組成物が所定波長の光線の照射を受けたとき、上記(A)成分の変性ノボラック樹脂とともに付加重合する。よって、組成物全体を架橋されたような構造にすることができる。
【0047】
上記(E)成分は、カラーフィルタ用感光性樹脂組成物の固形分の総質量に基づいて0.1質量%〜20質量%配合するのが好ましく、さらに好ましくは0.5質量%〜15質量%配合するとよい。
【0048】
本発明のカラーフィルタ用感光性樹脂組成物に、必要に応じて増感剤、熱重合禁止剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、その他の添加剤を更に添加することができる。これらの添加剤はRGB用のカラーフィルタ用感光性樹脂組成物において通常用いられている量で適宜添加すればよい。
【0049】
増感剤としては、具体的にはエオシンB(C.I.No.45400)、エオシンJ(C.I.No.45380)、アルコール可溶性エオシン(C.I.No.45386)、シアノシン(C.I.No.45410)、ベンガルローズ、エリスロシン(C.I.No.45430)、2,3,7−トリヒドロキシ−9−フェニルキサンテン−6−オン、およびローダミン6Gなどのキサンテン色素、チオニン(C.I.No.52000)、アズレA(C.I.No.52005)およびアズレC(C.I.No.52002)などのチアジン色素、ピロニンB(C.I.No.45005)、およびピロニンGY(C.I.No.45005)などのピロニン色素や3−アセチルクマリン、3−アセチル7−ジエチルアミノクマリンなどのクマリン化合物が挙げられる。
【0050】
熱重合禁止剤としてはヒドロキノン、ヒドロキノンモノエチルエーテル、p−メトキシフェノール、ピロガロール、カテコール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、β−ナフトールなどが使用できる。
【0051】
可塑剤としては、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリンなどが使用できる。
【0052】
界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の各種活性剤などが使用できる。
【0053】
また、消泡剤としてはシリコーン系、フッ素系各種消泡剤などが使用できる。
【0054】
本発明の感光性樹脂組成物は溶剤(D)を含有するため、塗布性が改善されている。溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2−メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、4−メトキシブチルアセテート、2−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エチル−3−メトキシブチルアセテート、2−エトキシブチルアセテート、4−エトキシブチルアセテート、4−プロポキシブチルアセテート、2−メトキシペンチルアセテート、3−メトキシペンチルアセテート、4−メトキシペンチルアセテート、2−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、4−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルジイソブチルケトン、エチルイソブチルケトン、炭酸メチル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。中でもプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを好ましく用いることができる。
【0055】
上記溶剤は、感光性樹脂組成物の固形分の総和100質量部に対し、多くとも500質量部程度にすることが好ましくり、この範囲で添加することにより顔料の分散性を十分えることができる。
【0056】
本発明の感光性樹脂組成物を用いたカラーフィルタは、例えば次のような工程で製造することができる。
1)カラーフィルタ用感光性樹脂組成物の調製
変性ノボラック樹脂、光重合開始剤、エチレン性不飽和二重結合不飽和二重結合を一個以上有する化合物、および顔料、さらに必要に応じて溶剤、染料、分散助剤、消泡剤等を加えて3本ロールミル、ボールミル、サンドミル等でよく分散、混練する。
【0057】
2)基板への感光性樹脂組成物の塗布
ガラス製、ポリエチレンテレフタレート製、アクリル樹脂製等の基板をあらかじめ洗浄して表面を清浄にしておき、この基板へ感光性樹脂組成物を塗布する。このとき、基板と感光性樹脂組成物との密着性を向上させるために、感光性樹脂組成物中にシランカップリング剤を添加しておくか、または基板をシランカップリング剤で前処理しておいてもよい。また、必要に応じて、50〜150℃で0.1〜200分乾燥(プリベーク)してもよい。
【0058】
感光性樹脂組成物を基板上に塗布するには、ロールコーター、リバースコーター、バーコーター等の接触転写型塗布装置や、スピンナー、カーテンフローコータ等の非接触型塗布装置が用いられる。また、形成する感光性樹脂層が厚膜の場合には複数回塗布するか、あるいは前記塗布装置の数種を併用して用いてもよい。こうして感光性樹脂組成物を塗布した後、室温にて数時間〜数日放置するか、あるいは温風ヒーター、赤外線ヒーター中に数十分〜数時間入れて溶剤を除去し、塗布膜厚1〜100μm程度に調整して感光性樹脂層を完成する。
【0059】
3)露光処理
感光性樹脂組成物層の形成後、ネガマスクを介して、所定時間露光を行う。露光に用いる活性エネルギー線は、光重合開始剤が活性化しラジカルを発生するような波長の光を発する活性化光線であり、具体的には紫外線、エキシマレーザー光、エックス線、ガンマ線、電子線が好適である。照射光量は用いる光重合性黒色組成物の組成に応じて若干変わるが30〜2000mJ/cm2程度の範囲が好ましい。
【0060】
4)現像処理
露光処理後、現像液を用いて浸漬法、スプレー法などにより現像が行われる。この現像液としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、ピロリン酸塩、ベンジルアミン、ブチルアミン等の第1級アミン、ジメチルアミン、ジベンジルアミン、ジエタノールアミンなどの第2級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどの第3級アミン、モルホリン、ピペラジン、ピリジンなどの環状アミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのポリアミン、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルベンジルアンモニウムヒドロキシドなどのアンモニウムヒドロキシド類、トリメチルスルホニウムヒドロキシド、ジエチルメチルスルホニウムヒドロキシド、ジメチルベンジルスルホニウムヒドロキシドなどのスルホニウムヒドロキシド類、その他コリンなどの水溶液が使用される。
【0061】
5)ポストベーク
ポストベーク工程では、現像して形成したカラーパターンの強度と耐薬品性、耐熱性を付与するために、温度を150〜250℃の範囲となるように調整するとよい。
【0062】
上述のように、本発明の感光性樹脂組成物を用いることにより、低コストで感度、解像性、現像性、耐久性等の物性、特に耐熱性(形状安定性)、透明性およびエッジ形状をさらに向上させたカラーフィルタを形成することができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0064】
(実施例1)
変性ノボラック樹脂の調製
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下ロートを備えた1リットルフラスコにメタクレゾールとホルムアルデヒドを重縮合して得られるクレゾールノボラック樹脂(商品名 メタクレノボラック樹脂、群栄化学社製)120gとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)480gを仕込み、30℃で時間混合溶解した。このPGMEA溶液にエポキシアクリレート(グリシジルアクリレート)をメタクレゾールの水酸基1当量に対して0.9当量になるように115.2g滴下して、100℃で6時間撹拌し、エポキシアクリレートによるクレゾールノボラック樹脂の部分的な付加反応を行った。得られた第1次部分付加反応物を分離し、洗浄した後、水酸基当量を常法により測定したところ、120g/eqであった。
【0065】
次に、この部分付加反応生成物を940gのPGMEAに添加し、30℃で1時間混合撹拌した。さらに、1,2,3−6テトラヒドロフタル酸無水物を、グリシジルアクリレートの1当量に対して0.11当量となる様に添加し、100℃で6時間撹拌混合し、酸無水物基の消失を赤外吸収スペクトルにより確認した。得られた第2次部分付加反応物、すなわちクレーゾールノボラック−エポキシアクリレート−テトラヒドロフタル酸樹脂A(以下、光重合性化合物Aともいう)を分離、洗浄した後、水酸基当量とカルボン酸基当量を常法により測定したところ、水酸基当量は120g/eq、カルボン酸基当量は10gKOH/eqであった。
【0066】
このものは上記一般式(III)において、x:y:z(モル比)=0.1:0.8:0.1に相当する。
【0067】
感光性樹脂組成物の調製
下記の組成のカラーフィルタ用感光性樹脂組成物を、3本ロールを用いて2時間分散、混練した。
感光性樹脂組成
ノボラック樹脂
光重合性化合物A 15質量部
光重合開始剤
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(チバガイギー社製:IRGACURE 369) 2質量部
ジエチルチオキサントン 2質量部
顔料
クロモフタルイエローA2R(チバガイギー社製) 20質量部
溶剤
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 10質量部
【0068】
このようにして得られたカラーフィルタ用感光性樹脂組成物を、厚さ3mmの清浄な表面を有するガラス基板上に、リバースコーター(大日本スクリーン社製:ラウンドコーター)を用いて乾燥膜厚2μmとなるように塗布し、80℃で1分間乾燥させて感光性樹脂層を形成した。その後、この感光性樹脂層に100mJ/cm2の紫外線を全面照射して露光したのち、炭酸ナトリウム0.5%水溶液で25℃、60秒間スプレー現像して黄色カラーフィルタを作成した。
【0069】
(実施例2)
実施例1で調製した光重合性化合物Aを用いて下記の組成のカラーフィルタ用感光性樹脂組成物を、3本ロールを用いて2時間分散、混練した。
感光性樹脂組成
ノボラック樹脂
光重合性化合物A 15質量部
光重合開始剤
2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン(チバガイギー社製:IRGACURE 907) 2質量部
ジエチルチオキサントン 2質量部
2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリン二量体
0.5質量部
顔料
クロモフタルレッドA2B(チバガイギー社製) 20質量部
溶剤
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 10質量部
【0070】
このようにして得られたカラーフィルタ用感光性樹脂組成物を、厚さ3mmの清浄な表面を有するガラス基板上に、スピンコーター(東京応化工業社製:TR25000)を用いて乾燥膜厚2μmとなるように塗布し、実施例1と同様にして赤色カラーフィルタを作成した。
【0071】
(実施例3)
実施例1で調製した光重合性化合物Aを用いて下記の組成のカラーフィルタ用感光性樹脂組成物を、3本ロールを用いて2時間分散、混練した。
感光性樹脂組成
ノボラック樹脂
光重合性化合物A 15質量部
光重合開始剤
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンとトリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドとの50%/50%混合物(チバガイギー社製:DAROCUR 4265) 4質量部
顔料
リオノールグリーン2Y−301(東洋インキ製造社製) 20質量部
溶剤
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 10質量部
【0072】
このようにして得られたカラーフィルタ用感光性樹脂組成物を実施例1と同様にしてガラス基板上に塗布し、実施例1と同様にして緑色カラーフィルタを作成した。
【0073】
(比較例1〜3)
実施例1〜3の光重合性化合物Aに代えて、ポリヒドロキシスチレン(分子量 16、000、商品名 VP8000、日本曹達社製)を用いた以外はすべて実施例1〜3と同様にしてカラーフィルタ用感光性樹脂組成物を調製し、塗布、乾燥、露光、現像を行って、黄色、赤色および緑色カラーフィルタをそれぞれ得た。
【0074】
特性の評価
<塗布特性>
カラーフィルタの基板側から3波長蛍光管の光を照射し、目視で検査したところ、実施例1〜3では色ムラ等のない色相の均一なそれぞれの色のカラーフィルタ層が形成されたことが分った。これに対して、比較例1〜3ではそれぞれの色のカラーフィルタ層にやや色ムラがみられた。
【0075】
<露光感度>
50μmライン/スペース(L&S)のカラーパターンを忠実に再現できる露光量(mJ/cm2)を求めて露光感度とした。実施例1〜3の感光性樹脂組成物は露光感度が50mJ/cm2と高く、比較例1〜3の感光性樹脂組成物は露光感度が200mJ/cm2と低かった。
【0076】
<現像特性>
ガラス基板上に形成した感光性樹脂層に、20μmライン/80μmスペースを再現するようなマスクを介して露光、現像を行ったところ、実施例1〜3の感光性樹脂組成物を用いると、露光部にカケ、ハガレ等がなく、未露光部には残渣のない良好なパターンを得ることができた。これに対して、比較例1〜3の感光性樹脂組成物を用いると、未露光部にわずかに残滓が見られた。
【0077】
<耐熱性>
ガラス基板上に形成した感光性樹脂層を露光、現像を行い、さらに230℃で30分間ポストベークして、ポストベーク前後のカラーパターンの端部の形状の変化を走査型電子顕微鏡で観察した。その結果、実施例1〜3の感光性樹脂組成物を用いた場合、カラーパターンの形状は、表面が均一で、ポストベーク前後でほぼ変化しなかったが、比較例1〜3の感光性樹脂組成物を用いた場合、ポストベークの前後とも表面に不均一な凹凸が見られた。従って、実施例1〜3の感光性樹脂組成物を用いたカラーパターンは耐熱性に優れていることがわかる。
【0078】
<エッジビード除去性>
実施例1〜3および比較例1〜3のカラーフィルタを炭酸ナトリウム0.5%水溶液で25℃、60秒間スプレー現像した際のエッジビードの除去の程度を光学顕微鏡で観察した。実施例1〜3のカラーフィルタはエッジビードがほとんど全く認められなかったが、比較例1〜3のカラーフィルタではかなりのエッジビードが残っていた。
【0079】
<耐熱色安定性>
実施例1〜3および比較例1〜3の感光性樹脂組成物を、それぞれガラス基板上に塗布乾燥して形成した感光性樹脂層の露光、現像を行い、さらに260℃で60分間ポストベークした。ポストベーク前後の感光性樹脂層の色度をMCPD−1000(大塚電子社製)の色度測定装置を用いて測定し、色差を求めた。実施例1〜3の感光性樹脂組成物を用いると、色差は約0.7程度と小さかったが、比較例1〜3の感光性樹脂組成物を用いると、色差E*ab(Lab表色系)は約3.7程度と大きかった。これらの結果は、本発明のカラーフィルタ用感光性樹脂組成物は色変化を受けにくく透明性が高いカラーフィルタを形成することを示している。
【0080】
上記のように、本発明のカラーフィルタ用感光性樹脂組成物は、上記の特定の変性ノボラック樹脂を含有することにより、塗布特性、露光感度に優れ、この組成物を用いると耐熱性(形状安定性)、エッジビード除去性、耐熱色安定性等の特性に優れたカラーフィルタを形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上のように、本発明にかかる感光性樹脂組成物は、本発明は、カラーテレビ、液晶表示素子、固体撮像素子、カメラ等に使用される光学的カラーフィルタの(RGB)の着色画素部の製造に有用であり、本発明のカラーフィルタはカラーテレビ、液晶表示素子、固体撮像素子、カメラ等の製造に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ノボラック樹脂のフェノール性水酸基にα,β−不飽和カルボン酸とエポキシ基含有アルコールとからなるエポキシ基を含むエステルを該水酸基に対して当量以下の量で反応させ、該エステルのエポキシ基が開裂して生じた水酸基に多塩基酸および/または多塩基酸無水物を該開裂して生じた水酸基の当量に対して当量以下の量で反応させて得ることができる変性ノボラック樹脂、
(B)光重合開始剤、および
(C)顔料
(D)溶剤
を含有することを特徴とするカラーフィルタ用感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記変性ノボラック樹脂は、下記一般式(I)で表されることを特徴とする請求項1記載のカラーフィルタ用感光性樹脂組成物。
【化1】


(式中、R1はα,β−不飽和カルボン酸とエポキシ基含有アルコールとからなるエステル化合物に由来する第1の変性基を表し、R2はR1のエポキシ基含有アルコールのエポキシ基が開裂して生じた水酸基に多塩基酸および/または多塩基酸無水物が反応して生成した第2の変性基を表し、a、bおよびcはそれぞれ0〜3であり、xは前記第1の変性基で変性されたノボラック樹脂部分のモル分率、yは前記第2の変性基で変性されたノボラック樹部分のモル分率、zは未変性のノボラック樹脂部分のモル分率をそれぞれ示し、0≦x<0.2、0.6≦y≦1、0≦z<0.2、x+y+z=1である。)
【請求項3】
前記変性ノボラック樹脂は、下記一般式(II)で表されることを特徴とする請求項1記載のカラーフィルタ用感光性樹脂組成物。
【化2】



(式中、a、b、c、x、y、zは前記と同じである。)
【請求項4】
前記変性ノボラック樹脂は、下記一般式(III)で表されることを特徴とする請求項1記載のカラーフィルタ用感光性樹脂組成物。
【化3】



(式中、x、y、zは前記と同じである。)
【請求項5】
前記変性ノボラック樹脂の平均分子量は100以上300、000以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のカラーフィルタ用感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記カラーフィルタ用感光性樹脂組成物の固形分の全質量に対して、前記(A)成分を1〜10質量%、前記(B)成分を0.1〜5質量%、および前記(C)成分を5〜30質量%、および前記(D)成分を93.9〜55質量%配合したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のカラーフィルタ用感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記カラーフィルタ用感光性樹脂組成物の固形分の全質量に対して、前記(A)成分を1〜10質量%、前記(B)成分を0.1〜5質量%、前記(C)成分を5〜30質量%、前記(D)成分を93.8〜35質量%および(E)エチレン性不飽和二重結合基を一個以上有する化合物を0.1〜20質量%配合したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のカラーフィルタ用感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のカラーフィルタ用感光性樹脂組成物から形成されたカラーパターンを有することを特徴とするカラーフィルタ。

【公開番号】特開2007−72314(P2007−72314A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−261219(P2005−261219)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】