説明

カリウムチャンネル遮断薬としてのスルホンアミド

電位依存性カリウムチャンネルを介したカリウムイオンフラックスの変調によって疾患を治療する際に有用な化合物、組成物および方法が提供されている。さらに特定すると、本発明は、スルホンアミド、およびスルホンアミドを使用する組成物および方法(これらは、指定した病気の発症および再発に関連したカリウムチャンネルを遮断することによる疾患の治療で有用である)を提供する。本発明の化合物、組成物および方法で治療可能な代表的な疾患には、鎌状赤血球症および緑内障が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本発明は、米国特許仮特許出願第60/403,898号(その内容は、全ての目的について、本明細書中で参考として援用されている)から優先権を主張している。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
イオンチャンネルは、細胞タンパク質であり、これらは、イオン(カルシウム、カリウム。ナトリウムおよび塩化物)の細胞への流入および流出を調節する。これらのチャンネルは、全てのヒトの細胞に存在しており、神経伝達、筋収縮、細胞分泌、心拍の調節、動脈の拡大、インシュリンの放出、および腎臓電解質輸送の調節のような生理的プロセスに影響を与える。これらのイオンチャンネルのうちで、カリウムチャンネルは、最も遍在性で多様であり、種々の動物の細胞(例えば、神経、筋肉、腺、免疫、生殖器および上皮組織)で見られる。これらのチャンネルにより、特定の条件下にて、カリウムが細胞に流入および/または流出できるようになる。例えば、これらのチャンネルが開いたときのカリウムイオンの流出により、細胞の内部は、さらに陰性になり、細胞に加えられた双極性電位を相殺する。これらのチャンネルは、例えば、カルシウム感受性、電位作動性、二次メッセンジャー、細胞外リガンドおよびATP−感受性により、調節される。
【0003】
カリウムチャンネルは、予想された構造上および機能上の類似性に基づいて、少なくとも8つの系統に入るアルファサブユニットにより、作製される(Weiら、Neuropharmacology 35(7):805−829(1997))。これらの系統のうちの3つ(Kv,eag−関連およびKQT)は、6個の膜貫通ドメインの共通モチーフを共有し、主に、電位によりゲートされる。他の2つの系統もまた、このモチーフを含むが、それぞれ、環状ヌクレオチド(CNG)およびカルシウム(小コンダクタンスおよび中間コンダクタンスのカリウムチャンネル)により、ゲートされる。この小コンダクタンスおよび中間コンダクタンスのカルシウム活性化カリウムチャンネルは、それぞれ、2〜20pSおよび20〜85pSの単位コンダクタンスで、カルシウムだけによりゲートされた系統のカルシウム活性化カリウムチャンネルを含む。マクロスコピックおよびユニタリ中間コンダクタンスのカルシウム活性化カリウムチャンネル電流は、内向きの整流を示す(例えば、Ishiiら、Proc.Natl.Acad.Sci USA 94:11651−11656(1997)を参照)。これらの3つの他の系統のカリウムチャンネルアルファサブユニットは、異なるパターンの膜貫通ドメインを有する。Slo系統のカリウムチャンネルまたはBKチャンネルは、7個の膜貫通ドメインを有し(Meeraら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94(25):14066−71(1997))、そして電位およびカルシウムまたはpHの両方により、ゲートされる(Schreiberら、J.Biol.Chem.273:3509−16(1998))。他の系統である内向き整流カリウムチャンネル(Kir)は、2個の膜貫通ドメインを含む構造上の系統に属し、また、8番目の機能上多様な系統(TPまたは「2細孔」)は、この内向き整流モチーフの2個の直列繰り返しを含む。
【0004】
カリウムチャンネルは、典型的には、4個のアルファサブユニットにより形成され、そしてホモメリック(これは、同じアルファサブユニットから構成される)またはヘテロメリック(これは、2種またはそれ以上の異なる種類のアルファサブユニットから構成される)であり得る。それに加えて、Kv、KQTおよびSloまたはBKから構成されたカリウムチャンネルは、しばしば、追加の構造上異なる補助サブユニット、すなわち、ベータサブユニットを含むことが発見されている。これらのサブユニットは、カリウムチャンネルそれ自体を形成せず、その代わりに、補助サブユニットとして作用して、アルファサブユニットにより形成されたチャンネルの機能特性を変える。例えば、Kvベータサブユニットは、細胞質であり、Kvチャンネルの表面発現を高めるか、および/またはそのチャンネルの不活性化動態を変える(Heinemannら、J Physiol.493:625−633(1996);Shiら、Neuron 16(4):843−852(1996))。他の例では、KQT系統のベータサブユニットであるminKは、主に、活性化動態を変える(Sanguinettiら、Nature 384:80−83(1996))。
【0005】
中間コンダクタンスであるカルシウム活性化カリウムチャンネルはまた、SK4、KCa4、IKCa、SMIKおよびGardosとも呼ばれる。中間コンダクタンスであるカルシウム活性化カリウムチャンネルは、その電気生理学によって文献に記載されている。例えば、周知の中間コンダクタンスであるGardosチャンネル(カルシウム活性化カリウムチャンネル)は、マイクロモル濃度未満の濃度の内部カルシウムによって開き、そして整流単位コンダクタンス(rectifying unit conductance)を有し、−120mVにおいて50pSから120mVにおいて13pSまでの範囲に及ぶ(対照的120mM K+;Christopherson,J.Membrane Biol.119:75−83(1991))。中間コンダクタンスであるカルシウム活性化カリウムチャンネルは、カリブドトキシン(charybdotoxin)(CTX)によって遮断されるが、構造的な関連ペプチドであるイベリオトキシン(iberiotoxin)(IBX)(これらは両方とも、BKチャンネルを遮断する)によっては遮断されない(Brugnaraら,J.MembrBiol.147:71−82(1995))。中間コンダクタンスであるカルシウム活性化カリウムチャンネルはまた、マウロトキシン(maurotoxin)によっても遮断される。アパミン(apamin)は、特定のネイティブ(Vincentら,J Biochem.14:2521(1975);BlatzおよびMagleby,Nature 323:718−720(1986))かつ閉鎖したSKチャンネルの強力な遮断薬であるが、これは、中間コンダクタンスであるカルシウム活性化カリウムチャンネルを遮断しない(de−Allieら,BrJ.Pharm.117:479−487(1996))。Gardosチャンネルはまた、幾つかのイミダゾール化合物(例えば、クロトリマゾール(clotrimazole))によっても遮断されるが、ケトコナゾール(ketoconazole)によって遮断されない(Brugnaraら,J.Clin.Invest.,92:520−526(1993))。従って、中間コンダクタンスであるカルシウム活性化カリウムチャンネルは、その生物物理学的プロフィールおよび薬理学的プロフィールによって、他のカルシウム活性化カリウムチャンネルから区別される。種々の組織由来の中間コンダクタンスであるカルシウム活性化カリウムチャンネルは、広範な範囲の単位コンダクタンス値を有することが報告されている。
【0006】
ヒト中間コンダクタンスであるカルシウム活性化カリウムチャンネルは、クローン化され、特徴付けられている(例えば、Ishiiら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:11651−11656(1997);Genbank登録番号AF0225150;Joinerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:11013−11018(1997);Genbank登録番号AF000972;Lodsdonら,J.Biol.Chem.272:32723−32726(1997);Genbank登録番号AF022797;およびJensenら,Am.J.Physiol.275:C848−856(1998)を参照のこと;また、WO98/11139;WO99/03882;WO99/25347;およびWO00/12711を参照のこと)。非ヒト中間コンダクタンスであるカルシウム活性化カリウムチャンネルもまた、例えば、マウスおよびラットからクローン化されている(Vandorpeら,J.Biol.Chem.273:21542−21553(1998);Genbank登録番号NM032397;Warthら,PflugersArch.438:437−444(1999);Genbank登録番号AJ133438;およびNeylonら,Circ.Res.(online)85:E33−E43(1999);Genbank登録番号AF190458)。中間コンダクタンスであるカルシウム活性化カリウムチャンネルの遺伝子は、KCNN4と名付けられ、染色体19q13.2に位置する(Ghanshaniら,Genomics 51:160−161(1998))。
【0007】
中間コンダクタンスであるカルシウム活性化カリウムチャンネルは、哺乳動物細胞増殖(例えば、Wulffら,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 97:8151−8156(2000))および脱水の調節ならびにアフリカの幾つかの国の鎌状化(sickling)に関わる。鎌状赤血球貧血および鎌状赤血球の存在(Hb S)は、分子レベルで理解された最初の遺伝疾患であった。これは、今日、βグロビン鎖の第6位におけるグリシンからバリンへの置換の形態学的結果および臨床結果であると認識されている(Ingram,Nature 178:892−794(1956))。アミノ酸変化の起源および疾患状態の起源は、1つのヌクレオチド置換の結果である(Marottaら,J.Biol.Chem.252:5040−5053(1977))。
【0008】
正常な赤血球は、約70%の水を含む。水は、正常な赤血球の膜をミリ秒で横切る。細胞水の欠失は、細胞質の粘性の指数関数的な増殖を引き起こし、細胞ヘモグロビン濃度(MCHC)を約32g/dl上昇させる。細胞質の粘性は、赤血球変形能および鎌状化の主要な決定因子であるため、赤血球の脱水は、実質的に、レオロジー的かつ病理学的な結果を有する。赤血球脱水の調節は、鎌状赤血球症を処置するための重要な治療的アプローチとして認識される。細胞水が細胞内イオン濃度における任意の浸透圧的変化に従うため、赤血球カリウム濃度の維持は、特に重要である(Stuartら,Brit J.Haematol.69:1−4(1988))。
【0009】
脱水化鎌状細胞の治療的処置へのアプローチは、カルシウム依存性カリウムチャンネルを標的化することによる、赤血球カリウムフラックスの改変を含む。このカルシウム活性化カリウムチャンネルはまた。Gardosチャンネルとも呼ばれる(Brugnaraら,J.Clin.Invest.92:520−526(1993))。近年、クローン化されたヒト中間コンダクタンスであるカルシウム活性化カリウムチャンネルが、生物物理学的特性および薬理学的特性の両方により、Gardosチャンネルと実質的に類似することが示されている(Ishiiら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:11651−11656(1997))。
【0010】
インビトロ研究は、クロトリマゾール(イミダゾール含有抗真菌剤)が、Ca2活性化Kフラックス、および鎌状赤血球における細胞脱水を遮断することを示している(Brugnaraら,J.Clin.Invest.92:520−526(1993))。トランスジェニックマウスモデル(SAD−1マウス)における鎌状赤血球症の研究(Trudelら,EMBOJ.11:3157−3165(1991))は、クロマトリゾールの経口投与が赤血球Gardosチャンネルの阻害をもたらし、赤血球K含量を上昇させ、平均粒子ヘモグロビン濃度(MCHC)を低下させ、細胞濃度を低下させる(DeFranceschiら,J.Clin.Invest.93:1670−1676(1994))。さらに、経口クロマトリゾールによる治療は、Gardosチャンネルの阻害を誘導し、鎌状赤血球症を有する患者における赤血球脱水の低下を引き起こす(Brugnaraら,J.Clin.Invest.97:1227−1234(1996))。Gardosチャンネルをインビトロで阻害する他の抗真菌剤としては、ミコナゾール、エコナゾール、ブトコナゾール、オキシコナゾールおよびサルコナゾールが挙げられる(Brugnaraらに対する米国特許第5,273,992号)。これらの化合物の全ては、イミダゾール様環(すなわち、2以上の窒素を含むヘテロアリール環)を含む。
【0011】
変形効率にもかかわらず、今日まで研究されているイミダゾールベースのGardosチャンネルインヒビターは、充分に記載されている肝細胞毒性の能力を含む欠点により阻まれている。この毒性は、インヒビターの低い能力、Gardosチャンネル以外のカリウムチャンネルとの非特異的相互作用、および低いバイオアベイラビリティにより増悪され、これらそれぞれは、インヒビターのより高い用量のより頻繁な投薬を動機付ける。
【0012】
緑内障は、眼内圧力の上昇によって特徴付けられる疾患である。上昇した眼内圧力は、多くの疾患に関連する。これらの疾患としては、原発開放隅角緑内障、正常眼圧緑内障、閉塞隅角緑内障、急性緑内障、色素緑内障、新血管緑内障、または緑内障関連の外傷、スタージ−ウェーバー症候群、ブドウ膜炎、および剥離症候群が挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
現在、市販の種々の薬物が存在し、これらは、別々の機構を用いて眼内圧力を下げる(例えば、チモロール、ベタキソロール、レボバノロール、アセタゾールアミド、メタゾールアミド、ジクロルフェンアミド、ドーゾールアミド、ブリンゾルアミド、ラタノプロスト、ブリモニジン、およびレスキュラ(例えば、米国特許第6,172,054号、米国特許第6,172,109号、および米国特許第5,652,236号を参照))。縮瞳剤、β遮断薬、α−2アゴニスト、炭酸脱水素酵素インヒビター、βアドレナリン作動性遮断薬、プロスタグランジンおよびドコサノイドは、すべて現在単独でまたは併用して、緑内障を処置するために使用される。緑内障およびプロスタグランジンは、眼内液の液体排出を増加することにより眼内圧力を低下すると信じられているが、一方、β遮断薬、α−2アゴニストおよび炭酸脱水素酵素は、眼内液の産生を減少させ、それによって目への液体の流れを減少することによって眼内圧力を低下すると信じられている。全ては、目の充血および視界のかすみから、血圧低下および呼吸困難までの範囲に及ぶ副作用によって特徴付けられる。
【0014】
疾患を処置する現在公知の方法(これらの方法において、中間コンダクタンスであるカルシウム活性化カリウムチャンネルが改善される)の上述の欠点の視点から、カリウムフラックスに関連する疾患の処置における実質的な進歩が、新規の中間コンダクタンスであるカルシウム活性化カリウムチャンネルインヒビターの発見から予測される。本発明は、スルホンアミド含有骨格に基づくこのようなイオンチャンネルインヒビターの新規の遺伝子を提供する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の要旨)
本発明は、上記のように、中間コンダクタンス、カルシウム活性化カリウムチャンネルを阻害できる化合物を提供し、それにより、該チャンネルが関与している疾患を治療および/または予防することに向けた新規アプローチを提供する。この中間コンダクタンス、カルシウム活性化カリウムチャンネルを阻害できる化合物は、非常に望ましく、本発明の目的である。
【0016】
それゆえ、1局面では、本発明は、式Iの化合物を提供する:
【0017】
【化13】

ここで、環系Zは、置換または非置換アリール、置換および非置換ヘテロアリール、置換または非置換炭素環、または置換または非置換ヘテロシクロアルキルから選択される。記号Aは、−NHS(O)−、−S(O)NH−、−C(R)S(O)−、−S(O)C(R)−、−C(R)NHS(O)−、−S(O)NHC(R)−、−C(R)S(O)NH−または−HNS(O)nC(R)−を表わす。記号Rは、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換炭素環、または置換または非置換ヘテロシクロアルキルを表わす。記号Rは、COOR、置換または非置換2−フラン、置換または非置換2−チアゾール、または
【0018】
【化14】

を表わす。
【0019】
記号Rは、置換または非置換C〜Cアルキル(例えば、メチル、エチル)、または−CFを表わす。Xは、−N=N−、−N=C(R)−、−C(R)=N−、−C(R)−C(R)−または−C(R)=C(R)−を表わし、ここで、RおよびRは、水素、ハロゲン、置換および非置換低級アルキル、−ORまたは−CFを表わす。記号Yは、O、NR11またはSを表わし、ここで、R11は、−H、低級アルキルまたは−CFである。記号Rは、水素、置換または非置換低級アルキル、または−CFから選択されるメンバーを表わす。
【0020】
他の局面では、本発明は、薬学的に受容可能な賦形剤と式Iの化合物とを含有する医薬組成物を提供する。
【0021】
疾患に冒された細胞の細胞イオンフラックスを変えることにより疾患(例えば、特に、鎌状赤血球症、緑内障、関節リウマチ、ブドウ膜炎、異常な細胞増殖に特徴がある疾患)を抑制することは、強力な治療アプローチである。さらに、疾患プロセスおよび正常な生理機能の両方における細胞イオンフラックスの役割を基本的に理解すると、新しい治療様式、レジメンおよび薬剤が得られると断言できる。細胞イオンフラックス(特に、カリウムフラックスを阻害するもの)を変える化合物は、これらのイオンフラックスの根底にある基本的な機構を解明するための薬剤およびプローブの両方として、非常に望ましい。同様に、基本的な研究および治療用途でこれらの化合物を使用する方法は。研究者および臨床医の両者の蓄積における貴重な手段である。従って、このような化合物および方法もまた、本発明の目的である。
【0022】
それゆえ、第三の局面では、本発明は、細胞のカリウムフラックスを阻害する方法を提供する。この方法は、細胞を、カリウムフラックスを阻害するのに有効な量の式Iの化合物と接触させる工程を包含する。
【0023】
鎌状赤血球症を治療する重要な治療経路は、赤血球の細胞イオンフラックスを操作することにより、赤血球の分解を防止または遅延することである。それゆえ、他の局面では、本発明は、赤血球の分解を少なくする方法を提供する。この方法は、赤血球を、赤血球の分解を少なくするのに有効な量の式Iの化合物と接触ざせる工程を包含する。
【0024】
第五の局面では、本発明は、鎌状赤血球症を治療または予防する方法を提供する。この方法は、鎌状赤血球症に罹っている被験体に、式Iの構造を有する化合物の治療有効量を投与する工程を包含する。
【0025】
第六の局面では、本発明は、眼圧を低下させる方法を提供する。この方法は、目に、該眼圧を低くするのに十分な量の式Iの化合物を送達する工程を包含する。
【0026】
第七の局面では、本発明は、緑内障を治療または予防する方法を提供する。この方法は、緑内障に罹っているか緑内障を発症するリスクがある被験体に、式Iの化合物の治療有効量を送達する工程を包含する。
【0027】
他の局面では、本発明はまた、哺乳動物の細胞増殖を治療または予防する方法に関する。それゆえ、他の局面では、本発明は、不要または異常な細胞増殖に特徴がある疾患を治療または予防することに向けたアプローチとして、哺乳動物の細胞増殖を阻止する方法を提供する。その最も広い意味では、これらの方法は、本発明の少なくとも1種の薬理学的に活性な化合物の有効量を、その場で、哺乳動物の細胞に投与する1段階の投与だけを包含する。代表的な実施態様では、これらの化合物は、細胞の増殖を阻止するために、細胞分裂停止的、細胞毒性的に作用し得るか、または両方の機構を組み合わせることにより作用し得る。この様式で治療可能な哺乳動物の細胞には、例えば、血管平滑筋細胞、線維芽細胞、内皮細胞、種々の前癌細胞および種々の癌細胞が挙げられる。好ましい実施態様では、細胞の増殖は、不要または異常な細胞増殖に特徴がある疾患に罹っている被験体において、阻止される。このような疾患は、以下でさらに詳細に記述する。
【0028】
本発明の代表的な方法では、異常な細胞増殖に特徴がある障害に罹った患者に、本発明の少なくとも1種の化合物またはそれらの医薬組成物の有効量が投与される。いずれの特定の理論にも束縛するつもりはないものの、本発明の化合物の適当な量を被験体に投与すると、早期の分裂促進的な信号に関連したイオン性フラックスを変えることにより、細胞の増殖が阻止されると考えられる。イオン性フラックスのこのような変更は、本発明の化合物が細胞のカリウムチャンネルを阻害する性能に起因すると考えられている。この方法は、不要または異常な細胞増殖を防止するために、予防的に使用できるか、異常に増殖している細胞の増殖を阻止するために、治療的に使用され得る。この化合物またはそれらの医薬処方物は、所望の時間で増殖を阻止または抑制するために、増殖している細胞に局所的に適用できるか、または細胞の増殖を阻止または抑制するために、全身的に被験体に投与され得る。
【0029】
本発明の手段により治療または予防できる異常な細胞増殖に特徴がある疾患には、血管増殖障害、線維障害、アテローム硬化型障害および種々の癌が挙げられるが、これらに限定されない。血管増殖障害は、一般に、血管原性障害および血管形成障害と呼ばれており、これらは、一般に、血管の異常な細胞増殖を招く。血管の形成および拡大、すなわち、血管形成および血管新生は、それぞれ、種々の生理学的プロセス(例えば、胚の発生、黄体の形成、創傷の治癒および臓器の再生)において、重要な役割を果たす。それらはまた、癌の発生において、中心的な役割を果たす。血管増殖障害の他の例には、関節炎(この場合、新しい毛細血管は、関節に侵入して、軟骨を破壊する)および眼科疾患(例えば、糖尿病性網膜症(この場合、網膜の新しい毛細管は、硝子体に侵入して、出血し、失明を引き起こす)および血管新生緑内障)が挙げられる。
【0030】
以上な新血管形成の別の例としては、固体腫瘍に関連するものが挙げられる。現在、腫瘍の制御不能な増殖が血管形成に依存し、そして血管形成因子の遊離による血管形成の誘導が、発癌において重要な工程であり得ることが確立されている。例えば、塩基性繊維芽増殖因子(bFGF)は、幾種かの癌細胞によって遊離され、そして癌血管形成において重要な役割を果たす。血管形成が阻害されるとき、特定の動物腫瘍が退行するという実証は、腫瘍増殖における血管形成の役割についての最も強力な証拠を提供している。新血管形成に関連する他の癌としては、血管内皮腫、血管腫およびカポージ肉腫が挙げられる。
【0031】
上皮細胞および血管平滑筋細胞の増殖は、新血管形成の主要な特徴である。本発明は、このような増殖の阻害において有用であり、従って、このような新血管形成に全てまたは一部依存する血管形成状態の進行を全て阻害するかまたは停止する。本発明は、状態が上皮細胞増殖または血管平滑筋細胞の増殖の、新血管形成に必ずしも関連しないさらなる要素を有する場合、特に有用である。例えば、乾癬は、新血管形成と関連した上皮細胞増殖に依存しない上皮細胞増殖をさらに含み得る。同様に、継続的な増殖のための新血管形成を必要とする固体腫瘍はまた、上皮細胞および血管平滑筋の腫瘍であり得る。この場合、腫瘍細胞自体の増殖および新血管形成は、本明細書中に記載の化合物によって阻害される。
【0032】
本発明はまた、繊維芽細胞の増殖の全てまたは一部を生じる、繊維症および繊維症の他の医学的合併症のような繊維性障害の処置にもまた有用である。繊維症に関連する医学的状態(下で考察するアテローム硬化症以外)としては、外科手術または損傷により生じる望ましくない組織接着が挙げられる。
【0033】
本発明によって処理され得る他の細胞増殖性障害としては、アテローム硬化症状態が挙げられる。アテローム硬化症は、動脈壁の肥厚および硬化を述べるために使用される用語である。本明細書中で使用される場合、アテローム硬化症状態は、古典的アテローム硬化症、促進されたアテローム硬化症、アテローム硬化症病変、および望ましくない上皮細胞増殖および/または血管平滑筋細胞増殖の任意の他のアテローム硬化症状態(糖尿病の血管合併症が挙げられる)を意味する。
【0034】
血管平滑筋細胞は、古典的アテローム硬化症の主要な病理学的特徴である。上皮細胞からの増殖因子の遊離は、内膜下平滑筋の増殖を刺激し、一方、動脈の内径を減少し、遂には動脈を閉塞する。本発明は、このような増殖の阻害において有用であり、従って、このような増殖および関連するアテローム硬化症状態の発症を遅延させ、その進行を阻害し、その進行を停止させさえするために有用である。
【0035】
血管平滑筋細胞の増殖は、促進されたアテローム硬化症をもたらし、これは、拒絶されない心臓移植の失敗の主要な原因である。この増殖はまた、増殖因子によって媒介され、そして最終的に冠状動脈の閉塞をもたらすと信じられている。本発明はまた、このような閉塞を阻害し、そしてこのような失敗の危険性を低下させるかまたは予防さえするために有用である。
【0036】
血管損傷はまた、上皮細胞増殖および血管平滑筋細胞増殖を生じ得る。損傷はまた、任意の数の外傷事象または侵襲(血管外科手術またはバルーン血管形成術が挙げられる)によって引き起こされ得る。乾癬は、冠状動脈の首尾よいバルーン血管形成術の主要な合併症である。冠状動脈を裏張りする上皮細胞に対する機械的損傷の結果として、増殖因子の放出によって引き起こされると信じられている。従って、所望しない上皮細胞増殖および平滑筋細胞増殖の阻害によって、本明細書中に記載される化合物は、乾癬の発症を遅延させるか、または防ぎさえするために使用され得る。
【0037】
本発明によって処置されるかまたは予防され得る他のアテローム硬化症状態としては、上皮細胞および/または血管平滑筋細胞の増殖を含む動脈壁の疾患(例えば、糖尿病、糖尿病糸球体硬化および糖尿病網膜症)が挙げられる。
【0038】
本明細書中に記載される化合物はまた、種々の型の癌の処置または予防において有用である。本発明によって処置され得る癌としては、胆汁路癌;神経膠芽細胞腫および髄芽細胞腫を含む脳腫瘍;乳癌;子宮頸癌;絨毛癌;結腸癌;上皮癌;食道癌;胃癌;急性および慢性のリンパ球性白血病および骨髄性白血病、多発性骨髄腫、AIDS関連白血病、T細胞白血病リンパ腫を含む血液新生物;ボーエン病およびパジェット病を含む上皮内新生物;肝臓癌;肺癌;ホジキン病およびリンパ球リンパ腫を含むリンパ腫;神経芽細胞腫;扁平上皮癌を含む口腔癌;上皮細胞、間質細胞、生殖細胞および間充織細胞から生じる卵巣癌を含む卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;直腸癌;平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、繊維肉腫および骨肉腫を含む肉腫;黒色腫、カポージ肉腫、塩基性細胞(basocellular)癌および扁平上皮細胞癌を含む皮膚癌;胚性腫瘍(セミノーマ、非セミノーマ(奇形腫、絨毛癌)、間質性腫瘍および生殖細胞腫瘍)を含む精巣癌;甲状腺腺癌および髄索癌腫(medullar carcinoma)を含む甲状腺癌;ならびに腺癌およびウィルムス腫瘍を含む腎臓癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
本発明の化合物は、ホルモン依存性癌およびまたホルモン非依存性癌に有用である。これらはまた、前立腺癌および非前立腺癌に、ならびに乳癌および非乳癌に有用である。これらはさらに、複合薬物抵抗性の癌の系統に有用である。
【0040】
上で列挙した特定の障害に加えて、本発明はまた、ケロイド、乾癬、皮膚炎、肥大性瘢痕、脂漏性皮膚病、パピローマウイルス感染(例えば、尋常性疣贅、足底筋疣贅(verruca plantaris)、扁平疣贅(verruca plan)、コンジローム(condylomata)など)、湿疹および上皮前癌病変(例えば、日光角化症)を含む皮膚疾患を処置は予防するのに有用である。他の炎症性疾患状態もまた、本明細書中に記載される方法によって利益を受ける。これらの疾患状態としては、関節炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性呼吸器系窮迫症候群(ARDS)、喘息および炎症性プロセスによって媒介される他の呼吸器系疾病;アテローム硬化症;角結膜炎;ブドウ膜炎;炎症性腸疾患;増殖性糸球体腎炎;紅斑性狼瘡(および他の自己免疫疾患);強皮症;一時的関節炎;閉塞性血栓血管炎;皮膚粘膜リンパ節症候群;および増殖因子によって媒介される他の病理学(子宮平滑筋腫を含む);多発性硬化症;ショック、敗血症;虚血;ならびに再灌流障害が挙げられる。
【0041】
本発明のこれらおよび他の目的および利点は、以下の詳細な説明および実施例から明らかになる。全ての刊行物、特許および特許出願は、その全体が、本明細書中に参考として援用される。
【0042】
(発明の詳細な説明および好ましい実施態様)
(略語および定義)
本明細書中で使用した略語は、化学分野および生物分野で通常の意味を有する。例えば、EtN、トリエチルアミン;MeOH、メタノール;およびDMSO、ジメチルスルホキシド;MCHC、平均赤血球ヘモグロビン濃度;SAD−1、Trudelら、EMBO J.,10(11):3157−3165(1991)で記述されているように、鎌状赤血球症の遺伝子組換えマウスモデル。
【0043】
「遮断する」および「阻害する」とは、本発明の1種またはそれ以上の化合物による中間コンダクタンス、カルシウム活性化カリウムチャンネルの部分的または完全な封鎖を意味するように、本明細書中にて、交換可能に使用される。
【0044】
これらの置換基がそれらの通常の化学式で特定されて、左から右へと書かれている場合、それらは、同等に、右から左に書いて得られる化学的に同じ置換基を包含する(例えば、−CHO−は、−OCH−を示すと解釈される)。
【0045】
「アルキル」との用語は、単独で、または他の置換基の一部として、特に明記しない限り、直鎖または分枝鎖または環状の炭化水素遊離基、またはそれらの組合せを意味し、これは、完全に飽和であるか、モノ不飽和またはポリ不飽和であり得、二価または多価ラジカル(これは、指定した数の炭素原子を有する(すなわち、C〜C10は、1個〜10個の炭素を意味する))。飽和炭化水素遊離基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、それらの同族体および異性体(例えば、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルなど)のような基が挙げられるが、これらに限定されない。不飽和アルキル基は、1個またはそれ以上の二重結合または三重結合を有するものである。不飽和アルキル基の例には、ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジエニル、3−(1,4−ペンタジエニル)、エチニル、1−および3−プロピニル、3−ブチニルおよびそれらより高級な同族体および異性体が挙げられるが、これらに限定されない。「アルキル」との用語は、他に断らない限り、また、以下で詳細に定義するアルキル誘導体(例えば、「ヘテロアアルキル」)を含むことを意味する。炭化水素基に限定されないアルキル基は、「ホモアルキル」と称される。
【0046】
「アルキレン」との用語は、単独で、または他の置換基の一部として、−CHCHCHCH−で例示されるように(それに限定されないが)、アルカンから誘導した二価遊離基を意味し、さらに、「ヘテロアルキレン」として以下で記述の基を含む。典型的には、アルキル(またはアルキレン)基は、1個〜24個の炭素原子を有し、本発明では、10個またはそれより少ない炭素原子を有するものが好ましい。「低級アルキル」または「低級アルキレン」とは、それより短い鎖のアルキル基またはアルキレン基であり、これは、一般に、8個またはそれより少ない炭素原子を有する。
【0047】
「アルコキシ」、「アルキルアミノ」および「アルキルチオ」(またはチオアルコキシ)との用語は、それらの通常の意味で使用され、それぞれ、酸素原子、アミノ基またはイオウ原子を介して、その分子の残部に結合したアルキル基を意味する。
【0048】
「ヘテロアルキル」との用語は、単独で、または他の用語と組み合わせて、特に明記しない限り、安定で直鎖または分枝鎖または環状の炭化水素遊離基またはその組合せであって、規定数の炭素原子と、O、N、SiおよびSからなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子とからなるものを意味し、ここでこの窒素原子およびイオウ原子は、必要に応じて、酸化され得、その窒素ヘテロ原子は、必要に応じて、四級化され得る。ヘテロ原子であるO、N、SおよびSiは、このヘテロアリール基の任意の内部位置、またはそのアルキル基が分子の残部に結合した位置で、配置され得る。例には、−CH−CH−O−CH、−CH−CH−NH−CH、−CH−CH−N(CH)−CH、−CH−S−CH−CH、−CH−CH、−S(O)−CH、−CH−CH−S(O)CH、−CH=CH−O−CH、−Si(CH、−CH−CH=N−OCHおよび−CH=CH−N(CH)−CHが挙げられる。2個までのヘテロ原子は、連続的であり得る(例えば、−CH−NH−OCHおよび−CH−O−Si(CH)。同様に、「ヘテロアルキレン」との用語は、単独で、または他の置換基の一部として、−CH−CH−S−CH−CH−および−CH−S−CH−CH−NH−CH−で例示されるように(それらに限定されないが)、ヘテロアルキルから誘導した二価遊離基を意味する。ヘテロアルキレン基については、ヘテロ原子はまた、その鎖末端のいずれかまたは両方を占めることができる(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。さらに、アルキレンおよびヘテロアルキレン連結基については、その連結基の配向は、この連結基の式が書かれている方向では示されない。例えば、式−C(O)R’−は、−C(O)R’−および−R’C(O)−の両方を意味する。
【0049】
「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」との用語は、単独で、または他の用語と組み合わせて、特に明記しない限り、「アルキル」および「ヘテロアルキル」の環状型を表わす。さらに、ヘテロシクロアルキルについては、ヘテロ原子は、その複素環が分子の残部に結合した位置を占めることができる。シクロアルキルの例には、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−シクロヘキセニル、3−シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロシクロアルキルの例には、1−(1,2,5,6−テトラヒドロピリジル)、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−モルホリニル、3−モルホリニル、テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イル、テトラヒドロチエン−2−イル、テトラヒドロチエン−3−イル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
「ハロ」または「ハロゲン」との用語は、単独で、または他の置換基の一部として、特に明記しない限り、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を意味する。さらに、「ハロアルキル」のような用語は、モノハロアルキルおよびポリハロアルキルを含むことを意味する。例えば、「ハロ(C〜C)アルキル」との用語は、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、4−クロロブチル、3−ブロモプロピルなどを含むが、これらに限定されない。
【0051】
「アリール」との用語は、特に明記しない限り、ポリ不飽和の芳香族炭化水素置換基を意味し、これは、単一環または複数環(好ましくは、1個〜3個の環)であり得、これらは、共に縮合されるか、または共有結合される。「ヘテロアリール」との用語は、N、OおよびSから選択される1個〜4個のヘテロ原子を含有するアリール基(または環)を意味し、ここで、その窒素原子およびイオウ原子は、必要に応じて、酸化され、これらの窒素原子は、必要に応じて、四級化される。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して、その分子の残部に結合できる。アリール基およびヘテロアリール基の非限定的な例には、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、4−ビフェニル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−ピラゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、2−フェニル−4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソキサゾリル、4−イソキサゾリル、5−イソキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ベンゾチアゾリル、プリニル、2−ベンズイミダゾリル、5−インドリル、1−イソキノリル、5−イソキノリル、2−キノキサリル、5−キノキサリル、3−キノリルおよび6−キノリルが挙げられる。上記アリールおよびヘテロアリール環系の各々に対する置換基は、下記の受容可能な置換基の群から選択される。
【0052】
略して、「アリール」との用語は、他の用語(例えば、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)と併用するとき、上で定義したように、アリール環およびヘテロアリール環の両方を含む。それゆえ、「アリールアルキル」との用語は、アリール基がアルキル基に結合した遊離基(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチルなど)を含むことを意味し、これには、炭素原子(例えば、メチレン基)を、例えば、酸素原子で置き換えたアルキル基(例えば、フェニルメチル、2−ピリジルオキシメチル、3−(1−ナフチルオキシ)プロピルなど)が挙げられる。
【0053】
上記用語の各々(例えば、「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「アリール」および「ヘテロアリール」)は、指定した遊離基の置換形状および非置換形状の両方を含むことを意味する。各型の遊離基に好ましい置換基は、以下で提供する。
【0054】
アルキルおよびヘテロアルキル遊離基(これには、しばしば、アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニルおよびヘテロシクロアルケニルと呼ばれる基が含まれる)の置換基は、0個〜(2m’+1)個の範囲の数(ここで、m’は、このような遊離基内の全炭素原子数である)数で、以下から選択される(これらに限定されない)種々の基の1種またはそれ以上であり得る:−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R’’、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R’’R’’’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−COR’、−CONR’R’’、−OC(O)NR’R’’、−NR’’C(O)R’、−NR’−C(O)NR’’R’’’、−NR’’C(O)R’、−NR−C(NR’R’’R’’’)=NR’’’’、−NR−C(NR’R’’)=NR’’’、S(O)R’、−S(O)R’、−S(O)NR’R’’、−NRSOR’、−CNおよび−NO。R’、R’’、R’’’およびR’’’’は、好ましくは、別個に、水素、置換または非置換ヘテロアルキル基、置換または非置換アリール(例えば、1個〜3個のハロゲンで置換されたアリール)基、置換または非置換アルキル基、アルコキシ基またはチオアルコキシ基、またはアリールアルキル基を意味する。本発明の化合物は、1個より多いR基を含有し、例えば、これらのR基の各々は、これらの基の1個より多くが存在しているとき、別個に、各R’、R’’、R’’’およびR’’’’基であるように、選択される。R’およびR’’は、同じ窒素原子に結合されるとき、その窒素原子と組み合わされて、5員、6員または7員の環を形成できる。例えば、−NR’R’’は、1−ピロリジニルおよび4−モルホリニルを含む(これらに限定されない)ことを意味する。置換基の上記論述から、当業者は、「アルキル」との用語が水素基以外の基に結合した炭素原子を含有する基(例えば、ハロアルキル(例えば、−CFおよびCHCF)およびアシル(例えば、−C(O)CH、−C(O)CF、−C(O)CHOCH))を含むことを意味する。
【0055】
そのアルキル遊離基について記述した置換基と類似して、アリール基およびヘテロアリール基の置換基は、変わり、例えば、0個からこの芳香環系上の開口原子価の全数まで数で、以下から選択される:ハロゲン、−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R’’、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R’’R’’’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−COR’、−CONR’R’’、−OC(O)NR’R’’、−NR’’C(O)R’、−NR’−C(O)NR’’R’’’、−NR’’C(O)R’、−NR−C(NR’R’’R’’’)=NR’’’’、−NR−C(NR’R’’)=NR’’’、−S(O)R’、−S(O)R’、−S(O)NR’R’’、−NRSOR’、−CNおよび−NO、−R’、−N、−CH(Ph)、フルオロ(C〜C)アルコキシおよびフルオロ(C〜C)アルキル;ここで、R’、R’’、R’’’およびR’’’’は、好ましくは、別個に、水素、(C〜C)アルキルおよびヘテロアルキル、非置換アリールおよびヘテロアリール、(非置換アリール)−(C〜C)アルキルおよび(非置換アリール)オキシ−(C〜C)アルキルから選択される。本発明の化合物が1個より多いR基を含有するとき、例えば、これらのR基の各々は、別個に、これらの基の1個より多くが存在しているときの各R’、R’’、R’’’およびR’’’’基であるように、選択される。
【0056】
このアリール環またはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の2個は、必要に応じて、−T−C(O)−(CRR’)−U−の置換基で置き換えられ得、ここで、TおよびUは、別個に、−NR−、−O−、−CRR’−または単結合であり、そしてqは、0〜3の整数である。あるいは、このアリール環またはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の2個は、必要に応じて、−A−(CH−B−の置換基で置き換えられ得、ここで、AおよびBは、別個に、−CRR’−、−O−、−NR−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−S(O)NR’−または単結合であり、そしてrは、1〜4の整数である。そのように形成した新しい環の単結合の1個は、必要に応じて、二重結合で置き換えられ得る。あるいは、このアリール環またはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の2個は、必要に応じて、式(CRR’)−X−(CR’’R’’’)−の置換基で置き換えられ得、ここで、sおよびdは、別個に、0〜3の整数であり、そしてXは、−O−、−NR’−、−S−、−S(O)−、−S(O)−または−S(O)NR’−である。これらの置換基R、R’、R’’およびR’’’は、好ましくは、別個に、水素または置換または非置換(C〜C)アルキルから選択される。
【0057】
本明細書中で使用する「ヘテロ原子」との用語は、酸素(O)、窒素(N)、イオウ(S)およびケイ素(Si)を含むことを意味する。
【0058】
「薬学的に受容可能な塩」との用語は、本明細書中で記述した化合物で見られる特定の置換基に依存して、比較的に非毒性の酸または塩基で調製される活性化合物の塩を含むことを意味する。本発明の化合物が比較的に酸性の官能基を含有するとき、純粋状態か適当な不活性溶媒中かいずれかにて、このような化合物と十分な量の所望塩基とを接触させることにより、塩基付加塩を得ることができる。薬学的に受容可能な塩基付加塩の例には、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、有機的アミノ塩またはマグネシウム 塩、または類似の塩が挙げられる。本発明の化合物が比較的に塩基性の官能基を含有するとき、純粋状態か適当な不活性溶媒中かいずれかにて、このような化合物と十分な量の所望酸とを接触させることにより、酸付加塩を得ることができる。薬学的に受容可能な酸付加塩には、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、モノ水素炭酸、リン酸、モノ水素リン酸、ジ水素リン酸、硫酸、モノ水素硫酸、ヨウ化水素酸または亜リン酸などのような無機酸から誘導したものだけでなく、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などのような有機酸から誘導したものが挙げられる。アミノ酸の塩(例えば、アルギン酸塩など)および有機酸(例えば、グルクロン酸またはガラクツロン酸など)の塩もまた、含まれる(例えば、Bergeら、Journal of Pharmaceutical Science,66,1〜19(1977)を参照)。本発明のある種の特定の化合物は、その化合物を塩基付加塩または酸付加塩のいずれかに変換させる塩基官能基および酸官能基の両方を含有する。
【0059】
これらの化合物の中性形状は、好ましくは、その塩を塩基または酸と接触させて親化合物を通常の様式で単離することにより、再生される。この化合物の親形状は、特定の物理的特性(例えば、極性溶媒中での溶解度)の点で、種々の塩形状とは異なる。
【0060】
塩形状に加えて、本発明は、プロドラッグ形状である化合物を提供する。本明細書中で記述した化合物のプロドラッグは、生理学的条件下にて、化学的な変化を受けて、本発明の化合物を提供する。さらに、プロドラッグは、半ビボ環境での化学的方法または生化学的方法により、本発明の化合物に変換できる。例えば、プロドラッグは、適当な酵素または化学試薬と共に経皮パッチレザバに入れるとき、本発明の化合物にゆっくりと変換できる。
【0061】
本発明の特定の化合物は、非溶媒和形状だけでなく、溶媒和形状でも存在でき、これには、水和形状が含まれる。一般に、これらの溶媒和形状は、非溶媒和形状と同等であり、本発明の範囲内に包含される。本発明の特定の化合物は、複数の結晶形状または非晶質形状で存在し得る。一般に、全ての物理的形状は、本発明で考慮される用途に対して同等であり、本発明の範囲内であると解釈される。
【0062】
本発明の特定化合物は、非対称炭素原子(光学中心)または二重結合を有する;ラセミ体、ジアステレオマー、幾何異性体および個々の異性体は、本発明の範囲内に包含される。
【0063】
本発明の化合物はまた、このような化合物の構成する1種またはそれ以上の原子において、非自然割合の原子同位体を含有し得る。例えば、これらの化合物は、放射性同位元素(例えば、三重水素(H)、ヨウ素−125(125I)または炭素−14(14C))で放射標識され得る。本発明の化合物の全ての同位体バリエーションは、放射活性であろうとなかろうと、本発明の範囲内に包含されると解釈される。
【0064】
用語「緑内障」は、通常は眼内圧力の上昇を伴う目の神経障害または変性状態をいう。Shields,TEXTBOOK OF GLAUCOMA(第4版),1997,Lippincott,Williams and Wilkins(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。目の圧力の上昇が目の神経を損傷する機構は、よくわかっていない。軸索が側頭下部(inferotemporal)および側頭上部(superotemporal)の、損傷した視神経円盤の側面へ侵入することは、公知である。円盤の繊維が破壊されると、視神経円盤の神経辺縁は縮退し、視神経円盤内の生理的陥凹は拡大する。病理学的「カップリング」として知られる用語は、縮退および拡大のプロセスをいう。カップ対円盤比の測定が可能であるが、これは有用な診断ツールではない。何故なら、これは、集団内で広範に異なるからである。しかし、これは、一定期間での一連の測定により、疾患の進行を測定するために使用され得る。
【0065】
緑内障は、単一の疾患ではなく、種々の病院の状態群である。多くの場合、これらの状態は、目の中の圧力の上昇をもたらす。最終的に、緑内障は、視神経の損傷および視る機能の欠損をもたらし得る。眼内圧力の段階的な発達を示すヒトにとって、疾患の最終段階に達するまで症状を示さないことは通常はない。
【0066】
用語「開放隅角緑内障」は、慢性型の緑内障をいう。アメリカ人の約1%が発症し、緑内障の最も一般的な型である。開放隅角緑内障は、目の中の圧力の、非常に段階的な、痛みのない上昇によって特徴付けられる。開放隅角緑内障を有する被験体は、不可逆的視界不全に至るまで疾患の外に現れる表現を示さない。
【0067】
一般に、低眼圧緑内障(low tension glaucoma)として知られる「正常眼圧緑内障」は、開放隅角緑内障の形態であり、米国において開放隅角緑内障の約1/3に上る。
【0068】
「閉塞隅角緑内障」は、遠視の人々の間で最もよくある緑内障である。閉塞隅角緑内障において、目の後室は平均より小さく、体液がその後室への道上で光彩とレンズとの間を通る能力を邪魔し、光彩内の液体の圧力を引き上げる。
【0069】
「急性緑内障」は眼内圧力の突然の上昇によって起こる。この急激な圧力の上昇は、酷い痛みを伴う。急性緑内障において、目の充血、瞳孔の拡大および曇り(clouding over)の外側に現れる表現がある。
【0070】
用語「色素緑内障」とは、男性において女性よりしばしば発症し、20代または30代において発症し始める遺伝状態をいう。色素緑内障は、近視のヒトに影響する。近視の目は、以上な広い角度を形成する凹み形状の光彩を有する。角度が大きいことは、正常な焦点合わせの間に瞳が収縮および拡大する際に、目の色素層がレンズ上で擦られることをもたらす。摩擦作用は、光彩色素上皮の細胞を破壊し、それにより、色素粒子を体液内および小柱網に放出する。色素が小柱網の穴を埋める場合、体液排出が阻害される。
【0071】
用語「剥離症候群」とは、欧州系のヒトに最も一般的な緑内障の型をいう。剥離症候群は、目のレンズ上に築かれる白色物質によって特徴付けられる。瞳の動きは、この物質を光彩からいくらかの色素にそってレンズを摩擦させる。色素および白色剥離物質の両方が、小柱網を塞ぎ、体液の排出を阻害する。
【0072】
「外傷関連性緑内障」とは、眼の上に作用する外的な力(すなわち、化学熱傷、目の強打)によって引き起こされる型の緑内障である。外傷関連性緑内障は、この外的な力が、目の液体排出系に機械的破壊または物理的変化をもたらす場合に起こる。
【0073】
「先天性緑内障」は、10,000の出産のうち約1件で起こる。これは、4歳までに起こり得る。原発性先天性緑内障は、小柱網の異常な発症に起因する。先天性緑内障は、遺伝性でも非遺伝性でもあり得る。先天性緑内障において、目が拡大するか、または角膜が曇る。角膜の伸展は、内側裏層における破壊を引き起こす。角膜が伸展し続ける場合、より多くの体液が侵入し、そして浮腫の増大および角膜の曇りが存在する。
【0074】
用語「スタージ−ウェーバー症候群」は、ポートワイン色の顔の母斑によって特徴付けられる、稀な症候群を言う。母斑は、脳の表面の異常な血管に関連する。これらの血管奇形は、眼瞼、強膜、結膜、および虹彩に影響する。スタージ−ウェーバー症候群を有する患者の3分の1は、眼内圧力の上昇に苦しむ。この上昇した圧力は、緑内障をもたらす。強膜の血管奇形は、静脈における圧力の上昇を引き起こす。この血管内の上昇した圧力は、目を液体排出し、それにより、眼内圧力を上げさせ、目の排出系に対する損傷をもたらす。
【0075】
用語「ブドウ膜炎」は、脈絡膜、網様体および虹彩の炎症によって特徴付けられる疾患を表す。後部ブドウ膜炎において、体液形成における疾患は、眼内の危険な低レベルの圧力を引き起こし得る。ブドウ膜炎の他の形態(すなわち、後部ブドウ膜炎)において、眼内圧力が上昇する。この上昇は、活性炎症、不十分な抗炎症治療、過剰なコルチコステロイド使用、または不十分な緑内障治療によって起き得る。炎症が慢性的であり、そして適切に制御されない場合、小柱細胞死を導く。
【0076】
用語「慢性的上昇」は、再発し、処置不能な状態によって起きる上昇した圧力をいう。
【0077】
用語「急性上昇」は、眼内の眼圧の突然の上昇をいう。突然の上昇は、1時間以内に起き、そして目の中の痛みを引き起こし、悪心または吐き気すら引き起こし得る。
【0078】
用語「緑内障性上昇」は、眼の中の圧力の低い上昇をいう。上昇に関連する症状は、存在しない。
【0079】
「眼に受容可能なキャリア」は、実質的に長期または永久的な有害作用を、投与される目に有さないキャリアである。
【0080】
(導入)
上で議論されたように、中間コンダクタンス(カルシウム活性化カリウムチャンネル)の遮断は、このチャンネルが、薬物標的として治療的に関連した役割を果たす疾患状態の処置のための強力な治療アプローチである。中間コンダクタンス(カルシウム活性化カリウムチャンネル)の阻害によって処置され得る代表的疾患としては、鎌状赤血球症、炎症および緑内障が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
本発明は、本発明の化合物の鎌状赤血球症および緑内障における使用に関して説明される。2つの選択された疾患の形態は、例証の明示のために過ぎず、本発明の範囲を規定または限定することを意図しない。
【0082】
中間コンダクタンス(カルシウム活性化カリウムチャンネル(すなわち、Gardosチャンネル))の阻害を介する鎌状細胞脱水症は、鎌田は細胞疾患の処置および/または予防において有用である。さらに、生理学的研究は、中間コンダクタンス(カルシウム活性化カリウムチャンネル)が、上皮組織からのClおよび水の分泌において役割を果たす。目の眼内圧力が、部分的に、体液の分泌によって維持される場合、中間コンダクタンス(カルシウム活性化カリウムチャンネル)のアンタゴニストによる体液分泌の阻害は、眼内圧力を減少させる。例えば、ウサギにおいて、本発明の化合物の適用は、眼内圧力の、用量依存的な長期の減少をもたらすことが実証された。従って、目における中間コンダクタンス(カルシウム活性化カリウムチャンネル)の遮断は、緑内障の処置のために有用である。
【0083】
本発明は、スルホンアミド化合物、これらの化合物を含有する組成物、および中間コンダクタンス(カルシウム活性化カリウムチャンネル)におけるイオンフラックスを減少するためにこれらの化合物を使用する方法を、提供する。このチャンネルの阻害は、哺乳動物細胞増殖、眼内圧力、赤血球脱水、鎌状細胞脱水を減少し、そして急性鎌状細胞エピソードの発生を遅延させる。従って、本発明はまた、中間コンダクタンス(カルシウム活性化カリウムチャンネル)を介したイオンフラックスの阻害が利点を証明し得る疾患を、処置および予防するために、本発明の化合物を使用する方法にも関する。
【0084】
(実施態様の説明)
I.中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャンネルのモジュレーター
第一局面では、本発明は、式Iの化合物を提供する:
【0085】
【化15】

ここで、環系Zは、置換または非置換アリール、置換および非置換ヘテロアリール、置換または非置換炭素環、または置換または非置換ヘテロシクロアルキルから選択される。記号Aは、−NHS(O)−、−S(O)NH−、−C(R)S(O)−、−S(O)C(R)−、−C(R)NHS(O)−、−S(O)NHC(R)−、−C(R)S(O)NH−または−HNS(O)nC(R)−を表わす。記号Rは、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換炭素環、または置換または非置換ヘテロシクロアルキルを表わす。記号Rは、COOR、置換または非置換2−フラン、置換または非置換2−チアゾール、または
【0086】
【化16】

を表わす。
【0087】
記号Rは、置換または非置換C〜Cアルキル(例えば、メチル、エチル)、または−CFを表わす。Xは、−N=N−、−N=C(R)−、−C(R)=N−、−C(R)−C(R)−または−C(R)=C(R)−を表わし、ここで、RおよびRは、水素、ハロゲン、置換および非置換低級アルキル、−ORまたは−CFを表わす。記号Yは、O、NR11またはSを表わし、ここで、R11は、−H、低級アルキルまたは−CFである。記号Rは、水素、または置換または非置換低級アルキルから選択されるメンバーを表わす。
【0088】
代表的な実施態様では、本発明は、Zが、置換または非置換フェニル、および置換または非置換チオフェンから選択される上記化合物を提供する。他の代表的な実施態様では、本発明の化合物は、置換または非置換2−フラン、および
【0089】
【化17】

から選択されるR基を含み、ここで、Xは、−N=C(R)−、−C(R)=N−、−C(R)−C(R)−または−C(R)=C(R)−である;そしてYは、OまたはSである。
【0090】
さらに他の代表的な実施態様では、Rは、
【0091】
【化18】

から選択され、ここで、記号R、RおよびRは、別個に、H、ハロゲン、低級アルキル、OR10、−OCF、−CFおよびNOを表わす。記号R10は、H、低級アルキルまたは置換低級アルキルを表わす。
【0092】
さらに他の代表的な実施態様では、本発明は、記号Rが以下の基を表わす化合物を提供する:
【0093】
【化19】

ここで、R13は、ハロゲン、置換または非置換C〜Cアルキル、CFおよびOCFから選択されるメンバーである。
【0094】
式Iの本発明の代表的な化合物は、図1で示されている。
【0095】
多価種である本発明の化合物もまた、本発明の範囲内であり、これらには、例えば、本発明の化合物のダイマー、トリマー、テトラマーおよびそれより高級な同族体またはそれらの反応性類似物が含まれる。例えば、二量体構成物は、「ホモ二量体」または「ヘテロ二量体」であり得る。さらに、本発明の化合物またはその反応性類似物がオリゴマーまたは重合体の骨組みに結合した多価構成物(例えば、ポリリシン、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプンなど)は、本発明の範囲内である。この骨組みは、好ましくは、多官能性である(すなわち、これは、本発明の化合物を結合する多数の反応性部位を有する)。さらに、この骨組みは、本発明の単一の種または本発明の1種またはそれ以上の種で誘導体化できる。
【0096】
さらに、本発明は、式Iで示したモチーフセット内の化合物を含み、これらは、同様に官能化されていない類似化合物と比較して高い水溶性を有する化合物を生じるように、官能化されている。有機化合物の水溶性を高める方法は、当該技術分野で公知である。このような方法には、永久荷電部分(例えば、四級アンモニウム)または生理学的に関連したpHで荷電された基(例えば、カルボン酸、アミン)を備えた有機核を官能化することが挙げられるが、これらに限定されない。他の方法には、その有機核に、ヒドロキシル含有基またはアミン含有基(例えば、アルコール、ポリオール、ポリエーテルなど)を付加することが挙げられる。代表的な例には、ポリリシン、ポリエチレンイミン、ポリ(エチレングリコール)およびポリ(プロピレングリコール)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの化合物の適当な官能化の化学作用および戦略は、当該技術分野で公知である。例えば、Dunn,R.L.ら著、POLYMERIC DRUGS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS,ACS Symposium Series Vol.469,American Chemical Society,Washington,D.C.1991を参照。
【0097】
(カリウムチャンネル遮断薬の調製)
本発明の化合物は、容易に入手できる出発物質または公知の中間体を使用して、調製できる。例えば、フラン誘導体化ビス−アリールスルホンアミドは、スキームAの方法により、容易に調製される:
【0098】
【化20】

(スキームA)
スキームAおよび次のスキームの各々では、反応成分の各々は、反応位置以外の1個またはそれ以上の置換基(「R基」)を有し得る。R’、R’’、R’’’などの記号は、一般に、本明細書中の定義の項で記述されているように、アリール基またはヘテロアリール基の置換基を表わす。
【0099】
スキームAでは、ヨードアニリン基質aは、ボロン酸誘導体とのPd媒介反応によって、そのフラン部位とカップリングされて、化合物bが得られる。得られた付加物は、活性化スルホン酸誘導体と反応されて、付加物cが生成する。
【0100】
【化21】

(スキームB)
スキームBは、本発明のオキサジアゾリル含有化合物の代表的な経路を設定する。それゆえ、アミジンdは、塩化ベンゾイル種でアシル化されて、化合物eが得られる。化合物eは、化合物fに環化される。化合物fのニトロ基は、還元され、得られたアミンは、対応するスルホンアミドhに変換される。
【0101】
【化22】

(スキームC)
スキームCは、本発明のオキサゾール含有化合物の代表的な経路を示す。ハロゲン化アシルiは、スルファロン(sulfalone)中のトリアゾールの作用により、オキサゾールjに変換される。jのニトロ基は、還元されて、対応するアミンkが得られ、これは、活性化スルホン酸誘導体の作用により、スルホンlに変換される。
【0102】
【化23】

(スキームD)
スキームDは、本発明のビス−アリールスルホンアミドの代表的な経路を提供する。ハロゲン化ベンジルmは、適当なチオールnと反応されて、スルフィドoを形成し、これは、引き続いて、スルホンアミドpに酸化される。
【0103】
小有機分子(例えば、本発明のもの)のダイマー、トリマー、テトラマーおよびそれより高級な同族体を調製する方法だけでなく、多官能性骨格分子を官能化する方法は、当業者に周知である。例えば、本発明の芳香族アミンは、チオホスゲンの作用により、対応するイソチオシアネートに変換される。得られたイソチアシアネートは、本発明のアミンとカップリングされて、それにより、ホモ−またはヘテロ二量体種のいずれかを形成する。あるいは、このイソチアシアネートは、アミン含有骨格(例えば、ポリリシン)とカップリングされて、それにより、多価骨格と本発明の化合物との間で、共役物を形成する。もし、ヘテロ官能化多価種を形成することが望ましいなら、このポリリシンは、第一イソチオシアネートで下部標識され、引き続いて、1種またはそれ以上の異なるイソチオシアネートで標識される。あるいは、この骨格には、イソチオシアネートの混合物が加えられる。精製は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、透析、ナノ濾過などにより、進行する。
【0104】
(化合物の安定性)
中間体コンダクタンスとして有用な本発明の化合物(カルシウム活性化カリウムチャンネルインヒビター)は、好ましくは、受容可能なバイオアベイラビリティおよび安定性の両方をインビボで示す。種々の生物学的環境における本発明の化合物の安定性は、当該分野で公知の方法によってアッセイされ得る。一実施形態において、上記化合物の安定性は、インビトロ調製物においてアッセイされる。好ましい実施形態において、上記インビトロ調製物は、肝臓ミクロソーム調製物である。そのようなインビトロアッセイの結果は、本発明の化合物のインビボでの安定性に関係するデータを提供する。本発明の化合物の安定性をアッセイする際において有用な他のインビトロアッセイは、当該分野で公知である。
【0105】
インビトロ方法に加えて、インビボ方法(例えば、薬物速度論的研究)が、一定範囲の動物モデルにおいて実施され得る。本発明の1種以上の化合物は、動物(好ましくはラット)に、種々の投与量および/または種々の経路(例えば、静脈内経路、腹腔内経路、p.o.経路)により、投与され得る。血液サンプル、尿サンプル、および/または糞便サンプルが、連続する時点にて収集され得、それらのサンプルは、本発明の化合物および/またはその化合物の代謝物の存在および/もしくは濃度についてアッセイされ得る。
【0106】
適切な量が、種々の化合物からのデータを比較するために利用され得る。例示的量といては、半減期、バイオアベイラビリティ、所定時間後にインタクトなまま残っている化合物の量などが挙げられる。好ましい実施形態において、所定時間後にインタクトなまま残っている化合物の量が、利用される。本明細書中で使用される場合、「インタクト(intact)」とは、代謝もされず、元の化合物とは異なる種へと分解もされなかった、化合物を指す。
【0107】
上記化合物および/または代謝物の検出および好ましくはその量を可能にする任意の技術が、本発明の化合物をアッセイする際に使用するために適切である。これらの方法としては、分光光度法(例えば、NMR(例えば、19F NMR)、MS、IR、UV/可視光)、クロマトグラフィー法(例えば、LC、GC、HPLC)、および分光法とクロマトグラフィー法との両方を利用するハイブリッド法(例えば、GC/MS、LC/MS、LC/MS/MS)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、上記方法は、検出可能な標識(例えば、放射性同位体(例えば、H、15N、14C)または蛍光標識(例えば、フルオレセイン、ローダミン))で標識されている本発明の化合物)を利用し得る。同様な有機分子のインビボ持続をアッセイするための他の方法(特に、生理活性分子に適用可能な方法)は、当業者に明らかである。
【0108】
(化合物の活性)
薬学的に有用な中間体コンダクタンス(カルシウム活性化カリウムチャンネルインヒビター)を開発するために、候補化合物は、標的チャンネルに対する受容可能な活性をしめさなければならない。これらのイオンチャンネル(例えば、Gardosチャンネル)に対する本発明の化合物の活性は、当該分野で公知の方法を利用してアッセイされ得る。
【0109】
中間体コンダクタンス(カルシウム活性化カリウムチャンネル)を通るイオン流れを減少する化合物が、生理活性チャンネル(組換え体または天然に存在するもののいずれか)を使用して試験される。中間体コンダクタンス(カルシウム活性化カリウムチャンネル(好ましくはヒトチャンネル))が、ネイティブ細胞において見出され、インビトロで単離され得、細胞において共発現もしくは発現され得、または細胞由来の膜において発現され得る。本発明の化合物による調節は、標準的なインビトロアッセイまたはインビボアッセイ(当該分野で周知のアッセイまたはさもなければ本明細書中に記載されるアッセイ)を使用して試験される。イオンフラックスを減少する化合物は、開口しているチャンネルの確率を減少すること、閉じているチャンネルの確率を増加すること、チャンネルを通るコンダクタンス減少すること、およびイオンの通過を妨害することによって、イオン電流密度の検出可能な減少を引き起こす。
【0110】
減少したカリウムフラックスは、例えば、中間体コンダクタンス(Gardosチャンネルとして公知であるカルシウム活性化カリウムチャンネル)を発現する細胞の分極(すなわち、電位)の変化を測定することによって、評価され得る。細胞分極の変化を測定する一方法は、電圧クランプ技術(例えば、「細胞付着」様式、「インサイドアウト」様式、および「全細胞」様式)である(例えば、Ackermanら、New Engl.J.Med.336:1575〜1595(1997)を参照のこと)。他の公知のアッセイとしては、放射性標識ルビジウムフラックスアッセイ、および電圧感受性式度を使用する蛍光アッセイが挙げられる。例えば、Vestergarrd−Bogindら、J.Membrane Biol.88:67〜75(1988);Danielら、J Pharmacol.Meth.25:185〜193(1991);Holevinskyら、J.Membrane Biology 137:59〜70(1994)を参照のこと。中間体コンダクタンス(カルシウム活性化カリウムチャンネルタンパク質)を通るカリウムフラックスを阻止または増加可能な化合物についてのアッセイが、そのチャンネルを有する細胞と接触してその細胞を含む、浴液にその化合物を適用することによって実施され得る。例えば、Blatzら、Nature 323:718〜720(1986);Park,J.Physiol.481:555〜570(1994)を参照のこと。一般に、試験されるべき化合物は、1pM〜100mMの範囲で存在する。チャンネルの機能の変化は、電流またはイオンフラックスで、または電流およびフラックスの変化の結果によって、測定され得る。
【0111】
チャンネルの機能に対する試験化合物の影響は、電流もしくはイオンフラックスの変化によって、または電流およびフラックスの変化の結果によって、測定され得る。電流またはイオンフラックスの変化は、カチオン(例えば、カリウムイオンまたはルビジウムイオン)のフラックスの増加または減少のいずれかによって、測定される。これらのカチオンは、種々の標準的方法にて測定され得る。これらは、イオンの濃度変化によって直接、あるいは膜電位によってかまたはイオンの放射性標識によって間接的に、測定され得る。イオンフラックスに対する試験化合物の結果は、極めて変化され得る。従って、任意の適切な生理学的パラメータは、本発明のチャンネルに対する試験化合物の影響を評価するために使用され得る。チャンネル機能の変化は、リガンド変位(例えば、CTX放出)によって、測定され得る。機能的結果がインタクトな細胞または動物を使用して決定される場合、当業者はまた、伝達物質放出(例えば、ドーパミン)、ホルモン放出(例えば、インスリン)、既知の遺伝子マーカーおよび特徴付けられていない遺伝子マーカーに対する転写変化(例えば、ノーザンブロット)、細胞体積変化(例えば、赤血球中)、免疫応答(例えば、T細胞活性化)、細胞代謝の変化(例えば、細胞増殖またはpH変化)を測定し得る。
【0112】
鎌状赤血球疾患の調節における目的とする化合物において、赤血球Gardosチャンネルの試験化合物による阻害は、ヒト赤血球を使用してアッセイされ得る。阻害の程度は、検出可能な物質(例えば、86Rb)を使用して測定され得る。例示的アッセイにおいて、86Rbを使用して、Gardosチャンネル阻害は、赤血球を86Rb)および試験化合物に曝露し、その細胞により取り込まれる86Rbの量を測定することによって、アッセイされ得る。このアッセイにおける多数の変数は、当業者にとって明らかである。
【0113】
本発明の化合物の能力は、Brugnaraら、J.Clin.Invest.92」520〜526(1993)およびBrugnaraら、J.Biol.Chem.268(12):8760〜8769(1993)によって開示される方法などの方法によって、赤血球を使用してアッセイされ得る。これらの参考文献において記載された方法を使用して、Gardosチャンネルの阻害パーセントおよび本発明の化合物のIC50が、アッセイされ得る。簡単に述べると、試験化合物および86Rb含有培地に曝露される。86Rb輸送の初期速度は、パラメータ(例えば、細胞により取り込まれる86Rbの線形最小二乗傾き)から計算され得る。阻害定数は、コンピューター支援式非線形曲線フィッティングを使用して、標準的方法によって計算され得る。
【0114】
眼内圧を調節するために使用される場合、中間体コンダクタンス(カルシウム活性化カリウムチャンネル)に対する本発明の化合物の活性は、種々のインビトロアッセイおよびインビボアッセイを使用して、評価され得る。一実施形態において、哺乳動物中で実行されるインビボアッセイおよび本明細書中で開示されるインビボアッセイ(例えば、実施例の節におけるウサギアッセイ)が、増加した眼内圧の処置のための中間体コンダクタンス(カルシウム活性化カリウムチャンネル部ロッカー)を同定するために使用される。別の実施形態において、本明細書中に記載されるインビトロアッセイ(例えば、放射性標識ルビジウムフラックス)が、使用される。そのようなアッセイは、中間体コンダクタンス(カルシウム活性化カリウムチャンネル)のインヒビターについて、および被験体における眼内圧を減少する化合物の同定のために、試験される。調節化合物についてのアッセイとしては、例えば、電流の測定;膜電位の測定;イオンフラックス(例えば、カリウムまたはルビジウム)の測定;カリウム濃度の測定;セカンドメッセンジャーおよび転写レベルの測定;カリウム依存性酵母増殖アッセイの使用;(例えば、中間体コンダクタンス(カルシウム活性化カリウムチャンネル)を通るイオン流れを減少可能な化合物を被験体に投与し、眼内圧の変化を測定することによる)眼内圧の測定が挙げられる。
【0115】
イオンチャンネルの活性およびイオンチャンネルに影響を与える因子の活性についての他の方法は、当該分野で公知である。適切なアッセイ方法の選択は、十分に当業者の能力の範囲内にある。例えば、Hille,B.,IONIC CHANNELS OF EXCITABLE MEMBRANES,Sinaner Associates,Inc.,Sunderland,MA(1992)を参照のこと。
【0116】
本発明の選択された化合物の活性は、実施例4に示されるアッセイを使用して決定された。このアッセイは、表1に示される。
【0117】
表1.化合物集合物についての中間体コンダクタンス(カルシウム活性化カリウムチャンネルブロッカーアッセイ)における相対的能力。+は、10μM<IC50<2μMを示す;++は、2μM<IC50<0.5μMを示す;+++は、IC50<0.5μMを示す。
【0118】
【表1】

II.カリウムチャンネル遮断薬の医薬組成物
他の局面では、本発明は、薬学的に受容可能な賦形剤および本発明の化合物を含有する医薬組成物を提供する。
【0119】
(化合物(組成物)の処方)
本発明の化合物は、多種多様な経口剤形、非経口剤形および局所剤形で、調製でき投与できる。それゆえ、本発明の化合物は、注射(すなわち、静脈内、筋肉内、皮内内、十二指腸内または腹腔内)により、投与できる。また、本明細書中で記述した化合物は、吸入(例えば、鼻内)により、投与できる。さらに、本発明の化合物は、経皮的に投与できる。従って、本発明はまた、薬学的に受容可能な担体または賦形剤と本発明の1種またはそれ以上の化合物とを含有する医薬組成物を提供する。
【0120】
本発明の化合物から医薬組成物を調製するために、薬学的に受容可能な担体は、固形または液状のいずれかであり得る。固形製剤には、粉剤、錠剤、丸薬、カプセル剤、カシュ剤、坐剤および分散性顆粒が挙げられる。固形担体は、1種またはそれ以上の物質であり得、これはまた、希釈剤、香料、結合剤、防腐剤、錠剤崩壊剤、またはカプセル化物質として、作用し得る。
【0121】
粉剤では、この担体は、細かく分割した固形物であり、これは、細かく分割した活性成分との混合物中にある。錠剤では、この活性成分は、適当な割合で、必要な結合特性を有する担体と混合され、そして所望の形状および大きさに圧縮される。
【0122】
これらの粉剤および錠剤は、好ましくは、5%または10%〜70%の活性化合物を含有する。適当な担体には、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ショ糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融解ワックス、ココアバターなどがある。「製剤」との用語は、担体としてのカプセル化物質(これは、その活性成分が他の担体と共にまたはそれなしで、カプセルを提供する)との活性化合物の処方物を含むように解釈され、これは、それゆえ、それと会合している。同様に、カシュ剤および薬用ドロップが含まれる。錠剤、粉剤、カプセル剤、丸薬、カシュ剤および薬用ドロップは、経口投与に適当な固形剤形として、使用できる。
【0123】
坐剤を調製するには、低融解ワックス(例えば、脂肪酸グリセリドの混合物)またはココアバターがまず融解され、その活性成分は、例えば、攪拌することにより、その中に均一に分散される。この溶融均一混合物は、次いで、好都合な大きさの鋳型に注がれ、冷却され、それにより、固化する。
【0124】
液状製剤には、溶液、懸濁液および乳濁液(例えば、水または水/プロピレングリコール溶液)が挙げられる。非経口注射には、液状製剤は、ポリエチレングリコール水溶液中にて、溶液で処方できる。
【0125】
経口用途に適当な水溶液は、この活性成分を水に溶解することにより、そして望ましいなら、適当な着色剤、香料、安定剤および増粘剤を加えることにより、調製できる。経口用途に適当な水性懸濁液は、細かく分割した活性成分を、粘性物質(例えば、天然ゴムまたは合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび他の周知の懸濁剤)と共に水に分散させることにより、製造できる。
【0126】
また、使用直前に経口投与用の液状製剤に変換される固形製剤も含まれる。このような液体形状には、溶液、懸濁液および乳濁液が挙げられる。これらの製剤は、その活性成分に加えて、着色剤、香料、安定剤、緩衝液、人工甘味料および天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含有し得る。
【0127】
この医薬製剤は、好ましくは、単位剤形である。このような剤形では、この製剤は、適当な量の活性成分を含有する単位用量に分割される。この単位剤形は、包装した製剤であり、その包装は、バイアルまたはアンプル中にて、個別の量の製剤(例えば、包装した錠剤、カプセル剤および粉剤)を含有する。また、この単位剤形は、カプセル、錠剤、カシュ剤または薬用ドロップそれ自体であり得、または包装した形状のこれらのいずれかの任意数であり得る。
【0128】
単位剤形中の活性成分の量は、特定の用途および活性成分の効力に従って、0.1mg〜10000mg、さらに典型的には、1.0mg〜1000mg、最も典型的には、10mg〜500mgで変えられ得るか調節され得る。この組成物は、もし望ましいなら、また、他の適合性治療剤を含有する。
【0129】
本発明に従って、治療すべき目にこれらの化合物を投与するために、哺乳動物の目に薬剤を直接投与する任意の方法が使用され得る。これらの化合物を哺乳動物の目に直接投与することから生じる哺乳動物に対する主要な効果は、眼圧の低下である。さらに好ましくは、1種またはそれ以上の中間コンダクタンス、カルシウム活性化カリウムチャンネル遮断薬および/または眼圧を低下させることが知られている追加化合物は、目に局所的に塗布されるか、または眼内に直接注射される。これらの化合物を、例えば、用量送達に使用される局所眼科製剤の例として、点眼液、懸濁液、ゲルまたはクリームとして、眼科製剤で、目に局所塗布するとき、特に有用な結果が得られる。
【0130】
本発明によれば、これらの化合物は、典型的には、それらの化合物の有効量を目に送達するのに十分な濃度で、眼科的な受容可能な担体で投与される。これらの化合物は、本発明に従って、目に投与され、典型的には、眼科的な受容可能な担体と混合され、必要に応じて、緑内障および/または眼圧低下を治療するのに適当な他の化合物と混合される。任意の適当な(例えば、通常の)眼科的な受容可能な担体が使用され得、これには、溶解性向上剤(例えば、眼科的な受容可能なβ−シクロデキストリンのいずれか)と共にまたはそれなしで、水(蒸留水または脱イオン水)、生理食塩水および他の水性媒体が挙げられる。これらの化合物は、それらの投与に使用される担体に溶解性であり得、その結果、それらの化合物は、溶液の形態で、目に投与される。あるいは、適当な担体中のこれらの化合物(またはそれらの塩)の懸濁液もまた、使用され得る。
【0131】
局所投与用の組成物を形成するとき、これらの化合物は、一般に、約0.001%〜10%w/vの間、さらに好ましくは、約0.1%〜5%w/vの間として、処方される。1実施態様では、この処方は、1.0%w/vである。1実施態様では、この処方は、好ましくは、約7.0〜7.6pHの間のpH、好ましくは、pH7.4±0.3で、水溶液である。本発明の他の局面では、これらの化合物は、懸濁液として、処方される。他の実施態様では、この処方は、1%w/vの眼科懸濁液中にて、1.0%の式Vの化合物(微粉にした);0.06%のカーボマー(カーボポール1382)、NF;1.0%のポロキサマー188、NF;2.5%のグリセリン、USP;0.01%の塩化ベンザルコニウム、NF;水酸化ナトリウム、NF、q.s.pH7.4±0.3;および精製水、USPである(この処方は、便宜上、%w/wとして、調製され得、さらに高い等級の水、USPは、置き換えられ得る)。眼科製剤では、種々の防腐剤が使用され得る。防腐剤には、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀および硝酸フェニル水銀が挙げられるが、これらに限定されない。同様に、このような眼科製剤では、種々のビヒクルが使用され得る。これらのビヒクルには、ポリビニルアルコール、ポビドン、シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポロキサマー、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースが挙げられるが、これらに限定されない。このような防腐剤は、使用するなら、典型的には、約0.001重量%と約1.0重量%の間の量で、使用される。
【0132】
必要に応じて、または便宜上、張性調節剤が加えられ得る。それらには、塩(特に、塩化ナトリウム、塩化カリウムなど)、マンニトールおよびグリセリン、または任意の他の適当な眼科的に受容可能な張性調節剤が挙げられるが、これらに限定されない。このような試薬は、典型的には、約0.1重量%と約10.0重量%の間の量で、使用される。
【0133】
種々の緩衝液およびpHを調節する手段は、得られる製剤が眼科的に受容可能である限り、使用され得る。従って、緩衝液には、酢酸塩緩衝液、酒石酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝液およびホウ酸塩緩衝液が挙げられるが、これらに限定されない。これらの処方物のpHを調節するには、必要に応じて、酸または塩基が使用され得る。
【0134】
同様にして、眼科的に受容可能な酸化防止剤には、メタ亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ブチル化ヒドロキシアニソールおよびブチル化ヒドロキシトルエンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0135】
一部の化合物は、限られた水溶性を有し得、従って、その組成物中には、界面活性剤または他のテク問うな共溶媒が必要であり得る。このような共溶媒には、以下が挙げられる:Polysorbate 20、60および80;Pluronic F−68、F−84およびP−103;シクロデキストリン;ポリオキシル35ヒマシ油;または当業者に公知の他の試薬。このような共溶媒は、典型的には、約0.01重量%と約2重量%の間のレベルで、使用される。
【0136】
この化合物の吸収を高めるために、その処方物を調剤する際に変動性を減らすために、処方物の懸濁液または乳濁液の成分の物理的な分離を減らすために、および/またはその眼科処方を改善するために、簡単な水溶液の粘度よりも高い粘度が望まれ得る。このような粘度構築剤には、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸およびそれらの塩、ヒアルロン酸およびそれらの塩、前述のものの組み合わせ、および当業者に公知の他の試薬が挙げられる。このような試薬は、典型的には、約0.01重量%と約2重量%の間のレベルで、使用される。上記補助剤のいずれかの許容可能な量の決定は、当業者により、容易に確認される。
【0137】
この点眼液(目薬)は、眼圧を許容可能なレベルで維持するのに必要なたびごとに、哺乳動物の目に投与され得る。言い換えれば、この点眼液(または他の処方物)は、その活性成分の有益な効果を眼内で維持するのに必要なたびごとに、哺乳動物の目に投与される。当業者は、投与頻度が眼科処方物内の活性成分およびその濃度の正確な性質に依存していることを理解する。これらの指針内にて、本発明の眼科処方物は、毎日1回、哺乳動物の目に投与されると考えられる。これらの処方物は、毎日、約1〜4回、または担当医により適当と判断されたとき、哺乳動物の目に投与され得る。これらの処方物はまた、被験体の眼圧を低下させるかまたは被験体で有益な効果を有することが知られている1種またはそれ以上の他の医薬組成物と併用して、投与され得、それらには、縮瞳薬(例えば、ピロカルピン、カルバコールおよびアセチルコリンエステラーゼ阻害剤);交感神経模倣薬(例えば、エピネフリンおよびジピバリルエピネフリン);β−遮断薬(例えば、ベタキソロール、レボブノロールおよびチモロール);α−2アゴニスト(例えば、パラ−アミノクロニジン);炭酸脱水酵素阻害剤(例えば、アセタゾラミド、メタゾラミドおよびエトキサゾラミド);およびプロスタグランジンおよびそれらの類似物および誘導体(例えば、ラタナプロスト)が挙げられる。
【0138】
本発明の組成物は、さらに、徐放および/または安楽を与える成分を含有し得る。このような成分には、高分子量アニオン性ムコミメティック重合体、ゲル化多糖類および細かく分割した薬剤担体基質が挙げられる。これらの成分は、米国特許第4,911,920号;第5,403,841号;第5,212,162号;および第4,861,760号で、さらに詳細に述べられている。これらの特許の全内容は、本明細書中で参考として援用されている。
【0139】
同様に、当業者が理解するように、これらの組成物は、上記のように、局所眼科送達に適当な種々の剤形で処方され得、これには、溶液、懸濁液、乳濁液、ゲルおよび分解性固形眼科用インサートが挙げられる。これらの組成物は、好ましくは、水性懸濁液または水溶液である。さらに、このように処方した組成物はまた、患者に送達する単一バイアルで、1種またはそれ以上の追加活性成分を含有し得る。すなわち、単一処方物で存在している1種またはそれ以上のカリウムチャンネル阻害剤に加えて、本発明は、さらに、投与用の単一処方物で、以下の1種またはそれ以上が共に存在していることを考慮している:縮瞳薬(例えば、ピロカルピン、カルバコールおよびアセチルコリンエステラーゼ阻害剤);交感神経模倣薬(例えば、エピネフリンおよびジピバリルエピネフリン);β−遮断薬(例えば、ベタキソロール、レボブノロールおよびチモロール);α−2アゴニスト(例えば、パラ−アミノクロニジン);炭酸脱水酵素阻害剤(例えば、アセタゾラミド、メタゾラミドおよびエトキサゾラミド);およびプロスタグランジンおよびそれらの類似物および誘導体(例えば、ラタナプロスト)。当業者は、患者に利用可能な組成物中にて、化学的な安定性および他の試薬(活性治療薬であろうと賦形剤とあろうと)との相溶性に関して、単一処方物から同時投与するこのような試薬を選択する際に、相当な注意を払う必要があることを認識している。
【0140】
(有効投薬量)
本発明により提供された医薬組成物には、その活性成分が治療有効量(すなわち、その意図した目的を達成するのに有効な量)で含有された組成物が挙げられる。特定の用途に有効な実際の量は、特に、治療する病気に依存している。例えば、鎌状赤血球の脱水を少なくするか、および/または赤血球の鎌状赤血球化またはその場での歪みの発生を遅らせる方法で投与するとき、このような組成物は、この結果を達成するのに有効な活性成分の量を含有する。同様に、この医薬組成物が緑内障を治療または予防するのに使用されるとき、治療有効量は、所定の圧力閾値よりも低く眼圧を低下させる。本発明の化合物の治療有効量の決定は、特に、本明細書中の詳細な開示に照らして、当業者の能力の範囲内である。
【0141】
本明細書中で記述した任意の化合物について、その治療有効量は、最初は、細胞培養アッセイから決定できる。標的濃度は、この中間コンダクタンス、カルシウム活性化カリウムチャンネル遮断薬の阻害を誘発できる活性化合物の濃度である。好ましい実施態様では、該チャンネル活性は、少なくとも25%阻害される。イオンチャンネルカリウムフラックスの少なくとも約50%、75%または90%またはそれ以上を誘発できる活性化合物の濃度が、現在では、好ましい。患者におけるこの中間コンダクタンス、カルシウム活性化カリウムチャンネル遮断薬の阻害割合は、達成する薬剤濃度の有効性を評価するためにモニターでき、その投薬量は、所望の阻害割合を達成するために、医師により、上方または下方に調節できる。
【0142】
当該技術分野で周知であるように、ヒトで使用する治療有効量もまた、動物モデルから決定できる。例えば、ヒトに対する用量は、動物で有効であることが分かった濃度を達成するように、処方できる。鎌状赤血球症に特に有用な動物モデルは、SAD−1マウスモデル(Trudelら、EMBOJ;11:31573165(1991))である。ヒトでの投薬量は、Gardosチャンネル阻害をモニターすることにより、また、その投薬量を上記のように上方または下方に調節することにより、調節できる。
【0143】
治療有効用量はまた、類似の薬理活性を示すことが知られている化合物(例えば、クロトリマゾールおよび他の抗真菌剤(例えば、Brugnaraら、JPET 273:266272(1995);Benzaquenら、Nature Medicine 1:534−540(1995);Brugnaraら、J.Clin.Invest.97(5):1227−1234(1996)を参照))についてのヒトのデータから、決定できる。
【0144】
当該技術分野で周知であるように、上記方法および他の方法に基づいて、ヒトにおける最大の有効性を達成する用量は、当業者の能力の範囲内である。
【0145】
局所投与の場合、投与した化合物の全身的に循環している濃度は、特に重要ではない。このような場合、この化合物は、局所領域にて意図した結果を達成するのに有効な濃度を達成するように、投与される。
【0146】
一例として、本発明の化合物を鎌状赤血球症(慢性鎌状赤血球症および急性鎌状赤血球症の両方を含めて)で使用するとき、投与した化合物の循環している濃度が約0.001μM〜20μMであれば、有効であると見なされ、約0.01μM〜5μMが好ましい。
【0147】
本明細書中で記述した化合物を経口投与(これは、鎌状赤血球症の予防および治療に好ましい投与様式である)用の患者用量は、典型的には、約0.01mg/日〜約100mg/日、さらに典型的には、約0.1mg/日〜約10mg/日、最も典型的には、約0.50mg/日〜約5mg/日の範囲である。患者の体重の点から述べると、典型的な投薬量は、約0.0001〜約0.150mg/kg/日、さらに典型的には、約0.001〜約0.015mg/kg/日、最も典型的には、約0.01〜約0.10mg/kg/日の範囲である。
【0148】
投薬量は、患者の要求および使用する化合物に依存して、変えられ得る。患者に投与される用量は、本発明の状況では、長い間に患者に有益な治療応答を引き起こすのに十分であるべきである。この用量のサイズはまた、経験、性質、および何らかの有害な副作用の程度により、決定される。特定の状況に適当な投薬量の決定は、医師の技術の範囲内である。一般に、治療は、その化合物の最適用量未満の少ない投薬量で開始される。その後、この投薬量は、その状況下で最適な効果に達するまで、少しずつ増やされる。本発明の1実施態様ではこの投薬量は、0.001%〜10%w/vである。他の実施態様では、この投薬量の範囲は、0.1%〜5%w/vである。他の実施態様では、この投薬量の範囲は、目1個あたり、10〜1000μgである。他の実施態様では、この投薬量の範囲は、目1個あたり、75〜150μgである。
【0149】
他の投与様式には、投薬量および投薬間隔は、治療する特定の臨床徴候に有効な投与化合物のレベルを提供するために、個々に調節できる。例えば、もし、急性鎌状赤血球発作が最も優勢な臨床的症状であるなら、1実施態様では、本発明の化合物は、比較的に高い濃度で、1日数回、投与できる。あるいは、もし、患者が、稀な周期的または不規則な基準で、周期的な鎌状赤血球発作だけを示すなら、本発明の化合物を最小有効濃度で投与すること、また、それ程頻繁ではない投与レジメンを使用することが望まれ得る。これは、個体の鎌状赤血球症の重症度と釣り合った治療レジメンを提供する。
【0150】
本明細書中で提供した教示を使用して、著しい毒性を引き起こさずかつ特定の患者が示す臨床徴候を治療するのに全く有効である予防または治療レジメンが計画できる。この計画には、化合物の効力、相対的なバイオアベイラビリティ、患者の体重、有害な副作用の存在および重症度、好ましい投与様式および選択した薬剤の毒性プロフィールを考慮した活性化合物の慎重な選択が関与している。
【0151】
(化合物の毒性)
特定の化合物についての毒性と治療効果との比は、その治療指数であり、LD50(集団の50%を殺す化合物の量)とED50(集団の50%に有効な量)との比として、表わすことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。細胞培養アッセイおよび/または動物研究から得られた治療指数は、ヒトで使用する投薬量の範囲を策定する際に、使用できる。このような化合物の投薬量は、好ましくは、殆どまたは全く毒性がないED50を含む血漿濃度の範囲内にある。この投薬量は、使用する投薬形態および利用する投与経路に依存して、この範囲内で変わり得る。例えば、Finglら、In:THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS,Ch.1,p.l,1975を参照。その正確な処方、投与経路および投薬量は、患者の健康状態および化合物を使用する特定の方法を考慮して、個々の医師により選択できる。
【0152】
(III.中間体コンダクタンス(カルシウム活性化カリウムチャンネル)におけるイオン流れを減少するための方法)
上記に詳細に考察される化合物および薬学的処方物に加えて、本発明は、本発明の化合物が用途を見出す多数の方法を提供する。それらの方法としては、中間体コンダクタンス(カルシウム活性化カリウムチャンネル)およびチャンネル活性化合物の基本的機構、薬物速度論、薬物活性、疾患起源、および疾患の進行などを探索するための実験室状況において使用される方法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0153】
従って、別の局面において、本発明は、細胞のカリウムフラックスの阻害する方法を提供する。この方法は、細胞を、有効量の本発明化合物と接触させる工程を包含する。
【0154】
本発明のこの局面は、広範囲の用途を有するが、この局面は、カリウムフラックスの基礎となる基本的機構およびこのフラックスの調節する因子の活性機構の研究のための様式として、好ましい。さらに、本発明の化合物は,カリウムフラックスを調節する新規な因子の発見におけるツールとして利用され得る。例えば、本発明の化合物は、カリウムフラックスの推定インヒビターの効力を試験するためのアッセイ(例えば、競合アッセイ)において利用され得る。本発明のこれらの方法は、インビトロおよびインビボの両方で実施され得る。本発明に従うアッセイは、例えば、当該分野で認識されている方法を、本発明の化合物をその方法に組み込むことが可能であるように改変することによって、実行され得る。そのような改変は、十分に当業者の範囲内にある。
【0155】
本発明のこの局面において提供される方法はまた、中間体コンダクタンス(カルシウム活性化カリウムチャンネル)を通るイオンフラックスを調節することによって、またはカリウムチャンネルをブロックすることにより作用する治療剤に対して患者が応答するか否かを決定するために、処理され得る。特に、患者の細胞サンプルが得られ得、本発明の化合物と接触され得、そしてイオンフラックスが、本発明の化合物の非存在下で細胞のイオンフラックスと比較して測定され得る。イオンフラックスの減少は、代表的には、患者が、イオンチャンネル開放剤の治療レジメンに対して応答性であることを示す。
【0156】
(IV.中間体コンダクタンス(カルシウム活性化カリウムチャンネル)により媒介される状態を処置するための方法)
別の好ましい実施形態において、この方法は、カリウムフラックスを調節することにより正に影響され得る状態を処置または予防するために使用される。現在好ましい実施形態において、この状態は、鎌状赤血球症または緑内障、および炎症である。例えば、鎌状赤血球症において、本発明は、赤血球脱水を減少するための方法を提供する。この方法は、赤血球を、有効量の本発明の化合物と接触させる工程を包含する。本発明のこの局面は、一定範囲の目的(例えば、赤血球脱水機構の研究、赤血球脱水を阻害または逆転する化合物の調査、および赤血球脱水に関連する状態の処置もしくは予防が挙げられる)のために使用され得る。
【0157】
別の局面において、本発明は、鎌状細胞疾患を処置または予防する方法を提供する。この方法は、鎌状赤血球を罹患している被験体に、治療上有効な量の本発明の1種以上の化合物を、その疾患の影響を軽減する際に有用な他の1種以上の因子とともにかまたはそのような因子を伴わずに投与する工程を包含する。本発明のこの局面は、急性鎌状細胞事象の発症を防止するかまたはこれらの事象の影響を軽減するために、利用され得る。この方法は、本発明の化合物自体を使用し得るか、または好ましくは、本発明の薬学的処方物を利用し得る。関連する投与様式、投与量レベルおよび投与頻度の選択が、上記で考察される。
【0158】
以下の実施例は、限定ではなく例示の目的で、提供されている。当業者は、種々の重要でないパラメータを変えたり修正したりして類似の結果が得られることを認識している。
【実施例】
【0159】
実施例1〜3は、本発明の化合物を合成し性質決定する方法を説明する。本発明の化合物は、これらの実施例で詳述する方法を使用して、実質的に純粋な形状で、単離した。
【0160】
実施例4は、本発明の化合物の活性を決定するルビジウムフラックスアッセイの使用を説明する。
【0161】
以下の実施例では、特に明記しない限り、温度は、摂氏(℃)で示される;操作は、室温または外界温度(典型的には、約18〜25℃の範囲)で実行した;溶媒の蒸発は、60℃までの浴温で、減圧下(典型的には、4.5〜30mmHg)にて、ローターリーエバポレーターを使用して、実行した。反応の過程は、典型的には、TLCにより追跡し、そして反応時間は、例示のためにのみ、提供している;融点は、補正されていない;生成物は、良好なH−NMRおよび/または微量分析データを示した;収量は、例示のためにのみ、提供している;そして以下の通常の略語もまた、使用される:rt(室温、約25℃)、mp(融点)、L(リットル)、mL(ミリリットル)、mmol(ミリモル)、g(グラム)、mg(ミリグラム)、min(分)およびh(時間)。
【0162】
(実施例1)
(1.1 2−(3−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホニルアミノ)−シクロヘキサ−1−エンカルボン酸メチルエステル(31))
2−アミノ−シクロヘキサ−1−エンカルボン酸メチルエステル(530mg、3.4mmol)のピリジン(4mL)攪拌溶液に、塩化3−トリフルオロメチルスルホニル(544μL、3.4mmol)を滴下した。室温で18時間後、減圧下にて溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル;3:1)により、無色オイルとして、所望生成物が得られ、これは、放置すると、固化した(524mg、42%);
【0163】
【化23A】

(1.2 N−(2−フラン−2−イル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホンアミド(76))
(スキーム1)
【0164】
【化24】

2−ヨードアニリン(200mg、0.913mmol)およびフラン−2−ボロン酸(107mg、0.959mmol)を、エタノール2mL中で混ぜ合わせ、そして30分間攪拌した。その反応混合物に、連続的に、酢酸パラジウム(6mg、0.03mmol)、トリフェニルホスフィン(22mg、0.82mmol)および2N 炭酸ナトリウム水溶液(0.57mL、1.1mmol)を加えた。その反応物を75℃まで加熱し、そして5時間攪拌した。次いで、それを、55℃まで冷却し、さらに14時間攪拌した。この反応混合物を室温まで冷却した後、水(5mL)を加え、その混合物を酢酸エチル(2×10mL)で抽出した。その有機層を合わせ、乾燥した(NaSO)。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル;9:1)にかけると、白色固形物(73mg、50%)として、所望生成物(A)が得られた:
【0165】
【化24A】

2−フラン−2−イル−フェニルアミン(A)(25mg、0.16mmol)のアセトニトリル(0.5mL)溶液に、塩化3−トリフルオロメチルスルホニル(42mg、0.17mmol)およびピリジン(381L、0.47mmol)のアセトニトリル(2mL)溶液を加えた。18時間後、炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液(5mL)を加え、その混合物を酢酸エチル(2×10mL)で抽出した。その有機層を合わせ、そして乾燥した(NaSO)。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル;9:1)にかけると、白色固形物(40mg、70%)として、所望生成物(76)が得られた。
【0166】
【化24B】

(1.3 N−[2−(3−メチル−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル)−フェニル]−3−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホンアミド(82))
(スキーム2)
【0167】
【化25】

アセトニトリル(0.10mL、2.0mmol)およびヒドロキシルアミン(0.49mL、8.0mmol)をエタノール(10mL)中で混ぜ合わせた。その混合物を、3時間にわたって、60℃まで加熱した。室温まで冷却した後、全ての溶媒を除去して、白色固形物として、粗アミジン(B)を得た。粗アミジン(B)およびジイソプロピルエチルアミン(0.70mL、4.0mmol)をジクロロメタン(10mL)中で混ぜ合わせ、そして30分間攪拌した。その反応混合物に、塩化2−ニトロベンゾイル(0.32mL、2.4mmol)のジクロロメタン(2mL)溶液をゆっくりと加えた。18時間後、この混合物に水(5mL)を加え、その有機物をジクロロメタン(2×5mL)で抽出し、合わせ、そして乾燥した(NaSO)。酢酸エチルおよびヘキサンから再結晶すると、E−異性体およびZ−異性体の混合物(440mg、98%)として、黄色固形物として、(C)が得られた:
【0168】
【化25A】

化合物(C)(440mg、1.97mmol)のテトラヒドロフラン(5mL)溶液に、フッ化テトラブチルアンモニウムのテトラヒドロフラン(0.66mL、0.66mmol)1.0M溶液を加えた。その反応混合物を18時間攪拌し、その後、水(5mL)を加えた。それらの有機物を酢酸エチル(2×5mL)で抽出し、合わせ、そして乾燥した(NaSO)。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル;4:1)にかけると、白色固形物(386mg、95%)として、(D)が得られた:
【0169】
【化25B】

化合物(D)(100mg、0.487mmol)および氷酢酸(0.12mL、2.1mmol)を水1.5mLおよびエタノール3.0mLに溶解し、次いで、加熱還流した。浴から反応容器を除去して、それを僅かに冷却させ、そして鉄(109mg、1.95mmol)を少しずつ加えた。その反応混合物を、再度、20分間加熱還流し、その後、この反応物を室温まで冷却し、そして30%水酸化アンモニウム水溶液でpH約9まで塩基化した。この混合物をセライトで濾過し、そしてローターリーエバポレーションでエタノールを除去した。その残留物を酢酸エチル(2×5mL)で抽出し、そして乾燥した(NaSO)。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル;4:1)にかけると、ベージュ色固形物(39mg、46%)として、(E)が得られた。
【0170】
【化25C】

アニリンとして化合物(E)(30mg、0.17mmol)を使用して、(76)の手順で記述されているようにして、化合物(82)を調製した。精製は、カラムクロマトグラフィー(これは、溶離液として、5:1のヘキサン:酢酸エチルを使用する)により、達成した。これにより、灰白色固形物として、所望生成物(33mg、50%)が得られた。
【0171】
(1.4 N−[4,5−ジメトキシ−2−(3−メチル−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル)−フェニル−3−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホンアミド(41))
(スキーム3)
【0172】
【化26】

化合物(C)の手順で記述されているようにして、化合物(F)を調製した。この塩化3,4−ジメトキシ−5−ニトロベンゾイルは、触媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを使用して、ジクロロメタン中で、3,4−ジメトキシ−5−ニトロ安息香酸(585mg、2.57mmol)と塩化オキサリル(0.36mL、4.1mmol)とを反応させることにより、調製した。得られた混合物を、室温で、1時間攪拌し、揮発性液体を除去し、得られた酸塩化物を、さらに精製することなく、使用した。
【0173】
(F)の精製は、カラムクロマトグラフィー(これは、1:4のヘキサン:酢酸エチルに続いて、100%酢酸エチルを使用する)により、達成した。これにより、E−およびZ−異性体の混合物(397mg、73%)として、(F)が得られた:
【0174】
【化26A】

化合物(D)の手順で記述されているようにして、化合物Gを調製した。精製は、溶離液として、1:1のヘキサン:酢酸エチルを使用して、達成した。これにより、黄色固形物(281mg、76%)として、所望生成物が得られた:
【0175】
【化26B】

(1.5 N−[2−(3−メトキシ−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル)−フェニル]−3−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホンアミド(83))
【0176】
【化27】

冷却した(0℃)2N水酸化ナトリウム水溶液(7.0mL、14mmol)に、O−メチルイソ尿素塩酸塩(1)(553mg、5.00mmol)を加えた。その反応混合物に、塩化2−ニトロベンゾイル(0.66mL、5.0mmol)をゆっくりと加えた。1.5時間後、それらの有機物を酢酸エチル(2×10mL)で抽出し、合わせ、そして乾燥した(NaSO)。ローターリーエバポレーションにより溶媒を除去すると、白色固形物として、粗製物(J)(776mg、70%)が得られた。
【0177】
【化27A】

化合物(J)(250mg、1.12mmol)をエーテル(3mL)に懸濁し、そして0℃まで冷却した。次いで、次亜塩素酸第三級ブチル(0.14mL、1.2mmol)のエーテル(0.5mL)溶液をゆっくりと加えた。その混合物を30分間攪拌した。2N水酸化ナトリウム溶液を加え、この反応混合物を室温まで温め、そして1時間攪拌した。このエーテルをローターリーエバポレーションで除去し、そしてメタノール(2mL)を加えた。次いで、その溶液を、5時間にわたって、60℃まで温め、次いで、室温まで冷却した。得られた溶液を酢酸エチル(2×5mL)で抽出した。その有機層を合わせ、そして乾燥した(NaSO)。精製は、カラムクロマトグラフィー(これは、溶離液として、8:1に次いで1:1のヘキサン:酢酸エチルを使用する)により、達成した。白色固形物(89mg、36%)として、化合物(K)を得た。
【0178】
【化27B】

化合物(K)(89mg、0.402mmol)をジオキサン(1mL)に溶解した。別の容器にて、硫化ナトリウム(242mg、1.01mmol)を水(1mL)に溶解した。両方の溶液を80℃で加熱し、その水溶液を上記ジオキサン溶液に加えた。20分後、その反応物を室温まで冷却した。その有機物をEtOAc(3×10mL)で抽出し、合わせ、そして乾燥した(NaSO)。得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル;8:1)で精製すると、白色固形物(52mg、67%)として、化合物(L)が得られた。
【0179】
【化27C】

(L)(26mg、0.14mmol)およびピリジン(33、uL、0.41mmol)のアセトニトリル(0.5mL)溶液に、塩化3−(トリフルオロメチル)スルホニル(37mg、0.15mmol)のアセトニトリル(1mL)溶液0.3mLを加え、得られた溶液を15時間攪拌した。その混合物を酢酸エチル(5mL)で希釈し、1N塩酸で洗浄し、そして乾燥した(NaSO)。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル;10:1)で精製すると、白色固形物(12mg、22%)として、所望生成物(83)が得られた。
【0180】
【化27D】

(実施例2)
(2.1 オキサゾール官能化ビスアリールスルホンアミドを調製する一般手順)
スキーム5で示すように、1,2,3−トリアゾール(1当量)およびヒューニッヒ塩基(1.2当量)のDCM攪拌溶液に、室温で、酸塩化物(M)(1当量)のDCM溶液をゆっくりと加えた。TLCにより変換が完結したことが明らかとなった後、この溶液を水(5mL/1mmol)で洗浄し、その有機層を乾燥した(NaSO)。減圧下にて溶媒を除去した。その粗製物質をスルファロン(5mL/1mmol)に溶解し、そして2〜10時間にわたって、180〜200℃まで加熱した。その溶液を水(15mL/1mmol)で希釈し、生成物(N)をジエチルエーテル(2×5mL/1mmol)で抽出した。それらの有機層を合わせ、そして乾燥した(NaSO)。そのニトロ基の他の置換基での選択的な還元は、スキーム5で強調した方法の1つまたはそれ以上を使用して、達成できる。アニリン(O)の塩化アリールスルホニルとのカップリングは、室温または高温のいずれかで、アセトニトリル中のピリジンを使用して、達成した。約20〜60%の収率で、オキサゾール置換ビスアリールスルホンアミド(P)を単離した。
【0181】
(スキーム5)
【0182】
【化28】

(2.2 N−(4−メチル−2−オキサゾール−2−イル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホンアミド(77))
【0183】
【化28A】

(2.3 N−(2−オキサゾール−2−イル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホンアミド(74)
【0184】
【化28B】

(2.4 N−(4−メトキシ−2−オキサゾール−2−イル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホンアミド(40))
【0185】
【化28C】

(実施例3)
(3.1 アリールベンゼンスルホンを調製する一般手順)
(スキーム6)
【0186】
【化29】

室温で、DMSO中にて、KCOを使用して、チオフェノールを官能化臭化ベンジル(これは、トリオイル誘導体から臭素化により調製したか、または市販の臭化ベンジルの官能化により調製したか、いずれかである)と反応させることにより、(S)型のチオエーテルを調製した。mCPBAを使用してチオエーテル(S)を酸化すると、高収率で、対応するスルホン(T)が得られた。
【0187】
(3.2 2−(3−トリフルオロメチル−フェニルスルファニルメチル)−安息香酸メチルエステル(96))
【0188】
【化29A】

(3.3 2−(3−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホニルメチル)−安息香酸メチルエステル(95))
【0189】
【化29B】

(実施例4)
実施例4は、本発明の化合物による赤血球におけるカルシウム活性化カリウムチャンネル(Gardosチャンネル)の阻害を測定するためのバイオアッセイを記載する。
【0190】
(4.1.材料および方法)
ヘパリン処理した全血を、改変フラックス緩衝液(MFB:140mM NaCl;5mM KCl;10mM Tris;0.1mM EGTA;pH=7.4)で3回洗浄した。赤血球(RBC)は、約10%ヘマトクリットであった。その後、洗浄した細胞を、86Rb(5μCi/mL)とともに3時間インキュベートした。このインキュベーション期間の後、RBCを、冷MFBで3回洗浄した。その後、86Rb負荷RBCを、本発明の試験化合物とともに10分間インキュベートした。その後、86Rbフラックスを、10mM CaClおよび100μM A23187(カルシウムイオノフォア)を含むMDB溶液10μL/mLを添加することによって、開始した。これは、インキュベーション培地において、最終濃度100μM CaClおよび10μM A23187を生じた。細胞を10分間インキュベートし、遠心分離し、そして上清を取り出した。サンプルを、Wallace Microbeta液体シンチレーションカウンターにおいてチェレンコフ放射によって計数した。総RBC 86Rb含量を、RBCを水に溶解した後でエタノール:クロロホルムの50:50混合物を使用することによって、決定した。20分間微小遠心機で遠心分離した後、水相および有機層を分離し、水相を除去し、そして計数した。流出を、初期細胞86Rb含量の割合として表す。
【0191】
(4.2 結果)
上記のバイオアッセイは、本発明の化合物が、Gardosチャンネルの優れたインヒビターであることを示した。阻害研究の結果が、上記表1に示される。
【0192】
本明細書中に記載される実施例および実施形態は、例示のみを目的とすること、そしてそれを考慮した種々の改変または変化が当業者に示唆されており、本明細書の趣旨および本文ならびに添付の特許請求の範囲の範囲内に包含されるべきであることが、理解される。本明細書中で引用されるすべての刊行物、特許および特許出願は、すべての目的のためにその全体が参考として援用される。
【0193】
本明細書中で記述した実施例および実施態様は、例示の目的のためにすぎず、それらに照らした種々の改良または変更は、当業者に示唆され、本願の精神および範囲内に含まれ、そして添付の請求の範囲内であることが理解できるはずである。全ての出版物、特許および特許出願の内容は、全ての目的について、本明細書中で参考として援用されている。
【図面の簡単な説明】
【0194】
【図1】図1は、本発明の代表的な化合物の構造を示す。









【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造を有する化合物:
【化1】

ここで、
環系Zは、置換または非置換アリール、置換または非置換C〜C炭素環、置換および非置換ヘテロアリール、および置換または非置換5〜7員ヘテロシクロアルキルからなる群から選択されるメンバーである;
Aは、−NHS(O)−、−S(O)NH−、−C(R)S(O)−、−S(O)C(R)−、−C(R)NHS(O)−、−S(O)NHC(R)−、−C(R)S(O)NH−および−HNS(O)C(R)−から選択されるメンバーであり、
ここで、
nは、0〜2の整数から選択される;
は、置換または非置換アリール、置換または非置換(C〜C)炭素環、置換または非置換ヘテロアリール、および置換または非置換5〜7員ヘテロシクロアルキルからなる群から選択されるメンバーである;
は、COOR、置換または非置換2−フラン、置換または非置換2−チアゾール、および
【化2】

から選択されるメンバーであり、
ここで、
は、置換または非置換C〜Cアルキル、および−CFからなる群から選択されるメンバーである;
Xは、−N=N−、−N=C(R)−、−C(R)=N−、−C(R)−C(R)−および−C(R)=C(R)−からなる群から選択され、ここで、
およびRは、水素、置換および非置換低級アルキル、−ORおよび−CFからなる群から別個に選択されるメンバーであり、
ここで、
は、水素、および置換または非置換低級アルキルから選択されるメンバーである;
Yは、O、NR11またはSから選択されるメンバーであり、ここで、R11は、低級アルキルおよび−CFから選択されるメンバーである、
化合物。
【請求項2】
Zが、置換または非置換フェニル、および置換または非置換チオフェンからなる群から選択されるメンバーである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、置換または非置換2−フラン、および
【化3】

からなる群から選択されるメンバーであり、
ここで、
Xが、−N=C(R)−、−C(R)=N−、−C(R)−C(R)−および−C(R)=C(R)−からなる群から選択されるメンバーである;そして
Yが、OおよびSからなる群から選択されるメンバーである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が、
【化4】

からなる群から選択されるメンバーであり、
ここで、
、RおよびRが、H、ハロゲン、置換または非置換C〜Cアルキル、OR10、−CFおよびNOからなる群から別個に選択されるメンバーである;そして
10が、H、低級アルキル、置換低級アルキルおよび−CFからなる群から選択されるメンバーである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
が、
【化5】

であり、ここで、
13が、ハロゲン、置換または非置換C〜Cアルキル、CFおよびOCFから選択されるメンバーである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
図1の構造を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
薬学的に受容可能な賦形剤と次式を有する化合物とを含有する、医薬処方物:
【化6】

ここで、
環系Zは、置換または非置換アリール、置換または非置換C〜C炭素環、置換および非置換ヘテロアリール、および置換または非置換5〜7員ヘテロシクロアルキルからなる群から選択されるメンバーである;
Aは、−NHS(O)−、−S(O)NH−、−C(R)S(O)−、−S(O)C(R)−、−C(R)NHS(O)−、−S(O)NHC(R)−、−C(R)S(O)NH−および−HNS(O)C(R)−から選択されるメンバーであり、
ここで、
nは、0〜2の整数から選択される;
は、置換または非置換アリール、置換または非置換(C〜C)炭素環、置換または非置換ヘテロアリール、および置換または非置換5〜7員ヘテロシクロアルキルからなる群から選択されるメンバーである;
は、COOR、置換または非置換2−フラン、置換または非置換2−チアゾール、および
【化7】

から選択されるメンバーであり、
ここで、
は、置換または非置換C〜Cアルキル、および−CFからなる群から選択されるメンバーである;
Xは、−N=N−、−N=C(R)−、−C(R)=N−、−C(R)−C(R)−および−C(R)=C(R)−からなる群から選択され、ここで、
およびRは、水素、置換および非置換低級アルキル、−ORおよび−CFからなる群から別個に選択されるメンバーであり、
ここで、
は、水素、および置換または非置換低級アルキルから選択されるメンバーである;
Yは、O、NR11またはSから選択されるメンバーであり、ここで、R11は、低級アルキルおよび−CFから選択されるメンバーである、
医薬処方物。
【請求項8】
前記化合物が、図1の構造を有する、請求項7に記載の医薬処方物。
【請求項9】
細胞のカリウムフラックスを阻害する方法であって、該方法は、該フラックスを阻害するのに有効な量で、該細胞を、次式を有する化合物の有効量と接触させる工程を包含する:
【化8】

ここで、
環系Zは、置換または非置換C〜C炭素環、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、および置換または非置換5〜7員ヘテロシクロアルキルからなる群から選択されるメンバーである;
Aは、−NHS(O)−、−S(O)NH−、−C(R)S(O)−、−S(O)C(R)−、−C(R)NHS(O)−、−S(O)NHC(R)−、−C(R)S(O)NH−および−HNS(O)C(R)−から選択されるメンバーであり、
ここで、
nは、0〜2の整数から選択される;
は、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換(C〜C)炭素環、および置換または非置換5〜7員ヘテロシクロアルキルからなる群から選択されるメンバーである、
方法。
【請求項10】
前記化合物が、図1の構造を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
細胞内の中間コンダクタンスカリウムチャンネルによってカリウムイオン流れを低下させることにより、それが必要な被験体の眼圧を低下させる方法であって、該方法は、中間コンダクタンス、カルシウム活性化カリウムチャンネルによってカリウムイオン流れを低下させるのに十分な量で、該被験体に、次式を有する化合物を投与して、それにより、眼圧を低下させる工程を包含する:
【化9】

ここで、
環系Zは、置換または非置換アリール、置換または非置換C〜C炭素環、置換および非置換ヘテロアリール、および置換または非置換5〜7員ヘテロシクロアルキルからなる群から選択されるメンバーである;
Aは、−NHS(O)−、−S(O)NH−、−C(R)S(O)−、−S(O)C(R)−、−C(R)NHS(O)−、−S(O)NHC(R)−、−C(R)S(O)NH−および−HNS(O)C(R)−から選択されるメンバーであり、
ここで、
nは、0〜2の整数から選択される;
は、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換(C〜C)炭素環、および置換または非置換5〜7員ヘテロシクロアルキルからなる群から選択されるメンバーである、
方法。
【請求項12】
前記化合物が、図1の構造を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記被験体が、高い眼圧により特徴付けられる緑内障を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、高い眼圧により特徴付けられる緑内障を予防する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記被験体に、縮瞳薬、β遮断薬、α−2−アゴニスト、炭酸脱水酵素阻害剤、βアドレナリン作動性遮断薬、プロスタグランジンおよびドコサノイドからなる群から投与される1つ以上の薬剤が投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
赤血球の脱水を防止または遅延する方法であって、該方法は、該脱水を防止または遅延するのに有効な量で、該赤血球を、次式を有する化合物と接触させる工程を包含する:
【化10】

ここで、
環系Zは、置換または非置換アリール、置換および非置換ヘテロアリール、および置換または非置換5〜7員ヘテロシクロアルキルからなる群から選択されるメンバーである;
Aは、−NHS(O)−、−S(O)NH−、−C(R)S(O)−、−S(O)C(R)−、−C(R)NHS(O)−、−S(O)NHC(R)−、−C(R)S(O)NH−および−HNS(O)C(R)−から選択されるメンバーであり、
ここで、
nは、0〜2の整数から選択される;
は、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換(C〜C)炭素環、および置換または非置換5〜7員ヘテロシクロアルキルからなる群から選択されるメンバーである、
方法。
【請求項17】
前記化合物が、図1の構造を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
鎌状赤血球症を治療または予防する方法であって、該方法は、鎌状赤血球症に罹っている被験体に、次式を有する化合物の治療有効量を投与する工程を包含する:
【化11】

ここで、
環系Zは、置換または非置換アリール、置換または非置換C〜C炭素環、置換および非置換ヘテロアリール、および置換または非置換5〜7員ヘテロシクロアルキルからなる群から選択されるメンバーである;
Aは、−NHS(O)−、−S(O)NH−、−C(R)S(O)−、−S(O)C(R)−、−C(R)NHS(O)−、−S(O)NHC(R)−、−C(R)S(O)NH−および−HNS(O)C(R)−から選択されるメンバーであり、
ここで、
nは、0〜2の整数から選択される;
は、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換(C〜C)炭素環、および置換または非置換5〜7員ヘテロシクロアルキルからなる群から選択されるメンバーである、
方法。
【請求項19】
前記化合物が、図1の構造を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
被験体における炎症および異常な細胞増殖から選択されるメンバーである疾患状態を治療または予防する方法であって、該方法は、該被験体に、次式を有する化合物の治療有効量を投与する工程を包含する:
【化12】

ここで、
環系Zは、置換または非置換アリール、置換または非置換C〜C炭素環、置換および非置換ヘテロアリール、および置換または非置換5〜7員ヘテロシクロアルキルからなる群から選択されるメンバーである;
Aは、−NHS(O)−、−S(O)NH−、−C(R)S(O)−、−S(O)C(R)−、−C(R)NHS(O)−、−S(O)NHC(R)−、−C(R)S(O)NH−および−HNS(O)C(R)−から選択されるメンバーであり、
ここで、
nは、0〜2の整数から選択される;
は、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換(C〜C)炭素環、および置換または非置換(C〜C)ヘテロシクロアルキルからなる群から選択されるメンバーである、
方法。
【請求項21】
前記炎症が、呼吸器炎症である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記呼吸器炎症が、急性呼吸窮迫症候群、慢性閉塞性肺疾患および喘息から選択されるメンバーである、請求項21に記載の方法。

【公表番号】特表2006−502141(P2006−502141A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−529456(P2004−529456)
【出願日】平成15年8月15日(2003.8.15)
【国際出願番号】PCT/US2003/025587
【国際公開番号】WO2004/016221
【国際公開日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【出願人】(505053969)アイカジェン, インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】