説明

カルボキシペプチダーゼUの阻害が有用な疾患を治療するための環状アナベノペプチン型のペプチドの使用、新規アナベノペプチン誘導体、および、それらの中間体

カルボキシペプチダーゼUの阻害が有用である状態を治療または予防するための医薬品を製造する方法における、式(I):


で示される化合物;具体的な式(I)で示される化合物、および、式(I)で示される化合物を含む組成物、および、製薬上許容できるアジュバント、希釈剤またはキャリアーの使用。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、塩基性カルボキシペプチダーゼ、より詳細にはカルボキシペプチダーゼUを阻害するため、カルボキシペプチダーゼUの阻害が有用である病気(例えば、血液および組織における血栓症および血液凝固性亢進、アテローム性動脈硬化症、癒着、皮膚の瘢痕化、ガン、線維化した状態、炎症性疾患、および、体内のブラジキニンのレベルを維持または強化することによって利益を得る疾患)の予防および治療で用いることができる新規化合物、および、それらの製薬上許容できる塩に関する。さらなる態様において、本発明は、治療に使用するための本発明の化合物;このような新しい化合物の製造プロセス;活性成分として少なくとも1種の本発明の化合物、または、それらの製薬上許容できる塩を含む医薬組成物;および、上述の医学的用途のための医薬品の製造におけるこれら活性化合物の使用に関する。
【0002】
線維素溶解は、プラスミンによるフィブリン分解に至る一連の酵素反応の結果である。プラスミノゲンの活性化が、線維素溶解における中心的なプロセスである。プラスミンを生産するためのプラスミノゲン切断は、プラスミノゲン活性化因子、組織型プラスミノゲン活性化因子(t−PA)、または、ウロキナーゼ型プラスミノゲン活性化因子(u−PA)によって達成される。フィブリンの最初のプラスミン分解により、プラスミノゲンに関する高い親和性の結合部位として役立つカルボキシ末端リシン残基が生成する。フィブリンに結合したプラスミノゲンは、遊離のプラスミノゲンよりもかなり容易にプラスミンに活性化されるため、このメカニズムは、線維素溶解の正のフィードバック調節を提供する。
【0003】
線維素溶解に対する内因性の阻害剤の1つは、カルボキシペプチダーゼU(CPU)である。CPUはまた、血漿のカルボキシペプチダーゼB、線維素溶解阻害剤(TAFIa)を活性化することができる活性トロンビン、カルボキシペプチダーゼR、および、誘導型カルボキシペプチダーゼ活性としても既知である。CPUは、凝固および線維素溶解の際に、トロンビン、トロンビン−トロンボモジュリン複合体またはプラスミンのようなタンパク質分解酵素の作用によりそれらの前駆体プロCPUから形成される。CPUは、フィブリン断片のカルボキシ末端で塩基性アミノ酸を切断する。次に、カルボキシ末端リシンが失われ、それによりプラスミノゲンのためのリシン結合部位が失われ、線維素溶解を阻害するように作用する。有効なカルボキシペプチダーゼU阻害剤は、プラスミノゲンのためのリシン結合部位の損失を阻害し、それによりプラスミン形成率を増加させることによって、線維素溶解を容易にすると予想される。
【0004】
2−メルカプトメチル−3−グアニジノエチルチオプロパン酸は、カルボキシペプチダーゼN阻害剤として報告されている。さらに近年、この化合物は、CPUを阻害することが示されている(Hendriks,D.等,Biochimica et Biophysica Acta,1034(1990年)86〜92)。
【0005】
グアニジノエチルメルカプトコハク酸は、カルボキシペプチダーゼN阻害剤として報告されている。さらに近年、この化合物は、CPUを阻害することが示されている(Eaton,D. L.等,The Journal of Biological Chemistry,266(1991年)21833〜21838)。
【0006】
CPU阻害剤は、WO00/66550、WO00/66557、WO03/013526、および、WO03/027128で開示されており、CPU阻害剤とトロンビン阻害剤とを含む医薬製剤は、WO00/66152で開示されている。血漿カルボキシペプチダーゼBの阻害剤は、WO01/19836、および、WO03/080631で開示されている。TAFIaの阻害剤は、WO02/14285、WO03/061652、および、WO03/061653で開示されている。
【0007】
環状アナベノペプチン(Anabaenopeptin)型のペプチドが以下で開示されている: Tetrahedron Letters,第36巻,9号,1511〜1514頁(1995年);J.Org.Chem.(1997年)62 6199〜6203;Tetrahedron Letters,第36巻,33号,5933〜5936頁(1995年);J.Nat.Prod.(1996年)59 570〜575;Tetrahedron Letters,第38巻,31号,5525〜5528頁(1997年);J.Nat.Prod.(1997年)60 139〜141;Tetrahedron 54(1998年)6719〜6724;Bioorganic&Medicinal Chemistry Letters (1999年)1243〜1246;Tetrahedron 56(2000年)725〜733;J.Nat.Prod.(2000年)63 1280〜1282;J.Nat.Prod.(2001年)64 8号 1053;Tetrahedron 58(2002年)6863〜6871;および、J.Nat.Prod.(2002年)65 1187〜1189。
【0008】
環状アナベノペプチン型のペプチドの合成が、以下で開示されている:Journal of Organic Chemistry,第62巻,6199〜6203頁(1997年);および、Angewandte Chemie International Edition,第35巻,12号,1336〜1338頁(1996年)。現在、式(I):
【0009】
【化1】

【0010】
で示される化合物、または、それらの製薬上許容できる塩もしくは溶媒和物、または、このような塩の溶媒和物が、カルボキシペプチダーゼU阻害剤として特に有効であり、それゆえに、カルボキシペプチダーゼUの阻害が有用である疾患を治療または予防するための医薬品として有用であることがわかっており、例えば、以下を治療または予防するための医薬品として有用である:血液および/または組織における血栓症および/または血液凝固性亢進;アテローム性動脈硬化症;癒着;皮膚の瘢痕化;ガン;線維化した状態;炎症性疾患;哺乳動物(例えばヒト)の体内におけるブラジキニンのレベルを維持または強化することによって利益を得る疾患;プロテインC耐性;アンチトロンビンIII、プロテインC、プロテインSまたはヘパリン補体IIの遺伝性または後天性な欠損症;循環性ショック、または、敗血症性ショック;循環抗リン脂質抗体;高ホモシステイン血症;ヘパリン起因性血小板減少症;線維素溶解における欠陥;静脈血栓症;肺塞栓症;動脈血栓症(例えば、心筋梗塞、不安定狭心症、血栓症に起因する卒中、または、末梢動脈血栓症における);全身性塞栓症(一般的には、心房細動の際に心房から、または、壁内心筋梗塞の後に左心室から);血栓崩壊の後の再閉塞および再狭窄(すなわち血栓症)の予防;経皮経管的介入(PTI)、および、冠動脈バイパス手術;再血栓化の予防(一般的に、顕微手術および血管手術の後);細菌、多数の外傷、中毒またはその他のあらゆるメカニズムによって引き起こされる汎発性血管内凝固;血液が、体内の異種表面(例えば血管移植片、血管ステント、血管カテーテル、機械的および生物学的な人工弁、または、その他のあらゆる医療用デバイス)と接触している場合の線溶療法;血液が、体外で医療用デバイスと接触している場合の線溶療法(例えば、人工心肺装置を用いた心臓血管手術の最中、または、血液透析中);アテローム硬化の進行、および/または、臓器移植(例えば腎臓移植)を受けた患者における移植による拒絶反応の予防;腫瘍の成熟と進行を阻害すること;線維症が寄与因子であるあらゆる状態(例えば、嚢胞性線維症、肺の線維症、例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)、成人の呼吸窮迫症候群(ARDS)、線維筋性形成異常、線維性肺疾患、または、目の手術の最中の眼内のフィブリン沈着);炎症(例えば喘息、関節炎、子宮内膜症、炎症性腸疾患、乾癬、または、アトピー性皮膚炎);神経変性疾患、例えばアルツハイマー病およびパーキンソン病;または、ブラジキニンのレベルを維持または強化することによって利益を得ることが知られている疾患(例えば高血圧、口峡炎、心不全、肺高血圧症、腎不全、または、臓器不全)。
【0011】
従って、本発明は、カルボキシペプチダーゼUの阻害が有用である疾患を治療または予防するための医薬品を製造する方法における、式(I)で示される化合物、または、それらの製薬上許容できる塩もしくは溶媒和物、または、このような塩の溶媒和物の使用を提供する:
【0012】
【化2】

【0013】
式中:
Xは、(CHY(CHであり;
mおよびnは、独立して、1、2、3、4、5、または、6であり;ただし、m+nは、6以下であり;
Yは、結合、O、S(O)、または、S−Sであり;
は、CO15、または、カルボン酸のアイソスター(isostere)、例えば、S(O)OH、S(O)NHR15、PO(OR15)OH、PO(OR15)NH、B(OR15、PO(R15)OH、PO(R15)NH、または、テトラゾールであり;
、R、R、RおよびRは、独立して、水素、C1〜6アルキル(場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、SH、S(O)H、S(O)(C1〜6アルキル)、OC(O)(C1〜4アルキル)、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、COOH、CONH、CONH(C1〜6アルキル)、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換され)、C3〜6シクロアルキル(C1〜4)アルキル(ここで、該シクロアルキル環は、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1〜4アルキル、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換される)、ヘテロシクリル(C1〜4)アルキル(ここで、該ヘテロシクリル環は、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1〜4アルキル、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換されている)、フェニル(C1〜4)アルキル(ここで、該フェニル環は、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1〜4アルキル、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換されている)、または、ヘテロアリール(C1〜4)アルキル(ここで、該ヘテロアリール環は、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1〜4アルキル、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換されている)であり;
pおよびqは、独立して、0、1または2であり;
、R、R、R10、R11、R12およびR13は、独立して、H、または、C1〜4アルキルであり;
14は、H、または、C1〜4アルキルであり;および、
15は、H、または、C1〜4アルキルであり;
ここで、上記カルボキシペプチダーゼUの阻害が有用である疾患の治療または予防は、例えば、以下の疾患の治療または予防である。すなわち、血液および/または組織における血栓症および/または血液凝固性亢進;アテローム性動脈硬化症;癒着;皮膚の瘢痕化;ガン;線維化した状態;炎症性疾患;哺乳動物(例えばヒト)の体内におけるブラジキニンのレベルを維持または強化することによって利益を得る疾患;プロテインC耐性;アンチトロンビンIII、プロテインC、プロテインSまたはヘパリン補体IIの遺伝性または後天性な欠損症;循環性ショック、または、敗血症性ショック;循環抗リン脂質抗体;高ホモシステイン血症;ヘパリン起因性血小板減少症;線維素溶解における欠陥;静脈血栓症;肺塞栓症;動脈血栓症(例えば、心筋梗塞、不安定狭心症、血栓症に起因する卒中、または、末梢動脈血栓症において);全身性塞栓症(一般的には、心房細動の際に心房から、または、壁内心筋梗塞の後に左心室から);血栓崩壊の後の再閉塞および再狭窄(すなわち血栓症)の予防;経皮経管的介入(PTI)、および、冠動脈バイパス手術;再血栓化の予防(一般的に、顕微手術および血管手術の後);細菌、多数の外傷、中毒またはその他のあらゆるメカニズムによって引き起こされる汎発性血管内凝固;血液が、体内の異種表面(例えば血管移植片、血管ステント、血管カテーテル、機械的および生物学的な人工弁、または、その他のあらゆる医療用デバイス)と接触している場合の線溶療法;血液が、体外で医療用デバイスと接触している場合の線溶療法(例えば、人工心肺装置を用いた心臓血管手術の最中、または、血液透析中);アテローム硬化の進行、および/または、臓器移植(例えば腎臓移植)を受けた患者における移植による拒絶反応の予防;腫瘍の成熟と進行を阻害すること;線維症が寄与因子であるあらゆる状態(例えば、嚢胞性線維症、肺の線維症、例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)、成人の呼吸窮迫症候群(ARDS)、線維筋性形成異常、線維性肺疾患、または、目の手術の最中の眼内のフィブリン沈着);炎症(例えば喘息、関節炎、子宮内膜症、炎症性腸疾患、乾癬、または、アトピー性皮膚炎);神経変性疾患、例えばアルツハイマー病およびパーキンソン病;または、ブラジキニンのレベルを維持または強化することによって利益を得ることが知られている疾患(例えば高血圧、口峡炎、心不全、肺高血圧症、腎不全、または、臓器不全等である)。
【0014】
本発明に関して、用語「治療」は、特にそれに反する指定がない限り、「予防」を含む。用語「治療的な」および「治療上の」は、それに従って理解されるものとする。
一態様において、本発明は、本明細書において説明されているように、血液および/または組織における血栓症および/または血液凝固性亢進;アテローム性動脈硬化症;線維化した状態;炎症性疾患;または、哺乳動物(例えばヒト)の体内におけるブラジキニンのレベルを維持または強化することによって利益を得る疾患を治療または予防するための医薬品を製造する方法における式(I)で示される化合物の使用を提供する。
【0015】
その他の態様において、本発明は、本明細書において説明されているように、血液および/または組織における血栓症および/または血液凝固性亢進;アテローム性動脈硬化症;線維化した状態;または、哺乳動物(例えばヒト)の体内におけるブラジキニンのレベルを維持または強化することによって利益を得る状態を治療または予防するための医薬品;例えば、血液および/または組織における血栓症および/または血液凝固性亢進を治療または予防するための医薬品を製造する方法における式(I)で示される化合物の使用を提供する。
【0016】
式(I)で示される化合物は、異性体の形態で存在し、本発明は、このような形態の全てと、それらの全ての比率の混合物を包含する。純粋な鏡像異性体、ラセミ体の混合物の双方、ならびに、2種の鏡像異性体の均一な混合物および不均一な混合物は本発明の範囲内である。また、当然ながら、全ての生じ得るジアステレオマーの形態もまた、本発明の範囲内であると理解される。
【0017】
式(I)で示される化合物は、塩の形態でもよい。適切な塩としては、酸付加塩が挙げられ、例えば塩酸塩、二塩化水素化物、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、アセト酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、または、p−トルエンスルホン酸塩である。また、塩としては、金属塩も挙げられ、例えば、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム、または、カリウム塩)、または、アルカリ土類金属塩(例えば、マグネシウム、または、カルシウム)である。
【0018】
用語C1〜4アルキルは、鎖中に1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分岐状のアルキル基を意味する。アルキルの例としては、メチル、エチル、−プロピル、イソプロピル−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、および、tert−ブチルが挙げられる。
【0019】
用語C1〜4アルコキシは、アルキル−O基(ここで、アルキルは直鎖または分岐鎖である)を意味し、および、例えば、メトキシ、および、エトキシが挙げられる。
ハロゲンとしては、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードが挙げられる(例えば、フルオロ、クロロ、または、ブロモである)。
【0020】
シクロアルキルは、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、または、シクロヘキシルである。
用語ヘテロシクリルは、炭素、および、窒素、酸素、または、硫黄から選択される少なくとも1個(例えば1または2個)の原子を含む非芳香環を意味する。ヘテロシクリルは、例えば、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、または、モルホリニルである。
【0021】
用語ヘテロアリールは、炭素、および、窒素、酸素または硫黄から選択される少なくとも1個の(例えば1または2個)原子を含む芳香環系(例えば、単環または二環)を意味する。ヘテロアリールとしては、例えば、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、フラザン、[1,2,3]−トリアゾール、[1,2,4]−トリアゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、インドール、または、ナフチリジンが挙げられる。
【0022】
フェニルアルキルは、例えば、ベンジル、または、1−フェニルエタ−2−イルである。
シクロアルキルアルキルは、例えば、シクロヘキシルメチルである。
【0023】
ヘテロアルキルアルキルは、例えば、インドール−3−イルメチルである。
ヘテロシクリルアルキルは、例えば、ピペリジン−1−イルメチルである。
その他の態様において、本発明は、式(I)で示される化合物、または、それらの製薬上許容できる塩もしくは溶媒和物、または、このような塩の溶媒和物を提供する:
【0024】
【化3】

【0025】
式中:
Xは、(CHであり;
は、CO15であり;
は、末端がNH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換された直鎖状のC1〜6アルキル;NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換されたC3〜6シクロアルキル;少なくとも1個の窒素原子を含むヘテロシクリル;NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換された窒素非含有ヘテロシクリル;NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換されたヘテロアリール;NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換されたフェニル;NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換されたヘテロアリール(C1〜4)アルキル;NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換されたフェニル(C1〜4)アルキル;あるいは、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換されたC3〜6シクロアルキル(C1〜4)アルキルであり;上記の環はいずれも、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1〜4アルキル、CF、C1〜4アルコキシ、または、OCFの1またはそれ以上でさらに置換されており:
、R、RおよびRの一つは、独立して、水素、ヘテロアリール(C1〜4)アルキル(ここで、該ヘテロアリール環は、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1〜4アルキル、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換されている)であり;および、それ以外のものは、独立して、水素、C1〜6アルキル(場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、SH、S(O)H、S(O)(C1〜6アルキル)、OC(O)(C1〜4アルキル)、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、COOH、CONH、CONH(C1〜6アルキル)、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換された)、C3〜6シクロアルキル(C1〜4)アルキル(ここで、該シクロアルキル環は、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1〜4アルキル、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換されている)、ヘテロシクリル(C1〜4)アルキル(ここで、該ヘテロシクリル環は、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1〜4アルキル、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換されている)、フェニル(C1〜4)アルキル(ここで、該フェニル環は、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1〜4アルキル、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換されている)、または、ヘテロアリール(C1〜4)アルキル(ここで、該ヘテロアリール環は、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1〜4アルキル、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換されている)であり;
pおよびqは、独立して、0、1または2であり;
、R、R、R10、R11、R12およびR13は、独立して、H、または、C1〜4アルキルであり;
14は、H、または、C1〜4アルキルであり;および、
15は、H、または、C1〜4アルキルである。
【0026】
さらなる態様において、本発明は、式(I)で示される化合物を提供する:
【0027】
【化4】

【0028】
式中:
は、CO15であり;
は、末端がNH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換された直鎖状のCアルキル;Cアルキル(例えばCH(CH)CHCH、または、CHCH(CH);または、(アミノピリジニル)メチル(例えば、(6−アミノピリジン−3−イル)メチル)であり;
およびRの一方が、場合によりハロまたはヒドロキシで置換された(インドール−3−イル)CHであり;および、その他のものは、ベンジル(場合により、ハロまたはヒドロキシで置換され)、または、Cアルキル(例えばCH(CH)CHCH、または、CHCH(CH)であるか;
または、RおよびRは両方とも、メチルであり;
およびRは、独立して、C1〜6アルキル(例えば、CH、CH(CH、CH(CH)CHCH、または、CHCH(CH)であり;
、R、R、R11、R12、R13およびR14は、Hであり;
10は、C1〜4アルキルであり;および、
15は、H、または、C1〜4アルキルである。
【0029】
その他の態様において、本発明は、以下に示すキラリティーを有する式(I)で示される化合物を提供する:
【0030】
【化5】

【0031】
本発明の一態様において、Xは、(CHである。
本発明のさらなる態様において、Rは、CO15であり、ここで、R15は、H、または、C1〜4アルキル(例えばメチル)である。
【0032】
その他の態様において、Rは、末端がNH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換された直鎖状のCアルキル;Cアルキル(例えばCH(CH)CHCH、または、CHCH(CH);または、(アミノピリジニル)メチル(例えば、(6−アミノピリジン−3−イル)メチル)である。
【0033】
本発明のさらなる態様において、Rは、C1〜6アルキル(例えばイソプロピル、CH(CH)CHCH、または、CHCH(CH)、ベンジル、または、末端がNH、CNH(NH)、NHCNH(NH)で置換された直鎖状のCアルキル、または、(6−アミノピリジン−3−イル)メチルである。その他の態様において、Rは、末端がNH、CNH(NH)、NHCNH(NH)で置換された直鎖状のCアルキル、または、(6−アミノピリジン−3−イル)メチルである。
【0034】
本発明のさらにその他の態様において、Rは、CHインドリル(ここで、該インドリルは、場合により、ハロゲン(例えば、クロロ、または、ブロモ)、または、ヒドロキシ、C1〜4アルキル、または、ベンジル(場合により、ハロゲン(例えばブロモ)、または、ヒドロキシで置換された)の1種またはそれ以上で置換されている)である。
【0035】
本発明のその他の態様において、Rは、CHインドリル(ここで、該インドリルは、場合により、ハロゲン(例えば、クロロ、または、ブロモ)、または、ヒドロキシ)、C1〜6アルキル(例えばメチル、イソプロピル、CH(CH)CHCH、または、CHCH(CH)、または、ベンジル(場合により、ハロゲン(例えば、ブロモ)、または、ヒドロキシで置換された)以下の1種またはそれ以上で置換されておりである。
【0036】
本発明のさらなる態様において、RおよびRは、独立して、C1〜6アルキル(例えばメチル、イソプロピル、CH(CH)CHCH、または、CHCH(CH)である。
【0037】
本発明のその他の態様において、R、R、R、R11、R12、R13およびR14は全て、Hである。
本発明のさらにその他の態様において、R10は、C1〜4アルキル(例えばメチル)である。
【0038】
さらなる態様において、本発明は、式(I)で示される化合物である化合物1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16、それらの製薬上許容できる塩もしくは溶媒和物、または、それらの製薬上許容できる塩の溶媒和物を提供する。
【0039】
本発明の化合物は、当業界公知の方法、または、実施例3および4の方法に類似した方法で製造することができる。当然ながら、文献または実施例3および4の方法を適用する場合、それらの中間体化合物の官能基を場合によっては保護基で保護する必要がある。保護することが望ましい官能基としては、ヒドロキシ、カルボキシレート、および、アミノ基が挙げられる。ヒドロキシに適切な保護基としては、トリアルキルシリル、または、ジアリールアルキル−シリル(例えば、tert−ブチルジメチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル、または、トリメチルシリル)、テトラヒドロピラニル、tert−ブチル、メトキシメチル、ベンジルオキシメチル、および、4−メトキシベンジルが挙げられる。カルボキシレートに適切な保護基としては、アリル、エチル、tert−ブチル、および、ベンジルエステルが挙げられる。アミノに適切な保護基としては、tert−ブチルオキシカルボニル、2,4,6−トリメトキシベンジル、および、ベンジルオキシカルボニルが挙げられる。保護基の使用は、‘Protective Groups in Organic Synthesis’,第三版,T.W.Greene&P.G.M.Wutz,Wiley−Interscience(1999年)で説明されている。また、保護基は、4−ヒドロキシメチル−3−メトキシフェノキシ酪酸樹脂、または、塩化2−クロロトリチル樹脂のようなポリマー樹脂であってもよい。
【0040】
従って、式Iで示される化合物は、式VIIで示される化合物と、式VIIIで示される化合物とを反応させることによって製造してもよい:
【0041】
【化6】

【0042】
式中、R〜R12およびXは上記で定義された通りであり、
【0043】
【化7】

【0044】
式中、R、R、R13、R14は、式Iで定義された通りであり、Yは、活性化された酸残基(例えば4−ニトロフェノキシカルボニル)、または、活性化されたアミノカルボニル等価体(例えばN=C=O)である。Yの具体的な値としては、活性化されたエステル、例えば4−ニトロフェノキシカルボニル、および、tert−ブトキシカルボニルが挙げられる。Yの好ましい値は、4−ニトロフェノキシカルボニルである。その他の値としては、YNがイソシアネート基であるものが挙げられる。上記反応は、一般的に、DMF(またはその他の非プロトン性溶媒)のような適切な溶媒中で、および、DIEAのような非求核性の塩基の存在下で行われると予想される。
【0045】
式VIIで示される中間体は、以下のように製造してもよい。
【0046】
【化8】

【0047】
a)化合物IIIの合成
式Iaで示される化合物は、非求核性塩基(例えばDIEA)の存在下で、非極性非プロトン性溶媒(例えばDCMまたはTHF)に溶解させ、次に、固体支持体(例えば2−クロロトリチル)と室温で2時間反応させる。この後に、メタノールを用いて全ての未反応の固体支持体(化合物II)をキャップする。次に、この樹脂をろ過し、DMF、DCMおよびDMFで連続的に洗浄する。
【0048】
b)式で示される化合物(n=4)の合成
式III/Vで示される化合物(n=1〜3)を、以下で説明されているように、固相ペプチド合成で処理する:
PG(この例ではFmoc)を、化合物III/V(n=1〜3)からDMF中の20%ピペリジンを用いて除去し、得られた樹脂をDMF、DCMおよびDMFで連続的に洗浄する。式IVの化合物を、DMFまたはDMSOのような極性非プロトン性溶媒中で、HBTUまたはHATUのようなカップリング剤の添加によって予め活性化し、次に、脱保護された式III/Vで示される化合物(n=1〜3)に添加する。ペプチドカップリングを、DIEAのような非求核性塩基の添加によって開始させ、この反応混合物を1〜2時間振盪する。次に、この樹脂をろ過し、DMF、DCMおよびDMFで連続的に洗浄する。
【0049】
b)式VIで示される化合物の合成
PG(この例ではFmoc)を、DMF中の20%ピペリジンを用いて化合物V(n=4)から除去し、得られた樹脂をDMF、DCMおよびDMFで連続的に洗浄する。式Vで示される化合物(n=4)を非プロトン性溶媒中の希酸を用いた急速な流れによって洗浄し、即座に生成物を大量の溶媒に希釈することによって、式VIで示される化合物は、PGを損なうことなく固体支持体から放出される。この手順の例としては、等しい体積の水へのDCM中の2%TFAの流れによる洗浄が挙げられる。
【0050】
b)式VIIで示される化合物の合成
DIEA、または、同等の非求核性塩基は、DMFまたはDMSOのような極性非プロトン性溶媒中で、式VIで示される化合物に添加される。得られた式VIで示される化合物の溶液は、DMFまたはDMSOのような極性非プロトン性溶媒中でPyBOPのようなカップリング剤の撹拌溶液に滴下して添加することによって、高い希釈度の条件下で環化される。この反応混合物を乾燥するまで蒸発させ、残存する酸不安定性の保護基(例えばPG)を、強酸(TFA、HCl)を添加したスカベンジャー(TIPS、p−クレゾール、水、または、チオクレゾール)と共に用いて除去する。再度、この反応混合物を乾燥するまで蒸発させ、その後、RPHPLCにより精製し、式VIIで示される化合物を得る。式VIIにおいて、PGは、PGを除去するのに必要な塩基性条件で安定な、あらゆる酸不安定性の窒素保護基のような適切な保護基であり、例えばBocである。PGは、あらゆる塩基不安定性の窒素保護基であり、例えばFmocであり、これもまた、リンカーLを切断したり、または、PGを除去したりすることなく除去できる;上記のプロセスの工程において、「カップリング剤」という場合、求核攻撃に対してカルボン酸を活性化するあらゆる基を意味する。例えば、活性化されたエステルへの前駆体、例えばp−ニトロフェノール、および、ヘキサフルオロフェノール、カルボジイミド誘導体、例えばDICおよびDCC、ベンゾトリアゾリル−テトラメチルホスホニウム塩、例えばBOPおよびPyBOP、ベンゾトリアゾリル−テトラメチルウロニウム塩、例えばHBTUおよびHATUが挙げられる。Lは、PGを除去するのに必要な条件下で安定な、固体支持体上のカルボン酸に対して極めて酸不安定性のあらゆるリンカーであり、例えば2−クロロトリチル塩化物リンカー、リンク酸樹脂(Rink acid resin)、4−ヒドロキシメチル−3−メトキシフェノキシ酪酸リンカーである。
【0051】
本明細書に記載されている中間体を製造する新規のプロセス、および、その新規の中間体もまた、本発明の特徴である。
あるいは、式(I)で示される化合物は、実施例1または2の手順を用いて自然源から単離してもよい。
【0052】
また、本発明の化合物は、異なる作用機序を有するいずれかの血小板凝集阻止薬を共に含んでもよいし、および/または、それらと共に投与してもよく、いずれかの血小板凝集阻止薬としては、例えば凝固防止剤(例えば、ビタミンKアンタゴニスト、未分画ヘパリンまたは低分子量ヘパリン、合成ヘパリンフラグメント、例えばフォンダパリヌクス、トロンビン阻害剤、Xa因子阻害剤、またはその他の凝固因子/酵素阻害剤、組換え凝固因子、例えば組換えヒト活性化プロテインC)、または、抗血小板薬(例えばアセチルサリチル酸、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、またはその他のADP受容体[例えば、P2Y12、または、P2Y1]アンタゴニスト、トロンボキサン受容体、および/または、シンセターゼ阻害剤、フィブリノーゲン受容体アンタゴニスト、プロスタサイクリン模倣剤、または、ホスホジエステラーゼ阻害剤)が挙げられる。
【0053】
本発明の化合物はさらに、血栓症(特に、心筋梗塞、虚血性卒中および広範肺塞栓症)の治療において、血栓溶解薬を共に含んでもよいし、および/または、それらと共に投与してもよく、このような血栓溶解薬としては、例えば組織プラスミノゲン活性化因子(天然、組換え、または、改変された)、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、アニソイル化プラスミノゲン−ストレプトキナーゼ活性化因子複合体(APSAC)、動物の唾液腺のプラスミノゲン活性化因子などが挙げられる。
【0054】
従って、さらなる態様において、本発明は、式(I)で示される化合物、または、それらの製薬上許容できる塩もしくは溶媒和物、または、このような塩の溶媒和物と、異なる作用機序を有する血小板凝集阻止薬との組み合わせ(共に含む、および/または、共に投与された)を提供するものであり、ここで、式(I)で示される化合物は、式中、Xは、(CHY(CHであり;mおよびnは、独立して、1、2、3、4、5、または、6であり;ただし、m+nは、6以下であり;Yは、結合、O、S(O)、または、S−Sであり;Rは、CO15、または、カルボン酸の等価体、例えば、S(O)OH、S(O)NHR15、PO(OR15)OH、PO(OR15)NH、B(OR15、PO(R15)OH、PO(R15)NH、または、テトラゾールであり;R、R、R、RおよびRは、独立して、水素、C1〜6アルキル(場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、SH、S(O)H、S(O)(C1〜6アルキル)、OC(O)(C1〜4アルキル)、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、COOH、CONH、CONH(C1〜6アルキル)、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換された)、C3〜6シクロアルキル(C1〜4)アルキル(ここで、該シクロアルキル環は、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1〜4アルキル、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換されている)、ヘテロシクリル(C1〜4)アルキル(ここで、該ヘテロシクリル環は、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1〜4アルキル、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換されている)、フェニル(C1〜4)アルキル(ここで、該フェニル環は、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1〜4アルキル、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換されている)、または、ヘテロアリール(C1〜4)アルキル(ここで、該ヘテロアリール環は、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1〜4アルキル、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換されている)であり;pおよびqは、独立して、0、1または2であり;R、R、R、R10、R11、R12およびR13は、独立して、H、または、C1〜4アルキルであり;R14は、H、または、C1〜4アルキルであり;および、R15は、H、または、C1〜4アルキルであり;および、上記異なる作用機序を有する血小板凝集阻止薬は、例えば凝固防止剤(例えば、ビタミンKアンタゴニスト、未分画ヘパリンまたは低分子量ヘパリン、合成ヘパリンフラグメント、例えばフォンダパリヌクス、トロンビン阻害剤、Xa因子阻害剤、または、組換え凝固因子、例えば組換えヒト活性化プロテインC)、または、抗血小板薬(例えばアセチルサリチル酸、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、またはその他のADP受容体[例えば、P2Y12、または、P2Y1]アンタゴニスト、トロンボキサン受容体、および/または、シンセターゼ阻害剤、フィブリノーゲン受容体アンタゴニスト、プロスタサイクリン模倣剤、または、ホスホジエステラーゼ阻害剤)}、または、血栓溶解薬{例えば組織プラスミノゲン活性化因子(天然、組換え、または、改変された)、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、アニソイル化プラスミノゲン−ストレプトキナーゼ活性化因子複合体(APSAC)、動物の唾液腺のプラスミノゲン活性化因子である。
【0055】
本発明の化合物は、以下で説明される分析を用いて、カルボキシペプチダーゼNに対して、50:1より大きい(例えば、100:1より大きい)カルボキシペプチダーゼUへの選択性を有する。
【0056】
本発明の化合物の作用の阻害は、Dirk Hendriks,Simon ScharpeおよびMarc van Sande,Clinical Chemistry,31,1936〜1939(1985年);および、Wei Wang,Dirk F.Hendriks,Simon S.Scharpe,The Journal of Biological Chemistry,269,15937〜15944(1994年)で説明されている分析を基質濃度4mMで用いて概算された。
【0057】
本発明はまた、カルボキシペプチダーゼUの阻害が有用である疾患に罹った、または、その危険性がある哺乳動物において、カルボキシペプチダーゼUの阻害が有用である疾患を治療する方法を提供するものであり、本方法は、上記哺乳動物に、治療上有効な量の上記で定義された式(I)で示される化合物、または、それらの製薬上許容できる塩もしくは溶媒和物、または、このような塩の溶媒和物を投与することを含む。
【0058】
上述の治療用途のために、投与された用量は、用いられる化合物、投与様式、望ましい治療、および、指定された障害に応じて様々であると予想される。
式(I)で示される化合物、および、製薬上許容できる塩、それらの塩の溶媒和物または溶媒和物そのものを用いてもよいが、一般的には、式(I)で示される化合物、塩、塩の溶媒和物または溶媒和物(活性成分)を、製薬上許容できるアジュバント、希釈剤またはキャリアーと共に含む医薬組成物の形態で投与されると予想される。投与様式に応じて、上記医薬組成物は、例えば、活性成分を0.05〜99%w(重量パーセント)、例えば0.05〜80%w、例えば0.10〜70%w、例えば0.10〜50%wで含むと予想され、ここで、全ての重量パーセンテージは、組成物の総量に基づく。
【0059】
従って、本発明はまた、上記で定義されたように、式(I)で示される化合物、または、それらの製薬上許容できる塩もしくは溶媒和物、または、このような塩の溶媒和物を、製薬上許容できるアジュバント、希釈剤またはキャリアーと共に含む医薬組成物も提供する。
【0060】
本発明はさらに、本発明の医薬組成物の製造プロセスを提供し、本プロセスは、上記で定義された式(I)で示される化合物、または、それらの製薬上許容できる塩もしくは溶媒和物、または、このような塩の溶媒和物と、製薬上許容できるアジュバント、希釈剤またはキャリアーとを混合することを含む。
【0061】
また、本発明は、式(I)で示される化合物の生物学的機能を有する式(I)で示される化合物の誘導体も含み、例えばプロドラッグである。プロドラッグは、例えば、カルボン酸のメチル、(ピバロイルオキシ)メチルエステル、および、[(エトキシカルボニル)オキシ]メチルエステルである。
【0062】
以下の実施例で、本発明を説明する。
実施例1
この実施例は、化合物1〜10の単離を説明する。
【0063】
一般的な実験方法
水は、ミリQ(Milli−Q)でろ過したものであり、一方で、その他全ての用いられた溶媒は、オムニソルブ(Omnisolv)であった。分取用HPLCに、YMCベーシックC18(5uM,21.2mm×150mm)カラム、および、ハイパーシル(Hypersil)BDS C18(5uM,21.2×150mm)カラムを用いた。NMRスペクトルを、バリアン(Varian)のInova600、または、500MHzのNMRスペクトロメーターで記録した。サンプルを、d−DMSOに溶解させ、化学シフトを、溶媒ピーク(DMSO H□2.49、および、13C39.5ppm)と比較して計算した。マススペクトルを、ファイソンズ(Fisons)VGプラットフォームIIで、エレクトロスプレーイオン化のポジティブモードを用いて測定した。溶出溶媒は、0.1ml/分のアセトニトリル/水の50%混合物であった。
【0064】
動物材料
海綿(Melophlus sp.)を、リボンリーフ(Ribbon Reef)No.5(オーストラリア)にスキューバダイビングすることによって採取し、証拠サンプル(G319104)は、クイーンズランド博物館(Queensland Museum,ブリスベン,オーストラリア)に寄託した。
【0065】
抽出および単離
オーストラリアのファーノースクイーンズランドのリボンリーフNo.5から採取した海綿Melophlus spの凍結乾燥させた粉末サンプル(128g)を徹底的にメタノール(2l)で抽出した。溶媒を蒸発させ、暗褐色の残留物を得た(28g)。この残留物をEtOAc(20mL)と水(60mL)の混合物に再溶解させ、液滴向流クロマトグラフィーによって、固定相として水、移動相としてEtOAcからブタノールへの勾配を用いて、5mL/分で分離した。2分の分画を回収し、毎秒の分画をエレクトロスプレーマススペクトロメトリーによって分析した。類似の分画を合わせ、5分画を得た。分画2(320mg)を、遠心分配クロマトグラフィー(サンキCPC(Sanki CPC),上昇様式)で、CHCl/MeOH/HOの三種の溶媒の混合物(7:13:8)を用いて、固定相としてより低い相を用いて分離した。2mL/分の流速を用い、2分の分画を360分にわたり回収した。毎秒の分画をポジティブエレクトロスプレーマススペクトロメトリーで解析し、類似の分画を合わせた。分画91〜101を合わせ、不純物を含む化合物2(10.8mg)を得て、分画107〜120を合わせ、不純物を含む化合物1(12.4mg)を得た。この不純物を含む化合物1および2のペプチド分画をそれぞれ、TFA水溶液(1%)とヘキサンとの間で分配した。それぞれの区画からの水層には、純粋な化合物2(9.5mg)、および、化合物1(11.5mg)が含まれていた。元のDCCC分離からの分画1、3および4を、CPC分離からの残りの分画と合わせ、C18(3g)に予め吸着させた。この予め吸着させた分画をさらに、C18 HPLCハイパーシルBDS C18(5uM,20mm×150mm)によって、60分間にわたり、1%TFAを含む水から1%TFAを含むメタノールへの水/メタノール濃度勾配を10mL/分で用いて分離した。1分の分画を回収し、全ての分画をエレクトロスプレーマススペクトロメトリーで解析した。類似の分画を合わせた。分画51〜58には、化合物1および2に関するペプチドが含まれており、これらを合わせた(分画A;65mg)。このペプチド分画Aをさらに、YMCベーシックC18(5uM,20mm×150mm)でのRPHPLC、流速10mL/分の65%水(1%TFAを含む)と35%MeCN(1%TFAを含む)での溶出によって精製した。36分間にわたり12秒の分画を回収した。分画58〜60は、純粋な化合物2(11mg)であり、分画67〜69は、純粋な化合物1(11mg)であり、分画70〜72は、純粋な化合物3(2mg)であり、分画73〜77は、純粋な化合物7(11.2mg)であり、分画79〜82は、純粋な化合物4(7.29mg)であり、分画91〜96は、純粋な化合物8(8.75mg)であり、分画101〜106は、純粋な化合物9(6.02mg)であり、分画118〜125は、純粋な化合物5(2.08mg)であり、分画128〜138は、純粋な化合物10(5.73mg)であり、分画140〜150は、純粋な化合物6(5.94mg)であった。
【0066】
化合物1:MS:(ポジティブESI)[M+H]m/z826。
Hおよび13CNMR(d−DMSO):表1を参照。
化合物2:MS:(ポジティブESI)[M+H]m/z876,878。Hおよび13CNMR(d−DMSO):表2を参照。
【0067】
化合物3:MS:(ポジティブESI)[M+H]m/z890,892。Hおよび13CNMR(d−DMSO):表3を参照。
化合物4:MS:(ポジティブESI)[M+H]m/z840。Hおよび13CNMR(d−DMSO):表4を参照。
【0068】
化合物5:MS:(ポジティブESI)[M+H]m/z860,862。Hおよび13CNMR(d−DMSO):表5を参照。
化合物6:MS:(ポジティブESI)[M+H]m/z861,863。Hおよび13CNMR(d−DMSO):表6を参照。
【0069】
化合物7:MS:(ポジティブESI)[M+H]m/z895,897。Hおよび13CNMR(d−DMSO):表7を参照。
化合物8:MS:(ポジティブESI)[M+H]m/z909,911。Hおよび13CNMR(d−DMSO):表8を参照。
【0070】
化合物9:MS:(ポジティブESI)[M+H]m/z909,911。Hおよび13CNMR(d−DMSO):表9を参照。
化合物10:MS:(ポジティブESI)[M+H]m/z973,975、977。Hおよび13CNMR(d−DMSO):表10を参照。
【0071】
化合物1〜10は、H、gHSQC、gHMBCおよびgCOSY実験などの広範な研究によって環状ペプチドと同定された。化合物1の絶対立体配置を単結晶X線回折解析によって確認した。
【0072】
【化9】

【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
【表3】

【0076】
【表4】

【0077】
【表5】

【0078】
【表6】

【0079】
【表7】

【0080】
【表8】

【0081】
【表9】

【0082】
【表10】

【0083】
【化10】

【0084】
【表11】

【0085】
【表12】

【0086】
【化11】

【0087】
【表13】

【0088】
【表14】

【0089】
【化12】

【0090】
【表15】

【0091】
【表16】

【0092】
【化13】

【0093】
【表17】

【0094】
【表18】

【0095】
【化14】

【0096】
【表19】

【0097】
【表20】

【0098】
実施例2
この実施例では、化合物11の単離を説明する。
一般的な実験方法
水は、ミリQでろ過したものであり、一方で、その他全ての用いられた溶媒は、オムニソルブであった。分取用HPLCのために、ハイパーシルBDSベーシックC18(5uM,21.2mm×150mm)カラムを用いた。NMRスペクトルを、バリアンのInova600、または、500MHzのNMRスペクトロメーターで記録した。サンプルを、d−DMSOに溶解させ、化学シフトを、溶媒ピーク(DMSO H□2.50、および、13C39.5ppm)と比較して計算した。マススペクトルを、ファイソンズ(Fisons)VGプラットフォームIIで、ポジティブエレクトロスプレーイオン化の様式を用いて測定した。溶出溶媒は、0.1ml/分のアセトニトリル/水の50%混合物であった。
【0099】
動物材料
カンジダスポンジア・フラベラータ(Candidaspongia flabellata)の6種の海綿サンプルを、アウター・グニーリング(Outer Gneering),サンシャインコースト(Sunshine Coast),オールドリーフ(Old Reef),フェアファックスIs(Fairfax Is)、および、ショーヴェル・リーフ(Chauvel Reef),クイーンズランド,オーストラリアでスキューバで潜水することによって採取し、証拠サンプル(G315106、G314580、G314025、G315402、G318260、G317513)を、クイーンズランド博物館(ブリスベン,オーストラリア)に寄託した。
【0100】
抽出および単離
凍結乾燥させた海綿材料(529g)を粉末化し、メタノールで徹底的に抽出し、6種のメタノール抽出物を得た。これらのメタノール粗抽出物に、一連の分配を行った:MeOH/n−ヘキサン、HO:MeOH(4:1)/DCM、HO:MeOH(4:1)/EtOAc。生物活性は、HO:MeOH(4:1)とEtOAc層に広がっていた。全ての6種の生物相についてHO:MeOH(4:1)とEtOAc層とを合わせ、次に、HO/ブタノールで分配した。活性はブタノール層(900mg)に存在し、これを次に、より高い層を移動相にして向流クロマトグラフィー{HO/MeOH/EtOAc(4:1:5)}で処理した。ごく初期の溶出分画13〜24を合わせ(325mg)、n−ヘキサン:EtOAc:MeOH:HO(1:1:1:1)で分配した。次に、生物活性のある水層(150mg)を、さらに、より低い層を移動相にして向流クロマトグラフィー{(CHCl:MeOH:HO(7:13:8)}でクロマトグラフィー処理した。初期の溶出の活性分画25〜32を合わせ、85mgの材料を得た。これを、最終的な精製工程で、HPLC(ハイパーシルBDS C18)で、30分間にわたりHO/MeCNのHO(1%TFAを含む)からMeCN(1%TFAを含む)への濃度勾配を用いて処理した。これにより、18.2分後に溶出した0.4mgの化合物11を得た。
【0101】
化合物11:MS:(ポジティブESI))[M+H]m/z1003.0(100),1004.4(72),1005.4(75),1006.3(32)。Hおよび13C NMR(d−DMSO):表11を参照。
【0102】
また、化合物11は、H、13C、gHSQC、gHMBC、および、gCOSY実験などの詳細な研究によって、環状ペプチドであることも同定された。
【0103】
【化15】

【0104】
【表21】

【0105】
【表22】

【0106】
実施例3
この実施例では、化合物12の合成を説明する。
一般的な実験方法
高解像度のマススペクトルを、エレクトロスプレーインターフェース(LC−HRMS)を備えたマイクロマス(Micromass)製のLCTマススペクトロメーターで記録した。H NMR測定を、バリアンのUNITYプラス(UNITY plus)400、500および600スペクトロメーター(それぞれ、H波長が400、500および600MHzでの運転)で行った。NMRスペクトルをd−DMSOで記録した(化学シフトはppmで示し、内部標準として溶媒を用いた)。
【0107】
【化16】

【0108】
化合物12の合成
化合物12は、文献の手順(MarshおよびBradley,J.Org. Chem.,1997年,62,6199〜6203)に従って、ただし最初にFmoc−L−Arg−Nω,ω’−(Boc)−OHを樹脂/リンカーにカップリングしたという点を変更して製造された。Fmoc基の除去の後に、遊離アミンと、Nα−(4−ニトロフェニルオキシカルボニル)−Nε−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)−D−リシンアリルエステルとをカップリングした。リシン残基の側鎖で、Fmoc−L−Ala、続いてFmoc−L−N−MeAla、Fmoc−L−LeuおよびFmoc−L−Alaを用いてFmocペプチド合成を続けた。アリルエステルとFmocを除去し、続いて環化し、最終的に樹脂/リンカーから切断した。残留物を逆相HPLC(AceC8カラム,0.1MのNHOAc水溶液中の5%MeCNから95%MeCNへの直線濃度勾配)によって精製し、化合物12を得た(1.8mg,1.3%)。
【0109】
1H NMR (500 MHz, d6-DMSO): □ 9.2 (幅広なs, 1H), 8.66 (d, 1H), 8.52 (d, 1H), 7.4-8.0 (幅広なシグナル, 4H), 7.47 (dd, 1H), 7.10 (d, 1H), 6.56 (d, 1H), 6.08 (d, 1H), 4.77-4.83 (m, 1H), 4.70-4.77 (m, 1H), 4.23 (qd, 1H), 4.07 (qd, 1H), 3.88-3.98 (m, 1H), 3.65-3.75 (m, 1H), 3.47-3.52 (m, 1H), 3.03 (幅広なt, 2H), 2.71-2.78 (m, 1H), 2.52 (s, 3H), 1.78-1.84 (m, 1H), 1.68-1.79 (m, 1H), 1.30-1.65 (m, 12H), 1.15-1.23 (m, 2H), 1.18 (two2 d, 6H), 0.94 (d, 3H), 0.93 (d, 3H), 0.89 (d, 3H), 0.88 (d, 3H).
HRMS (ESI) C32H59N10O8としての計算値711.4517 (M+H)+, 実測値711.4525。
【0110】
実施例4
この実施例では、化合物1および13〜16の合成を説明する。
化合物1の合成
a)中間体Aの合成
【0111】
【化17】

【0112】
TFA(2mL)を、Boc−D−Lys(Fmoc)−OAllyl(2.86g,5.6mmol)に添加し、および、5分間静置した。次に、TFAを乾燥窒素流下で除去し、H−D−Lys(Fmoc)−OAllylを得て、これを高真空のラインで2時間乾燥させ、全てのTFAを完全に除去した。2−クロロトリチル樹脂(1g,1.4mmol)を、DCM(10mL)中で1時間予備的に膨潤させた。この樹脂の水気を切り、H−D−Lys(Fmoc)−OAllyl(2.30g,5.64mmol)、および、DIEA(729mg,982μL,5.64mmol)のDCM(10mL)溶液を添加し、この反応混合物を1時間振盪した。この樹脂に、さらなるDIEA(1.46g,1.95mL,11.3mmol)を添加し、この反応混合物をさらに1時間振盪した。メタノール(1mL)を添加することによってあらゆる未反応の樹脂の末端をキャップし、この反応混合物をさらに1時間振盪した。この樹脂をろ過し、DMF(2×5mL)、DCM(2×5mL)、および、DMF(2×5mL)で洗浄した。この樹脂を、以下の条件を用いて、Fmoc−固相ペプチド合成(SPPS)で処理した:
(i)Fmoc脱保護:DMF中の20%ピペリジン(2×10mL)を2分間、続いて、DMF(4×5mL)、DCM(4×5mL)、および、DMF(4×5mL)での洗浄。
【0113】
(ii)カップリング条件:全てのカップリングにおいて、カップリング試薬のDMF溶液をFmoc−アミノ酸に添加した。この溶液を、樹脂に添加し、続いてDIEAを添加した。(a)Fmoc−Trp(Boc)−OH(2.95g,5.6mmol)、HBTU(0.5M溶液,11.2mL)、および、DIEA(0.975mL,5.6mmol)、20分間。(b)Fmoc−N−Me−Leu−OH(2.06g,5.6mmol)、HBTU(0.5M溶液,11.2mL)、および、DIEA(0.975mL,5.6mmol)、20分間。(c)DMF(10mL)中の、Fmoc−Leu−OH(1.98g,5.6mmol)、HOBt(756mg,5.6mmol)、HATU(2.13g,5.6mmol)、および、DIEA(314μL,1.8mmol)、3時間。(d)Fmoc−Ala−OH(1.74g,5.6mmol)、HBTU(0.5M溶液,11.2mL)、および、DIEA(0.975mL,5.6mmol)、20分間。全てのカップリングに続いて、この樹脂をろ過し、DMF(4×5mL)、DCM(4×5mL)、および、DMF(4×5mL)で洗浄した。(c)以外の全てのカップリングは、ニンヒドリン試験を用いてモニターし、カップリング(c)は、ブロモフェノールブルー試験を用いてモニターした。また、全てのカップリングを、MSで、少量の樹脂(5mg)を100%TFAで5分間切断することによってもモニターし、次に、この樹脂からのろ液をMSによって分析した。
【0114】
Pd(PPh(1.62g,1.4mmol)、および、ジメドン(1.96g,14mmol)のTHF:DCM(1:1、50mL)溶液を窒素ガスを用いて10分間散布し、この樹脂に添加し、この混合物を16時間振盪した。この反応混合物をろ過し、DCM(3×5mL)、DMF(3×5mL)、0.5%DIEAと0.5%ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム塩のDMF溶液(3×5mL)、および、DMF(3×5mL)で洗浄した。この樹脂を、DMF中の20%ピペリジン(2×10mL)で2分間処理し、続いて、DMF(4×5mL)、DCM(4×5mL)、DCM:DMF(1:1)中の10%ピリジニウム塩酸塩(4×5mL)、および、DMF(4×5mL)で洗浄した。この樹脂に、PyBroP(718mg,1.54mmol)、および、DIEA(1mL,5.74mmol)のDCM:DMF溶液(1:1,10mL)を添加し、この混合物を3時間振盪したところ、ニンヒドリン試験は陰性であった。この環状ペプチドを、DCM中の50%TFA(20mL)で1時間処理することによって樹脂から切断した。この樹脂をろ過し、TFA(2×5mL)、および、DCM(2×5mL)で洗浄し、乾燥するまで濃縮し、MeCN:HO(0.1%TFA)に再溶解させ、凍結乾燥し、未精製の中間体A(435mg,2−クロロトリチル樹脂に基づき50%)を得た。RPHPLC(95:5HO(1%TFA):MeCN(1%TFA)から2:3HO(1%TFA):MeCN(1%TFA))により60分間かけて精製し、中間体A(0.417g,3.6%)を得た。
【0115】
b)アリル−N−[(9H−フルオレン−9−イルメトキシ)カルボニル]−N−{イミノ[(2,2,4,6,7−ペンタメチル−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−5−イル)アミノ]メチル}オルニチナート(ornithinate)
−[(9H−フルオレン−9−イルメトキシ)カルボニル]−N−{イミノ[(2,2,4,6,7−ペンタメチル−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−5−イル)アミノ]メチル}オルニチン(1.0g,1.54mmol)を、DMF(5mL)に溶解させた。炭酸セシウム(377mg,1.16mmol)を添加し、この反応混合物を1時間撹拌した。次に、臭化アリル(0.913mL,10.8mmol)を添加し、撹拌をさらに1時間続け、乳白色の溶液を得た。水(25mL)を添加し、この反応混合物を2MのKHSOで酸性化した。DCM(50mL)を添加し、相を分離した。水相をDCM(2×50mL)で洗浄し、合わせた有機相をブライン(50mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、ろ過し、乾燥するまで濃縮し、アリル−N−[(9H−フルオレン−9−イルメトキシ)カルボニル]−N−{イミノ[(2,2,4,6,7−ペンタメチル−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−5−イル)アミノ]メチル}オルニチナートを無色の発泡体として得た(857mg,81%)。
【0116】
1HNMR (CDCl3, 500 MHz): □ 1.43 (s, 6H), 1.59 (m, 2H), 1.73 (m, 1H), 1.86 (m, 1H), 2.09 (s, 3H), 2.52 (s, 3H), 2.61 (s, 3H), 2.91 (s, 2H), 3.22 (m, 2H), 4.17 (t, J 7 Hz, 1H), 4.32 (m, 1H), 4.37 (m, 1H), 4.59 (br d, J 4.5 Hz, 2H), 5.21 (d, J 10.5 Hz, 1H), 5.30 (d, J 17 Hz, 1H), 5.83 (m, 1H), 5.88 (m, 1H), 6.26 (br s, 1H), 6.35 (br s, 2H), 7.26 (t, J 7.5 Hz, 2H), 7.37 (t, J 7.5 Hz, 2H), 7.57 (m, 2H), 7.74 (d, J 7.5 Hz, 2H).
13CNMR (CDCl3, 125 MHz): □ 12.68, 18.22, 19.54, 25.69, 28.78, 29.93, 40.96, 43.43, 47.36, 53.72, 54.10, 66.23, 67.39, 86.63, 117.78, 119.12, 120.19, 124.93, 125.40, 127.34, 127.96, 131.79, 132.47, 133.17, 138.54, 141.49, 143.97, 144.08, 156.63, 159.03, 171.42). MS: (ポジティブESI) [M+H]+m/z 689。
【0117】
c)アリル−N−[[(4−エチル−2,2,6,7−テトラメチル−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−5−イル)アミノ](イミノ)メチル]−N−[(4−ニトロフェノキシ)カルボニル]オルニチナート
アリル−N−[(9H−フルオレン−9−イルメトキシ)カルボニル]−N−{イミノ[(2,2,4,6,7−ペンタメチル−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−5−イル)アミノ]メチル}オルニチナート(800mg,1.16mmol)を、DMF(4mL)に溶解させた。ピペリジン(1mL)を添加し、この反応混合物を室温で30分間撹拌し、次に、濃縮した。得られた残留物をDCM(9mL)に溶解し、氷−塩槽中で冷却しながら4−ニトロフェニルクロロフォーメート(370mg,1.85mmol)とピリジン(750μL、9.3μmol)のDCM(6mL)中の懸濁液に添加した。2.5時間撹拌した後に、1MのKHSO(20mL)を添加し、有機層を分離し、水相をDCM(4×20mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を乾燥させ(MgSO)、ろ過し、濃縮し、得られた残留物を、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(100%ヘキサンから、7:3のEtOAc:ヘキサンへ)によって精製し、アリル−N−[[(4−エチル−2,2,6,7−テトラメチル−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−5−イル)アミノ](イミノ)メチル]−N−[(4−ニトロフェノキシ)カルボニル]オルニチナート(138mg,18%)を得た。
【0118】
1HNMR (CDCl3, 500 MHz): □ 1.42 (s, 6H), 1.62 (m, 2H), 1.79 (m, 1H), 1.89 (m, 1H), 2.04 (s, 3H), 2.48 (s, 3H), 2.55 (s, 3H), 2.90 (s, 2H), 3.20 (m, 2H), 4.30 (m, 1H), 4.60 (br d, J 4.5 Hz, 2H), 5.22 (d, J 10 .5 Hz, 1H), 5.29 (d, J 17 Hz, 1H), 5.86 (m, 1H), 6.25 (br s, 1H), 6.33 (br s, 1H), 6.50 (br d, J 6.5 Hz, 1H), 6.90 (d, J 7.5 Hz, 1H), 7.25 (d, J 8 Hz, 2H), 8.05 (d, J 7.5 Hz, 1H), 8.15 (d, J 8 Hz, 2H).
13CNMR (CDCl3, 125 MHz): □ 12.63, 18.16, 19.45, 25.74, 28.76, 29.44, 40.8, 43.41, 54.41, 66.39, 86.71, 115.99, 117.78, 119.21, 122.22, 124.97, 125.23, 126.22, 131.66, 132.40, 133.02, 138.43, 140.75, 144.97, 153.45, 156.06, 156.67, 159.04, 163.07, 163.80, 171.6.
MS: (ポジティブESI) [M+H]+ m/z 632。
【0119】
d)化合物1
中間体A(49.9mg,0.08mmol)を、DMF(8mL)に溶解させた。アリル−N−[[(4−エチル−2,2,6,7−テトラメチル−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−5−イル)アミノ](イミノ)メチル]−N−[(4−ニトロフェノキシ)カルボニル]オルニチナート(60.6mg,0.096mmol)、続いてDIEA(17μL、0.096mmol)を添加し、この反応混合物を室温で16時間撹拌した。この反応混合物を濃縮し、未精製の尿素を得た。パラジウム(テトラキス)トリフェニルホスフィン(8mg,0.0072mmol)、および、ジメドン(25mg,0.18mmol)のTHF:DCM(1:1,5mL)の溶液を乾燥窒素を用いて散布し、次に、カニューレを介して上記尿素に添加し、室温で一晩撹拌し、未精製のカルボン酸を得た。このカルボン酸をDCM(1mL)に溶解させ、p−クレゾール(340μL)とTFA(250μL)を添加し、この反応混合物を室温で20時間撹拌し、未精製の化合物1を得た。この反応混合物を、逆相HPLC(YMCベーシックセミプレップカラム,直線濃度勾配は、65%水(1%TFA)35%MeCN(1%TFA)から、100%MeCN(1%TFA)へ)によって精製し、化合物1(11.3mg,17%)を得た。NMRおよびMSデータから、証拠サンプルと同一であることがわかった。
【0120】
その他の方法による化合物1の合成
式Aで示される中間体はまた、以下の経路によっても製造された。
a)中間体Cの合成
【0121】
【化18】

【0122】
2−クロロトリチル樹脂(300mg,0.42mmol)を、DCM(2mL)中で1時間予備的に膨潤させた。この樹脂の水気を切り、Boc−D−リシン(Fmoc)−OH(394mg,0.84mmol)、および、DIEA(0.586mL、3.36mmol)のDCM(2mL)溶液を添加し、この反応混合物を1時間振盪した。次に、DIEA(0.293mL,1.68mmol)のさらなるアリコートを添加し、この樹脂をさらに1時間振盪した。メタノール(1mL)を添加することによってあらゆる未反応の樹脂の末端をキャップし、この反応混合物をさらに1時間振盪した。この樹脂をろ過し、DMF(2×5mL)、DCM(2×5mL)、および、DMF(2×5mL)で洗浄した。次に、この樹脂を、以下の条件を用いてFmoc−固相ペプチド合成(SPPS)で処理した:
(iii)Fmoc脱保護:DMF中の20%ピペリジン(4mL)を20分間、続いて、DMF(4×5mL)、DCM(4×5mL)、および、DMF(4×5mL)での洗浄。
【0123】
(iv)カップリング条件:全てのカップリングにおいて、カップリング試薬の溶液をFmoc−アミノ酸に添加した。この溶液を、樹脂に添加し、続いてDIEAを添加した。(a)Fmoc−Trp(Boc)−OH(0.885g,1.68mmol)、HBTU(0.5M溶液,3.36mL)、および、DIEA(0.293mL,1.68mmol)、1時間。(b)Fmoc−N−Me−Leu−OH(0.617g,1.68mmol)、HBTU(0.5M溶液,3.36mL)、および、DIEA(0.293mL,1.68mmol)、1時間。(c)Fmoc−Leu−OH(0.594g,1.68mmol)、HATU(0.5M,0.639g,1.68mmol,3.36mLのDMF中、)、および、DIEA(0.293mL,1.68mmol)、2時間。(d)Fmoc−Ala−OH(0.523g,1.68mmol)、HBTU(0.5M溶液,3.36mL)、および、DIEA(0.293mL,1.68mmol)、1時間。全てのカップリングに続いて、この樹脂をろ過し、DMF(4×5ml)、DCM(4×5mL)、および、DMF(4×5mL)で洗浄した。(c)以外の全てのカップリングは、ニンヒドリン試験を用いてモニターし、カップリング(c)は、ブロモフェノールブルー試験を用いてモニターした。
【0124】
Fmoc脱保護、および、DMF(4×5ml)、DCM(4×5mL)、および、DMF(4×5mL)での徹底的な洗浄に続いて、250mLの水への急速な流れによる洗浄によって、DCM中の2%TFA(150mL)を用いて直鎖状のペプチドを樹脂から切断した。DCMを真空中で除去し、得られた溶液を凍結させ、凍結乾燥させた。得られたゴム状物質を、1:1MeCN:HO(100mL)に懸濁し、凍結させ、凍結乾燥させ、未精製の中間体C(265mg,0.276mmol,2−クロロトリチル樹脂に基づき65.9%)を得た。
【0125】
b)中間体Aの合成
【0126】
【化19】

【0127】
DMF(208mL)中の、未精製の中間体C(0.401g,0.419mmol)、および、DIEA(0.438mL,1.26mmol)を、PyBOP(1.09g,2.10mmol)、および、DIEA(0.146mL,0.838mmol)のDMF溶液(208mL)に、撹拌しながら滴下して添加した。得られた溶液を室温で18時間撹拌し、次に、乾燥するまで濃縮し、EtOAc(100mL)と水(100mL)との間で分配した。有機相を水(3×100mL)で数回洗浄し、乾燥させ(MgSO)、ろ過し、乾燥するまで濃縮した。粗生成物を、90:9:1(TFA:TIS[b1]:DCM)の溶液で2時間処理し、乾燥するまで濃縮し、60分間かけて逆相HPLC(95:5HO(1%TFA):MeCN(1%TFA)から、3:2HO(1%TFA):MeCN(1%TFAへ)を用いて精製し、中間体A(0.167g,0.226mmol,53.9%)を得た。
【0128】
【化20】

【0129】
化合物13の合成
化合物13を、化合物1に関する手順と同様の手順を用いて、中間体A、および、N−[(ベンジルオキシ)カルボニル]−N−(tert−ブトキシカルボニル)オルニチンから開始して合成した。HRMS C3961 822.4280(M+H),実測値822.4262。
【0130】
【化21】

【0131】
化合物14の合成
化合物14を、化合物1に関する手順と同様の手順を用いて、中間体A、および、tert−ブチルN−(tert−ブトキシカルボニル)−L−リシナートから開始して合成した。
【0132】
1H NMR (500 MHz, CD3OD): □ 8.98 (d, 1H), 8.71 (d, 1H), 7.95 (dd, 1H), 7.79 (d, 1H), 7.64 (d, 1H), 7.31 (d, 1H), 7.08 (t, 1H), 7.01 (t, 1H), 6.78 (s, 1H), 5.00-4.88 (m, 2H), 4.78-4.70 (m, 1H), 4.36-4.23 (m, 2H), 4.19-4.13 (m, 1H), 3.88-3.77 (m, 1H), 3.55 (dd, 1H), 3.04-2.86 (m, 4H), 2.03-1.88 (m, 3H), 1.85 (s, 3H), 1.84-1.66 (m, 6H), 1.66-1.57 (m, 3H), 1.52 (d, 3H), 1.56-1.44 (m, 3H), 1.42-1.30 (m, 3H), 1.04 (two2 d, 6H), 0.95 (two2 d, 6H)。
HRMS (ESI) C40H64N9O8としての計算値798.4878 (M+H)+, 実測値798.4858。
【0133】
【化22】

【0134】
化合物15の合成
化合物15を、化合物1に関する手順と同様の手順を用いて、中間体A、および、3−{6−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]ピリジン−3−イル}アラニン(WO01/02364)から開始して合成した。HRMS C426110 833.4674(M+H),実測値833.4678。
【0135】
【化23】

【0136】
化合物16の合成
a)中間体Bの合成
中間体Bを、中間体Aに関する手順と同様の手順を用いて合成した。
【0137】
【化24】

【0138】
b)化合物16の合成
化合物16を、化合物1に関する手順に従って、中間体Bから開始して合成した。
1H NMR (500 MHz, d6-DMSO): □ 12.70 (幅広なs 1H), 10.83 (s, 1H), 8.86 (d, 1H), 8.47 (d, 1H), 7.70-7.79 (m, 3H), 7.57 (t, 1H), 7.46 (d, 1H), 7.45 (dd, 1H), 7.35 (d, 1H), 7.28 (d, 1H), 7.02 (dd, 1H), 6.96 (dd, 1H), 6.81 (幅広なs, 1H), 6.47 (d, 1H), 6.46 (d, 1H), 4.82 (m, 1H), 4.74-4.75 (ddd, 1H), 4.43 (ddd, 1H), 4.22-4.24 (m, 1H), 4.13 (ddd, 1H), 4.02 (ddd, 1H), 3.78 (dd, 1H), 3.71 (dd, 1H), 3.60 (m, 1H), 3.35 (m, 1H), 3.11 (dt, 2H), 2.86-2.92 (m, 1H), 2.78-2.80 (m, 1H), 1.83 (s, 3H), 1.79-1.83 (m, 1H), 1.52-1.56 (m, 1H), 1.57-1.60 (m, 1H), 1.60-1.64 (m, 3H), 1.69-1.70 (m, 1H), 1.42-1.48 (m, 5H), 1.33-1.36 (m, 1H), 1.22-1.25 (m, 2H), 1.18-1.20 (m, 1H), 0.95 (d, 3H), 0.91 (d, 3H), 0.89 (d, 3H), 0.85 (d, 3H)。 HRMS C40H64N11O9842.4888 (M+H)+, 実測値842.4885。
【0139】
その他の方法による化合物16の合成
式Bで示される中間体はまた、以下の経路によっても製造された。
中間体Dの合成:[b2]
【0140】
【化25】

【0141】
2−クロロトリチル樹脂(1g,1.4mmol)を、DCM(5mL)中で1時間予備的に膨潤させた。この樹脂の水気を切り、Boc−D−リシン(Fmoc)−OH(1.31g,2.8mmol)、および、DIEA(1.45g,1.98mL,11.2mmol)のDCM溶液(4mL)を添加し、この反応混合物を2時間振盪した。メタノール(1mL)を添加することによってあらゆる未反応の樹脂の末端をキャップし、この反応混合物をさらに1時間振盪した。この樹脂をろ過し、DMF(2×5mL)、DCM(2×5mL)、および、DMF(2×5mL)で洗浄した。次に、この樹脂を、以下の条件を用いてFmoc−固相ペプチド合成(SPPS)で処理した:
(i)Fmoc脱保護:DMF中の20%ピペリジン(4mL)を20分間、続いて、DMF(4×5mL)、DCM(4×5mL)、および、DMF(4×5mL)での洗浄。
【0142】
(ii)カップリング条件:全てのカップリングにおいて、カップリング試薬のDMF溶液をFmoc−アミノ酸に添加した。この溶液を、樹脂に添加し、続いてDIEAを添加した。(a)Fmoc−Trp(Boc)−OH(0.912g,1.732mmol)、HBTU(0.5M溶液,3.46mL)、および、DIEA(0.301mL,1.732mmol)、1時間。(b)Fmoc−N−Me−Leu−OH(0.637g,1.732mmol)、HBTU(0.5M溶液,3.46mL)、および、DIEA(0.301mL,1.732mmol)、1時間。(c)Fmoc−Leu−OH(0.612g,1.732mmol)、HATU(0.5M,0.658g、1.732mmol,3.5mLのDMF中)、および、DIEA(0.301mL,1.732mmol)、2時間。(d)Fmoc−Ser(tBu)−OH(0.664g,1.732mmol)、HBTU(0.5M溶液,3.46mL)、および、DIEA(0.301mL,1.732mmol)、1時間。全てのカップリングに続いて、この樹脂をろ過し、DMF(4×5ml)、DCM(4×5mL)、および、DMF(4×5mL)で洗浄した。(c)以外の全てのカップリングは、ニンヒドリン試験を用いてモニターし、カップリング(c)は、ブロモフェノールブルー試験を用いてモニターした。
【0143】
Fmoc脱保護、および、DMF(4×5ml)、DCM(4×5mL)、および、DMF(4×5mL)での徹底的な洗浄に続いて、500mLの水への急速な流れによる洗浄によって、DCM中の2%TFA(400mL)を用いて直鎖状のペプチドを樹脂から切断した。DCMを真空中で除去し、得られた溶液を凍結させ、凍結乾燥させた。得られたゴム状物質を、1:1MeCN:HO(100mL)に懸濁し、凍結させ、凍結乾燥させ、未精製の中間体D(994.6mg,0.88mmol,2−クロロトリチル樹脂に基づき63%)を得た。
【0144】
中間体Bの合成:
【0145】
【化26】

【0146】
未精製の中間体D(905mg,0.88mmol)、および、DIEA(0.304mL,1.74mmol)を、DMF(440mL)に溶解させ、PyBOP(2.13g,4.1mmol)、および、DIEA(0.918mL,5.3mmol)のDMF溶液(440mL)に、撹拌しながら滴下して添加した。添加が完了したら、得られた溶液を室温で20時間撹拌し、次に、乾燥するまで濃縮し、オレンジ色のゴム状物質を得て、これをセファデックス(Sephadex)LH−20(MeOH)を用いて精製し、保護された環状ペプチドを得た(551mg,70%)。次に、この保護された未精製の環状ペプチドを、95:2.5:2.5(TFA:TIS:DCM)の溶液で20時間処理した。この反応混合物を乾燥するまで濃縮し、60分間かけて逆相HPLC(95:5HO(1%TFA):MeCN(1%TFA)から、3:2HO(1%TFA):MeCN(1%TFA)へ)を用いて精製し、中間体Bを得た(214mg,中間体Dに基づき32%)。
【0147】
実施例5
以下の表Iに、Dirk Hendriks,Simon Scharpe and Marc van Sande,Clinical Chemistry,31,1936〜1939(1985年)で説明されている分析(基質濃度は4mMを用いた)における所定の実施例の活性を示す。
【0148】
【表23】

【0149】
【表24】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシペプチダーゼUの阻害が有用である疾患を治療または予防するための医薬品を製造する方法における、式(I):
【化1】

で示される化合物、または、それらの製薬上許容できる塩もしくは溶媒和物、または、該塩の溶媒和物の使用
[式中:
Xは、(CHY(CHであり;
mおよびnは、独立して、1、2、3、4、5、または、6であり;ただし、m+nは、6以下であり;
Yは、結合、O、S(O)、または、S−Sであり;
は、CO15、または、カルボン酸のアイソスター、例えば、S(O)OH、S(O)NHR15、PO(OR15)OH、PO(OR15)NH、B(OR15、PO(R15)OH、PO(R15)NH、または、テトラゾールであり;
、R、R、RおよびRは、独立して、水素、C1〜6アルキル(場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、SH、S(O)H、S(O)(C1〜6アルキル)、OC(O)(C1〜4アルキル)、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、COOH、CONH、CONH(C1〜6アルキル)、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換され)、C3〜6シクロアルキル(C1〜4)アルキル(ここで、該シクロアルキル環は、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1〜4アルキル、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換される)、ヘテロシクリル(C1〜4)アルキル(ここで、該ヘテロシクリル環は、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1〜4アルキル、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換される)、フェニル(C1〜4)アルキル(ここで、該フェニル環は、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1〜4アルキル、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換される)、または、ヘテロアリール(C1〜4)アルキル(ここで、該ヘテロアリール環は、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1〜4アルキル、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換される)であり;
pおよびqは、独立して、0、1または2であり;
、R、R、R10、R11、R12およびR13は、独立して、H、または、C1〜4アルキルであり;
14は、H、または、C1〜4アルキルであり;および、
15は、H、または、C1〜4アルキルである]。
【請求項2】
式(I):
【化2】

[式中:
Xは、(CHであり;
は、CO15であり;
は、末端がNH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換された直鎖状のC1〜6アルキル;NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換されたC3〜6シクロアルキル;少なくとも1個の窒素原子を含むヘテロシクリル;NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換された非−含窒素ヘテロシクリル;NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換されたヘテロアリール;NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換されたフェニル;NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換されたヘテロアリール(C1〜4)アルキル;NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換されたフェニル(C1〜4)アルキル;または、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換されたC3〜6シクロアルキル(C1〜4)アルキルであり;上記の環はいずれも、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1〜4アルキル、CF、C1〜4アルコキシ、または、OCFの1またはそれ以上でさらに置換されており:
、R、RおよびRの一つは、独立して、水素、ヘテロアリール(C1〜4)アルキル(ここで、該ヘテロアリール環は、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1〜4アルキル、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換される)であり;および、それ以外のものは、独立して、水素、C1〜6アルキル(場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、SH、S(O)H、S(O)(C1〜6アルキル)、OC(O)(C1〜4アルキル)、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、COOH、CONH、CONH(C1〜6アルキル)、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換され)、C3〜6シクロアルキル(C1〜4)アルキル(ここで、該シクロアルキル環は、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1〜4アルキル、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換される)、ヘテロシクリル(C1〜4)アルキル(ここで、該ヘテロシクリル環は、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1〜4アルキル、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換される)、フェニル(C1〜4)アルキル(ここで、該フェニル環は、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1〜4アルキル、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換される)、または、ヘテロアリール(C1〜4)アルキル(ここで、該ヘテロアリール環は、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1〜4アルキル、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換される)であり;
pおよびqは、独立して、0、1または2であり;
、R、R、R10、R11、R12およびR13は、独立して、H、または、C1〜4アルキルであり;
14は、H、または、C1〜4アルキルであり;および、
15は、H、または、C1〜4アルキルである]
で示される化合物、または、それらの製薬上許容できる塩もしくは溶媒和物、または、該塩の溶媒和物。
【請求項3】
請求項2に記載の式(I)で示される化合物、または、それらの製薬上許容できる塩もしくは溶媒和物、または、該塩の溶媒和物であって、
式中:
Xは、(CHであり;
は、CO15であり;
は、末端がNH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換された直鎖状のC1〜6アルキル;NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換されたC3〜6シクロアルキル;少なくとも1個の窒素原子を含むヘテロシクリル;NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換された非−含窒素ヘテロシクリル;NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換されたヘテロアリール;NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換されたフェニル;NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換されたヘテロアリール(C1〜4)アルキル;NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換されたフェニル(C1〜4)アルキル;または、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換されたC3〜6シクロアルキル(C1〜4)アルキルであり;上記の環はいずれも、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1〜4アルキル、CF、C1〜4アルコキシ、または、OCFの1またはそれ以上でさらに置換されており:
、R、RおよびRの一つは、独立して、水素、ヘテロアリール(C1〜4)アルキル(ここで、該ヘテロアリール環は、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1〜4アルキル、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換される)であり;および、それ以外のものは、独立して、水素、C1〜6アルキル(場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、SH、S(O)H、S(O)(C1〜6アルキル)、OC(O)(C1〜4アルキル)、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、COOH、CONH、CONH(C1〜6アルキル)、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換され)、C3〜6シクロアルキル(C1〜4)アルキル(ここで、該シクロアルキル環は、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1〜4アルキル、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換される)、ヘテロシクリル(C1〜4)アルキル(ここで、該ヘテロシクリル環は、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1〜4アルキル、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換される)、フェニル(C1〜4)アルキル(ここで、該フェニル環は、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1〜4アルキル、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換される)、または、ヘテロアリール(C1〜4)アルキル(ここで、該ヘテロアリール環は、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1〜4アルキル、CF、C1〜4アルコキシ、OCF、NH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換される)であり;
pおよびqは、独立して、0、1または2であり;
、R、R、R10、R11、R12およびR13は、独立して、H、または、C1〜4アルキルであり;
14は、H、または、C1〜4アルキルであり;および、
15は、H、または、C1〜4アルキルである、上記化合物、または、それらの製薬上許容できる塩もしくは溶媒和物、または、該塩の溶媒和物。
【請求項4】
請求項2または3に記載の、式(I)で示される化合物、または、それらの製薬上許容できる塩もしくは溶媒和物、または、該塩の溶媒和物であって、式中:
は、CO15であり;
は、末端がNH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換された直鎖状のCアルキル;Cアルキル(例えばCH(CH)CHCH、または、CHCH(CH);または、(アミノピリジニル)メチル(例えば、(6−アミノピリジン−3−イル)メチル)であり;
およびRの一方が、場合によりハロまたはヒドロキシで置換された(インドール−3−イル)CHであり;および、その他のものは、ベンジル(場合により、ハロまたはヒドロキシで置換され)、または、Cアルキル(例えばCH(CH)CHCH、または、CHCH(CH)であるか;
または、RおよびRは両方とも、メチルであり;
およびRは、独立して、C1〜6アルキル(例えば、CH、CH(CH、CH(CH)CHCH、または、CHCH(CH)であり;
、R、R、R11、R12、R13およびR14は、Hであり;
10は、C1〜4アルキルであり;および、
15は、H、または、C1〜4アルキルである、上記化合物、または、それらの製薬上許容できる塩もしくは溶媒和物、または、該塩の溶媒和物。
【請求項5】
Xは、(CHである、請求項2〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
は、CO15であり、ここで、R15は、H、または、C1〜4アルキルである、請求項2〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
は、末端がNH、CNH(NH)またはNHCNH(NH)で置換された直鎖状のCアルキル;Cアルキル(例えばCH(CH)CHCH、または、CHCH(CH);または、(アミノピリジニル)メチルである、請求項2〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
は、C1〜6アルキル(CH(CH)CHCH、または、CHCH(CH)、ベンジル、または、末端がNH、CNH(NH)、NHCNH(NH)で置換された直鎖状のCアルキル、または、(6−アミノピリジン−3−イル)メチルである、請求項2〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
は、末端がNH、CNH(NH)、NHCNH(NH)で置換された直鎖状のCアルキル、または、(6−アミノピリジン−3−イル)メチルである、請求項2〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
は、CHインドリル(ここで、該インドリルは、場合により、ハロゲン、または、ヒドロキシ、C1〜4アルキル、または、ベンジル(場合により、ハロゲン、または、ヒドロキシで置換された)の1種またはそれ以上で置換される)である、請求項2〜のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
は、CHインドリル(ここで、該インドリルは、場合により、ハロゲン、または、ヒドロキシ、C1〜6アルキル(CH(CH)CHCH、または、CHCH(CH)、または、ベンジル(場合により、ハロゲンまたはヒドロキシで置換される)の1種またはそれ以上で置換される)である、請求項2〜10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
およびRは、独立して、C1〜6アルキル(例えばメチル、イソプロピル、CH(CH)CHCH、または、CHCH(CH)である、請求項2〜11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
、R、R、R11、R12、R13およびR14は全て、Hである、請求項2〜12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
10は、C1〜4アルキルである、請求項2〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
請求項2に記載の化合物、または、それらの製薬上許容できる塩もしくは溶媒和物、または、それらの製薬上許容できる塩の溶媒和物であって、以下の式:
【化3】

(式中、
3aはHであり、R3bはHであり、R15はHであり;
3aはOHであり、R3bはClであり、R15はHであり;
3aはOHであり、R3bはClであり、R15はCHであり;
3aはHであり、R3bはHであり、R15はCHであり;
3aはHであり、R3bはClであり、R15はHである);
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

で示される上記化合物、または、それらの製薬上許容できる塩もしくは溶媒和物、または、それらの製薬上許容できる塩の溶媒和物。
【請求項16】
カルボキシペプチダーゼUの阻害が有用である疾患を治療または予防するための医薬品を製造する方法における、請求項2〜15のいずれか一項に記載の式(I)で示される化合物、または、それらの製薬上許容できる塩もしくは溶媒和物、または、該塩の溶媒和物の使用。
【請求項17】
血液および/または組織における血栓症および/または血液凝固性亢進;アテローム性動脈硬化症;線維化した状態;炎症性疾患;または、哺乳動物(例えばヒト)の体内におけるブラジキニンのレベルを維持または強化することによって利益を得る疾患を治療または予防するための医薬品を製造するための、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
活性成分として、請求項2〜15のいずれか一項に記載の式(I)で示される化合物、または、それらの製薬上許容できる塩もしくは溶媒和物、または、該塩の溶媒和物を、製薬上許容できるアジュバント、希釈剤またはキャリアーと共に含む医薬製剤。
【請求項19】
式:
【化9】

[式中、R〜R12およびXは、請求項1〜14のいずれか一項で定義された通りである]
で示される化合物。
【請求項20】
極性非プロトン性溶媒中で、非求核性塩基の存在下で、式VI:
【化10】

(式中、PGは適切な保護基である)
で示される化合物を、ペプチドカップリング剤で処理すること、次に、該保護基を除去すること、を含む、請求項19に記載の化合物を製造法。
【請求項21】
請求項19に記載の式VIIで示される化合物と、式VIII:
【化11】

(式中、Yは、活性化されたエステルであり、または、NYは、イソシアネート基である)で示される化合物とを反応させること、を含む、請求項2〜17のいずれか一項に記載の式Iで示される化合物の製造法。

【公表番号】特表2008−501622(P2008−501622A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537936(P2006−537936)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【国際出願番号】PCT/SE2004/001568
【国際公開番号】WO2005/039617
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【Fターム(参考)】