説明

カルボン酸とハロゲン化又はハロゲノカルボン酸希土類元素又はガリウムとの付加化合物、ハロゲン化希土類元素又はガリウムと窒素又は酸素供与体との無水付加化合物、それらの製造方法及び触媒としての使用

【課題】重合触媒を製造するために使用されるカルボン酸とハロゲン化又はハロゲノカルボン酸希土類元素又はガリウムとの付加化合物の提供を課題とする。
【解決手段】この課題を解決するために、カルボン酸とハロゲン化又はハロゲノカルボン酸希土類元素又はガリウムとの付加化合物を提供する。この化合物は、アルカン、シクロアルカン及び芳香族溶媒並びにそれらの混合物の中から選択される溶媒中でHX(ここで、Xはハロゲンを表す)とカルボン酸希土類元素又はガリウムとを反応させることからなる方法によって得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸とハロゲン化又はハロゲノカルボン酸希土類元素又はガリウムとの付加化合物、ハロゲン化希土類元素又はガリウムと窒素又は酸素供与体化合物との無水付加化合物、それらの製造方法及びそれらの触媒としての使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
希土類元素、特に希土類元素の無水ハロゲン化物をベースとした化合物は、これらのものをブタジエンのようなジエンの重合用触媒の要素として使用することに関して非常に重要な化合物である。しかしながら、このような化合物は製造するのが困難である。
【0003】
これらのものは、カルボン酸希土類元素とAlEt2Cl又はAl2Et3Cl3のようなハロゲン化有機金属化合物とを反応させてハロゲン化希土類元素化合物、例えば塩化希土類元素化合物を生じさせることによって製造できる。第2段階では、このハロゲン化化合物をAl(iBu)3のような有機金属化合物とさらに反応させて触媒として活性な種を生じさせる。この製造方法は、有機金属アルミニウム錯体が発火性であり、しかもカルボン酸希土類元素が非常に粘稠な溶液の形であり得るので、実施するのが面倒である。
【0004】
さらに、このものは、水和塩化希土類元素、例えば塩化希土類元素六水塩の単純な熱による脱水によって無水塩化希土類元素を製造するのが非常に困難である。最後に水分子が塩化希土類元素と反応してオキシ塩化希土類元素を相当な割合で、例えば10%以上で形成させ得、しかもこのオキシ塩化物は、通常、塩化物の適用には望ましくない。その他の方法には、塩化アンモニウムの存在下に水和塩化希土類元素を乾燥させ、次いで塩化アンモニウムを昇華させることが含まれる(一般に、この乾燥剤で汚染された生成物を生じさせる)。
【特許文献1】国際公開第99/54335号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかして、実施するのが容易であるそのような触媒に利用可能にさせる方法及び無水であり且つ純粋であるハロゲン化希土類元素又はハロゲン化ガリウム型化合物についてのニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、本発明は、カルボン酸とハロゲン化希土類元素若しくはガリウム又はハロゲノカルボン酸希土類金属若しくはガリウムとの付加化合物(該酸は同一のものとする)の製造方法である第1方法であって、アルカン、シクロアルカン、芳香族溶媒及びそれらの混合物から選択される溶媒中でHX(式中、Xはハロゲンを表す)をカルボン酸希土類元素又はカルボン酸ガリウムと反応させ、しかもハロゲノカルボン酸塩を製造するときにこの反応を3未満のX対希土類元素又はガリウムの原子比で実施することを特徴とするものに関する。
【0007】
また、本発明は、新規な化合物として、カルボン酸とハロゲン化希土類元素若しくはガリウム又はハロゲノカルボン酸希土類元素若しくはガリウムとの付加化合物(該酸は同一のものとする)に関するものでもある。
【0008】
また、本発明は、次の段階:
・アルカン、シクロアルカン、芳香族溶媒及びそれらの混合物から選択される溶媒中でカルボン酸希土類元素又はカルボン酸ガリウムとHX(ここで、Xはハロゲンを表す)とを反応させてカルボン酸とハロゲン化希土類元素又はガリウムとの付加化合物を形成させ、
・得られた混合物に無水であり且つ線状及び環状の脂肪族エーテル酸化物、脂肪族グリコールエーテル、脂肪族ケトン、脂肪族アミド、脂肪族ニトリル、脂肪族スルホキシド及びヘキサメチルホスホトリアミドから選択される窒素又は酸素供与体化合物を添加してハロゲン化希土類元素又はガリウムと該窒素又は酸素供与体化合物との付加化合物を沈殿させること
を含むことを特徴とするハロゲン化希土類元素又はガリウムと窒素又は酸素供与体化合物との無水付加化合物を製造するための方法である第2方法に関するものでもある。
【0009】
最後に、本発明は、上記方法によって得ることができるハロゲン化希土類元素又はガリウムと窒素又は酸素供与体化合物の無水付加化合物に関するものである。
【0010】
本発明の第2方法は、無水であり且つ高純度のハロゲン化希土類元素又はガリウムをベースとした化合物を生成させることができる。この方法は単純であり、大量の試薬の使用を必要とせず、しかも大量の廃液を生じさせない。さらに、反応中に生成されるカルボン酸及び溶媒は、容易にリサイクルできる。最後に、無水の窒素若しくは酸素供与体又は希土類元素塩を使用する必要はない。また、水を含有する工業溶剤を使用することも可能である。
【0011】
本発明のさらなる特徴、詳細及び利点は、本発明を例示することを意図した次の記載及び限定されない実施例から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書で使用するときに、用語「希土類元素」とは、スカンジウム、イットリウム及び原子番号が57〜71の範囲にある周期律表からの元素よりなる群からの元素を意味する。
【0013】
本明細書において、Xはハロゲン、即ち、弗素、塩素、臭素又は沃素を表す。
【0014】
本発明の第1のタイプの化合物、即ち、カルボン酸とハロゲン化希土類元素若しくはガリウム又はハロゲノカルボン酸希土類元素若しくはガリウムとの付加化合物を以下に記載する。
【0015】
本明細書で使用するときに、用語「ハロゲノカルボン酸希土類元素又はガリウム」とは、例えば、異なる元素間の化学結合を考慮せずに総合的な式(1):
MXn3-n (1)
によって表すことができる生成物を意味する。
【0016】
本発明の化合物は、例えば、式(2):
MXn3-n・xAH (2)
によって表すことができる。
【0017】
式(1)及び(2)において、Mは3価希土類元素又はガリウムを表し、Aはカルボン酸の陰イオン部分を表し(AHはカルボン酸を表す)、Xは上に定義したようなハロゲンを表し、nは、(1)について0<n<3及び(2)について0≦n≦3の関係を満足させ、xは0以上であり、しかも一般に0〜3の範囲にある数である。
【0018】
ここで、本発明の化合物は重合された形であることができ、この場合には、このものは式(3):
[MXn3-n・xAH]p (3)
によって表すことができることに留意すべきである。
【0019】
より詳しくは、Mはネオジム、プラセオジム、ランタン、ガドリニウム、サマリウム又はセリウムであることができる。
【0020】
より詳しくは、Xは塩素、臭素又は沃素であることができ、さらに特定すれば塩素であることができる。
【0021】
特に、カルボン酸は、線状又は分岐の飽和又は不飽和脂肪族、脂環式又は芳香族の酸であることができる。好ましくは、このものは、少なくとも6個の炭素原子を含有する酸、より詳しくはC6〜C32の酸、さらに詳しくはC6〜C18の酸である。
【0022】
より詳しくは、カルボン酸は、三元又は四元炭素原子を含有する酸から選択できる。
【0023】
挙げることのできる酸の例は、イソペンタン酸、ヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、2−エチル酪酸、ノナン酸、イソノナン酸、デカン酸、オクタン酸、イソオクタン酸、ネオデカン酸、ウンデシレン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸及びナフテン酸である。
【0024】
特に、ネオデカン酸が挙げられる。このものは、一般に約10個の炭素原子を含有し、しかも約310〜約325mgKOH/gの酸価を有する分岐カルボン酸の混合物であり、商品名「Versatic 10」(ベルサチン酸として一般に知られている)の下にシェル社によって又は商品名「ネオデカン酸」の下にエクソン社によって販売されている。
【0025】
本発明の付加化合物は、一般に溶媒の溶液の形である。この溶媒は、アルカン、シクロアルカン及び芳香族溶媒並びにそれらの混合物から選択される。好ましくは、この溶媒は、水と共沸混合物を形成できるものから選択される。
【0026】
特に挙げることのできるアルカン及びシクロアルカンの例は、ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、シクロペンタン、ヘプタン並びにメチルペンタン、メチルシクロペンタン又は2,3−ジメチルブタンのようなそれらの誘導体及び異性体である。また、ジクロルメタン及びクロロホルムのようなこれらのアルカン及びシクロアルカンのハロゲン化誘導体も挙げることができる。挙げることのできる芳香族溶媒のより詳しい例は、ベンゼン、エチルベンゼン、トルエン及びキシレンである。また、クロルベンゼンのような芳香族溶媒のハロゲン化誘導体も使用できる。
【0027】
カルボン酸とハロゲノカルボン酸塩との付加化合物の場合には、式(2)のn(これは、ハロゲン対希土類元素又はガリウムの原子比の値を表す)は、3未満である。より詳しくは、nは、0.1〜3の範囲にあることができ、さらに特定すると1〜2の範囲にある。
【0028】
本発明の付加化合物溶液の粘度は低く、一般に溶媒の粘度に近い。しかして、一般に、該溶液の粘度は、100cPs未満、好ましくは50cPs未満である。
【0029】
この溶液の水分は、一般に1000ppm、より詳しくはせいぜい500ppm、さらに詳しくは200ppm未満である。
【0030】
また、得られる溶液は非常に安定である。3ヶ月の最小期間後に固形物の沈殿は観察されない。
【0031】
この溶液は、高濃度の希土類元素又はガリウム、例えば、少なくとも10重量%のカルボン酸希土類元素又はガリウムを有することができ、この濃度は、ことによると60%である。
【0032】
また、本発明は、有機金属化合物と上記のような付加化合物とを反応させることによって得られる触媒に関するものでもある。
【0033】
この有機金属化合物は、アルミニウム、マグネシウム又はリチウム化合物であることができる。挙げることのできる特定の例は、ジブチルマグネシウムのようなジアルキルマグネシウム化合物である。より詳しくは、この化合物は、次式:
AlRR’R”
(式中、R、R’及びR”は、同一又は異なり且つ約1〜20個の炭素原子を含有する炭化水素基を表し、R、R’及びR”のうち1又は2種は水素原子であることができる)
の化合物であることができる。これらの化合物のうち、トリアルキルアルミニウム化合物、トリアリールアルミニウム化合物、水素化ジアルキルアルミニウム、水素化ジアリールアルミニウム、水素化アルキルアリールアルミニウム、二水素化モノアルキルアルミニウム、二水素化モノアリールアルミニウムを挙げることができる。挙げることのできる例は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリベンジルアルミニウム、トリナフチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジヘキシルアルミニウム、二水素化メチルアルミニウム、二水素化エチルアルミニウム及び二水素化ブチルアルミニウムである。
【0034】
有機金属化合物と付加化合物は、周知の態様で、特に、約0℃〜約150℃、好ましくは約25℃〜80℃の幅広い温度範囲内で共に反応する。反応は、例えば、数分〜約2時間の期間にわたって攪拌しながら実施される。この反応の生成物は、減圧下で蒸留させることによって、或いは濾過又はデカントすることによって回収され、n−ヘプタンのような乾燥炭化水素で随意に洗浄される。
【0035】
触媒は、不飽和化合物、特にジエンを重合又は共重合させるのに使用できる。
【0036】
挙げることのできる不飽和化合物には、エチレン、1,3−ブタジエン、イソプレン、trans−1,3−ペンタジエン、trans−1,3−ヘキサジエン、trans−2−メチル−1,3−ペンタジエン、trans−3−メチル−1,3−ペンタジエン及び2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンが含まれる。
【0037】
より詳しくは、有機マグネシウム又は有機リチウム化合物によって得られる触媒は、ブタジエンの立体特異trans重合のために使用できる。より詳しくは、有機アルミニウム化合物によって得られた触媒は、立体特異cisブタジエン重合のために使用できる。
【0038】
ここで、本発明の第1の付加化合物を製造するための方法を記載する。
【0039】
上に示したように、本発明の付加化合物は、アルカン、シクロアルカン、芳香族溶媒及びそれらの混合物から選択される溶媒(この溶媒は上に定義されるようなものである)中でカルボン酸希土類元素又はガリウムとHXとを反応させることによって得られる。
【0040】
出発生成物として使用されるカルボン酸希土類元素は、上に定義したカルボン酸に相当するものである。好ましくは、上に挙げた溶媒に溶解するカルボン酸塩が使用される。挙げることのできる本発明の方法に使用できる出発カルボン酸塩の特定の例は、国際特許出願WO−A−99/54335号に記載されたカルボン酸希土類元素の液状組成物である。
【0041】
好ましくは、最初に、無水物であるカルボン酸希土類元素又はガリウムが使用される。用語「無水カルボン酸塩」とは、せいぜい500ppm、好ましくはせいぜい200ppm、より好ましくはせいぜい100ppmの水分のカルボン酸塩を意味する。
【0042】
HXは、好ましくは気体の形で使用される。この場合には、この方法で起こる反応は、液ガス反応である。この反応は、低いHX圧力で実施できる。
【0043】
また、HXは、無水有機溶媒の溶液で使用することもできる。挙げることのできるHXのための溶媒は、上に挙げたもの、即ち、アルカン及びシクロアルカン、芳香族溶媒並びにそれらのハロゲン化誘導体である。
【0044】
HXとの反応は、通常、周囲温度(例えば、10℃〜25℃)で実施される。
【0045】
HXとの反応は、化学量論比又はそれに近い比で実施される。しかして、これは、化学量論的量に対して僅かに過剰のHXで、例えば、1対3.5の希土類元素又はガリウム対HXのモル比で実施することが可能である。カルボン酸とハロゲノカルボン酸塩の付加化合物を製造するときに、反応は、X対希土類元素又はガリウムの原子比が3未満であるように多量の反応体を使用して実施される。
【0046】
この反応は、反応媒体用溶媒の溶液のままであり且つハロゲン化希土類元素又はガリウムと希土類元素又はガリウム塩に相当する酸、即ち、上に定義されるようなカルボン酸との付加化合物である化合物を生じさせる。この反応は、次式:
MA3+nHX→MA3-nn・xAH+(n−x)AH、又は
上記のように、この化合物が重合された形で得られ得るならば、
pMA3+pnHX→[MA3-nn・xAH]p+p(n−x)AH
のように表すことができる。
【0047】
M、X、N、x及びAは、上に与えたのと同一の意味を有する。
【0048】
また、本発明は、ハロゲン化ネオジム又はセリウムと窒素又は酸素供与体化合物との無水付加化合物の製造方法である第2の方法に関するものである。以下に説明する。この方法は、上記のカルボン酸とハロゲン化希土類元素又はガリウムの付加化合物を使用する。この理由のため、この方法は、アルカン、シクロアルカン及び芳香族溶媒並びにそれらの混合物から選択される溶媒中でカルボン酸希土類元素又はカルボン酸ガリウムをHX(Xはハロゲンを表す)と反応させるこの付加化合物を製造することからなる第1段階を含む。また、この段階に関する先の記述もこの例に適用できる。
【0049】
また、この第2の方法は、第2段階も含む。この第2段階は、窒素又は酸素供与体化合物を第1段階の終了時に得られた媒体に添加することからなる。ここで、この供与体化合物が水を持たないものである必要はないことに留意すべきである。しかしながら、無水供与体化合物を使用することが可能である(ここで使用するときに、用語「無水」とは、せいぜい100ppm、より詳しくはせいぜい50ppm、さらに詳しくはせいぜい20ppmの水分の生成物を意味する)。
【0050】
第一に、この化合物は、線状及び環状の脂肪族エーテル酸化物から選択できる。線状エーテル酸化物については、4個以上の炭素原子を含有するものが一般に使用される。挙げることのできるより詳しい環状化合物は、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン及びテトラヒドロピランである。
【0051】
また、この化合物は、脂肪族グリコールエーテルからも選択できる。挙げることのできる例は、1,2−メトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン及び2−メトキシエチルエーテル(ジグリム)である。
【0052】
また、この化合物は、脂肪族ケトンからも選択できる。より詳しくは、アセトン、メチルエチルケトン又はメチルイソブチルケトンのような飽和脂肪族ケトンが使用できる。
【0053】
また、脂肪族アミド、例えばジメチルホルムアミドも本発明の関連で使用するための化合物を構成できる。
【0054】
また、アセトニトリルのような脂肪族ニトリルを使用することも可能である。
【0055】
また、この化合物は、ジメチルスルホキシドのような脂肪族スルホキシドからも選択できる。
【0056】
最後に、ヘキサメチルホスホトリアミドが好適な化合物として挙げられ得る。
【0057】
窒素又は酸素供与体化合物は、好ましくは、不活性ガス中、例えばアルゴン中で周囲温度で添加される。特に、この供与体化合物の量は、10〜50の範囲にあることができ、この量は、窒素又は酸素供与体化合物対ハロゲン化希土類元素又はガリウムと酸の付加化合物(例えば、MX3・xAH)のモル比として表される。
【0058】
窒素又は酸素供与体化合物を添加すると、ハロゲン化希土類元素又はガリウムと前記窒素又は酸素供与体化合物との付加化合物が沈殿する。THFの場合の例として、この反応は、次式:
MX3・xAH+THF→MX3・yTHF+AH、又は
重合された形の場合には、
[MX3・xAH]p+pTHF→[MX3・yTHF]p+pxAH
(式中、M、X、x及びAは上に定義した意味を有し、yは一般に1〜6の範囲にある数である)
の態様で表すことができる。
【0059】
沈殿物は、任意の好適な手段によって反応媒体から分離される。このものは、反応媒体のために使用されるものと同一のタイプの溶媒で洗浄できる。また、このものは、例えば、周囲温度で真空乾燥することもできる。
【0060】
また、本発明は、より具体的に言えば、ハロゲン化ネオジム又はセリウムをベースとした無水化合物の製造方法に関するものでもある。この方法は、上記の方法と同一のタイプのものであるが、エタノールが第二段階で使用される。また、一般的な方法に関する上の記載は、特に第2段階についてこの特定の方法にも適用できる。
【0061】
また、本発明は、新規な生成物として、第2のタイプの化合物、即ち、先に記載した本発明の第2の方法によって得られ得るハロゲン化希土類元素又はガリウムと窒素又は酸素供与体化合物との付加化合物に関するものでもある。これは、この方法に関する上の記載が該生成物の定義にも適用できることを意味する。
【0062】
この付加化合物は、5500ppm未満、特に2000ppm未満の水分を有する。好ましくは、この水分は、1000ppm未満、より好ましくは500ppm未満である。また、この第2の付加化合物は、せいぜい1000ppmのオキシハロゲン化希土類元素又はガリウム含有量も有する。一般に、この化合物は、上に定義されるような酸AHを全く含有しない。
【0063】
この第2の付加化合物は、1μm〜100μmの平均寸法を有する粒子からなることができる(この寸法は、CILAS型装置を使用するレーザー技術によって測定される)。
【0064】
この第2の化合物では、希土類元素は、より詳しくは、ネオジム、プラセオジム、ランタン、ガドリニウム、サマリウム又はセリウムであることができ、ハロゲン化物は、より詳しくは塩素であることができる。
【0065】
この本発明の第2の無水化合物は、不飽和化合物、特にジエンを重合又は共重合させるための触媒の要素として使用できる。挙げることのできるより詳しい不飽和化合物は、エチレン、プロピレン、ブタジエン及びスチレンである。また、このものは、芳香族化合物をアシル化させるための触媒の要素としても使用できる。しかして、本発明は、本発明の無水化合物を含む上に定義したタイプの触媒に関するものでもある。不飽和化合物を重合又は共重合させるときに、この触媒は、一般に、有機アルミニウム化合物も含有する。
【0066】
また、この第2の化合物は、アルコレート、アミド又はランタノセンのような希土類元素有機金属錯体を製造するための出発生成物としても使用できる。
以下に実施例を与える。
【実施例】
【0067】
例1
この例は、本発明の第2の化合物、即ち、ベルサチン酸ネオジム(neodymium versatate)とTHFとの無水付加化合物に関するものである。
【0068】
71.53gのベルサチン酸ネオジムのヘキサン溶液(Nd=5.2重量%、即ち、0.0315モルのNd)を、アルゴン注入口を備えた250ml二口フラスコに置いた。ディーン・スターク装置をこのフラスコに装着し、水分が15ppmになるまで蒸留を実施した(カール・フィッシャー技術を使用して測定した)。
ヘリウム雰囲気下で、オイルバブラーに連結した還流冷却器を無水物溶液を含有するフラスコに装着した。多孔度1のフリットを備えた気泡管をこのフラスコの第二の口に気密な態様で装着した。この集成装置をヘリウムで10分間パージし、次いで塩化水素で5分間パージした。穏やかな攪拌を使用し且つ周囲温度で、HClをこの溶液に50ml/分の流速で1時間にわたって1barの圧力で吹き込んだ(HClの容量=2.5L、即ち、0.106モル)。
次いで、アルゴン雰囲気下で100mlの無水THFをシリンジを使用して添加した。沈殿物が即座に形成し、次の5分で再溶解した。10分後に、この溶液は青色の固形物を生じた。この固形物をアルゴン雰囲気下で寸法4のフリットによって濾過した。この沈殿物を40mlの無水ヘキサンで洗浄した。炉液を乾燥状態にまで蒸発させた後、15.3gのベルサチン酸を回収した。この沈殿物を減圧下で一定重量にまで乾燥させた。10.18gの固形物が得られた。この生成物をグローブボックスに置いた。
【0069】
この固形物の水分(カール・フィッシャー)は210ppmであり、ネオジム含有量(錯滴定によって測定した)は36.3%であり、塩素含有量(銀滴定によって測定した)は27.0%であり、オキシ塩化物NdOClの含有量(酸消費量によって測定した)は1000ppm未満であった。
【0070】
プロトンNMR分析は、固形物中にTHFが存在し且つベルサチン酸が存在しないことを示した。微量分析は次の結果を生みだした。C=23.0%、H=4.0%及びNは1000ppm未満であった。この生成物についての式はNdCl3・2THFであった。収率は96%であった。
【0071】
例2
この例は、本発明の第2のタイプの化合物、即ち、ネオデカン酸ランタンとTHFの無水付加化合物に関するものである。
【0072】
83.02gのネオデカン酸ランタンのヘキサン溶液(La=4.45重量%、0.0266モルのLa)をアルゴン注入口を備えた250mlの二口フラスコに置いた。ディーン・スターク装置をこのフラスコに装着し、水分が30ppmになるまで蒸留を実施した(カール・フィッシャー技術を使用して測定した)。
ヘリウム雰囲気下で、オイルバブラーに連結した還流冷却器を無水物溶液を含有するフラスコに装着した。多孔度1のフリットを備えた気泡管をこのフラスコの第二の口に気密な態様で装着した。この集成装置をヘリウムで10分間パージし、次いで塩化水素で5分間パージした。穏やかな攪拌を使用し且つ周囲温度で、HClをこの溶液に50ml/分の流速で63分にわたって1barの圧力で吹き込んだ(HClの容量=2.7L、即ち、0.114モル)。
次いで、30mlの無水THFをアルゴン雰囲気下でシリンジを使用して添加した。白色の沈殿物が即座に形成した。この固形物をアルゴン雰囲気下で寸法4のフリットによって濾過した。この沈殿物を40mlの無水ヘキサンで洗浄した。この沈殿物を減圧下で一定重量にまで乾燥させた。この生成物をグローブボックスに置いた。
【0073】
この固形物の水分(カール・フィッシャー)、ランタン含有量(錯滴定)、塩素含有量(銀滴定によって測定した)及びオキシ塩化物含有量(酸消費量)を決定した。次の値が得られた。水分=4140ppm、La=38.8%、Cl=29.9%及びLaOClは1000ppm未満であった。6.70gの固形物が単離された。プロトンNMR分析は、この固形物中にTHFが存在し且つネオデカン酸が存在しないことを示した。この生成物についての式はLaCl3・1.5THFであった。収率は71%であった。
【0074】
例3
この例は、本発明の第2のタイプの化合物、即ち、ネオデカン酸セリウムとTHFの無水付加化合物に関するものである。
【0075】
69.77gのネオデカン酸セリウム(III)のヘキサン溶液(Ce=4.95重量%、0.0246モルのCe)をアルゴン注入口を備えた250mlの二口フラスコに置いた。
ディーン・スターク装置をこのフラスコに装着し、水分が45ppmになるまで蒸留を実施した(カール・フィッシャー技術を使用して測定した)。
ヘリウム雰囲気下で、オイルバブラーに連結した還流冷却器を無水物溶液を含有するフラスコに装着した。多孔度1のフリットを備えた気泡管をこのフラスコの第二の口に気密な態様で装着した。この集成装置をヘリウムで10分間パージし、次いで塩化水素で5分間パージした。穏やかな攪拌を使用し且つ周囲温度で、HClをこの溶液に50ml/分の流速で48分にわたって1barの圧力で吹き込んだ(HClの容量=2.0L、即ち、0.0861モル)。
次いで、20mlの無水THFをアルゴン雰囲気下でシリンジを使用して添加した。白色の沈殿物が即座に形成した。この固形物をアルゴン雰囲気下で寸法4のフリットによって濾過した。この沈殿物を40mlの無水ヘキサンで洗浄した。この沈殿物を減圧下で一定重量にまで乾燥させた。この生成物をグローブボックスに置いた。
【0076】
この固形物の水分(カール・フィッシャー)、セリウム含有量(錯滴定)、塩素含有量(銀滴定により測定した)及びオキシ塩化物含有量(酸消費量)を決定した。次の値が得られた。水分=5300ppm、Ce=41.9%、Cl=32.45%及びCeOClは1000ppm未満であった。7.53gの固形物が単離された。プロトンNMR分析は、この固形物中にTHFが存在し且つネオデカン酸が存在しないことを示した。この生成物についての式は、CeCl3・1.2THFであった。収率は92%であった。
【0077】
例4
この例は、本発明の第2にタイプの化合物、即ち、ネオデカン酸サマリウムとTHFの無水付加化合物に関するものである。
【0078】
85.09gのネオデカン酸サマリウムのシクロヘキサン溶液(Sm=8.1重量%、0.0458モルのSm、水分=60ppm)を250mlの二口フラスコ(アルゴン注入口を備えた)に置いた。
ヘリウム雰囲気下で、オイルバブラーに連結した還流冷却器をこの溶液を含有するフラスコに装着した。多孔度1のフリットを備えた気泡管をこのフラスコの第二の口に気密な態様で装着した。この集成装置をヘリウムで10分間パージし、次いで塩化水素で10分間パージした。穏やかな攪拌を使用し且つ周囲温度で、HClをこの溶液に50ml/分の流速で65分間にわたって1barの圧力で吹き込んだ(HClの容量=3.25L、即ち、0.137モル)。
次いで、37mlの工業用THF(0.457モル、水分=1200ppm)をアルゴン雰囲気下でシリンジを使用して添加した。THF添加3分後に、沈殿物が形成し、溶液の粘度が上昇した。5分間攪拌した後に、この溶液は再度流動性になった。この懸濁液をさらに30分間攪拌し、この固形物をアルゴン雰囲気下で寸法4のフリットによって濾過した。この沈殿物を2×40mlの工業用ヘキサン(水分=23ppm)で洗浄した。この固形物を減圧下で一定重量にまで乾燥させた。この生成物をグローブボックスに置いた。
【0079】
この固形物の水分(カール・フィッシャー)、サマリウム含有量(錯滴定)、塩素含有量(銀滴定により測定した)及びオキシ塩化物含有量(酸消費量)を決定した。次の値が得られた。水分=350ppm、Sm=37.05%、Cl=26.0%及びSmOCl<1000ppm。15.18gの固形物が単離された。この生成物についての式はSmCl3(THF)2であった。収率は83%であった。
【0080】
例5
この例は、本発明の第2の化合物、即ち、ネオデカン酸ネオジムとTHFの無水付加化合物に関するものである。
【0081】
94.8gのネオデカン酸ネオジムのヘキサン溶液(Nd=9.7重量%、0.0634モルのNd、水分=180ppm)を250mlの二口フラスコ(アルゴン注入口を備えた)に置いた。
ヘリウム雰囲気下で、オイルバブラーに連結した還流冷却器を無水物溶液を含有するフラスコに装着した。多孔度1のフリットを備えた気泡管をこのフラスコの第二の口に気密な態様で装着した。この集成装置をヘリウムで10分間パージし、次いで塩化水素で5分間パージした。穏やかな攪拌を使用し且つ周囲温度で、HClをこの溶液に50ml/分の流速で105分間にわたって1barの圧力で吹き込んだ(HClの容量=5.25L、即ち、0.222モル)。
次いで、52mlの工業用THF(0.634モル、水分=1200ppm)をアルゴン雰囲気下でシリンジを使用して添加した。紫色の沈殿物が即座に形成し、この溶液の粘度が上昇した。5分間攪拌した後に、この溶液は再度流動性になった。この懸濁液をさらに30分間攪拌し、青色の固形物をアルゴン雰囲気下で寸法4のフリットによって濾過した。この沈殿物を2×40mlの工業用ヘキサン(水分=23ppm)で洗浄した。この沈殿物を減圧下で一定重量にまで乾燥させた。この生成物をグローブボックスに置いた。
【0082】
固形物の水分(カール・フィッシャー)、ネオジム含有量(錯滴定)、塩素含有量(銀滴定により測定された)及びオキシ塩化物含有量(酸消費量)を決定した。次の値が得られた。水分=170ppm、Nd=36.45%、Cl=26.5%及びNdOCl<1000ppm。21.34gの固形物が単離された。この生成物についての式はNdCl3(THF)2であった。収率は85%であった。このものは、0.4μm〜100μmの範囲の寸法(CILASレーザー)を有し、10μmと40μmに2つの分布母集団を有する粒子の形態であった。
【0083】
例6
この例は、本発明の第2のタイプの化合物、即ち、ネオデカン酸ネオジムとTHFの無水付加化合物に関するものである。
【0084】
88.56gのネオデカン酸ネオジムのヘキサン溶液(Nd=8.9重量%、0.0546モルのNd、水分=270ppm)を250mlの二口フラスコ(アルゴン注入口を備えた)に置いた。
ヘリウム雰囲気下で、オイルバブラーに連結した還流冷却器を無水物溶液を含有するフラスコに装着した。多孔度1のフリットを備えた気泡管をこのフラスコの第二の口に気密な態様で装着した。この集成装置をヘリウムで10分間パージし、次いで塩化水素で5分間パージした。穏やかな攪拌を使用し且つ周囲温度で、HClをこの溶液に50ml/分の流速で77分間にわたって1barの圧力で吹き込んだ(HClの容量=3.87L、即ち、0.164モル)。
次いで、45mlの工業用THF(0.546モル、水分=970ppm)をアルゴン雰囲気下でシリンジを使用して添加した。紫色の沈殿物が即座に形成し且つ迅速に再溶解した。5分間攪拌した後に、この生成物は微粉の形に再結晶化した。この懸濁液をさらに30分間攪拌し、青色の固形物をアルゴン雰囲気下で寸法4のフリットによって濾過した。この沈殿物を2×40mlの工業用ヘキサン(水分=23ppm)で洗浄した。この固形物を減圧下で一定重量にまで乾燥させた。この生成物をグローブボックスに置いた。
【0085】
この固形物の水分(カール・フィッシャー)、ネオジム含有量(錯滴定)、塩素含有量(銀滴定により測定した)及びオキシ塩化物含有量(酸消費量)を決定した。次の値が得られた。水分=150ppm、Nd=36.2%、Cl=26.6%及びNdOCl<1000ppm。18.48gの固形物が単離された。この生成物についての式はNdCl3(THF)2であった。収率は85%であった。
【0086】
この例は、本発明の方法が水を含有する工業用THFで実施できることを示す。
【0087】
例7
この例は、本発明の第2のタイプの化合物、即ち、ネオデカン酸ネオジムとジオキサンの無水付加化合物に関するものである。
【0088】
187.65gのネオデカン酸ネオジムのヘキサン溶液(Nd=4.65%、0.060モルのNd、水分=110ppm)を500mlの二口フラスコ(アルゴン注入口を備えた)に置いた。
ヘリウム雰囲気下で、オイルバブラーに連結した還流冷却器を無水物溶液を含有するこのフラスコに装着した。多孔度1のフリットを備えた気泡管をこのフラスコの第二の口に気密な態様で装着した。このガスラインをヘリウムで10分間パージし、次いで塩化水素で5分間パージした。穏やかな攪拌を使用し且つ周囲温度で、HClをこの溶液に50ml/分の流速で104分間にわたって1barの圧力で吹き込んだ(HClの容量=5.20L、即ち、0.220モル)。
次いで、52mlの無水ジオキサン(0.600モル、水分=15ppm)をアルゴン雰囲気下でシリンジを使用して添加した。かなり厚い沈殿物が即座に形成した。2時間30分間攪拌した後に、この溶液は非常に流動性であり、次いでこの固形物をアルゴン雰囲気下で寸法4のフリットによって濾過した。この沈殿物を60mlの工業用ヘキサン(水分=23ppm)で洗浄した。この固形物を減圧下で一定重量にまで乾燥させた。この生成物をグローブボックスに置いた。
【0089】
この固形物の水分(カール・フィッシャー)、ネオジム含有量(錯滴定)、塩素含有量(銀滴定により測定した)及びオキシ塩化物含有量(酸消費量)を決定した。次の値が得られた。水分=1980ppm、Nd=30.3%、Cl=23.2%及びNdOCl<1000ppm。24.71gの固形物が単離された。この化合物についての式はNdCl3(ジオキサン)2.5であった。収率は87%であった。
【0090】
例8
この例は、本発明の第2のタイプの化合物、即ち、ネオデカン酸ランタンとTHFの無水付加化合物に関するものである。
【0091】
1.321kgのネオデカン酸ランタンのヘキサン溶液(La=4.47重量%、0.425モルのLa、水分=38ppm)を4リットルの二口フラスコ(アルゴン注入口を備えた)に置いた。
ヘリウム雰囲気下で、オイルバブラーに連結した還流冷却器をこの無水物溶液を含有するフラスコに装着した。多孔度1のフリットを備えた気泡管をこのフラスコの第二の口に気密な態様で装着した。このガスラインをヘリウムで10分間パージし、次いで塩化水素で5分間パージした。穏やかな攪拌を使用し且つ周囲温度で、HClをこの溶液に200ml/分の流速で198分間にわたって1barの圧力で吹き込んだ(HClの容量=39.63L、即ち、1.657モル)。
次いで、343mlの無水THF(水分=9ppm)をアルゴン雰囲気下で添加した。ピンク色のゲルが即座に形成した。攪拌後に、このゲルは白色の懸濁液になった。攪拌を3時間続行した。この固形物をアルゴン雰囲気下で寸法4のフリットによって濾過した。この沈殿物を2×400mlの工業用ヘキサン(水分=23ppm)で洗浄した。この固形物を減圧下で一定重量にまで乾燥させた。この生成物をグローブボックスに置いた。
【0092】
この固形物の水分(カール・フィッシャー)、ランタン含有量(錯滴定)、塩素含有量(銀滴定により測定した)及びオキシ塩化物含有量(酸消費量)を決定した。次の値が得られた。水分=1900ppm、La=41.4%、Cl=31.9%及びLaOCl<1000ppm。130.8gの固形物が単離された。この生成物についての式はLaCl3(THF)1.2であった。収率は93%であった。
【0093】
この例は、本発明の方法が水を含有する工業用ヘキサンで実施できることを示す。
【0094】
例9
この例は、本発明の第1のタイプの化合物、即ち、クロルベルサチン酸ネオジム(neodymium chloroversatate)の付加化合物に関するものである。
【0095】
126.03gのベルサチン酸ネオジムのヘキサン溶液(Nd=4.45重量%、0.0389モルのNd)をアルゴン注入口を備えた250mlの二口フラスコに置いた。ディーン・スターク装置をこのフラスコに装着し、水分が15ppmになるまで蒸留を実施した(カール・フィッシャー技術を使用して測定した)。
ヘリウム雰囲気下で、オイルバブラーに連結した還流冷却器を無水物溶液を含有するフラスコに装着した。多孔度1のフリットを備えた気泡管をこのフラスコの第二の口に気密な態様で装着した。この集成装置をヘリウムで10分間パージし、次いで塩化水素で5分間パージした。穏やかな攪拌を使用し且つ周囲温度で、HClをこの溶液に50ml/分の流速で18分30秒にわたって1barの圧力で吹き込んだ(HClの容量=0.925L、即ち、0.039モル)。122.0gの紫色の溶液が得られた。
【0096】
この溶液の水分(カール・フィッシャー)、ネオジム含有量(錯滴定)、塩素含有量(銀滴定により測定した)を決定した。次の値が得られた。水分=175ppm、Nd=4.60%、Cl=1.06%。この生成物についての式、NdV2Cl・xVH(x≦1)は、元素分析と一致した。収率は、HCl消費量を使用して93%であった。
【0097】
例10
この例は、本発明の第1のタイプの化合物、即ち、クロルベルサチン酸ネオジムの付加化合物に関するものである。
【0098】
71.67gのベルサチン酸ネオジムのヘキサン溶液(Nd=4.55重量%、0.0226モルのNd)をアルゴン注入口を備えた250mlの二口フラスコに置いた。ディーン・スターク装置をこのフラスコに装着し、水分が15ppmになるまで蒸留を実施した(カール・フィッシャー技術を使用して測定した)。
例9の手順に続き、HClをその溶液に50ml/分の流速で21分30秒にわたって1barの圧力で吹き込んだ(HClの容量=1.07L、即ち、0.045モル)。68.7gの淡い紫色の溶液が得られた。
【0099】
この溶液の水分、ネオジム含有量及び塩素含有量(銀滴定)を上記の方法を使用して決定した。次の値が得られた。水分=121ppm、Nd=4.75%、Cl=2.35%。この生成物についての式、NdV2Cl・xVH(x≦2)は、元素分析と一致した。収率は、HCl消費量を使用して100%であった。
【0100】
例11
この例は、本発明の第1のタイプの化合物、即ち、クロルベルサチン酸ネオジムの付加化合物に関するものである。
【0101】
79.05gのベルサチン酸ネオジムのヘキサン溶液(Nd=4.55重量%、0.0249モルのNd)を250mlの二口フラスコ(アルゴン注入口を備えた)に置いた。ディーン・スターク装置をこのフラスコに装着し、水分が15ppmになるまで蒸留を実施した(カール・フィッシャー技術を使用して測定した)。
【0102】
例9の手順に続き、HClをその溶液に50ml/分の流速で17分間にわたって1barの圧力で吹き込んだ(HClの容量=0.850L、即ち、0.036モル)。77.4gの淡い紫色の溶液が得られた。
【0103】
この溶液の水分(カール・フィッシャー)、ネオジム含有量(錯滴定)及び塩素含有量(銀滴定)を上記の方法を使用して決定した。次の値が得られた、水分=136ppm、Nd=4.65%、Cl=1.76%。この生成物についての式、Nd23Cl3・xVH(x≦3)は、元素分析と一致した。収率は、HCl消費量を使用して100%であった。
【0104】
例12
この例は、本発明の第1の化合物を触媒として使用することに関するものである。
【0105】
250mlの無水ヘキサンをアルゴン雰囲気下で乾燥させ且つ不活性化させたジャケット付き500mlガラスBuchiオートクレーブに置いた。次いで、26.0gのブタジエンを二重はかり法によって導入した。次いで、この混合物の温度を70℃に上昇させた。次いで、2.1mlの水素化ジイソブチルアルミニウム溶液(1.0Mヘキサン溶液)、次いで例11に記載したような220μlの溶液を添加した。重合を134分間実施した。
【0106】
重合体を約0.5gの2,6−ジテルチオブチル−4−メチルフェノール(BHT)を含有する約500mlのメタノールで沈殿させた。単離されたポリブタジエンの重量は12.97g(収率=50%)であり、1,4−cis結合度は91%(1,4−trans=8%及びビニル=1%)であり、分子量MW=236000(g/モル)であり、Mw/Mn=4.2であった。
【0107】
例13
この例は、本発明の第1のタイプの化合物を触媒として使用することに関するものである。
【0108】
250mlの無水ヘキサンをアルゴン雰囲気下で乾燥させ且つ不活性化させたジャケット付き500mlガラスBuchiオートクレーブに置いた。次いで、26.0gのブタジエンを二重はかり法によって導入した。次いで、この混合物の温度を70℃に上昇させた。次いで、2.1mlの水素化ジイソブチルアルミニウム溶液(1.0Mヘキサン溶液)、次いで215mlの例10で記載したような溶液を添加した。このものは非常に発熱性であった。重合を128分間実施した。
この重合体を約0.5gの2,6−ジテルチオブチル−4−メチルフェノール(BHT)を含有する約500mlのメタノールで沈殿させた。単離されたポリブタジエンの重量は24.1g(収率=93%)であり、1,4−cis結合度は94%(1,4−trans=5%及びビニル=1%)であり、分子量Mw=529000(g/モル)であり、Mw/Mn=6.3であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸とハロゲン化希土類元素若しくはガリウム又は同じ酸のハロゲノカルボン酸希土類元素若しくはガリウムとの付加化合物。
【請求項2】
希土類元素がネオジム、プラセオジム、ランタン、ガドリニウム、サマリウム又はセリウムであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
ハロゲンが塩素であることを特徴とする請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
カルボン酸が少なくとも6個の炭素原子を含有し、より詳しくは6〜32個の炭素原子を含有する酸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
化合物がアルカン、シクロアルカン、芳香族溶媒及びそれらの混合物から選択される溶媒の溶液の形であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のカルボン酸とハロゲノカルボン酸塩との付加化合物において、該化合物が3未満のハロゲン対希土類元素又はガリウムの原子比を有することを特徴とする付加化合物。
【請求項7】
化合物が1000ppm未満である水分、より詳しくはせいぜい500ppm未満である水分を有する溶液の形であることを特徴とする請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
アルカン、シクロアルカン、芳香族溶媒及びそれらの混合物から選択される溶媒中でHX(ここで、Xはハロゲンを表す)をカルボン酸希土類元素又はカルボン酸ガリウムと反応させ、しかもハロゲノカルボン酸塩を製造する場合にこの反応を3未満のX対希土類元素又はガリウムの原子比で実施することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の化合物の製造方法。
【請求項9】
HXを気体の形で反応させることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
溶媒が水と共沸混合物を形成する溶媒から選択されることを特徴とする請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれかに記載のカルボン酸とハロゲノカルボン酸塩の付加化合物と有機金属化合物とを反応させることによって得られたことを特徴とする触媒。
【請求項12】
有機金属化合物の金属元素がアルミニウム、マグネシウム又はリチウムであることを特徴とする請求項11に記載の触媒。
【請求項13】
請求項11又は12のいずれかに記載の触媒を使用することを特徴とする不飽和化合物の重合方法。

【公開番号】特開2008−297302(P2008−297302A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127400(P2008−127400)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【分割の表示】特願2002−532166(P2002−532166)の分割
【原出願日】平成13年9月28日(2001.9.28)
【出願人】(503124252)ロディア エレクトロニクス アンド カタリシス (13)
【Fターム(参考)】