説明

カートリッジ梱包材及びカートリッジ梱包構造

【課題】データ記録用のカートリッジを入れた収納ケース40を外箱に収めて梱包する場合に、外箱20を落下させてしまった場合のカートリッジに対する緩衝効果を高め、カートリッジの変形や破損を抑制する。
【解決手段】収納ケース40の上面、下面及び1つの側面をそれぞれ覆うようにシート状の1枚の部材を折り曲げて当て板部材30を形成し、その当て板部材39に、収納ケース40の上面の第1突出部48aを受け入れる第1切り取り部35aと、収納ケース40の下面の第2突出部48bを受け入れる第2切り取り部35bとを形成する。そして、当て板部材30で収納ケース40を3面から覆った状態で、外箱20に収納する。、

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ記録用のカートリッジを収納した収納ケースを外箱に入れて保護するタイプの梱包材と、この梱包材を用いてカートリッジの収納ケースを梱包する梱包構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ディスクカートリッジやテープカートリッジ等、記録媒体のカートリッジ(単に、カートリッジともいう)は、ホストコンピュータのバックアップなどで大量にまとめて交換されることがある。そのような場合、カートリッジを1巻ずつ個別にケースに収納した包装形態であると、取り扱いが面倒である。そこで、作業効率を考慮して、例えば20個程度の複数のカートリッジをプラスチック製の1つの収納ケースにまとめて収納するバルク仕様の包装形態が好まれている。
【0003】
しかし、バルク仕様の包装形態では、外箱(ダンボール箱)に直接プラスチック製の収納ケースが挿入され、その中に多くのカートリッジが入っていて質量が比較的大きいため、収納ケースを入れた外箱を輸送時等の取り扱いで誤って落下させてしまった場合に、収納ケースに破損が生じることがある。特に、図9に示すように外箱20を床Fに稜部から落下させた場合、収納ケース底面の角部に大きな負荷がかかることから、図10に示すように、収納ケース40の稜部が、一直線上に連なって破損してしまい、カートリッジが変形してしまう可能性がある。破損するのは下側の稜部であるが、図10では、収納ケース40の破損状態を明確に示すため、便宜上、収納ケースの上下を反転して示している。
【0004】
また、特に記録媒体がテープである場合のテープ取出し口(アクセス口)が、落下した稜部の方向を向くように配置されていた場合、テープ取出し口が構造的に低強度であるため、カートリッジが損傷しやすくなる。その理由は、落下時に外箱内で収納ケースが大きく動いてしまい、収納ケースの角部が床からの強い衝撃を受けるためと考えられる。テープ取出し口がダメージを受けると、その中に設けられているテープ引き出し部材であるリーダーピンの位置がずれてしまって、ドライブにカートリッジを挿入したときにチャッキングミスが発生するおそれがある。
【0005】
これに対して、特許文献1には、外箱20の中での収納ケース40の動きを規制するようにした梱包構造が開示されている。
【0006】
特許文献1の包装形態を図11,図12に示している。図示するように、この特許文献1には、収納ケース40を外箱20に入れるときに、収納ケース40を外箱20に位置決めする構成が記載されている。具体的には、収納ケース40の上面47aに形成されている突出部48aに対応して、外箱20のフラップ23に穴25を形成し、外箱20に収納ケース40を入れてフラップ23を閉じることにより、図12に示すように、フラップ23の穴25が上記突出部48aに係合するようにしている。
【0007】
なお、上記収納ケース40は、その側面から外方へ突出するフランジ部44で接合される上ケース41と下ケース42とから構成されている。上記突出部48aは、上ケース41の上面に形成されているのに加えて、下ケース42の下面にも形成されていて、複数の収納ケース40を積み重ねたときに互いに嵌合するように、角形環状で互いにはまり合う嵌合リブにより構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−286425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の梱包形態を採用すると、外箱20の中で収納ケース40が動きにくくなるものの、十分な緩衝効果を得ることは困難であった。その理由は、図12に示しているように、外箱20のフラップ23の構造上、外箱20を閉じたときにフラップ23が斜めになるので、折り曲げたフラップ23の先端近辺では穴25と収納ケース40の突出部48aとが比較的深く係合するものの、フラップ23の根元付近では穴25と突出部48aとの係合状態が浅くなってしまうためであると考えられる。
【0010】
本発明は、このような問題点に鑑みて創案されたものであり、その目的は、データ記録用のカートリッジを入れた収納ケースを外箱に収めて梱包した後、外箱を落下させてしまった場合のカートリッジに対する緩衝効果を高め、カートリッジの変形や破損を抑制できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、データ記録用のカートリッジを収納するとともにその上面から突出する第1突出部とその下面から突出する第2突出部を有する収納ケースを梱包するためのカートリッジ梱包材を対象としている。
【0012】
そして、このカートリッジ梱包材は、上記収納ケースの上面、下面及び少なくとも1つの側面にそれぞれ覆うようにシート状の1枚の部材から折り曲げて形成されて、第1突出部を受け入れる第1切り取り部と第2突出部を受け入れる第2切り取り部とを有する当て板部材と、上記当て板部材を、上記収納ケースの上面、下面及び少なくとも1つの側面に沿わせた状態にして嵌合状態で収納する外箱と、を備えていることを特徴としている。
【0013】
この第1の発明では、収納ケースは、直接に外箱に収納されるのではなく、上面、下面及び少なくとも1つの側面に当て板部材が沿うように配置された状態で、外箱に収納される。このとき、収納ケースの第1突出部が当て板部材の第1切り取り部にはまり込み、第2突出部が第2切り取り部にはまり込む。当て板部材は、収納ケースの上下の面や外箱の上下の面に対して傾斜しないので、当て板部材の各切り取り部に対して収納ケースの各突出部が浅く係合するのを抑えられる。その結果、外箱を落下させた場合でも、収納ケースが外箱内で動きにくくなり、緩衝作用を高められる。また、外箱を当て板部材側から落とした場合には当て板部材が緩衝材になって衝撃を吸収できる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、上記当て板部材が、上記収納ケースの上面に沿うとともに上記第1切り取り部が形成された第1面と、上記収納ケースの底面に沿うとともに第2切り取り部が形成された第2面と、上記第1面と第2面とに折り曲げ可能に連接するとともに上記収納ケースの1つの側面に沿う第3面との3つの面からなるシート状の部材で構成されていることを特徴としている。
【0015】
この第2の発明では、収納ケースの3面が当て板部材により保護される。そこで、カートリッジで特に保護したい部位(例えばテープ取出し口)を当て板部材の第3面に向けて配置しておくと、保護作用を高められる。
【0016】
第3の発明は、第1または第2の発明において、上記各切り取り部が、上記当て板部材に形成された穴であることを特徴としている。
【0017】
この第3の発明では、当て板部材の切り取り部である穴と収納ケースの突出部とが係合することにより、外箱内での収納ケースの移動量が抑制される。
【0018】
第4の発明は、第1の発明から第3の発明の何れか1つにおいて、上記当て板部材を構成するシート状の部材が段ボールであることを特徴としている。
【0019】
この第4の発明では、当て板部材を簡単に形成できる。
【0020】
第5の発明は、第4の発明において、上記当て板部材を複数の面に折り曲げるために設けられる折り曲げ部が、上記段ボールの中芯を構成する波目の稜線と直交する方向にのびる線に沿って形成されていることを特徴としている。
【0021】
ここで、当て板部材の中芯の稜線が折り曲げ部に平行になるようにすると、当て板部材が折り曲げ部で折り曲げられるとは限らず、それ以外の部分(折り曲げ部の近くの中芯の稜線のところ)で折れてしまうおそれがあるが、この第5の発明では、中芯の稜線を折り曲げ部に直角になるようにしているので、当て板部材が折り曲げ部で確実に折り曲げられる。
【0022】
第6の発明は、データ記録用のカートリッジを収納するとともにその上面から突出する第1突出部とその下面から突出する第2突出部を有する収納ケースと、その収納ケースを収納する梱包材とからなるカートリッジ梱包構造を対象としている。
【0023】
そして、このカートリッジ梱包構造は、上記梱包材が第1の発明から第5の発明の何れか1つに記載の当て板部材と外箱とを備え、上記収納ケースが、複数個を上下に積み重ねると第1突出部と第2突出部とが係合するように構成されていることを特徴としている。
【0024】
この第6の発明では、第1突出部と第2突出部を係合させて複数個を積み重ねることができる収納ケースを1つずつ、当て板部材と外箱とを用いて収納できる。その際、収納ケースの各突出部と当て板部材の各切り取り部が係合するので、外箱を落下させたときの緩衝作用を第1から第5の発明と同様に高められる。
【0025】
第7の発明は、第6の発明において、上記収納ケースが、上下に分割された上ケースと下ケースを組み合わせることにより、内部に複数のカートリッジを収納する収納室が区画形成されるものであり、上記第1突出部が、上記上ケースに偶数個形成されるとともに、上ケースの上面から突出する環状の第1嵌合リブと、第1嵌合リブよりも大きな環状の第2嵌合リブとを同数含み、上記第2突出部が、上記下ケースに第1突出部と同じ数だけ形成されるとともに、下ケースの下面から突出する環状の第1嵌合リブと、第1嵌合リブよりも大きな環状の第2嵌合リブとを同数含み、上記第1突出部の第1嵌合リブと第2突出部の第1嵌合リブが同一形状であるとともに上記第1突出部の第2嵌合リブと第2突出部の第2嵌合リブが同一形状であり、上記第1突出部の第1嵌合リブと第2突出部の第2嵌合リブが互いに係合し、上記第1突出部の第2嵌合リブと第2突出部の第1嵌合リブが互いに嵌合するように構成されていることを特徴としている。
【0026】
この第7の発明では、当て板部材には、第1突出部を構成する第1嵌合リブ及び第2嵌合リブがはまり込む切り取り部と、第2突出部を構成する第2嵌合リブ及び第1嵌合リブがはまり込む切り取り部とが形成される。そして、この当て板部材により、緩衝作用を高められる。また、複数の収納ケースを積み重ねるときには、第1突出部を構成する第1嵌合リブ及び第2嵌合リブと、上記第2突出部を構成する第2嵌合リブ及び第1嵌合リブが、互いに嵌合する。
【0027】
第8の発明は、第6の発明または第7の発明において、上記第1嵌合リブ及び第2嵌合リブが、上記上ケースの上面の中心及び上記下ケースの下面の中心に対して、点対称に配置されていることを特徴としている。
【0028】
この第8の発明では、第1嵌合リブ及び第2嵌合リブが収納ケースの上面及び下面の中心に対して点対称に配置されているので、複数の収納ケースについて連続して梱包作業を行う場合に、当て板部材に対するカートリッジの向きを合わせるようにした状態で、第1嵌合リブと第2嵌合リブが当て板部材と容易に係合する。
【0029】
第9の発明は、第8の発明において、上記当て板部材には、シート状部材の表裏を区別するための表裏区別部として、上記当て板部材の対角に位置する2つの角部に形成された面取り部が形成されていることを特徴としている。
【0030】
この第9の発明では、点対称に形成された第1嵌合リブと第2嵌合リブを有する収納ケースに、当て板部材が表裏を区別された状態で被せられるので、第1嵌合リブと第2嵌合リブが当て板部材の切り取り部と確実に係合する。その際、作業者が面取り部の位置を確認するだけで当て板部材の表裏を区別できる。
【0031】
第10の発明は、第6の発明から第9の発明の何れか1つにおいて、上記カートリッジは、その内部に収納された記録媒体へのアクセス口が、上記収納ケースの側面を覆う当て板部材の方向を向くように、上記収納ケース内に配列されていることを特徴としている。
【0032】
この第10の発明では、収納ケースに当て板部材を被せて外箱内に収納したときに、カートリッジのアクセス口が当て板部材で覆われる。そのため、強度が比較的弱いアクセス口に対する衝撃を特に効果的に低減できる。
【0033】
第11の発明は、第6の発明から第10の発明の何れか1つにおいて、上記当て板部材の切り取り部内における上記収納ケースの各突出部の移動可能量に基づいて、上記外箱内での上記収納ケースの移動可能量を規制するように設定されていることを特徴としている。
【0034】
この第11の発明では、外箱が落下したときなどに収納ケースが外箱内で動いても、収納ケースが外箱の内面に接するよりも先に、収納ケースの各突出部の外側縁が当て板部材の切り取り部の内側縁に当たって停止するように構成できる。その結果、収納ケース及びカートリッジに加わる衝撃力が低減される。
【0035】
第12の発明は、第11の発明において、上記収納ケースが、各側面から外方へ延出するフランジ部を有し、上記当て板部材の切り取り部の内側縁と収納ケースの突出部の外側縁との間の隙間寸法aと、上記フランジ部と梱包材の内面との間の隙間寸法bとが、0≦a<bの関係を満たすように設定され、上記外箱内での収納ケースの移動量が、上記フランジの外周端面が外箱の内面に当接するまでの移動量より小さいことを特徴としている。
【0036】
この第12の発明では、外箱が落下したときなどに収納ケースが外箱内で動いても、収納ケースのフランジの外周端面が外箱の内面に接するよりも先に、収納ケースの各突出部が当て板部材の切り取り部の内側縁に当たって停止する。このことにより、収納ケース及びカートリッジに加わる衝撃力が低減される。
【0037】
第13の発明は、第11の発明において、上記収納ケースが、各側面から外方へ延出するフランジ部を有し、上記当て板部材の切り取り部の内側縁と収納ケースの突出部の外側縁との間の隙間寸法aと、上記フランジ部と梱包材の内面との間の隙間寸法bとが、a=bの関係を満たすように設定され、上記外箱内での収納ケースの移動量が、上記フランジの外周端面が外箱の内面に当接するまでの移動量に等しいことを特徴としている。
【0038】
この第13の発明では、外箱が落下したときなどに収納ケースが外箱内で動いても、収納ケースのフランジの外周端面が外箱の内面に接すると同時に、収納ケースの各突出部が当て板部材の切り取り部の縁内側に当たって停止する。このことにより、収納ケース及びカートリッジに加わる衝撃力が低減される。
【0039】
第14の発明は、第11の発明において、上記収納ケースが、各側面から外方へ延出する可撓性のフランジ部を有し、上記当て板部材の切り取り部の内側縁と収納ケースの突出部の外側縁との間の隙間寸法aと、上記収納ケースの側面と梱包材の内面との間の隙間寸法cとが、0≦a<cの関係を満たすように設定され、上記外箱内での収納ケースの移動量が、上記フランジが変形して収納ケースの側面が外箱の内面に当接するまでの移動量より小さいことを特徴としている。
【0040】
この第14の発明では、外箱が落下したときなどに収納ケースが外箱内で動いても、収納ケースのフランジが変形して収納ケースの側面が外箱の内面に接するよりも先に、収納ケースの各突出部の外側縁が当て板部材の切り取り部の内側縁に当たって停止する。このことにより、収納ケース及びカートリッジに加わる衝撃力が低減される。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、外箱とは別の1枚の当て板部材を折り曲げて収納ケースを覆えるようにしている。そして、第1切り取り部と第1突出部の係合状態が浅くなったり、第2切り取り部と第2突出部の係合状態が浅くなったりするのを防止できるので、当て板部材で覆った収納ケースが入った外箱を稜部から床に落とした場合でも、外箱内で収納ケースが動きにくくなるようにしている。したがって、収納ケースの角部に加わる衝撃力が従来よりも弱くなるので、収納ケースの破損を抑えられる。その結果、収納ケース内のカートリッジの変形や損傷も抑制できる。
【0042】
上記第2の発明によれば、収納ケースの3面の保護効果を当て板部材により高められるので、記録媒体のアクセス口など、カートリッジで特に保護したい部位を当て板部材の第3面に向けて配置しておくと、高い保護効果を得ることができる。この場合、保護すべき部位は、アクセス口以外の任意の部位にしてもよい。
【0043】
上記第3の発明によれば、当て板部材の切り取り部を穴にすることにより、その当て板部材の穴と収納ケースの各突出部とが係合する。そして、外箱内での収納ケースの移動量を簡単に抑制できる。
【0044】
上記第4の発明によれば、段ボールを用いて当て板部材を簡単に形成でき、なおかつ緩衝効果を高められる。
【0045】
上記第5の発明によれば、中芯の稜線を折り曲げ部に直角になるようにしているので、当て板部材を正確に折り曲げ部で折り曲げることができる。そのため、梱包作業の際に当て板部材が意図しない部分で折れて作業ミスが生じるのを防止できる。
【0046】
上記第6の発明によれば、複数個の収納ケースを積み重ねるときに、収納ケース同士を位置決めするために用いるようにその上下の面に形成される第1突出部と第2突出部を利用して、各突出部を当て板部材の各切り取り部にはめ込むことにより、緩衝効果を高められる。そのため、緩衝効果を得るための突出部を、それ専用に設けたりしなくてもよい。
【0047】
上記第7の発明によれば、第1突出部を構成する第1嵌合リブ及び第2嵌合リブがはまり込む切り取り部と、第2突出部を構成する第2嵌合リブ及び第1嵌合リブがはまり込む切り取り部とが形成された当て板部材を用いることで緩衝効果を高められる。また、複数の収納ケースを積み重ねるときには、第1突出部を構成する第1嵌合リブ及び第2嵌合リブと、上記第2突出部を構成する第2嵌合リブ及び第1嵌合リブが、互いに嵌合して、位置決め効果を得ることができる。
【0048】
上記第8の発明によれば、第1嵌合リブ及び第2嵌合リブを収納ケースの上面及び下面の中心に対して点対称に配置したことにより、複数の収納ケースを連続して梱包する作業を行う場合に、当て板部材に対するカートリッジの向きを合わせるようにすれば、収納ケースの向きにかかわらず、第1嵌合リブと第2嵌合リブが当て板部材と容易に係合する。そのため、梱包作業を容易に行える。
【0049】
上記第9の発明によれば、点対称に形成された第1嵌合リブと第2嵌合リブを有する収納ケースに、当て板部材が表裏を区別された状態で被せることになるので、第1嵌合リブと第2嵌合リブが当て板部材に確実に係合する。また、作業者が面取り部の位置を確認するだけで当て板部材の表裏を区別できるので、梱包作業をさらに容易に行える。
【0050】
上記第10の発明によれば、収納ケースに当て板部材を被せて外箱内に収納したときに、カートリッジのアクセス口を当て板部材で覆うことにより、強度が比較的弱いアクセス口に対する衝撃を特に効果的に低減できるので、カートリッジの変形や損傷を効果的に抑制できる。
【0051】
上記第11〜第14の発明によれば、外箱が落下したときなどに収納ケースが外箱内で動いても、収納ケースが外箱の内面に接するよりも先に、収納ケースの各突出部が当て板部材の切り取り部の内側縁に当たって停止するようにして、収納ケース及びカートリッジに加わる衝撃力を低減しているので、カートリッジの変形や損傷を効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るカートリッジ梱包構造に用いられる収納ケースの斜視図である。
【図2】図2は、実施形態のカートリッジ梱包構造に用いられる当て板部材の平面図である。
【図3】図3は、実施形態のカートリッジ梱包構造による梱包前の状態を示す分解斜視図である。
【図4】図4は、実施形態のカートリッジ梱包構造による梱包途中の状態を示す斜視図である。
【図5】図5(A)は、当て板部材で覆った収納ケースを外箱内に入れた状態を示す平面配置図、図5(B)は、図5(A)のB−B線断面図である。
【図6】図6は、実施例及び比較例1,2に関する落下試験の結果を示す表である。
【図7】図7は、変形例に係る当て板部材の平面図である。
【図8】図8は、変形例に係る当て板部材を用いた梱包構造を示す分解斜視図である。
【図9】図9は、外箱が床に落下する状態を示す斜視図である。
【図10】図10は、破損した収納ケースを示す斜視図である。
【図11】図11は、従来(比較例1)のカートリッジ梱包構造を示す斜視図である。
【図12】図12は、図11のカートリッジ梱包構造を示す断面図である。
【図13】図13は、比較例2のカートリッジ梱包構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0054】
この実施形態は、外箱20(図3参照)と当て板部材30(図2,図3参照)とからなる本発明の梱包材10を用いて、データ記録用のテープカートリッジ(図示せず)を収納した収納ケース40を梱包する構造に関するものである。
【0055】
<収納ケース>
まず、収納ケース40について説明する。図1は、収納ケース40の斜視図である。この収納ケース40は、上下に分割された上ケース41と下ケース42を組み合わせることにより構成されている。収納ケース40の内部には、複数のカートリッジを収納する収納室(図示せず)が区画形成されている。
【0056】
上ケース41及び下ケース42は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPP(ポリプロピレン)等の合成樹脂のシートを加熱して軟化させた後、真空引きにより所定形状の金型に密着させて成形する、いわゆる真空成形により一体成形されている。本実施形態の上ケース41及び下ケース42の素材には、透明性に優れたPETが用いられている。そうすることで、収納ケース40に収納したテープカートリッジを収納ケース40の外からはっきりと視認できる。そのため、例えば、テープカートリッジにバーコードが貼り付けられている場合には、収納ケース40を通してバーコードを読み取ることができる。
【0057】
上ケース41と下ケース42は、実質的に同一形状であり、それぞれ、2つが一組になって上記収納室を区画するように、重ね合わせる側が開口したボックス部43と、ボックス部43の開口端から収納ケース40の外方へ延出するフランジ部44とを有している。フランジ部44には、凹凸を組み合わせてフランジ部44同士を密着させ、上ケース41と下ケース42を一体化するための係合部45が複数箇所に設けられている。
【0058】
上記ボックス部43は、収納室の外側に位置する4つの側面46,46・・と、各側面46の片側の端部を閉塞する閉塞面47(以下、上ケース41の閉塞面47を上面47a、下ケース42の閉塞面47を下面47bという)を有している。また、詳細は示していないが、ボックス部43はカートリッジを10個ずつ2列に並べて収納するように形成されている。ボックス部43の角(稜部)にそれぞれ9個形成されている溝状の部分46aは、収納室側から見ると内面から突出する小さな壁になっており、この壁が隣り合うカートリッジ同士の仕切りになって、収納室の中でのカートリッジの位置が保持される。
【0059】
上記収納ケース40には、上ケース41の上面47aから外側へ突出する第1突出部48aと、下ケース42の下面47bから外側へ突出する第2突出部48bとが形成されている。第2突出部48bは、第1突出部48aと同じ形状、同じ配置で形成されており、収納ケース40を上下反転させると、第1突出部48aと同一の外観を呈する。そこで、図1では、便宜上、第1突出部48aを含む上ケース41の各部を表す符号とともに、第2突出部48bを含む下ケース42の各部を表す符号を括弧書きで示している。
【0060】
上記第1突出部48aは、上記上ケース41に4つ形成されるとともに、上ケース41の上面47aから突出する角形環状の第1嵌合リブ49aと、その第1嵌合リブ49aよりも大きな角形環状の第2嵌合リブ49bとを2つずつ含んでいる。第1嵌合リブ49aは、上ケース41の上面47aにおける一方の対角側の位置に配置され、第2嵌合リブ49bは、その上面47aにおける他方の対角側の位置に配置されている。
【0061】
また、上記第2突出部48bは、上記下ケース42に4つ形成されるとともに、下ケース42の下面47bから突出する角形環状の第1嵌合リブ49aと、その第1嵌合リブ49aよりも大きな角形環状の第2嵌合リブ49bとを2つずつ含んでいる。第1嵌合リブ49aは、下ケース42の下面47bにおける一方の対角側の位置に配置され、第2嵌合リブ49bは、その下面47bにおける他方の対角側の位置に配置されている。
【0062】
上ケース41側の第1嵌合リブ49aと下ケース42側の第1嵌合リブ49aは同じ形状である。また、上ケース41側の第2嵌合リブ49bと下ケース42側の第2嵌合リブ49bも同じ形状である。
【0063】
そして、上ケース41側の第1突出部48aを構成する第1嵌合リブ49a及び第2嵌合リブ49bと、下ケース42側の第2突出部48bを構成する第2嵌合リブ49b及び第1嵌合リブ49aは、第1嵌合リブ49aと第2嵌合リブ49bとが互いに嵌合する大きさに形成されている。具体的には、第1嵌合リブ49aが有している一対の対向する長辺部分同士の外側寸法よりも、第2嵌合リブ49bが有している一対の対向する長辺部分同士の内側寸法がわずかに大きく設定され、第1嵌合リブ49aが有している一対の対向する短辺部分同士の外側寸法よりも、第2嵌合リブ49bが有している一対の対向する短辺部分同士の内側寸法がわずかに大きく設定されている。こうすることにより、複数の収納ケース40を積み重ねると、上記第1突出部48aの第1嵌合リブ49aと第2突出部48bの第2嵌合リブ49bが互いに嵌合し、上記第1突出部48aの第2嵌合リブ49bと第2突出部48bの第1嵌合リブ49aが互いに嵌合する(第1突出部48aと第2突出部48bとが係合する)。
【0064】
また、上記第1嵌合リブ49a及び第2嵌合リブ49bは、上記上ケース41の上面47aの中心及び上記下ケース42の下面47bの中心に対して、点対称の位置に配置されている。上ケース41側における第1嵌合リブ49a及び第2嵌合リブ49bの位置関係と、下ケース42側における第1嵌合リブ49a及び第2嵌合リブ49bの位置関係は、互いに同一である。
【0065】
<当て板部材及び外箱>
次に、図2に平面図を示した当て板部材30について説明する。
【0066】
この当て板部材30は、段ボールからなるシート状の1枚の部材により形成されている。当て板部材30は、上記収納ケース40の上面47a、下面47b及び1つの側面46をそれぞれ覆うように、折り曲げ可能に形成されている。
【0067】
具体的には、当て板部材30は、上記収納ケース40の上面47aに沿うように配置される第1面31と、上記収納ケース40の底面に沿うように配置される第2面32と、上記第1面31と第2面32とに折り曲げ可能に連接するとともに上記収納ケース40の1つの側面46を覆うように配置される第3面33との3つの面を有している。また、当て板部材30には、第1面31と第3面33との間、及び第2面32と第3面33との間に、それぞれ、上記当て板部材30を複数の面(この実施例では3つの面)の間で折り曲げるために、折り罫ないしミシン目が線状の折り曲げ部34として形成されている。この直線状の折り曲げ部34は、当て板部材30の長辺と直角に形成されている。
【0068】
また、図2において、当て板部材30を部分的に破断して中芯30aを示しているように、中芯の波目(山と谷)の稜線は、図2における当て板部材30の長辺と平行になっている。そのため、上記折り曲げ部34は、中芯の稜線に対して直角にのびる線に沿って形成されていることになる。
【0069】
上記第1面31には、収納ケース40の第1突出部48aを受け入れる第1切り取り部35aが形成されている。また、上記第2面32には、収納ケース40の第2突出部48bを受け入れる第2切り取り部35bが形成されている。この第1切り取り部35a及び第2切り取り部35bは、具体的には、第1面31及び第2面32に形成された穴(開口)であり、各突出部48a,48bがはまったときに全周に若干の隙間ができる大きさに形成されている。
【0070】
第1切り取り部35aは、上ケース41側の第1嵌合リブ49aに対応する位置と形状に形成された第1開口36aと、同じく上ケース41側の第2嵌合リブ49bに対応する位置と形状に形成された第2開口36bとを含んでいる。また、第2切り取り部35bは、下ケース42側の第1嵌合リブ49aに対応する位置と形状に形成された第1開口36aと、同じく下ケース42側の第2嵌合リブ49bに対応する位置と形状に形成された第2開口36bとを含んでいる。第1切り取り部35aの第1開口36aと第2切り取り部35bの第1開口36aは同じ寸法で同じ形状であり、第1切り取り部35aの第2開口36bと第2切り取り部35bの第2開口36bは同じ寸法で同じ形状である。なお、第1開口36aの開口面積よりも、第2開口36bの開口面積が大きい。
【0071】
当て板部材30には、図における右上の角部と左下の角部に面取り部37が形成されている。この面取り部37は、梱包作業を行うときに、当て板部材30の表裏を区別するための表裏区別部として用いられる。また、梱包後に外箱から当て板を取り出すときに指などを引っ掛ける部分としても用いられる。上記面取り部37は、当て板部材30の対角に位置していれば、図の左上の角部と右下の角部に形成してもよい。
【0072】
外箱20は、図3に示しているように、一般的な段ボール箱である。この外箱20は、上記当て板部材30で上記収納ケース40の上面47a、下面47b及び1つの側面46を覆う状態にして、収納ケース40及び当て板部材30を嵌合状態で収納するように寸法構成されている。外箱20は、4つの側板21と、底板22と、上端の開口部を閉じるための4つのフラップ23を有している。
【0073】
<梱包作業>
梱包時には、図3及び図4に示しているように作業を行う。図3には、当て板部材30を折り曲げた状態にしたものを実線で表していて、折り曲げた当て板部材30を外箱20に入れ、その上から収納ケース40を入れる様子を示しているが、実際の作業では、当て板は、仮想線で示すように、折り曲げずに真っ直ぐなままで第2面32の部分を外箱20に入れて斜めの状態にして、収納ケース40をその当て板部材30の上で滑らせながら外箱20の中へ押し込む作業を行う。そうすることで作業性が向上する。
【0074】
ここで、当て板部材30の中芯30aの稜線が折り曲げ部34に平行になるように形成した場合には、当て板部材30が折り曲げ部34で折り曲げられるとは限らず、それ以外の部分(折り曲げ部34の両側付近の中芯の稜線のところ)で折れてしまうおそれがあるが、本実施形態では、中芯30aの稜線を折り曲げ部34に直角になるようにしているので、当て板部材30を正確に折り曲げ部34で折り曲げることができる。そのため、梱包作業の作業ミスを防止できる。
【0075】
また、収納ケース40に形成されている第1嵌合リブ49aと第2嵌合リブ49bは、上述したように大きさが異なっている。そのため、第1嵌合リブ49a及び第2嵌合リブ49bに対応するように当て板部材30に形成されている第1開口36a及び第2開口36bも大きさが異なっている。したがって、当て板部材30の表裏を定めて外箱20に入れなければ、第1開口36a部と第1嵌合リブ49aが対になるとともに第2開口36b部と第2嵌合リブ49bが対になる関係が守られず、対応関係が逆になってしまうことが考えられる。しかし、本実施形態では、当て板部材30の面取り部37が作業者に対して常に右上と左下に位置するようにして作業をすれば、当て板部材30の表裏が逆にならないため、作業行程中に製造ライン上で運ばれてきた収納ケースを決まった向きで外箱に入れると、第1嵌合リブ49a及び第2嵌合リブ49bと、第1開口36a部及び第2開口36b部の位置関係が守られる。そのため、誤作業を防止できる。
【0076】
ここまでの作業が終わった時点で、当て板部材30は、外箱20の中で図3に実線で示すように、第2面32と第3面33の間でほぼ直角に折れている。その後、さらに第1面31を上ケース41に重ねるように折り曲げることにより、図4に示す状態になる。それから外箱20のフラップを閉じることにより、1つの収納ケース40の梱包作業が終了する。
【0077】
ここで、収納ケース40の中にカートリッジを入れる作業は、梱包作業の前に予め行われており、収納ケース40の中のカートリッジは、2列とも、記録媒体であるテープの取出し口(アクセス口)がすべて同じ方向を向くように配列されている。そして、梱包時は、カートリッジのテープ取出し口が、収納ケース40の側面46を覆う当て板部材30の第3面33の方を向くようにして作業が行われる。こうすることにより、保護が最も必要とされるテープ取出し口が当て板部材30で保護されることになる。
【0078】
<外箱内での収納ケースの移動可能量の設定>
本実施形態では、当て板部材30の各切り取り部35a,35bに収納ケース40の各突出部49a,49bをはめ込んだときに、各突出部49a,49bの外側縁と各切り取り部35a,35bの内側縁との間にできる隙間寸法を所定の範囲に設定することにより、外箱20内での収納ケース40の移動可能量が大きくなりすぎないようにしている。つまり、本実施形態では、上記当て板部材30の各切り取り部35a,35b内における上記収納ケース40の各突出部49a,49bの移動可能量に基づいて、上記外箱20内での上記収納ケース40の移動可能量を規制するように設定されている。
【0079】
図5(A)は、当て板部材30で覆った収納ケース40を外箱20内に入れた状態を示す平面配置図、図5(B)は、図5(A)のB−B線断面図である。この図において、各突出部49a,49bの外側縁と各切り取り部35a,35bの内側縁との間にできる上記の隙間寸法をaとし、当て板の第3面33とフランジ部44の外周縁部の間の隙間寸法をbとしている。また、当て板の第3面33で覆われていない側(図の上側)は、外箱20の内面とフランジ部44の外周面との隙間寸法をbとする。言い換えると、フランジ部44の外周縁部と梱包材10との間の隙間寸法をbで表している。
【0080】
上記の構成において、収納ケース40のフランジ部44の外周端面が当て板部材30の内面もしくは外箱20の内面(つまり、梱包材10の内面)に接触しないように、外箱20の中での収納ケース40の移動量を設定するには、収納ケース40のフランジ部44の外周端面が当て板部材30の内面もしくは外箱20の内面に接触する前に、突出部49a,49bの外側縁が切り取り部35a,35bの内側縁に接触する必要があるので、
0≦a<b ・・・(1)
の関係式を満たす必要がある。
【0081】
また、収納ケース40のフランジ部44の外周端面が当て板部材30の内面もしくは外箱20の内面に接触するのとほぼ同時に、突出部49a,49bの外側縁が切り取り部35a,35bの内側縁に接触するようにして、外箱20の中での収納ケース40の移動量を規制するには、
a=b ・・・(2)
の関係式を満たす必要がある。
【0082】
以上のことをまとめると、収納ケース40のフランジ部44の外周端面が当て板部材30の内面もしくは外箱20の内面に接触するまでに、外箱20の中での収納ケース40の動きを止めるように移動量を設定するには、
a≦b ・・・(3)
の関係式を満たせばよい。
【0083】
<落下テスト>
次に、3種類のテスト対象を用いて2種類の落下テストを行った結果を図6の表を用いて説明する。
【0084】
まず、テスト対象として、本実施形態の当て板部材30を用いて収納ケース40を梱包したものを実施例とし、図9,図10に示すように外箱20のフラップ23に穴25を設けて収納ケース40の突出部48aにはめ込むようにしたものを比較例1とし、図13に示すように、収納ケース40の上下の面に別々に当てられる切り取り部51付きの2枚の当て板50を用いて、収納ケース40を上下からサンドイッチ状に挟んだ状態で外箱20で梱包したものを比較例2とした。なお、実施例と比較例2の外箱20にはシングルフルートの段ボールで形成したものを用い、比較例1の外箱20にはダブルフルートの段ボールで形成したものを用いた。
【0085】
落下テスト(1)では、梱包したケースを、1メートルの高さからPタイル上に10回落下させた。ケースの落下のさせ方は、1回目は、テープカートリッジのテープ取出し口がある側の稜角が床面に当たるように落とし、2回目〜4回目は、その稜角をコーナーとする3つの稜線が床面に当たるように落とし、5〜10回目は、外箱20の6面が床に当たるように順に落とす方法を採用した。
【0086】
落下テスト(2)では、梱包したケースを、0.75メートルの高さからPタイル上に6回落下させた。ケースの落下のさせ方は、1回目〜6回目まで順に、外箱20の6面が床に当たるように落とす方法を採用した。
【0087】
テスト結果を図6の表に示している。図6では、カートリッジや収納ケース40の損傷度合いを記号で表している。
【0088】
落下テスト(1)では、比較例1だけは外箱20にダブルフルートの段ボールを用いているので、同じ基準での比較対照は困難であるが、カートリッジのリーダーピンのずれ、カートリッジの破損については、どれも問題のないレベルであった。一方、収納ケース40については、比較例1においてブリッジ部(図1の符号40a参照)が損傷していた。比較例1では収納ケース40の角部の潰れが少なかったが、これは外箱20の素材がダブルフルートであることが大きく影響しているものと考えられ、シングルフルートであれば、カートリッジのテスト項目と収納ケース40のテスト項目の両方とも、明らかに結果が違っていたと考えられる。
【0089】
落下テスト(2)では、収納ケース40の天面(上面47a)の破損に関して実施例が比較例1よりも優れており、収納ケース40の角部(フランジ部44の角部)のつぶれに関して実施例が比較例2よりも優れていることが分かる。これは、当て板の第3面33による保護の効果が高いためと考えられる。フランジ部44の角部が潰れると、カートリッジのテープ取出し口にも衝撃が加わりやすいので、このテスト結果では、偶然、比較例2でカートリッジの破損はみられなかったものの、実際の作業中にケースを落としてしまったときに、比較例2の構造だとカートリッジが損傷しやすいことは容易に考えられる。また、落下テスト(1)では、比較例2と実施例とで角部のつぶれに差が見られない結果になっているが、落下テスト(2)の結果を考慮すれば、より条件の厳しい落下テスト(1)でも、実施例より比較例2の方が、角部のつぶれや、それに伴うカートリッジの影響が出やすいことは容易に考えられる。
【0090】
なお、落下テスト(1)において実施例の収納ケースの角部に破損が生じていることが示されているが、落下試験(1)は実際の作業ではあり得ないほど条件の厳しい試験であり、このテストに耐えるほどの耐久性は実際問題としては求められていない。
【0091】
また、表に用いている記号で「問題なし」を表しているのは変形していない部分であるが、「破損小」では破片が分離していないまでも多少の変形はしており、「破損中」や「破損大」では亀裂が比較的大きくなっている状態である。本実施例では、実際の作業中の落下に近いテストである落下テスト(2)において、非常に優秀な結果が得られている。
【0092】
また、図6の表には梱包時の作業性もテスト結果として示しているが、図示しているとおり、実施例のものでは当て板部材30を1枚にして表裏を確認できる構成にしているので、比較例1や比較例2に比べて非常に作業性が優れていることが分かる。比較例1の作業性が悪いのは、当て板50の表裏をいちいち確認して裏返したりしなければならないからである。
【0093】
−実施形態の効果−
本実施形態によれば、第1突出部48aを構成する第1嵌合リブ49a及び第2嵌合リブ49bがはまり込む第1切り取り部35aを有する第1面31と、第2突出部48bを構成する第2嵌合リブ49b及び第1嵌合リブ49aがはまり込む第2切り取り部35bを有する第2面32と、第1面31及び第2面32を折り曲げ可能に連接する第3面33とを有する1枚の当て板部材30を、外箱20とは別に用い、収納ケース40を当て板部材30で覆って外箱20で梱包するようにしている。その結果、従来とは違って、第1切り取り部35aと第1突出部48aの係合状態が浅くなったり、第2切り取り部35bと第2突出部48bの係合状態が浅くなったりするのを防止できる。
【0094】
したがって、当て板部材30で覆った収納ケース40を入れた外箱20を稜部から床Fに落とした場合でも、外箱20内で収納ケース40が動きにくくなる。また、当て板部材30の第3面33が緩衝材として作用する。そのため、上記のテスト結果において、外箱20の材料が同じシングルフルートであるとすれば、本実施形態における収納ケース40の角部のつぶれが最も小さくなることが明らかであり、収納ケース40の割れも抑制できるし、収納ケース40のボックス部43の稜部の変形も抑えられる。以上のことから、収納ケース40内のカートリッジの変形や損傷も抑制できる。特に、カートリッジのテープ取出し口を当て板部材30で覆うことにより、強度が比較的弱いテープアクセス口に対する衝撃を効果的に低減できる。また、カートリッジは、テープ取出し口が設けられていない側は比較的強度があるので、当て板部材30で覆っていなくても、変形や破損のおそれは少ない。
【0095】
以上のように、本実施形態によれば、収納ケース40に対する緩衝効果を高めることができる。また、複数個の収納ケース40を積み重ねるときに、収納ケース40同士を位置決めするために用いるようにその上下の面に形成される第1突出部48aと第2突出部48bを利用して、各突出部48a,48bを当て板部材30の各切り取り部35a,35bにはめ込むことにより、緩衝効果を高められるので、緩衝効果を得るための突出部を、それ専用に設けたりしなくてもよい。
【0096】
また、第1嵌合リブ49a及び第2嵌合リブ49bを収納ケース40の上面47a及び下面47bの中心に対して点対称に配置しているので、複数の収納ケース40を連続して梱包する作業を行う場合に、当て板部材30に対するカートリッジの向きを合わせるようにすれば、収納ケース40の向きにかかわらず、第1嵌合リブ49aと第2嵌合リブ49bが当て板部材30と容易に係合する。そのため、梱包作業を容易に行える。さらに、点対称に形成された第1嵌合リブ49aと第2嵌合リブ49bを有する収納ケース40に面取り部37を形成しているので、当て板部材30が表裏を区別された状態で収納ケース40に被せることが容易になり、梱包作業をより容易に行える。また、当て板部材30の中芯30aの波目の稜線と折り曲げ部34が直角になるように設定しているので、梱包時の折り曲げ不良で当て板部材30が無駄になるのも防止できる。
【0097】
また、当て板部材30の各切り取り部35a,35bの中での収納ケース40の各突出部49a,49bの移動量と、外箱20の中での収納ケース40の移動量との関係を規制しているので、外箱20が落下したときなどに収納ケース40が外箱20内で動いても、収納ケース40が外箱20の内面に接するまでに、収納ケース40の動きが止まる。このことにより、収納ケース40及びカートリッジに床から加わる衝撃力を低減できるため、カートリッジの変形や損傷を効果的に防止できる。
【0098】
−実施形態の変形例−
上記実施形態では、外箱20内での収納ケース40の移動量を別の寸法設定で制限することができる。
【0099】
具体的には、この変形例では、図5において、当て板の第3面33の内面と収納ケース40の側面との間の隙間寸法、及び外箱20の側板の内面と収納ケース40の側面との間の隙間寸法(つまり、梱包材10の内面と収納ケース40の側面との間の隙間寸法であり、いずれもcで表す)を基準に、収納ケース40の移動量を設定している。
【0100】
収納ケース40の移動量は、上述したとおり、収納ケース40の各突出部49a,49bの外側縁と当て板部材30の各切り取り部35a,35bの内側縁との間の隙間寸法aで表せる。そして、本変形例では、
0≦a<c ・・・(4)
の関係式を満たすように各隙間寸法が設定されている。
【0101】
このようにすると、ケースが床の上に落下したときに、収納ケース40のフランジ部44は外箱20の内面に当たってしまうが、収納ケース40がプラスチックシート製であってフランジ部44が可撓性を有しているので、フランジ部44が変形する。そして、フランジ部44が変形して収納ケース40の側面46が外箱20の内面または当て板部材10の内面に当接するまでには、外箱20内での収納ケース40の動きが止まることになる。
【0102】
したがって、この変形例においても、従来の梱包構造に比べて緩衝効果を高められるので、ケースを落下させたときのカートリッジの保護性能を高めることが可能になる。
【0103】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0104】
例えば、上記実施形態においては、当て板部材30を、第1面31、第2面32及び第3面33の3つの面からなる1枚のシート状部材から構成しているが、図7に示すように、第1面31、第2面32、第3面33及び第4面38の4つの面からなる1枚のシート状部材から構成してもよい。この場合も、当て板部材30は、各面31,32,33,38の間で折り曲げ可能に構成される。
【0105】
この当て板部材30を用いる場合、収納作業は図8に示すようにして行われる。この場合も、当て板部材30の形状を分かりやすくするように、当て板部材30を折り曲げた状態で図示しているが、当て板部材30を第2面が外箱20の開口部を覆うように外箱20の上に載せて、その上から収納ケース40を押し込む作業を行うとよい。また、その後、当て板部材30の第1面31を折り曲げて、外箱20のフラップ23を閉じるとよい。そうすると、作業を簡単に行える。
【0106】
そして、このようにすると、収納ケース40が当て板部材30によって4面から覆われるので、緩衝効果をより高めることが可能となる。その他の構成や効果は上記の実施形態と同様である。
【0107】
また、図示はしていないが、収納ケース40は、カートリッジを10個ずつ2列に収納するものでなくてもよく、収納する列の数やカートリッジの数は適宜変更することができる。
【0108】
さらに、上ケース41や下ケース42の形状や、突出部の形状なども、当て板部材30と組み合わせて上記実施形態と同様の作用効果が得られるようにしておく限りは、適宜変更してもよい。
【0109】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0110】
以上説明したように、本発明は、データ記録用のカートリッジを収納した収納ケース40を外箱20に入れて保護するタイプの梱包材と、この梱包材を用いてカートリッジ収納ケース40を梱包する梱包構造について有用である。
【符号の説明】
【0111】
10 カートリッジ梱包材
20 外箱
30 当て板部材
31 第1面
32 第2面
33 第3面
35a 第1切り取り部
35b 第2切り取り部
37 面取り部(表裏区別部)
40 収納ケース
41 上ケース
42 下ケース
44 フランジ部
47a 上面
47b 下面
48a 第1突出部
48b 第2突出部
49a 第1嵌合リブ
49b 第2嵌合リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ記録用のカートリッジを収納するとともにその上面から突出する第1突出部とその下面から突出する第2突出部を有する収納ケースを梱包するためのカートリッジ梱包材であって、
上記収納ケースの上面、下面及び少なくとも1つの側面をそれぞれ覆うようにシート状の1枚の部材から折り曲げて形成されて、第1突出部を受け入れる第1切り取り部と第2突出部を受け入れる第2切り取り部とを有する当て板部材と、
上記当て板部材を、上記収納ケースの上面、下面及び少なくとも1つの側面に沿う状態にして嵌合状態で収納する外箱と、
を備えていることを特徴とするカートリッジ梱包材。
【請求項2】
請求項1において、
上記当て板部材は、上記収納ケースの上面に沿うとともに上記第1切り取り部が形成された第1面と、上記収納ケースの底面に沿うとともに第2切り取り部が形成された第2面と、上記第1面と第2面とに折り曲げ可能に連接するとともに上記収納ケースの1つの側面に沿う第3面との3つの面からなるシート状の部材で構成されていることを特徴とするカートリッジ梱包材。
【請求項3】
請求項1または2において、
上記各切り取り部は、上記当て板部材に形成された穴であることを特徴とするカートリッジ梱包材。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1つにおいて、
上記当て板部材を構成するシート状の部材が段ボールであることを特徴とするカートリッジ梱包材。
【請求項5】
請求項4において、
上記当て板部材を複数の面に折り曲げるために設けられる折り曲げ部が、上記段ボールの中芯を構成する波目の稜線と直交する方向にのびる線に沿って形成されていることを特徴とするカートリッジ梱包材。
【請求項6】
データ記録用のカートリッジを収納するとともにその上面から突出する第1突出部とその下面から突出する第2突出部を有する収納ケースと、その収納ケースを収納する梱包材とからなるカートリッジ梱包構造であって、
上記梱包材が、請求項1から5の何れか1つに記載の当て板部材と外箱とを備え、
上記収納ケースは、複数個を積み重ねると第1突出部と第2突出部とが係合するように構成されていることを特徴とするカートリッジ梱包構造。
【請求項7】
請求項6において、
上記収納ケースは、上下に分割された上ケースと下ケースを組み合わせることにより、内部に複数のカートリッジを収納する収納室が区画形成されるものであり、
上記第1突出部が、上記上ケースに偶数個形成されるとともに、上ケースの上面から突出する環状の第1嵌合リブと、第1嵌合リブよりも大きな環状の第2嵌合リブとを同数含み、
上記第2突出部が、上記下ケースに第1突出部と同じ数だけ形成されるとともに、下ケースの下面から突出する環状の第1嵌合リブと、第1嵌合リブよりも大きな環状の第2嵌合リブとを同数含み、
上記第1突出部の第1嵌合リブと第2突出部の第1嵌合リブが同一形状であるとともに上記第1突出部の第2嵌合リブと第2突出部の第2嵌合リブが同一形状であり、
上記第1突出部の第1嵌合リブと第2突出部の第2嵌合リブが互いに係合し、上記第1突出部の第2嵌合リブと第2突出部の第1嵌合リブが互いに嵌合するように構成されていることを特徴とするカートリッジ梱包構造。
【請求項8】
請求項6または7において、
上記第1嵌合リブ及び第2嵌合リブは、上記上ケースの上面の中心及び上記下ケースの下面の中心に対して、点対称に配置されていることを特徴とするカートリッジ梱包構造。
【請求項9】
請求項8において、
上記当て板部材には、シート状部材の表裏を区別するための表裏区別部として、上記当て板部材の対角に位置する2つの角部に形成された面取り部が形成されていることを特徴とするカートリッジ梱包構造。
【請求項10】
請求項6から9の何れか1つにおいて、
上記カートリッジは、内部に収納された記録媒体へのアクセス口が、上記収納ケースの側面を覆う当て板部材の方向を向くように、上記収納ケース内に配列されていることを特徴とするカートリッジ梱包構造。
【請求項11】
請求項6から10の何れか1つにおいて、
上記当て板部材の切り取り部内における上記収納ケースの各突出部の移動可能量に基づいて、上記外箱内での上記収納ケースの移動可能量を規制するように設定されていることを特徴とするカートリッジ梱包構造。
【請求項12】
請求項11において、
上記収納ケースは、各側面から外方へ延出するフランジ部を有し、
上記当て板部材の切り取り部の内側縁と収納ケースの突出部の外側縁との間の隙間寸法aと、上記フランジ部と梱包材の内面との間の隙間寸法bとが、
0≦a<b
の関係を満たすように設定され、
上記外箱内での収納ケースの移動量が、上記フランジの外周端面が外箱の内面に当接するまでの移動量より小さいことを特徴とするカートリッジ梱包構造。
【請求項13】
請求項11において、
上記収納ケースは、各側面から外方へ延出するフランジ部を有し、
上記当て板部材の切り取り部の内側縁と収納ケースの突出部の外側縁との間の隙間寸法aと、上記フランジ部と梱包材の内面との間の隙間寸法bとが、
a=b
の関係を満たすように設定され、
上記外箱内での収納ケースの移動量が、上記フランジの外周端面が外箱の内面に当接するまでの移動量に等しいことを特徴とするカートリッジ梱包構造。
【請求項14】
請求項11において、
上記収納ケースは、各側面から外方へ延出する可撓性のフランジ部を有し、
上記当て板部材の切り取り部の内側縁と収納ケースの突出部の外側縁との間の隙間寸法aと、上記収納ケースの側面と梱包材の内面との間の隙間寸法cとが、
0≦a<c
の関係を満たすように設定され、
上記外箱内での収納ケースの移動量が、上記フランジが変形して収納ケースの側面が外箱の内面に当接するまでの移動量より小さいことを特徴とするカートリッジ梱包構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−195160(P2011−195160A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62498(P2010−62498)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】