説明

カードエッジコネクタ

【課題】ハーネス側ハウジング30が開き変形することを防ぐことで接触部52の導電路12に対する接圧を確保する。
【解決手段】本発明のカードエッジコネクタ1は、回路基板10の端部に設けた導電路12に接続されるものであって、回路基板10の端部が挿入される基板挿入空間S1を有し、回路基板10の端部を回路基板10の両面から挟み込むように装着されるハーネス側ハウジング30と、回路基板10の両面に対向して位置するようにキャビティ31内に配設され、回路基板10の導電路12に弾性接触する接触部52を有する複数の端子金具50と、ハーネス側ハウジング30の外周部のうち端子金具50に対応する位置に装着される金属リング70とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の端部に設けた導電路に接続されるカードエッジコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のカードエッジコネクタは、例えば自動車に搭載されるECU(電子制御ユニット)とワイヤハーネスとを接続する部分に適用されており、その一例として、特許文献1に記載されたものが知られている。このカードエッジコネクタは、回路基板(以下、単に基板という。)の端部を基板の両面から挟み込むようにして装着されるコネクタハウジングを有している。このコネクタハウジングには、基板の両面に対向する位置に端子金具が配設されており、端子金具は、基板の端部に設けた導電路に弾性接触する接触部を有している。
【特許文献1】特開2003−7369公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながらこの接触部は、(i)基板厚さの公差、(ii)基板の反り、(iii)基板のクリープ(基板が一定応力を長時間受けることでひずみが時間と共に増大する現象)、(iv)基板とカードエッジコネクタとの間のクリアランス、等による導電路に対する接圧変動要因を考慮した上で十分な接圧が得られるように導電路側に大きく突出させて形成されている。さらに、コネクタの多極化が進むにつれて端子金具の数が増加すると、その分だけコネクタハウジングが端子金具から受ける弾発力も増加することから、コネクタハウジングが基板の両面から離間する方向に開き変形しやすくなってしまう。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、コネクタハウジングが開き変形することを防ぐことで接触部の導電路に対する接圧を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、基板の端部に設けた導電路に接続されるカードエッジコネクタであって、前記基板の端部が挿入される基板挿入空間を有し、前記基板の端部を前記基板の両面から挟み込むように装着されるコネクタハウジングと、前記基板の両面に対向して位置するように前記コネクタハウジングに配設され、前記基板の前記導電路に弾性接触する接触部を有する複数の端子金具と、前記コネクタハウジングの外周部のうち前記端子金具に対応する位置に装着される開き防止部材とを備える構成としたところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記コネクタハウジングには、前記端子金具の抜け止めを行うランスが前記コネクタハウジングの外方に撓み変形可能に設けられ、前記開き防止部材は前記ランスの撓み変形を阻止する位置に設けられているところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2に記載のものにおいて、前記開き防止部材は、前記端子金具の前記コネクタハウジングへの挿入後に前記ランスの撓み変形を阻止する位置に移動されるものであるところに特徴を有する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のものにおいて、前記基板には係合部が設けられ、前記コネクタハウジングには前記係合部と係合して前記基板の抜け止めを行うロックアームを取り付けるための取付部が設けられたものにおいて、前記開き防止部材は、前記取付部に正規に取り付けられた状態における前記ロックアームの取付方向の後端部と係止する位置に設けられているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
<請求項1の発明>
基板挿入空間に基板が進入すると、基板の導電路と端子金具の接触部とが弾性接触すると共に、端子金具が基板の両面から離間する方向に力を受け、コネクタハウジングが端子金具を介して基板の両面から離間する方向に開き変形しようとするものの、開き防止部材によって開き変形することが防止される。したがって、接触部の導電路に対する接圧を確保することができる。
【0010】
<請求項2の発明>
開き防止部材によってランスの撓み変形が阻止されるから、端子金具をランスと開き防止部材とにより二重係止することができる。したがって、開き防止部材とは別にランスの撓み変形を阻止する部材を設けなくてもよく、部品点数を減らすことができる。
【0011】
<請求項3の発明>
端子金具がコネクタハウジングに対して半挿入状態にあるときには、ランスが本体部の外面によって撓み変形したままとなるため、開き防止部材をランスの撓み変形を阻止する位置に移動させようとしても、撓み変形したランスによって移動させることができない。したがって、開き防止部材を用いて端子金具の半挿入検知を行うことができる。
【0012】
<請求項4の発明>
ロックアームを取付部に取り付けた後に開き防止部材を装着すると、ロックアームの取付方向の後端部が開き防止部材に係止することでロックアームが抜け止めされる。したがって、開き防止部材とは別にロックアームの抜け止めを行う部材を設けなくてもよく、部品点数を減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図16によって説明する。
本発明におけるカードエッジコネクタ1は、図15及び図16に示すように、回路基板(本発明における基板に相当する。)10と、回路基板10に装着される基板側ハウジング20と、電線Wの端末に接続されるハーネス側ハウジング30とを含んで構成されている。
【0014】
回路基板10は耐熱性ガラス基材エポキシ樹脂積層板であって、基板厚さが設定厚さに対してほぼ±0.2mmの公差を有している。回路基板10の端部には、相手のハーネス側ハウジング30の後述する基板挿入空間S1に挿入されるエッジ部11が形成されている。エッジ部11では、その表裏両面に、接続用の導電路12が基板挿入空間S1に対する挿入方向(図15における矢印方向)と交差する方向に複数並んで設けられている。
【0015】
基板側ハウジング20は合成樹脂製であって、前方に開口したフード部21を備え、フード部21内には、ハーネス側ハウジング30が嵌合可能である。回路基板10は、そのエッジ部11がフード部21の開口縁部よりやや奥方に位置するようにして、基板側ハウジング20に固定されている。また、フード部21の前端(先端)内側には、後述するロックアーム60の突起64が嵌まる係止溝22が凹み形成され、同係止溝22の前縁が、突起64のロック係止面64Aに係止して抜け止めする係止縁(本発明における係合部に相当する。)22Aとなっている。なお、係止縁22Aの前端側は若干厚くされ、厚肉部23の前面の内側にテーパ状のガイド面23Aが形成されている。
【0016】
ハーネス側ハウジング30は、図1に示すように、横長のブロック状をなし、前後方向に沿って貫通する複数のキャビティ31が上下2段に形成されている。これらキャビティ31内には、後方から端子金具50が挿入可能とされている。ハーネス側ハウジング30の上下両面には、キャビティ31に連通するリテーナ装着溝32が幅方向に沿って切り欠かれている。リテーナ装着溝32には、図11に示すようなリテーナ80が装着されるようになっている。リテーナ80は、リテーナ装着溝32に装着された状態において各キャビティ31と対応する位置にそれぞれ設けられた抜け止め壁81を備えている。このため、端子金具50がキャビティ31内に正規に挿入された後にリテーナ80がリテーナ装着溝32に装着されると、抜け止め壁81が後述する端子金具50の本体部51の後端に係止することで、端子金具50が後方に抜け止めされる。
【0017】
また、ハーネス側ハウジング30の前端側外周面におけるリテーナ装着溝32より前方領域は、後述する金属リング(本発明における開き防止部材に相当する。)70を装着するための装着部38が一段低く形成されている。装着部38の上下両面には、金属リング70を固定するための固定突起34が幅方向に所定間隔を隔てて一対設けられている。
【0018】
金属リング70は、図9に示すように、横長方形のリング部71と、リング部71の長辺側の後端から後方に突出する図示4個の固定部72とから構成されている。図示4個の固定部72は、2個ずつが上下に分かれて配置されており、上下方向において互いに対向する位置に設けられている。その固定部72には、上下方向に貫通する貫通孔73が設けられており、金属リング70がハーネス側ハウジング30の前方から装着部38に嵌め込まれると、貫通孔73の開口縁が固定突起34と係合することで、金属リング70が前方に抜け止め状態に保持される。この状態では、装着部38の外周面がリング部71の内周面と対向配置され、かつ、リング部71が端子金具50と対応する位置に装着されている。このため、後述する端子金具50の接触部52が回路基板10の導電路12と接触し、端子金具50が回路基板10の表面から離間する方向に力を受けることで、ハーネス側ハウジング30が開く方向に撓み変形することを防ぐことができる。
【0019】
また、金属リング70は、リング部71が後述するランス40の撓み変形領域内に位置することで、後述するランス40が装着部38側に撓み変形することを防ぐリテーナ機能を有している。さらに、金属リング70は、リング部71の後面が取付部33に取り付けられたロックアーム60の後述する前側の水平部61の前面(ロックアーム60の取付方向の後端部)と係止することで、ロックアーム60が前方へ抜け落ちることを規制する役割を果たしている。
【0020】
ハーネス側ハウジング30の上面における幅方向の中央部には、相手の基板側ハウジング20と正規嵌合された場合に、同正規嵌合状態にロックするためのロックアーム60が装着可能とされている。ロックアーム60は金属製であって、図10に示すように、前後方向に長い板状をなしている。また、ロックアーム60は、その前端側から水平部が3箇所、緩やかな上り勾配の傾斜部が2箇所交互に形成されている。前側の水平部61の幅方向両側には、その後方部分よりも幅方向外側に張り出す張り出し部62が形成されている。中央の水平部63の前端位置には、突起64が切り起こしによって形成されている。同突起64は、その後面側が切り立った係止面64Aとされ、その前面側がテーパ面64Bとなっている。なお、後側の水平部が操作部65とされている。
【0021】
ロックアーム60の張り出し部62は、ハーネス側ハウジング30の上面における両固定突起34間に配された取付部33に取り付けられる。取付部33は、幅方向に並んだ一対の取付突部35から構成されており、取付突部35のうち互いに対向する面における前端側には、ロックアーム60の張り出し部62が差し込み可能な差込溝35Aが前方から内側にかけて切り欠き形成されている。差込溝35Aにおいて張り出し部62を上下から挟み付ける両面のうち装着部38側の面は、装着部38の上面と面一となるように形成されている。また、差込溝35Aの差し込み深さは、ロックアーム60が取付部33に正規に取り付けられると、図12に示すように、張り出し部62の前面と取付突部35の前面とが面一になるように設定されている。
【0022】
また、ハーネス側ハウジング30の上面における後端部には、ロックアーム60の後端側が上方に反り返ることを防ぐ反り返り規制部36が設けられている。反り返り規制部36は、両取付突部35の後方に配置された一対の支持壁37と、両支持壁37の上端部同士を連結した連結部39とから構成されている。ロックアーム60が取付部33に取り付けられると、ロックアーム60の操作部65が両支持壁37間で、かつ、連結部39の下方(連結部39とハーネス側ハウジング30の上面との間)に位置することで、操作部65が誤って解除操作されないようになっている。
【0023】
ハーネス側ハウジング30の前面には、図12に示すように、回路基板10を挿入するための基板挿入空間S1が開口している。基板挿入空間S1は、上下2段のキャビティ31の間に形成されている。基板挿入空間S1の入口部分には、上下一対の受け壁41が互いに対向して配置されている。両受け壁41の前端内側には、基板挿入空間S1の間口が前方に向けて次第に広がるような傾斜を有する誘い込み面41Aが形成されている。これにより回路基板10は、両ハウジング20,30の嵌合に際してエッジ部11の先端が誘い込み面41Aと摺接することで基板挿入空間S1の入口部分に案内されると共に、回路基板10の両面が両受け壁41の間に配されることによって基板挿入空間S1の奥方へ案内されるようになっている。
【0024】
なお、キャビティ31を構成する内壁のうち前端部分には、キャビティ31内に挿入された端子金具50の前止まりを行う前止まり規制壁31Aが設けられている。この前止まり規制壁31Aは、受け壁41の前端部と連結されている。
【0025】
基板挿入空間S1において受け壁41の後端より後方には、キャビティ31の内部と基板挿入空間S1とを連通させる挿通孔45が形成されている。また、基板挿入空間S1の奥方(後方)は、回路基板10のエッジ部11の先端が当接することで回路基板10の基板挿入空間S1に対する挿入深さが一定となるようにその挿入を規制する突き当て壁44が形成されている。この突き当て壁44は、上下2段のキャビティ31の間を隔離する隔壁の前端面である。挿通孔45は、回路基板10が基板挿入空間S1に正規に挿入された状態(回路基板10のエッジ部11の先端と突き当て壁44とが接触した状態)において、回路基板10の導電路12が挿通孔45を通してキャビティ31内に臨む位置に設定されている。
【0026】
キャビティ31内には、ランス40が上下方向に撓み可能に形成されている。ランス40は、撓み係止片43と、撓み係止片43の先端側においてキャビティ31の内部に突出する係合部42とから構成されている。撓み係止片43は、キャビティ31内面とハーネス側ハウジング30の装着部38の上下両面との間の隔壁をその前面から後方に向けて切り欠くことにより形成されており、この切り欠き部分の後端は、取付突部35の前端面(取付部33に正規に装着されたロックアーム60の前側の水平部61の前端面)と揃う位置となっている。このためキャビティ31内に端子金具50を挿入する途上では、撓み係止片43はハーネス側ハウジング30の装着部38側に撓み変形することになる。
【0027】
電線Wの端末に接続される端子金具50は、導電性に優れた金属板をプレス加工して形成され、図5に示すように、箱形の本体部51と、その本体部51の後方に一体に設けられたバレル53とを備えている。本体部51は、図7に示すように、底壁51Bと、その底壁51Bの両側縁から対向状態で立ち上がる一対の側壁51Cと、両側壁51Cのうち一方の側壁51Bの上縁から他方の側壁51Cの上縁に向けて互いに折り返されることで二重壁として形成されると共に底壁51Bと対向状態をなす天井壁51Aとから構成されている。端子金具50は、本体部51の底壁51Bが基板挿入空間S1に挿入された回路基板10の両面と対向するようにしてキャビティ31内に後方から挿入される。なお、バレル53には、同バレル53をかしめることで電線Wが圧着固定されている。
【0028】
本体部51の天井壁51Aには、図8に示すように、ランス40の係合部42と係合可能なランスホール54が開口して形成されている。ランスホール54は、後述する接触部52よりも端子金具50の前方側に配置されている。端子金具50がキャビティ31内に後方から挿入されると、ランス40の係合部42が本体部51の天井壁51Aの外面と接触して撓み係止片43が外方に撓み変形し、この状態のまま正規位置まで押し込まれると、撓み係止片43が復動して係合部42がランスホール54に係合することで、端子金具50が後方に抜け止めされる。
【0029】
本体部51の底壁51Bには、図16に示すように、端子金具50がキャビティ31内に正規に挿入され、かつ、基板挿入空間S1に正規に挿入された状態において回路基板10の導電路12に臨む位置に開口する開口部55が設けられている。また、本体部51の内部には、図8に示すように、前後方向(回路基板10の面方向に沿う方向)に延びる接触片56が形成されている。接触片56は、その基端部56Aが本体部51の後端部に連結されており、基端部56Aから前方に向けて延出されている。接触片56において基端部56Aから先端部56Bに至る途中部分には、開口部55から本体部51の外部に突出させて回路基板10の導電路12と接触する接触部52が形成されている。なお、接触部52のうち導電路12との接点部分は、接点部52Cとなっている(図6及び図7参照)。
【0030】
接触片56のうち接触部52は、接触片56の先端部56Bにおいて折り返すことにより接触片56の構成板材が2層に重なる積層部として形成されている。詳細には図8に示すように、積層部のうち本体部51の内部側の構成板材(接触片56の先端部56Bから折り返された部分)52Aは、同本体部51の外部側の構成板材(接触片56の基端部56Aから先端部56Bに向かう部分)52Bにおける本体部51の内部側の面に密着するようにして折り返されている。さらに、本体部51の内部側の構成板材52Aにおける本体部51の内部側の面(積層部のうち回路基板10の導電路12と接触する面とは反対側の面)は、本体部51の底壁51Bの外面と同じ位置となるように形成されている。より詳細には、積層部を横方向(図5における紙面と直交する方向)から見たときに、本体部51の外部側の構成板材52Bと本体部51の底壁51Bの外面との間には僅かな隙間S2が形成されるものの、この隙間S2は先端が細長い形状の雄端子等が侵入できない程度の大きさとなるように設定されている。したがって、雄端子等が隙間S2に侵入して接触部52が損傷を受けることを未然に防ぐことができる。
【0031】
接触片56の先端部56Bには、幅方向外側に突出する一対の過度撓み規制片57が設けられている。一方、本体部51における側壁52Cにおいて両過度撓み規制片57と対応する位置には、一対の規制孔58が開口しており、両規制孔58に両過度撓み規制片57が収容されている。規制孔58は、本体部51の側壁51Cの高さ範囲内に設けられ、かつ、本体部51の外部からピン形状をなす雄端子等が接触部52に突き当てられることで接触片56が過度に撓み変形して塑性変形することを規制可能な高さ寸法に設定されている。
【0032】
本体部51の内部には、接触片56の接触部52を開口部55から突出させる方向に付勢する弾性部材59が設けられている。弾性部材59は略U字状をなすSUS材の板ばねであって、本体部51の天井壁51Aと接触片56との間に圧縮状態で組み込まれている。一方、接触片56は銅板であって、接触片56の基端部56Aを中心に接触部52が撓み変形するようになっているものの、弾性部材59が組み込まれていない状態ではほとんど弾性力が生じないように設定されている。換言すると、接触部52の導電路12に対する接圧は、専ら弾性部材59の弾性力によって生じるように設定されている。このように接触片56とは別に弾性部材59を設けている理由は、以下のような事情に基づく。接触片36は、回路基板10の厚さ変動要因を考慮して、この厚さ変動に対応可能な大きな撓み変形可能領域を備えている必要があるところ、接触片56のみで塑性変形させることなく大きな撓み変形可能領域を確保しようとすると、本体部51の基端部51Aから接触部52までの距離を長く設定することになるものの、これでは接触部52の導電路12に対する十分な接圧を確保することができない。これとは逆に、接触部52の導電路12に対する十分な接圧を確保しようとすると、本体部51の基端部51Aから接触部52までの距離を短く設定することになるものの、これでは接触片52が塑性変形しやすくなり、大きな撓み変形可能領域を確保することができない。かといって、接触片56自体をSUS材で形成すると、十分な導電性能を確保することができなくなる。
【0033】
本体部51の底壁52B側における前端部には、他よりも一段と薄くすることで、段部51Dが設けられている。この段部Dは、図13に示すように、端子金具50がキャビティ31内に正規に挿入された状態において受け壁41の後端と対向すると共に、この薄くなった部分に受け壁41が嵌まり込むようになっている。さらに、段部51Dの高さ寸法は、本体部51のうち段差部51Dより前方部分とこの前方部分を収容するキャビティ31内面とのクリアランスよりも大きく設定してある。したがって、端子金具50をキャビティ31内に対して上下逆転した姿勢で誤挿入すると、図14に示すように、本体部51の天井壁51Aがキャビティ31内面における受け壁41側の面に摺接しながら進入し、本体部51の前端が受け壁41の後端に当接することで、誤挿入が規制されるようになっている。
【0034】
本実施形態は以上のような構造であって、続いてその作用を説明する。
まず、ハーネス側ハウジング30に対する端子金具50、ロックアーム60、金属リング70及びリテーナ80の組み付け作業について説明する。
端子金具50をキャビティ31内に挿入する端子挿入工程では、端子金具50がバレル53によって電線Wの端末に固着されており、端子金具50が接続された複数の電線Wが束になった状態で取り扱われる。このとき、他の電線Wや先端が細長い形状の小型の雄端子等が、端子金具50の接触部52に対して横方向から接近しても、積層部として形成された接触部52の側面部に接触する。或いは、雄端子等が隙間S2に侵入しようとしても、隙間S2の入口部分でその侵入が規制される。したがって、接触部52が、他の電線Wや雄端子等によって損傷を受けることが回避される。
【0035】
端子金具50がキャビティ31内に後方から挿入されると、本体部51のうち段部51Dより前方部分が受け壁41と天井壁51Aとの間に嵌まり込み、かつ、本体部51の前端が前止まり規制壁31Aによって前止まりされる。この間、ランス40の撓み係止片43は、その係合部42が本体部51の天井壁51Aの外面に乗り上げることで外方に撓み変形するものの、撓み係止片43が撓み変形するよりも先に本体部51の前端が受け壁41の内側に進入しているため、本体部51の前端が挿通孔45内に落ち込んで本体部51の前端が受け壁41の後端縁に引っ掛かることで端子金具50のキャビティ31への円滑な挿入が阻害されるおそれがない。こうして端子金具50が正規位置まで挿入されると、撓み係止片43が復動して係合部42がランスホール54に係合することで、端子金具50が後方に抜け止めされる。さらに、リテーナ80をリテーナ装着溝32に装着すると、端子金具50の本体部51の後端がリテーナ80の抜け止め壁81に係止することで、ランス40による係止と共に、端子金具50が二重で係止される。
【0036】
続いて、端子金具50がハーネス側ハウジング30のキャビティ31に対して上下反転した姿勢で誤挿入された場合について説明する。端子金具50がキャビティ31内に後方から挿入されると、接触片56の接触部52がキャビティ31内面におけるランス40側の面によって本体部51の内部側に撓み変形すると共に、接触部52による弾性力を受けて本体部51の天井壁51Aがキャビティ31内面における受け壁41側の面に摺接した状態となる。この状態のまま端子金具50が挿入されると、本体部51の前端が受け壁41の後端に当接することで、端子金具50の誤挿入が規制される。こうして、ハーネス側ハウジング30の上下2段のキャビティ31に対して全ての端子金具50を正規に挿入することができる。
【0037】
キャビティ31内へ端子金具50を挿入する前に或いは挿入した後に、ロックアーム60をハーネス側ハウジング30の取付部33に取り付ける。ロックアーム60は、取付部33の前方から取り付けられ、ロックアーム60の張り出し部62が取付突部35の差込溝35A内に正規に押し込まれると、ロックアーム60の前側の水平部61の前端面が取付突部35の前端面と面一になる。この後に金属リング70をハーネス側ハウジング30の装着部38に装着する。
【0038】
金属リング70は、装着部38の前方からランス40の撓み係止片43の撓み変形領域に向けて嵌め込まれる。仮に半挿入状態の端子金具50がある場合には、ランス40の撓み係止片43が撓み変形領域内に位置し、金属リング70のリング部71の後端縁が撓み係止片43と干渉して金属リング70の嵌め込みが阻止されることで、端子金具50の半挿入検知を行うことができる。
【0039】
全ての端子金具50が正規位置に挿入された後に金属リング70が装着部38に正規に嵌め込まれると、固定部72が固定突起34と係合することで金属リング70が前方に抜け止めされる。また、金属リング70が装着部38に正規に嵌め込まれた状態では、ロックアーム60の前側の水平部61の前面と金属リング70のリング部71の後面とが係止することで、ロックアーム60が前方に抜け止めされる。その上、リング部71がランス40の撓み変形領域内に位置することで、ランス40の撓み変形を規制することができる。このように、本実施形態ではランス40、リテーナ80及び金属リング70によって三重で係止することで端子金具50を確実に抜け止めすることができる。
【0040】
次に、基板側ハウジング20とハーネス側ハウジング30との嵌合作業について説明する。
ハーネス側ハウジング30は、基板側ハウジング20のフード部21内に嵌合される。これに伴って、基板側ハウジング20に固定された回路基板10は、ハーネス側ハウジング30の基板挿入空間S1に対して前方から挿入される。回路基板10のエッジ部11の前端は、基板挿入空間S1の入口部分で誘い込み面41Aに接触し、基板挿入空間S1の内部へ案内される。回路基板10が基板挿入空間S1の内部に進入すると、回路基板10の両面が両受け壁41によって基板挿入空間S1の奥方へ案内される。接触部52が回路基板10のエッジ部11の表面に乗り上げると、接触片56は本体部51の内部側に撓み変形する。このとき、接触片56の弾性力により端子金具50の本体部51がキャビティ31内面におけるランス40側の面に押圧される。これに伴って、ハーネス側ハウジング30の上下両面は、上下方向に開き変形しようとするものの、金属リング70によって開き変形することが規制される。さらに、両ハウジング20,30の嵌合操作を続けると、回路基板10のエッジ部11の前端が突き当て壁44に当接することで、回路基板10が基板挿入空間S1内における正規位置に至ると共に、接触部52と導電路12とが接続される。このとき、ハーネス側ハウジング30が上下方向に開き変形することが規制されているから、接触部52の導電路12に対する接圧を低下させることなく、接触部52と導電路12との間の接続信頼性が確保される。このようにして両ハウジング20,30の嵌合が完了すると、ロックアーム60のロック係止面64Aが基板側ハウジング20の係止縁22Aと係止して両ハウジング20,30がロック状態に保持される。
【0041】
以上のように本実施形態では次に示す効果を奏することができる。
1.本体部51の外部側の構成板材52Bと本体部51の底壁51Bの外面との間に形成される隙間S2に先端が細長い形状の小型の雄端子等が侵入することが規制される。この結果、端子挿入工程における端子金具50の取り扱いを容易にすると共に、接触部52が電線Wや雄端子等により損傷を受けることを未然に防ぐことができる。
2.SUS材の弾性部材59により接触片56の弾性力が得られるようにしたから、大きな撓み変形可能領域を得ることができる。その結果、回路基板10の基板厚の公差や回路基板10の反り等による接圧変動要因に対応することが可能となり、接触部52の導電路12に対する十分な接圧を確保することができる。
3.金属リング70によりハーネス側ハウジング30が上下方向に開き変形することが規制される。これにより、接触部52の導電路12に対する接圧低下を阻止することができる。
【0042】
4.金属リング70がランス40に対するリテーナ機能を果たすと共に、端子金具50の半挿入検知を行う検知部材として機能するから、金属リング70とは別にリテーナ及び検知部材を設ける必要がなく、部品点数を減らすことができる。特に本実施形態では、ランス40、リテーナ80及び金属リング70による三重係止をすることで、端子金具50を確実に抜け止めすることができる。
5.金属リング70によりロックアーム60の抜け止めを行うことができることに加えて、金属リング70とは別にロックアーム60の抜け止め部材を設ける必要がないから、部品点数を減らすことができる。
6.端子金具50がランス40から受ける押圧力を受け壁41で受けることができるから、端子金具50の前端が挿通孔45に落ち込むおそれがなく、端子挿入工程における端子挿入性を向上させることができる。
【0043】
7.端子金具50が上下逆転した姿勢でキャビティ31内に挿入されたとしても、端子金具50の前端が受け壁41の後端に当接することで、端子金具50の誤挿入を規制することができる。
8.端子金具50の先端部を他の部分より一段と薄くして、この薄くなった部分に受け壁41が進入するようにしたから、端子金具50の本体部51の外面に突部を設けて段部51Dを形成する場合よりもキャビティ31の低背化が可能であり、ひいてはハーネス側ハウジング30の低背化が可能となる。
9.基板挿入空間S1の入口部分に誘い込み面41Aを設け、かつ、回路基板10の両面を両受け壁41によって挟み込む構成としたから、回路基板10が基板挿入空間S1に案内することができる。
10.基板挿入空間S1の奥方に突き当て壁44を設けたから、回路基板10の挿入深さが一定となるように回路基板10の挿入を規制することができる。
【0044】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図17ないし図19によって説明する。
本実施形態における端子金具90は、実施形態1における端子金具50の接触部52の構造を一部変更したものであり、その他の重複する部分については実施形態1と同一の符号を付すものとし、その構造及び作用効果の説明を省略する。端子金具90は、端子金具50のように接触片56の先端部56Aから折り返した構成ではなく、単層の構成板材からなる接触部92を備えている。すなわち接触部92は、接触片96の基端部96Aから先端部96Bに至る途中部分を開口部55から本体部51の外部に突出させると共に、接触片96の構成板材を本体部51の内部から外部に向かう方向に膨らみ出る膨出部として形成されている。その膨出部のうち本体部51の内部側に開口する開口縁は、底壁51Bの外面の高さ位置より本体部51の内部側に位置するように形成されている。
【0045】
このような構成によると、端子挿入工程における端子金具90の取り扱いを容易にすると共に、接触部92が電線Wや雄端子等により損傷を受けることを未然に防ぐことができる。
【0046】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0047】
(1)本実施形態では金属リング70としてリング状のものを例示したが、本発明によると、閉じたリング状のものには限定されず、例えばコ字形のものであってもよいし、コ字形に開いた部分を閉じることによりリング状とするものであってもよい。
(2)本実施形態では金属リング70が半挿入検知機能を備えたものを例示したが、本発明によると、必ずしも半挿入検知機能を備えたものでなくてもよく、金属リング70とは別に検知部材を設けてもよい。
(3)本実施形態では金属リング70がロックアーム60の抜け止めを行うものを例示したが、本発明によると、必ずしも金属リング70によりロックアーム60の抜け止めを行う必要はなく、例えばロックアーム60の張り出し部62が差込溝35Aに対して圧入により固定されるものであってもよい。
(4)本実施形態では開き防止部材として金属製の金属リング70を例示したが、本発明によると、開き防止部材として他の材質であってもよく、例えば樹脂材を用いたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施形態1におけるハーネス側ハウジングを横斜め後方から見た状態を示す斜視図
【図2】そのハーネス側ハウジングを上方から見た状態を示す平面図
【図3】そのハーネス側ハウジングを前方から見た状態を示す正面図
【図4】そのハーネス側ハウジングを横方向から見た状態を示す側面図
【図5】その端子金具を横方向から見た状態を示す側面図
【図6】その端子金具を下方から見た状態を示す底面図
【図7】その端子金具を前方から見た状態を示す正面図
【図8】その端子金具の内部構造を横から見た状態を示す断面図(図6におけるI−I線断面図)
【図9】その金属リングを横斜め前方から見た状態を示す斜視図
【図10】そのロックアームを横斜め前方から見た状態を示す斜視図
【図11】そのリテーナを横斜め前方から見た状態を示す斜視図
【図12】そのハーネス側ハウジングにロックアームを取り付けた状態においてその内部構造を横から見た状態を示す断面図
【図13】そのハーネス側ハウジングに端子金具が正規に挿入された状態を示す断面図
【図14】そのハーネス側ハウジングに端子金具が上下反転した姿勢で挿入された場合において端子金具の誤挿入が規制された状態を示す断面図
【図15】そのハーネス側ハウジングと基板側ハウジングの嵌合前の状態を示す断面図
【図16】そのハーネス側ハウジングと基板側ハウジングの正規嵌合状態を示す断面図
【図17】実施形態2における端子金具を横方向から見た状態を示す側面図
【図18】その端子金具を下方から見た状 態を示す底面図
【図19】その端子金具の内部構造を横から見た状態を示す断面図(図18におけるII−II線断面図)
【符号の説明】
【0049】
1…カードエッジコネクタ
10…回路基板(基板)
12…導電路
22A…係止縁(係合部)
30…ハーネス側ハウジング
33…取付部
40…ランス
50,90…端子金具
52…接触部
60…ロックアーム
70…金属リング(開き防止部材)
S1…基板挿入空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の端部に設けた導電路に接続されるカードエッジコネクタであって、
前記基板の端部が挿入される基板挿入空間を有し、前記基板の端部を前記基板の両面から挟み込むように装着されるコネクタハウジングと、
前記基板の両面に対向して位置するように前記コネクタハウジングに配設され、前記基板の前記導電路に弾性接触する接触部を有する複数の端子金具と、
前記コネクタハウジングの外周部のうち前記端子金具に対応する位置に装着される開き防止部材とを備えるカードエッジコネクタ。
【請求項2】
前記コネクタハウジングには、前記端子金具の抜け止めを行うランスが前記コネクタハウジングの外方に撓み変形可能に設けられ、前記開き防止部材は前記ランスの撓み変形を阻止する位置に設けられている請求項1記載のカードエッジコネクタ。
【請求項3】
前記開き防止部材は、前記端子金具の前記コネクタハウジングへの挿入後に前記ランスの撓み変形を阻止する位置に移動されるものである請求項2記載のカードエッジコネクタ。
【請求項4】
前記基板には係合部が設けられ、前記コネクタハウジングには前記係合部と係合して前記基板の抜け止めを行うロックアームを取り付けるための取付部が設けられたものにおいて、前記開き防止部材は、前記取付部に正規に取り付けられた状態における前記ロックアームの取付方向の後端部と係止する位置に設けられている請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のカードエッジコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−98063(P2008−98063A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−280398(P2006−280398)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】