説明

カードコネクタ

【課題】 カードを所定位置まで挿入しなければ押圧ボタンを筐体から突出することができない動作を可能とするいわゆるプッシュープッシュ作用を可能にしたイジェクト機能を有するコンパクトなカードコネクタを提供する。
【解決手段】 カードコネクタ1のカード排出手段20は、コネクタ部10に回動可能に配置された回動アーム21と、ガイドアーム12の側面に沿ってカードCの挿抜方向に移動可能な押圧バー23と、押圧バー23に回動可能に軸支され、カードCの排出時に回動アーム21を押圧して回動させる押圧プレート25とを具備している。ガイドアーム12の側面に形成されたハート形のカム溝26と、押圧プレート25に設けられ、カム溝26と係合するカムピン25cとからなるカム機構と、カードCが所定位置に挿入されたときに、カムピン25cがカム溝26に沿って移動することを可能にする押圧バーの移動規制手段とを設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるプッシュープッシュ作用を可能にしたイジェクト機能を有するカードコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のカードコネクタとして、例えば、図10に示すものが知られている(特許文献1参照)。
このカードコネクタ101は、カード(図示せず)を案内する1対のフレーム部111を有する絶縁性のハウジング110と、ハウジング110に保持された複数のコンタクト120と、一方のフレーム部111の側方に設けられ、カードを排出するためのプッシュープッシュ式イジェクト機構130とを備えている。
【0003】
イジェクト機構130は、一方のフレーム部111に対してスライド可能に装着され、カードを排出するイジェクトレバー131と、このイジェクトレバー131をカードの排出方向へ常時付勢するばね部材132と、カムフォロア133とを備えている。イジェクトレバー131は、カード挿入時にカードの先端に押され、かつ、カード排出時にカードの先端を押すカード当接部131aを有するとともに、イジェクトレバー131の側面には、ハート形のカム溝134が形成されている。そして、カムフォロア133は、ハウジング110の一方のフレーム部111に対して所定角度回動可能に軸支されるとともに、その先端にカム溝134に係合するガイドピン133aが設けられている。イジェクトレバー131に形成されたハート形のカム溝134とハウジング110に所定角度回動可能に軸支されたカムフォロア133のガイドピン133aとが係合することによって、イジェクトレバー131のスライドが規制されるようになっている。
【0004】
このカードコネクタ101において、カードが挿入されていない場合には、カムフォロア133のガイドピン133aはカム溝134のうちの後端凹部(図10における右端部分)134aに位置し、イジェクトレバー134は最も前方側に突出した位置に位置している。
そして、カードをハウジング110の前側から挿入し、そのカードの先端がイジェクトレバー131の当接部131aに当接すると、カードとイジェクトレバー131とが一体となってカードコネクタ101内へばね部材132の圧縮力に抵抗しながら後退する。このとき、ガイドピン133aはカム溝134の後端部分134aから一方の溝部分134bに位置する。
【0005】
続いて、カードを最大ストロークまで押圧した後にその押圧を中止すると、カード及びイジェクトレバー131はばね部材132の復元力によってわずかに前進し、ガイドピン133aはカム溝134の前端凹部134cに位置する。これにより、カードの挿入操作は完了する。
そして、再度、カードを最大ストロークまで押圧した後にその押圧を中止すると、ガイドピン133aは前端凹部134cを脱出して他方の溝部分134dを経て後端凹部134aに至る。カード及びイジェクトレバー131はばね部材132の復元力によって前進し、カードが排出される。このとき、イジェクトレバー131は最初の状態、つまり最も前進した位置に位置することになるのである。
【0006】
また、いわゆるプッシュープッシュ作用を可能にしたイジェクト機構を有するカードコネクタの他の例として、例えば、図11及び図12に示すもの(特許文献2参照)も知られている。
このカードコネクタ201は、カードCを挿抜可能に案内するフレーム210と、フレーム210の側方に設けられたプッシュープッシュ式イジェクト機構220と、イジェクト機構220のプッシュロッドからの押圧力を受けて回動し、挿入されたカードCを排出するイジェクトレバー230とを備えている。
【0007】
ここで、プッシュロッドは、操作者からの押圧力を受ける第1ロッド221と、この押圧力をイジェクトレバー230に伝達する第2ロッド222とを有している。第2ロッド222と対向する第1ロッド221の先端には、ガイド板240に形成されたガイド溝241に係合するカム部材250が設けられ、カードCの排出時に第1ロッド221と第2ロッド222とがカム部材250を介して連係するようになっている。
【特許文献1】特開2001−267013号公報
【特許文献2】特開2002−324623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これら従来のカードコネクタ101、201にあっては、以下の問題点があった。
即ち、図10に示したカードコネクタ101の場合、カードを挿入しない状態、すなわちカードがイジェクトレバー131に当接する前の状態ではイジェクトレバー131が最も前進した位置に位置している。このため、イジェトレバー131が、カードコネクタ101を設置したパーソナルコンピューター等の筐体から突出している可能性もあり、落下等によりイジェクトレバー131が損傷するおそれがある。また、イジェクトレバー131が筐体から突出していると、ユーザーが誤操作をしてしまうことがある。一方、カードが挿入されていない、すなわちカードがイジェクトレバー131に当接する前の状態で、イジェクトレバー131を押圧し、ガイドピン133aをカム溝134の前端凹部134cに位置させてイジェクトレバー131を後退位置に位置させておくことも可能である。しかし、この状態で更にイジェクトレバー131を押圧することが可能であり、これによりガイドピン133aが前端凹部134cを脱出して他方の溝部分134dを経て後端凹部134aに至り、イジェクトレバー131が最も前進した位置に位置してしまうおそれがある。
【0009】
また、図11及び図12に示したカードコネクタ201の場合、カードCが挿されていない状態では、第1ロッド221に取り付けられた押圧ボタン223は筐体から突出せず、また、押圧ボタン223を押してもこの押圧ボタン223は筐体から突出することはない。しかし、カードCの排出時に第1ロッド221と第2ロッド222とを連係させるカム部材250が、金属板を打抜いた後、折り曲げ加工することにより製造されるようになっているので、寸法精度が出しづらく、また、少しの寸法のずれやまた組み付け時における組み付け誤差により、カム部材として正常に機能しないことがあった。
【0010】
従って、本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、カードを所定位置まで挿入しなければ押圧ボタンを筐体から突出することができない動作を可能とするとともに、少しの寸法のずれやまた組み付け時における組み付け誤差の影響を受けることが少なくカム機能を確実に達成させることができるいわゆるプッシュープッシュ作用を可能にしたイジェクト機能を有するコンパクトなカードコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題を解決するため、本発明のうち請求項1に係るカードコネクタは、カードを挿抜可能に案内するガイドアームを有するコネクタ部と、該コネクタ部に挿入された前記カードを排出するカード排出手段とを備えたカードコネクタであって、前記カード排出手段が、前記コネクタ部に回動可能に配置され、回動により前記カードを抜出方向に排出する回動アームと、押圧ボタンを有し前記ガイドアームの側面に沿って前記カードの挿抜方向に移動可能な押圧バーと、該押圧バーに回動可能に軸支され、前記カードの排出時に前記回動アームを押圧して回動させる押圧プレートとを具備し、前記ガイドアームの側面に形成されたハート形のカム溝と、前記押圧プレートに設けられ、前記カム溝と係合するカムピンとからなるカム機構と、前記カードが所定位置に挿入されたときに、前記カムピンが前記カム溝に沿って移動することを可能にする押圧バーの移動規制手段とを設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るカードコネクタによれば、カード排出手段が、コネクタ部に回動可能に配置され、回動によりカードを抜出方向に排出する回動アームと、押圧ボタンを有しガイドアームの側面に沿ってカードの挿抜方向に移動可能な押圧バーと、押圧バーに回動可能に軸支され、カードの排出時に回動アームを押圧して回動させる押圧プレートとを具備しているので、押圧ボタンを有する押圧バーの押圧操作により、押圧プレートが押圧されて回動アームを回動させ、カードを排出することができる。そして、前記ガイドアームの側面に形成されたハート形のカム溝と、前記押圧プレートに設けられ、前記カム溝と係合するカムピンとからなるカム機構を設けたので、このカム機構により、前記押圧バー及び押圧プレートの引出動作と前記押圧バー及び押圧プレートの押圧動作とを不可逆にすることができる。即ち、カムピンはカム溝に沿って一方向に移動してカム溝を一回りし、逆方向には移動しない。そして、カム機構に曲げ加工は不要となり、少しの寸法のずれやまた組み付け時における組み付け誤差の影響を受けることが少なくカム機能を確実に達成させることができるいわゆるプッシュープッシュ作用を可能にしたイジェクト機能を有するコンパクトなカードコネクタを提供できる。また、前記カードが所定位置に挿入されたときに、前記カムピンが前記カム溝に沿って移動することを可能にする押圧バーの移動規制手段を設けたので、カードを所定位置まで挿入しなければ押圧ボタンを筐体から突出することができない動作を可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明に係るカードコネクタを示し、(A)は平面図、(B)は左側面図、(C)は正面図である。図2はカードコネクタにカードを挿入する前の状態の主要部を示し、(A)は一部平面図、(B)は一部左側面図、(C)は押圧バーを取り除いた一部左側面図である。図3はカードコネクタにカードを挿入後、押圧ボタンを突出させるために押圧プレートをやや後退させた状態の主要部を示し、(A)は一部平面図、(B)は一部左側面図、(C)は押圧バーを取り除いた一部左側面図である。図4は押圧プレートを最後端位置まで後退させた後、押圧プレートの押圧を中止し押圧プレートが前進する途中の状態の主要部を示し、(A)は一部平面図、(B)は一部左側面図、(C)は押圧バーを取り除いた一部左側面図である。図5は図4に示す状態から押圧プレートが更に前進した状態の主要部を示し、(A)は一部平面図、(B)は一部左側面図、(C)は押圧バーを取り除いた一部左側面図である。図6は図5に示す状態から押圧プレートが更に前進し最前端位置にある状態の主要部を示し、(A)は一部平面図、(B)は一部左側面図、(C)は押圧バーを取り除いた一部左側面図である。図7はカードを排出するために図6に示す状態から押圧プレートを後退させ押圧プレートの係合部が回動アームに当接した状態の主要部を示し、(A)は一部平面図、(B)は一部左側面図、(C)は押圧バーを取り除いた一部左側面図である。図8は図7に示す状態から押圧プレートを更に後退させた状態の主要部を示し、(A)は一部平面図、(B)は一部左側面図、(C)は押圧バーを取り除いた一部左側面図である。図9は押圧プレートを最後端位置にまで後退させた状態の主要部を示し、A)は一部平面図、(B)は一部左側面図、(C)は押圧バーを取り除いた一部左側面図である。
【0014】
図1において、カードコネクタ1は、コネクタ部10と、カード排出手段20とを具備している。
コネクタ部10は、長手方向(図1(A)における左右方向)に延びる略直方体形状体のハウジング11と、ハウジング11の長手方向に沿って保持された複数のコンタクト16とを備えている。ハウジング11は、絶縁性の樹脂を成形することによって形成され、ハウジング11の長手方向両端には、前方(図1(A)における下方)に向けて突出するガイドアーム12が設けられている。また、ガイドアーム12には、平板頂板部31と、平板底板部32と、これら平板頂板部31及び平板底板部32を連結する側壁部33とを備えた金属フレーム30が取り付けられる。ガイドアーム12の内側面と金属フレーム30の平板頂板部31、側壁部33及び平板底板部32とで囲まれた空間により、上下2段のダブルスロットA,Bを構成し、ガイドアーム12の内側面と金属フレーム30の側壁部33の内側面とによりカードCを挿抜可能に案内するようになっている。また、ハウジング11の長手方向両端部には、回路基板(図示せず)上に実装するための基板実装部14が設けられ、各基板実装部14には、取付ねじ用貫通孔15が形成されている。また、各コンタクト16は、金属板を打抜き及び曲げ加工することによって形成され、回路基板17に半田接続されるとともに、コネクタ部10に挿入されたメモリカード等のカードCに嵌合接触するようになっている。なお、ハウジング11の上部には、接地プレート18が設置されている。
【0015】
カード排出手段20は、コネクタ部10のハウジング11に回動可能に配置された回動アーム21と、ガイドアーム12の側面に沿ってカードCの挿抜方向(図1(A)における上下方向)に移動可能な押圧バー23と、押圧バー23に回動可能に軸支され、カードの排出時に回動アーム21を押圧して回動させる押圧プレート25とを具備している。
回動アーム21は、ハウジング11内に回動可能に配置され、ハウジング11内部の一端に、挿入されたカードCに係合するカード係合部(図示せず)を備え、ハウジング11外部の他端に、押圧プレート25の後述する係合部 に係合するプレート係合部22を備えている。回動アーム21は、回動により、挿入されたカードCを抜出方向(前方向、図1(A)における下方向)に排出するようになっている。
【0016】
押圧バー23は、前後方向に延びる板状部材で構成され、金属板を打抜き及び曲げ加工することによって形成される。押圧バー23は、ガイドアーム12の外側面に沿って配置され、ガイドアーム12の前方部から外側に突出する上下1対の係止爪12a及びガイドアーム12の後方部から外側に突出する上下1対の係止爪12bによってカードCの挿抜方向に移動可能に支持されている。図1乃至図9にあっては、押圧バー23は、下側のスロットBに対応するガイドアーム12の外側面のみに沿って配置されているが、上下両側のスロットA,Bに対応するガイドアーム12の外側面に沿って配置しても、あるいは上側のスロットAに対応するガイドアーム12の外側面のみに沿って配置してもよい。押圧バー23の略中央部には、補強リブ23cが前後方向に延在し、この補強リブ23cの後方側には長穴23aが設けられている。この長穴23aの前端部には長穴23aよりも径の大きな丸穴23bが形成されている。押圧バー23の前端部には、押圧バー23の押圧操作を可能とするための押圧ボタン24が設けられている。押圧ボタン24及びガイドアーム12間には、押圧バー23を前方へ常時付勢するための引張ばね28が設けられている。
【0017】
押圧プレート25は、前後方向に延びる板状部材で構成され、金属板を打抜き及び曲げ加工することによって形成される。押圧プレート25は、図2(A)に示すように、押圧バー23の内側に沿って配置されている。押圧プレート25の前後方向略中央部には、外側に向けて突出するL字形状の支持部25aが折り曲げ形成されている。この支持部25aが押圧バー23に形成された丸穴23bに入り込み、支持部25aの先端が押圧バー23の長穴23a上に位置し、これにより、押圧プレート25は、押圧バー23に対して回動可能に軸支されている。また、押圧プレート25の後端部には、カードCの排出時に回動アーム21のプレート係合部22に係合する係合部25bが形成されている。更に、押圧プレート25の前端部は、図2(A)によく示すように、やや内側に傾斜し、その先端にフランジ25d付きのカムピン25cが内側に突出するように取付けられている。
【0018】
また、上下両側のスロットA,Bに対応するガイドアーム12の外側面には、カムピン25cが係合するハート形のカム溝26が形成されている。カム溝26は、図2(B)に示すように、ガイドアーム12の前後方向略中央部に形成された後側凹部26aと、その後側凹部26aから後方斜め上方に傾斜する第1直線状部26bと、第1直線状部26bの先端から一旦後方に延びてから前方に向けて延びる第2直線状部26cとを備えている。そして、第2直線状部26cの前端から前方斜め下方の位置に前側凹部26dが形成されている。そして、前側凹部26dから後方斜め下方に延びてから後方に向けて延びる略直線状部26eが形成され、略直線状部26eの後端から後側凹部26aに向けて第3直線状部26fが延びている。従って、カム溝26は、ハート形のループ状に形成されている。このガイドアーム12の外側面に形成されたハート形のカム溝26と、カム溝26と係合するカムピン25cとでカム機構を構成し、このカム機構により、押圧バー23及び押圧プレート25の前方向(カードCの抜出方向)への引出動作と押圧バー23及び押圧プレート25の後方向(カードCの挿入方向)への押圧動作とを不可逆にしている。即ち、カムピン25cはカム溝26に沿って一方向に移動してカム溝26を一回りし、逆方向には移動しない。
【0019】
また、回動アーム21のプレート係合部22近傍には、押圧バー移動規制プレート(押圧バーの移動規制手段)27が取付けられている。押圧バー移動規制プレート27は、前後方向に延びる板状部材で構成され、金属板を打抜き及び曲げ加工することによって形成される。押圧バー移動規制プレート27は、押圧プレート25の内側に配置されて前後方向に移動可能に設置される。押圧バー移動規制プレート27は、前後方向に延び、ガイドアーム12に形成された係止爪12bによって上方への移動が規制される基板部27aを備えている。基板部27aの後方部には、回動アーム21が入り込む開口27bが形成されている。また、基板部27aの前方部には、内側に折り曲げられてから徐々に縮幅するように前方斜め下方に傾斜する傾斜部27cが形成され、その傾斜部27cから前方に向けて規制部27dが形成されている。規制部27dは、カードCが挿入されていないときには、図2(C)に示すように、ガイドアーム12の下端に形成された係止部12cにより、下方への移動が規制されている。また、傾斜部27c及び規制部27dは、ガイドアーム12の外側面上に位置している。規制部27dは、カードCが回動アームのカード係合部に係合しないときには、図2(A)、(C)に示すように、カムピン25cのフランジ25dの側面に当接し、押圧プレート25の押圧バー23に対する時計方向への回動を阻止するようになっている。
【0020】
次に、本発明の作用を図2乃至図9を参照して説明する。
図2に示すように、カードCの挿入前は、回動アーム21の係合部22が後方に位置し、そして、これにともなって押圧バー移動規制プレート27も後方に位置している。また、押圧バー23、押圧ボタン24及び押圧プレート25は後方に位置し、押圧プレート25に設けられたカムピン25cはガイドアーム12に形成されたカム溝26の後方凹部26aに位置している。このとき、押圧バー移動規制プレート27の規制部27dがカムピン25cのフランジ25dの側面に当接し、押圧プレート25の押圧バー23に対する時計方向への回動が阻止されており、押圧プレート25及び押圧バー23の後方への移動が阻止されている。規制部27dは、カードCが挿入されていないときには、図2(C)に示すように、ガイドアーム12の下端に形成された係止部12cにより、下方への移動が規制されているので、押圧バー移動規制プレート27が下方へ回動不可で、押圧プレート25を押圧しても押圧バー移動規制プレート27は下方へ回動しない。また、カムピン25cが後方凹部26aに位置することで、押圧プレート25及び押圧バー23の前方への移動が阻止されている。つまり、カードCが挿入されて回動アーム21に当接する前までは、押圧バー移動規制プレート27により押圧プレート25及び押圧バー23の押圧が阻止される。
【0021】
そして、カードCをハウジング11に挿入し、カードCの後端部が回動アーム21のカード係合部に係合すると、図3(A)に示すように、回動アーム21の係合部22が前方向(矢印方向)に回動する。これに伴って、押圧バー移動規制プレート27も前進し、図3(C)に示すように、規制部27dが係止部12cから外れ、傾斜部27cの下方に係止部12cが位置し、押圧バー移動規制プレート27が下方に向けて回動可能となる。このため、カードCが回動アーム21のカード係合部に係合したときに初めて、カムピン25cがカム溝26に沿って移動可能となる。カードCのハウジグCへの挿入が完了すると、コンタクト16がカードCと嵌合接触し、カードCと回路基板17とが電気的に接続されることになる。そして、図3(B)、(C)に示すように、押圧バー23を若干押圧すると、カムピン25cはガイドアーム12に形成されたカム溝26の後方凹部26aから第3直線状部26fに沿って移動し、押圧プレート25が支持部25aを中心に前側が下方に後側が上方に回動する。押圧プレート25の後側が上方に回動することにより、押圧プレート25の係合部25bは回動アーム21の係合部22に係合することが回避される。そして、カムピン25cの後方凹部26aから第3直線状部26fへの移動に伴って、押圧バー移動規制プレート27も上側の係止爪12bとの接点を中心に前側がやや下方に回動する。
【0022】
そして、カードCを排出するため、押圧バー23を押圧して押圧プレート25を最後端位置まで後退させた後、押圧バー23の押圧を中止すると、引張ばね28の作用により、図4及び図5に示すように、押圧バー23及び押圧プレート25が前進する(押圧バー23及び押圧プレート25の引出動作)。このとき、カムピン25cはカム溝26の略直線状部26eに沿って前進する。
【0023】
そして、押圧バー23及び押圧プレート25は、図6に示すように最前端位置に位置することになる。このとき、カムピン25cはカム溝26の前側凹部26dに位置することになる。これにより、押圧ボタン24が筐体(図示せず)から突出し、次工程でのカードCの排出が可能となる。カムピン25cがカム溝26の前側凹部26dに位置すると、押圧プレート25はカード挿抜方向と平行になる。
【0024】
次いで、押圧バー23を押圧すると、図7に示すように、押圧プレート25が後退するとともにカムピン25cがカム溝26の第2直線状部26cに沿って後方に移動し、押圧プレート25は支持部25aを中心として後側が下方に前側が上方にやや回動する。そして、押圧バー23の押圧を続行すると、押圧プレート25の係合部25bが回動アーム21の係合部22に係合する(押圧バー23及び押圧プレート25の押圧動作)。
【0025】
そして、押圧バー23を更に押圧すると、図8に示すように、押圧プレート25が後退して回動アーム21の係合部22が後方(図8における矢印方向)に向けて回動し、挿入されたカードCがやや前方に排出される。このとき、カムピン25cがカム溝26の第2直線状部26cに沿って後方に移動する。また、押圧バー移動規制プレート27も回動アーム21の回動に伴って後退し、規制部27dが係止部12cによって係止され、押圧バー移動規制プレート27の下方に向けての回動が不可となる。
【0026】
そして、押圧バー23を更に押圧すると、図9に示すように、押圧プレート25が最後端位置にまで後退し、回動アーム21が更に回動してカードCが完全に排出される。このとき、カムピン25cがカム溝26の第2直線状部26cに沿って後方に移動し、最後端位置に位置する。また、押圧バー移動規制プレート27も回動アーム21の回動に伴って後退する。
【0027】
そして、押圧バー23の押圧を中止すると、引張ばね28の作用により、押圧バー23及び押圧プレート25はやや前方に移動し、図2に示す元の状態に戻る。このとき、カムピン25cはカム溝26の第1直線状部26bに沿って前方に移動して後側凹部26aに位置することになる。一方、押圧バー移動規制プレート27は図9に示す状態から移動しない。
【0028】
本発明の実施形態によれば、カード排出手段20が、コネクタ部10に回動可能に配置され、回動によりカードCを抜出方向に排出する回動アーム21と、押圧ボタン24を有しガイドアーム12の側面に沿ってカードCの挿抜方向に移動可能な押圧バー23と、押圧バー23に回動可能に軸支され、カードCの排出時に回動アーム21を押圧して回動させる押圧プレート25とを具備しているので、押圧ボタン24を有する押圧バー23の押圧操作により、押圧プレート25が押圧されて回動アーム21を回動させ、カードCを排出することができる。
【0029】
そして、ガイドアーム12の側面に形成されたハート形のカム溝26と、押圧プレート25に設けられ、カム溝26と係合するカムピン25cとからなるカム機構を設けたので、押圧バー23及び押圧プレート25の引出動作と押圧バー23及び押圧プレート25の押圧動作とを不可逆にすることができる。そして、このカム機構に曲げ加工は不要となり、少しの寸法のずれやまた組み付け時における組み付け誤差の影響を受けることが少なくカム機能を確実に達成させることができるいわゆるプッシュープッシュ作用を可能にしたイジェクト機能を有するコンパクトなカードコネクタを提供できる。
【0030】
また、カードCが所定位置(回動アーム21に係合する位置)に挿入されたときに、カムピン25cがカム溝26に沿って移動することを可能にする押圧バー移動規制プレート27を設けたので、カードCを所定位置まで挿入しなければ押圧ボタン24を筐体から突出することができない動作を可能とすることができる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
【0031】
例えば、はハウジング11の長手方向の片端にガイドアーム12が設けられ、ハウジング11の長手方向の他端にフレーム30の側壁部33が配置されて、これらガイドアーム12及び側壁部33によりカードCの挿抜を案内しているが、ガイドアーム12をハウジング11の長手方向両端に設けてカードCの挿抜を案内するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係るカードコネクタを示し、(A)は平面図、(B)は左側面図、(C)は正面図である。
【図2】カードコネクタにカードを挿入する前の状態の主要部を示し、(A)は一部平面図、(B)は一部左側面図、(C)は押圧バーを取り除いた一部左側面図である。
【図3】カードコネクタにカードを挿入後、押圧ボタンを突出させるために押圧プレートをやや後退させた状態の主要部を示し、(A)は一部平面図、(B)は一部左側面図、(C)は押圧バーを取り除いた一部左側面図である。
【図4】押圧プレートを最後端位置まで後退させた後、押圧プレートの押圧を中止し押圧プレートが前進する途中の状態の主要部を示し、(A)は一部平面図、(B)は一部左側面図、(C)は押圧バーを取り除いた一部左側面図である。
【図5】図4に示す状態から押圧プレートが更に前進した状態の主要部を示し、(A)は一部平面図、(B)は一部左側面図、(C)は押圧バーを取り除いた一部左側面図である。
【図6】図5に示す状態から押圧プレートが更に前進し最前端位置にある状態の主要部を示し、(A)は一部平面図、(B)は一部左側面図、(C)は押圧バーを取り除いた一部左側面図である。
【図7】カードを排出するために図6に示す状態から押圧プレートを後退させ押圧プレートの係合部が回動アームに当接した状態の主要部を示し、(A)は一部平面図、(B)は一部左側面図、(C)は押圧バーを取り除いた一部左側面図である。
【図8】図7に示す状態から押圧プレートを更に後退させた状態の主要部を示し、(A)は一部平面図、(B)は一部左側面図、(C)は押圧バーを取り除いた一部左側面図である。
【図9】押圧プレートを最後端位置にまで後退させた状態の主要部を示し、(A)は一部平面図、(B)は一部左側面図、(C)は押圧バーを取り除いた一部左側面図である。
【図10】従来例のプッシュープッシュ作用を可能にしたイジェクト機能を有するカードコネクタの斜視図である。
【図11】従来の他の例のプッシュープッシュ作用を可能にしたイジェクト機能を有するカードコネクタの斜視図である。
【図12】図11に示したカードコネクタのイジェクト機構の主要部を示し、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 カードコネクタ
10 コネクタ部
12 ガイドアーム
20 カード排出手段
21 回動アーム
23 押圧バー
24 押圧ボタン
25 押圧プレート
25c カムピン(カム機構)
26 カム溝(カム機構)
27 押圧バー移動規制プレート(押圧バーの移動規制手段)
C カード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードを挿抜可能に案内するガイドアームを有するコネクタ部と、該コネクタ部に挿入された前記カードを排出するカード排出手段とを備えたカードコネクタであって、
前記カード排出手段が、前記コネクタ部に回動可能に配置され、回動により前記カードを抜出方向に排出する回動アームと、押圧ボタンを有し前記ガイドアームの側面に沿って前記カードの挿抜方向に移動可能な押圧バーと、該押圧バーに回動可能に軸支され、前記カードの排出時に前記回動アームを押圧して回動させる押圧プレートとを具備し、
前記ガイドアームの側面に形成されたハート形のカム溝と、前記押圧プレートに設けられ、前記カム溝と係合するカムピンとからなるカム機構と、前記カードが所定位置に挿入されたときに、前記カムピンが前記カム溝に沿って移動することを可能にする押圧バーの移動規制手段とを設けたことを特徴とするカードコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−40634(P2006−40634A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−216059(P2004−216059)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000227995)タイコエレクトロニクスアンプ株式会社 (340)
【Fターム(参考)】