説明

カードコネクタ

【課題】大きさの異なる第1及び第2のカードを装着でき、安定したカード挿入及びカード排出が可能であり、低背化が可能となるカードコネクタを提供する。
【解決手段】複数のコンタクト、第1のカードの幅を検出して第1の位置から第2の位置へ移動し得るロック金具、第2のカードが通過し得る通過開口を少なくとも含む、第1の位置から第2の位置へ回転可能なアクチュエータ、第1の位置から第2の位置へ移動可能であって、第1及び第2のカードを上下に振り分ける仕切り板、第1及び第2のカードに当接し得るカード当接部材を少なくとも有するイジェクト機構を備え、カード当接部材は、第1及び第2のカードそれぞれの前端面に当接し得る第1及び第2のカード押圧面を有し、第2のカード押圧面は、可動金属部材に形成されており、可動金属部材は、第2のカード押圧面が第1の位置にあるとき、第1のカード押圧面を覆い隠すように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードコネクタに関し、より詳細には、多種類のカードを装着できるカードコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器や情報端末機器などにおいては、機能拡張のために、通常、カードコネクタを介して、CPUあるいはメモリ用の集積回路内蔵カード(以下、単に、「カード」という。)を装着することが知られている。他方、装着されるカードは、そのサイズや形状あるいは外部接点の配置などが異なる種類のものが出現してきている。このような多種多様のカードの出現に伴って、1つのカードコネクタに多種類のカードの装着が選択的に可能であるカードコネクタが求められている。
【0003】
そのようなカードコネクタとして、例えば、特許文献1には、コネクタ本体とカバー部材とによって形成されるコネクタハウジングを上下に二分する仕切り部材を備えたものが提案されている。この仕切り部材によってコネクタハウジングには、第1カードが挿入される上部スロットと、第2カードが挿入される下部スロットが形成される。このカードコネクタには、装着された第1カードと第2カードをカードコネクタから排出するために、第1イジェクト機構と第2イジェクト機構とが各スロットに設けられている。
【0004】
また、特許文献2には、特許文献1と同様に、コネクタ本体とカバー部材とによって形成されるコネクタハウジングが仕切り板によって上下に仕切られ、SD(secure digital)カードとメモリスティックデュオ(登録商標)カードとを選択的に装着可能なカードコネクタが提案されている。このカードコネクタのイジェクト機構は、ハウジングの上段に位置し、SDカードの前端面に係合するカード押出部と、ハウジングの下段に位置し、カード押出部の下部より突出し、メモリスティックデュオ(登録商標)カードの前端面に当接する張出部を有している。張出部は、SDカードとメモリスティックデュオ(登録商標)カードが、カードコネクタに装着された際に、カードコネクタからカード後端面が突出する量を一致させるために、カード押出部より前方(カード挿入口側)に突出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−172768号公報
【特許文献2】特開2004−206963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示されるカードコネクタは、イジェクト機構がコネクタハウジングの上部及び下部スロットにそれぞれ設けられるため、コネクタの高さが高くなり、近年の電子機器の小型化に伴う、カードコネクタの低背化の要求を満足することが難しい。また、部品点数が多くなり、製品コストを増大させてしまう。
【0007】
上記特許文献2に開示されるカードコネクタは、イジェクト機構が1つにまとめられているため、部品点数が少なくなり、且つコネクタの高さを低くすることが可能となる。しかしながら、メモリスティックデュオ(登録商標)カードの前端面に当接する張出部が、仕切り板及びハウジング底面と干渉しないよう、張出部と仕切り板及びハウジング底面との間に所定の隙間が形成される。そのため、張出部の高さが低くなり、張出部がカードの前端面の一部にしか当接せず、カード挿入時又は排出時にカードと張出部との当接が外れ易くなる。張出部とカードとの当接が外れてしまうと、カードの前端が張出部と仕切り板またはハウジング底面との間の隙間内に入り込んでしまい、カードの正常な挿入または排出が妨げられ、あるいは、カード及びイジェクト機構が損傷する恐れがある。
【0008】
本発明の目的は、このような問題点を解消するカードコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るカードコネクタは、上記目的を達成するために、ベース部材とカバー部材とによりカード挿入口を有するカード収容空間を形成し、該カード収容空間内に第1のカード、該第1のカードに比べて、長さが短く、幅が狭く、及び厚さが薄い第2のカードのうちいずれか1つが選択的に収容されるカードコネクタであって、前記第1のカード用の複数の第1のコンタクトと、前記第2のカード用の複数の第2のコンタクトを有する複数のコンタクト、前記カード収容空間を上下に仕切るとともに、前記第1のカードの挿入及び排出に対応し前記カード収容空間内を下降及び上昇し得るように形成された仕切り板、前記カードコネクタ内を前後方向に移動可能に設けられたイジェクト機構を備え、前記イジェクト機構は、カードコネクタ内を前後方向に摺動し得るイジェクト部材、該イジェクト部材に連結し、前記第1のカードの前端面に当接する第1のカード押圧面を有するカード当接部材、及び該カード当接部材に取り付けられ、前記第2のカードの前端面に当接する第2のカード押圧面を有する可動金属部材を少なくとも有し、前記可動金属部材及び前記第2のカード押圧面は、前記第1のカード押圧面の後方に配置され、前記可動金属部材の前記第2のカード押圧面は、前記第1のカードの挿入及び排出により前記仕切り板が下降及び上昇するのに対応して、上昇位置としての第1の位置と下降位置としての第2の位置との間を移動可能であり、前記可動金属部材は、前記第2のカード押圧面前記第1の位置にあるとき、前記第1のカード押圧面の少なくとも一部を覆い隠すように形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るカードコネクタは、具体的な構成として、カード当接部材が、本体、支持体を備え、カード当接部材の本体には、上記第1のカード押圧面が形成され、支持体には、可動金属部材が固定支持される。
また、本発明に係るカードコネクタは、前記カード当接部材の本体には、摺動面を有する受け部材が形成され、前記可動金属部材は、該可動金属部材を前記支持体に固定支持するための固定片と支持片、該支持片に弾性変形可能に支持される弾性変形片、該弾性変形片に連結され、該弾性変形片とともに、後方から見て前記本体に形成されている前記第1のカード押圧面の少なくとも一部を覆い隠すように形成される移動片、及び該移動片の後方に設けられ、前記受け部材の前記摺動面上を摺動する当接片、を含んでおり、前記可動金属部材の前記当接片に、前記第2のカード押圧面が形成されていることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明のカードコネクタは、第2のカードには、少なくとも前方及び下方に向って開放するダミーの溝部が形成されており、カード当接部材の支持体の一部及び可動金属部材の支持片は、第2のカードのダミーの溝部に収容され得るように形成されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るカードコネクタは、可動金属部材の弾性変形片が、第2のカードが装着されたとき、該第2のカードに当接しないように形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るカードコネクタは、上記のような構成を備えることで、従来のように、大きさの異なるカードのカードコネクタからの突出量を略同じくすることを維持することを可能とする。それにも拘らず、大小のカードが当接するカード押圧面を上下方向に重複させることで、大小のカードのカード押圧面の大きさを十分大きく取ることができ、大小のカードの装着、排出をいずれも確実に実行することができる。さらに、カード押圧面が後方から見て上下方向に重なることで、カードコネクタの低背化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】カバー部材が取り外された状態にある本発明に係るカードコネクタの斜視図である。
【図2】図1に示されるカードコネクタのII−II線に沿って断面された要部断面図である。
【図3】図1のカードコネクタに第1のカードが装着されることを示す図2と同様の断面図であって、(a)は、第1のカードの前面がカード押圧部に当接した瞬間の状態を示し、(b)は、第1のカードが所定の位置に装着された状態を示す。
【図4】図1のカードコネクタに第2のカードが装着されることを示す図2と同様の断面図であって、(a)は、第2のカードの前面が可動金属部材のカード押圧片に当接した瞬間の状態を示し、(b)は、第2のカードが所定の位置に装着された状態を示す。
【図5】図1のカードコネクタのイジェクト機構の要部拡大斜視図である。
【図6】図5のイジェクト機構の分解図であり、(a)は、イジェクト部材の要部拡大斜視図であり、(b)は、可動金属部材の拡大斜視図である。
【図7】図1のカードコネクタに用いられる第1のカードの斜視図である。
【図8】図1のカードコネクタに用いられる第2のカードの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明に係るカードコネクタの好ましい1つの実施形態につき詳細に説明する。
【0016】
なお、本明細書の説明において、用語「左」及び「右」は、図1に示される座標において、それぞれ、+x方向及び−x方向を指し、用語「前」及び「後」は、それぞれ、図1に示される+y方向及び−y方向を指し、用語「上」及び「下」は、それぞれ、+z方向及び−z方向を指すものとする。
【0017】
本発明の実施形態に係るカードコネクタ1は、2つの大きさの異なるICカードである第1のカード110及び第2のカード120が装着可能であって、2つのうちのいずれか一方を選択的に装着可能とするカードコネクタである。
【0018】
図7は、第1のカード110としての例えばSD(secure digital)カードを裏返した状態(以下、「リバース状態」という。)の図である。第1のカード110は、水平断面で概略矩形状をなしており、上部本体111及び下部本体112を備えている。下部本体112には、それぞれが前方及び下方に向って開放し、それぞれの底面に外部接点としてのパッド114を備える複数の溝部113が形成されている。第1のカード110は、上部本体111の幅(W10)が、下部本体112の幅(W11)よりも広い構造を有している。したがって、第1のカード110は、左右両側部が段部115を介して階段状に形成された形状を有するカードである。本実施形態では、第1のカード110は、リバース状態、すなわち、パッド113が形成されている面(裏面)を上向きにした状態でカードコネクタ1に装着される。なお、図7において、116は、カード前方の角部に形成された切欠部としての傾斜面であり、117は、第1のカード110をカード収容空間内に正しく挿入するとき、該カード110の前面となるカード前端面である。また、L10は、第1のカード110の前後方向の長さ、W12は、左右に形成されている段部111の幅、H10は、第1のカード110全体の高さ(厚さ)、H11及びH12は、上部本体111及び下部本体112の高さをそれぞれ示している。
【0019】
第2のカード120は、図8に示されるように、第1のカード110に比べて、長さが短く、幅が狭く且つ高さが低い、例えば、メモリスティックデュオ(登録商標)である。本実施形態においては、第2のカード120は、水平断面で概略矩形状をなす本体121を備えており、該本体121には、それぞれが前方及び下方に向って開放し、それぞれの底面に外部接点としてのパッド123を備える複数の溝部122が形成されている。本実施形態における第2のカード120は、L20の長さ、W20の幅、H20の高さ(厚さ)を有する。第2のカード120は、第1のカード110の上部111及び下部112の幅(W10及びW11)のいずれよりもその幅が狭いカードである。本実施形態における第2のカード120は、パッド123が形成されている面(裏面)を下向きにしたノーマルな状態(図8に示された状態からひっくり返された状態)でカードコネクタ1に装着される。なお、図8において、124は、カード前方の角部に形成された切欠部としての傾斜面であり、125は、傾斜面124に対応して、前方及び下方に向って開放するダミーの溝部である。また、127は、第2のカード120をカード収容空間内に正しく挿入するとき、該カード120の前面となるカード前端面である。さらに、W21及びW22は、ダミーの溝部125の幅及びダミーの溝部125のカードの側面からの距離を示す。L21及びL22は、それぞれ、ダミーの溝部125の左右方向中央側の奥行(前後方向の長さ)及びダミーの溝部125の側面側の奥行を、H21は、ダミーの溝部125の深さ(上下方向の長さ)を示す。また、H22は、第2のカード120の前面端127の垂直部分の高さ(上下方向の長さ)を示す。
【0020】
次に、本実施形態に係るカードコネクタ1の構造について図1を用いて説明する。カードコネクタ1は、概略、ベース部材10、カバー部材8(図2〜4参照)、仕切り板41、ロック金具50、アクチュエータ60、複数のコンタクト80及び90、及びイジェクタ機構20を含んでいる。本実施形態におけるカードコネクタ1は、さらに、ライトプロテクトスイッチ70及びカード認識スイッチ75を含み得る。
【0021】
カバー部材8は、金属薄板をプレス加工により、打ち抜き、曲げ加工されることで形成され、概略、天板8a、左右の側壁(不図示)を有し、垂直断面略逆U字形を成している。該カバー部材の左右の側壁には、複数の取り付け孔が形成され、後述するベース部材10の左右の側壁13、14に形成されている複数の突起19と係合し、カードコネクタ1を形成する。すなわち、カバー部材8は、ベース部材10に取り付けることにより、後方に向って開放するカード挿入口5を有するICカード収容空間を形成する。
【0022】
ベース部材10は、底壁11、前壁12、右側壁13及び左側壁14を有する概略箱状の形状を成し、電気的に絶縁性のプラスチックから作成される。また、ベース部材10の底壁11には、第2のコンタクト90及び押上バネ49(図2参照)を含む部品がインサート成形により埋め込まれる。
【0023】
ベース部材10の前壁12の上方には、該前壁12を前後方向に貫通する複数の貫通孔12aが形成される。該貫通孔12a内に、第1のカード110の複数のパッド114に対応する複数の第1のコンタクト80それぞれが圧入される。複数の第1のコンタクト80は、それぞれの接点81が上下に変位可能となるように、片持ち梁状に前壁12に支持される。各コンタクト80の接点81は、円弧状に突出して形成され、該円弧状突出部が下向きに配置されるように支持されている。
【0024】
ベース部材10の左右の側壁13及び14には、2つの幅が異なるカード110、120をカード収容空間内に案内する案内路が対をなして形成される。本実施形態においては、左右の側壁13及び14それぞれのカード収容空間に面する側に、上段案内路15、中段案内路16及び下段案内路17が対をなして形成されている。上段案内路15、中段案内路16及び下段案内路17は、いずれも底壁11に対して垂直であり、互いに平行に形成され、隣接する2つの案内路間でそれぞれ階段を形成している。
【0025】
左右の側壁13及び14に形成される一対の上段案内路15は、第1のカード110の下部本体112の幅W11とほぼ同じかそれより若干大きい幅を有する。また、一対の中段案内路15は、第1のカード110の上部本体111の幅W10とほぼ同じかそれより若干大きい幅を有する。また、上段案内路15及び中段案内路16の高さの合計は、第1のカード110の高さH10と略同じかそれより若干高い高さを有する。リバース状態の第1のカード110は、上段案内路15及び中段案内路16によってカード収容空間内へ案内され、挿入される。一対の下段案内路17は、第2のカード120の幅W20とほぼ同じかそれより若干大きい幅を有する。また、下段案内路17の高さは、第2のカード120の高さより低い。第2のカード120の高さが下段案内路17の高さよりも高いので、第2のカード120は、その一部が中段案内路16間に突出する状態で下段案内路17によりカード収容空間内に案内され、挿入される。このように、第1のカード110と第2のカード120のカード収容空間は、一部重複しており、一方のカードが収容されている場合、他方のカードを収容することができないため、カードの同時挿入を防ぐことができる。また、カード収容空間が一部重複することで、カードコネクタ1の高さを低減することができる。
【0026】
ベース部材10の左右の側壁13及び14それぞれの後方には、一対のロック金具50が設けられている。一対のロック金具50は、左右の側壁13及び14それぞれの後方側(すなわち、カード挿入口5側)に形成されている後方収容溝13a及び14a内に、それぞれが相対向するように、左右対称に配置される。
【0027】
ベース部材10の底壁11の前方には、第2のカード120の外部接点である複数のパッド123に対応して複数の第2のコンタクト90が互いに平行に配置されている。第2の複数のコンタクト90それぞれは、片持ち梁状に底壁11に支持されている。限定されるものではないが、本実施形態においては、複数の第2のコンタクト90は、その所定の部分が底壁11内にインサート成形される。
【0028】
次に、一対のロック金具について説明する。該一対のロック金具50は、同じ形状であり、本明細書では、左側壁14の後方収容溝14a内に配置されている左ロック金具50についてのみ説明する。
【0029】
ロック金具50は、後方収容溝14aのカード収容空間側(内側)に配置される弾性変形片51とカード収容空間から遠い側(外側)に配置される固定片53とを有する。弾性変形片51と固定片53は、互いに平行であり、水平断面で略U字形となるように後方側で連結されている。弾性変形片51の後方側の固定片53と連結される部分の近傍には、左側壁14の中段案内路16のカード挿入口5近傍に形成される開口部(不図示)からカード収容空間内に突出する接触部52が設けられている。弾性変形片51の前方自由端側には、後述するアクチュエータ60の突出ピン62(図1には、右側の突出ピン62のみが示されている。)が係合する開口54が形成されている。具体的には、ロック金具50は、プレス加工により、金属薄板から細長い板状体として打ち抜かれ、折り曲げることで形成される。ロック金具50は、その固定片53が左側壁14の後方収容溝14a内に圧入固定されている。なお、後方収容溝14aは、弾性変形片51の開口54に対応する部分より前方であって、隔壁14bまでの間は、該溝14a全体がカード収容空間に連通するように形成されている。したがって、一対の上段案内路15、一対の中段案内路16及び一対の下段案内路17は、カード挿入口5から弾性変形片51の開口54に対応する部分の直前まで延在していることになる。
【0030】
ベース部材10の右側壁13の後方収容溝13aの前方には、隔壁13bを介して前方収容溝13cが形成されている。右側壁13の前方収容溝13c内には、それぞれの一部がカード収容空間内に突出するように形成されているライトプロテクトスイッチ70及びカード認識スイッチ75が配置されている。
【0031】
ベース部材10の左側壁14の後方収容溝14aの前方には、隔壁14bを介して前方収容溝14cが形成されている。左側壁14の前方収容溝14c内には、ICカード110及び120の、カード収容空間内への装着及び該カード収容空間からの排出を助けるイジェクト機構20が配置されている。
【0032】
本実施形態におけるイジェクト機構20は、従来周知のプッシュ・プッシュ式イジェクト機構を備えている。具体的には、本実施形態におけるイジェクト機構20は、概略、カムレバー21、イジェクト部材24、圧縮コイルバネ29、及びカード当接部材25を含んでいる。
【0033】
カムレバー21は、一端が隔壁14bに揺動自在に支持され、他端がイジェクト部材24に形成されているカム溝23に案内されるカムフォロワーとして機能する。イジェクト部材24は、図6(a)に詳細に示されるように、その上面にハートカム22、カム溝23が形成される。イジェクト部材24は、左側壁14の隔壁14bより前方に形成される前方収容溝14c内を前後方向に摺動可能であるように該前方収容溝14c内に収容される。圧縮コイルバネ29は、左側壁14の前方収容溝14c内前方に配置され、イジェクト部材24を後方に向って付勢する。
【0034】
ここで、本発明において最も特徴とするカード当接部材25について図5及び図6(a)、(b)を用いて詳細に説明する。本実施形態において、カード当接部材25は、図5に示されるように、イジェクト部材24に連結される第1のカード当接部材26、第2のカード当接部材27及び可動金属部材30を含んでいる。第1及び第2のカード当接部材26及び27は、いずれも、カード収容空間内に突出するように形成されている。
【0035】
第1のカード当接部材26は、イジェクト部材24に連結され、イジェクト部材24から右方向に、すなわち、カード収容空間内に突出するように形成されている。第1のカード当接部材26は、イジェクト部材24の上方に配置される。第1のカード当接部材26は、図6(a)及び7に示されるように、第1のカード110に形成された切欠部の傾斜面116に当接する傾斜面26aを有する。本実施形態における第1のカード当接部材26は、図1及び2に示されるように、カードが未挿入であるとき、後述する仕切り板41の上方に配置される。
【0036】
第2のカード当接部材27は、図6(a)に示されるように、連結部28を介して、イジェクト部材24の下方部分に連結されている。第2のカード当接部材27は、また、第1のカード当接部材26の右側下方に配置される。第2のカード当接部材27は、図1及び2に示されるように、カードが未挿入であるとき、仕切り板41の下方及び前方に配置されるように設けられる。より具体的には、イジェクト部材24からカード収容空間内に向って延在する連結部28は、仕切り板41のバネ受け部43の上を跨ぐように形成される水平部分を備える。
【0037】
第2のカード当接部材27は、本体27a及び支持体27dを備えている。第2のカード当接部材27の本体27aの上面は、ベース部材10の底壁11の上面と略平行であって、仕切り板41の下面と略同一平面内にあるように水平に形成される。また、第2のカード当接部材27の本体27aの下面は、該部材27の上面と平行であって、ベース部材10の底壁11の上面に沿って前後方向に摺動し得るように形成される。本体27aの高さ(その上面と下面との間の距離)は、第2のカード120の厚さH20に略等しくなるように設定される。
【0038】
第2のカード当接部材27を構成する本体27aの前端面27nは、ベース部材10の底壁11に対して直角をなし、且つ前壁12と平行となるように、形成されている。
【0039】
第2のカード当接部材27を構成する本体27aは、第1のカード110に形成された切欠部の傾斜面116に当接する傾斜面27cを備える。傾斜面27cは、また、第1のカード当接部材26に形成された傾斜面26aと同一平面内にあるように形成される。
【0040】
本体27aは、また、第1のカード110の前端面117に当接する第1のカード押圧面27bを備える。第1のカード押圧面27bは、上記傾斜面27cの右側であって、該傾斜面27cに隣接して形成される。第1のカード押圧面27bは、ベース部材10の底壁11に対して直角をなし、且つ前壁12と平行となるように、第2の当接部材27に設けられる。該第1のカード押圧面27bは、第1のカード110が当接したとき、イジェクト部材24を圧縮バネ29に抗して移動させるための主要要素として機能する。
【0041】
本体27aは、上記第1のカード押圧面27bのさらに右側であって、該第1のカード押圧面27bに隣接して、後方に向って突出する受け部材27hが設けられる。該受け部材27hは、後述する可動金属部材30を構成する当接片35が接触して摺動する摺動面27iを備える。該摺動面27iは、受け部材27hの後端面を形成し、上記第1のカード押圧面27bと略平行に形成されている。該摺動面27iは、第1のカード110と第2のカード120の長さの差(L10−L20)から可動金属部材30(の当接片35)の厚さtをさらに差し引いた長さに等しい間隔をあけて第1のカード押圧面27bから後方に配置されるように形成されている。摺動面27iをこのように形成することにより、第1のカード110または第2のカード120のいずれかを選択的にカードコネクタ1に装着した場合であっても、カードがカードコネクタ1から後方に突出する量が略同じくなる。受け部材27hの摺動面27i上端から前方に延在する上面は、略水平であり、したがって、第2のカード当接部材27の下面に略平行である。受け部材27hの上面には、後述するように、可動金属部材30の移動片34が当接し得るように形成される。第2のカード当接部材27の本体27aの下面から受け部材27hの上面までの高さは、カバー部材8の天板8aの下面から受け部材27hの上面までの距離が第1のカード110の厚さH10に可動金属部材30の(移動片34の)厚さtを加えた長さと略同じかそれよりも若干大きくなるように設定される。受け部材27hの上面の高さは、本体27aの高さよりも低く、したがって、第2のカード120の厚さH20より十分小さく設定され得る。本実施形態では、受け部材27hの水平な上面に続く前方には、可動金属部材30の係合片37が上下動するための変位空間27jが形成されている。該空間27jの上方には、可動金属部材30が過剰に上方へ移動することを防止するストッパ27kが設けられている。
【0042】
第2のカード当接部材27を構成する支持体27dは、主に、可動金属部材30を弾性変形可能に支持するための部材である。該支持体27dは、前方部分27d1と後方部分27d2を含んでいる。支持体27dの前方部分27d1は、本体27aの左側後方下方、すなわち傾斜面27c及び第1のカード押圧面27bの一部の下方から上記受け部材27hに若干に間隔を空け、該受け部材27hに平行に後方に向って突出形成されている。 支持体27dの後方部分27d2は、図6(a)に示されるように、前方部分27d1の右側側面に沿ってさらに後方に延在する。後方部分27d2は、前方部分27d1より幅(左右方向の長さ)が小さく、第2のカード120の裏面に形成されているダミーの溝部125の幅W21より若干小さい幅を有する。また、後方部分27d2の下面からの高さは、ダミーの溝部125の深さH21から後述する可動金属部材30の支持片32の厚さtを差し引いた長さより小さく設定される。さらに、前方部分27d1後端から延在する後方部分27d2の長さは、第2のカード120のダミーの溝部125の側面側の奥行L22に略等しくなるように設定される。後方部分27d2をこのように構成することで、第2のカード120が挿入されたとき、該後方部分27d2は、可動金属部材30の支持片32とともに、第2のカード120のダミーの溝部125内に収容される。なお、前方部分27d1及び後方部分27d2を含む支持体27dの下面は、本体27aの下面と面一に形成され、本体27aとともにベース部材10の底壁11に上面に沿って前後方向に摺動し得るように形成される。
【0043】
支持体27dの前方部分27d1には、上方及び後方に向って開放し、上から見て概略C字形をなしているC字形溝部27gが形成される。該C字形溝部27gの底面は、略水平に延在する水平面傾斜面27g1と、該水平面27g1から前方に向って上昇する傾斜面27g2として形成される。C字形溝部27gのさらに前方の底面は、本体27aの傾斜面27c及び第1の押圧面27bに沿う水平面27g3として形成され、本体27aの受け部材27hの上面に左右方向に対向するように形成される。支持体27dの前方部分27d1に形成されるC字形溝部27gの形状は、図5及び図6(a)、(b)に示されるように、可動金属部材30の形状と略同じであることが理解される。
【0044】
支持体27dの後方部分27d2は、後述する可動金属部材30を構成する固定片31が圧入される圧入孔27fが形成された後端面27eを備えている。該後端面27eは、上記第1のカード押圧面27bと略平行に形成されている。圧入孔27fは、後方に向って開口し、上記固定片31の長さに略等しい長さ分支持体27dの後方部分27d2内に前後方向に延在している。支持体27dの後方部分27d2の上面は、後方側では、後端面27e上端から前方に向って水平に延在する水平面27d21として形成され、前方側では、前方に向って下降する傾斜面27d22として形成される。支持部材27dの後方部分27d2に形成される傾斜面27d22は、支持体27dの前方部分27d2に形成される概略C字形溝部27gの底面に連続する。
【0045】
続いて、本発明に係るカード当接部材25を構成する可動金属部材30について説明する。可動金属部材30は、選択的にカードが装着されることに伴って、第2のカード当接部材27と協同して第1のカード110と第2のカード120と当接する第1のカード押圧面27bと第2のカード押圧面35aを振り分ける機能を有する。
【0046】
可動金属部材30は、図6(b)に詳細に示されるように、上から見て、概略C字形状をなし、固定片31、支持片32、弾性変形片33、移動片34及び当接片35を備えている。可動金属部材30は、厚さtを有する金属薄板から所望の形状に打ち抜かれ、プレス加工により折り曲げられることで形成される。
【0047】
可動金属部材30を構成する固定片31は、左右側面に形成された複数の係合爪31aを有し、前後方向に水平に延在する。支持片32は、固定片31の後端部において180°折り曲げられ、該固定片31に平行に、且つ前方に向って水平に延在する。固定片31及び支持片32がこのように形成されることで、固定片31が圧入孔27fに圧入されるとともに、支持片32が支持体27dの後方部分27d2に形成される水平面27d21に密着する。それにより、可動金属部材30は、第2の当接部材27の支持体27dに固定される。なお、本実施形態では、支持片32の前方部分は、支持体27dの後方部分27d2に形成される傾斜面27d22が前方に向って傾斜しているため、支持体27dの上面から離れて配置される。また、支持片32の幅(左右方向の長さ)は、支持体27dの後方部分27d2の幅と略同じであり、したがって、第2のカード120の裏面に形成されているダミーの溝部125の幅W21より若干小さい幅を有する。
【0048】
可動金属部材30を構成する弾性変形片33が、支持片32の前方に形成される。弾性変形片33は、支持片32の前端から左斜め前方に水平に延在する連結部32aを介して支持片32に連結され、支持される。弾性変形部33は、第2のカード120の角部に形成された傾斜面124に対応して形成されるため、第2のカード120との干渉による弾性変形片33の変形を防ぐことができる。弾性変形片33は、連結部32aの前端から前方に向って上昇する傾斜部33a及び傾斜部33aに続いて該傾斜部33aの前端から前方に向って水平に延在する水平部33bを含んでいる。傾斜部33a及び水平部33bは、連結部32aの前端及び傾斜部33aの前端において、所望の角度で折り曲げられることで形成される。少なくとも可動金属部材30の傾斜部33aは、カードが未挿入の図2に示される状態にあるとき、仕切り板41の下に配置されるように形成される。傾斜部33a及び水平部33bは、それぞれ、第2の当接部材27の支持体27dの前方部分27d1に形成されるC字形溝部27gの底面を構成する水平面27g1及び傾斜面27g2の上方に間隔を置いて配置される(図5参照)。弾性変形片33は、このような構成を備えることにより、仕切り板41が下降すると、連結部32aの前端近傍を支点にして、下方に向って変形可能である。
【0049】
可動金属部材30を構成する移動片34が、連結部33cを介して、弾性変形部33の前方であって、左右方向水平に延在するように形成されている。移動片34と弾性変形片33は、図6(b)に示されるように、概略直角をなすように形成されるとともに、後方から見て、本体27aに形成される傾斜面27c及び第1のカード押圧面27bを覆い隠すように形成される(図2及び5参照)。移動片34は、弾性変形片33の変形により上下に変位可能である。移動片34は、カードが未挿入である図2に示される状態にあるとき、第2のカード当接部材27の本体27aと仕切り板41との間であって、該仕切り板41と略同じ高さに配置されるように形成される。
【0050】
可動金属部材30を構成する当接片35が、移動片34の先端部(右側端部)の後方側に該移動片34と直角をなすように下方に向けて折り曲げられることで形成されている。それにより、後方に向って配置される当接片35の垂直面は、第2のカード120の前端面127に当接する第2のカード押圧面35aとして機能する。当接片35は、下方に位置する受け部材27hの摺動面27iにまで延在していることが好ましい。当接片35は、移動片34とともに、弾性変形片33の変形により、上下に移動可能である。言い換えると、当接片35、したがって可動金属部材30は、カードが未挿入であるときまたは第2のカード120が挿入されたとき、可動金属部材30(の弾性変形片33)が変形しないので、第1の位置としての上昇位置にある。一方、第1のカード110が挿入されたとき、当接片35、したがって、可動金属部材30は、仕切り板41により可動金属部材30(の弾性変形片33)が押し下げられ、移動片34が受け部材27hの上面に当接した第2の位置としての下降位置にある。さらに言えば、当接片35の第2のカード押圧面35aは、上昇した第1の位置から下降した第2の位置の間を移動可能であるといえる。なお、当接片35が第2の位置にあるとき、当接片35の下端部は、ベース部材10の底壁11と干渉しないように位置している。本実施形態においては、第2のカード120が挿入されたとき、当接片35が上昇した第1の位置にあるので、第2のカード120のカード前端面127は、十分な大きさ(面積)を有する当接片35の第2のカード押圧面35aに当接し得る。それにより、第2のカード120は、イジェクト部材24を確実に移動させることができる。また、第1のカード110が挿入されたときも、可動金属部材30(の移動片34)が第2の位置に下降することで、十分な大きさを有する第1のカード押圧面27bに当接し得る。それにより、第1のカード110は、ジェクト部材24を確実に移動させることができる。これらのことから、本体に形成される第1のカード押圧面27bと可動金属部材30に形成される第2のカード押圧面35aは、通常、すなわち、カードが挿入されないとき、図2及び5に示されるように、後方から見て、左右方向にはズレているが、上下方向には重なっている。
【0051】
本実施形態では、可動金属部材30を構成する浮き防止片36が、当接片35の左側に隣接するとともに、移動片34の後方側に形成されている。浮き防止変36は、移動片34より若干高く形成されるとともに、移動片34より後方に水平に延在する。この浮き防止片36は、第2のカード120が挿入され、当接片35の第2のカード押圧面35aに第2のカード120のカード前端面127が当接したとき、第2のカード120の上面に接触し、第2のカード120の浮き上りを防止する。
【0052】
本実施形態では、可動金属部材30を構成する係合片37が、移動片34の前端部(右側端部)の前方側にさらに形成されている。係合片37は、第2のカード当接部材27の本体27aに設けられたストッパ27kに係合することで、可動金属部材30の上昇を規制する部材である。係合片37は、本実施形態では、移動片34より下方に配置するように折り曲げて形成されているが、移動片34と同じ高さで水平に前方に延在していてもよい。
【0053】
次に、装着されるICカード(本実施形態においては、第1のカード110と第2のカード120)を振り分ける仕切り板41について説明する。仕切り板41は、概略、左右の側壁13及び14それぞれの隔壁13b及び14bを結ぶ線より前方のカード収容空間内で上下動することで、該カード収容空間内において大きさの異なるカードを上下に振り分け、案内する。仕切り板41は、第1のカード110が仕切り板41の上に案内されると、下降するとともに、第2のカード当接部材27に取り付けられている可動電気部材30を第1の位置から第2の位置へ移動させる。
【0054】
仕切り板41は、細長い一対のバネ受け部42、43、一対の駆動片44、45及び一対の規制片46、47を含んでいる。
【0055】
仕切り板41は平坦であり、カードコネクタ1として組み立てられたとき、図1に示されるように、カード収容空間を横断する第1の位置に配置される。この時、仕切り板41の下面の底壁11からの高さが第2のカード120の厚さH20とほぼ同じかそれより若干大きくなるように、仕切り板41が配置される。仕切り板41は、本実施形態では、その両側に設けられる一対のバネ受け部42、43より一段高い位置に設けられている。このように構成することで、仕切り板41の両側と一対のバネ受け部42、43とをそれぞれ連結する垂直の段差部が小さなカード120を案内する。したがって、仕切り板41の幅は、小さなカード120の幅W20とほぼ同じである。なお、仕切り板41は、該仕切り板41が上下に移動しても第1及び第2のコンタクト80及び90やイジェクト機構20に対して互いに干渉することがないように、例えば、略矩形状の前方切り欠き41aを形成するなど、適宜の形状に形成される。
【0056】
細長い一対のバネ受け部42、43は、組み立てられたとき、ベース部材10の底壁11に設けられた一対の押上バネ49、49(図2参照)に対応するように、上記仕切り板41の左右両側に設けられる。したがって、一対のバネ受け部42、43は、一対の押上バネ49、49により上方に向って付勢され、結果として、仕切り板41は、通常、上方に押し上げられた第1の位置にある。本実施形態では、上述したように、一対のバネ受け部42、43は、仕切り板41より一段低い位置に形成されるとともに、左側のバネ受け部43がカード当接部材25の下に配置されるように形成される。仕切り板41及びその左右両側に設けられる一対のバネ受け部42、43を合わせた長さ、すなわち、幅は、第1のカード110の幅にほぼ等しくなるように設定される。
【0057】
細長い一対のバネ受け部42及び43それぞれの外側には、細長い一対のバネ受け部42及び43それぞれに対して直交するように、垂直案内片(図1においては、バネ受け部43に形成されている43aのみが示されている。)が設けられている。該垂直案内片43aは、細長い一対のバネ受け部42及び43の前後方向適宜の位置に設けられる。該垂直案内片43aは、ベース部材10の右側壁13及び左側壁14の内壁面(カード収容空間に向いている面)に沿って移動することにより、仕切り板41の上下方向の移動を案内する。該垂直案内片43aは、また、それぞれの高さを適宜設定することにより、後述する一対の規制片46、47とともに、仕切り板41の上方への移動を規制することができる。すなわち、垂直案内片43aと一対の規制片46、47は、仕切り板41が第2のカード120の厚さH20と同じ高さとなる第1の位置より上に移動しないように仕切り板41の上方への移動を規制する。
【0058】
細長い一対のバネ受け部42、43の後端部には、一対の駆動片44、45がそれぞれの後端部から後方に向って延在するように設けられている。一対の駆動片44、45は、後述するアクチュエータ60が回動したとき、アクチュエータ60と係合し得るように、細長い一対のバネ受け部42、43の後端部から所定の長さ延在している。アクチュエータ60の回転に伴い、アクチュエータ60に形成されている一対の係合凹部(不図示)に係合した後、アクチュエータ60のさらなる回転により、一対の駆動片44、45は、押上バネ49、49の付勢力に抗して下方に向って押し下げられる。それにより、仕切り板41が後方に向って下がるように傾斜し、第1のカード110が仕切り板41の後端に達したとき、該第1のカード110を仕切り板41の上に案内することが可能となる。この後、第1のカード110は、また、垂直案内片43aによりカード収容空間内を案内されるとともに、第1のカード110により仕切り部材40全体が押し下げられ、底壁11に平行な第2の位置に移動する。
【0059】
細長い一対のバネ受け部42、43の前端部には、一対の規制片46、47が、それぞれの前端部から上方に向けて延在するように設けられている。一対の規制片46、47は、細長い一対のバネ受け部42、43に直交するように、折り曲げられている。該一対の規制片46及び47は、例えば、前壁12の内壁面(カード収容空間に向いている面)に沿って移動することにより、仕切り部材40の上下方向の移動を案内するとともに、仕切り部材40の上方への移動を規制する。
【0060】
続いて、第1のカード110以外のカードの挿入を阻止するとともに、第1のカード110の挿入時、上記仕切り板41を傾斜させて第1のカード110をカード収容空間の所定の位置に案内するアクチュエータ60について説明する。
【0061】
アクチュエータ60は、シャッター部61、一対の突出ピン62(図1においては、右側の脚部62のみ示されている。)、一対の脚部65(図1においては左側の脚部65のみ示されている。)及び一対の回転軸(不図示)を含んでいる。アクチュエータ60は、カード収容空間を横断して配置され、カード収容空間内で回転可能に配置されている。また、アクチュエータ60は、シャッター部61及び一対の脚部65により、第2のカード120が通過することができる垂直断面略矩形状の通過開口を有している。
【0062】
シャッター部61は、図1に示されるようにICカードが装着されていないときは、カード挿入方向と直交し、カード収容空間を左右に横断し、該カード収容空間の上方部分を塞ぐように配置されている。シャッター部61の左右両側には、左右の後方収容溝13a、14a内に向って突出する一対の突出ピン62が形成されている。該一対の突出ピン62は、図1に示されるようにICカードが装着されていないときは、上述したように、それぞれ対応する一対のロック金具50の開口54に係合している。
【0063】
シャッター部61の左右両側であって、一対の突出ピン62の内側に、一対の脚部65が下方に向って設けられ、シャッター部61及び一対の脚部65により垂直断面矩形状の通過開口を形成している(図1参照)。該通過開口の垂直断面の形状は、第2のカード120の垂直断面の形状とほぼ同じか、それより若干大きくなるように設定される。すなわち、一対の脚部65の間隔は、第2のカード120の幅W20と同じであり、それにより、一対の下段案内路17の間隔とほぼ同じである。一対の脚部65の前面側には、それぞれ係合凹部(不図示)が形成されている。一対の係合凹部は、アクチュエータ60の回転時、仕切り板41の一対の駆動片44、45に係合し、該一対の駆動片44、45を押し下げ、結果として、仕切り板41の後端部を押し下げる。
【0064】
一対の脚部65の下端には、それぞれ、該下端から左右外側に向って一対の回転軸(不図示)が突出形成される。一対の回転軸は、それぞれ、左右の側壁13、14の後方収容溝13a、14a内に配置され、該後方収容溝13a、14aの底部を横断し、左右の側壁13、14に回転自在に支持される。一対の回転軸の一方または両方に、ネジリコイルバネ(不図示)が巻きつけられる。該ネジリコイルバネは、アクチュエータ60のシャッター部61が、図1に示されるように、直立した位置、すなわち、カード収容空間を閉じる第1の位置に付勢する。
【0065】
アクチュエータ60は、通常、図1に示されるように、そのシャッター部61がカード収容空間を部分的に閉じる第1の位置にある。アクチュエータ60は、後述するように、第1のカード110が挿入されたとき、ロック金具50との係合が外れ、回転軸回りに回転可能状態となる。第1のカード110がさらに挿入されると、そのシャッター部61が該第1のカード110に当接し、アクチュエータ60を回転させながらこれを前方に押し倒し、シャッター部61がカード収容空間を開放する第2の位置に回転移動する。また、第2のカード120が挿入されるときは、アクチュエータ60を回転させることなく、該アクチュエータ60に形成されている通過開口を通過させる。
【0066】
本発明に係るカードコネクタ1は、以上の構成を備える。以下、本発明に係るカードコネクタ1へICカードを択一的に装着する具体的な動作について説明する。先ず、第1のカード110を本発明に係るカードコネクタ1に装着する動作について説明する。
【0067】
図1及び2に示されるように、第1のカード110を装着していないとき、カードコネクタ1のロック金具50、アクチュエータ60及び仕切り板41は、いずれも第1の位置にある。具体的には、ロック金具50はその対をなす接触部52が閉じた第1の位置にあり、アクチュエータ60はそのシャッター部61がカード収容空間を部分的に閉じた第1の位置にある。このとき、一対のロック金具50の対をなす開口54とアクチュエータ60の一対の突出ピン62は係合している。また、仕切り板41は、ベース部材10の底壁11とほぼ平行であって、該底壁11からの高さが第2のカード120の厚さとほぼ同じである第1の位置にある。また、可動金属部材30は、その移動片34及び当接片35が第1の位置としての上昇位置にある。
【0068】
第1のカード110が、今、そのバッド114が形成された面を上にしたリバース状態でカード挿入口5から挿入される。すなわち、第1のカード110の幅の広い上部本体111が中段案内路16に沿い、幅の狭い下部本体112が上段案内路15に沿うようにカード挿入口5から挿入される。
【0069】
第1のカード110が前方に向って挿入されると、その幅の広い上部本体111が、中段案内路16の開口(不図示)を通ってカード収容空間内に突出する一対のロック金具50の対をなす接触部52に接触する。この接触により、対をなす接触部52をカード収容空間から同時に退避させる。すなわち、対をなす接触部52を第2の位置へ移動させる。それにより、一対のロック金具50の対をなす弾性変形片51が開き(第2の位置への移動)、該対をなす弾性変形片51の対をなす開口54とアクチュエータ60の一対の突出ピン62の係合が同時に外れ、したがって、アクチュエータ60は、回転可能状態となる。
【0070】
この状態から第1のカード110がさらに挿入され、前進すると、第1のカード110の先端がアクチュエータ60のシャッター部61に当接する。この時、上述したように、アクチュエータ60は、回転可能状態となっている。したがって、第1のカード110の前進に伴い、アクチュエータ60は、ネジリコイルバネの付勢力に抗して、前方に向って押し倒されるように回転する。アクチュエータ60の回転の途中において、アクチュエータ60の一対の脚部65に設けられている係合凹部(不図示)が仕切り板41の左右一対の駆動片44、45に係合する。
【0071】
さらに第1のカード110が挿入されると、アクチュエータ60は完全に倒れ込んだ第2の位置まで回転し、第1のカード110が通過し得るようにカード収容空間上部が開放される。それにより、第1のカード110は、該アクチュエータ60のシャッター部61を乗り越えて前進する。
【0072】
この時、アクチュエータ60の第2の位置までの回転が、一対の駆動片44、45を十分に押し下げ、仕切り板41を傾斜させる。すなわち、仕切り板41の後端部が、押し下げられる。したがって、第1のカード110の先端は、仕切り板41の後端部上に乗り上がることが可能な状態となっている。
【0073】
この状態から第1のカード110さらに挿入されると、第1のカード110の前進に伴い、仕切り板41は、ベース部材10の底壁11の上面に平行になる位置、すなわち第2の位置まで押し下げられる。仕切り板41がこのように押し下げられることで、該仕切り板41の下に配置される可動金属部材30の弾性変形片33が変形し、可動金属片30の移動片34及び当接片35が下降する。可動金属部材30は、移動片34が第2のカード当接部材27の受け部材27hの上面に当接する第2の位置まで下降する。したがって、図3(a)に示されるように、第1のカード110のカード前端面117は、イジェクト機構20のカード当接部材25を構成する第2のカード当接部材27の第1のカード押圧面27bに当接し得る。このとき、第1のカード110の切欠部としての傾斜面116が、第1のカード当接部材26の傾斜面26a及び第2のカード当接部材27の傾斜面27cに当接する。それにより、第1のカード110は、イジェクト機構20の圧縮コイルバネ29の付勢力に抗して、前方に向ってさらに押し込まれ、図3(b)に示されるように、第2のカード当接部材27の前端面27nがベース部材10の前壁12に到達するまで押し込まれる。
【0074】
図3(b)の状態において、第1のカード110から押し込む力を取り除くと、プッシュ・プッシュ式イジェクト機構20の作用により第1のカード110は若干後方に押し戻された状態でカードコネクタ1のカード収容空間内に保持される。この時、第1のカード110の複数のパッド114は、対応する複数の第1のコンタクト80にそれぞれ接触し得る。
第1のカード110は、上述したように、仕切り板41を介して底壁11との間に配置されている一対の押上バネ49の付勢力に抗して、カード収容空間内にある仕切り板41を第2の位置まで押し下げる。言い換えれば、仕切り板41は、第1のカード110の上部本体111の表面に接触し、底壁11に平行な第2の位置あり、第1のカード110を上方に押し上げている。したがって、第1のカード110の複数のパッド114は、対応する複数の第1のコンタクト80に対して、それぞれ適切な接触圧で電気的に接触し得る。なお、第1のカード110がカードコネクタ1のカード収容空間内に装着されたとき、第1のカード110の上部本体111の表面が第2のカード120用の複数の第2のコンタクト90に接触してもよい。このように構成しても、第1のカード110の上部本体111の表面にはパッドが形成されていないし、該表面は電気的に導電性を有していないので、第1のカード110に何ら悪い影響を与えることはない。むしろ、複数の第2のコンタクト90に接触することで、第1のカード110と第1のコンタクト80との接触圧を大きくするために、これらのコンタクトの反発力を利用し得る。
【0075】
なお、第1のカード110の上部本体111と同じ幅を有する想定外のICカードが、中段案内路16内に挿入されたとしても、第1のカード当接部材26の傾斜面26a及び第2のカード当接部材27の傾斜面27cに当接するので、第1のカード110の所定の位置までの前進が妨げられる。また、第1のカード110が、例えば、前後逆に挿入しようとしても、下段案内路17により挿入が妨げられる。
【0076】
第1のカード110をカードコネクタ1から取り外すときは、図3(b)の状態より若干後退した位置にある第1のカード110を図3(b)の状態にまで再度押し込む。続いて、図3(b)の状態で第1のカード110を押し込んでいる力を取り除くことで、第1のカード110は、イジェクト機構20の作用によりカードコネクタ1から排出される。可動金属部材30、仕切り部材40、ロック金具50及びアクチュエータ60は、いずれも、それぞれの第1の位置に戻る。
【0077】
次に、第2のカード120を本発明に係るカードコネクタ1に装着する動作について図4(a)及び(b)を用いて説明する。
【0078】
第2のカード120が、今、そのバッド123が形成された面を下にしたノーマル状態で下段案内路17に沿うようにカード挿入口5から挿入される。第2のカード120の挿入は、下段案内路17に沿って案内されるので、ロック金具50に接触することがなく、したがって、アクチュエータ60は依然として第1の位置にある。しかしながら、第2のカード120は、アクチュエータ60に設けられた通過開口を通過可能であるので、そのままカード収容空間内を前進することができる。さらに、仕切り板41も、第2のカード120の厚さH20より高い第1の位置に配置されているので、第2のカード120は、仕切り板41の下のカード収容空間内に挿入され得る。
【0079】
第2のカード120がさらに仕切り板41の下を前進すると、第2のカード当接部材27の支持体27dの後方部分27d2及びこれに固定されている可動金属部材30の支持片32が第2のカード120に設けられたダミーの溝部125内に収容される。しかしながら、上述したように、可動金属部材30を構成する弾性変形片33は、第2のカード120に設けられている切欠部としての傾斜面124と協同して、第2のカード120に当接しないように形成されている。それにより、第2のカード120のカード前端面127は、可動金属片30の弾性変形片33が変形しないので、図4(a)に示されるように、上昇したままの第1の位置にある可動金属部材30の第2のカード押圧面35aに当接し得る。
【0080】
第2のカード120のその後の装着動作は、第1のカード110の場合と同じであるので説明を省略する。また、第1のカード110の場合と同様、第2のカード120が装着されたとき、その上面(パッドが形成されていない面)が第1のカード110用の複数の第1のコンタクト80に接触してもよい。
【0081】
第2のカード120が間違って、中段案内路16に沿って挿入されたとしても、第2のカード120はその幅が小さいため、一対のロック金具50の対をなす接触部52を同時に第2の位置へ移動させることが不可能であり、したがって、アクチュエータ60が回転可能状態となることはなく、第2のカード120がアクチュエータ60のシャッター部材61より前方に挿入されることが阻止される。それにより、第2のカード120やカードコネクタ1、さらにはカードコネクタ1を介して接続されている電子機器を損傷させることはない。また、第2のカード120が、例えば、前後逆に下段案内路17に挿入された場合、第2のカード120の後端面が第2のカード当接部材27の支持体27dの後端面27eに当接するので、第2のカード120の所定の位置までの前進が妨げられる。あるいは、該第2のカード120と同じ幅を有する想定外のカードが、下段案内路17に挿入された場合も、想定外のカードの前端面が第2のカード当接部材27の支持体27dの後端面27eに当接し、該カードの所定の位置までの前進が妨げられる。
【0082】
本実施形態では、カードコネクタ1は、第1のカード110をリバース状態で装着し、第2のカード120をノーマル状態で装着するように形成されている。しかしながら、これに限定されるものではなく、カードコネクタ1を第1のカード110及び第2のカード120をいずれもノーマルな状態で装着できるように形成することも当業者であれば可能である。この場合、カード当接部材25を構成する第1のカード当接部材26及び第2のカード当接部材27に形成される傾斜面27cが省略される。
【符号の説明】
【0083】
1 カードコネクタ
5 カード挿入口
8 カバー部材
10 ベース部材
15、16 一対の第1の案内路
17 一対の第2の案内路
20 イジェクト機構
26 第1のカード当接部材
27 第2のカード当接部材
27b 第2のカード押圧面
30 可動金属部材
33 弾性変形片
34 移動片
35 当接片
35a 第2のカード当接面
41 仕切り板
50 一対のロック金具
52 一対の接触部
60 アクチュエータ
61 シャッター部
65 一対の脚部
80 第1のコンタクト
90 第2のコンタクト
110 第1のカード
120 第2のカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材とカバー部材とによりカード挿入口を有するカード収容空間を形成し、該カード収容空間内に第1のカード、該第1のカードに比べて、長さが短く、幅が狭く、及び厚さが薄い第2のカードのうちいずれか1つが選択的に収容されるカードコネクタであって、
前記第1のカード用の複数の第1のコンタクトと、前記第2のカード用の複数の第2のコンタクトを有する複数のコンタクト、
前記カード収容空間を上下に仕切るとともに、前記第1のカードの挿入及び排出に対応し前記カード収容空間内を下降及び上昇し得るように形成された仕切り板、
前記カードコネクタ内を前後方向に移動可能に設けられたイジェクト機構
を備え、
前記イジェクト機構は、カードコネクタ内を前後方向に摺動し得るイジェクト部材、該イジェクト部材に連結し、前記第1のカードの前端面に当接する第1のカード押圧面を有するカード当接部材、及び該カード当接部材に取り付けられ、前記第2のカードの前端面に当接する第2のカード押圧面を有する可動金属部材を少なくとも有し、
前記可動金属部材及び前記第2のカード押圧面は、前記第1のカード押圧面の後方に配置され、
前記可動金属部材の前記第2のカード押圧面は、前記第1のカードの挿入及び排出により前記仕切り板が下降及び上昇するのに対応して、上昇位置としての第1の位置と下降位置としての第2の位置との間を移動可能であり、
前記可動金属部材は、前記第2のカード押圧面が前記第1の位置にあるとき、前記第1のカード押圧面の少なくとも一部を覆い隠すように形成されていることを特徴とするカードコネクタ。
【請求項2】
前記カード当接部材は、前記第1のカード押圧面が形成される本体、及び該本体から後方に延在し、前記可動金属部材が固定支持される支持体を備えていることを特徴とする請求項1に記載のカードコネクタ。
【請求項3】
前記カード当接部材の本体には、摺動面を有する受け部材が形成され、
前記可動金属部材は、該可動金属部材を前記支持体に固定支持するための固定片と支持片、該支持片に弾性変形可能に支持される弾性変形片、該弾性変形片に連結され、該弾性変形片とともに、後方から見て前記本体に形成されている前記第1のカード押圧面の少なくとも一部を覆い隠すように形成される移動片、及び該移動片の後方に設けられ、前記受け部材の前記摺動面上を摺動する当接片、を含んでおり、
前記可動金属部材の前記当接片に、前記第2のカード押圧面が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のカードコネクタ。
【請求項4】
前記第2のカードには、少なくとも前方及び下方に向って開放するダミーの溝部が形成されており、
前記カード当接部材の前記支持体の一部及び前記可動金属部材の前記支持片は、前記第2のカードの前記ダミーの溝部に収容され得るように形成されていることを特徴とする請求項3に記載のカードコネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−174644(P2012−174644A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38426(P2011−38426)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000177690)山一電機株式会社 (233)
【Fターム(参考)】