カード用コネクタ
【課題】カードの不用意な飛び出しを確実に防止できるカード用コネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ10は、カード1が挿抜される凹部21を形成するハウジング2と凹部21を覆うカバー3を備える。スライド部材4は、カード1の挿抜方向と平行する方向に進退するように凹部21の片翼に配置され、ハート型のカム溝41が形成される。板ばね5は、基端側がスライド部材4に固定され、先端側が凹部21の開口に向かって突出する。圧縮コイルばね6aは、スライド部材4をカード1が排出される方向に付勢する。案内棒6bは、一端がハート型のカム溝41に連結し、他端がハウジング2に回動自在に支持される。スライド部材4は、カード1の側面に形成された斜辺1aに当接する係合片42を有し、板ばね5は、略方形の凹部1bにカード1の表面側から出入りし、凹部1bに弾性をもって係止する半円弧爪51を有する。
【解決手段】コネクタ10は、カード1が挿抜される凹部21を形成するハウジング2と凹部21を覆うカバー3を備える。スライド部材4は、カード1の挿抜方向と平行する方向に進退するように凹部21の片翼に配置され、ハート型のカム溝41が形成される。板ばね5は、基端側がスライド部材4に固定され、先端側が凹部21の開口に向かって突出する。圧縮コイルばね6aは、スライド部材4をカード1が排出される方向に付勢する。案内棒6bは、一端がハート型のカム溝41に連結し、他端がハウジング2に回動自在に支持される。スライド部材4は、カード1の側面に形成された斜辺1aに当接する係合片42を有し、板ばね5は、略方形の凹部1bにカード1の表面側から出入りし、凹部1bに弾性をもって係止する半円弧爪51を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード用コネクタに関する。特に、本発明は、超小型メモリカードであるmicroSD(Secure Digital)カードなどが挿入されることによって、当該カードと電気的に接続するカード用コネクタの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
カード型の記憶装置であるメモリカードは、記憶媒体としてフラッシュメモリを採用している。メモリカードは非常に小型であり、データの読み書きにほとんど電力を消費しないため、例えば、カメラ付き携帯電話やPDA(Personal Digital Assistance)に代表される携帯型情報機器の記録メディアとして普及している。
【0003】
フレキシブルディスク(FD)や光磁気ディスク(MO)等のディスク型の記憶装置に比較して、メモリカードは記憶容量が小さく、又、高価であるとされてきた。しかし、近年の技術進歩やメモリカードを使用する機器の普及に伴う量産効果により、最大で128MB程度の大記憶容量となり、低価格となってきている。
【0004】
更に、メモリカードは、データの読み書きにFDやMOなどのように駆動装置を必要としないというメリットがあるため、消費電力や携帯性が重要視されるデジタルカメラやノート型パソコン、携帯音楽プレーヤーには好適である。
【0005】
microSDカードの外形は、11mm(幅)×15mm(長さ)×1.0mm(厚さ)となっており、miniSDカードの外形が20mm(幅)×21.5mm(長さ)×1.4mm(厚さ)であるのと比較して、幅で約半分、体積で約1/4に減縮されている。
【0006】
このようなカードは、カード用コネクタに装着されて必要なデータが読み書きされる。一般に、カード用コネクタは、挿入されるカードと共に移動するスライド部材と、カードを装着位置に保持するロック機構と、を備えている。そして、このカード用コネクタは、装着されたカードを一旦押すとロックが解除され、スライド部材によりカードが排出される構成となっている。
【0007】
このような構成のカード用コネクタとして、落下などの衝撃が加わった場合に、カードの飛び出しを防止することができるカード用コネクタが発明されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
又、このような構成のカード用コネクタとして、カードを排出するとき、カードが勢いよく飛び出すことを確実に阻止できるカード用コネクタが発明されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−86289号公報
【特許文献2】特開2005−353368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図10は、特許文献1によるカード用コネクタの平面図であり、衝撃時に案内部材がハート型のカム溝から離れてロックピンのロック解除を防止している状態図である。本願の図10は、特許文献1の図16に相当している。
【0010】
図10において、カード用コネクタ8は、ハウジング81、スライド部材86、復帰用ばね83、及びロック手段を備えている。ハウジング81はカード8cが挿着される。スライド部材86は、カード8cの挿入及び排出に伴いカード8cと係合してカード8cの挿入方向及び排出方向に移動可能に配設されている。復帰用ばね83は、スライド部材86をカード8cの排出方向へ付勢している。ロック手段は、復帰用ばね83の付勢力に抗して、スライド部材86をカード8cの挿着位置にロックできる。
【0011】
図10において、ロック手段は、一端がスライド部材86に遥動可能に係合するロックピン84、及びカム溝8hが形成されたハート型のカム溝8gから構成されている。ロックピン84は、スライド部材86をカード8cの挿着位置にロックすると共に、スライド部材86をロック位置から奥方へ移動させることによりロックを解除させる。ハート型のカム溝8gは、ロック部8iを有し、ロックピン84の他端が摺動する。
【0012】
又、図10において、ハウジング81は、案内部材87と付勢用ばね85を有している。案内部材87は、カード8cの挿入方向及び排出方向に移動可能であって、ハート型のカム溝8gと協働してロックピン84の動きを案内する。付勢用ばね85は、ロックピン84がロック可能な方向に案内部材87を付勢する。
【0013】
特許文献1によるカード用コネクタは、外部からの衝撃が加わった場合に、案内部材87が付勢用ばね85の付勢力に抗して、ハート型のカム溝8gから離れる方向に移動することにより、ロックピン84の他端が案内部材87に案内されてロック部8iからの離脱を防止できる、としている。通常は、ロックピン84の他端は、ロック部8iに対向するV字形突起の片面に形成された第1傾斜面8f側に移動して、カード8cが排出されるのに対し、外部からの衝撃が加わった場合に、ロックピン84の他端がV字形突起の片面に形成された第2傾斜面8e側に移動して、ハート型のカム溝8gにロックピン84が係止されるからである。
【0014】
図10において、板ばね片88は、スライド部材86がカード8c側に回動するように力を付勢している。スライド部材86は、先端部が略L字状に形成され、カード8cの先端縁に当接するカード受け部86bとなっている。又、スライド部材86における基端部と先端部の中間には、山形の係止凸部86cが設けられている。係止凸部86cは、カード8cの片翼に形成された方形の係止用凹部8aに係合できる。
【0015】
図10において、カード8cは、カード受け部86bに引き出されて排出方向に移動する。スライド部材86が停止すると、係止凸部86cが係止用凹部8aに係合しているので、カード8cはハウジング81内に保持されている。カード8cを比較的強い力で引き抜くことにより、係止凸部86cの傾斜面と係止用凹部8aの隅部がスライドし、スライド部材86が解除方向に回動してカード8cを抜去できる。
【0016】
ここで、特許文献1によるカード用コネクタは、カード8cを排出するときに、カード8cに慣性力が作用して、カード8cが不用意に飛び出してしまうことが考えられる。カード8cの不用意な飛び出しを防止するため、係止凸部86cの傾斜面を緩やかにすると、カード8cの引き出しが困難になる。係止凸部86cの傾斜面と板ばね片88の付勢力とのバランスを計ることも、カードを含む各要素の製作誤差やクリアランスを吸収するには至らず困難である。カード用コネクタは、カード8cの不用意な飛び出しをより確実に防止する構造が求められる。
【0017】
図11は、特許文献2によるカード用コネクタの平面図であり、カード用コネクタからカードが排出される途中の状態図である。本願の図11は、特許文献1の図2に相当している。
【0018】
図11において、カード用コネクタ9は、カード9cをハウジング92から排出するとき、スライド部材94がロックピン96によるロックから解除されて、コイルスプリング95の復元力によって奥部92a側から入口部92b側へスライドする。このとき、スライド部材94の先端部に略L字状に形成されたカード受け部94bは、カード9cの先端縁を押すので、カード9cも移動する。
【0019】
カード9cの排出過程では、スライド部材94の一端94cは、ゴムブレーキ97の圧縮を開始する。ゴムブレーキ97は中空部97bが設けられており、圧縮方向と直交する方向に弾性変形するので、3角形状の先端の当接部97aは、カード9cの一側部を圧接する。したがって、特許文献1によるカード用コネクタは、ハウジング92からカード9cが不用意に飛び出すことが阻止される、としている。
【0020】
特許文献2によるカード用コネクタは、カード9cをゴム体で付勢しているので、繰り返しの使用による耐摩耗性には問題をはらんでいる。更に、カード9cを装着状態では、複数のコンタクト93(図11参照)の押圧力のみでカード9cを保持しているので、振動などでカード9cが移動することが懸念される。カード9cとコンタクト93との接触不良の要因になりかねない。カード用コネクタは、カードの装着状態を確実に維持する構造が求められる。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0021】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、カードの不用意な飛び出しをより確実に防止でき、かつ、カードの装着状態を確実に維持するカード用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者らは、スライド部材に板ばね片を設け、この板ばね片がカードに形成された方形の凹部に嵌合することにより、カードの不用意な飛び出しをより確実に防止でき、かつ、カードの装着状態を確実に維持することを見出し、これに基づいて、以下のような新たなカード用コネクタを発明するに至った。
【0023】
(1) カードが挿抜される凹部を形成する板状のハウジングと、このハウジングの凹部を覆うカバーと、を備えるカード用コネクタであって、前記カードの挿抜方向と平行する方向に進退するように前記凹部の片翼に配置され、ハート型のカム溝が形成されたスライド部材と、基端側が前記スライド部材に固定され、先端側が前記凹部の開口に向かって突出する板ばねと、前記ハウジングに保持され、前記スライド部材を前記カードが排出される方向に力を付勢する圧縮コイルばねと、一端が前記ハート型のカム溝に連結し、他端が前記ハウジングに回動自在に支持される案内棒と、を備え、前記スライド部材は、前記凹部の片翼側から当該凹部に突出して前記カードの側面途上に形成された斜辺に当接する係合片を有し、前記板ばねは、前記カードの斜辺に隣接される略方形の凹部に表面側から出入りし、当該略方形の凹部に弾性をもって係止する半円弧爪を先端部に有するカード用コネクタ。
【0024】
(1)の発明によるカード用コネクタは、板状のハウジングとカバーを備えている。ハウジングは、カードが挿抜される凹部を形成している。カバーは、ハウジングの凹部を覆っている。又、(1)の発明によるカード用コネクタは、スライド部材、板ばね、圧縮コイルばね、及び案内棒を備えている。
【0025】
スライド部材は、カードの挿抜方向と平行する方向に進退するように、凹部の片翼に配置される。又、スライド部材は、ハート型のカム溝が形成されている。板ばねは、基端側がスライド部材に固定され、先端側が凹部の開口に向かって突出している。圧縮コイルばねは、ハウジングに保持され、スライド部材をカードが排出される方向に力を付勢している。案内棒は、一端がハート型のカム溝に連結し、他端がハウジングに回動自在に支持されている。
【0026】
スライド部材は、凹部の片翼側から凹部に突出し、カードの側面途上に形成された斜辺に当接する係合片を有している。板ばねは、カードの斜辺に隣接される略方形の凹部に表面側から出入りし、略方形の凹部に弾性をもって係止する半円弧爪を先端部に有している。
【0027】
ここで、ハウジングは絶縁性を有している。絶縁性のハウジングとは、非導電性の材料からなるハウジングのことであってよく、合成樹脂を成形して、所望の形状の絶縁性のハウジングを得ることができる。そして、ハウジングの凹部に複数のコンタクトが並設配置されている。並設とは、近接して一列に揃え、並べて設けることを意味している。コンタクトは導電性を有しており、導電性の金属板を打ち抜き加工又は折り曲げ加工して、所望の形状の導電性のコンタクトを得ることができる。コンタクトは加工の容易性や、ばね特性、導電性などを考慮すれば、例えば、銅合金が好ましく用いられるが、銅合金に限定される訳ではない。
【0028】
一般に、カードは、絶縁性のプラスチック筐体の内部にICチップが収納されている。このICチップは、筐体の表面に貼り付けられた複数の金属箔に接続されている。そして、並設配置された複数の金属箔がカードの接続端子となっている。ここで、個別のコンタクトは、個別の金属箔端子と一対一に接続されてよく、機械的及び電気的に接続する。
【0029】
コンタクトは、ばねの働きが片持ち梁であるカンチレバーコンタクトが好ましく用いられる。コンタクトは、弾性アームと固定アームで構成されてよく、弾性アームは、凹部の底面から突出して、カードに形成された接続端子に接触する接点を設けてよく、固定アームは、凹部に圧入して固定することができる。リード部を固定アームの端部に形成してもよく、このリード部をプリント基板にはんだ接合することにより、このカード用コネクタを表面実装用コネクタとすることができる。
【0030】
ハウジングは、対向する一対の側壁と、一対の側壁と直交してカードの先端縁が当接する停止壁を有し、一対の側壁と停止壁で囲われた薄直方体状の空間を「カードが挿抜される凹部」と規定できる。又、カード保持部とすることもできる。そして、この凹部がカバーで覆われることにより、停止壁と対向してカードが挿入される長方形の開口が形成される。ここで、対向する一対の側壁の距離は、カードの幅よりも僅かに広く、一対の側壁によりカードの姿勢(傾き)が規制され、カードの接続端子とコンタクトとが正しく位置合わせできる。
【0031】
カバーは、金属薄板からなり、展開された金属薄板を成形加工することにより、所望の形状のカバーを得ることができる。カバーは、導電性の金属薄板からなることが好ましく、カバーがハウジングを覆うことによりシールド効果が得られる。
【0032】
カバーは、両翼が直角に折り曲げ加工されてよく、これらの折り曲げ片に矩形穴を形成し、ハウジングの両側面に突出するランスに係止するようにしてもよい。又、プリント基板にはんだ接合されるリード部をカバーに設けてよく、プリント基板との接合強度を補強でき、カバーをプリント基板のグランドに接地することもできる。更に、凹部と対向するカバーの面には、挿入されたカードを凹部の底面に付勢する複数の第1ばね片を設けてよく、案内棒をハート型のカム溝の底面に付勢する第2ばね片を設けてもよい。
【0033】
凹部の一方の片翼には、スライド部材が配置される。凹部の他方の片翼には、カードが装着位置に在ることを電気的に検出するカード検出スイッチが設けられてもよい。例えば、カード検出スイッチは可動板と固定板で構成されてよく、カードが装着位置に在るときは、カードに押されて可動板が変位して可動板と固定板とが電気的に接続状態となる。カードを抜去すると、可動板は復帰して可動板と固定板は電気的に遮断状態となる。このようにカードの有無が検出される。
【0034】
ハウジングの片翼には、後述するように、スライド部材を移動可能に案内する溝が設けられている。そして、スライド部材は、この溝に規制されてカードの挿抜方向と平行する方向に進退できる。スライド部材は、進退する直線運動のみが許容される。
【0035】
例えば、スライド部材には、溝内に突出する第1円柱突起が形成される。一方、ハウジングには、第1円柱突起に対向し、溝内に突出する第2円柱突起が形成される。そして、圧縮コイルばねの両コイル端部を第1及び第2円柱突起間に装架することにより、スライド部材をカードが排出される方向に力を付勢することができる。カードが挿入されない状態では、スライド部材は圧縮コイルばねに付勢されて、凹部の開口側に停止している。
【0036】
案内棒の両端は、略直角に屈折されてよく、案内棒の一端がスライド部材の表面に穿設されたハート型のカム溝に連結する。一方、案内棒の他端は、溝の近傍に形成された穴に挿入され、回動自在に支持される。そして、案内棒の一端は、ハート型のカム溝に従動する。
【0037】
ハート型のカム溝を有するスライド部材を動節となるカムとし、案内棒を従動節とすれば、スライド部材と案内棒とは、カムと従動節が相対変位するカム装置を構成していると言える。又、カム溝は、ハート型の軌跡を描く平面曲線のみならず、カム溝の底面が段差又は斜面となる連続軌跡を含む空間曲線となっている。スライド部材と案内棒は、いわゆる立体カム装置を構成できる。
【0038】
更に、ハート型のカム溝は、始点からの行き行程の軌跡と始点に戻る帰り行程の軌跡とを描いている。ハート型のカム溝の軌跡は、案内棒の一端が部分的に逆行することはあっても、全行程において案内棒の一端が逆行しない不可逆の連続軌跡を描いている。実体として、ハート型のカム溝は、行き行程の軌跡と帰り行程の軌跡の分岐点に、V字状に陥没するV字溝が形成されている。案内棒の一端がこのV字溝に係止することにより、圧縮コイルばねに付勢されて、カードの装着位置でスライド部材をロックできる。ハート型のカム溝と案内棒で構成するカム装置は、スライド部材の停止位置を規定すると言うこともできる。
【0039】
板ばねの基端側をスライド部材に圧入により固定できる。板ばねの先端側が凹部の開口に向かって突出するように配置される。そして、板ばねとスライド部材とは、一体となって進退する。板ばねは、ばねの働きが片持ち梁であってよく、板ばねの先端部に形成された半円弧爪に荷重が作用することにより、弾性変形する。
【0040】
例えば、カードは、略矩形に形成されており、接続端子が配置される先端側は、基端側より幅が狭くなっている。カードの先端側は、平行する両側面の内、一方の側面が鈍角に開角された斜辺を形成し、基端側に平行する両側面の内の一方の側面に連続している。すなわち、カードの先端側は、一方の隅部が片刃状に切り欠かれた形状となっている。そして、略方形の凹部がカードの斜辺に隣接されている。
【0041】
カードをハウジングの凹部に挿入すると、斜辺が半円弧爪に当接する。更に、カードを挿入すると、半円弧爪は斜辺とスライドしつつ、押し下げられる。そして、斜辺が係合片の先端縁に当接した状態では、半円弧爪はカードの表面をスライドして、カードの凹部に突出する。なお、係合片の先端縁は、カードの斜辺と同じ勾配をもつ斜面が形成されてもよい。続いて、カードを押すと、スライド部材はハウジングの凹部の奥方向に移動する。
【0042】
カードを押し切って、若干戻った状態で、案内棒の一端がV字溝に係止して、カードの装着位置で、スライド部材がハウジングにロックされる。カードの装着位置では、板ばねの先端部にある半円弧爪がカードの凹部に弾性をもって係止しているので、カードの装着状態を確実に維持できる。
【0043】
カードの装着状態から、カードを一旦押すと、案内棒の一端はV字溝から解放されて、帰り行程に移動する。そして、圧縮コイルばねに付勢されて、スライド部材は、カードを凹部の開口側に移動させる。案内棒の一端がハート型のカム溝の始点に相対的に戻った時点で、スライド部材が停止する。ここで、カードには、慣性力が作用するが、半円弧爪がカードの凹部に弾性をもって係止しているので、カードの不用意な飛び出しを確実に防止できる。そして、カードを比較的強い力で引く抜くことによりカードをコネクタから離脱できる。
【0044】
このように、(1)の発明によるカード用コネクタは、スライド部材に半円弧爪を有する板ばね片を設け、この半円弧爪がカードに形成された方形の凹部に嵌合することにより、カードの不用意な飛び出しをより確実に防止でき、かつ、カードの装着状態を確実に維持できる。
【0045】
(2) 前記ハウジングは、前記スライド部材を移動可能に案内する溝と、この溝に連通し、前記板ばねの先端縁が近接して移動する通路と、を有し、前記通路の底面は、前記凹部の開口側から奥側に向かう途上まで開口され、この途上から終端に至るまでは封鎖されている(1)記載のカード用コネクタ。
【0046】
(2)の発明によるカード用コネクタは、ハウジングが溝とこの溝に連通する通路を有している。溝は、スライド部材を移動可能に案内する。通路は、板ばねの先端縁が近接して移動する。そして、通路の底面は、凹部の開口側から奥側に向かう途上まで開口され、この途上から終端に至るまでは封鎖されている。
【0047】
溝は、凹部の片翼に形成されてよく、略長方形に開口されて、ハウジングの平面の一部が陥没するように形成される。この溝にスライド部材が進退可能に収納される。溝は、一部が凹部の底面に突出しており、この突出した部分は係合片が移動する。溝は凹部の一部を含むこともできる。
【0048】
通路は、凹部の一部を含み、凹部の底面から陥没した方形の通路が形成される。この通路は、溝と平行に形成されてよく、一端は凹部の開口に連通し、他端は溝に連通する。ここで、通路の底面が開口されているとは、半円弧爪の先端縁が開口に向けて撓みえることを意味している。一方、通路の底面が封鎖されているとは、半円弧爪の先端縁が通路の底面に当接して、撓み困難であることを意味している。
【0049】
このように、板ばねの先端縁が近接して移動する通路が構成されているので、カードの装着状態では、半円弧爪が容易に撓むことなく、カードを確実に保持する。一方、カードを排出するときは、前述のとおり、カードの飛び出しをより確実に防止でき、カードの装着状態と比較して弱い力で、カードを引き抜くことができる。
【0050】
(3) 前記カードがmicroSDカードである(1)又は(2)記載のカード用コネクタ。
【発明の効果】
【0051】
本発明によるカード用コネクタは、スライド部材に半円弧爪を有する板ばね片を設け、この半円弧爪がカードに形成された方形の凹部に嵌合することにより、カードの不用意な飛び出しをより確実に防止でき、かつ、カードの装着状態を確実に維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0053】
図1は、本発明によるカード用コネクタ(以下、コネクタと略称する)の一実施形態を示す斜視分解組立図である。図2は、前記実施形態によるコネクタの斜視分解組立図である。図3は、前記実施形態によるコネクタの斜視外観図であり、カバーを取り外した状態図である。図4は、前記実施形態によるコネクタの斜視外観図であり、カードが装着された状態図である。
【0054】
図5は、前記実施形態によるコネクタの平面図である。図6は、前記実施形態によるコネクタの斜視外観図であり、図3と異なる方向からコネクタを観ている。図7は、前記実施形態によるコネクタのスライド部材の側面図である。図8は、前記実施形態によるコネクタの要部を拡大した斜視外観図である。図9は、前記実施形態によるコネクタの要部を拡大した斜視外観図であり、一部を断面で示している。
【0055】
最初に、本発明によるコネクタの構成を説明する。図1又は図2において、コネクタ10は、板状のハウジング2とカバー3を備えている。ハウジング2は、カード1が挿抜される凹部21を形成している。カバー3は、ハウジング2の凹部21を覆っている。ハウジング2は、絶縁性の合成樹脂材で矩形状に成形されている。カバー3は、金属板で形成され、両翼がL字状に折り曲げられている。
【0056】
又、図1又は図2において、コネクタ10は、スライド部材4、板ばね5、圧縮コイルばね6a、及び案内棒6bを備えている。スライド部材4は、カード1の挿抜方向と平行する方向に進退するように、凹部21の片翼に配置される。スライド部材4は、ハート型のカム溝41が形成されている。板ばね5は、基端側がスライド部材4に固定され、先端側が凹部21の開口に向かって突出している。圧縮コイルばね6aは、ハウジング2に保持され、スライド部材4をカード1が排出される方向に力を付勢している。案内棒6bは、一端61bがハート型のカム溝41に連結し、他端62bがハウジング2に回動自在に支持されている。
【0057】
更に、図1又は図2において、スライド部材4は、凹部21の片翼側から凹部21に突出し、カード1の側面途上に形成された斜辺1aに当接する係合片42を有している。板ばね5は、カード1の斜辺1aに隣接される略方形の凹部1bに表面側から出入りし、凹部1bに弾性をもって係止する半円弧爪51を先端部に有している。
【0058】
図1又は図2において、コネクタ10は、ハウジング2にカバー3が取り付けられることにより、カード1が挿入される開口を形成し、薄直方体形状のカード保持部が形成される(図4参照)。そして、ハウジング2の凹部21に10本のコンタクト7が並設配置されている。複数のコンタクト7は、カード1の表面に形成された複数の接続端子(図示せず)と一体一に電気的及び機械的に接触する。
【0059】
図6において、コンタクト7は、ばねの働きが片持ち梁であるカンチレバーコンタクトであってよく、弾性アームと固定アームで構成される。弾性アームは、凹部21の底面から突出して、カード1に形成された接続端子(図示せず)に接触する接点71が設けられる(図1参照)。固定アームは、凹部21に圧入されて固定されている。又、リード部72が固定アームの端部に形成され、リード部72をプリント基板1pにはんだ接合することにより、コネクタ10を表面実装用コネクタとすることができる(図4参照)。
【0060】
図5において、ハウジング2は、対向する一対の側壁21a・21bと、一対の側壁21a・21bと直交してカード1の先端縁が当接する停止壁21cを有している。一対の側壁21a・21bと停止壁21cで囲われた薄直方体状の空間を凹部21とすることができる。そして、凹部21がカバー3で覆われることにより、停止壁21cと対向してカード1が挿入される長方形の開口が形成される。対向する一対の側壁21a・21bの距離は、カード1の幅よりも僅かに広く、一対の側壁21a・21bによりカード1の姿勢が規制され、カード1の接続端子とコンタクト7とが正しく位置合わせできる。
【0061】
図1又は図2において、カバー3は、両翼が直角に折り曲げ加工されている。これらの折り曲げ片には複数の矩形穴3aが形成されている。複数の矩形穴3aがハウジング2の両側面に突出するランス2rに係止することにより、カバー3が組み込まれる(図5参照)。又、カバー3には、プリント基板1pにはんだ接合されるリード部3rが設けられている(図4参照)。凹部21と対向するカバー3の面30には、挿入されたカード1を凹部21の底面に付勢する複数の第1ばね片31が設けられ、案内棒6bをハート型のカム溝41の底面に付勢する第2ばね片32が設けられる。
【0062】
図3又は図6に示されるように、凹部21の一方の片翼には、スライド部材4が配置される。凹部21の他方の片翼には、カード1が装着位置に在ることを電気的に検出するカード検出スイッチが設けられている。カード検出スイッチは、可動板7aとカバー3で構成されている。カード1が装着位置に在るときは(図3参照)、カード1に押されて可動板7aが変位して可動板7aとカバー3の折り曲げ片とが電気的に接続状態となる。カード1を抜去すると、可動板7aは復帰して可動板7aとカバー3は電気的に遮断状態となる。このようにカード1の有無が検出される。
【0063】
図2又は図6において、ハウジング2の片翼には、スライド部材4を移動可能に案内する溝22が設けられている。スライド部材4は、溝22に規制されてカード1の挿抜方向と平行する方向に進退できる。スライド部材4は、進退する直線運動のみが許容される。
【0064】
図2又は図6において、スライド部材4には、溝22内に突出する第1円柱突起4aが形成される。一方、ハウジング2には、第1円柱突起4aに対向し、溝22内に突出する第2円柱突起2aが形成されている。そして、圧縮コイルばね6aの両コイル端部を第1及び第2円柱突起4a・2a間に装架することにより、スライド部材4をカード1が排出される方向に力を付勢することができる。カード1が挿入されない状態では、スライド部材4は圧縮コイルばね6aに付勢されて、凹部21の開口側に停止している。
【0065】
図2又は図5に示されるように、ハウジング2には、溝22と溝22に連通する通路23を有している。溝22は、スライド部材4を移動可能に案内する。通路23は、板ばねの先端縁が近接して移動する(図8及び図9参照)。そして、通路23の底面は、凹部21の開口側から奥側に向かう途上まで開口され、この途上から終端に至るまでは封鎖されている。
【0066】
図2又は図5に示されるように、溝22は、略長方形に開口されて、ハウジング2の平面の一部が陥没するように形成されている。溝22にスライド部材4が進退可能に収納されている(図6参照)。図6に示されるように、溝22は、一部が凹部21の底面に突出しており、この突出した部分は係合片42が移動する。通路23は、凹部21の一部を含み、凹部21の底面から陥没した方形の通路23が形成される。通路23は、溝22と平行に形成されており、一端は凹部21の開口に連通し、他端は溝22に連通している。
【0067】
図1又は図2において、案内棒6bの両端は、略直角に屈折されており、案内棒6bの一端61bは、スライド部材4の表面に穿設されたハート型のカム溝41に連結する。一方、案内棒6bの他端62bは、溝22の近傍に形成された穴22aに挿入され、回動自在に支持される。そして、案内棒6bの一端61bは、ハート型のカム溝41に従動できる。
【0068】
図1又は図2において、スライド部材4と案内棒6bとは、カムと従動節が相対変位するカム装置を構成している。カム溝41は、ハート型の軌跡を描く平面曲線のみならず(図5参照)、カム溝41の底面が段差又は斜面となる連続軌跡を含む空間曲線となっている(図6参照)。ここで、スライド部材4と案内棒6bとは、立体カム装置を構成している。
【0069】
図5において、ハート型のカム溝41は、始点A1からの行き行程の軌跡と、始点A1に戻る帰り行程の軌跡とを描いている。ハート型のカム溝41の軌跡は、案内棒6bの一端61bが部分的に逆行することはあっても、全行程において案内棒6bの一端61bが逆行しない不可逆の連続軌跡を描いている。そして、ハート型のカム溝41は、行き行程の軌跡と帰り行程の軌跡の分岐点に、V字状に陥没するV字溝A2が形成されている。
【0070】
図2又は図7に示されるように、板ばね5は、基端側がスライド部材4に圧入されて固定されている。そして、板ばね5の先端側が凹部21の開口に向かって突出するように配置されている(図6参照)。板ばね5とスライド部材4とは、一体となって進退する。板ばね5は、ばねの働きが片持ち梁であってよく、板ばね5の先端部に形成された半円弧爪51に荷重が作用することにより、弾性変形する。
【0071】
図1又は図5に示されるように、カード1は、略矩形に形成されており、接続端子(図示せず)が配置される先端側は、基端側より幅が狭くなっている。カード1の先端側は、平行する両側面の内、一方の側面が鈍角に開角された斜辺1aを形成し、基端側に平行する両側面の内の一方の側面に連続している。カード1の先端側は、一方の隅部が片刃状に切り欠かれた形状となっている。又、略方形の凹部1bがカード1の斜辺1aに隣接されている。
【0072】
次に、本発明によるコネクタの動作及び作用を説明する。図1又は図5に示された状態から、カード1を凹部21に挿入すると、カード1の斜辺1aが半円弧爪51に当接する(図8参照)。更に、カード1を挿入すると、半円弧爪51は斜辺1aとスライドしつつ、押し下げられる。そして、斜辺1aが係合片42の先端縁に当接した状態では、半円弧爪51はカード1の表面をスライドして、カード1の凹部1bに突出する(図8参照)。なお、係合片42の先端縁は、カード1の斜辺1aと同じ勾配をもつ斜面が形成されている。続いて、カード1を押すと、スライド部材4は凹部21の奥方向に移動する(図3参照)。
【0073】
図5において、カード1を押し切って、若干戻った状態で、案内棒6bの一端61bがV字溝A2に係止して、カード1の装着位置で、スライド部材4がハウジング2にロックされる(図3参照)。図3に示されるカード1の装着位置では、板ばね5の先端部にある半円弧爪51がカード1の凹部1bに弾性をもって係止しているので、カード1の装着状態を確実に維持できる(図9参照)。
【0074】
図3に示されるカード1の装着状態から、カード1を一旦押すと、案内棒6bの一端61bはV字溝A2から解放されて、帰り行程に移動する(図5参照)。そして、圧縮コイルばね6aに付勢されて、スライド部材4は、カード1を凹部21の開口側に移動させる。案内棒6bの一端61bがハート型のカム溝41の始点A1に相対的に戻った時点で、スライド部材4が停止する(図5参照)。ここで、カード1には、慣性力が作用するが、半円弧爪51がカード1の凹部1bに弾性をもって係止しているので、カード1の不用意な飛び出しを確実に防止できる。そして、カード1を比較的強い力で引く抜くことによりカード1をコネクタ10から離脱できる。
【0075】
本発明によるカード用コネクタは、スライド部材に半円弧爪を有する板ばね片を設け、この半円弧爪がカードに形成された方形の凹部に嵌合することにより、カードの不用意な飛び出しをより確実に防止でき、かつ、カードの装着状態を確実に維持できる。カードの制動(ブレーキ)手段として、金属体の板ばねを用いているので、従来のゴム体に比べて耐摩耗性に優れている。
【0076】
又、図9に示されるように、通路23の底面は、凹部21の開口側から奥側に向かう途上まで開口され、この途上から終端に至るまでは封鎖されている。図9において、通路23の底面が開口されることにより、半円弧爪51の先端縁が開口23aに向けて撓みことができる。一方、通路23の底面が封鎖されることにより、半円弧爪51の先端縁が通路23の底面に当接して、撓み困難である。
【0077】
本発明によるコネクタは、このように、板ばねの先端縁が近接して移動する通路が構成されているので、カードの装着状態では、半円弧爪が容易に撓むことなく、カードを確実に保持する。一方、カードを排出するときは、前述のとおり、カードの飛び出しをより確実に防止でき、カードの装着状態と比較して弱い力で、カードを引き抜くことができる。
【0078】
実施の形態において、本発明によるコネクタは、microSDカードが挿抜されるカード用コネクタを開示したが、microSDカードに限定されることなく、斜辺と凹部を有するカード物にも応用できる。又、本発明によるコネクタは、プリント基板の表面にはんだ接合される表面実装用コネクタであってよく、スライド部材の表面にハート型のカム溝が形成されているので、実装高さを低く(低背化)できる。更に、本発明によるコネクタは、構成品を少なくしており、製造原価の低減に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明によるカード用コネクタの一実施形態を示す斜視分解組立図である。
【図2】前記実施形態によるカード用コネクタの斜視分解組立図である。
【図3】前記実施形態によるカード用コネクタの斜視外観図であり、カバーを取り外した状態図である。
【図4】前記実施形態によるカード用コネクタの斜視外観図であり、カードが装着された状態図である。
【図5】前記実施形態によるカード用コネクタの平面図である。
【図6】前記実施形態によるカード用コネクタの斜視外観図であり、図3と異なる方向からカード用コネクタを観ている。
【図7】前記実施形態によるカード用コネクタのスライド部材の側面図である。
【図8】前記実施形態によるカード用コネクタの要部を拡大した斜視外観図である。
【図9】前記実施形態によるカード用コネクタの要部を拡大した斜視外観図であり、一部を断面で示している。
【図10】従来技術によるカード用コネクタの平面図であり、衝撃時に案内部材がハート型のカム溝から離れてロックピンのロック解除を防止している状態図である。
【図11】他の従来技術によるカード用コネクタの平面図であり、カード用コネクタからカードが排出される途中の状態図である。
【符号の説明】
【0080】
1 カード
1a 斜辺
1b 凹部(略方形の凹部)
2 ハウジング
3 カバー
4 スライド部材
5 板ばね
6a 圧縮コイルばね
6b 案内棒
10 コネクタ(カード用コネクタ)
21 凹部
22 溝
41 ハート型のカム溝
42 係合片
51 半円弧爪
61b 案内棒の一端
62b 案内棒の他端
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード用コネクタに関する。特に、本発明は、超小型メモリカードであるmicroSD(Secure Digital)カードなどが挿入されることによって、当該カードと電気的に接続するカード用コネクタの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
カード型の記憶装置であるメモリカードは、記憶媒体としてフラッシュメモリを採用している。メモリカードは非常に小型であり、データの読み書きにほとんど電力を消費しないため、例えば、カメラ付き携帯電話やPDA(Personal Digital Assistance)に代表される携帯型情報機器の記録メディアとして普及している。
【0003】
フレキシブルディスク(FD)や光磁気ディスク(MO)等のディスク型の記憶装置に比較して、メモリカードは記憶容量が小さく、又、高価であるとされてきた。しかし、近年の技術進歩やメモリカードを使用する機器の普及に伴う量産効果により、最大で128MB程度の大記憶容量となり、低価格となってきている。
【0004】
更に、メモリカードは、データの読み書きにFDやMOなどのように駆動装置を必要としないというメリットがあるため、消費電力や携帯性が重要視されるデジタルカメラやノート型パソコン、携帯音楽プレーヤーには好適である。
【0005】
microSDカードの外形は、11mm(幅)×15mm(長さ)×1.0mm(厚さ)となっており、miniSDカードの外形が20mm(幅)×21.5mm(長さ)×1.4mm(厚さ)であるのと比較して、幅で約半分、体積で約1/4に減縮されている。
【0006】
このようなカードは、カード用コネクタに装着されて必要なデータが読み書きされる。一般に、カード用コネクタは、挿入されるカードと共に移動するスライド部材と、カードを装着位置に保持するロック機構と、を備えている。そして、このカード用コネクタは、装着されたカードを一旦押すとロックが解除され、スライド部材によりカードが排出される構成となっている。
【0007】
このような構成のカード用コネクタとして、落下などの衝撃が加わった場合に、カードの飛び出しを防止することができるカード用コネクタが発明されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
又、このような構成のカード用コネクタとして、カードを排出するとき、カードが勢いよく飛び出すことを確実に阻止できるカード用コネクタが発明されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−86289号公報
【特許文献2】特開2005−353368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図10は、特許文献1によるカード用コネクタの平面図であり、衝撃時に案内部材がハート型のカム溝から離れてロックピンのロック解除を防止している状態図である。本願の図10は、特許文献1の図16に相当している。
【0010】
図10において、カード用コネクタ8は、ハウジング81、スライド部材86、復帰用ばね83、及びロック手段を備えている。ハウジング81はカード8cが挿着される。スライド部材86は、カード8cの挿入及び排出に伴いカード8cと係合してカード8cの挿入方向及び排出方向に移動可能に配設されている。復帰用ばね83は、スライド部材86をカード8cの排出方向へ付勢している。ロック手段は、復帰用ばね83の付勢力に抗して、スライド部材86をカード8cの挿着位置にロックできる。
【0011】
図10において、ロック手段は、一端がスライド部材86に遥動可能に係合するロックピン84、及びカム溝8hが形成されたハート型のカム溝8gから構成されている。ロックピン84は、スライド部材86をカード8cの挿着位置にロックすると共に、スライド部材86をロック位置から奥方へ移動させることによりロックを解除させる。ハート型のカム溝8gは、ロック部8iを有し、ロックピン84の他端が摺動する。
【0012】
又、図10において、ハウジング81は、案内部材87と付勢用ばね85を有している。案内部材87は、カード8cの挿入方向及び排出方向に移動可能であって、ハート型のカム溝8gと協働してロックピン84の動きを案内する。付勢用ばね85は、ロックピン84がロック可能な方向に案内部材87を付勢する。
【0013】
特許文献1によるカード用コネクタは、外部からの衝撃が加わった場合に、案内部材87が付勢用ばね85の付勢力に抗して、ハート型のカム溝8gから離れる方向に移動することにより、ロックピン84の他端が案内部材87に案内されてロック部8iからの離脱を防止できる、としている。通常は、ロックピン84の他端は、ロック部8iに対向するV字形突起の片面に形成された第1傾斜面8f側に移動して、カード8cが排出されるのに対し、外部からの衝撃が加わった場合に、ロックピン84の他端がV字形突起の片面に形成された第2傾斜面8e側に移動して、ハート型のカム溝8gにロックピン84が係止されるからである。
【0014】
図10において、板ばね片88は、スライド部材86がカード8c側に回動するように力を付勢している。スライド部材86は、先端部が略L字状に形成され、カード8cの先端縁に当接するカード受け部86bとなっている。又、スライド部材86における基端部と先端部の中間には、山形の係止凸部86cが設けられている。係止凸部86cは、カード8cの片翼に形成された方形の係止用凹部8aに係合できる。
【0015】
図10において、カード8cは、カード受け部86bに引き出されて排出方向に移動する。スライド部材86が停止すると、係止凸部86cが係止用凹部8aに係合しているので、カード8cはハウジング81内に保持されている。カード8cを比較的強い力で引き抜くことにより、係止凸部86cの傾斜面と係止用凹部8aの隅部がスライドし、スライド部材86が解除方向に回動してカード8cを抜去できる。
【0016】
ここで、特許文献1によるカード用コネクタは、カード8cを排出するときに、カード8cに慣性力が作用して、カード8cが不用意に飛び出してしまうことが考えられる。カード8cの不用意な飛び出しを防止するため、係止凸部86cの傾斜面を緩やかにすると、カード8cの引き出しが困難になる。係止凸部86cの傾斜面と板ばね片88の付勢力とのバランスを計ることも、カードを含む各要素の製作誤差やクリアランスを吸収するには至らず困難である。カード用コネクタは、カード8cの不用意な飛び出しをより確実に防止する構造が求められる。
【0017】
図11は、特許文献2によるカード用コネクタの平面図であり、カード用コネクタからカードが排出される途中の状態図である。本願の図11は、特許文献1の図2に相当している。
【0018】
図11において、カード用コネクタ9は、カード9cをハウジング92から排出するとき、スライド部材94がロックピン96によるロックから解除されて、コイルスプリング95の復元力によって奥部92a側から入口部92b側へスライドする。このとき、スライド部材94の先端部に略L字状に形成されたカード受け部94bは、カード9cの先端縁を押すので、カード9cも移動する。
【0019】
カード9cの排出過程では、スライド部材94の一端94cは、ゴムブレーキ97の圧縮を開始する。ゴムブレーキ97は中空部97bが設けられており、圧縮方向と直交する方向に弾性変形するので、3角形状の先端の当接部97aは、カード9cの一側部を圧接する。したがって、特許文献1によるカード用コネクタは、ハウジング92からカード9cが不用意に飛び出すことが阻止される、としている。
【0020】
特許文献2によるカード用コネクタは、カード9cをゴム体で付勢しているので、繰り返しの使用による耐摩耗性には問題をはらんでいる。更に、カード9cを装着状態では、複数のコンタクト93(図11参照)の押圧力のみでカード9cを保持しているので、振動などでカード9cが移動することが懸念される。カード9cとコンタクト93との接触不良の要因になりかねない。カード用コネクタは、カードの装着状態を確実に維持する構造が求められる。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0021】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、カードの不用意な飛び出しをより確実に防止でき、かつ、カードの装着状態を確実に維持するカード用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者らは、スライド部材に板ばね片を設け、この板ばね片がカードに形成された方形の凹部に嵌合することにより、カードの不用意な飛び出しをより確実に防止でき、かつ、カードの装着状態を確実に維持することを見出し、これに基づいて、以下のような新たなカード用コネクタを発明するに至った。
【0023】
(1) カードが挿抜される凹部を形成する板状のハウジングと、このハウジングの凹部を覆うカバーと、を備えるカード用コネクタであって、前記カードの挿抜方向と平行する方向に進退するように前記凹部の片翼に配置され、ハート型のカム溝が形成されたスライド部材と、基端側が前記スライド部材に固定され、先端側が前記凹部の開口に向かって突出する板ばねと、前記ハウジングに保持され、前記スライド部材を前記カードが排出される方向に力を付勢する圧縮コイルばねと、一端が前記ハート型のカム溝に連結し、他端が前記ハウジングに回動自在に支持される案内棒と、を備え、前記スライド部材は、前記凹部の片翼側から当該凹部に突出して前記カードの側面途上に形成された斜辺に当接する係合片を有し、前記板ばねは、前記カードの斜辺に隣接される略方形の凹部に表面側から出入りし、当該略方形の凹部に弾性をもって係止する半円弧爪を先端部に有するカード用コネクタ。
【0024】
(1)の発明によるカード用コネクタは、板状のハウジングとカバーを備えている。ハウジングは、カードが挿抜される凹部を形成している。カバーは、ハウジングの凹部を覆っている。又、(1)の発明によるカード用コネクタは、スライド部材、板ばね、圧縮コイルばね、及び案内棒を備えている。
【0025】
スライド部材は、カードの挿抜方向と平行する方向に進退するように、凹部の片翼に配置される。又、スライド部材は、ハート型のカム溝が形成されている。板ばねは、基端側がスライド部材に固定され、先端側が凹部の開口に向かって突出している。圧縮コイルばねは、ハウジングに保持され、スライド部材をカードが排出される方向に力を付勢している。案内棒は、一端がハート型のカム溝に連結し、他端がハウジングに回動自在に支持されている。
【0026】
スライド部材は、凹部の片翼側から凹部に突出し、カードの側面途上に形成された斜辺に当接する係合片を有している。板ばねは、カードの斜辺に隣接される略方形の凹部に表面側から出入りし、略方形の凹部に弾性をもって係止する半円弧爪を先端部に有している。
【0027】
ここで、ハウジングは絶縁性を有している。絶縁性のハウジングとは、非導電性の材料からなるハウジングのことであってよく、合成樹脂を成形して、所望の形状の絶縁性のハウジングを得ることができる。そして、ハウジングの凹部に複数のコンタクトが並設配置されている。並設とは、近接して一列に揃え、並べて設けることを意味している。コンタクトは導電性を有しており、導電性の金属板を打ち抜き加工又は折り曲げ加工して、所望の形状の導電性のコンタクトを得ることができる。コンタクトは加工の容易性や、ばね特性、導電性などを考慮すれば、例えば、銅合金が好ましく用いられるが、銅合金に限定される訳ではない。
【0028】
一般に、カードは、絶縁性のプラスチック筐体の内部にICチップが収納されている。このICチップは、筐体の表面に貼り付けられた複数の金属箔に接続されている。そして、並設配置された複数の金属箔がカードの接続端子となっている。ここで、個別のコンタクトは、個別の金属箔端子と一対一に接続されてよく、機械的及び電気的に接続する。
【0029】
コンタクトは、ばねの働きが片持ち梁であるカンチレバーコンタクトが好ましく用いられる。コンタクトは、弾性アームと固定アームで構成されてよく、弾性アームは、凹部の底面から突出して、カードに形成された接続端子に接触する接点を設けてよく、固定アームは、凹部に圧入して固定することができる。リード部を固定アームの端部に形成してもよく、このリード部をプリント基板にはんだ接合することにより、このカード用コネクタを表面実装用コネクタとすることができる。
【0030】
ハウジングは、対向する一対の側壁と、一対の側壁と直交してカードの先端縁が当接する停止壁を有し、一対の側壁と停止壁で囲われた薄直方体状の空間を「カードが挿抜される凹部」と規定できる。又、カード保持部とすることもできる。そして、この凹部がカバーで覆われることにより、停止壁と対向してカードが挿入される長方形の開口が形成される。ここで、対向する一対の側壁の距離は、カードの幅よりも僅かに広く、一対の側壁によりカードの姿勢(傾き)が規制され、カードの接続端子とコンタクトとが正しく位置合わせできる。
【0031】
カバーは、金属薄板からなり、展開された金属薄板を成形加工することにより、所望の形状のカバーを得ることができる。カバーは、導電性の金属薄板からなることが好ましく、カバーがハウジングを覆うことによりシールド効果が得られる。
【0032】
カバーは、両翼が直角に折り曲げ加工されてよく、これらの折り曲げ片に矩形穴を形成し、ハウジングの両側面に突出するランスに係止するようにしてもよい。又、プリント基板にはんだ接合されるリード部をカバーに設けてよく、プリント基板との接合強度を補強でき、カバーをプリント基板のグランドに接地することもできる。更に、凹部と対向するカバーの面には、挿入されたカードを凹部の底面に付勢する複数の第1ばね片を設けてよく、案内棒をハート型のカム溝の底面に付勢する第2ばね片を設けてもよい。
【0033】
凹部の一方の片翼には、スライド部材が配置される。凹部の他方の片翼には、カードが装着位置に在ることを電気的に検出するカード検出スイッチが設けられてもよい。例えば、カード検出スイッチは可動板と固定板で構成されてよく、カードが装着位置に在るときは、カードに押されて可動板が変位して可動板と固定板とが電気的に接続状態となる。カードを抜去すると、可動板は復帰して可動板と固定板は電気的に遮断状態となる。このようにカードの有無が検出される。
【0034】
ハウジングの片翼には、後述するように、スライド部材を移動可能に案内する溝が設けられている。そして、スライド部材は、この溝に規制されてカードの挿抜方向と平行する方向に進退できる。スライド部材は、進退する直線運動のみが許容される。
【0035】
例えば、スライド部材には、溝内に突出する第1円柱突起が形成される。一方、ハウジングには、第1円柱突起に対向し、溝内に突出する第2円柱突起が形成される。そして、圧縮コイルばねの両コイル端部を第1及び第2円柱突起間に装架することにより、スライド部材をカードが排出される方向に力を付勢することができる。カードが挿入されない状態では、スライド部材は圧縮コイルばねに付勢されて、凹部の開口側に停止している。
【0036】
案内棒の両端は、略直角に屈折されてよく、案内棒の一端がスライド部材の表面に穿設されたハート型のカム溝に連結する。一方、案内棒の他端は、溝の近傍に形成された穴に挿入され、回動自在に支持される。そして、案内棒の一端は、ハート型のカム溝に従動する。
【0037】
ハート型のカム溝を有するスライド部材を動節となるカムとし、案内棒を従動節とすれば、スライド部材と案内棒とは、カムと従動節が相対変位するカム装置を構成していると言える。又、カム溝は、ハート型の軌跡を描く平面曲線のみならず、カム溝の底面が段差又は斜面となる連続軌跡を含む空間曲線となっている。スライド部材と案内棒は、いわゆる立体カム装置を構成できる。
【0038】
更に、ハート型のカム溝は、始点からの行き行程の軌跡と始点に戻る帰り行程の軌跡とを描いている。ハート型のカム溝の軌跡は、案内棒の一端が部分的に逆行することはあっても、全行程において案内棒の一端が逆行しない不可逆の連続軌跡を描いている。実体として、ハート型のカム溝は、行き行程の軌跡と帰り行程の軌跡の分岐点に、V字状に陥没するV字溝が形成されている。案内棒の一端がこのV字溝に係止することにより、圧縮コイルばねに付勢されて、カードの装着位置でスライド部材をロックできる。ハート型のカム溝と案内棒で構成するカム装置は、スライド部材の停止位置を規定すると言うこともできる。
【0039】
板ばねの基端側をスライド部材に圧入により固定できる。板ばねの先端側が凹部の開口に向かって突出するように配置される。そして、板ばねとスライド部材とは、一体となって進退する。板ばねは、ばねの働きが片持ち梁であってよく、板ばねの先端部に形成された半円弧爪に荷重が作用することにより、弾性変形する。
【0040】
例えば、カードは、略矩形に形成されており、接続端子が配置される先端側は、基端側より幅が狭くなっている。カードの先端側は、平行する両側面の内、一方の側面が鈍角に開角された斜辺を形成し、基端側に平行する両側面の内の一方の側面に連続している。すなわち、カードの先端側は、一方の隅部が片刃状に切り欠かれた形状となっている。そして、略方形の凹部がカードの斜辺に隣接されている。
【0041】
カードをハウジングの凹部に挿入すると、斜辺が半円弧爪に当接する。更に、カードを挿入すると、半円弧爪は斜辺とスライドしつつ、押し下げられる。そして、斜辺が係合片の先端縁に当接した状態では、半円弧爪はカードの表面をスライドして、カードの凹部に突出する。なお、係合片の先端縁は、カードの斜辺と同じ勾配をもつ斜面が形成されてもよい。続いて、カードを押すと、スライド部材はハウジングの凹部の奥方向に移動する。
【0042】
カードを押し切って、若干戻った状態で、案内棒の一端がV字溝に係止して、カードの装着位置で、スライド部材がハウジングにロックされる。カードの装着位置では、板ばねの先端部にある半円弧爪がカードの凹部に弾性をもって係止しているので、カードの装着状態を確実に維持できる。
【0043】
カードの装着状態から、カードを一旦押すと、案内棒の一端はV字溝から解放されて、帰り行程に移動する。そして、圧縮コイルばねに付勢されて、スライド部材は、カードを凹部の開口側に移動させる。案内棒の一端がハート型のカム溝の始点に相対的に戻った時点で、スライド部材が停止する。ここで、カードには、慣性力が作用するが、半円弧爪がカードの凹部に弾性をもって係止しているので、カードの不用意な飛び出しを確実に防止できる。そして、カードを比較的強い力で引く抜くことによりカードをコネクタから離脱できる。
【0044】
このように、(1)の発明によるカード用コネクタは、スライド部材に半円弧爪を有する板ばね片を設け、この半円弧爪がカードに形成された方形の凹部に嵌合することにより、カードの不用意な飛び出しをより確実に防止でき、かつ、カードの装着状態を確実に維持できる。
【0045】
(2) 前記ハウジングは、前記スライド部材を移動可能に案内する溝と、この溝に連通し、前記板ばねの先端縁が近接して移動する通路と、を有し、前記通路の底面は、前記凹部の開口側から奥側に向かう途上まで開口され、この途上から終端に至るまでは封鎖されている(1)記載のカード用コネクタ。
【0046】
(2)の発明によるカード用コネクタは、ハウジングが溝とこの溝に連通する通路を有している。溝は、スライド部材を移動可能に案内する。通路は、板ばねの先端縁が近接して移動する。そして、通路の底面は、凹部の開口側から奥側に向かう途上まで開口され、この途上から終端に至るまでは封鎖されている。
【0047】
溝は、凹部の片翼に形成されてよく、略長方形に開口されて、ハウジングの平面の一部が陥没するように形成される。この溝にスライド部材が進退可能に収納される。溝は、一部が凹部の底面に突出しており、この突出した部分は係合片が移動する。溝は凹部の一部を含むこともできる。
【0048】
通路は、凹部の一部を含み、凹部の底面から陥没した方形の通路が形成される。この通路は、溝と平行に形成されてよく、一端は凹部の開口に連通し、他端は溝に連通する。ここで、通路の底面が開口されているとは、半円弧爪の先端縁が開口に向けて撓みえることを意味している。一方、通路の底面が封鎖されているとは、半円弧爪の先端縁が通路の底面に当接して、撓み困難であることを意味している。
【0049】
このように、板ばねの先端縁が近接して移動する通路が構成されているので、カードの装着状態では、半円弧爪が容易に撓むことなく、カードを確実に保持する。一方、カードを排出するときは、前述のとおり、カードの飛び出しをより確実に防止でき、カードの装着状態と比較して弱い力で、カードを引き抜くことができる。
【0050】
(3) 前記カードがmicroSDカードである(1)又は(2)記載のカード用コネクタ。
【発明の効果】
【0051】
本発明によるカード用コネクタは、スライド部材に半円弧爪を有する板ばね片を設け、この半円弧爪がカードに形成された方形の凹部に嵌合することにより、カードの不用意な飛び出しをより確実に防止でき、かつ、カードの装着状態を確実に維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0053】
図1は、本発明によるカード用コネクタ(以下、コネクタと略称する)の一実施形態を示す斜視分解組立図である。図2は、前記実施形態によるコネクタの斜視分解組立図である。図3は、前記実施形態によるコネクタの斜視外観図であり、カバーを取り外した状態図である。図4は、前記実施形態によるコネクタの斜視外観図であり、カードが装着された状態図である。
【0054】
図5は、前記実施形態によるコネクタの平面図である。図6は、前記実施形態によるコネクタの斜視外観図であり、図3と異なる方向からコネクタを観ている。図7は、前記実施形態によるコネクタのスライド部材の側面図である。図8は、前記実施形態によるコネクタの要部を拡大した斜視外観図である。図9は、前記実施形態によるコネクタの要部を拡大した斜視外観図であり、一部を断面で示している。
【0055】
最初に、本発明によるコネクタの構成を説明する。図1又は図2において、コネクタ10は、板状のハウジング2とカバー3を備えている。ハウジング2は、カード1が挿抜される凹部21を形成している。カバー3は、ハウジング2の凹部21を覆っている。ハウジング2は、絶縁性の合成樹脂材で矩形状に成形されている。カバー3は、金属板で形成され、両翼がL字状に折り曲げられている。
【0056】
又、図1又は図2において、コネクタ10は、スライド部材4、板ばね5、圧縮コイルばね6a、及び案内棒6bを備えている。スライド部材4は、カード1の挿抜方向と平行する方向に進退するように、凹部21の片翼に配置される。スライド部材4は、ハート型のカム溝41が形成されている。板ばね5は、基端側がスライド部材4に固定され、先端側が凹部21の開口に向かって突出している。圧縮コイルばね6aは、ハウジング2に保持され、スライド部材4をカード1が排出される方向に力を付勢している。案内棒6bは、一端61bがハート型のカム溝41に連結し、他端62bがハウジング2に回動自在に支持されている。
【0057】
更に、図1又は図2において、スライド部材4は、凹部21の片翼側から凹部21に突出し、カード1の側面途上に形成された斜辺1aに当接する係合片42を有している。板ばね5は、カード1の斜辺1aに隣接される略方形の凹部1bに表面側から出入りし、凹部1bに弾性をもって係止する半円弧爪51を先端部に有している。
【0058】
図1又は図2において、コネクタ10は、ハウジング2にカバー3が取り付けられることにより、カード1が挿入される開口を形成し、薄直方体形状のカード保持部が形成される(図4参照)。そして、ハウジング2の凹部21に10本のコンタクト7が並設配置されている。複数のコンタクト7は、カード1の表面に形成された複数の接続端子(図示せず)と一体一に電気的及び機械的に接触する。
【0059】
図6において、コンタクト7は、ばねの働きが片持ち梁であるカンチレバーコンタクトであってよく、弾性アームと固定アームで構成される。弾性アームは、凹部21の底面から突出して、カード1に形成された接続端子(図示せず)に接触する接点71が設けられる(図1参照)。固定アームは、凹部21に圧入されて固定されている。又、リード部72が固定アームの端部に形成され、リード部72をプリント基板1pにはんだ接合することにより、コネクタ10を表面実装用コネクタとすることができる(図4参照)。
【0060】
図5において、ハウジング2は、対向する一対の側壁21a・21bと、一対の側壁21a・21bと直交してカード1の先端縁が当接する停止壁21cを有している。一対の側壁21a・21bと停止壁21cで囲われた薄直方体状の空間を凹部21とすることができる。そして、凹部21がカバー3で覆われることにより、停止壁21cと対向してカード1が挿入される長方形の開口が形成される。対向する一対の側壁21a・21bの距離は、カード1の幅よりも僅かに広く、一対の側壁21a・21bによりカード1の姿勢が規制され、カード1の接続端子とコンタクト7とが正しく位置合わせできる。
【0061】
図1又は図2において、カバー3は、両翼が直角に折り曲げ加工されている。これらの折り曲げ片には複数の矩形穴3aが形成されている。複数の矩形穴3aがハウジング2の両側面に突出するランス2rに係止することにより、カバー3が組み込まれる(図5参照)。又、カバー3には、プリント基板1pにはんだ接合されるリード部3rが設けられている(図4参照)。凹部21と対向するカバー3の面30には、挿入されたカード1を凹部21の底面に付勢する複数の第1ばね片31が設けられ、案内棒6bをハート型のカム溝41の底面に付勢する第2ばね片32が設けられる。
【0062】
図3又は図6に示されるように、凹部21の一方の片翼には、スライド部材4が配置される。凹部21の他方の片翼には、カード1が装着位置に在ることを電気的に検出するカード検出スイッチが設けられている。カード検出スイッチは、可動板7aとカバー3で構成されている。カード1が装着位置に在るときは(図3参照)、カード1に押されて可動板7aが変位して可動板7aとカバー3の折り曲げ片とが電気的に接続状態となる。カード1を抜去すると、可動板7aは復帰して可動板7aとカバー3は電気的に遮断状態となる。このようにカード1の有無が検出される。
【0063】
図2又は図6において、ハウジング2の片翼には、スライド部材4を移動可能に案内する溝22が設けられている。スライド部材4は、溝22に規制されてカード1の挿抜方向と平行する方向に進退できる。スライド部材4は、進退する直線運動のみが許容される。
【0064】
図2又は図6において、スライド部材4には、溝22内に突出する第1円柱突起4aが形成される。一方、ハウジング2には、第1円柱突起4aに対向し、溝22内に突出する第2円柱突起2aが形成されている。そして、圧縮コイルばね6aの両コイル端部を第1及び第2円柱突起4a・2a間に装架することにより、スライド部材4をカード1が排出される方向に力を付勢することができる。カード1が挿入されない状態では、スライド部材4は圧縮コイルばね6aに付勢されて、凹部21の開口側に停止している。
【0065】
図2又は図5に示されるように、ハウジング2には、溝22と溝22に連通する通路23を有している。溝22は、スライド部材4を移動可能に案内する。通路23は、板ばねの先端縁が近接して移動する(図8及び図9参照)。そして、通路23の底面は、凹部21の開口側から奥側に向かう途上まで開口され、この途上から終端に至るまでは封鎖されている。
【0066】
図2又は図5に示されるように、溝22は、略長方形に開口されて、ハウジング2の平面の一部が陥没するように形成されている。溝22にスライド部材4が進退可能に収納されている(図6参照)。図6に示されるように、溝22は、一部が凹部21の底面に突出しており、この突出した部分は係合片42が移動する。通路23は、凹部21の一部を含み、凹部21の底面から陥没した方形の通路23が形成される。通路23は、溝22と平行に形成されており、一端は凹部21の開口に連通し、他端は溝22に連通している。
【0067】
図1又は図2において、案内棒6bの両端は、略直角に屈折されており、案内棒6bの一端61bは、スライド部材4の表面に穿設されたハート型のカム溝41に連結する。一方、案内棒6bの他端62bは、溝22の近傍に形成された穴22aに挿入され、回動自在に支持される。そして、案内棒6bの一端61bは、ハート型のカム溝41に従動できる。
【0068】
図1又は図2において、スライド部材4と案内棒6bとは、カムと従動節が相対変位するカム装置を構成している。カム溝41は、ハート型の軌跡を描く平面曲線のみならず(図5参照)、カム溝41の底面が段差又は斜面となる連続軌跡を含む空間曲線となっている(図6参照)。ここで、スライド部材4と案内棒6bとは、立体カム装置を構成している。
【0069】
図5において、ハート型のカム溝41は、始点A1からの行き行程の軌跡と、始点A1に戻る帰り行程の軌跡とを描いている。ハート型のカム溝41の軌跡は、案内棒6bの一端61bが部分的に逆行することはあっても、全行程において案内棒6bの一端61bが逆行しない不可逆の連続軌跡を描いている。そして、ハート型のカム溝41は、行き行程の軌跡と帰り行程の軌跡の分岐点に、V字状に陥没するV字溝A2が形成されている。
【0070】
図2又は図7に示されるように、板ばね5は、基端側がスライド部材4に圧入されて固定されている。そして、板ばね5の先端側が凹部21の開口に向かって突出するように配置されている(図6参照)。板ばね5とスライド部材4とは、一体となって進退する。板ばね5は、ばねの働きが片持ち梁であってよく、板ばね5の先端部に形成された半円弧爪51に荷重が作用することにより、弾性変形する。
【0071】
図1又は図5に示されるように、カード1は、略矩形に形成されており、接続端子(図示せず)が配置される先端側は、基端側より幅が狭くなっている。カード1の先端側は、平行する両側面の内、一方の側面が鈍角に開角された斜辺1aを形成し、基端側に平行する両側面の内の一方の側面に連続している。カード1の先端側は、一方の隅部が片刃状に切り欠かれた形状となっている。又、略方形の凹部1bがカード1の斜辺1aに隣接されている。
【0072】
次に、本発明によるコネクタの動作及び作用を説明する。図1又は図5に示された状態から、カード1を凹部21に挿入すると、カード1の斜辺1aが半円弧爪51に当接する(図8参照)。更に、カード1を挿入すると、半円弧爪51は斜辺1aとスライドしつつ、押し下げられる。そして、斜辺1aが係合片42の先端縁に当接した状態では、半円弧爪51はカード1の表面をスライドして、カード1の凹部1bに突出する(図8参照)。なお、係合片42の先端縁は、カード1の斜辺1aと同じ勾配をもつ斜面が形成されている。続いて、カード1を押すと、スライド部材4は凹部21の奥方向に移動する(図3参照)。
【0073】
図5において、カード1を押し切って、若干戻った状態で、案内棒6bの一端61bがV字溝A2に係止して、カード1の装着位置で、スライド部材4がハウジング2にロックされる(図3参照)。図3に示されるカード1の装着位置では、板ばね5の先端部にある半円弧爪51がカード1の凹部1bに弾性をもって係止しているので、カード1の装着状態を確実に維持できる(図9参照)。
【0074】
図3に示されるカード1の装着状態から、カード1を一旦押すと、案内棒6bの一端61bはV字溝A2から解放されて、帰り行程に移動する(図5参照)。そして、圧縮コイルばね6aに付勢されて、スライド部材4は、カード1を凹部21の開口側に移動させる。案内棒6bの一端61bがハート型のカム溝41の始点A1に相対的に戻った時点で、スライド部材4が停止する(図5参照)。ここで、カード1には、慣性力が作用するが、半円弧爪51がカード1の凹部1bに弾性をもって係止しているので、カード1の不用意な飛び出しを確実に防止できる。そして、カード1を比較的強い力で引く抜くことによりカード1をコネクタ10から離脱できる。
【0075】
本発明によるカード用コネクタは、スライド部材に半円弧爪を有する板ばね片を設け、この半円弧爪がカードに形成された方形の凹部に嵌合することにより、カードの不用意な飛び出しをより確実に防止でき、かつ、カードの装着状態を確実に維持できる。カードの制動(ブレーキ)手段として、金属体の板ばねを用いているので、従来のゴム体に比べて耐摩耗性に優れている。
【0076】
又、図9に示されるように、通路23の底面は、凹部21の開口側から奥側に向かう途上まで開口され、この途上から終端に至るまでは封鎖されている。図9において、通路23の底面が開口されることにより、半円弧爪51の先端縁が開口23aに向けて撓みことができる。一方、通路23の底面が封鎖されることにより、半円弧爪51の先端縁が通路23の底面に当接して、撓み困難である。
【0077】
本発明によるコネクタは、このように、板ばねの先端縁が近接して移動する通路が構成されているので、カードの装着状態では、半円弧爪が容易に撓むことなく、カードを確実に保持する。一方、カードを排出するときは、前述のとおり、カードの飛び出しをより確実に防止でき、カードの装着状態と比較して弱い力で、カードを引き抜くことができる。
【0078】
実施の形態において、本発明によるコネクタは、microSDカードが挿抜されるカード用コネクタを開示したが、microSDカードに限定されることなく、斜辺と凹部を有するカード物にも応用できる。又、本発明によるコネクタは、プリント基板の表面にはんだ接合される表面実装用コネクタであってよく、スライド部材の表面にハート型のカム溝が形成されているので、実装高さを低く(低背化)できる。更に、本発明によるコネクタは、構成品を少なくしており、製造原価の低減に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明によるカード用コネクタの一実施形態を示す斜視分解組立図である。
【図2】前記実施形態によるカード用コネクタの斜視分解組立図である。
【図3】前記実施形態によるカード用コネクタの斜視外観図であり、カバーを取り外した状態図である。
【図4】前記実施形態によるカード用コネクタの斜視外観図であり、カードが装着された状態図である。
【図5】前記実施形態によるカード用コネクタの平面図である。
【図6】前記実施形態によるカード用コネクタの斜視外観図であり、図3と異なる方向からカード用コネクタを観ている。
【図7】前記実施形態によるカード用コネクタのスライド部材の側面図である。
【図8】前記実施形態によるカード用コネクタの要部を拡大した斜視外観図である。
【図9】前記実施形態によるカード用コネクタの要部を拡大した斜視外観図であり、一部を断面で示している。
【図10】従来技術によるカード用コネクタの平面図であり、衝撃時に案内部材がハート型のカム溝から離れてロックピンのロック解除を防止している状態図である。
【図11】他の従来技術によるカード用コネクタの平面図であり、カード用コネクタからカードが排出される途中の状態図である。
【符号の説明】
【0080】
1 カード
1a 斜辺
1b 凹部(略方形の凹部)
2 ハウジング
3 カバー
4 スライド部材
5 板ばね
6a 圧縮コイルばね
6b 案内棒
10 コネクタ(カード用コネクタ)
21 凹部
22 溝
41 ハート型のカム溝
42 係合片
51 半円弧爪
61b 案内棒の一端
62b 案内棒の他端
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードが挿抜される凹部を形成する板状のハウジングと、このハウジングの凹部を覆うカバーと、を備えるカード用コネクタであって、
前記カードの挿抜方向と平行する方向に進退するように前記凹部の片翼に配置され、ハート型のカム溝が形成されたスライド部材と、
基端側が前記スライド部材に固定され、先端側が前記凹部の開口に向かって突出する板ばねと、
前記ハウジングに保持され、前記スライド部材を前記カードが排出される方向に力を付勢する圧縮コイルばねと、
一端が前記ハート型のカム溝に連結し、他端が前記ハウジングに回動自在に支持される案内棒と、を備え、
前記スライド部材は、前記凹部の片翼側から当該凹部に突出して前記カードの側面途上に形成された斜辺に当接する係合片を有し、
前記板ばねは、前記カードの斜辺に隣接される略方形の凹部に表面側から出入りし、当該略方形の凹部に弾性をもって係止する半円弧爪を先端部に有するカード用コネクタ。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記スライド部材を移動可能に案内する溝と、この溝に連通し、前記板ばねの先端縁が近接して移動する通路と、を有し、
前記通路の底面は、前記凹部の開口側から奥側に向かう途上まで開口され、この途上から終端に至るまでは封鎖されている請求項1記載のカード用コネクタ。
【請求項3】
前記カードがmicroSDカードである請求項1又は2記載のカード用コネクタ。
【請求項1】
カードが挿抜される凹部を形成する板状のハウジングと、このハウジングの凹部を覆うカバーと、を備えるカード用コネクタであって、
前記カードの挿抜方向と平行する方向に進退するように前記凹部の片翼に配置され、ハート型のカム溝が形成されたスライド部材と、
基端側が前記スライド部材に固定され、先端側が前記凹部の開口に向かって突出する板ばねと、
前記ハウジングに保持され、前記スライド部材を前記カードが排出される方向に力を付勢する圧縮コイルばねと、
一端が前記ハート型のカム溝に連結し、他端が前記ハウジングに回動自在に支持される案内棒と、を備え、
前記スライド部材は、前記凹部の片翼側から当該凹部に突出して前記カードの側面途上に形成された斜辺に当接する係合片を有し、
前記板ばねは、前記カードの斜辺に隣接される略方形の凹部に表面側から出入りし、当該略方形の凹部に弾性をもって係止する半円弧爪を先端部に有するカード用コネクタ。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記スライド部材を移動可能に案内する溝と、この溝に連通し、前記板ばねの先端縁が近接して移動する通路と、を有し、
前記通路の底面は、前記凹部の開口側から奥側に向かう途上まで開口され、この途上から終端に至るまでは封鎖されている請求項1記載のカード用コネクタ。
【請求項3】
前記カードがmicroSDカードである請求項1又は2記載のカード用コネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−53124(P2008−53124A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−229793(P2006−229793)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(390033318)日本圧着端子製造株式会社 (457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(390033318)日本圧着端子製造株式会社 (457)
【Fターム(参考)】
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