説明

ガイド機構および3次元測定機

【課題】基準面側の荷重が変化した場合にも、基準面側のエアベアリングとガイドとの間の隙間を適正な所定値に保つことができるガイド機構およびそのガイド機構を有する3次元測定機を提供する。
【解決手段】第1の側に基準面を有するガイドと、前記基準面に沿ってスライド可能に前記ガイドに設けられる被案内部材と、前記ガイドの前記基準面との間に第1の隙間を有するように前記基準面を押圧し、前記被案内部材に設けられる基準側案内部材と、前記基準面と反対側の前記ガイドの第2の側面との間に第2の隙間を有するように前記第2の側面を与圧し、前記被案内部材に設けられる与圧案内部材と、を有し、前記第1の隙間が所定値になるように、前記予圧の位置が前記被案内部材に対して上下動するように設けられる前記押圧との相対関係が調整可能であることを特徴とするガイド機構である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアベアリングをガイドに使用するガイド機構、および、そのガイド機構を有し、測定対象物の寸法等を測定する3次元測定機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1により提案されている測定テーブルの両端部に立脚された一対のコラムを備えたYキャリッジを前記測定テーブルの表面に沿ってY軸方向に移動する座標測定機においては、このYキャリッジ上をX軸方向にスライドするガイド機構に関しては述べていない。
【0003】
一般に、ガイドと、このガイドに対してスライド移動可能に設けられるキャリッジと、キャリッジに設けられ、かつ、ガイドとキャリッジとの間に介在されるエアベアリングと、を有するガイド機構は、基準面側のエアベアリングと、ガイドとの間のエアギャップを適正な所定値に保つため、予圧与圧側のエアベアリングで適正な荷重で予圧する必要がある。
この予圧する構成を有するガイド機構は、基準面側の全てエアベアリングに対向して予圧与圧側のエアベアリングを配置して予圧与圧するガイド機構と、基準面側の例えば3個のエアベアリングの中心付近を、1個の対向する予圧与圧側のエアベアリングにより予圧与圧するガイド機構とがある。
【0004】
図4に示される従来例のガイド機構20aは、ガイド3と、このガイド3に対してスライド移動可能に設けられるキャリッジ2と、キャリッジ2に設けられ、かつ、ガイド3とキャリッジ2との間に介在される基準面側のエアベアリング7a,7b,7cと、を有する。さらに、基準面側の3個のエアベアリング7a,7b,7cの中心付近を、1個の対向する予圧与圧側のエアベアリング7dにより予圧与圧する。
このガイド機構20aにおいて、基準面側のエアベアリング7a,7b,7cの剛性を確保するために、基準面側のエアベアリング7a,7b,7cとガイド3との間のエアギャップ8a,8b(エアベアリング7bと7cとガイド3との間のエアギャップはほぼ等しいため8bとする。以下同様)を、適正な所定値である5um程度に保つ必要がある。
偏荷重を発生する部材を有しないガイド機構20aにおいては、基準面側の3個のエアベアリング7a,7b,7cの中心付近を予圧側のエアベアリング7dにより予圧与圧すれば、エアベアリング7a,7b,7cのギャップ8a,8bが適正な所定値に保たれ、適正なローリング剛性が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−312556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図4に示される従来例のガイド機構20aにおいて、基準面側に偏荷重を発生する部材21を有する場合、モーメント荷重が発生するが、上側のエアベアリング7aより、下側のエアベアリング7b、7cを、より大きな負荷荷重を受けられるように大きく構成し、予圧与圧用のエアベアリング7dで予圧与圧し、適正な所定値のギャップ8a,8bを保つことにより、ローリング剛性を得ることができる。
【0007】
しかしながら、図4に示される従来例のガイド機構20aにおいて、基準面側の部材21にオプションヘッドなどを追加した場合、基準面側の荷重が増加し、モーメント荷重も大きくなる。この場合、図5に破線で示されるガイド機構20aのように、オプションヘッドを追加する前に適正な所定値であったギャップ8a,8bが変化し、ローリング剛性が低下するという課題がある。
そこで、本発明は、基準面側の荷重が変化した場合にも、基準面側のエアベアリングとガイドとの間の隙間を適正な所定値に保つことができるガイド機構およびそのガイド機構を有する3次元測定機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、第1の側に基準面を有するガイドと、前記基準面に沿ってスライド可能に前記ガイドに設けられる被案内部材と、前記ガイドの前記基準面との間に第1の隙間を有するように前記基準面を押圧し、前記被案内部材に設けられる基準側案内部材と、前記基準面と反対側の前記ガイドの第2の側面との間に第2の隙間を有するように前記第2の側面を与圧し、前記被案内部材に設けられる与圧案内部材と、を有し、前記第1の隙間が所定値になるように、前記予圧与圧との位置が前記被案内部材に対して上下動するように設けられる前記押圧との相対関係が調整可能であることを特徴とするガイド機構である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基準面側の荷重が変化した場合にも、基準面側のエアベアリングとガイドとの間の隙間を適正な所定値に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1(a)は、本発明の実施例1のガイド機構の正面部分断面図である。 図1(b)は、本発明の実施例1のガイド機構の側面部分断面図である。
【図2】図2(a)は、本発明の実施例1のガイド機構の正面部分断面図である。 図2(b)は、本発明の実施例1のガイド機構の側面部分断面図である。
【図3】図3(a)は、本発明の実施例2の3次元測定機の正面図である。 図3(b)は、本発明の実施例2の3次元測定機の図3(a)のA−A線断面図である。
【図4】図4(a)は、従来例のガイド機構の正面部分断面図である。 図4(b)は、従来例のガイド機構の側面部分断面図である。
【図5】図5(a)は、従来例のガイド機構の正面部分断面図である。 図5(b)は、従来例のガイド機構の側面部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施例を説明する。
図1を参照して、本発明の実施例1のガイド機構20を説明する。
ガイド3は、長板状に形成され、第1の側に基準面3aを有する。被案内部材であるキャリッジ2は、ガイド3の周囲を覆うように設けられ、基準面3aに沿ってスライド可能にガイド3に設けられる支持されている。基準側案内部材であるエアベアリング7a、7b、7cは、ガイド3の基準面3aとの間に第1の隙間であるエアギャップ8a、8bを有するように基準面3aを押圧し、キャリッジ2に設けられる。エアベアリング7a、7b、7cは三角形状に少なくとも3個配置される。
【0012】
与圧案内部材であるエアベアリング7dは、基準面3aと反対側のガイド3の第2の側面3bとの間に第2の隙間であるエアギャップ8cを有するように第2の側面3bを与圧し、キャリッジ2に設けられる。エアベアリング7dは、エアベアリング7a、7b、7cの中心に対向して与圧するように設けられる。
また、ガイド3の上下面を押圧するようにエアベアリング7e,7fが設けられる。
【0013】
さらに、エアギャップ8a,8bが所定値、例えば、5um程度になるように、予圧与圧の位置がキャリッジ2に対して、図1、図2に示されるように上下動するようにエアベアリング7dがキャリッジ2に設けられる。エアベアリング7dは、キャリッジ2に設けられる溝2a内を上下動するように設けられる。エアベアリング7dは、キャリッジ2に設けられる溝2a内を、手動あるいは電動手段9により上下動する。
部材21へのオプションヘッドの追加、削除により荷重が変動し、それにより生じるモーメント荷重が変化した場合でも、エアベアリング7dが、図1、図2に示されるように上下動し、予圧与圧荷重の配分を変えることによりエアギャップ8a、8bを適正な所定値に保つことができる。
これにより、部材21のオプションヘッドにより荷重が変動し、基準面3a側の荷重が変化した場合にも、基準面3a側のエアベアリング7a,7b,7cとガイド3との間のエアギャップ8a,8bを適正な所定値に保つことができ、ローリング剛性の変動を抑えることができる。
上記実施例1におけるエアベアリング7a,7b,7c,7d,7e,7fの代わりに、磁気ベアリングを用いることもできる。
【0014】
次に、図3を参照して、実施例1のガイド機構20を有する実施例2の3次元測定機を説明する。
実施例2の3次元測定機は、門移動型のXYZステージであるスピンドル1、キャリッジ2、ガイド3およびサポート脚4に、測定ヘッド部5を使用して、測定対象物の寸法測定等を行うものである。ベース6は、測定対象物11を載置する台である。サポート脚4は、実施例1のガイド機構20を構成するガイド3を、ベース6上に移動可能に支持する。スピンドル1は、ガイド3の基準面3a側に、かつ、ガイド3に対して上下動するように設けられ、測定対象物11を測定する測定手段である測定ヘッド部5有する。
【0015】
測定ヘッド部5は、部材21にスピンドル1を介して設けられるオプションヘッドであり、光学ヘッドもしくはタッチプローブに自動または手動で交換可能で、測定対象物11の測定に適したヘッドに交換して測定を行う。
オプションヘッドである測定ヘッド部5は、数種類のヘッドがあり、質量が異なるため、交換した際にガイド3にかかるモーメントが異なる。
ここで、ガイド3にかかるモーメントでガイド3のエアベアリング7a,7b,7cのギャップ8a,8bが変動して剛性が低下してしまう。これを防止するため、本発明の実施例1のガイド機構20にあるように、エアベアリング7a,7b,7c7dの位置を手動または電動で上下動して調整し、エアベアリング7a,7b,7cのギャップ8a,8bの変動を抑える。これにより、当初のガイド3の剛性が保たれる。なお、オプションである測定ヘッドは予め備わった物であり、その重量や重心位置からエアベアリング7dの調整値も予め求めることができる。エアベアリング7dを手動で調整する場合は、予め求めたエアベアリング7dの調整値を、目視可能な表示部に表示することができる。また、エアベアリング7dを電動で調整する場合は、調整値を不図示の制御部の記憶テーブルに記憶しておき、不図示の制御部が記憶テーブルを参照して電動手段を駆動してエアベアリング7dの位置を調整することができる。
この調整動作をした後に、測定ヘッド部5を備えたスピンドル1は移動し、測定対象物11の寸法等を測定する。
なお、エアベアリング7dの位置を調整してギャップ8a,8bを調整する例で説明したが、エアベアリング7dを複数のエアベアリングで構成し、それぞれの空気吹き出し力調整することもエアベアリング7dの位置調整の範疇である。
また、エアベアリング7dは一定とし、エアベアリング7a,7b,7cの押圧力または押圧位置を調整してギャップ8a,8bの変動を抑えるようにしても良い。
【符号の説明】
【0016】
1: スピンドル
2: キャリッジ
3: ガイド
4: サポート脚
5: 測定ヘッド部
6: ベース
7a、7b、7c、7d、7e,7f:エアベアリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の側に基準面を有するガイドと、
前記基準面に沿ってスライド可能に前記ガイドに設けられる被案内部材と、
前記ガイドの前記基準面との間に第1の隙間を有するように前記基準面を押圧し、前記被案内部材に設けられる基準側案内部材と、
前記基準面と反対側の前記ガイドの第2の側面との間に第2の隙間を有するように前記第2の側面を与圧し、前記被案内部材に設けられる与圧案内部材と、を有し、
前記第1の隙間が所定値になるように、前記予圧との位置が前記被案内部材に対して上下動するように設けられる前記押圧との相対関係が調整可能であることを特徴とするガイド機構。
【請求項2】
前記予圧の位置が前記被案内部材に対して移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のガイド機構。
【請求項3】
前記基準側案内部材は三角形状に少なくとも3個配置され、前記与圧案内部材は、前記基準側案内部材の中心に対向して与圧することを特徴とする請求項1または2記載のガイド機構。
【請求項4】
前記与圧案内部材は、前記被案内部材に設けられる溝内を上下動することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のガイド機構。
【請求項5】
前記与圧案内部材は、前記被案内部材に設けられる溝内を、手動あるいは電動により上下動することを特徴とする請求項記載のガイド機構。
【請求項6】
前記基準側案内部材および前記与圧案内部材は、エアべリングであることを特徴とする請求項1からのいずれか1に記載のガイド機構。
【請求項7】
前記基準側案内部材および前記与圧案内部材は、磁気ベアリングであることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のガイド機構。
【請求項8】
測定対象物を載置するベースと、
請求項1からのいずれかに記載のガイド機構を構成するガイドを、前記ベース上に移動可能に支持するサポート脚と、
前記被案内部材の前記基準面側に、かつ、前記被案内部材に対して上下動するように設けられ、前記測定対象物を測定する測定手段を有するスピンドルと、を有することを特徴とする3次元測定機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−127851(P2012−127851A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280554(P2010−280554)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】