説明

ガスセンシング装置

【課題】 検出感度及び応答速度に優れるとともに、簡便にセンサの再生処理を行なうことができ、更に装置の小型化を達成可能な呼気センシング装置を提供する。
【解決手段】
内部に呼気中の特定ガス成分を検出するためのガスセンサ48,50を備える筐体18と、筐体18内部に呼気を導入するための呼気導入部28と、筐体18内部から呼気を排出するための呼気排出部24,26と、筐体18内部にガスセンサ48,50の機能を再生するための脱離ガスを流入させるための脱離ガス導入部302,304と、筐体18内部から脱離ガスを排出するための脱離ガス排出部306,308と、脱離ガス導入部302,304から脱離ガス排出部306,308に向けて脱離ガスを送り込む送風機310,312と、ガスセンサ48,50及び送風機310,312の動作を制御する制御部32とを含むようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分析を行なうためのガスセンシング装置に関し、特に、検出感度及び応答速度に優れるとともに、簡便にセンサの再生処理を行なうことができ、更に装置の小型化を達成可能なガスセンシング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
わが国は高齢化及び少子化が進んでおり、近い将来に国民の3人に1人が65歳以上になるという超高齢化社会の到来が予測されている。このような状況下において急務とされているのが、国民医療費の抑制である。このため、予防医療の充実が注目されている。予防医療が充実することで病気になる人が減少すれば、医療費を軽減させることができるからである。
【0003】
予防医療を充実させるためには、身近な機器で測定した健康状態を活用して健康管理を行なうことができるシステムが必要である。手軽に個人の健康状態を把握するための指標として、血液、尿、汗、唾液及び呼気等の生体試料がある。このような生体試料中には、血液における血糖値のように、疾病又はその兆候に起因して数値が変化する物質(以下、「マーカ」と記す。)が複数種含まれている。したがって、マーカの変化量を分析することによって個人の健康状態を把握できる可能性が高く、マーカの分析を常時行なうことで、健康管理及び疾病の早期発見が可能になる。上述の生体試料の中でも、呼気は、複数種のマーカを含む点、迅速かつ簡便にサンプリング及び分析ができる点、並びに、分析対象がガス状であり非侵襲で測定できるため肉体的なダメージが小さい点等の理由から、分析に最適な生体試料であると言える。
【0004】
非特許文献1には疾病と呼気中のマーカとの関係が示されている。テーブル1にこの一部を引用する。なお、テーブル1に示す酸化ストレスとは、体内に余剰な活性酸素群が生じた場合に起こり得る疾病であり、脂質、タンパク質、酵素又はDNA(Deoxyribo Nucleic Acid)に損傷を与え、老化、並びに、癌及び生活習慣病等の病気の誘因となるものである。
【0005】
(テーブル1)
【表1】

【0006】
呼気中のマーカを測定するための呼気センシング装置として、カーボンナノチューブ等からなるナノ構造体センサ又は酸化物半導体ガスセンサ等のセンサを利用したものが知られている。これらの呼気センシング装置においては、センサ表面に分析対象ガスが吸着することにより生じる抵抗値の変化を利用して呼気分析を行なうので、呼気分析を妨害するおそれのあるガス成分及び被毒物質等によりセンサ表面が汚染される点、並びに、センサに対する分析対象ガスの吸着脱離反応速度が遅い点等のために、センサ自体の検出感度及び応答速度が低下してしまうという問題がある。
【0007】
このような問題を解決するための技術として、例えば、特許文献1には、センサを賦活する作用のある酸素と、センサ表面に吸着されたにおい物質を除去する作用のある酸化性ガスとを含むガスをセンサ部に対して供給するように構成されたガスクロマトグラフ装置について開示されている。また、特許文献2には、ガスセンサの感応体の表面にキセノンランプにより光を照射しつつガスの検知を行なうことで、感応体表面に対する検知ガスの吸着脱離の時間を短縮し、感度を向上させた光励起型ガスセンサについて開示されている。更に、特許文献3には、ガスセンサの発熱体に超過電圧を所定時間印加することで短い時間内に多量の熱を発生させて、ガスセンサの表面に吸着した水分や雑ガスを除去するガスセンサのクリーニング装置について開示されている。
【特許文献1】特開2007−40725号公報
【特許文献2】特開平8−94558号公報
【特許文献3】特開平8−254514号公報
【非特許文献1】ウェンチン・ツァオら、「呼気分析:臨床診断及び曝露評価の可能性」、クリニカル・ケミストリ、第52巻:5、p.800−p.811、2006年(Wenqing Cao et al.、“Breath Analysis:Potential for Clinical Diagnosis and Exposure Assessment”、Clinical Chemistry、vol.52:5、p.800−p.811、2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されるガスクロマトグラフ装置においては、酸化性ガスであるオゾンを発生させるために、紫外線照射手段により酸素の流路の一部に対して紫外線を照射しているが、紫外線照射手段とセンサとの距離が大きいため、センサ部に到達するまでに酸化性ガスが減衰又は消滅してしまうおそれがあり、紫外線照射により得られるエネルギーを有効利用できていない。特許文献2及び特許文献3に開示される技術においては、センサが繰返し高温環境下に晒されるため、センサの表面が劣化してしまうおそれがある。また、センサを冷却するための構成を設ける必要がある。更に、これらの技術においてセンサに向かう呼気の流通経路の途中に仕切部材及び選択透過膜等が設けられる場合には、これらの表面に残留した水分及びその他の成分に遮られて、分析対象ガスがセンサまで到達しないおそれがある。したがって、特許文献1〜3に開示される技術においては、センサの検出感度及び応答速度の改善効果が充分に得られず、更に装置が大型化してしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、検出感度及び応答速度に優れるとともに、簡便にセンサの再生処理を行なうことができ、更に装置の小型化を達成可能なガスセンシング装置を提供することである。
【0010】
また本発明の他の目的は、センサの劣化を防ぐことが可能であり、正確なガス分析が可能なガスセンシング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の局面に係るガスセンシング装置は、内部にガス中の特定ガス成分を検出するためのセンサを備える筐体と、筐体内部にガスを導入するためのガス導入部と、筐体内部からガスを排出するためのガス排出部と、筐体内部にセンサの機能を再生するための脱離ガスを流入させるための脱離ガス導入部と、筐体内部から脱離ガスを排出するための脱離ガス排出部と、脱離ガス導入部から脱離ガス排出部に向けて脱離ガスを送り込む脱離ガス送風再生手段と、センサ及び脱離ガス送風再生手段の動作を制御する制御手段とを含む。
【0012】
このように、脱離ガス送風再生手段により脱離ガス導入部から脱離ガス排出部に向けて脱離ガスを送り込むことによって、その風力により、センサに吸着した、ガス分析を妨害するおそれのあるガス成分及び被毒物質等が脱離されるので、センサの検出感度及び応答速度をより一層向上させることができる。また、脱離ガス送風再生手段により脱離ガスを送り込むだけでセンサを高温環境下及び光に晒すことなく上述の効果を得ることができるので、センサの再生処理が簡便になり、かつセンサの劣化を防ぐことができる。更に、脱離ガス送風再生手段による風力を有効利用して脱離された各種成分を排出させるので、脱離された各種成分をより一層速やかに排出して再生処理に必要な時間を短縮することができるとともに、脱離された各種成分を装置外部へ排出するためのファン等の構成を設ける必要がなくなり、装置の小型化をより一層達成できる。
【0013】
好ましくは、制御手段は、センサの汚染状態に基づいて、脱離ガス送風再生手段の動作を制御する。このように、センサの汚染状態に応じて、センサに吸着した、ガス分析を妨害するおそれのあるガス成分及び被毒物質等が脱離されるので、センサの検出感度及び応答速度をより一層効率良く向上させることができる。
【0014】
より好ましくは、脱離ガスは、特定ガス成分とは異なるガスである。したがって、センサに吸着した特定ガス成分をセンサから脱離し易くなるので、より一層効率良くセンサの機能を再生することができる。
【0015】
更に好ましくは、脱離ガス排出部は、ガス排出部が設けられる位置とは異なる位置に設けられる。
【0016】
これにより、ガスが流通する流路と脱離ガスが流通する流路とが異なるようにすることができ、分析対象ガスであるガスと、脱離ガスによりセンサから脱離された各種成分とが混合することを防止することができ、より一層正確なガス分析が可能になる。
【0017】
更に好ましくは、脱離ガス送風手段は、脱離ガス導入部から脱離ガス排出部に向けて、風量0.01L/min〜1000L/minで脱離ガスを送り込む。これにより、センサに吸着したガス分析を妨害するおそれのあるガス成分及び被毒物質等がより一層容易に脱離されるようになるので、センサの検出感度及び応答速度をより一層容易に向上させることができる。
【0018】
更に好ましくは、脱離ガス送風手段はファンであり、ファンは、脱離ガス導入部から脱離ガス排出部に向けて、風量0.05L/min〜10L/minで脱離ガスを送り込む。これにより、センサに吸着したガス分析を妨害するおそれのあるガス成分及び被毒物質等が更に効率良く脱離されるようになるので、センサの検出感度及び応答速度を更に向上させることができる。
【0019】
更に好ましくは、センサは、カーボンナノチューブの集合体からなるセンシング部を含む。カーボンナノチューブの形状はナノオーダーの微細構造であるので、カーボンナノチューブの集合体からなるセンシング部は、応答性に優れかつ検出下限が非常に低く、ppbオーダー程度の微量の特定ガス成分の検出が可能である。したがって、ガス分析をより一層高精度に行なうことができる。
【0020】
更に好ましくは、ガスセンシング装置は、センサにより検出される値を補正するための補正用センサを更に含み、制御手段は、補正用センサの検出結果に基づいて、センサにより検出される値の補正を行なう。これにより、より一層信頼性の高いガス分析を行なうことができる。
【0021】
更に好ましくは、ガスセンシング装置は、筐体の外形に沿って形成され、かつ、装置周辺の電磁波を吸収して発熱する電波吸収体を含む囲い部材を更に含み、囲い部材は、筐体の周囲が、囲い部材によって外方から密着して囲まれるように着脱可能に構成される。
【0022】
このように、筐体の周囲を囲い部材で囲むことによって、囲い部材から発生する熱により筐体の内部を加熱でき、これによって、筐体の内壁上等に残留した水分及びその他の成分等、並びに、センサに吸着したガス分析を妨害するおそれのあるガス成分及び被毒物質等がより一層効率よく脱離されるので、ガスがセンサに容易に到達できるとともに、センサの検出感度及び応答速度をより一層向上させることができる。また、囲い部材を移動させるだけで上述の効果を得ることができるので、センサの再生処理がより一層簡便になる。更に、冷却時には囲い部材を筐体から離れた位置に移動させるため冷却手段を設ける必要がなく、また電磁波を発生させるための装置を設ける必要がないので、装置の小型化をより一層達成できる。更に、装置周辺に存在する電磁波を有効利用するので、ガスセンシング装置の動作を妨害するおそれのある帯域の電磁波、通常の生活に不必要な帯域の電磁波、及び人体に有害とされる帯域の電磁波等を低減できるので、より一層正確なガス分析が可能になるとともに、周辺環境の不要電波や有害電波を低減することができる。
【0023】
更に好ましくは、筐体、ガス導入部、ガス排出部、脱離ガス導入部及び脱離ガス排出部は、導熱性を有する材料から構成される。
【0024】
これによって、囲い部材から発生する熱によって筐体、ガス導入部、ガス排出部、脱離ガス導入部及び脱離ガス排出部の内部がより一層加熱され易くなり、筐体の内壁上等に残留した水分及びその他の成分等、並びに、センサに吸着したガス分析を妨害するおそれのあるガス成分及び被毒物質等がより一層脱離され易くなる。したがって、ガスがセンサにより一層容易に到達できるようになり、センサの検出感度及び応答速度を更に向上させることができる。
【0025】
更に好ましくは、ガスセンシング装置は、囲い部材において発生する熱を電力に変換する熱電変換素子と、熱電変換素子により変換された電力を蓄積する充電池とを更に含む。このように、熱電変換素子及び充電池が更に設けられることによって、囲い部材において発生する熱をより一層効率よく利用することができる。
【0026】
更に好ましくは、ガスセンシング装置は、筐体内部に設けられ、紫外線を照射するための紫外線照射手段を更に含み、制御手段は、センサの汚染状態に基づいて、紫外線照射手段の動作を制御する。
【0027】
このように、紫外線照射手段により紫外線を照射することによって、筐体の内壁上等に残留した水分及びその他の成分等、並びに、センサに吸着したガス分析を妨害するおそれのあるガス成分及び被毒物質等が脱離されるので、ガスがセンサに容易に到達できるとともに、センサの検出感度及び応答速度をより一層向上させることができる。また、紫外線照射手段に対して通電するだけでセンサを高温環境下に晒すことなく上述の効果を得ることができるので、センサの再生処理がより一層簡便になり、かつセンサの劣化をより一層防ぐことができる。更に、装置内に組込むことが可能な紫外線照射手段を使用するので、装置の小型化をより一層達成できる。
【0028】
更に好ましくは、ガスセンシング装置は、紫外線照射手段から照射される紫外線をセンサに向けて反射するための反射手段を更に含む。
【0029】
これにより、紫外線照射手段から発生される紫外線をセンサに対してより一層効率良く照射できるようになるので、より一層効率的に紫外線照射により得られるエネルギーを利用することができる。したがって、センサに吸着したガス分析を妨害するおそれのあるガス成分及び被毒物質等を更に効率良く脱離させることができる。
【0030】
更に好ましくは、ガス導入部とセンサとの間に設けられ、ガス導入部から導入されるガス中の特定ガス成分を優先的に通過させる選択透過膜を更に備え、選択透過膜は、紫外線を透過可能に構成される。
【0031】
このように、選択透過膜が設けられることによって、センサの特定ガス成分に対する検出感度及び検出精度を向上させることができる。また、選択透過膜が紫外線を透過可能に構成されることによって、紫外線照射手段の設置場所を少なくすることができ、より一層効率的に紫外線照射により得られるエネルギーを利用することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、本発明のガスセンシング装置は、内部にガス中の特定ガス成分を検出するためのセンサを備える筐体と、筐体内部にセンサの機能を再生するための脱離ガスを流入させるための脱離ガス導入部と、筐体内部から脱離ガスを排出するための脱離ガス排出部と、脱離ガス導入部から脱離ガス排出部に向けて脱離ガスを送り込む脱離ガス送風再生手段と、センサ及び脱離ガス送風再生手段の動作を制御する制御手段とを含む。
【0033】
このように、脱離ガス送風再生手段により脱離ガス導入部から脱離ガス排出部に向けて脱離ガスを送り込むことによって、その風力により、センサに吸着したガス分析を妨害するおそれのあるガス成分及び被毒物質等が脱離されるので、センサの検出感度及び応答速度をより一層向上させることができる。また、脱離ガス送風再生手段により脱離ガスを送り込むだけでセンサを高温環境下及び光に晒すことなく上述の効果を得ることができるので、センサの再生処理が簡便になり、かつセンサの劣化を防ぐことができる。更に、脱離ガス送風再生手段による風力を有効利用して脱離された各種成分を排出させるので、脱離された各種成分をより一層速やかに排出して再生処理に必要な時間を短縮することができるとともに、脱離された各種成分を装置外部へ排出するためのファン等の構成を設ける必要がなくなり、装置の小型化をより一層達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。以下の説明及び図面においては、同一の部品には同一の参照符号及び名称を付してある。それらの機能も同様である。したがって、それらについての詳細な説明をその都度繰返すことはしない。
【0035】
[第1の実施の形態]
−構成−
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る呼気センシング装置10の斜視図であり、図2は、呼気センシング装置10の内部構成を示す水平断面図である。図1を参照して、呼気センシング装置10は、上下方向の長さが左右方向の長さより短い略直方体形状の筐体18と、筐体18の右側面に設けられ、筐体18内部に呼気を導入するための呼気導入口30を有する呼気導入部28と、筐体18の上面に設けられる表示部20と、筐体18の左側面に設けられ、筐体18内部からガスを排出するためのガス排出口23を有するガス排出部22と、筐体18の正面及び背面にそれぞれ設けられ、筐体18内部から呼気を排出するための呼気排出口25,27をそれぞれ有する呼気排出部24,26と、筐体18上部に設けられ、表示部20の表示動作等の各処理を実行するための制御部32と、筐体18の上面に設けられ、呼気センシング装置10による呼気分析を開始させるための測定開始ボタン34と、測定開始ボタン34近傍に設けられ、後述するガスセンサ48,50を再生させるための再生ボタン36とを含む。呼気センシング装置10は、更に、筐体18の右側面において、呼気導入部28に対して筐体18の背面側に設けられ、筐体18内部に後述する脱離ガスを流入させるための脱離ガス導入部302と、筐体18の右側面において、呼気導入部28に対して筐体18の正面側に設けられ、筐体18内部に脱離ガスを流入させるための脱離ガス導入部304と、筐体18の左側面において、ガス排出部22に対して筐体18の背面側に設けられ、筐体18内部から脱離ガスを排出するための脱離ガス排出部306と、筐体18の左側面において、ガス排出部22に対して筐体18の正面側に設けられ、筐体18内部から脱離ガスを排出するための脱離ガス排出部308とを含む。呼気導入部28の先端に位置する呼気導入口30には、マウスピース39が装着される。マウスピース39は、本実施の形態に係る呼気センシング装置10そのものを構成しないので、図2以下の図面には図示しない場合がある。
【0036】
図2を参照して、筐体18は、例えば、プラスチック又はアクリル樹脂等からなる内部空間を有する、幅30mm〜300mm、奥行き30mm〜300mm、及び、高さ30mm〜150mm程度の大きさの容器状部材であり、その内部は、中央部に開口部56,58をそれぞれ有する板状部材である仕切部材52,54によって、中央部に位置する呼気導入室70と、呼気導入室70に対して呼気排出部26側に位置する第1センサ室72と、呼気導入室70に対して呼気排出部24側に位置する第2センサ室74とに仕切られる。すなわち、仕切部材52は第1センサ室72と呼気導入室70との間に設けられ、仕切部材54は呼気導入室70と第2センサ室74との間に設けられる。仕切部材52,54の構成材料としては、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されず、シリコーンゴム等の各種ゴム、又は、アクリル樹脂等の各種プラスチック等を使用できる。仕切部材52,54の厚みとしては、適度な機械的強度を有する程度であれば特に限定されないが、100μm〜2000μmであることが好ましい。
【0037】
仕切部材52の第1センサ室72側の面には開口部56を覆うように選択透過膜60が設けられ、仕切部材54の第2センサ室74側の面には、開口部58を覆うように選択透過膜62が設けられる。選択透過膜60,62の構成材料としては、後述するガスセンサ素子80によって検出される呼気中の特定ガス成分を優先的に透過させる材料等の、ガスセンサ素子80の特定ガス成分に対する検出感度及び検出精度を向上させ得る材料から適宜選択される。例えば、所望の特定ガス成分が水素(H)ガスである場合には、選択透過膜60,62は、ポリスルホン/シリコーンゴム共重合体、ポリスルホン、ポリイミド、セルロースアセテート又はポリ4−メチルペンテン等の高分子材料、若しくはパラジウム等の水素(H)ガスを吸着する金属を含有する材料等からなる膜であることが好ましく、これらの中でも、より優れた水素(H)ガス選択透過性を有する点から、ポリイミドからなる膜であることが特に好ましい。また、所望の特定ガス成分が有機蒸気である場合には、ポリイミド又はシリコーンゴムからなる膜であることが好ましく、これらの中でも、より優れた有機蒸気選択透過性を有する点からシリコーンゴムからなる膜であることが特に好ましい。ここで、有機蒸気とは、一般的には炭化水素系、アルコール系又はケトン系等の揮発性有機化合物の蒸気のことであり、具体的には、メタン、エタン、ペンタン又はアセトン等の蒸気のことである。選択透過膜60,62の厚みとしては、適度な機械的強度を有し、かつ呼気中の所望の特定ガス成分の透過を阻害しない程度であれば特に限定されないが、5μm〜50μmであることが好ましい。本実施の形態では、選択透過膜60には、水分を除去し、かつ呼気中の特定ガス成分である一酸化窒素(NO)を優先的に透過可能な疎水性の膜(例えば、NO-selective membrane(商品名、World Precision Instruments社製))を使用し、選択透過膜62には、呼気中の特定ガス成分であるアセトンを優先的に透過可能なシリコーンゴムからなる膜を使用する。
【0038】
第1センサ室72には、呼気中の一酸化窒素(NO)の濃度を選択的に測定するためのガスセンサ48が、そのセンサ面が開口部56に臨み、かつ第1センサ室72の内部空間に露出するようにセンサ基板40に支持されて設けられる。また第2センサ室74には、呼気中のアセトンの濃度を選択的に測定するためのガスセンサ50が、そのセンサ面が開口部58に臨み、かつ第2センサ室74の内部空間に露出するようにセンサ基板42に支持されて設けられる。ガスセンサ48,50はいずれも、後述する、呼気中の特定ガス成分を選択的に吸着する物質94により表面修飾されたカーボンナノ構造体88の集合体からなるセンシング部82を含むガスセンサ素子80を含む。カーボンナノ構造体88は、カーボンナノチューブ(以下「CNT(Carbon Nano Tube)」と記す。)、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン及びフラーレンからなるグループから選択される炭素系導電性材料からなることが好ましく、更にはCNTからなることが好ましい。このようなグループから選択されるカーボンナノ構造体88は、その形状がナノオーダーの微細構造であるので、カーボンナノ構造体88の集合体からなるセンシング部82は、応答性に優れかつ検出下限が非常に低く、ppbオーダー程度の微量の特定ガス成分の検出が可能である。したがって、呼気分析をより一層高精度に行なうことができる。これらの中でも、CNTからなるカーボンナノ構造体88は上述の効果を特に発現しやすい。
【0039】
図3は、ガスセンサ素子80の構成の一例を概略して示す図であり、図4は、センシング部82における表面修飾の様子を模式的に示す図である。図3を参照して、ガスセンサ素子80は、呼気中の特定ガス成分を選択的に吸着する物質94により表面修飾されたカーボンナノ構造体88の集合体からなるセンシング部82と、センシング部82の両端に配置される電極84及び電極86とを含む。図4を参照して、センシング部82は、例えばCNTからなるカーボンナノ構造体88と、カーボンナノ構造体88表面に固定された、呼気中の特定ガス成分を選択的に吸着する物質94とを含む。ここでは、物質94として、一酸化窒素(NO)を選択的に吸着する金属フタロシアニンの分子構造を図示したが、特にこれに限定されるものではない。本実施の形態では、ガスセンサ48のセンシング部82として、一酸化窒素(NO)及び水分を選択的に吸着するコバルトフタロシアニン(以下「CoPc」と記す。)により表面修飾されたものを使用し、ガスセンサ50のセンシング部82として、アセトンを選択的に吸着するマンガンフタロシアニン(以下「MnPc」と記す。)により表面修飾されたものを使用する。本実施の形態では、選択透過膜60によって水分が除去されるので、ガスセンサ48のセンシング部82は、一酸化窒素(NO)のみを選択的に検出することができる。
【0040】
カーボンナノ構造体88の表面に何らかの化学物質が付着すると、電子移動が起こり起電力が発生する。言い換えれば、カーボンナノ構造体88の2点間に電位差又は電気抵抗の変化が生じる。この電気抵抗の変化を検出すれば、化学物質の検出(センシング)が可能となる。また、ある特定ガス成分を選択的に吸着する物質94によりカーボンナノ構造体88の表面を修飾すると、上述の電気抵抗の変化は、表面に修飾された物質94の挙動に連動するようになるので、特定ガス成分のみを検出できるガスセンサ素子80を得ることができる。
【0041】
例えば、MnPcによりカーボンナノ構造体88の表面を修飾すると、呼気中のアセトンがMnPcに吸着される。その結果、前述のようにカーボンナノ構造体88の電気抵抗が変化する。この変化量は、カーボンナノ構造体88表面に吸着したアセトンの量に応じて変わる。したがって、センシング部82に電流を通したときの抵抗値の変化を測定することにより、呼気中のアセトンの濃度を検出することができる。
【0042】
図5は、ガスセンサ48,50の双方に設けられる、ガスセンサ素子80の抵抗変化を測定するための測定回路100の構成を示す図である。図5を参照して、測定回路100は、定電圧源130と、定電圧源130の両端子間に直列に接続されるガスセンサ素子80及び負荷抵抗134と、ガスセンサ素子80及び負荷抵抗134間の接点に接続された入力を持ち、この接点の電位変化を増幅するための増幅器136とを含む。呼気中の特定ガス成分の検出時、すなわち呼気分析時には、この電位変化を測定するために、増幅器136の他方の端子に、後述する制御部32のA/D(Analog−to−Digital)変換器(図示せず。)が接続される。図3に示すガスセンサ素子80の電極84は、定電圧源130のプラス端子に、電極86は、負荷抵抗134及び増幅器136にそれぞれ接続される。負荷抵抗134の抵抗値は既知である。ガスセンサ素子80及び負荷抵抗134間の接点の電位変化を測定することにより、ガスセンサ素子80の電気抵抗の変化を知ることができ、これにより、ガスセンサ素子80に吸着した特定ガス成分の濃度を知ることができる。
【0043】
呼気導入部28は、呼気導入室70内部と筐体18外部とを連通する。呼気導入部28は、先端部に位置する呼気導入口30から導入される呼気を呼気導入室70内部へと流通するための矢符Aに示す流路を形成する。呼気導入部28としては、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、内径10mm〜30mm、長さ50mm〜150mmのパイプ状部材であることが好ましい。
【0044】
表示部20は、制御部32と電気的に接続され、制御部32から入力される表示制御信号に従って、測定した呼気中の特定ガス成分の濃度等を、例えば折れ線グラフ表示等によって表示するための表示装置である。表示部20としては、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されず、液晶表示装置等を使用できる。
【0045】
ガス排出部22は、呼気導入室70内部と筐体18外部とを連通し、呼気排出部24は、第2センサ室74内部と筐体18外部とを連通し、呼気排出部26は、第1センサ室72内部と筐体18外部とを連通する。ガス排出部22としては、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、内径10mm〜30mm、長さ10mm〜50mmのパイプ状部材を使用できる。呼気排出部24,26には、第1センサ室72内部及び第2センサ室74内部の状態が類似の状態となるように同一の部材が使用されることが好ましい。呼気排出部24,26としては、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、内径10mm〜30mm、長さ10mm〜50mmのパイプ状部材を使用できる。
【0046】
ガス排出部22には、筐体18内部から排出されるガスの流量を制御する開閉弁76が設けられる。開閉弁76としては、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されず、弁体がプラスチック等の薄板からなるもの等を使用できる。開閉弁76は、ばね又は自重等による押付け力によって弁体を弁座に押しつけることで筐体18内部へガスが流入するのを阻止する。そして、呼気導入室70の内圧により上述の押付け力を上回る圧力が加わった際に、筐体18内部から呼気が流出するのを許容する。このようにして、開閉弁76は、筐体18内部から呼気が流出するのを許容し、かつ筐体18内部へガスが流入するのを阻止する。開閉弁76は、呼気導入室70内部の呼気による内圧を制御して、必要以上の呼気が第1センサ室72及び第2センサ室74に流入することを防ぐ。呼気導入室70内部の内圧としては、大気圧の1.1倍〜1.2倍となるように制御されることが好ましい。
【0047】
制御部32は、CPU(Central Processing Unit)を備えるマイクロコンピュータ又はマイクロプロセッサ等によって実現される処理回路と、ROM(Read−Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含む記憶部と、A/D変換器と、主電源と(以上いずれも図示せず。)を含む。記憶部には、ガスセンサ48,50からの測定結果、及び、表示部20の表示動作等の各種処理を実行するための各種プログラム等が記憶される。A/D変換器は、ガスセンサ48,50によりアナログ信号として出力される電位変化をデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号を処理回路に対して出力する。主電源は制御回路だけでなく、呼気センシング装置10の各構成部に対しても電力を供給する。処理回路は、記憶部に記憶される、測定結果等の各種データ又は各種プログラムを読出して各種判定を行ない、判定結果に応じて該当する呼気センシング装置10内部の各構成部に制御信号を送信して、各構成部の動作制御を行なう。例えば、処理回路は、所定のプログラムを実行して、A/D変換器から入力されるデジタル信号に基づいて呼気中の特定ガス成分の濃度を算出し、その算出結果を表示部20に表示させるために、表示部20に対して表示制御信号を出力する。
【0048】
測定開始ボタン34及び再生ボタン36は、被験者等の利用者により押下されて操作されることで、制御部32に対してそれぞれの指示、すなわち呼気分析開始指示、又は、ガスセンサ48,50等の再生処理開始指示に応じた信号を出力する。
【0049】
脱離ガス導入部302及び脱離ガス排出部306は、第1センサ室72内部と筐体18外部とを連通する。脱離ガス導入部304及び脱離ガス排出部308は、第2センサ室74内部と筐体18外部とを連通する。脱離ガス導入部302,304には、第1センサ室72内部及び第2センサ室74内部の状態が類似の状態となるように同一の部材が使用されることが好ましく、同様に、脱離ガス排出部306,308においても、第1センサ室72内部及び第2センサ室74内部の状態が類似の状態となるように同一の部材が使用されることが好ましい。脱離ガス導入部302,304としては、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、内径10mm〜30mm、長さ10mm〜50mmのパイプ状部材を使用できる。脱離ガス排出部306,308としては、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、内径10mm〜30mm、長さ10mm〜50mmのパイプ状部材を使用できる。
【0050】
脱離ガス導入部302の内部において、第1センサ室72と連通される側とは反対側の端部近傍には、送風機310が、その送風方向が第1センサ室72内部へと向かう方向となるように装着される。同様に、脱離ガス導入部304の内部において、第2センサ室74と連通される側とは反対側の端部近傍には、送風機312が、その送風方向が第2センサ室74内部へと向かう方向となるように装着される。送風機310,312には、第1センサ室72内部及び第2センサ室74内部の状態が類似の状態となるように同一のものが使用されることが好ましい。送風機310,312としては、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、シロッコファン又はブロアー等を使用できる。送風機310,312による送風の好ましい強度としては、その風量が0.01L/min〜1000L/minであることが好ましい。これにより、仕切部材52,54及び選択透過膜60,62上に残留した各種成分、並びに、ガスセンサ48,50のセンシング部82に吸着した各種成分がより一層容易に脱離されるようになるので、呼気がガスセンサ48,50により一層容易に到達できるとともに、センサの検出感度及び応答速度をより一層容易に向上させることができる。また、送風機310,312としてシロッコファン等のファンを使用する場合には、その風量が0.05L/min〜10L/minであることが特に好ましい。これにより、仕切部材52,54及び選択透過膜60,62上に残留した各種成分、並びに、ガスセンサ48,50のセンシング部82に吸着した各種成分が更に効率良く脱離されるようになるので、呼気がガスセンサ48,50に更に効率良く到達できるとともに、センサの検出感度及び応答速度を更に向上させることができる。送風機310,312は制御部32と電気的に接続され、再生ボタン36からの指示等に基づいて制御部32から入力される送風制御信号に従って、筐体18外部から第1センサ室72及び第2センサ室74に向けて空気を送り込む。この送風機310,312によって送り込まれる空気は、呼気分析の分析対象ガス、すなわちガスセンサ48,50によって選択的に検出される呼気中の特定ガス成分とは異なるガスであり、後述するように、仕切部材52,54及び選択透過膜60,62上に残留した各種成分、並びに、ガスセンサ48,50のセンシング部82に吸着した各種成分を脱離させ、ガスセンサ48,50の機能を再生するための脱離ガスとして機能する。このように、脱離ガスとして機能する空気が、ガスセンサ48,50によって選択的に検出される呼気中の特定ガス成分とは異なるガスであることにより、ガスセンサ48,50に吸着した特定ガス成分をガスセンサ48,50から脱離し易くなるので、より一層効率良くガスセンサ48,50の機能を再生することができる。
【0051】
−動作−
図1〜図5を参照して、本実施の形態に係る呼気センシング装置10は以下のように動作する。通常、被験者等の利用者は、最初にガスセンサ48,50等の再生処理を行ない、次いで、呼気分析を行なう。
【0052】
すなわち、まず、被験者等により再生ボタン36が操作されると、制御部32は、再生ボタン36から入力される再生処理開始指示信号に従って、送風機310,312に対して送風制御信号を出力する。送風機310,312は、送風制御信号に従って、筐体18外部から第1センサ室72及び第2センサ室74に向けて空気を送り込む。第1センサ室72に送り込まれた空気は、仕切部材52及び選択透過膜60に残留した水分及びその他のガス成分等、並びにガスセンサ48に吸着したガス成分等をその風力により吹き飛ばすことによって脱離させるとともに、脱離した各種成分を脱離ガス排出部306に向けて搬送して脱離ガス排出部306から装置外部に排出する。同様に、第2センサ室74に送り込まれた空気は、仕切部材54及び選択透過膜62に残留した水分及びその他のガス成分等、並びにガスセンサ50に吸着したガス成分等をその風力により吹き飛ばすことによって脱離させるとともに、脱離した各種成分を脱離ガス排出部308に向けて搬送して脱離ガス排出部308から装置外部に排出する。
【0053】
次いで、被験者等により測定開始ボタン34が操作されると、定電圧源130により、ガスセンサ素子80と負荷抵抗134とを直列接続したものの両端に一定電圧がかけられる。そして、被験者により呼気導入口30にマウスピース39が設置され、設置されたマウスピース39から呼気が導入される。
【0054】
マウスピース39から導入された呼気は、呼気導入部28を流通して呼気導入室70に導入され、その一部は開口部56,58を通過して第1センサ室72及び第2センサ室74に流入する。このとき、選択透過膜60の存在により、水分が除去されるとともに、呼気中の特定ガス成分のうち、一酸化窒素(NO)が優先的に第1センサ室72に導入される。同様に、選択透過膜62の存在により、呼気中の特定ガス成分のうち、アセトンが優先的に第2センサ室74に導入される。
【0055】
第1センサ室72に優先的に導入された呼気中の一酸化窒素(NO)は、ガスセンサ48のセンシング部82に選択的に吸着され、その結果、ガスセンサ素子80の電極84,86間の電気抵抗が増加する。その変化は、増幅器136の出力電圧の変化として制御部32のA/D変換器に対して出力される。同様に、第2センサ室74に優先的に導入された呼気中のアセトンは、ガスセンサ50のセンシング部82に選択的に吸着され、その結果、ガスセンサ素子80の電極84,86間の電気抵抗が増加する。その変化は、増幅器136の出力電圧の変化として制御部32のA/D変換器に対して出力される。A/D変換器は、入力された電位変化をデジタル信号に変換して制御部32の処理回路に対して出力し、処理回路は、入力されたデジタル信号に基づいて呼気中の一酸化窒素(NO)及びアセトンの濃度を算出し、算出結果に応じた表示制御信号を表示部20に対して出力して、表示部20に呼気中の一酸化窒素(NO)及びアセトンの濃度を表示させる。このように出力電圧変化を知ることによって、呼気中の特定ガス成分の濃度を確認することができる。
【0056】
ガスセンサ48のセンシング部82により一酸化窒素(NO)が吸着された呼気は、呼気排出部26の呼気排出口27から呼気センシング装置10外部に排出される。同様に、ガスセンサ50のセンシング部82によりアセトンが吸着された呼気は、呼気排出部24の呼気排出口25から呼気センシング装置10外部に排出され、呼気分析が終了する。
【0057】
上述したように、呼気センシング装置10は、選択透過膜60とガスセンサ48との間である第1センサ室72にガスセンサ48の機能を再生するための空気を流入させるための脱離ガス導入部302と、第1センサ室72内部から空気を排出するための脱離ガス排出部306と、脱離ガス導入部302から脱離ガス排出部306に向けて空気を送り込む送風機310と、選択透過膜62とガスセンサ50との間である第2センサ室74内部にガスセンサ50の機能を再生するための空気を流入させるための脱離ガス導入部304と、第2センサ室74内部から空気を排出するための脱離ガス排出部308と、脱離ガス導入部304から脱離ガス排出部308に向けて空気を送り込む送風機312とを含む。そして、制御部32は、ガスセンサ48,50の汚染状態に基づいて、送風機310,312の動作を制御する。
【0058】
したがって、送風機310,312により脱離ガス導入部302から脱離ガス排出部306、及び、脱離ガス導入部304から脱離ガス排出部308に向けて空気を送り込むことによって、その風力により、仕切部材52,54及び選択透過膜60,62上に残留した各種成分、並びに、ガスセンサ48,50のセンシング部82に吸着した各種成分が脱離されるので、呼気がガスセンサ48,50に容易に到達できるとともに、ガスセンサ48,50の検出感度及び応答速度をより一層向上させることができる。また、送風機310,312により空気を送り込むだけでガスセンサ48,50を高温環境下及び光に晒すことなく上述の効果を得ることができるので、ガスセンサ48,50の再生処理が簡便になり、かつガスセンサ48,50の劣化を防ぐことができる。更に、送風機310,312による風力を有効利用して脱離された各種成分を排出させるので、選択透過膜60,62を通過した風力の弱いガスを用いる場合と比較して脱離された各種成分をより一層速やかに排出して再生処理に必要な時間を短縮するとともに、脱離された各種成分を装置外部へ排出するためのファン等の構成を設ける必要がなくなり、装置の小型化をより一層達成できる。
【0059】
また、脱離ガス排出部306、308は、呼気排出部24,26が設けられる位置とは異なる位置に設けられる。これにより、呼気分析時に呼気が流通する流路と、脱離ガスである空気により仕切部材52,54、選択透過膜60,62及びガスセンサ48,50から脱離された各種成分が流通する流路とが異なるようにすることができ、分析対象ガスである呼気と脱離された各種成分とが混合することを防止することができ、より一層正確な呼気分析が可能になる。
【0060】
[変形例]
−構成−
図6は、本発明の第1の実施の形態に係る呼気センシング装置10の変形例を示す斜視図であり、図7は、呼気センシング装置10の変形例の内部構成を示す水平断面図である。呼気センシング装置10の変形例においては、ガスセンサ50の検出値の補正を行う点が呼気センシング装置10とは異なる。したがって、補正に伴って変更される構成以外は、第1の実施の形態に係る呼気センシング装置10と同一の構成である。したがって、呼気センシング装置10と同一又は類似の機能を有する構成部には同一の参照符号及び名称を付し、それらについての詳細な説明は繰返さず、異なる点のみ述べる。なお、後述する呼気導入路414の先端部に位置する呼気導入口415には、マウスピース39が装着される。マウスピース39は、呼気センシング装置10の変形例そのものを構成しないので、図6及び図7には図示しない。
【0061】
呼気センシング装置10の変形例において、呼気センシング装置10における呼気導入室70は、仕切部材401によって、呼気排出部26側に位置するガス導入室70aと、呼気排出部24側に位置する呼気導入室70bとに仕切られる。仕切部材401の構成材料としては、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されず、シリコーンゴム等の各種ゴム、又は、アクリル樹脂等の各種プラスチック等を使用できる。仕切部材401の厚みとしては、適度な機械的強度を有する程度であれば特に限定されないが、100μm〜2000μmであることが好ましい。
【0062】
本変形例では、選択透過膜60,62には、同一のものを使用し、水分を除去し、かつ呼気中の特定ガス成分である一酸化窒素(NO)を優先的に透過可能な疎水性の膜(例えば、NO-selective membrane(商品名、World Precision Instruments社製))を使用する。
【0063】
ガスセンサ50には、ガスセンサ48に用いられるものと同一のものを使用する。本変形例では、ガスセンサ48,50のセンシング部82として、一酸化窒素(NO)及び水分を選択的に吸着するCoPcにより表面修飾されたものを使用する。本変形例では、選択透過膜60,62によって水分が除去されるので、ガスセンサ48,50のセンシング部82は、一酸化窒素(NO)のみを選択的に検出することができる。制御部32は、ガスセンサ48の検出結果をリファレンス信号(基準信号)として用いて、ガスセンサ50の検出値の補正を行なう。
【0064】
呼気センシング装置10の変形例では、ガスセンサ50によって呼気及び脱離ガスを含む混合ガス中の一酸化窒素(NO)が選択的に検出される。したがって、より信頼性の高い呼気分析を行なうためには、脱離ガス中に含まれる一酸化窒素(NO)の影響を排除する必要がある。呼気センシング装置10の変形例では、ガスセンサ48によって脱離ガス中の一酸化窒素(NO)を選択的に検出し、その検出結果に基づいて、ガスセンサ50の検出値の補正を行なう。ガスセンサ50の検出値に対する補正方法としては、当該分野において一般的に使用される方法であれば特に限定されないが、ガスセンサ50の検出値からガスセンサ48の検出値を差し引く方法等がある。
【0065】
このように、呼気センシング装置10の変形例において、制御部32は、脱離ガス中の一酸化窒素(NO)を選択的に検出するガスセンサ48の検出結果に基づいて、混合ガス中の一酸化窒素(NO)を選択的に検出するガスセンサ50の検出値の補正を行なうので、脱離ガス中の一酸化窒素(NO)の影響を排除することができ、より信頼性の高い呼気分析を行なうことができる。
【0066】
筐体18の左側面には、ガス導入室70a内部からガスを排出するためのガス排出口431を有するガス排出部432と、呼気導入室70b内部からガスを排出するためのガス排出口433を有するガス排出部434とが水平方向に並んで設けられ、筐体18の左側面において、ガス排出部432に対して筐体18の背面側には、第1センサ室72内部から脱離ガスを排出するための脱離ガス排出部306が設けられ、ガス排出部434に対して筐体18の正面側には、第2センサ室74内部から脱離ガスを排出するための脱離ガス排出部308が設けられる。ガス排出部432は、ガス導入室70a内部と筐体18外部とを連通し、ガス排出部434は、呼気導入室70b内部と筐体18外部とを連通する。ガス排出部432,434には、ガス導入室70a内部及び呼気導入室70b内部の状態が類似の状態となるように同一の部材が使用されることが好ましい。ガス排出部432,434としては、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、内径10mm〜30mm、長さ10mm〜50mmのパイプ状部材を使用できる。
【0067】
ガス排出部432には、ガス導入室70a内部から排出されるガスの流量を制御する開閉弁436が設けられ、ガス排出部434には、呼気導入室70b内部から排出されるガスの流量を制御する開閉弁438が設けられる。開閉弁436,438には、ガス導入室70a内部及び呼気導入室70b内部の内圧が類似の状態となるように同一のものを使用する。開閉弁436,438としては、呼気センシング装置10に使用される開閉弁76と同一のものを使用できる。
【0068】
開閉弁436,438は、ばね又は自重等による押付け力によって弁体を弁座に押しつけることで筐体18内部へガスが流入するのを阻止する。そして、ガス導入室70a内部及び呼気導入室70b内部の内圧により上述の押付け力を上回る圧力が加わった際に、筐体18内部からガスが流出するのを許容する。このようにして、開閉弁436,438は、筐体18内部からガスが流出するのを許容し、かつ筐体18内部へガスが流入するのを阻止する。開閉弁436,438は、ガス導入室70a内部及び呼気導入室70b内部のガスによる内圧を制御して、必要以上の呼気が第1センサ室72及び第2センサ室74に流入することを防ぐとともに、第1センサ室72及び第2センサ室74に流入するガスの流量を同一にすることで、ガスセンサ50の検出値の補正をより一層正確に行なえるようにする。ガス導入室70a内部及び呼気導入室70b内部の内圧としては、大気圧の1.1倍〜1.2倍となるように制御されることが好ましい。
【0069】
筐体18の右側面において筐体18の背面側には、第1センサ室72内部及びガス導入室70a内部に脱離ガスを流入させるための脱離ガス導入部402が設けられ、筐体18の右側面において筐体18の正面側には、第2センサ室74内部及び呼気導入室70b内部に、脱離ガス、又は、脱離ガス及び呼気を流入させるための呼気導入部404が、脱離ガス導入部402と水平方向に並ぶように設けられる。脱離ガス導入部402は、第1センサ室72内部及びガス導入室70a内部と装置外部とを連通し、呼気導入部404は、第2センサ室74内部及び呼気導入室70b内部と装置外部とを連通する。
【0070】
脱離ガス導入部402は、一端部に設けられる送風機428から送り込まれる空気をガス導入室70a内部へと流通するための矢符Aに示す流路を形成する脱離ガス導入路406と、上述の送風機428から送り込まれる空気を第1センサ室72内部へと流通するための矢符Bに示す流路を形成する脱離ガス導入路408とを含むパイプ状部材からなる。すなわち、脱離ガス導入路406は、一端部に送風機428が設けられ、かつ送風機428が設けられる側とは反対側の他端部がガス導入室70aと連通するように形成されるパイプ状部材からなり、脱離ガス導入路408は、一端部が脱離ガス導入路406と連通するように脱離ガス導入路406の中間部から分岐し、かつ脱離ガス導入路406と連通する側とは反対側の他端部が第1センサ室72と連通するように形成されるパイプ状部材からなる。脱離ガス導入部402としては、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、内径10mm〜30mm、長さ10mm〜100mmの脱離ガス導入路406と、内径10mm〜30mm、長さ10mm〜50mmの脱離ガス導入路408とを有するパイプ状部材であることが好ましい。
【0071】
脱離ガス導入路406と脱離ガス導入路408とが分岐する部分(以下、「分岐部分」と記す。)には、三方弁412が設けられる。三方弁412は、制御部32と電気的に接続され、測定開始ボタン34からの呼気分析開始指示信号、又は、再生ボタン36からの再生処理開始指示信号に基づいて制御部32から入力される切替制御信号に従って、以下のように脱離ガス導入部402を流通する脱離ガスの流路を切替える。すなわち、呼気分析時には、脱離ガスが矢符Aに示す流路を流通してガス導入室70a内部へと導入されるように、脱離ガスの流路が脱離ガス導入路406となるようにし、ガスセンサ48の再生処理時には、脱離ガスが矢符A及び矢符Bに示す流路を流通してガス導入室70a内部及び第1センサ室72内部へと流入するように、脱離ガスの流路が脱離ガス導入路406及び脱離ガス導入路408となるようにする。三方弁412としては、当該分野で一般的に使用される可動式のものであれば特に制限されず、電磁三方弁等を使用できる。
【0072】
呼気導入部404は、先端部に位置する呼気導入口415から呼気を導入するための矢符Cに示す流路を形成する呼気導入路414と、一端部に設けられる送風機430から送り込まれる空気、又は、この空気及び呼気導入路414から導入される呼気を含む混合ガスを呼気導入室70b内部へと流通するための矢符Dに示す流路を形成する混合ガス導入路416と、送風機430から送り込まれる空気を第2センサ室74内部へと流通するための矢符Eに示す流路を形成する脱離ガス導入路418とを含むパイプ状部材からなる。すなわち、混合ガス導入路416は、一端部に送風機430が設けられ、かつ送風機430が設けられる側とは反対側の他端部が呼気導入室70bと連通するように形成されるパイプ状部材からなり、脱離ガス導入路418は、一端部が混合ガス導入路416と連通するように混合ガス導入路416の中間部から分岐し、かつ混合ガス導入路416と連通する側とは反対側の他端部が第2センサ室74と連通するように形成されるパイプ状部材からなる。呼気導入路414は、呼気導入口415が設けられる側とは反対側の他端部が混合ガス導入路416と連通するように、混合ガス導入路416の中間部から分岐して形成されるパイプ状部材からなる。呼気導入部404としては、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、内径10mm〜30mm、長さ10mm〜100mmの混合ガス導入路416と、内径10mm〜30mm、長さ10mm〜50mmの脱離ガス導入路418と、内径10mm〜30mm、長さ10mm〜50mmの呼気導入路414とを有するパイプ状部材であることが好ましい。また、混合ガス導入路416及び脱離ガス導入路418は、第1センサ室72内部及びガス導入室70a内部の状態と、第2センサ室74内部及び呼気導入室70b内部の状態とが類似の状態となるように、それぞれ脱離ガス導入路406,408と同一の部材からなることが好ましい。
【0073】
混合ガス導入路416と脱離ガス導入路418とが分岐する部分(以下、「分岐部分」と記す。)には、三方弁420が設けられる。三方弁420は、制御部32と電気的に接続され、測定開始ボタン34からの呼気分析開始指示信号、又は、再生ボタン36からの再生処理開始指示信号に基づいて制御部32から入力される切替制御信号に従って、以下のように呼気導入部404を流通するガスの流路を切替える。すなわち、呼気分析時には、脱離ガスと呼気との混合ガスが矢符Dに示す流路を流通して呼気導入室70b内部へと導入されるように、ガスの流路が混合ガス導入路416となるようにし、ガスセンサ50の再生処理時には、脱離ガスが矢符D及び矢符Eに示す流路を流通して呼気導入室70b内部及び第2センサ室74内部へと流入するように、ガスの流路が混合ガス導入路416及び脱離ガス導入路418となるようにする。三方弁420としては、三方弁412と同一のものを使用できる。
【0074】
呼気導入路414内部において、混合ガス導入路416と連通する部分近傍には、開閉弁422が設けられる。開閉弁422は、制御部32と電気的に接続され、測定開始ボタン34からの呼気分析開始指示信号、又は、再生ボタン36からの再生処理開始指示信号に基づいて制御部32から入力される開閉制御信号に従って、以下のようにその開閉状態を制御する。すなわち、呼気分析時には、呼気が矢符Cに示す流路を流通して混合ガス導入路416内部へと導入されるように開閉弁422を開いた状態にし、ガスセンサ50の再生処理時には、呼気が混合ガス導入路416内部へ導入されないように開閉弁422を閉じた状態にする。開閉弁422としては、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されず、電磁開閉弁等を使用できる。
【0075】
上述した送風機428は、その送風方向がガス導入室70a内部へと向かう方向となるように装着され、送風機430は、その送風方向が呼気導入室70b内部へと向かう方向となるように装着される。送風機428,430には、ガス導入室70a内部及び呼気導入室70b内部の状態が類似の状態となるように同一のものが使用されることが好ましい。送風機428,430は制御部32と電気的に接続され、再生ボタン36からの指示等に基づいて制御部32から入力される送風制御信号に従って、筐体18外部からガス導入室70a内部及び呼気導入室70b内部に向かう方向に空気を送り込む。送風機428,430としては、呼気センシング装置10に使用される送風機310,312と同一のものを使用できる。
【0076】
−動作−
図6及び図7を参照して、呼気センシング装置10の変形例は以下のように動作する。通常、被験者等の利用者は、最初にガスセンサ48,50等の再生処理を行ない、次いで、呼気分析を行なう。
【0077】
すなわち、まず、被験者等により再生ボタン36が操作されると、制御部32は、再生ボタン36から入力される再生処理開始指示信号に従って、三方弁412,420に対して切替制御信号を出力するとともに、開閉弁422に対して開閉制御信号を出力する。三方弁412は、切替制御信号に従って、脱離ガス導入部402における脱離ガスの流路が脱離ガス導入路406及び脱離ガス導入路408となるようにし、三方弁420は、切替制御信号に従って、呼気導入部404におけるガスの流路が混合ガス導入路416及び脱離ガス導入路418となるようにする。開閉弁422は、開閉制御信号にしたがって、開閉弁422を閉じた状態にする。
【0078】
三方弁412,420及び開閉弁422における上述の動作が終了すると、制御部32は、送風機428,430に対して送風制御信号を出力する。送風機428,430は、送風制御信号に従って、装置外部からガス導入室70a内部及び呼気導入室70b内部に向かう方向に空気を送り込む。送風機428によりガス導入室70a内部に向かう方向に送り込まれた空気は、脱離ガス導入路406及び脱離ガス導入路408を流通してガス導入室70a内部及び第1センサ室72内部に送り込まれ、仕切部材52及び選択透過膜60に残留した水分及びその他のガス成分等、並びにガスセンサ48に吸着したガス成分等をその風力により吹き飛ばすことによって脱離させるとともに、脱離した各種成分を脱離ガス排出部306に向けて搬送して脱離ガス排出部306から装置外部に排出する。同様に、送風機430により呼気導入室70b内部に向かう方向に送り込まれた空気は、混合ガス導入路416及び脱離ガス導入路418を流通して呼気導入室70b内部及び第2センサ室74内部に送り込まれ、仕切部材54及び選択透過膜62に残留した水分及びその他のガス成分等、並びにガスセンサ50に吸着したガス成分等をその風力により吹き飛ばすことによって脱離させるとともに、脱離した各種成分を脱離ガス排出部308に向けて搬送して脱離ガス排出部308から装置外部に排出する。
【0079】
次いで、被験者等により測定開始ボタン34が操作されると、制御部32は、測定開始ボタン34から入力される呼気分析開始指示信号に従って、三方弁412,420に対して切替制御信号を出力するとともに、開閉弁422に対して開閉制御信号を出力する。同時に、定電圧源130により、ガスセンサ素子80と負荷抵抗134とを直列接続したものの両端に一定電圧がかけられる。三方弁412は、切替制御信号に従って、脱離ガス導入部402における脱離ガスの流路を脱離ガス導入路406に切替え、三方弁420は、切替制御信号に従って、呼気導入部404におけるガスの流路を混合ガス導入路416に切替える。開閉弁422は、開閉制御信号にしたがって、開閉弁422を開いた状態にする。
【0080】
三方弁412,420及び開閉弁422における上述の動作が終了すると、制御部32は、送風機428,430に対して送風制御信号を出力し、送風機428,430は、送風制御信号に従って、筐体18外部からガス導入室70a内部及び呼気導入室70b内部に向かう方向に空気を送り込む。そして、被験者により呼気導入口415にマウスピース39が設置され、設置されたマウスピース39から呼気が導入される。
【0081】
送風機428によりガス導入室70a内部に向かう方向に送り込まれた空気は、脱離ガス導入路406を流通してガス導入室70aに送り込まれ、送風機430により呼気導入室70b内部に向かう方向に送り込まれた空気は呼気導入路414から導入される呼気と混合されて混合ガスとなった後、混合ガス導入路416を流通して呼気導入室70bに送り込まれる。このように、送風機430により送りこまれる空気は、脱離ガスとしての機能とともに、呼気を呼気導入室70bに搬送するキャリアガスとしての機能を有する。ガス導入室70aに送り込まれた空気は、開口部56を通過して第1センサ室72に直接流入する。このとき、選択透過膜60の存在により、水分が除去されるとともに、空気中の特定ガス成分のうち、一酸化窒素(NO)が優先的に第1センサ室72に導入される。同様に、呼気導入室70bに送り込まれた混合ガスは、開口部58を通過して第2センサ室74に直接流入する。このとき、選択透過膜62の存在により、水分が除去されるとともに、混合ガス中の特定ガス成分のうち、一酸化窒素(NO)が優先的に第2センサ室74に導入される。
【0082】
第1センサ室72に優先的に導入された空気中の一酸化窒素(NO)は、ガスセンサ48のセンシング部82に選択的に吸着され、その結果、ガスセンサ素子80の電極84,86間の電気抵抗が増加する。その変化は、増幅器136の出力電圧の変化として制御部32のA/D変換器に対して出力される。同時に、混合ガス中の一酸化窒素(NO)は、ガスセンサ50のセンシング部82に選択的に吸着され、その結果、ガスセンサ素子80の電極84,86間の電気抵抗が増加する。その変化は、増幅器136の出力電圧の変化として制御部32のA/D変換器に対して出力される。A/D変換器は、入力された電位変化をデジタル信号に変換して制御部32の処理回路に対して出力し、処理回路は、入力されたデジタル信号に基づいて呼気中の一酸化窒素(NO)の濃度を算出する。このとき、処理回路は、ガスセンサ48の検出値に基づいて、ガスセンサ50の検出値の補正を行なう。すなわち、ガスセンサ50に接続されるA/D変換器から入力されたデジタル信号から算出される混合ガス中の一酸化窒素(NO)の濃度の値から、ガスセンサ48に接続されるA/D変換器から入力されたリファレンス信号であるデジタル信号から算出される空気中の一酸化窒素(NO)の濃度の値を差し引くことで、呼気中の一酸化窒素(NO)の濃度の補正を行なう。処理回路は、補正後の算出結果を、表示画面21に表示させる。このように出力電圧変化を知ることによって、呼気中の特定ガス成分の濃度を確認することができる。
【0083】
ガスセンサ48のセンシング部82により一酸化窒素(NO)が吸着された空気は、呼気排出部26の呼気排出口27から装置外部に排出される。同様に、ガスセンサ50のセンシング部82により一酸化窒素(NO)が吸着された混合ガスは、呼気排出部24の呼気排出口25から装置外部に排出され、呼気分析が終了する。
【0084】
上述したように、呼気センシング装置10の変形例は、選択透過膜60とガスセンサ48との間である第1センサ室72に、ガスセンサ48の機能を再生するための空気を流入させるための脱離ガス導入部402と、第1センサ室72内部から空気を排出するための脱離ガス排出部306と、脱離ガス導入部402から脱離ガス排出部306に向けて空気を送り込む送風機428と、選択透過膜62とガスセンサ50との間である第2センサ室74内部に、ガスセンサ50の機能を再生するための空気を流入させるための呼気導入部404と、第2センサ室74内部から空気を排出するための脱離ガス排出部308と、呼気導入部404から脱離ガス排出部308に向けて空気を送り込む送風機430とを含む。そして、制御部32は、ガスセンサ48,50の汚染状態に基づいて、送風機428,430の動作を制御する。
【0085】
したがって、送風機428,430により脱離ガス導入部402から脱離ガス排出部306、及び、呼気導入部404から脱離ガス排出部308に向けて空気を送り込むことによって、その風力により、仕切部材52,54及び選択透過膜60,62上に残留した各種成分、並びに、ガスセンサ48,50のセンシング部82に吸着した各種成分が脱離されるので、呼気がガスセンサ48,50に容易に到達できるとともに、ガスセンサ48,50の検出感度及び応答速度をより一層向上させることができる。また、送風機428,430により空気を送り込むだけでガスセンサ48,50を高温環境下及び光に晒すことなく上述の効果を得ることができるので、ガスセンサ48,50の再生処理が簡便になり、かつガスセンサ48,50の劣化を防ぐことができる。更に、送風機428,430による風力を有効利用して脱離された各種成分を排出させるので、選択透過膜60,62を通過した風力の弱いガスを用いる場合と比較して脱離された各種成分をより一層速やかに排出して再生処理に必要な時間を短縮することができるとともに、脱離された各種成分を装置外部へ排出するためのファン等の構成を設ける必要がなくなり、装置の小型化をより一層達成できる。
【0086】
なお、上記第1の実施の形態及びその変形例においては、センサ基板40,42上にガスセンサ48,50が直接設けられているが、本発明はそのような実施の形態には限定されず、センサ基板40とガスセンサ48との間、及び、センサ基板42とガスセンサ50との間に、ヒータがそれぞれ設けられていてもよい。ヒータとしては、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、白金(Pt)薄膜又は白金(Pt)板等からなるもの等を使用できる。この場合、ヒータは、制御部32と電気的に接続され、制御部32から入力される加熱制御信号に従って、ガスセンサ48,50の再生処理時等に、ガスセンサ48,50を加熱する。すなわち、被験者等により再生ボタン36が操作されると、制御部32は、再生ボタン36から入力される再生処理開始指示信号に従って、上述の送風機310,312,428,430等の動作を制御するとともに、ヒータに一定時間電流を流して加熱し、ガスセンサ48,50のセンシング部82に吸着したガス成分を脱離させる。このように、ヒータを設けることによって、より一層効率良く、仕切部材52,54及び選択透過膜60,62上に残留した各種成分、並びに、ガスセンサ48,50のセンシング部82に吸着した各種成分の脱離を行なうことができる。
【0087】
また、上記第1の実施の形態及びその変形例においては、送風機310,312,428,430を用いて脱離ガスの送り込みを行なったが、本発明はそのような実施の形態には限定されない。例えば、送風機310,312,428,430に替えて、窒素ガス又は高純度空気等の分析対象ガス以外のガスが圧縮されたガスボンベが設けられ、このガスボンベにより脱離ガスが送り込まれる構成であってもよい。この場合、ガスボンベには制御弁が備えられ、この制御弁によってガスの風力が制御されることが好ましい。ここで、高純度空気とは、窒素約79%及び酸素約21%を含み、不純物の濃度がppm〜ppbオーダーに抑えられた圧縮空気のことである。
【0088】
また、上記第1の実施の形態及びその変形例においては、第1センサ室72内部及び第2センサ室74内部から脱離ガスを排出するために脱離ガス排出部306,308を設けたが、本発明はそのような実施の形態には限定されない。例えば、脱離ガス排出部306,308の代わりに、呼気排出部26,24の内部にファン等を設け、これによって、脱離ガスを排出する構成としてもよい。このような構成においても、効率よくガスセンサ48,50の再生処理を行なうことができる。
【0089】
なお、上記第1の実施の形態の変形例では、開閉弁436,438の開閉動作はガス導入室70a内部及び呼気導入室70b内部の内圧に応じて自動的に行なわれたが、本変形例はそのような実施の形態に限定されない。例えば、開閉弁436,438が制御部32に電気的に接続され、ガス導入室70a内部及び呼気導入室70b内部にそれぞれ設けられる圧力センサ又は流量センサ等の測定結果に基づいて制御部32から入力される開閉制御信号に従ってその開閉動作が制御される構成であってもよい。このように、ガス導入室70a内部及び呼気導入室70b内部の内圧、又は、ガス導入室70a内部及び呼気導入室70b内部に流入するガスの流量等を圧力センサ又は流量センサ等により測定し、その測定結果に基づいて開閉弁436,438の開閉動作を制御することによって、第1センサ室72及び第2センサ室74に流入するガスの流量をより一層正確に同一にすることができる。したがって、ガスセンサ50の検出値の補正を更に正確に行なうことができる。
【0090】
[第2の実施の形態]
−構成−
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る呼気センシング装置200の斜視図であり、図9は、呼気センシング装置200の内部構成を示す水平断面図である。図8及び図9を参照して、呼気センシング装置200は、本体202及び囲い部材204を含む。呼気センシング装置200において、本体202は、筐体18及び仕切部材52,54等における好ましい構成材料が異なる点以外は、第1の実施の形態に係る呼気センシング装置10と同一の構成である。したがって、呼気センシング装置10と同一又は類似の機能を有する構成部には同一の参照符号及び名称を付し、それらについての詳細な説明は繰返さず、異なる点のみ説明する。
【0091】
本体202において、筐体18の構成材料としては、断熱性でない材料であることが好ましく、特には導熱性を有する材料であることが好ましい。このような材料としては、アルミ等の各種金属、又は、熱可塑性プラスチック等がある。仕切部材52,54の構成材料においても、断熱性でない材料であることが好ましく、特には導熱性を有する材料であることが好ましい。このような材料としては、アルミ等の各種金属、又は、熱可塑性プラスチック等がある。仕切部材52,54の厚みとしては、適度な機械的強度を有し、かつ呼気センシング装置200内部における熱移動を阻害しない程度であれば特に限定されないが、100μm〜2000μmであることが好ましい。
【0092】
呼気導入部28、ガス排出部22、呼気排出部24,26、脱離ガス導入部302,304及び脱離ガス排出部306,308の構成材料としては、断熱性でない材料であることが好ましく、特には導熱性を有する材料であることが好ましい。このような材料としては、アルミ等の各種金属、又は、熱可塑性プラスチック等がある。
【0093】
本体202の外方には、本体202、すなわち筐体18の外形に沿って形成される2つの囲い部材204a,204bが設けられる。囲い部材204a,204bは、装置周辺の電磁波を吸収して発熱する電波吸収体からなり、この電波吸収体は、磁性損失材料及び高分子材料を含む。磁性損失材料としては、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されず、MnZnフェライト、NiCuZnフェライト、又は、MnMgZnフェライト等のスピネル系、六方晶フェライト系、立方晶フェライト系若しくは複合フェライト系等のフェライト、FeSiアモルファス等の鉄系アモルファス合金、パーマロイ、センダスト、ステンレス、ステンレス合金、ケイ素鋼、磁性体、若しくは、磁性合金等がある。高分子材料としては、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されず、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、又は、エポキシ樹脂等の合成樹脂等がある。例えば、携帯電話装置又は無線LAN(Local Area Network)等から放射される電磁波のうち、不要となる0.3GHz〜30GHz以外の電磁波(以下「不要電磁波」と記す。)を電波吸収体に優先的に吸収させる場合には、磁性損失材料として、例えば、特開2004−304045号公報に記載のSiC−六方晶フェライト系セラミックス複合型電波吸収体を使用し、高分子材料としてカーボン含有樹脂を使用することができる。
【0094】
囲い部材204a,204bとして不要電磁波を優先的に吸収する電波吸収体からなるものを使用する場合には、不要電磁波を有効利用することができ、また不要電磁波中に多く含まれると考えられる、呼気センシング装置200の動作を妨害するおそれのある帯域の電磁波をより一層低減できるので、更に正確な呼気分析が可能になる。囲い部材204a,204bとしてマイクロ波(2.45GHz)を優先的に吸収する電波吸収体からなるものを使用する場合には、充分な発熱を得られないときには、電子レンジによりマイクロ波加熱することでマイクロ波による電磁エネルギーを得ることができるので、電磁波を発生するための発生装置を設けることなく常に充分な発熱を得ることができる。電波吸収体には、磁性損失材料の複素比誘電率を制御するために、カーボン粉体等を添加して使用することもできる。電波吸収体の製造方法としては、当該分野において一般的に使用される方法であれば限定されないが、例えば、磁気損失材料の粉末を高分子材料に加えて混合又は混練し、混合物又は混練物を所望の形状に成形加工する方法等がある。高分子材料に対する磁性損失材料の含有割合としては、呼気センシング装置200の動作を妨害しない程度、例えば本体202内部が50℃〜150℃に加熱される程度の電磁波吸収量となるように適宜選択されればよい。
【0095】
囲い部材204a,204bは、手動により本体202の周囲に着脱可能に構成される。このような構成としては、当該分野において一般的に使用される構成であれば特に限定されないが、例えば、囲い部材204a,204bをスライドさせて本体202に簡単に着脱することが可能なスライド式等を使用できる。囲い部材204a,204bは、本体202の周囲を密着して囲むように本体202に装着される。また、囲い部材204a,204bは、ユーザが手作業により、囲い部材204a,204bが装着された本体202を持ち運び可能に構成されることが好ましい。このような構成としては、当該分野において一般的な構成であれば特に限定されないが、囲い部材204a,204bの上部に取っ手等を設ける構成等がある。
【0096】
−動作−
図8及び図9を参照して、本実施の形態に係る呼気センシング装置200は以下のように動作する。なお、本実施の形態において、被験者等の利用者によって任意に行なわれるガスセンサ48,50等の再生処理以外の動作は、第1の実施の形態に係る呼気センシング装置10の動作と同様である。
【0097】
被験者等の利用者は、呼気分析開始前に行なう、脱離ガスを使用する通常の再生処理とは別に、例えば、ガスセンサ48,50の感度が著しく低下した場合、並びに、選択透過膜60,62、仕切部材52,54及び筐体18の内壁等が著しく汚染した場合等の任意の場合において、以下のようにしてガスセンサ48,50の再生処理を行なう。すなわち、被験者等によって、囲い部材204a,204bが手動により本体202の周囲を密着して囲むように(図9参照)装着されるとともに、再生ボタン36が操作されると、脱離ガスを使用する再生処理が、第1の実施の形態に係る呼気センシング装置10の動作と同様にして行なわれる。また、囲い部材204a,204bは、常時、装置周辺の電磁波を吸収して発熱し、発生した熱を外部に放熱している。したがって、本体202の周囲が囲い部材204a,204bによって囲まれると、囲い部材204a,204bから発生する熱が、本体202の筐体18、呼気導入部28、ガス排出部22、呼気排出部24,26、脱離ガス導入部302,304及び脱離ガス排出部306,308に伝わり、本体202の内部が加熱される。これによって、仕切部材52,54、選択透過膜60,62及び筐体18の内壁が加熱されるので、仕切部材52,54、選択透過膜60,62及び筐体18の内壁上に残留した水分及びその他のガス成分等が脱離される。同様に、ガスセンサ48,50も加熱されるので、これらのセンシング部82に吸着したガス成分等が脱離される。上述のようにして脱離された各種成分は、脱離ガス排出部306,308から、脱離ガスとともに呼気センシング装置200外部に排出される。
【0098】
上述したように、呼気センシング装置200は、本体202、すなわち筐体18の外形に沿って形成され、かつ、呼気センシング装置200周辺の電磁波を吸収して発熱する電波吸収体を含む囲い部材204a,204bを含む。そして、囲い部材204a,204bは、本体202の周囲が、囲い部材204a,204bによって外方から密着して囲まれるように着脱可能に構成される。
【0099】
このように、本体202の周囲を囲い部材204a,204bで囲むことによって、囲い部材204a,204bから発生する熱により本体202の内部を加熱できる。これにより、仕切部材52,54、選択透過膜60,62及び筐体18の内壁上に残留した各種成分、並びに、ガスセンサ48,50のセンシング部82に吸着した各種成分がより一層効率よく脱離されるので、呼気がガスセンサ48,50に容易に到達できるとともに、ガスセンサ48,50の検出感度及び応答速度をより一層向上させることができる。また、囲い部材204a,204bを移動させるだけで上述の効果を得ることができるので、ガスセンサ48,50の再生処理がより一層簡便になる。更に、冷却時には囲い部材204a,204bを本体202から離れた位置に移動させるため冷却手段を設ける必要がなく、また電磁波を発生させるための装置を設ける必要がないので、装置の小型化をより一層達成できる。更に、装置周辺に存在する電磁波を有効利用するので、呼気センシング装置200の動作を妨害するおそれのある帯域の電磁波、通常の生活に不必要な帯域の電磁波、及び人体に有害とされる帯域の電磁波等を低減できるので、より一層正確な呼気分析が可能になるとともに、周辺環境の不要電波や有害電波を低減することができる。
【0100】
また、筐体18、呼気導入部28、ガス排出部22、呼気排出部24,26、脱離ガス導入部302,304及び脱離ガス排出部306,308は、導熱性を有する材料から構成されるので、囲い部材204a,204bから発生する熱によって本体202の内部がより一層加熱され易くなり、仕切部材52,54、選択透過膜60,62及び筐体18の内壁上に残留した各種成分、並びに、ガスセンサ48,50に吸着した各種成分がより一層脱離され易くなる。したがって、呼気がガスセンサ48,50により一層容易に到達できるようになり、ガスセンサ48,50の検出感度及び応答速度を更に向上させることができる。
【0101】
なお、上記第2の実施の形態においては、2つの囲い部材204a,204bが設けられたが、本発明はそのような実施の形態には限定されず、例えば、1つ、又は、3つの囲い部材が設けられてもよい。このように囲い部材を複数設ける場合には、例えば、それぞれの囲い部材に含まれる磁性損失材料が異なるようにすることによって、より一層広範囲にわたる領域の電磁波を吸収することができる。
【0102】
また、上記第2の実施の形態においては、呼気センシング装置200の各構成部に対する電力の供給は主電源が行なったが、本発明はそのような実施の形態には限定されない。例えば、囲い部材204において発生する熱を電力に変換するゼーベック素子等の熱電変換素子、及び、熱電変換素子により変換された電力を蓄積する充電池が、更に設けられてもよい。このように、熱電変換素子及び充電池が更に設けられることによって、囲い部材204において発生する熱をより一層効率よく利用することができる。例えば、電磁波の吸収が不可能な環境において、充電池からガスセンサ48,50に対して通電することでガスセンサ48,50を加熱することによりガスセンサ48,50の再生処理を行なうことができる。また、センサ基板40,42とガスセンサ48,50との間にヒータを設け、このヒータに対して充電池から通電することでガスセンサ48,50の再生処理を行なうこともできる。
【0103】
また、呼気センシング装置200が携帯電話装置に組込まれ、携帯電話装置による通信を阻害するおそれのある不要電磁波の電磁波エネルギー、及び、自然界に存在する電磁波の電磁波エネルギー等を囲い部材204で熱に変換した後、上述の熱電変換素子により変換された電力を携帯電話装置に搭載される充電池に蓄積する構成であってもよい。このように、携帯電話装置に搭載される充電池を利用することによって、自然界に存在する電磁波を有効利用することができるとともに、携帯電話装置による通信をより一層円滑に行なうことができる。
【0104】
[第3の実施の形態]
−構成−
図10は、本発明の第3の実施の形態に係る呼気センシング装置300の斜視図であり、図11は、呼気センシング装置300の内部構成を示す水平断面図である。図10及び図11を参照して、呼気センシング装置300は、仕切部材52,54等における好ましい構成材料が異なる点、UVランプ点灯ボタン35を有する点、及び、UVランプ64a〜64eを有する点以外は、第1の実施の形態に係る呼気センシング装置10と同一の構成である。したがって、呼気センシング装置10と同一又は類似の機能を有する構成部には同一の参照符号及び名称を付し、それらについての詳細な説明は繰返さず、異なる点のみ説明する。
【0105】
呼気センシング装置300において、仕切部材52,54の構成材料としては、紫外線を透過可能なものであれば特に限定されず、シリコーンゴム等の各種ゴム、又は、アクリル樹脂等の各種プラスチック等を使用できる。仕切部材52,54の厚みとしては、適度な機械的強度を有し、かつ紫外線の透過を阻害しない程度であれば特に限定されないが、100μm〜1000μmであることが好ましい。
【0106】
本実施の形態では、選択透過膜60には、水分を除去し、かつ呼気中の特定ガス成分である一酸化窒素(NO)を優先的に透過可能な疎水性の膜(例えば、NO-selective membrane(商品名、World Precision Instruments社製))を使用し、選択透過膜62には、呼気中の特定ガス成分であるアセトンを優先的に透過可能であり、かつ紫外線を透過可能なシリコーンゴムからなる膜を使用する。
【0107】
選択透過膜60,62は、紫外線を透過可能に構成される。紫外線を透過可能にする方法としては、当該分野において一般的に使用される方法であれば特に限定されないが、例えば、紫外線を透過可能な材料を構成材料として用いる方法、及び、紫外線を透過可能な厚みに調整する方法等がある。選択透過膜60,62の厚みとしては、適度な機械的強度を有し、かつ呼気中の所望の特定ガス成分の透過を阻害しない程度であれば特に限定されないが、5μm〜50μmであることが好ましい。選択透過膜60,62を紫外線を透過可能な厚みに調整する場合においては、選択透過膜60,62の厚みは、選択透過膜60,62の材質等に応じて適宜調整される。
【0108】
筐体18の上面において、測定開始ボタン34近傍には、UVランプ64a〜64eを点灯させるためのUVランプ点灯ボタン35が設けられる。UVランプ点灯ボタン35は、被験者等の利用者により押下されて操作されることで、制御部32に対してUVランプ点灯開始指示に応じた信号を出力する。
【0109】
呼気導入室70の中央部近傍であって、呼気の流通を阻害しない位置には、紫外線を照射するための少なくとも1個以上の、本実施の形態では5個のUVランプ64a〜64eが、この順に水平方向に並んで設けられる。UVランプ64a〜64eとしては、仕切部材52,54及び選択透過膜60,62を透過して、ガスセンサ48,50に到達可能な強度の紫外線を照射できるものであれば特に限定されないが、例えば、放射する紫外線の波長が200nm〜380nmのもの等が好ましい。紫外線の波長がこのような範囲内の値であることによって、ガスセンサ48,50等の再生処理をより一層効果的に行なうことができる。波長が200nmより小さいと、紫外線が大気中を伝播することができなくなり、ガスセンサ48,50等の再生処理を行なうことができなくなるおそれがある。波長が380nmより大きいと、可視光領域の光となるのでガスセンサ48,50等の再生処理を行なうことができなくなるおそれがある。UVランプ64a〜64eは、制御部32と電気的に接続され、UVランプ点灯ボタン35からの指示等に基づいて制御部32から入力される照射制御信号に従って、仕切部材52,54、選択透過膜60,62、筐体18の内壁、及び、ガスセンサ48,50に対して紫外線の照射を行なう。
【0110】
−動作−
図10及び図11を参照して、本実施の形態に係る呼気センシング装置300は以下のように動作する。なお、本実施の形態において、被験者等の利用者によって任意に行なわれるガスセンサ48,50等の再生処理以外の動作は、第1の実施の形態に係る呼気センシング装置10の動作と同様である。
【0111】
被験者等の利用者は、呼気分析開始前に行なう、脱離ガスを使用する通常の再生処理とは別に、例えば、ガスセンサ48,50の感度が著しく低下した場合、並びに、選択透過膜60,62、仕切部材52,54及び筐体18の内壁等が著しく汚染した場合等の任意の場合において、以下のようにしてガスセンサ48,50の再生処理を行なう。すなわち、被験者等によって、再生ボタン36及びUVランプ点灯ボタン35が操作されると、脱離ガスを使用する再生処理が、第1の実施の形態に係る呼気センシング装置10の動作と同様にして行なわれる。脱離ガスを使用する再生処理と同時に、制御部32は、UVランプ点灯ボタン35から入力される点灯開始指示信号に従って、UVランプ64a〜64eに対して照射制御信号を出力する。UVランプ64a〜64eは、照射制御信号に従って、予め定められる一定時間電流が流されることにより、紫外線を発生させる。これによって、仕切部材52,54、選択透過膜60,62、及び、筐体18の内壁に対しては、UVランプ64a〜64eからの紫外線が直接照射されるので、これらの仕切部材52,54、選択透過膜60,62、及び、筐体18の内壁上に残留した水分及びその他の成分等が脱離される。また、ガスセンサ48,50に対しては、仕切部材52,54及び選択透過膜60,62を透過した紫外線が照射されるので、ガスセンサ48,50のセンシング部82に吸着した呼気分析を妨害するおそれのあるガス成分及び被毒物質等が脱離される。上述のようにして脱離された各種成分は、脱離ガス排出部306,308から、脱離ガスとともに呼気センシング装置300外部に排出される。
【0112】
紫外線照射によって上述の各構成部から各種成分が脱離されるのは、以下の理由による。すなわち、紫外線照射により得られるエネルギーによって仕切部材52,54、選択透過膜60,62、及び、筐体18の内壁上に残留した各種成分、並びに、ガスセンサ48,50のセンシング部82に吸着した各種成分が活性化される。これによって、各種成分の脱離速度が速くなる又は各構成部から脱離され易い活性化物質に変化されるので、各構成部からの各種成分の脱離が可能になる。
【0113】
上述したように、呼気センシング装置300は、筐体18内部である、呼気導入部28と選択透過膜60,62の間の呼気導入室70にUVランプ64a〜64eが設けられ、制御部32は、ガスセンサ48,50の汚染状態に基づいて、UVランプ64a〜64eの照射制御を行う。
【0114】
したがって、UVランプ64a〜64eにより紫外線を照射することによって、仕切部材52,54、選択透過膜60,62、及び、筐体18の内壁上に残留した各種成分、並びに、ガスセンサ48,50のセンシング部82に吸着した各種成分が脱離されるので、呼気がガスセンサ48,50に容易に到達できるとともに、ガスセンサ48,50の検出感度及び応答速度をより一層向上させることができる。また、UVランプ64a〜64eに対して通電するだけでガスセンサ48,50を高温環境下に晒すことなく上述の効果を得ることができるので、ガスセンサ48,50の再生処理がより一層簡便になり、かつガスセンサ48,50の劣化をより一層防ぐことができる。更に、装置内に組込むことが可能なUVランプ64a〜64eを使用するので、装置の小型化をより一層達成できる。
【0115】
また、仕切部材52,54及び選択透過膜60,62は紫外線を透過可能に構成されるので、UVランプ64a〜64eの設置場所を一箇所と少なくすることができ、より一層効率的に紫外線照射により得られるエネルギーを利用することができる。
【0116】
[変形例]
−構成−
図12は、本発明の第3の実施の形態に係る呼気センシング装置300の変形例を示す水平断面図である。図12を参照して、呼気センシング装置300の変形例は、仕切部材52,54及び選択透過膜60,62が紫外線を透過しない構成である点、反射板38a〜38dが設けられる点、並びに、UVランプ64の設置位置及び個数が異なる点以外は、呼気センシング装置300と同一の構成である。呼気センシング装置300の変形例において、呼気センシング装置300と同一又は類似の機能を有する構成部には同一の参照符号及び名称を付し、それらについての詳細な説明は繰返さず、異なる点のみ説明する。
【0117】
呼気センシング装置300の変形例において、仕切部材52,54の構成材料としては、紫外線を透過不可能又は透過困難な材料であれば特に限定されず、エチレンプロピレンゴム等の各種ゴム、又は、ポリカーボネート等の各種プラスチック等を使用できる。仕切部材52,54の厚みとしては、適度な機械的強度を有し、かつ紫外線を透過不可能又は透過困難な程度であれば特に限定されないが、100μm〜2000μmであることが好ましい。
【0118】
本変形例では、選択透過膜60には、水分を除去し、かつ呼気中の特定ガス成分である一酸化窒素(NO)を優先的に透過可能な疎水性の膜(例えば、NO-selective membrane(商品名、World Precision Instruments社製))を使用し、選択透過膜62には、呼気中の特定ガス成分であるアセトンを優先的に透過可能であり、かつ紫外線を透過不可能又は透過困難なポリイミドからなる膜を使用する。
【0119】
選択透過膜60,62は、紫外線を透過不可能又は透過困難に構成される。紫外線を透過不可能又は透過困難にする方法としては、当該分野において一般的に使用される方法であれば特に限定されないが、例えば、紫外線を透過不可能又は透過困難な材料を構成材料として用いる方法、及び、選択透過膜の厚みを調整する方法等がある。選択透過膜60,62の厚みとしては、適度な機械的強度を有し、かつ呼気中の所望の特定ガス成分の透過を阻害しない程度であれば特に限定されないが、5μm〜50μmであることが好ましい。選択透過膜60,62の厚みを調整することにより紫外線を透過不可能又は透過困難にする場合においては、選択透過膜60,62の厚みは、選択透過膜60,62の材質等に応じて適宜調整される。
【0120】
呼気導入室70の中央部近傍であって、呼気の流通を阻害しない位置には、紫外線を照射するための少なくとも1個以上の、本変形例では3個のUVランプ64f〜64hが、この順に水平方向に並んで設けられる。UVランプ64f〜64hは、制御部32と電気的に接続され、UVランプ点灯ボタン35からの指示等に基づいて制御部32から入力される照射制御信号に従って、仕切部材52,54、選択透過膜60,62、及び、筐体18の内壁に対して紫外線の照射を行なう。
【0121】
第1センサ室72において、センサ基板40の近傍であって、呼気分析を阻害しない位置には、ガスセンサ48を挟むようにして2個のUVランプ64i,64jが設けられ、UVランプ64i,64jを挟んでガスセンサ48とは反対側には、反射板38a,38bがそれぞれ設けられる。反射板38a,38bは、その反射面がガスセンサ48を向くように配置される。これらの反射板38a,38bは、2個のUVランプ64i,64jが発生する紫外線を、ガスセンサ48に向けて反射させる。同様に、第2センサ室74において、センサ基板42の近傍には、ガスセンサ50を挟むようにして2個のUVランプ64k,64lが設けられ、UVランプ64k,64lを挟んでガスセンサ50とは反対側には、反射板38c,38dがそれぞれ設けられる。反射板38c,38dは、その反射面がガスセンサ50を向くように配置される。これらの反射板38c,38dは、2個のUVランプ64k,64lが発生する紫外線を、ガスセンサ50に向けて反射させる。反射板38a〜38dとしては、紫外線を反射可能なものであれば特に限定されないが、例えば、アルミ板又は銀スプレーコーティング部材等からなる厚み0.5mm〜1mm程度の曲面状部材若しくは板状部材等を使用することが好ましい。ここで、曲面状部材とは、二次曲面等の曲平面からなる凹面を有する部材のことであり、例えば放物面を有するパラボラ形状の部材等のことである。UVランプ64f〜64lとしては、例えば、放射する紫外線の波長が200nm〜380nmのもの等の、呼気センシング装置300におけるUVランプ64a〜64eと同様のものを使用できる。
【0122】
このように、UVランプ64i〜64lは、呼気分析を阻害しないようにガスセンサ48,50から離れた位置に設けられるので、反射板38a〜38dを設けることで、UVランプ64i〜64lから発生される紫外線をガスセンサ48,50に対して効率良く照射できるようにする。これにより、より一層効率的に紫外線照射により得られるエネルギーを利用することができるので、ガスセンサ48,50のセンシング部82に吸着した呼気分析を妨害するおそれのあるガス成分及び被毒物質等を更に効率良く脱離させることができる。UVランプ64i〜64lは、制御部32と電気的に接続され、UVランプ点灯ボタン35からの指示等に基づいて制御部32から入力される照射制御信号に従って、ガスセンサ48,50等に対して紫外線の照射を行なう。
【0123】
−動作−
図12を参照して、第3の実施の形態に係る呼気センシング装置300の変形例は以下のように動作する。なお、本変形例において、被験者等の利用者によって任意に行なわれるガスセンサ48,50等の再生処理以外の動作は、第1の実施の形態に係る呼気センシング装置10の動作と同様である。
【0124】
被験者等の利用者は、呼気分析前に行なう、脱離ガスを使用する通常の再生処理とは別に、例えば、ガスセンサ48,50の感度が著しく低下した場合、並びに、選択透過膜60,62、仕切部材52,54及び筐体18の内壁等が著しく汚染した場合等の任意の場合において、以下のようにしてガスセンサ48,50の再生処理を行なう。すなわち、被験者等によって、再生ボタン36及びUVランプ点灯ボタン35が操作されると、脱離ガスを使用する再生処理が、第1の実施の形態に係る呼気センシング装置10の動作と同様にして行なわれる。脱離ガスを使用する再生処理と同時に、制御部32は、UVランプ点灯ボタン35から入力される点灯開始指示信号に従って、UVランプ64f〜64lに対して照射制御信号を出力する。UVランプ64f〜64lは、照射制御信号に従って、予め定められる一定時間電流が流されることにより、紫外線を発生させる。これによって、仕切部材52,54及び筐体18の内壁に対しては、UVランプ64f〜64hから発生された紫外線が直接照射され、選択透過膜60,62に対しては、UVランプ64f〜64hから発生されて開口部56,58を通過した紫外線が直接照射されるので、これらの仕切部材52,54、筐体18の内壁、及び、選択透過膜60,62上に残留した水分及びその他の成分等が脱離される。また、ガスセンサ48,50に対しては、UVランプ64i〜64lから発生された紫外線、及び、UVランプ64i〜64lから発生されて反射板38a〜38dにより反射された紫外線が照射されるので、ガスセンサ48,50のセンシング部82に吸着した呼気分析を妨害するおそれのあるガス成分及び被毒物質等が脱離される。上述のようにして脱離された各種成分は、脱離ガス排出部306,308から、脱離ガスとともに呼気センシング装置300の変形例の外部に排出される。
【0125】
上述したように、呼気センシング装置300の変形例においては、筐体18内部である、呼気導入部28と選択透過膜60,62の間の呼気導入室70にUVランプ64f〜64gが設けられ、選択透過膜60とガスセンサ48との間の第1センサ室72にUVランプ64i,64jが設けられ、選択透過膜62とガスセンサ50との間の第2センサ室74にUVランプ64k,64lが設けられる。そして、制御部32は、ガスセンサ48,50の汚染状態に基づいて、UVランプ64f〜64lの照射制御を行う。
【0126】
したがって、UVランプ64f〜64lにより紫外線を照射することによって、仕切部材52,54、選択透過膜60,62、及び、筐体18の内壁上に残留した各種成分、並びに、ガスセンサ48,50のセンシング部82に吸着した各種成分が脱離されるので、呼気がガスセンサ48,50に容易に到達できるとともに、ガスセンサ48,50の検出感度及び応答速度をより一層向上させることができる。また、UVランプ64f〜64lに対して通電するだけでガスセンサ48,50を高温環境下に晒すことなく上述の効果を得ることができるので、ガスセンサ48,50の再生処理がより一層簡便になり、かつガスセンサ48,50の劣化をより一層防ぐことができる。更に、装置内に組込むことが可能なUVランプ64f〜64lを使用するので、装置の小型化をより一層達成できる。
【0127】
また、例えばコストダウン等のために、仕切部材52,54及び選択透過膜60,62が紫外線を透過不可能又は透過困難に構成される場合においても、UVランプ64f〜64lを上述のように設置することにより、効率的に紫外線照射により得られるエネルギーを利用することができる。
【0128】
なお、上記第3の実施の形態の変形例においては、仕切部材52,54及び選択透過膜60,62が紫外線を透過不可能又は透過困難に構成されたが、本発明はそのような実施の形態には限定されず、仕切部材52,54及び選択透過膜60,62が紫外線を透過可能に構成されてもよい。これにより、より一層効率的に紫外線照射により得られるエネルギーを利用することができる。
【0129】
また、上記第3の実施の形態及びその変形例においては、紫外線を照射するための装置としてUVランプ64a〜64lを使用したが、本発明はそのような実施の形態には限定されず、例えば、水銀ランプ又はUV−LED(Light Emitting Diode)等を使用してもよい。
【0130】
〈作用・効果〉
本実施の形態によれば、呼気センシング装置10及びその変形例、呼気センシング装置200、並びに、呼気センシング装置300及びその変形例は、内部に呼気中の特定ガス成分を検出するためのガスセンサ48,50を備える筐体18と、筐体18内部に呼気を導入するための呼気導入部28又は呼気導入部404の混合ガス導入路416と、筐体18内部から呼気を排出するための呼気排出部24,26と、筐体18内部にガスセンサ48,50の機能を再生するための脱離ガスを流入させるための脱離ガス導入部302,304、又は、脱離ガス導入部402及び呼気導入部404と、筐体18内部から脱離ガスを排出するための脱離ガス排出部306,308と、脱離ガス導入部302,304、又は、脱離ガス導入部402及び呼気導入部404から脱離ガス排出部306,308に向けて脱離ガスを送り込む送風機310,312、又は、送風機428,430と、ガスセンサ48,50、及び、送風機310,312、又は、送風機428,430の動作を制御する制御部32とを含む。
【0131】
このように、送風機310,312、又は、送風機428,430により、脱離ガス導入部302,304、又は、脱離ガス導入部402及び呼気導入部404から、脱離ガス排出部306,308に向けて脱離ガスを送り込むことによって、その風力により、ガスセンサ48,50に吸着した呼気分析を妨害するおそれのあるガス成分及び被毒物質等が脱離されるので、ガスセンサ48,50の検出感度及び応答速度をより一層向上させることができる。また、送風機310,312、又は、送風機428,430により脱離ガスを送り込むだけでガスセンサ48,50を高温環境下及び光に晒すことなく上述の効果を得ることができるので、ガスセンサ48,50の再生処理が簡便になり、かつガスセンサ48,50の劣化を防ぐことができる。更に、送風機310,312、又は、送風機428,430による風力を有効利用して脱離された各種成分を排出させるので、脱離された各種成分をより一層速やかに排出して再生処理に必要な時間を短縮することができるとともに、脱離された各種成分を装置外部へ排出するためのファン等の構成を設ける必要がなくなり、装置の小型化をより一層達成できる。
【0132】
また、制御部32は、ガスセンサ48,50、仕切部材52,54及び選択透過膜60,62等の汚染状態に基づいて、送風機310,312、又は、送風機428,430の動作を制御する。このように、ガスセンサ48,50等の汚染状態に応じて、ガスセンサ48,50に吸着した呼気分析を妨害するおそれのあるガス成分及び被毒物質等が脱離されるので、ガスセンサ48,50の検出感度及び応答速度をより一層効率良く向上させることができる。
【0133】
なお、上記実施の形態では、制御部32は、再生ボタン36から入力される再生処理開始指示信号に従って各再生処理の動作を制御したが、本発明はそのような実施の形態には限定されない。例えば、制御部32は、常時A/D変換器を経て処理回路に入力されるガスセンサ48,50の検出値を監視し、ガスセンサ48,50の検出値が予め定められる一定値以下となることにより、ガスセンサ48,50の感度が低下した、又は、ガスセンサ48,50に到達するガス量が低下したと判定したときに、自動的に各再生処理の動作を制御する構成であってもよい。また、制御部32は、予め定められる一定時間経過後に、自動的に各再生処理の動作を制御する構成であってもよい。
【0134】
また、上記実施の形態では、被験者等の利用者は、呼気分析開始前に脱離ガスを使用する通常のガスセンサ48,50の再生処理を行なったが、本発明はそのような実施の形態には限定されず、呼気分析の終了後、又は呼気分析の開始前及び終了後ともに、通常の再生処理を行なってもよい。これにより、仕切部材52,54及び選択透過膜60,62上に残留した各種成分、並びに、ガスセンサ48,50のセンシング部82に吸着した、分析対象ガスを含む各種成分を脱離させることができるので、より正確な呼気分析が可能になる。
【0135】
また、上記実施の形態では、ガスセンサ48,50が2つ設けられる構成であったが、本発明はそのような実施の形態には限定されない。例えば、第1センサ室72及び第2センサ室74のうちいずれか一方が設けられ、ガスセンサ48,50のいずれか一方によって呼気分析が行なわれる構成であってもよい。
【0136】
また、上記実施の形態では、ガスセンサ48,50の特定ガス成分に対する検出感度及び検出精度を向上させるために選択透過膜60,62が設けられたが、本発明はそのような実施の形態には限定されず、選択透過膜60,62が設けられていなくてもよい。
【0137】
また、上記第2の実施の形態では、脱離ガスを使用する再生処理を行うための構成とともに囲い部材204が設けられ、上記第3の実施の形態では、脱離ガスを使用する再生処理を行うための構成とともにUVランプ64が設けられたが、本発明はそのような実施の形態には限定されず、例えば、脱離ガスを使用する再生処理を行うための構成とともに囲い部材204及びUVランプ64が設けられる構成であってもよい。
【0138】
また、上記実施の形態では、ガスセンサ48,50の分析対象ガスとして呼気を用いたが、本発明はそのような実施の形態に限定されない。例えば、分析対象ガスが、生体情報取得用として呼気の他に皮膚ガス又は体臭ガス等であってもよいし、環境情報取得用として、自動車の排気ガス、工場近傍の大気中に含まれる大気汚染ガス、又は、活火山近傍の大気中に含まれる火山性ガス等であってもよい。
【0139】
今回開示された実施の形態は単に例示であって、この発明が上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。この発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含む。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る呼気センシング装置の斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る呼気センシング装置の内部構成を示す水平断面図である。
【図3】ガスセンサ素子の構成の一例を概略して示す図である。
【図4】センシング部における表面修飾の様子を模式的に示す図である。
【図5】ガスセンサの双方に設けられる、ガスセンサ素子の抵抗変化を測定するための測定回路の構成を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る呼気センシング装置の変形例を示す斜視図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る呼気センシング装置の内部構成を示す水平断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る呼気センシング装置の斜視図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る呼気センシング装置の内部構成を示す水平断面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る呼気センシング装置の斜視図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る呼気センシング装置の内部構成を示す水平断面図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係る呼気センシング装置の変形例の内部構成を示す水平断面図である。
【符号の説明】
【0141】
10,200,300 呼気センシング装置
18 筐体
20 表示部
22,432,434 ガス排出部
23,431,433 ガス排出口
24,26 呼気排出部
25,27 呼気排出口
28,404 呼気導入部
30,415 呼気導入口
32 制御部
34 測定開始ボタン
35 UVランプ点灯ボタン
36 再生ボタン
38 反射板
39 マウスピース
40,42 センサ基板
48,50 ガスセンサ
52,54,401 仕切部材
56,58 開口部
60,62 選択透過膜
64 UVランプ
70 呼気導入室
72 第1センサ室
74 第2センサ室
76,422,436,438 開閉弁
202 本体
204 囲い部材
306,308 脱離ガス排出部
302,304,402 脱離ガス導入部
310,312,428,430 送風機
406,408,418 脱離ガス導入路
412,420 三方弁
414 呼気導入路
416 混合ガス導入路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にガス中の特定ガス成分を検出するためのセンサを備える筐体と、
前記筐体内部にガスを導入するためのガス導入部と、
前記筐体内部からガスを排出するためのガス排出部と、
前記筐体内部に前記センサの機能を再生するための脱離ガスを流入させるための脱離ガス導入部と、
前記筐体内部から前記脱離ガスを排出するための脱離ガス排出部と、
前記脱離ガス導入部から前記脱離ガス排出部に向けて前記脱離ガスを送り込む脱離ガス送風再生手段と、
前記センサ及び前記脱離ガス送風再生手段の動作を制御する制御手段とを含むことを特徴とするガスセンシング装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記センサの汚染状態に基づいて、前記脱離ガス送風再生手段の動作を制御することを特徴とする請求項1に記載のガスセンシング装置。
【請求項3】
前記脱離ガスは、前記特定ガス成分とは異なるガスであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガスセンシング装置。
【請求項4】
前記脱離ガス排出部は、前記ガス排出部が設けられる位置とは異なる位置に設けられることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のガスセンシング装置。
【請求項5】
前記脱離ガス送風手段は、前記脱離ガス導入部から前記脱離ガス排出部に向けて、風量0.01L/min〜1000L/minで脱離ガスを送り込むことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載のガスセンシング装置。
【請求項6】
前記脱離ガス送風手段は、ファンであり、
前記ファンは、前記脱離ガス導入部から前記脱離ガス排出部に向けて、風量0.05L/min〜10L/minで脱離ガスを送り込むことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載のガスセンシング装置。
【請求項7】
前記センサは、カーボンナノチューブの集合体からなるセンシング部を含むことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載のガスセンシング装置。
【請求項8】
前記センサにより検出される値を補正するための補正用センサを更に含み、
前記制御手段は、前記補正用センサの検出結果に基づいて、前記センサにより検出される値の補正を行なうことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載のガスセンシング装置。
【請求項9】
前記筐体の外形に沿って形成され、かつ、前記装置周辺の電磁波を吸収して発熱する電波吸収体を含む囲い部材を更に含み、
前記囲い部材は、前記筐体の周囲が、前記囲い部材によって外方から密着して囲まれるように着脱可能に構成されることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1つに記載のガスセンシング装置。
【請求項10】
前記筐体、前記ガス導入部、前記ガス排出部、前記脱離ガス導入部及び前記脱離ガス排出部は、導熱性を有する材料から構成されることを特徴とする請求項9に記載のガスセンシング装置。
【請求項11】
前記囲い部材において発生する熱を電力に変換する熱電変換素子と、
前記熱電変換素子により変換された電力を蓄積する充電池とを更に含むことを特徴とする請求項9又は請求項10に記載のガスセンシング装置。
【請求項12】
前記筐体内部に設けられ、紫外線を照射するための紫外線照射手段を更に含み、
前記制御手段は、前記センサの汚染状態に基づいて、前記紫外線照射手段の動作を制御することを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか1つに記載のガスセンシング装置。
【請求項13】
前記紫外線照射手段から照射される紫外線を前記センサに向けて反射するための反射手段を更に含むことを特徴とする請求項12に記載のガスセンシング装置。
【請求項14】
前記ガス導入部と前記センサとの間に設けられ、前記ガス導入部から導入されるガス中の前記特定ガス成分を優先的に通過させる選択透過膜を更に備え、
前記選択透過膜は、前記紫外線を透過可能に構成されることを特徴とする請求項12又は請求項13に記載のガスセンシング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−25717(P2010−25717A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186722(P2008−186722)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】