説明

ガスタービンの部分負荷運転条件のための方法及びシステム

【課題】圧縮機(110)、燃焼器(120)及びタービン(130)を有するガスタービンシステム(100)を部分負荷で運転するための方法及びシステムを提供する。
【解決手段】本方法及びシステムは、燃焼器(120)に対する燃料流量を低下させることと、燃焼器(120)に対する空気流量を低下させるために圧縮機(110)から空気を抽出することと、抽出した空気をタービン(130)に又は燃焼器以外(120)のガスタービンシステム(100)の部品に戻すこととを含むことができる。圧縮機(110)から空気を抽出することは、燃焼器(120)内の燃焼温度を上昇させる。燃焼温度を上昇させることは、燃焼排気ガスを所定のレベル以下に維持し、安定燃焼を維持し、かつタービンターンダウン値を拡大する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、総括的にはガスタービンに関し、より具体的には部分負荷運転時にガスタービンターンダウン値を拡大するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは一般的に、ピーク及びベース負荷運転において高い効率を有する。しかしながら、この効率は一般的に、部分負荷運転時に低下する。タービン運転及び排気エミッション順守は、そのようなより低負荷時に問題となる可能性がある。具体的には、タービンにおける負荷を減少させることすなわち「ターンダウン」は一般的に、燃焼器に対する燃料流量を低下させることによって達成することができる。しかしながら、この燃料流量の低下は、空気−燃料混合気をより希薄にして、燃焼温度が低下するので燃焼を持続させることがより大きな問題となる。不安定燃焼は、過度のガスエミッションレベル及び機械的不安定性を招くおそれがある。そのような不安定性は、場合によってはガスタービンシステムの要素を総じて損傷させるおそれがある。エミッション順守を維持した状態で、全負荷の約40%〜約30%の典型的なターンダウン値を期待することができるのが好ましい。
【特許文献1】米国特許第7219040号明細書
【特許文献2】米国特許第6748745号明細書
【特許文献3】米国特許第5896741号明細書
【特許文献4】米国特許第5581996号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、ガスタービン部分負荷運転条件のための方法及びシステムの改良に対する要望が存在する。改良型の方法及びシステムは、全体システム効率を維持するか又は向上させながらエミッション順守の範囲内でガスタービンのターンダウン値を拡大することができるのが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従って、本出願は、圧縮機、燃焼器及びタービンを有するガスタービンシステムを部分負荷で運転する方法を提供する。本方法は、燃焼器に対する燃料流量を低下させるステップと、燃焼器に対する空気流量を低下させるために圧縮機から空気を抽出するステップと、抽出した空気をタービンに又は燃焼器以外のガスタービンシステムの部品に戻すステップとを含むことができる。圧縮機から空気を抽出するステップは、燃焼器内の燃焼温度を上昇させる。燃焼温度を上昇させるステップは、燃焼排気ガスを所定のエミッション順守レベルのような所定のレベル以下に維持する。
【0005】
本出願はさらに、ガスタービンシステムについて記述する。本ガスタービンシステムは、圧縮機吐出口を備えた圧縮機と、該圧縮機と連通した燃焼器と、該燃焼器と連通したタービンとを含むことができる。圧縮機吐出口抽気は、圧縮機吐出口からタービンまで延びて、部分負荷運転時に圧縮機吐出口から空気を抽出しかつタービンに戻すことができる。
【0006】
本出願はさらに、ガスタービンシステムについて記述する。本ガスタービンシステムは、圧縮機と、該圧縮機と連通した燃焼器とを含むことができる。圧縮機は、部分負荷運転時に該圧縮機からの空気を抽出することができるようにする圧縮機吐出口バルブを含むことができる。
【0007】
本出願のこれらの及びその他の特徴は、幾つかの図面及び特許請求の範囲と併せて以下の詳細な説明を精査することにより、当業者には明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、幾つかの図全体にわたって同じ参照符号が同様の要素を表している図面を参照すると、図1は、ガスタービンシステム100の実施例の概略図である。一般的に記述すると、ガスタービンシステム100は、圧縮機110、幾つかの缶125を備えた燃焼器120、及びタービン130を含むことができる。ガスタービンシステム100は、圧縮機110内で外気を加圧する。外気は次に、燃焼器120に送給され、燃焼器120において、外気は、燃料流を燃焼させて高温燃焼ガスを生成するために使用される。高温燃焼ガスは、タービン130に送給され、タービン130おいて、高温燃焼ガスは膨張して高温ガス通路内の幾つかのブレードを介して機械エネルギーとなる。タービン130及び圧縮機120は一般的に、共通のシャフト140に連結され、このシャフト140は、発電機又はその他の形式の負荷150に連結することができる。ガスタービンシステム100の負荷は、負荷センサ155によって測定することができる。負荷センサ155は、従来型の設計のものとすることができる。ガスタービンシステム100は、乾式低NOx(DLN)燃焼システム又はいずれかの形式の燃焼システムとすることができる。ガスタービンシステム100は、複合サイクル発電プラント又はその他の形式の発電装置の一部とすることができる。
【0009】
エミッション順守レベルは、立地、発電装置の形式、運転条件、及びその他の変数に従って変更することができる。本明細書の目的では、エミッション順守は、超えてはならないガスタービンエミッションにおける所定の限界値を意味する。エミッション順守は一般的に、NOx及びCOxエミッションとその他の種類の副生成物とに焦点を当てている。
【0010】
部分負荷運転時にエミッション順守の範囲内に留める1つの公知の方法は、圧縮機110の周りで入口ガイドベーンの角度を小さくし、また燃料ストローク基準を考慮しながら入口ブリード加熱流を作動させることである。そのような制御システムは、本出願と同一出願人の「高出力ガスタービンのモデルベース制御方法及びシステム」の名称の米国特許第7219040号に記載されている。
【0011】
現存のタービン設計に加えて、別のエミッション順守方法は、加圧吐出空気が燃焼器120に到達する前に、該加圧吐出空気の一部を圧縮機110から抽気(ブリード)することである。具体的には、燃焼器120への燃料流量は、ターンダウン時に低下させることができる。燃料流量の低下は、空気/燃料混合をより希薄にしかつ燃焼器120内の温度を低下させる。圧縮機空気の一部をブリードすることはまた、燃焼器120内の温度を強制的に上昇させて、ガスタービンシステム100を総じてその意図した燃料混合気で運転することを可能にする。
【0012】
燃焼器120内の温度を上昇させるのに加えて、このブリード空気を使用して、既存の圧縮機抽気と同様の方法で高温ガス通路内のタービン130の部品を冷却することができる。具体的には、現存の抽気に加えて、ガスタービンシステム100はまた、幾つかの冷却圧縮機段抽気160を有することができる。例えば、第9段圧縮機抽気160は、第2及び第3タービン段を冷却するのに使用することができるが、第13段、第17段及び第18段からの圧縮機抽気160は、タービン130の第1段、第2段及び第3段を冷却するために使用することができる。本明細書では、その他の抽気位置及び組合せも使用することができる。
【0013】
この実施例では、圧縮機110の圧縮機吐出口175からの圧縮機吐出口抽気170もまた、上記の圧縮機段抽気160と同様の方法でタービン130の早期段を冷却するために使用することができる。圧縮機段抽気170は、圧縮機吐出口175からタービン130の第1又は第2段まで延びることができる。本明細書では、その他の位置も使用することができる。
【0014】
それに代えて、圧縮機吐出口抽気170のエネルギーは、熱交換器180又はその他の形式の熱伝達装置を介して総じてガスタービンシステム100又は発電プラントに関するあらゆる所望の運転のために使用することができる。熱交換器180は、従来型の設計のものとすることができる。例えば、熱交換器180は、上記のように圧縮機吐出口175及び複合サイクル発電プラントの他の要素と連通していてもよい。
【0015】
抽気160、170の作動は、排気温度センサ190により実行することができる。排気温度センサ190は、タービン130からの排気流と連通して、該排気流内の出力温度を検知するようにすることができる。排気温度センサ190は、従来型の設計のものとすることができる。排気温度センサ190は、抽気流量制御バルブ200と交信状態にすることができる。抽気流量制御バルブ200は、圧縮機吐出口抽気170の空気を、タービン内を冷却するためにタービン130に向けてか或いは複合サイクル発電プラント又はそれ以外で使用するために熱交換器180に向けてかのいずれかに向けて送る従来型の三方弁とすることができる。タービン130の高温ガス通路内の部品に関して、さらに別のタービン温度センサ195を使用することができる。本明細書では、その他のセンサも使用することができる。
【0016】
圧縮機段抽気160の周りに同様の流量制御バルブ165を配置して、圧縮機段抽気をまた、燃焼器120の温度を制御するために又はその他の目的のために使用することができるようにすることができる。例えば、圧縮機抽気160は、部分負荷運転時に上記のようにタービン130の様々な段を冷却するためにだけでなく燃焼器120の安定性のために使用することができる。具体的には、圧縮機段抽気160は、部分負荷運転時に、タービン130又はその他を冷却すると同時に燃焼器120に空気を送るのを制限するように使用することができる。抽気流量制御バルブ165は、上記のように三方弁とすることができ、また熱交換器180又は同様の形式の装置と連通して、圧縮機段抽気160の熱及びエネルギーがまた上記のような複合サイクル発電プラントのその他の要素に伝達状態になることができるようにすることができる。
【0017】
抽気160、170の量、位置及び温度は、コントローラ210と共同して温度センサ190、195によって測定することができる。コントローラ210は、あらゆる形式のプログラム可能マイクロプロセッサとすることができる。1つよりも多いコントローラ210を使用することができる。コントローラ210は、特性パラメータ、曲線、数式、参照テーブル、その他のデータ構造だけでなく、温度センサ190、195からの、負荷センサ155からの、及び他の種類の入力からの直接のフィードバックを保存することができる。具体的には、コントローラ210は、総じて排気温度、タービン130の高温ガス通路内の部品の温度、及び/又はガスタービンシステム100の負荷に基づいて、供給源の位置及びボリューム並びに抽気160、170の送給先を選択的に調整することができる。コントローラ210はまた、燃焼器120内の特定の缶125を完全に活動停止させることができる。燃焼器缶125を活動停止させることにより、ターンダウン値をさらに拡大することができる。コントローラ210は、缶125の1以上の活動停止を行いまた抽気160、170を変更して、所定の排気温度を維持しかつガスタービンシステム100をエミッション順守の範囲内に維持することができる。
【0018】
図1に示すように、タービン130への排気ガス再循環220は一般的に、全負荷運転において特定のエミッションを低減するために使用することができる。図2は、部分負荷運転の場合での排気ガス再循環220の使用を示す。具体的には、排気ガス再循環は、圧縮機110及び/又は燃焼器120に対して供給することができる。排気ガス再循環220を使用して圧縮機110に送られる空気中の酸素量を制御して、排気ガスの熱及びエネルギーを利用することによって燃焼器120の温度を上昇させるようにすることができる。それに代えて、排気ガス再循環220は、タービン130の早期段内の作動に応じて決まる選択的な基準でタービン130に送給することができる。排気ガス再循環220は、圧縮機110又はタービン130の入口、吐出口又はいずれかの段に、或いはいずれかの燃焼器位置に送給することができる。排気ガス再循環220は、運転状況に基づいて選択的に送給することができる。
【0019】
使用中に、これらの様々な技術的方法の組合せは、総じてガスタービン100のターンダウン値を、燃料消費量を約9パーセント(9%)又はそれ以上減少させた状態で全負荷の約14.3%又はそれ以下に低下させることができる。これらのターンダウン値は、吸入空気量を制御することにより燃焼器120の温度を最少作動限界値以上に維持することによって達成することができる。部分負荷運転のための空気は、圧縮機吐出口175及び圧縮機段からの選択的抽気160、170によって、作動している圧縮機缶125の数を減少させることによって、並びに/或いは排気ガスを燃焼器120、圧縮機110及び/又はタービン130に選択的に戻すことによって制御することができる。これら技術的方法の様々な組合せもまた、使用することができる。同様に、圧縮機抽気160、170の使用は、タービン130の高温ガス通路内の部品の温度を低下させて、部品寿命を延長する。抽気160、170の熱及びエネルギーは、全体プラント熱効率を高めるために又は他の目的のために、さらに熱交換器180に送給することができる。
【0020】
以上の説明は本出願の好ましい実施形態のみに関連していること、また特許請求の範囲及びその均等物によって定まる本発明の一般的な技術思想及び技術的範囲から逸脱することなく当業者が本明細書において多くの変更及び修正を行うことができることは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本明細書に説明するガスタービンシステムの概略図。
【図2】本明細書に説明するガスタービンシステムの別の実施形態の概略図。
【符号の説明】
【0022】
100 ガスタービンシステム
110 圧縮機
120 燃焼器
125 燃焼器缶
130 タービン
140 シャフト
150 負荷
155 負荷センサ
160 圧縮機段抽気
165 圧縮機段抽気バルブ
170 圧縮機吐出口抽気
175 圧縮機吐出口
180 熱交換器
190 排気温度センサ
195 タービン通路温度センサ
200 圧縮機吐出口抽気制御バルブ
210 コントローラ
220 排気ガス再循環

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(110)、燃焼器(120)及びタービン(130)を有するガスタービンシステム(100)を部分負荷で運転する方法であって、
前記燃焼器(120)に対する燃料流量を低下させるステップと、
前記燃焼器(120)に対する空気流量を低下させるために前記圧縮機(110)から空気を抽出するステップと、
前記抽出した空気を前記タービン(130)に又は前記燃焼器以外(120)の前記ガスタービンシステム(100)の部品に戻すステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記圧縮機(100)から空気を抽出するステップが、該圧縮機(100)の吐出口(175)から空気を抽出するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記燃焼器(120)に対する空気流量を低下させるために前記圧縮機(110)から空気を抽出するステップが、該燃焼器(120)内の燃焼温度を上昇させるステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記燃焼器(120)内の燃焼温度を上昇させるステップが、該燃焼器(120)の燃焼排気ガスを所定のレベル以下に維持するステップを含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記抽出した空気を前記タービン(130)に戻すステップが、該タービン(130)を冷却するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記抽出した空気を前記燃焼器(120)以外の前記ガスタービンシステム(100)の部品に戻すステップが、該抽出した空気を熱交換器(180)に導くステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記圧縮機(110)から空気を抽出するステップが、1以上の圧縮機段抽気(160)を含み、当該方法が、部分負荷運転時に前記1以上の圧縮機段抽気(160)を前記タービン(130)に導くステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記抽出する空気のボリュームが、前記ガスタービンシステム(100)の負荷、前記タービン(130)からの排気温度又は前記タービン(130)内の温度に応じて変化する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
圧縮機(110)と、
前記圧縮機(110)と連通した燃焼器(120)と
を含み、前記圧縮機(110)が、部分負荷運転時に該圧縮機(110)からの空気を抽出することができるようにする圧縮機吐出口バルブ(200)を含む、ガスタービンシステム(100)。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−62981(P2009−62981A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223086(P2008−223086)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】