説明

ガスバリアフィルム積層体

【課題】ガスバリアフィルム層間の気泡及び異物の発生を著しく低減するとともにガスバリア性及び層間の密着性にも優れたガスバリアフィルム積層体に関する。
【解決手段】接着剤層を介して積層された少なくとも2層のガスバリアフィルム層を有し、40℃、90%RH条件下での透湿度が0.02g/m2/24hr以下である、ガスリアフィルム積層体であって、上記ガスバリアフィルム層が、基材フィルムと、該基材フィルムの少なくとも一方の面に順次形成されたアンカーコート層及び無機薄膜層からなる少なくとも一層の構成単位層とを有し、かつ上記ガスバリアフィルム層の間に存在する直径0.5mm以上の気泡及び直径0.5mm以上の異物の数が100cm2当り合計で3個以下である、ガスバリアフィルム積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性、外観及び層間の接着性に優れたフィルム積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装材料などに用いられるガスバリア性フィルムを用いたガスバリアフィルム積層体として、例えば、水蒸気バリア性の向上を目的として透明樹脂層/酸化物薄膜層/吸湿性樹脂層のそれぞれの層を接着層を介してラミネートしたもの(特許文献1参照)や、耐熱性及びガスバリア性の向上を目的として樹脂層を2層以上積層し、層間にゾル−ゲル法により得られる有機−無機ハイブリッド層を積層したもの(特許文献2参照)等がある。
このように、ガスバリア性フィルムを接着剤層を介して積層する場合、加熱等により接着剤層を硬化させると、硬化反応やその後に基材や大気中の水分の影響により炭酸ガス等の各種ガスが発生し、ガスバリア性フィルムの積層間で気泡や発泡により白化状態が発生し、外観上の問題が生じる。この量が多いとガスバリア性の低下、ラミネート強度の低下の原因となる。
特にイソシアネート系の接着剤を使用する場合は硬化時に硬化反応に伴う炭酸ガス等の反応ガスが発生し易く、ガスバリアフィルムを多層に積層する場合は多量の気泡が発生する問題があった。
また、ガスバリアフィルムを多層に積層する場合は接着剤とガスバリアフィルムの界面に残った空気が気泡となり外観上問題となる問題があった。
このような問題に対し、特許文献3には、接着剤組成に着目することにより、水分の影響を抑え発泡白化や気泡混入を解消したフィルムが開示されている。
しかしながら、これらのフィルムにおいては、上記目的とする性能はある程度改善されるものの、例えば、積層体のガスバリア性、ラミネート強度(層間密着性)などについては未だ不十分であり、その改善が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−249349号公報
【特許文献2】特開2004−136466号公報
【特許文献3】特開2006−51751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ガスバリアフィルム層間の気泡及び異物の発生を著しく低減するとともにガスバリア性及び層間の密着性にも優れたガスバリアフィルム積層体に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、
(1)接着剤層を介して積層された少なくとも2層のガスバリアフィルム層を有し、40℃、90%RH条件下での透湿度が0.02g/m2/24hr以下である、ガスリアフィルム積層体であって、上記ガスバリアフィルム層が、基材フィルムと、該基材フィルムの少なくとも一方の面に順次形成されたアンカーコート層及び無機薄膜層からなる少なくとも一層の構成単位層とを有し、かつ上記ガスバリアフィルム層の間に存在する直径0.5mm以上の気泡及び直径0.5mm以上の異物の数が100cm2当り合計で3個以下である、ガスバリアフィルム積層体、
【0006】
(2)(a)基材上に、順次アンカーコート層と無機薄膜層とからなる構成単位層を少なくとも一層形成し、ガスバリアフィルム層を形成する工程、(b)得られたガスバリアフィルム層を、接着剤層を介し少なくとも2層積層する工程、及び(c)ガスバリアフィルム層を積層した後、あるいは積層すると同時に、1000Pa以下の真空雰囲気下で加熱するか、又はエネルギー線を照射する工程、を有する、40℃、90%RH条件下での透湿度が0.02g/m2/24hr以下であるガスバリアフィルム積層体の製造方法、及び
(3)(a)基材上に、順次アンカーコート層と無機薄膜層とからなる構成単位層を少なくとも一層形成し、ガスバリアフィルム層を形成する工程、及び(b)得られたガスバリアフィルム層を、エポキシ系樹脂からなる接着剤層を介し少なくとも2層積層する工程、を有する40℃、90%RH条件下での透湿度が0.02g/m2/24hr以下であるガスバリアフィルム積層体の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、ガスバリアフィルム層間の気泡及び異物の発生を著しく低減するとともに、ガスバリア性及び層間の密着性にも優れたガスバリアフィルム積層体が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
[ガスバリアフィルム積層体]
本発明のガスバリアフィルム積層体は、接着剤層を介して積層された少なくとも2層のガスバリアフィルム層を有するガスバリアフィルム積層体であって、上記ガスバリアフィルム層が、基材フィルムと、該基材フィルムの少なくとも一方の面に順次形成されたアンカーコート層及び無機薄膜層からなる少なくとも一層の構成単位層とを有し、かつガスバリアフィルム層の間に存在する直径が0.5mm以上の気泡及び直径が0.5mm以上の異物の数が100cm2当り合計で3個以下であるものである。
本発明のガスバリアフィルム積層体は、ガスバリアフィルム層を、接着剤層を介し少なくとも2層積層したものである。
上記接着剤層の付与方法としては、ガスバリアフィルム層面に接着剤を塗布する方法、あるいは接着性フィルムをガスバリアフィルム間に積層する方法がいずれも使用できる。
【0009】
接着剤層に使用する接着剤としては、熱硬化型接着剤、エネルギー線硬化系接着剤等を使用することができる。
上記熱硬化系接着剤としては、例えばポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エーテル系樹脂、フェノール系樹脂、フラン系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。上記のうち、好ましくは、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びアクリル系樹脂から選択される少なくとも1種である。さらに気泡の発生を少なくする点から、エポキシ系樹脂、又はアクリル系樹脂が好ましく、エポキシ系樹脂がより好ましい。
具体的な接着剤の配合例としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート成分、エポキシ(メタ)アクリレート成分、脂環式(メタ)アクリレート成分、及び必要に応じて含有される重合開始剤などからなるものが挙げられる。
【0010】
上記接着剤は熱硬化系樹脂に限定されることはなく、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルアミドイミド等の熱可塑性樹脂であってもよい。
上記接着剤樹脂は、単独で使用することもできるが、2種以上組み合わせて使用することもできる。
接着剤層としては、無機薄膜のガスバリア性を向上させる点から厚み1μm換算での40℃、90%RHの透湿度が1000g/m2/24hr以下となるものが好ましい。さらに好ましくは300g/m2/24hr以下である。
【0011】
また、無機薄膜のガスバリア性を向上させる点から、接着剤層の酸素透過度が、25℃、90%RHにおいて、好ましくは1000ml/m2/24hr/MPa以下、より好ましくは500ml/m2/24hr/MPa以下、更に好ましくは100ml/m2/24hr/MPa以下である。上記観点から、本発明においては、ガスバリアフィルム層の水蒸気透過率(透湿度)が、40℃、90%RH条件下で0.2g/m2/24hr以下であり、かつ接着剤層の酸素透過度が上記範囲の値であることが好ましい。
更に、接着剤層は、メタキシレンジアミン骨格、パラキシレンジアミン骨格、ビスフェノール骨格などの芳香族環を多数有し、接着剤層にガスバリア性を持たせることのできる接着剤を用いることが好ましい。更には、ガスバリア性フィルム積層体形成後に、気泡の発生を抑制する点から、エポキシ系樹脂を接着剤として用いることが好ましい。
【0012】
ガスバリア性を有し、気泡の生成を抑制するという利点を持つエポキシ系樹脂の例としては、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、パラアミノフェノールから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラックから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、及レゾルシノールから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂などが挙げられる。中でも、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、及び/又はビスフェノールFから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂がガスバリア性の点で更に好ましい。
上記エポキシ樹脂は、本発明の効果の点から、接着剤層中に50質量%以上含有されることが好ましく、より好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
【0013】
エポキシ樹脂の硬化剤としては、本発明の効果の点から、好ましくは下記の(A)と(B)の反応生成物、(A)と(C)の反応生成物、又は(A)、(B)及び(C)の反応生成物が挙げられ、これらは単独でも、また2種以上組み合わせて使用することができる。
(A)メタキシレンジアミン又はパラキシレンジアミン
(B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物
(C)炭素数1〜8の一価カルボン酸及び/又はその誘導体
【0014】
具体的には、メタキシリレンジアミン又はパラキシリレンジアミン、及びこれらを原料とするエポキシ樹脂又はモノグリシジル化合物との変性反応物、炭素数2〜4のアルキレンオキシドとの変性反応物、エピクロロヒドリンとの付加反応物、これらのポリアミン類との反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応生成物、これらのポリアミン類との反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物と、炭素数1〜8の一価のカルボン酸及び又はその誘導体との反応生成物などが挙げられる。
【0015】
また、水性接着剤として、ポリオレフィン系ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるポリオレフィン系ポリオールを主骨格とするアニオン系水性ポリウレタンエマルジョンを主成分とし、その他の成分としてアミン類と水溶性高沸点有機溶媒等を含有するものを使用することもできる。このような水性接着剤はポリオレフィン系樹脂材料やポリエステル系樹脂材料の接着に有効である。また、上記水性接着剤は、必要に応じて、ポリエーテル系ポリウレタンエマルジョン、ポリエステル系ポリウレタンエマルジョン、ポリカーボネート系ポリウレタンエマルジョン、ポリアクリル酸エステルエマルジョン、エチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョン、スチレン・ブタジエン共重合体エマルジョン、ポリ酢酸ビニルエマルジョン等の水性プラスチックエマルジョンから選ばれた1種または2種以上を含有することもできる。
【0016】
接着剤層の粘度は、接着剤組成の樹脂配合による調整以外に、接着剤ワニスの塗工時の度、時間により残存溶媒量を調整したり、熱硬化系樹脂の場合はその半硬化状態を制御して調整することができる。
また、接着剤層に無機粒子や有機粒子を混合することにより接着剤層の樹脂混合時に取り込まれたガスや、反応時に発生するガスを微小分散させ、接着剤層内の気泡を、例えば0.01μm以下にし外観良好なガスバリア積層体とすることができる。
具体的には、結晶性シリカ、非晶性シリカ、水酸化アルミ ニウム、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、三酸化アンチモン等の無機粒子やシリコーンパウダー等の有機粒子を添加して調製することが可能である。上記無機粒子及び有機粒子は、1種で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて使用することもできる。上記無機粒子としては、汎用性、安定性の点からシリカ粒子が好ましく用いられる。
【0017】
耐熱水性、耐凝集破壊性の点から、無機粒子又は有機粒子の平均粒子径は、好ましくは.005〜50μm、より好ましくは0.01〜20μm、更に好ましくは0.05〜10μmである。また、接着剤中の無機粒子及び/又は有機粒子の含有量は、消泡性、接着強度の点から、0.01〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜10質量%である。
接着剤には、上記のほか、必要に応じて、硬化促進剤、カップリング剤、無機イオン吸着剤、重合開始剤、粘着付与剤、湿潤剤等の添加剤を適宜含有することができる。
接着剤からなる接着剤層の厚さは、接着強度、加工性の点から、0.2〜30μmであることが好ましく、0.5〜10μmであることがより好ましい。
【0018】
また、接着性フィルムを使用する場合、接着性フィルム単独で使用する場合は、加工性の点から、その厚さは1〜100μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましい。また、ベースフィルムを用いる場合はその厚さはバリア性の点から、3μm以上、更には5〜100μmであることが好ましく、ベースフィルムの両面に接着剤層を形成した状態で6〜160μm、更には10〜100μm程度が好ましい。この際、ベースフィルム両面の接着剤層の厚みは同じでも異なっていてもよい。
上記接着性フィルムとしては、ガスバリアフィルムの熱膨張係数差から生ずる熱応力を低減するために低弾性率のものであることが好ましく、動的粘弾性測定装置を用いて測定した場合の貯蔵弾性率が25℃で10〜2000MPaであり、260℃で3〜50MPaのものであることが好ましい。
上記接着性フィルムとして、具体的には、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ基含有アクリル共重合体、フェノール系樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、及びエポキシ樹脂硬化剤からなる半硬化状態のエポキシ熱硬化系樹脂から選ばれる少なくとも一種からなるものが挙げられる。
【0019】
本発明においては、硬化の際にフィルム間に発生する気泡の脱気を良くするため、接着剤層又は接着性フィルムの表面粗度Rmsは0.05〜40μmとすることが好ましく、0.10〜20μmとすることがより好ましく、0.2〜20μmとすることが更に好ましい。上記表面粗度Rmsの値は、例えば、無機粒子や有機粒子の添加、2種類以上の樹脂混合、機械的な凹凸加工などの方法により達成することができ、後述の方法で測定することができる。
【0020】
本発明において、ガスバリアフィルム積層体としては、少なくとも2層の、好ましくは少なくとも3層のガスバリアフィルム層を積層すればよいが、加工性の点から、ガスバリアフィルム層を構成する無機薄膜あるいは保護層面に前記接着剤層(接着剤あるいは接着性フィルム)を設けて積層することが好ましく、該接着剤層と、積層するガスバリアフィル層の基材面とを貼り合わせて積層することがより好ましい。
本発明のガスバリアフィルム積層体は、ガスバリアフィルム層間に、その最大部分の直径が0.5mm以上の気泡及び/又は異物を、全く含まないか、あるいは100cm2当り3個以下含有するものである。気泡又は異物の直径は、実態顕微鏡などの方法で測定することができる。なお、ここで異物とは、例えば、樹脂粉、金属粉等をいう。また、異物が気泡を巻き込む場合は気泡の大きさを直径として求める。
【0021】
また、本発明においては、そのような気泡及び異物の数は、ガスバリアフィルム積層体100cm2当り3個以下であるが、外観、光学特性などの点から、その数は2個以下であることが好ましく、より好ましくは1個以下、更に好ましくは0.1個以下である。 特に、本発明においては、積層体が少なくとも3層からなる場合は、気泡及び異物の数は、ガスバリアフィルム積層体100cm2当り2個以下であることが好ましい。
なお、本発明において、上記気泡あるいは異物が存在する「ガスバリアフィルム層の間」とは、複数のガスバリアフィルム層により形成される複数の層間全てに存在する気泡及び異物の総数をいう。
【0022】
本発明においては、気泡及び/又は異物を上記範囲内に制御するために、種々の方法が可能であり特に制限はされないが、好ましくは(a)接着剤層として、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等を用いる方法、(b)ガスバリアフィルム層を積層した後あるいは積層すると同時に、1000Pa以下の真空雰囲気下で、加熱するか又はエネルギー線を照射する方法、(c)真空雰囲気下で仮圧着後、大気圧以上の圧力を加え加熱する方法、(d)接着剤層に有機微粒子や無機微粒子を配合する方法、(e)上記方法に更に、接着剤層の表面粗度(Rms)を特定の値に調整する方法、等の方法を採ることができる。
上記(a)、(d)及び(e)の方法については、前述の通りである。上記(b)真空雰囲気下での積層は、ガスバリアフィルム間の気泡の発生を抑制するため、好ましくは200Pa以下、より好ましくは20Pa以下、更に好ましくは10Pa以下の真空雰囲気下において、加熱又はエネルギー線を照射することにより行うことが好ましい。
【0023】
上記方法(a)及び(b)における加熱は、ガスバリアフィルム層間の気泡の発生を抑制する観点から、その温度は、30〜250℃で行うことが好ましく、より好ましくは50〜200℃であり、更に好ましくは80〜180℃である。また、上記加熱の際には、接着性の点から、加圧して行うことが好ましい。加圧圧力としては、面圧1〜50kgf/cm2で行うことが好ましく、より好ましくは面圧5〜25kgf/cm2であり、更に好ましくは面圧10〜20kgf/cm2である。加熱・加圧の手段には特に制限はないが、例えば、密閉されていない金型中に入れ、該金型の金属板を外部から加熱することによって上記組成物を間接的に加熱せしめる。また、間接的に加熱せしめる方法としては、例えば、金属板外表面にヒーターを密着させて加熱するか、あるいは金属板に熱媒の流路を設け、ジャケット方式で蒸気、加熱オイル等によって加熱する。この金型を所定の圧力において加圧した後、冷却してガスバリアフィルム積層体を得る方法などが挙げられる。
上記(c)真空雰囲気下で仮圧着する場合は、上記(a)の真空条件で上記加圧圧力で圧着することが好ましい。
【0024】
エネルギー線としては、可視光、紫外線、電子線、放射線などの活性エネルギー線が挙げられるが、これらのうち、ガスバリアフィルム層間の気泡の発生を効率よく抑制する観点から、紫外線、電子線が好ましい。活性エネルギー線として紫外線を照射する場合には、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ等の紫外線ランプをはじめ、各種発光特性のものが特に制限なく利用でき、フィルム厚さや硬化状況等に応じて調整ができる。紫外線の照射エネルギーとしては、100〜5000mJ/cm2が好ましく、特に1000〜3000mJ/cm2が好ましい。照射エネルギーが上記範囲内であれば樹脂層の硬化が十分であり、また、生産性の面からも好ましい。
【0025】
活性エネルギー線として電子線を照射して硬化する方法は光開始剤が不要なため好ましい。また、電子線の吸収線量は、1〜200kGyの範囲内であると樹脂層の硬化が十分に進行するため好ましく、特に5〜100kGyの範囲内であると硬化が十分に進行し、かつプラスチックフィルムや樹脂層にダメージを与えることが少ないためより好ましい。吸収線量が上記範囲内であれば、樹脂層の硬化が十分であり、またプラスチックフィルムや樹脂層のダメージもなく、ガスバリア性を損なうこともない。
活性エネルギー線として電子線を照射する場合には、公知の装置をいずれも使用することができるが、電子線がプラスチックフィルムや樹脂層に与えるダメージを考慮すると、加速電圧が1kV〜200kVの電子線を照射することが好ましい。電子線の加速電圧が上記範囲内であれば、硬化深度が十分であり、得られるガスバリアフィルム積層体用基材の機械物性が低下することもない。また、100kV以下、特に50kV以下の低加速電圧の電子線を照射して樹脂層を形成することにより、ガスバリアフィルム積層体用基材の機械強度の低下を抑制することができるためより好ましい。
【0026】
本発明のガスバリアフィルム積層体を形成するガスバリアフィルム層は、基材フィルム、及び該基材フィルム上に形成される構成単位層の少なくとも一層からなる。
該基材フィルムとしては、バリア性の点から、150℃の収縮率0.01〜5%のプラスチックフィルムが好ましく、収縮率0.01〜2%のプラスチックフィルムがより好ましい。収縮率は、熱風オーブン加熱前後の寸法変化により測定することができる。
【0027】
基材フィルムの原料としては、通常の包装材料に使用しうる樹脂であれば特に制限なく用いることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン等の単独重合体または共重合体などのポリオレフィン、環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体部分加水分解物(EVOH)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、フッ素樹脂、アクリレート樹脂、生分解性樹脂等の各樹脂が挙げられる。これらの中では、フィルム強度、コストなどの点から、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリメタクリル系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルスルホン及び環状オレフィン系樹脂が好ましい。また、上記基材フィルムは、公知の添加剤、例えば、帯電防止剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、フィラー、着色剤、安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤等を含有することができる。
【0028】
上記基材フィルムとしてのプラスチックフィルムは、上記の原料を用いて成形してなるものであるが、基材として用いる際は、未延伸であってもよいし延伸したものであっても よい。また、他のプラスチック基材と積層されていてもよい。かかる基材フィルムは、従来公知の方法により製造することができ、例えば、原料樹脂を押出機により溶融し、環状ダイやTダイにより押出して、急冷することにより実質的に無定型で配向していない未延伸フィルムを製造することができる。この未延伸フィルムを一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、フィルムの流れ(縦軸)方向又はフィルムの流れ方向とそれに直角な(横軸)方向に延伸することにより、少なくとも一軸方向に延伸したフィルムを製造することができる。基材フィルムの厚さは、本発明のガスバリアフィルム積層体の基材としての機械強度、可撓性、透明性等の点から、その用途に応じ、通常5〜500μm、好ましくは10〜200μmの範囲で選択され、厚さが大きいシート状のものも含む。また、フィルムの幅や長さについては特に制限はなく、適宜用途に応じて選択することができる。
【0029】
ガスバリアフィルム層を構成する構成単位層は、アンカーコート層及び無機薄膜からなる。上記構成単位層を構成するアンカーコート層としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などの樹脂、金属、金属酸化物及び金属窒化物から選ばれる少なくとも一種からなる層を使用することができる。
アンカーコート層を形成する熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などの樹脂としては、溶剤性及び水性の樹脂がいずれも使用することができ、具体的には、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、シリコン系樹脂、アルコール性水酸基含有樹脂(ビニルアルコール系樹脂、エチレンビニルアルコール系樹脂等)、ビニル系変性樹脂、イソシアネート基含有樹脂、カルボジイミド系樹脂、アルコキシル基含有樹脂、エポキシ系樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、変性スチレン系樹脂、変性シリコン系樹脂、アルキルチタネート等を単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0030】
本発明においては、ガスバリア性の点から、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、イソシアネート基含有樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド系樹脂、アルコール性水酸基含有樹脂及びこれらの少なくとも2種の樹脂の共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を用いることが好ましい。中でもポリエステル系樹脂が好ましい。
【0031】
アンカーコート層に用いられる上記ポリエステル系樹脂は、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分を反応させることにより得ることができる。多価カルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オルトフタル酸、ジフェニルカルボン酸、ジメチルフタル酸等が例示され、多価アルコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロイレングリコール、1,3−プロイレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA等が例示される。
上記アンカーコート層を構成する樹脂の分子量は、ガスバリア性、密着性の点から、数平均分子量で、3,000〜30,000、好ましくは4,000〜28,000、更に好ましくは5,000〜25,000である。
【0032】
上記アンカーコート層には、層間の密着性向上の観点から、シランカップリング剤を添加することが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジェトキシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤等、及びそれらの混合物が挙げられる。層間の密着性の観点 から、好ましいシランカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、およびγ−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよいが、2種以上組み合わせて用いてもよい。シランカップリング剤は、密着性の点から、アンカーコート層を形成する樹脂に対して、好ましくは0.1〜80質量%、更に好ましくは1〜50質量%の割合で含有する。
【0033】
また、上記アンカーコート層には、硬化剤を含有することが好ましく、硬化剤としては、ポリイソシアネートを使用することが好ましい。具体的には、たとえばヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネートや、キシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。特に2官能以上のポリイソシアネートがバリア性向上の点から好ましい。
【0034】
上記アンカーコート層には、必要に応じて、公知の各種添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコール、水性エポキシ樹脂、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノアセテート等のエステル類、酸化防止剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料、染料、抗菌剤、滑剤、無機充填剤、ブロッキング防止剤、接着剤等を挙げる事ができる。
【0035】
また、アンカーコート層を形成する金属としては、ガスバリア性、密着性の点から、クロム、アルミニウム、珪素、ニッケル、チタン、錫、鉄、モリブデン等又はこれら2種以上の合金が好ましく挙げられる。また、金属酸化物又は金属窒化物としては、ガスバリア性、密着性の点から、上記金属の酸化物、窒化物が好ましく挙げられる。本発明においては、アンカーコート層として、上記観点から、クロム、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、チタン酸化物、ケイ素窒化物、アルミニウム窒化物、及びチタン窒化物から選ばれる少なくとも一種からなるものがより好ましく、酸化珪素及び窒化珪素からなる少なくとも一種からなるものが更に好ましい。また、アンカーコート層として、ダイアモンドライクカーボンなどの炭化水素を主体とした物質を使用することも好ましい。
【0036】
本発明のガスバリアフィルム積層体においては、上記アンカーコート層の厚さは0.1〜5,000nmであるが、密着性などの点から、0.1〜2,000nmであることが好ましく、更に、0.1〜1,000nmであることが好ましい。このアンカーコート層には、耐水性、耐久性を高めるために、エネルギー線照射による架橋処理を行う事もできる。
上記アンカーコート層の形成方法としては、公知のコーティング方法が適宜採択される。例えば、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクタコーター、スプレイあるいは刷毛を用いたコーティング方法等の方法がいずれも使用できる。また、基材フィルム、及び蒸着フィルムを樹脂液に浸漬して行ってもよい。塗布後は、80〜200℃程度の温度での熱風乾燥、熱ロール乾燥などの加熱乾燥や、赤外線乾燥などの公知の乾燥方法を用いて溶媒を蒸発させることができる。これにより、均一なコーティング層を有する積層フィルムが得られる。
【0037】
また、金属、金属酸化物及び金属窒化物から選ばれる少なくとも一種からなるアンカーコート層の形成方法としては、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等のPVD(物理的気相蒸着法)、及びCVD(化学的気相蒸着法)等の蒸着法、コーティング法などの方法がいずれも使用できるが、密着性の高い均一な薄膜が得られるという点で蒸着法が好ましい。この蒸着法には、後述の無機薄膜の形成に使用しうる方法と同様の方法がいずれも使用することができる。
基材フィルムへのアンカーコート剤の塗布性、接着性を改良するため、アンカーコート剤の塗布前に基材フィルムに通常の化学処理、放電処理などの表面処理を施してもよい。
【0038】
ガスバリアフルム層を構成する構成単位層においては、上述のアンカーコート層上に無機薄膜を形成するが、無機薄膜を構成する無機物質としては、珪素、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、錫、ニッケル、チタン、炭化水素等、あるいはこれらの酸化物、炭化物、窒化物またはそれらの混合物が挙げられるが、好ましくは珪素酸化物、珪素窒化物、アルミニウム酸化物、アルミニウム窒化物、ダイアモンドライクカーボンなどの炭化水素を主体とした物質である。特に、酸化珪素、酸化アルミニウムは、高いガスバリア性が安定に維持できる点で好ましい。上記無機物質は、1種単独で用いてもよいが、2種以上組み
合わせて用いてもよい。
【0039】
無機薄膜の形成方法としては、蒸着法、コーティング法などの方法がいずれも使用できるが、ガスバリア性の高い均一な薄膜が得られるという点で蒸着法が好ましい。この蒸着法には、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等のPVD(物理的気相蒸着法)、CVD(化学的気相蒸着法)等の方法がいずれも含まれる。
無機薄膜の厚さは、一般に0.1〜500nmであるが、好ましくは0.5〜40nmである。上記範囲内であれば、十分なガスバリア性が得られ、また、無機薄膜に亀裂や剥離を発生させることなく、透明性にも優れている。
【0040】
本発明において、上記ガスバリアフィルム層としては、上記基材フィルムと構成単位層の間に、無機薄膜を形成したものも包含される。該無機薄膜としては、前述の構成単位層を構成する無機薄膜と同様のものが使用できる。
また、上記ガスバリアフィルム層は、その最上層として保護層を有することができる。該保護層を形成する樹脂としては、溶剤性及び水性の樹脂をいずれも使用することができ、具体的には、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂系、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体、エチレンビニルアルコール系樹脂、ビニル変性樹脂、ニトロセルロース系樹脂、シリコン系樹脂、イソシアネート系樹脂、エポキシ系樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、変性スチレン系樹脂、変性シリコン系樹脂、アルキルチタネート等を単独であるいは2種以上組み併せて使用することができる。また、保護層としては、バリア性、耐摩耗性、滑り性向上のためシリカゾル、アルミナゾル、粒子状無機フィラー及び層状無機フィラーから選ばれる1種以上の無機粒子を前記1種以上の樹脂に混合してなる層、又は該無機粒子存在下で前記樹脂の原料を重合させて形成される無機粒子含有樹脂からなる層を用いることが出来る。
【0041】
保護層を形成する樹脂としては、無機薄膜のガスバリア性向上の点から上記水性樹脂が好ましい。さらに水性樹脂として、ビニルアルコール樹脂またはエチレンビニルアルコール樹脂が好ましい。また、保護層として、ポリビニルアルコール及びエチレン・不飽和カルボン酸共重合体を含有する水性液を塗布してなる樹脂層を用いることができる。
保護層の厚さについては、印刷性、加工性の点から、好ましくは0.05〜10μm,更に好ましくは0.1〜3μmである。その形成方法としては、公知のコーティング方法が適宜採択される。例えば、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクタコーター、スプレイあるいは刷毛を用いたコーティング方法等の方法がいずれも使用できる。また、蒸着フィルムを保護層用樹脂液に浸漬して行ってもよい。塗布後は、80〜200℃程度の温度での熱風乾燥、熱ロール乾燥などの加熱乾燥や、赤外線乾燥などの公知の乾燥方法を用いて水分を蒸発させることができる。これにより、均一なコーティング層を有するフィルムが得られる。
【0042】
本発明においては、ガスバリアフィルム層を形成する構成単位層は少なくとも1層からなるが、バリア性の点から、好ましくは1〜10層であり、より好ましくは、1〜5層である。また、構成単位層が複数ある場合は、各構成単位層は同一でも異なっていてもよい。ここで、構成単位層の層数としては、アンカーコート層と無機薄膜とからなる構成単位の1を構成単位層1層とする。
ガスバリアフィルム積層体を構成するガスバリアフィルム層としては、以下のような態様を好ましく用いることができる。
【0043】
(1)基材フィルム/AC/無機薄膜
(2)基材フィルム/AC/無機薄膜/AC/無機薄膜
(3)基材フィルム/AC/無機薄膜/AC/無機薄膜/AC/無機薄膜
(4)基材フィルム/AC/無機薄膜/AC/無機薄膜/AC/無機薄膜/AC/無機薄膜
(5)基材フィルム/AC/無機薄膜/保護層
(6)基材フィルム/AC/無機薄膜/AC/無機薄膜/保護層
【0044】
(7)基材フィルム/AC/無機薄膜/AC/無機薄膜/AC/無機薄膜/保護層
(8)基材フィルム/AC/無機薄膜/AC/無機薄膜/AC/無機薄膜/AC/無機薄膜/保護層
(9)基材フィルム/無機薄膜/AC/無機薄膜
(10)基材フィルム/無機薄膜/AC/無機薄膜/AC/無機薄膜
(11)基材フィルム/無機薄膜/AC/無機薄膜/AC/無機薄膜/AC/無機薄膜
(12)基材フィルム/無機薄膜/AC/無機薄膜/保護層
(13)基材フィルム/無機薄膜/AC/無機薄膜/AC/無機薄膜/保護層
(14)基材フィルム/無機薄膜/AC/無機薄膜/AC/無機薄膜/AC/無機薄膜/保護層
(ACはアンカーコート層を指す。)
【0045】
上記ガスバリアフィルム層の40℃、90%RH条件下での水蒸気透過率(透湿度)は、積層によるバリア性の点から、0.2g/m2/24hr以下であることが好ましく、より好ましくは0.1g/m2/24hr以下であり、更に好ましくは、0.05g/m2/24hr以下である。
本発明のガスバリアフィルム積層体は、基材フィルムと少なくとも一層の構成単位層とからなるガスバリアフィルム層を、少なくとも2層有するものであるが、ガスバリア性、生産性の点から、好ましくは上記ガスバリアフィルム層を、2〜100層、より好ましくは3〜20層、更に好ましくは3〜10層有する。また、複数のガスバリアフィルム層は、同一のものであっても異なるものであってもよい。ここで、ガスバリアフィルム層の層数としては、基材フィルムと少なくとも一層の構成単位層とからなるガスバリアフィルム層の1をガスバリアフィルム層1層とする。
【0046】
本発明においては、必要に応じ更に追加の構成層を積層した各種ガスバリアフィルム積層体が用途に応じて使用できる。通常の実施態様としては、上記無機薄膜あるいは保護層の上にプラスチックフィルムを設けたガスバリアフィルムが各種用途に使用される。上記プラスチックフィルムの厚さは、積層体の基材としての機械強度、可撓性、透明性等の点から、通常5〜500μm、好ましくは10〜200μmの範囲で用途に応じて選択される。また、フィルムの幅や長さは特に制限はなく、適宜用途に応じて選択することができる。例えば、無機薄膜あるいは保護層の面上にヒートシールが可能な樹脂を使用することにより、ヒートシールが可能となり、種々の容器として使用できる。ヒートシールが可能な樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、アクリル系樹脂、生分解性樹脂等の公知の樹脂が例示される。
【0047】
また、上記以外のガスバリアフィルム積層体の実施態様としては、無機薄膜あるいは保護層の塗布面上に印刷層を形成し、更にその上にヒートシール層を積層するものが挙げられる。印刷層を形成する印刷インクとしては、水性及び溶媒系の樹脂含有印刷インクが使用できる。ここで、印刷インクに使用される樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル共重合樹脂又はこれらの混合物が例示される。更に、印刷インクには、帯電防止剤、光線遮光剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、フィラー、着色剤、安定剤、潤滑剤、消泡剤、架橋剤、耐ブロッキング剤、酸化防止剤等の公知の添加剤を添加してもよい。
【0048】
印刷層を設けるための印刷方法としては特に限定されないが、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の公知の印刷方法が使用できる。印刷後の溶媒の乾燥には、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線乾燥等の公知の乾燥方法が使用できる。また、印刷層とヒートシール層との間に紙又はプラスチックフィルムを少なくとも1層積層することが可能である。プラスチックフィルムとしては、本発明のガスバリアフィルム積層体に用いられる基材フィルムとしての熱可塑性高分子フィルムと同様のものが使用できる。中でも、十分な積層体の剛性及び強度を得る観点から、紙、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂又は生分解性樹脂が好ましい。
【0049】
本発明においては、ガスバリアフィルム層のアンカーコート層あるいは無機薄膜を形成した後、保護層を形成した後、又はガスバリアフィルム積層体を形成した後に、ガスバリア性、膜質及び塗布層質の安定化、気泡を微細に分散する等の点から加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理は 、ガスバリアフィルム層を構成する要素の種類や厚さなどによりその条件が異なるが、必要な温度、時間を維持できる方法であれば特に限定されない。例えば、必要な温度に設定 したオーブンや恒温室で保管する方法、熱風を吹き付ける方法、赤外線ヒーターで加熱する方法、ランプで光を照射する方法、熱ロールや熱版と接触させて直接的に熱を付与する方法、マイクロ波を照射する方法などが使用できる。また、取り扱いが容易な大きさにフィルムを切断してから加熱処理しても、フィルムロールのままで加熱処理してもよい。更に必要な時間と温度が得られる限りにおいては、コーター、スリッター等のフィルム製造装置の一部分に加熱装置を組み込み、製造過程で加熱を行うこともできる。
【0050】
加熱処理の温度は、使用する基材、プラスチックフィルム等の融点以下の温度であれば特に限定されないが、熱処理の効果が発現するために必要な処理時間を適度に設定できることから60℃以上であることが好ましく、更に70℃以上で行うことが好ましい。加熱処理温度の上限は、ガスバリアフィルム積層体を構成する要素の熱分解によるガスバリア性の低下を防止する観点から、通常200℃、好ましくは160℃である。処理時間は、加熱処理温度に依存し、処理温度が高い程、短くすることが好ましい。例えば、加熱処理温度が60℃の場合、処理時間は3日〜6ヶ月程度、80℃の場合、処理時間は3時間〜10日程度、120℃の場合、処理時間は1時間から1日程度、150℃の場合、処理時間は3〜60分程度であるが、これらは単なる目安であって、ガスバリアフィルム積層体を構成する要素の種類や厚さ等により適宜調整することができる。
【0051】
本発明のガスバリアフィルム積層体は、40℃、90%RH条件下での水蒸気透過率(透湿度)が、内容物保持の点から0.02g/m2/24hr以下であることが好ましく、より好ましくは0.01g/m2/24hr以下であり、更に好ましくは0.005g/m2/24hr以下である。
また、ガスバリアフィルム積層体は、光学特性の点から、その全光線透過率が70%以上であることが好ましく、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80以上である。
【0052】
[ガスバリアフィルム積層体の製造方法]
本発明のガスバリアフィルム積層体の製造方法は、(a)基材上に、順次アンカーコート層と無機薄膜層とからなる構成単位層を少なくとも一層形成し、ガスバリアフィルム層を形成する工程、及び(b)得られたガスバリアフィルム層を、エポキシ系樹脂からなる接着剤層を介し少なくとも2層積層する工程、を有するガスバリアフィルム積層体の製造方法、を有するものである。また、本発明のガスバリアフィルム積層体の製造方法は、(a)基材上に、順次アンカーコート層と無機薄膜層とからなる構成単位層を少なくとも一層形成し、ガスバリアフィルム層を形成する工程、(b)得られたガスバリアフィルム層を、接着剤層を介し少なくとも2層積層する工程、及び(c)ガスバリアフィルム層を積層した後、あるいは積層すると同時に、1000Pa以下の真空雰囲気下で加熱するか、又はエネルギー線を照射する工程、を有するものである。
ガスバリアフィルム層、これを構成するアンカーコート層、無機薄膜層、ガスバリアフィルム層を少なくとも2層積層したガスバリアフィルム積層体、及び接着剤層の各々については、前述のとおりである。また、真空雰囲気下での加熱、及びエネルギー線照射についても前述の通りである。
【実施例】
【0053】
次に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。なお、各例で得られたガスバリアフィルム積層体の性能評価は、以下のように行った。
【0054】
(1)水蒸気透過率(透湿度)
JIS Z 0222「防湿包装容器の透湿度試験方法」、JIS Z 0208「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」の諸条件に順じ、次の手法で評価した。透湿面積10.0cm×10.0cm角の各ガスバリアフィルム積層体或いはガスバリアフィルム層を2枚用い、吸湿剤として無水塩化カルシウム約20gを入れ四辺を封じた袋を作製し、その袋を温度40℃相対湿度90%の恒温恒湿装置に入れ、48時間以上間隔で質量増加がほぼ一定になる目安として14日間まで、質量測定(0.1mg単位)し、水蒸気透過率を下記式から算出した。なお、表1には、14日目における水蒸気透過率の値を示す。
水蒸気透過率(g/m2/24h)=(m/s)/t
m;試験期間最後2回の秤量間隔の増加質量(g)
s;透湿面積(m2
t;試験期間最後2回の秤量間隔の時間(h)/24(h)
【0055】
(2)接着剤層の酸素透過度
酸素透過度が30000ml/m2/24hr/MPa、水蒸気透過率が8g/m2/24hrとなる厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムに、接着剤を所定の厚さで塗布し、MOCON社製OX−TRAN2/21を使用し接着剤を塗布したOPPフィルムの25℃、90%RHの酸素透過度を測定し、接着剤層の酸素透過度を算出した。
【0056】
(3)ガスバリアフィルム層間の直径0.5mm以上の気泡数
気泡の直径は、実態顕微鏡で測定し、気泡数は目視にて、100cm2当たりの個数を求めn=3で平均化した個数を判定し、次の5段階で評価した。
◎:気泡数1以下/100cm2
○:気泡数2以下/100cm2
△:気泡数3以下/100cm2
×:気泡数4以上20未満/100cm2
××:気泡数20以上/100cm2
【0057】
(4)層間の密着強度
JIS Z1707に準じ、フィルム積層体を幅15mmの短冊状に切り出し、その端部を一部剥離させ、剥離試験機(島津製作所製、製品名EZ−TEST)により300mm/分の速度でT型剥離を行い、ラミネート強度(g/15mm)を測定した。
(5)真空封止
ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下「PET」と略す。三菱化学(株)製「ノバペックス」、厚さ12μm)/未延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡績(株)製「パイレンフィルム−CT P1146」、厚さ100μm)の構成でドライラミネートをおこなった基材を作成し、30cm×30cmに2枚切り出しCPP面を重ね合わせ、端部3箇所をインパルスシーラーでヒートシールをおこない真空包装用バックを作成した。得られた袋にガスバリアフィルム積層体を入れ、10Pa以下の真空下で真空シールをおこない真空封止を行った。
【0058】
(6)表面粗度測定(Rms)
走査型プローブ顕微鏡(セイコーインスツルメンツ社製SPI3800)の非接触モード(ダイナミックフォースモード)で、ガスバリアフィルム層表面を測定した。走査速度、1測定領域中の測定点数、傾斜補正は、表面状態を明確に測定できる条件を選択した。フィルムの表面形状の表面粗度(Rms)は、走査型プローブ顕微鏡SPI3800付属ソフトの「CROSSSECTION」解析のAREA解析で求めた。
【0059】
(7)全光線透過率
ヘイズメーター(日本電色工業製 HDH2000)を使用し、透過法にて全光線透過率を求めた。
【0060】
実施例1
PET(三菱化学(株)製「ノバペックス」)を溶融押出してシートを形成し、延伸温度95℃、延伸比3.3で長手方向に延伸した後、延伸温度110℃、延伸比3.3で横方向に延伸し230℃で熱固定することにより、厚さ12μm、150℃での収縮率がMD(流れ)方向1.2%、TD(流れ直角)方向0.5%の二軸延伸PETフィルムを得た。そのフィルムの片側表面に、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業製「コロネートL」)と飽和ポリエステル(東洋紡績製「バイロン300」)とを1:1質量比で配合した混合物をグラビアコート法で塗布乾燥して厚さ0.1μmのアンカーコート層を形成した。
次いで、真空蒸着装置を使用して1×10-5Torrの真空下でSiOを高周波加熱方式で蒸発させ、アンカーコート層上に薄膜厚さ約20nmの無機薄膜フィルムを形成した。
【0061】
上記ガスバリアフィルム層の無機薄膜面に、平均粒子径1μmのシリカ粒子を樹脂固形 に対し10質量%添加したアイオノマー樹脂分散水溶液(三井化学社製「ケミパールS300」)を塗布して乾燥後の厚さが約3μm、表面粗度(Rms)0.20μmの熱硬化型の接着剤層を形成した。接着剤層を形成したガスバリアフィルムを12cm×12cmに切り出し、5枚のガスバリアフィルムの各接着剤層と基材のPET面を対向させ重ね合わせ、最外層の接着剤層と12cm×12cmに切り出した厚さ60μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡績(株)製「パイレンフィルム−CT P1146」)を重ね合わせ、前述の方法で10Paにて真空包装を行った。真空バックで封止されたガスバリアフィルム積層体をオーブンで大気圧下、120℃において30分加熱し接着剤層を溶融接着させガスバリアフィルム積層体を得た。得られたガスバリアフィルム積層体について、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0062】
実施例2
ガスバリアフィルム層の基材をポリエチレンナフタレートフィルム(以下「PEN」と略す。帝人(株)製「テオネックスQ65」、厚さ75μm)とした以外は実施例1と同様にしてガスバリアフィルム積層体を作製した。得られたガスバリアフィルム積層体について、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0063】
実施例3
ガスバリアフィルム層の基材をポリエーテルイミドフィルム(以下「PEI」と略す。三菱樹脂(株)製「スペリオUT」、厚さ10μm)とした以外は実施例1と同様にしてガスバリアフィルム積層体を作製した。得られたガスバリアフィルム積層体について、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
実施例4
ガスバリアフィルム層の積層枚数を9枚とした以外は実施例1と同様にしてガスバリアフィルム積層体を作製した。得られたガスバリアフィルム積層体について、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0065】
実施例5
ガスバリアフィルム層のアンカーコート層を、減圧真空下においてプラズマCVD法によりモノシラン,酸素,アンモニア,水素を原料ガスとして供給し所定の電力を印加することにより堆積した、厚さ10nmの窒化珪素と酸化珪素の複合膜SiON層(窒化珪素と酸化珪素の割合が8:2)とし、このガスバリアフィルム層の積層枚数を9枚とした以外は実施例1と同様にしてガスバリアフィルム積層体を作製した。得られたガスバリアフィルム積層体について、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
実施例6
ガスバリアフィルム層のアンカーコート層を、DCマグネトロンスパッタリング装置でクロムをターゲットとし、1Paのアルゴン雰囲気下でスパッタリングを行い厚さ0.1nmのクロムを形成した以外は実施例1と同様にしてガスバリアフィルム積層体を作製した。得られたガスバリアフィルム積層体について、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
実施例7
ガスバリアフィルム層のアンカーコート層を、下記のウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、及びオキサゾリン系樹脂で固形分として4:3:3の質量比で配合した混合物を用いて形成した以外は実施例1と同様にしてガスバリアフィルム積層体を作製した。得られたガスバリアフィルム積層体について、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0068】
実施例8
ガスバリアフィルム層のアンカーコート層を、下記のウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、及びカルボジイミド系樹脂で固形分として4:3:3の質量比で配合した混合物を用いて形成した以外は実施例1と同様にしてガスバリアフィルム積層体を作製した。得られたガスバリアフィルム積層体について、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
なお、実施例7、及び8においてアンカーコート層にそれぞれ用いられるウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、オキサゾリン系樹脂、及びカルボジイミド系樹脂として、下記のものを使用した。
【0069】
<ウレタン系樹脂>
テレフタル酸664部、イソフタル酸631部、1,4−ブタンジオール472部、ネオペンチルグリコール447部からなるポリエステルポリオールを得た。次いで、得られたポリエステルポリオールに、アジピン酸321部、ジメチロールプロピオン酸268部を加え、ペンダントカルボキシル基含有ポリエステルポリオールAを得た。更に、該ポリエステルポリオールA 1880部にヘキサメチレンジイソシアネート160部を加えて水性ポリウレタン系樹脂水性塗料を得た。
【0070】
<アクリル系樹脂>
アクリル酸エチル40重量部、メタクリル酸メチル30重量部、メタクリル酸20重量部、グリシジルメタクリレート10重量部の混合物をエチルアルコール中で溶液重合し、重合後水を加えつつ加熱しエチルアルコールを除去した。アンモニア水でpH7.5に調節し、水性アクリル系樹脂水性塗料を得た。
【0071】
<オキサゾリン系樹脂>
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計及び滴下ロートを備えたフラスコに、脱イオン水179部及び重合開始剤2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩1部を仕込み、ゆるやかに窒素ガスを流しながら60℃に加熱した。そこへ予め調製しておいた、アクリル酸エチル2部、メタクリル酸メチル2部及び2−イソプロペニル−2−オキサゾリン16部からなる単量体混合物を滴下ロートより1時間で滴下した。その後、窒素気流下、60℃で10時間反応を行った。反応後、冷却し、固形分濃度10重量%の2−オキサゾリン基含有樹脂水性液を得た。
【0072】
<カルボジイミド系樹脂>
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計及び滴下ロートを備えたフラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネート130部とポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量400)170部とを入れ、120℃で1時間撹拌し、更に4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート20部とカルボジイミド化触媒3−メチル−1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシド3部を加え、窒素気流下185℃で更に5時間撹拌した。反応終了後、60℃まで放冷し、蒸留水を加え、固形分濃度40重量%のカルボジイミド系架橋剤水性液を得た。
【0073】
実施例9
実施例1で作成したガスバリアフィルム層の無機薄膜面に実施例1で使用したアンカーコート層を形成し、次いで実施例1の無機薄膜層を形成した以外は実施例1と同様にしてガスバリアフィルム積層体を作製した。得られたガスバリアフィルム積層体について、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
実施例10
実施例1において、接着剤層として、ウレタン(メタ)アクリレート成分としてウレタンアクリレートを50質量部、エポキシ(メタ)アクリレート成分としてビスフェノールAグリシジルエーテル型エポキシアクリレート(重量平均分子量2000)20質量部、脂環(メタ)アクリレート成分として、トリシクロデカンジアクリレート30質量部、重合開始剤として2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル-プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン 2質量部を混合溶解したものを塗布して、乾燥後の厚さが約3μm、表面粗度(Rms)0.20μmのUV硬化系の接着剤層を形成した以外は同様にして得た真空バックで封止されたガスバリアフィルム積層体を、80W/cmのメタルハライドランプ(ウシオ電機製、UVC−05016S1AGF01)で紫外線を照射して接着剤層を硬化させガスバリアフィルム積層体を得た。得られたガスバリアフィルム積層体について、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0075】
実施例11
ガスバリアフィルム層の積層枚数を9枚とした以外は実施例10と同様にしてガスバリアフィルム積層体を作製した。得られたガスバリアフィルム積層体について、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0076】
実施例12
ガスバリアフィルムのアンカーコート層を、減圧真空下においてプラズマCVD法によりモノシラン,酸素,アンモニア,水素を原料ガスとして供給し所定の電力を印加することにより堆積した、厚さ10nmの窒化珪素と酸化珪素の複合膜SiON層(窒化珪素と酸化珪素の割合が8:2)として、このガスバリアフィルム層の積層枚数を9枚とした以外は実施例10と同様にしてガスバリアフィルム積層体を作製した。得られたガスバリアフィルム積層体について、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0077】
実施例13
実施例1において、接着剤層として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(重量平均分子量:400、エポキシ当量200、油化シェルエポキシ株式会社製のエピコート828)30質量部にビスフェノールAノボラック樹脂(重量平均分子量:960、フェノール性水酸基当量:120、大日本インキ化学工業株式会社製のフェノライトLF2882)25質量部、エポキシ樹脂と相溶性を有する高分子量成分としてフェノキシ樹脂(重量平均分子量:50,000、東都化成株式会社製のフェノトートYP−50)30質量部、エポキシ樹脂と非相溶性の高分子量成分としてエポキシ基含有アクリルゴム(重量平均分子量:1,000,000、エポキシ当量:3,100、帝国化学産業株式会社製のHTR−860P−3を)30質量部、硬化促進剤として1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール(四国化成工業株式会社製の2PZ−CN)0.5質量部、カップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー株式会社製のNUCA−187)0.5質量部、無機イオン吸着剤としてアンチモンビスマス系化合物(東亞合成化学工業株式会社製のIXE600)2質量部からなる組成物に、メチルエチルケトン150質量部を加え、ビーズミルで混合し、さらにメチルエチルケトン 30質量部を加えて粘度を調整・真空脱気した。
【0078】
得られたワニスを、厚さ50μm、表面粗度Rms0.10μmの離型PETフィルム上にナイフコーターで塗布し、110℃で15分間加熱して溶剤を除去するとともに、樹脂を半硬化して、接着層の厚さが10μmの離型PETフィルム付き接着フィルムとを作製し、離型PETフィルム付き接着フィルムから離型PETフィルムを剥離・除去して、厚さが10μm、表面粗度(Rms)0.10μmの接着フィルムを作製した。得られた接着性フィルムを用い、ガスバリアフィルム層の積層枚数を9枚とした以外は同様にして得た、真空バックで封止されたガスバリアフィルム積層体を、オーブンで大気圧下、120℃において30分加熱し接着剤層を溶融接着させガスバリアフィルム積層体を得た。得られたガスバリアフィルム積層体について、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0079】
実施例14
実施例13において作成した接着性フィルムをエンボスロールで加圧し、両面の表面粗度(Rms)を5μmとした以外は実施例13と同様にしてガスバリアフィルム積層体を作製した。得られたガスバリアフィルム積層体について、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0080】
実施例15
実施例1において作成したガスバリアフィルム層の無機薄膜面に、下記エポキシ系接着剤を塗布して乾燥後の厚さが約3μm、表面粗度(Rms)0.25μmの熱硬化型の接着剤層を形成し、他のガスバリアフィルムのPET面と大気下にて積層した。さらに、得られたガスバリアフィルムの無機薄膜面に、上記接着剤を同様に塗布し、最外層の接着剤層と厚さ60μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡績(株)製「パイレンフィルム−CT P1146」)を積層しガスバリアフィルム積層体を得た。得られたガスバリアフィルム積層体について、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0081】
<エポキシ系接着剤>
メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂(三菱ガス化学(株)製;TETRAD−X)を50重量部およびエポキシ樹脂硬化剤aを146重量部含むメタノール/酢酸エチル=9/1溶液(固形分濃度;35重量%)を作製し、そこにアクリル系湿潤剤(ビック・ケミー社製;BYK381)を0.4重量部、シリコン系消泡剤(楠本化成(株)製;ディスパロン1930N)を0.05重量部加えたエポキシ系接着剤。
<エポキシ樹脂硬化剤a>
反応容器に1モルのメタキシリレンジアミンを仕込んだ。窒素気流下60℃に昇温し、0.93モルのアクリル酸メチルを1時間かけて滴下した。滴下終了後120℃で1時間攪拌し、さらに、生成するメタノールを留去しながら3時間で160℃まで昇温した。100℃まで冷却し、固形分濃度が70重量%になるように所定量のメタノールを加え、エポキシ樹脂硬化剤aを得た。
【0082】
実施例16
実施例15において、積層した他のガスバリアフィルム層の無機薄膜面に同様に接着剤層を設け、その上に更に同様のガスバリアフィルム層を設け3層とした以外は、実施例15と同様にして、ガスバリアフィルム積層体を得た。得られたガスバリアフィルム積層体について、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0083】
比較例1
真空包装することなく、大気圧下でガスバリアフィルム層をラミネートした以外は実施例1と同様にしてガスバリアフィルム積層体を作製した。得られたガスバリアフィルム積層体について、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0084】
比較例2
真空包装することなく、大気圧下でガスバリアフィルムをラミネートした以外は実施例10と同様にしてガスバリアフィルム積層体を作製した。得られたガスバリアフィルム積層体について、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0085】
比較例3
実施例15において、接着剤をウレタン系接着剤(東洋モートン社製「AD900」と「CAT−RT85」とを10:1.5の割合で配合)に代えた以外は実施例15と同様にしてガスバリアフィルム積層体を作製した。得られたガスバリアフィル ム積層体について、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明のガスバリアフィルム積層体は、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、例えば、食品や工業用品及び医薬品等の変質を防止するための包装に広く利用される。また、包装用途以外にも、液晶表示素子、太陽電池、電磁波シールド、タッチパネル、EL用基板、カラーフィルター等で使用する透明導電シートや真空断熱材としても好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤層を介して積層された少なくとも2層のガスバリアフィルム層を有し、40℃、90%RH条件下での透湿度が0.02g/m2/24hr以下である、ガスバリアフィルム積層体であって、上記ガスバリアフィルム層が、基材フィルムと、該基材フィルムの少なくとも一方の面に順次形成されたアンカーコート層及び無機薄膜層からなる少なくとも一層の構成単位層とを有し、かつ上記ガスバリアフィルム層の間に存在する直径0.5mm以上の気泡及び直径0.5mm以上の異物の数が100cm2当り、合計で3個以下である、ガスバリアフィルム積層体。
【請求項2】
接着剤層を介して積層された少なくとも3層のガスバリアフィルム層を有するガスバリアフィルム積層体であって、上記ガスバリアフィルム層の間に存在する直径0.5mm以上の気泡及び直径0.5mm以上の異物の数が100cm2当り、合計で2個以下である、請求項1記載のガスバリアフィルム積層体。
【請求項3】
全光線透過率が70%以上である、請求項1又は2に記載のガスバリアフィルム積層体。
【請求項4】
基材フィルムが、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリメタクリル系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂及び環状オレフィン系樹脂から選ばれる少なくとも一種の樹脂からなる、請求項1又は2に記載のガスバリアフィルム積層体。
【請求項5】
ガスバリアフィルム層の透湿度が、40℃、90%RH条件下で、0.2g/m2/24hr以下である、請求項1又は2に記載のガスバリアフィルム積層体。
【請求項6】
アンカーコート層が、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、イソシアネート基含有樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド系樹脂、及びアルコール性水酸基含有樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる、請求項1又は2に記載のガスバリアフィルム積層体。
【請求項7】
アンカーコート層が、クロム、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、チタン酸化物、ケイ素窒化物、アルミニウム窒化物、チタン窒化物、及び炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる、請求項1又は2に記載のガスバリアフィルム積層体。
【請求項8】
無機薄膜層が、珪素酸化物、アルミニウム酸化物、珪素窒化物、アルミニウム窒化物及びダイアモンドライクカーボンから選ばれる少なくとも1種からなる、請求項1又は2に記載のガスバリアフィルム積層体。
【請求項9】
接着剤層が、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂及びアクリル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種からなる、請求項1又は2に記載のガスバリアフィルム積層体。
【請求項10】
接着剤層の酸素透過度が、25℃、90%RHにおいて1000ml/m2/24hr/MPa以下である、請求項1記載のガスバリアフィルム積層体。
【請求項11】
接着剤層が、平均粒径0.005〜50μmの無機粒子及び/又は有機粒子を0.01〜30質量%含有する、請求項1又は2に記載のガスバリアフィルム積層体。
【請求項12】
接着剤層の表面粗度(Rms)が0.05〜40μmである、請求項1又は2のいずれかに記載のガスバリアフィルム積層体。
【請求項13】
1000Pa以下の真空雰囲気下で加熱するか、又はエネルギー線を照射してなる、請求項1又は2に記載のガスバリアフィルム積層体。
【請求項14】
エネルギー線が紫外線又は電子線である、請求項13記載のガスバリアフィルム積層体。
【請求項15】
(a)基材上に、順次アンカーコート層と無機薄膜層とからなる構成単位層を少なくとも一層形成し、ガスバリアフィルム層を形成する工程、
(b)得られたガスバリアフィルム層を、接着剤層を介し少なくとも2層積層する工程、及び
(c)ガスバリアフィルム層を積層した後、あるいは積層すると同時に、1000Pa以下の真空雰囲気下で加熱するか、又はエネルギー線を照射する工程を有する、40℃、90%RH条件下での透湿度が0.02g/m2/24hr以下であるガスバリアフィルム積層体の製造方法。
【請求項16】
(a)基材上に、順次アンカーコート層と無機薄膜層とからなる構成単位層を少なくとも一層形成し、ガスバリアフィルム層を形成する工程、及び
(b)得られたガスバリアフィルム層を、エポキシ系樹脂からなる接着剤層を介し少なくとも2層積層する工程、
を有する、40℃、90%RH条件下での透湿度が0.02g/m2/24hr以下であるガスバリアフィルム積層体の製造方法。
【請求項17】
工程(b)の接着剤層が、更にエポキシ樹脂の硬化剤として、下記の(A)と(B)の反応生成物、(A)と(C)の反応生成物、及び(A)、(B)及び(C)の反応生成物から選ばれる少なくとも一種を用いる、請求項16記載のガスバリアフィルム積層体の製造方法。
(A)メタキシレンジアミン又はパラキシレンジアミン
(B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物
(C)炭素数1〜8の一価カルボン酸及び/又はその誘導体
【請求項18】
ガスバリアフィルム層の水蒸気透過率(透湿度)が、40℃、90%RH条件下で0.2g/m2/24hr以下であり、かつ接着剤層の酸素透過度が、25℃、90%RH条件下で1000ml/m2/24hr/MPa以下である、請求項15〜17のいずれかに記載のガスバリアフィルム積層体の製造方法。

【公開番号】特開2012−96551(P2012−96551A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−24169(P2012−24169)
【出願日】平成24年2月7日(2012.2.7)
【分割の表示】特願2008−544193(P2008−544193)の分割
【原出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】