説明

ガスバリア性透明フィルム、およびそれを用いたガスバリア性透明包装体

【課題】内容物を直接透視できる透明性を有し、ボイル殺菌、レトルト殺菌、オートクレーブ殺菌といった厳しい殺菌条件下でも、デラミネーションが抑えられガスバリア性が低下しない包装体を提供する。
【解決手段】熱可塑性高分子フィルムと、前記熱可塑性高分子フィルムの少なくとも一方の面に積層されたプライマー層と、前記プライマー層の上に積層された無機薄膜層とを有するガスバリア性透明フィルムであって、前記プライマー層が、芳香族炭化水素成分、N含有成分、メタクリレート成分、およびシラン化合物成分を含むことを特徴とするガスバリア性透明フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性透明フィルム、およびそれを用いたガスバリア性透明包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や医薬品等の包装に用いられる包装材料には、ガスバリア性を備えることが求められている。これは、包装される食品や医薬品等の内容物が、包装材料を透過する酸素、水蒸気、その他内容物を変質させるガスによる影響を受け、その機能や性質を保持することができなくなるのを防止するためである。この目的で、従来から、温度・湿度により影響を受けにくいアルミ等の金属からなる金属箔をガスバリア層として用いた包装材料が一般的に用いられている。
【0003】
しかしながら、アルミ等の金属からなる金属箔をガスバリア層として有する包装材料は、ガスバリア性には優れるが、包装材料を透視して内容物を確認することができない、使用後の廃棄の際は不燃物として処理しなければならない、包装されている内容物の検査の際に金属探知機を使用できない等の欠点を有しているために問題となっていた。
【0004】
そこで、これらの欠点を克服する包装材料として、例えば、特許文献1および特許文献2に記載されているような酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の無機酸化物を高分子フィルム上に、真空蒸着法やスパッタリング法等の膜形成手段により蒸着膜を形成したガスバリアフィルムが開発されている。これらの蒸着フィルムは、透明性、および酸素、水蒸気等のガスバリア性の双方を有する包装材料であり、好適とされている。
【0005】
また、例えば特許文献2および特許文献3に記載されているように、金属または金属酸化物の蒸着膜と基材との密着度を高めるために、プラズマ処理を施した基材を用いたフィルムも開発されている。
【特許文献1】米国特許第3442686号明細書
【特許文献2】特公昭63−28017号公報
【特許文献3】特開平3−247750号公報
【特許文献4】特開平6−172966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した蒸着膜を積層したフィルムは包装材料に適するものであっても、包装容器または包装材として、蒸着膜を積層したフィルム単体で用いられることは殆どない。これらフィルムは、蒸着膜形成後に、フィルム表面への文字・絵柄等の印刷加工、他のフィルム等との貼り合せ、容器等の包装体への形状加工等の様々な工程を経て、包装体として用いられることが多い。
【0007】
ところで、このような包装体に対してボイル殺菌、レトルト殺菌、オートクレーブ殺菌等を行う際には、包装体は種々の工程を経て殺菌されるために、包装材料の設計には十分注意しなければならない。上記の蒸着膜を積層した基材フィルム等とシーラントフィルムとを貼り合せて袋を作製した後、内容物を充填してボイル殺菌やレトルト殺菌を試みたところ、殺菌後に主に基材フィルムと蒸着膜との間でデラミネーションが起こって外観不良になったり、その部分でガスバリア性が低下して内容物が変質する等の問題を有していた。
【0008】
本発明の目的は、内容物を直接透視できる透明性を有し、ボイル殺菌、レトルト殺菌、オートクレーブ殺菌といった厳しい殺菌条件下でも、デラミネーションが抑えられガスバリア性が低下しない包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載される発明は、熱可塑性高分子フィルムと、前記熱可塑性高分子フィルムの少なくとも一方の面に積層されたプライマー層と、前記プライマー層の上に積層された無機薄膜層とを有するガスバリア性透明フィルムであって、前記プライマー層が、芳香族炭化水素成分、N含有成分、メタクリレート成分、およびシラン化合物成分を含むことを特徴とするガスバリア性透明フィルムである。
【0010】
請求項2に記載される発明は、前記プライマー層が、TOF−SIMSによる分析結果において、芳香族炭化水素成分としてC、C、C、C10のピークを示すことを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性透明フィルムである。
【0011】
請求項3に記載される発明は、前記プライマー層が、TOF−SIMSによる分析結果において、N含有成分としてCN、CNOのピークを示すことを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性透明フィルムである。
【0012】
請求項4に記載される発明は、前記プライマー層が、TOF−SIMSによる分析結果において、メタクリレート成分としてC、Cのピークを示すことを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性透明フィルムである。
【0013】
請求項5に記載される発明は、前記プライマー層が、TOF−SIMSによる分析結果において、シラン化合物成分としてCOSi、CSiのピークを示すことを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性透明フィルムである。
【0014】
請求項6に記載される発明は、さらに前記無機薄膜層上に積層されたガスバリア性被覆層を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のガスバリア性透明フィルムである。
【0015】
請求項7に記載される発明は、前記熱可塑性高分子フィルムがポリエステルフィルムまたはポリアミドフィルムであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のガスバリア性透明フィルムである。
【0016】
請求項8に記載される発明は、前記無機薄膜層が酸化ケイ素または酸化アルミニウムの蒸着膜からなることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のガスバリア性透明フィルムである。
【0017】
請求項9に記載される発明は、前記ガスバリア性被覆膜が、水酸基含有高分子化合物、ならびに金属アルコキシド、その加水分解物およびその重合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載のガスバリア性透明フィルムである。
【0018】
請求項10に記載される発明は、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のガスバリア性透明フィルム上に、接着剤層を介して、少なくともヒートシール性樹脂層を積層してなることを特徴とするガスバリア性透明包装体である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、熱可塑性高分子フィルムの少なくとも一方の面に、芳香族炭化水素成分、N含有成分、メタクリレート成分、およびシラン化合物成分を含むプライマー層を積層し、その上に無機薄膜層を積層しているので、ボイル殺菌、レトルト殺菌、オートクレーブ殺菌といった厳しい条件下でも、熱可塑性高分子フィルムと無機薄膜層との間の密着強度に優れ、ガスバリア性が低下しない包装体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一態様に係るガスバリア性透明フィルムを概略的に示す断面図である。図1に示すガスバリア性透明フィルム10は、熱可塑性高分子フィルム1の片面に、透明プライマー層2および無機酸化物からなる透明蒸着薄膜層3を順次積層して形成されている。さらに、上記無機酸化物からなる透明蒸着薄膜層3の上にガスバリア性被膜層4を積層させることができる。ガスバリア性透明包装体20は、ガスバリア性透明フィルム10のガスバリア性被覆層4の上に、接着剤層5を介して、少なくともヒートシール層6を積層した構成を有する。
【0021】
本発明に使用される熱可塑性高分子フィルム1は、無機酸化物からなる透明蒸着薄膜層3の透明性を生かすために、透明なフィルム基材であることが望まれる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ乳酸フィルム等の生分解性プラスチックフィルム等を用いることができる。熱可塑性高分子フィルム1は、延伸、未延伸のどちらでもよく、また機械的強度や寸法安定性を有するものが好ましい。特に二軸方向に延伸されたポリエステルフィルムまたはポリアミドフィルムが好ましい。また、この熱可塑性高分子フィルム1の表面に、周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤などが使用されていてもよい。また、無機酸化物からなる透明蒸着薄膜層3との密着性を向上させるために、前処理としてコロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理等を熱可塑性高分子フィルム1に施してもよく、さらに薬品処理、溶剤処理等を施してもよい。
【0022】
ポリエステルフィルムの素材は特に限定されない。ポリエステルを構成するジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、ナフタレンカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シクロヘキシンジカルボン酸等の脂環族カルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸が挙げられる。アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のポリオキシアルキレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコールおよびそれらの誘導体などが挙げられる。これらの成分から構成されるポリエステルの中でも、二軸延伸特性などの製膜性、湿度特性、耐熱性、耐薬品性、低コストなどの観点から、ポリエチレンテレフタレートを主体としたものが好ましい。ポリエチレンテレフタレートの優れた諸物性を保てる範囲内で、他のアルコール成分を重合段階で主鎖に取り込むように制御し、共重合させることにより、分子鎖内に回転障害の小さいセグメント(ソフトセグメント)が形成されたポリエステルフィルムとすることができる。このポリエステルフィルムは、外部からの衝撃や折り曲げによる力を、分子鎖内のソフトセグメントにより吸収することができ、耐衝撃性、屈曲性に優れたものとなる。特に、カルボン酸成分の50モル%以上がテレフタル酸およびそれらの誘導体であり、アルコール成分の50モル%以上がエチレングリコールおよびそれらの誘導体である共重合ポリエステルフィルムが好ましい。
【0023】
上記ポリエステルフィルムの延伸としては、逐次二軸延伸、同時二軸延伸プロセスを用いることができ、ポリエステルフィルムの延伸倍率(タテ延伸倍率×ヨコ延伸倍率)を2〜30倍の範囲とすることが好ましい。また、上記条件にて製膜した際に、120℃、30分の条件での熱水加熱収縮率が、タテ方向(MD)およびヨコ方向(TD)ともに5%以下であることが好ましい。熱水加熱収縮率が5%を超えると、収縮が大きいために、後の加工後のガスバリア性の低下が大きくなる傾向にあり好ましくない。
【0024】
ポリアミド系フィルムの素材は特に限定されず、ホモポリアミド、コポリアミド、またはこれらの混合物などを用いることができる。
【0025】
ホモポリアミドとしては、例えば、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(ナイロン7)、ポリ−ω−アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリンラクタム(ナイロン12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン2,6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン4,6)、ポリヘキサメチレンジアジパミド(ナイロン6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6,10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン6,12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン8,6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン10,6)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン10,10)、ポリデカメチレンドデカミド(ナイロン12,12)、メタキシレンジアミン−6ナイロン(MXD6)等を挙げることができる。
【0026】
コポリアミドとしては、例えば、カプロラクタム/ラウリンラクタム共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体、ラウリンラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体、ヘキサメチレンジアンモニウムジアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサミエチレンジアンモニウムセバケート共重合体等を挙げることができる。ポリアミド系フィルムの素材は、透明ガスバリア性包装体20の使用環境、被包装物の種類、加工性および経済性などを考慮して適宜選択すればよい。
【0027】
熱可塑性高分子フィルム1の厚さは特に制限を受けるものではないが、包装材料としての適性、他の層を積層した場合の厚さ、熱可塑性高分子フィルム1の一方の面に、透明プライマー層2、無機酸化物からなる透明蒸着薄膜層3、およびガスバリア性被覆層4を形成する場合の加工性を考慮すると、実用的には3〜300μmの範囲、用途によっては6〜100μmの範囲とすることが好ましい。
【0028】
また量産性を考慮すれば、連続的に各層を形成することができるように、熱可塑性高分子フィルム1は、長尺フィルムとすることが望ましい。
【0029】
本発明のガスバリア性透明フィルム10は、熱可塑性高分子フィルム1と無機酸化物からなる透明蒸着薄膜3との間に透明プライマー層2を設けている。この透明プライマー層2を設ける目的は、熱可塑性高分子フィルム1と無機酸化物からなる透明蒸着薄膜層3との間の密着性を高め、ボイル殺菌、レトルト殺菌、オートクレーブ殺菌後のデラミネーションの発生等を防止することである。
【0030】
本発明者等は、鋭意検討の結果、上記目的達成のために用いることができるプライマー層2は、芳香族系炭化水素成分、N含有成分、メタクリレート成分、およびシラン化合物成分を含むものであることを見出した。後述するように、これらの成分は飛行時間型二次質量イオン分析計(TOF−SIMS)によって検出することができる。
【0031】
芳香族炭化水素成分としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、フェノール、スチレン、クレゾール、キシレノール酸、キノリン、ピリジン、ピコリン、ナフタリン、クレオソート油、コールタール、アントラセン等を挙げることができる。これらの芳香族炭化水素成分のうち、水酸基やイソシアナート基、二重結合等の反応基を有するものが特に好ましく、例えば、フェノールやスチレンなどが挙げられる。
【0032】
N含有成分としては、例えば、ウレタン、イソシアナート、アミド等を挙げることができる。ウレタンとしては、例えば、ポリエチレングリコールやポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテル系ポリオールや、ポリエチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペートなどのポリエステル系のポリオールに加えて、トリレンジイソシアナートやヘキサメチレンジイソシアナートなどのジイソシアナート、エチレングリコールやヘキサメチレンジアミンなどの鎖延長剤を原料とするものを挙げることができる。なお、未反応のイソシアナートがN含有成分として検出されることもある。アミドとしては、ホモポリアミド、コポリアミド、またはこれらの混合物等を挙げることができる。ホモポリアミドとしては、例えば、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(ナイロン7)、ポリ−ω−アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、メタキシレンジアミン−6ナイロン(MXD6)等を挙げることができる。コポリアミドとしては、例えば、カプロラクタム/ラウリンラクタム共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体等を挙げることができる。
【0033】
メタクリレート成分としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等、さらにメタクリル酸エステル共重合体等を挙げることができる。これらメタクリレート成分のうち、高分子末端に2つ以上のヒドロキシル基を有するポリオールが特に好ましい。例えば、メタクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られるポリオールや、メタクリル酸誘導体モノマーと他のモノマーとを共重合させて得られるポリオールであるアクリルポリオール等を挙げることができる。
【0034】
シラン化合物成分としては、例えば、トリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ヘキサメチルジシラザンや、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン等の任意の有機官能基を含むシランカップリング剤を挙げることができる。これらのシラン化合物のうち、水酸基やイソシアナート基、二重結合等の反応基を有するものが特に好ましく、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0035】
上記4成分を有するプライマー層を構成する化合物の組み合わせとしては、例えば、二重結合含有シランカップリング剤、水酸基・メタクリル基含有アクリル樹脂、および芳香族系イソシアナート化合物の組み合わせ、N基含有シランカップリング剤、水酸基・メタクリル基含有芳香族系アクリル樹脂、および脂肪族系イソシアナート化合物の組み合わせ、並びにN基含有シランカップリング剤、水酸基・メタクリル基含有アクリル樹脂、および芳香族系イソシアナート化合物の組み合わせ等を用いることができる。
【0036】
透明プライマー層2は、上記化合物の複合溶液を作製して、熱可塑性高分子フィルム1に、この溶液をコーティングして形成する。この複合溶液に各種の添加剤、例えば、3級アミン、イミダゾール誘導体、カルボン酸の金属塩化化合物、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等の硬化促進剤、フェノール系、硫黄系、ホスファイト系等の酸化防止剤、レベリング剤、流動調節剤、触媒、架橋反応促進剤、充填剤等を添加してもよい。
【0037】
透明プライマー層2の厚さは、均一に塗膜を形成することができれば特に限定しないが、一般的に、0.001〜5μmの範囲にあることが好ましい。厚さが0.001μm未満であると、均一な塗膜が得られず、熱可塑性高分子フィルム1に対する透明プライマー層2の密着性が低下する傾向がある。また、厚さが5μmを超えると、塗膜のフレキシビリティを保持することができず、外部要因により塗膜に亀裂を生じる恐れがあるため好ましくない。透明プライマー層2の厚さは、特に好ましくは、0.003〜1.5μmの範囲内にある。
【0038】
透明プライマー層2の形成方法としては、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷法や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアコート等の周知の塗布方法を用いることができる。乾燥条件は、特に限定されず、一般的に使用される条件でよい。また、反応を促進させるために、高温のエージング室等に数日放置することも可能である。
【0039】
無機酸化物からなる透明蒸着薄膜層3は、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化マグネシウム、またはこれらの混合物から成る。しかしながら、無機酸化物からなる透明蒸着薄膜層3は、透明性を有し、かつ酸素、水蒸気等のガスバリア性を有する層であればよく、この条件に適合する材料であれば用いることができ、無機酸化物は上記のものに限定されるものではない。
【0040】
無機酸化物からなる透明蒸着薄膜層3を、透明プライマー層2の上に形成する方法としては、例えば、通常の真空蒸着法を用いることができる。また、その他の薄膜形成方法であるスパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)等を用いることもできる。生産性の観点からは、現時点では真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法の加熱手段としては電子線加熱方式、抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかの方式を用いることが好ましい。蒸発材料の選択性の幅広さを考慮すると、電子線加熱方式を用いることがより好ましい。また、蒸着膜の透明性を高めるために、蒸着時に酸素等の各種ガス等を吹き込む反応蒸着を用いてもよい。
【0041】
無機酸化物からなる透明蒸着薄膜層3の厚さは、使用される無機化合物の種類や構成によって最適条件が異なるが、一般的には1〜500nmの範囲にあることが好ましく、この範囲で適宜選択される。透明蒸着薄膜層3の厚さが1nm未満であると、均一な膜が形成できず、ガスバリア層としての機能を十分に果たすことができない傾向にある。一方、透明蒸着薄膜層3の厚さが500nmを超える場合には、蒸着薄膜にフレキシビリティを保持させることができず、膜形成後に折り曲げ、引っ張り等の外部要因により亀裂が発生しやすく、さらに経済的な面でも好ましくない。
【0042】
ガスバリア性被覆層4は、透明蒸着薄膜層3を保護するとともに、透明蒸着薄膜層3との相乗効果により、高いガスバリア性を発現させるために適宜設けられる層である。ガスバリア性被覆層4は、水酸基含有高分子化合物ならびに金属アルコキシド、その加水分解物およびその重合物からなる群より選択される少なくとも1種類を含むコーティング剤を塗布し、加熱乾燥して形成される。
【0043】
例えば、水溶性高分子と塩化スズを、水系(水、または水/アルコール混合液)溶媒に溶解させた溶液を、またはこの溶液に金属アルコキシド若しくは金属アルコキシドを予め加水分解させる等の処理を行ったものを混合した溶液を調製し、コーティング剤とする。このコーティング剤を、無機酸化物からなる透明蒸着薄膜層3に塗布した後、加熱乾燥して、ガスバリア性被覆層4を形成することができる。コーティング剤に含まれる各成分について、さらに詳しく以下で説明する。
【0044】
ガスバリア性被覆層4を形成するコーティング剤に用いられる水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等を挙げることができる。特に、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略す)をコーティング剤として用いた場合に、得られるガスバリア性被覆層4のガスバリア性が最も優れるので好ましい。ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビニルを鹸化して得られるものである。PVAとしては、例えば、酢酸基が数10%残存している部分鹸化PVAや、酢酸基が数%しか残存していない完全PVA等を用いることができ、特に限定されない。
【0045】
金属アルコキシドは、一般式M(OR)(式中、Mは、Si、Ti、Al、Zr等の金属であり、Rは、CH、C等のアルキル基である)で表される化合物である。具体的には、テトラエトキシシラン[Si(OC]、トリイソプロポキシアルミニウム[Al(O−iso−C)]等が挙げられる。テトラエトキシシランおよびトリイソプロポキシアルミニウムが、加水分解後、水系の溶媒中で比較的安定であるので好ましい。
【0046】
このコーティング剤に、ガスバリア性を損なわない範囲でイソシアナート化合物、シランカップリング剤、分散剤、安定化剤、粘度調節剤、着色剤等の公知の添加剤を必要に応じて適宜加えることも可能である。
【0047】
コーティング剤の塗布方法としては、ディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法、グラビア印刷法等の一般的なコーティング方法を用いることができる。
【0048】
ガスバリア性被膜層4の厚さは、0.01〜50μmの範囲にあることが好ましい。厚さが0.01μm未満であると、均一な塗膜が得られない傾向にあり好ましくない。また、50μmを超えると、塗膜にクラックを生じやすくなるため好ましくない。
【0049】
更に無機酸化物薄膜層3やガスバリア被膜層4上に他の層を積層することも可能である。例えば印刷層、中間層、ヒートシール層、他の介在フィルム等である。印刷層は包装袋などとして実用的に用いるために形成されるものであり、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系、塩化ビニル系等の従来から用いられているインキバインダー樹脂に各種顔料、体質顔料及び可塑剤、乾燥剤、安定剤等の添加剤などを添加したインキにより構成される層であり、文字、絵柄等が形成されている。形成方法としては、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアコート等の周知の塗布方式を用いることができる。厚さは0.1〜2.0μmでよい。
【0050】
以上のように構成されたガスバリア性透明フィルム10の上に、接着剤層5を介してヒートシール性樹脂6を積層させることにより、ガスバリア性透明包装体20を得ることができる。
【0051】
接着剤層5には、汎用的なラミネート用接着剤を用いることができる。例えば、ポリ(エステル)ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、エポキシ系、ポリ(メタ)アクリル系、ポリエチレンイミン系、エチレン−(メタ)アクリル酸系、ポリ酢酸ビニル系、(変性)ポリオレフィン系、ポリブタジエン系、ワックス系、カゼイン系等を主成分とする(無)溶剤型、水性型、熱溶融型の接着剤を使用することができる。ガスバリア性被膜層4上に接着剤層5を積層させる方法としては、例えば、ダイレクトグラビアコート法、リバースグラビアコート法、キスコート法、ダイコート法、ロールコート法、ディップコート法、ナイフコート法、スプレーコート法、フォンテンコート法等の塗布方法を挙げることができる。接着剤層のコーティング厚は、0.1〜8g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
【0052】
ヒートシール性樹脂層6は、袋状包装体等を形成する際のシール層として設けられるものであり、熱によって溶融し、相互に融着可能なものであれば特に限定されない。例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、その他のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、ポリエステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の樹脂、およびこれらの金属架橋物、ポリ乳酸系樹脂等の生分解性樹脂等を用いることができる。
【0053】
接着剤層5を介してガスバリア性被膜層4上にヒートシール性樹脂層6を積層する方法としては、例えば、ドライラミネート法、ノンソルベントラミネート法、押出ラミネート法、その他の公知のラミネート法を用いることができる。ヒートシール性樹脂層6の厚さは、目的に応じて適宜決定すればよく、一般的には15〜200μmの範囲である。
【0054】
本発明によるガスバリア性包装体20の少なくとも一方の面の最表面層であるヒートシール性樹脂層6同士が向き合うように重ね合わせると共に、周縁部同士を熱融着することにより、包装袋を作製することができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、「部」および「%」とは、特記しない限り、重量基準である。
<プライマー剤の調製>
以下の例においては、下記の材料を用いた。
【0056】
二重結合含有シランカップリング剤:信越化学工業(株) KBE 1003
N基含有シランカップリング剤:信越化学工業(株) KBE 9007
水酸基・メタクリル基含有アクリル樹脂:三菱レイヨン(株) LR−1532
水酸基・メタクリル基含有芳香族系アクリル樹脂:三菱レイヨン(株) LR−143
芳香族系イソシアナート化合物:三井化学ポリウレタン(株) コスモネート 80
脂肪族系イソシアナート化合物:三井化学ポリウレタン(株) タケネート 700
水酸基含有ウレタン樹脂:三井化学ポリウレタン(株) タケラック E−550
(A)酢酸エチル(希釈溶媒)中、二重結合含有シランカップリング剤1重量部に対し、水酸基・メタクリル基含有アクリル樹脂100質量部を混合し撹拌する。続いて、芳香族系イソシアナート化合物を水酸基・メタクリル基含有アクリル樹脂のOH基に対しNCO基が3倍等量となるように加えた混合溶液を希釈したものをプライマー剤Aとする。
【0057】
(B)酢酸エチル(希釈溶媒)中、N基含有シランカップリング剤1重量部に対し、水酸基・メタクリル基含有芳香族系アクリル樹脂100質量部を混合し撹拌する。続いて、脂肪族系イソシアナート化合物を水酸基・メタクリル基含有芳香族系アクリル樹脂のOH基に対しNCOが3倍等量となるように加えた混合溶液を希釈したものをプライマー剤Bとする。
【0058】
(C)酢酸エチル(希釈溶媒)中、N基含有シランカップリング剤1質量部に対し、水酸基・メタクリル基含有アクリル樹脂100質量部を混合し撹拌する。続いて、芳香族系イソシアナート化合物を水酸基・メタクリル基含有アクリル樹脂のOH基に対してNCOが3倍等量となるように加えた混合溶液を希釈したものをプライマー剤Cとする。
【0059】
(D)酢酸エチル(希釈溶媒)中、二重結合含有シランカップリング剤1質量部に対し、水酸基・メタクリル基含有アクリル樹脂100質量部を混合し撹拌する。続いて、脂肪族系イソシアナート化合物を水酸基・メタクリル基含有アクリル樹脂のOH基に対してNCO基が3倍等量となるように加えた混合溶液を希釈したものをプライマー剤Dとする。
【0060】
(E)酢酸エチル(希釈溶媒)中、二重結合含有シランカップリング剤1質量部に対し、水酸基・メタクリル基含有芳香族系アクリル樹脂100質量部を混合し、希釈溶媒を加えたものをプライマー剤Eとする。
【0061】
(F)酢酸エチル(希釈溶媒)中、二重結合含有シランカップリング剤1質量部に対し、水酸基含有ウレタン樹脂100質量部を混合し撹拌する。続いて、芳香族系イソシアナート化合物を水酸基含有ウレタン樹脂のOH基に対してNCO基が3倍等量となるように加えた混合溶液を希釈したものをプライマー剤Fとする。
【0062】
(G)酢酸エチル(希釈溶媒)中、水酸基・メタクリル基含有芳香族アクリル樹脂1質量部に対し、脂肪族系イソシアナート化合物を水酸基・メタクリル基含有芳香族アクリル樹脂のOH基に対してNCOが3倍等量となるように加えた混合溶液を希釈したものをプライマー剤Gとする。
【0063】
例1〜8
以下のようにして、図1に示すガスバリア性透明フィルム10を作製した。熱可塑性高分子フィルム1として、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用意した。このフィルムにコロナ処理を施した後、コロナ処理を施した面に、下記の表1に示すプライマー剤をそれぞれ用い、グラビアコート法により塗布して、透明プライマー層2を厚さ0.1μmで形成した。ただし、例8においては、この透明プライマー層は形成しなかった。続いて、この透明プライマー層2(例8においては、熱可塑性高分子フィルム1)の上に、電子線加熱方式による真空蒸着装置によって、厚み20nmの酸化アルミニウムからなる透明蒸着薄膜層3を積層した。
【0064】
ガスバリア性被覆層を形成する溶液は、以下のように調製した。4官能シランカップリング剤1重量部に、塩酸10重量部を加え、30分間撹拌し、加水分解させた。得られた固形分5重量%(SiO換算)の加水分解溶液に、ポリビニルアルコール3重量%水溶液を混合した。得られたガスバリア性被覆層を形成する溶液を、透明蒸着薄膜層3の上にグラビアコート法によって塗布して加熱乾燥し、厚み0.5μmのガスバリア性被覆層4を積層することにより、ガスバリア性透明フィルム10を得た。
【0065】
さらに、例1〜8のガスバリア性透明フィルムのガスバリア性被覆層面4上に、2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、厚さ15μmの二軸延伸ポリアミドフィルムからなる介在フィルムをドライラミネート法により積層した(図示せず)。さらに、この介在フィルム上に、2液硬化型ウレタン系接着剤である接着剤層5を介してポリオレフィン系ヒートシール層6として厚さ70μmの低密度ポリエチレンフィルムをドライラミネート法により積層してガスバリア性透明包装体20を得た。
【0066】
次に、例1〜8のガスバリア性透明フィルムの透明プライマー層2の成分分析、および例1〜8のガスバリア性透明フィルムを用いて作製したガスバリア性透明包装体20についての機能評価の結果を説明する。
【0067】
<プライマー層の成分分析>
例1〜8のガスバリア性透明フィルム10の透明プライマー層2について、TOF−SIMSによる分析を行った。分析は、ULVAC−PHI社製のTRIFT2を用い、一次イオン69Ga、加速電圧15kVで行った。
【0068】
例1〜3においては、芳香族炭化水素成分、N基含有成分、メタクリレート成分、およびシラン化合物成分が確認された。
【0069】
これに対し、例4においては、N基含有成分、メタクリレート成分、シラン化合物成分が確認されたが、芳香族炭化水素成分は確認されなかった。例5においては、芳香族炭化水素成分、メタクリレート成分、シラン化合物成分が確認されたが、N基含有成分は確認されなかった。例6においては、芳香族炭化水素成分、N基含有成分、シラン化合物成分が確認されたが、メタクリレート成分は確認されなかった。例7においては、芳香族炭化水素成分、N基含有成分、メタクリレート成分が確認されたが、シラン化合物成分は確認されなかった。また、例8においては、透明プライマー層が存在しないため、こうした成分は確認されない。併せて、表1に示す。表中、○印は、その成分が確認されたこと、×印は、その成分が確認されなかったことを示す。
【表1】

【0070】
ここで、上記したTOF−SIMSで確認された成分のピークは、それぞれ、
(i)芳香族炭化水素成分:C(m/z 91)、C(m/z 105)、C(m/z 115)、C10(m/z 129)等、
(ii)N基含有成分:CN(m/z 115)、CNO(m/z 42)等、
(iii)メタクリレート成分:C(m/z 69)、C(m/z 85)等、
(iv)シラン化合物:COSi(m/z 91)、CSi(m/z 121)等
であった。
【0071】
<ガスバリア性透明包装体のレトルト殺菌>
上述したように、例1〜8のガスバリア性透明フィルムを用いて作製したガスバリア性透明包装体の3方をシールしてパウチを作製した。このパウチに、内容物として、水150gを充填した後、残りの一方をシールしてパウチを封止し、121℃で30分間のレトルト殺菌を行った。評価として、レトルト殺菌後の酸素透過率(cc/m2/day)、剥離強度(gr/15mm)を測定し、および目視観察によるレトルト殺菌後のデラミネーション発生状況を観察した。結果を表2に示す。
【0072】
酸素透過率は、酸素透過測定装置:モダンコントロール社製のOXTRAN−10/50Aを用いて、30℃、70%の相対湿度の雰囲気下で測定した。
【0073】
剥離強度は、300mm/分の剥離速度で引っ張り測定した。
【0074】
剥離面の観察は、熱可塑性高分子フィルム側とヒートシール性樹脂側の双方に蛍光X線装置によりX線を照射し、アルミニウム元素を検出して剥離面を推定した。剥離面の評価において、AlOは無機酸化物からなる透明蒸着薄膜層3の凝集破壊、ADHはガスバリア性被膜層4と接着剤層5の間の剥離、PET/ALOは熱可塑性高分子フィルム1と無機酸化物からなる透明蒸着薄膜層3との間での剥離を表す。
【0075】
外観は、デラミネーション発生状況を目視観察して評価した。レトルト殺菌後、パウチのシール部を180°折り曲げて観察し、透明蒸着薄膜層がデラミネーションした場合は×、デラミネーションしなかった場合は○で表した。
【0076】
総合評価として、レトルト殺菌後も、高い酸素バリア性を保持し、熱可塑性高分子フィルム1と透明蒸着薄膜層3との密着性も低下せず、デラミネーションが抑えられているものと○と評価した。一方、レトルト殺菌後、酸素バリア性、熱可塑性高分子フィルム1と透明蒸着薄膜層3との密着性が低下し、デラミネーションが観察されるものを×と評価した。結果を表2に併せて示す。
【表2】

【0077】
表2から明らかなように、レトルト殺菌前は全ての包装体について密着性、ガスバリア性に問題はなかった。レトルト殺菌後の結果をみると、例1〜3のガスバリア性透明フィルムを用いて作製した包装体は、剥離面の観察から接着剤層で剥離し、熱可塑性高分子フィルムと透明蒸着薄膜層の高い密着性を維持していることがわかり、ガスバリア性も低下していなかった。また、デラミネーション等も起きておらず、外観も良好なままであった。一方、例4〜8のガスバリア性透明フィルムを用いて作製した包装体は、レトルト殺菌後の剥離面の観察から熱可塑性高分子フィルム1と無機酸化物からなる透明蒸着薄膜層3との密着性に劣ることがわかり、ガスバリア性も低下していた。また、デラミネーションが発生して外観不良が生じた。
【0078】
従って、本発明のガスバリア性透明フィルムである例1〜3を用いて作製した包装体は、レトルト殺菌後も、熱可塑性高分子フィルム1と透明蒸着薄膜層3との高い密着性、および内容物に対して影響を与える気体等を遮断する高いガスバリア性を維持し、デラミネーション等の発生がなく、レトルト殺菌耐性に優れることがわかった。
【0079】
以上詳述したように、本発明によれば、透明性に優れ、かつ高いガスバリア性を有する汎用性のある透明フィルムを得ることができる。さらに、このガスバリア性透明フィルムを用いて作製した包装体から形成される包装袋は、熱可塑性高分子フィルムと無機酸化物からなる透明蒸着薄膜層との高い密着性およびガスバリア性の維持、デラミネーションの抑制等を含めたレトルト殺菌耐性にも優れており、包装分野において幅広く使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明のガスバリア性透明包装体の断面図。
【符号の説明】
【0081】
1…熱可塑性高分子フィルム、2…透明プライマー層、3…無機酸化物からなる透明蒸着薄膜層、4…ガスバリア性被覆層、5…接着剤層、6…ヒートシール性樹脂層、10…ガスバリア性透明フィルム、20…ガスバリア性透明包装体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性高分子フィルムと、前記熱可塑性高分子フィルムの少なくとも一方の面に積層されたプライマー層と、前記プライマー層の上に積層された無機薄膜層とを有するガスバリア性透明フィルムであって、前記プライマー層が、芳香族炭化水素成分、N含有成分、メタクリレート成分、およびシラン化合物成分を含むことを特徴とするガスバリア性透明フィルム。
【請求項2】
前記プライマー層は、TOF−SIMSによる分析結果において、芳香族炭化水素成分としてC、C、C、C10のピークを示すことを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性透明フィルム。
【請求項3】
前記プライマー層は、TOF−SIMSによる分析結果において、N含有成分としてCN、CNOのピークを示すことを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性透明フィルム。
【請求項4】
前記プライマー層は、TOF−SIMSによる分析結果において、メタクリレート成分としてC、Cのピークを示すことを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性透明フィルム。
【請求項5】
前記プライマー層は、TOF−SIMSによる分析結果において、シラン化合物成分としてCOSi、CSiのピークを示すことを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性透明フィルム。
【請求項6】
さらに前記無機薄膜層上に積層されたガスバリア性被覆層を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のガスバリア性透明フィルム。
【請求項7】
前記熱可塑性高分子フィルムはポリエステルフィルムまたはポリアミドフィルムであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のガスバリア性透明フィルム。
【請求項8】
前記無機薄膜層は酸化ケイ素または酸化アルミニウムの蒸着膜からなることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のガスバリア性透明フィルム。
【請求項9】
前記ガスバリア性被覆膜は、水酸基含有高分子化合物、ならびに金属アルコキシド、その加水分解物およびその重合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載のガスバリア性透明フィルム。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のガスバリア性透明フィルム上に、接着剤層を介して、少なくともヒートシール性樹脂層を積層してなることを特徴とするガスバリア性透明包装体。

【図1】
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【公開番号】特開2008−265096(P2008−265096A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−109441(P2007−109441)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】