説明

ガス化改質設備の運転制御方法

【課題】廃棄物のガス化改質方法において、改質ガス中の炭素微粒子の含有量を低減するため方法を提供する。
【解決手段】 プラスチックを30重量%以上含む廃棄物を竪型分解炉で熱分解・ガス化・溶融し、発生したガスを該竪型分解炉内の廃棄物のストックライン上部に設けられたガス改質空間内で水蒸気改質し、改質後のガスを急冷洗浄装置において洗浄水で急冷した後、精製して燃料ガスとして利用するプラスチック含有廃棄物のガス化改質設備の運転制御方法において、フリーボード出口ガス温度を1000℃以上とし、発生ガスに水又は水蒸気を装入して改質し、改質ガス中の水分量が33容量%以上となるようにし、改質ガスのリーボード部での滞留時間が1.5秒以上となるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ごみや産業廃棄物などの廃棄物をガス化し、得られる生成ガスを燃料用ガスなどとして回収する廃棄物のガス化改質設備の運転制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみやシュレッダーダストなどの廃棄物を熱分解してガス化した後、燃焼させて高温のガスを発生させ、その残渣を溶融しスラグにして排出する廃棄物処理技術の開発が進められている。この技術は上記の特徴を有すると共に廃棄物の減容化と残渣に含まれている重金属の不溶化が同時に達成される技術として注目されている。従来廃棄物を溶融処理する溶融炉として種々のものが提案されている。
【0003】
特許文献1には、廃棄物を熱処理炉内で加熱して熱分解し、発生した乾留ガスを燃焼炉で燃焼させて処理する廃棄物処理装置において、熱処理炉と燃焼炉との間に乾留ガスを改質する水蒸気改質装置を設けることにより、廃棄物の熱分解により発生する乾留ガスの性状を改善し、燃焼炉内での燃焼効率を向上させることが記載されている。
この方法は改質後のガスをそのまま燃焼炉で燃焼するというものであり、改質ガスを他の用途に利用することができない。
【0004】
特許文献2にはプラスチック廃棄物を熱分解装置において500℃以下で熱分解し、その熱分解生成物を、水蒸気改質装置における燃料、空気及び水蒸気を供給して700〜1200℃に高温に保持した高温部に供給し、この高温部において熱分解生成物を低分子量の炭化水素及び水素などに分解するプラスチック廃棄物の処理方法が記載されている。しかしながら、特許文献1には水蒸気改質によって得られた高温改質ガスをどの様に冷却し精製して製品ガスとするかについては記載がない。
【0005】
特許文献3には、炭素化合物と水蒸気とを混合し、炭素化合物を水蒸気改質反応により改質する炭素化合物の水蒸気改質方法において、炭素化合物と混合すべき水蒸気を800℃以上の高温域に加熱し、加熱後の高温水蒸気を炭素化合物と混合して、炭素化合物の水蒸気改質反応を行わせることにより、熱分解炉の熱分解ガスを洗浄・冷却可能な比較的良質の高カロリーガスに改質し、有効利用可能な熱分解ガスの用途を拡大するとともに、洗浄・冷却装置を小型化することができることが記載されている。
この方法はガス洗浄・冷却工程を有しているためスカムが発生するが、特許文献3にはこのスカムの発生を低減する方法については記載がない。
【0006】
【特許文献1】特開2003−42416号公報
【特許文献2】特開昭48−36275号公報
【特許文献3】特開2000−290666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、プラスチックを含む廃棄物のガス化改質設備において、プラスチック燃焼ガスの改質反応領域での触媒を用いることなく水/水蒸気改質を完結し、飽和型冷却装置内でのスカムの発生によるトラブルを回避することを可能にする廃棄物のガス化改質設備の運転制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、できることを見出して本発明を完成させた。
すなわち、本発明は次に記載する通りのものである。
【0009】
(1)プラスチックを30重量%以上含む廃棄物を竪型分解炉で熱分解・ガス化・溶融し、発生したガスを該竪型分解炉内の廃棄物のストックライン上部に設けられたフリーボード部で水蒸気改質し、改質後のガスを飽和型冷却装置において洗浄水で急冷した後、精製して燃料ガスとして利用するプラスチック含有廃棄物のガス化改質設備の運転制御方法であって、下記の条件(a)〜(c)を満足するように運転制御することを特徴とする運転制御方法。
(a)該フリーボード出口ガス温度を1000℃以上となるようする。
(b)フリーボード部を出る改質ガス中の水分量が33容量%以上となるようにする。
(c)該改質ガスのフリーボード部での滞留時間が1.5秒以上となるようにする。
(2)前記改質ガス中の水分量は、精製合成ガス中の水素、一酸化炭素、二酸化炭素組成と、前記フリーボード出口温度より、以下の反応式での平衡計算により、求めることを特徴とする上記(1)記載のプラスチック含有廃棄物のガス化改質設備の運転制御方法。
CO + HO = H + CO (反応定数:K)
Oモル分率=(COモル分率・Hモル分率)/(COモル分率・K)
(3)前記滞留時間の制御を、
(i)精製合成ガス中の水素、一酸化炭素、二酸化炭素及びメタンの組成に基づいて、炉から出てきた炭素、水素、酸素及び窒素の各元素量を求め、
(ii)前記(i)で得た元素量から、装入した水分もしくは水蒸気、燃料ガス、酸素、窒素の元素量を除去することにより、廃棄物由来の元素量を求め、
(iii)スラグ量及び前記(ii)で得た廃棄物由来の元素量から、廃棄物中の三成分(灰分、可燃分、水分)の割合および可燃分中の元素組成を求め、
(iv)可燃物中の炭素率が0.6の一定値であると仮定して、
(v)廃棄物の発熱量を算出し、
該発熱量に従って該廃棄物の装入速度を変えることによって行うことを特徴とする上記(1)又は(2)記載のプラスチック含有廃棄物のガス化改質設備の制御方法。
(4)改質ガス中のHOモル分率と別途測定された該精製合成ガスの乾きガス量から計算された該改質ガスの水蒸気量と該精製合成ガスの乾きガス量を合計することによって求められた該改質ガスの単位時間当たりの実流量でフリーボード空間容積を割ることによって炉における滞留時間を算出し、前記改質ガスの前記ガス改質空間で内での滞留時間を1.5秒以上となるように該廃棄物の装入速度をも同時に制御することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のプラスチック含有廃棄物のガス化改質設備の運転制御方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、改質ガスの冷却洗浄のための飽和型冷却装置を備えたプラスチック含有廃棄物のガス化改質設備において飽和型冷却装置内でのスカムの発生を低減することができ、ガス化改質設備の安定的な操業が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の方法を助燃剤として酸素ガスを用いる炉に適用する場合を例にとって以下説明するが、本発明の方法は助燃剤としてコークスを用いる炉においても適用することができる。
図1はプラスチックを含む廃棄物をガス化改質するための設備を示す。
本発明において用いる廃棄物ガス化処理装置は、廃棄物をガス化溶融して熱分解ガス(以下、「発生ガス」という)を発生させるガス化部とこの領域の上部に設けられた発生ガスを改質するための空間(以下、「フリーボード部」という。)とを備えた縦型ガス化溶融炉と、ガス化によって生成した改質ガスを冷却洗浄する冷却洗浄装置とを備えている。
【0012】
プラスチックを含む廃棄物は圧縮、乾燥・熱分解処理を受けた後、ガス化部においてガス化溶融処理され、次いで必要に応じて設けられるガス精製装置で精製されて燃料ガスとして回収される。発生したガスはフリーボード部で改質されたのち、急冷洗浄装置において冷却水によって急冷され洗浄されて水溶性成分や炭素微粒子等が除去され、次いでガス精製工程4で精製されて燃料ガスとして回収される。
本発明においては、発生ガスを改質するための水又は水蒸気をフリーボード部で発生ガス中に装入することが好ましいが、水を廃棄物に直接添加することもできる。
【0013】
以下、上記のガス化溶融炉、冷却洗浄装置及びガス精製装置のそれぞれについて説明する。
ガス化溶融炉の下部にはバーナーが配置され、このバーナーによって炉内に燃料ガスと酸素とが導入され、この酸素ガスが乾留物中の炭素をガス化し、一酸化炭素と二酸化炭素が生成する。また、高温水蒸気が存在する場合には炭素と水蒸気とによる水性ガス化反応が生じて一酸化炭素と水素とが生成される。更に、有機化合物は熱分解して一酸化炭素と水素が生成する。
ガス化部からフリーボード部に上昇してきた発生ガスは、フリーボード部に供給される水又は水蒸気と反応して改質されて例えば下記の反応により合成ガスを生成し、改質されたガスはガス化溶融炉の塔頂部から排出される。
CH + HO → CO + 3H
CO + HO → H + CO
【0014】
排出された改質ガスは冷却洗浄装置(飽和型冷却装置)において急冷洗浄される。粗合成ガスを冷却洗浄するのは、生成ガスの純度を高めるためである。純度の高い天然ガスなどであれば、ガス改質した後の冷却時に熱交換器によって熱回収が容易であるが、廃棄物をガス化して得られるような不純物が多い生成ガスは、冷却時に不純物が熱交換器に付着するため長期間運転するのが困難となる。このため、生成ガスを冷却して不純物を分離する。また、冷却することによって、ダイオキシンの再合成も回避できる。
【0015】
ところで、改質ガスをボイラによって熱を回収せずに急冷して燃料ガスを回収すると、冷却過程で、2CO→CO+Cなどの反応により炭素微粒子が発生する。
この炭素微粒子が改質ガスに含まれていると、改質ガスの冷却洗浄装置でスカムが発生して後工程のガス精製工程において装置を閉塞させたり、製品として得られた燃料ガスを使用する際にも悪影響を及ぼしたりするので、この炭素微粒子を改質ガスから除去する必要があるが、この炭素微粒子は微細であるため、これを除去することは容易ではない。
【0016】
改質ガス中の固形物濃度が低ければ急冷洗浄装置内でのスカムの発生が抑えられるが、固形物濃度が2000mg/L以上になるとスカムが連続的に発生する頻度が高くなる。発生するスカムが少量の場合には、スカム溜に捕捉され水スプレーで消泡して除去できるが、スカムが多量に発生すると、飽和型冷却装置を分解清掃する必要があり、操業が中断されるので、影響が大きい。
【0017】
本発明者等は、ガス化改質での炭素微粒子の発生を抑えるには改質ガス中の水分濃度が重要なパラメータであることを見出した。
図2は改質ガス中の水分濃度と冷却洗浄装置の冷却水中の固形物濃度(SS:mg/L)との関係を示したものであるが、改質ガス中の水分濃度が増加するにつれて冷却水中の固形物濃度が減少していくことが分かる。
フリーボード部においては水又は水蒸気が発生ガスに添加されてガス改質されるが、添加する水又は水蒸気としては、処理系内で回収される蒸気を直接装入するか、前記飽和型水冷却装置で冷却され凝集した水を系内で回収される蒸気で加熱して蒸気化したものを前記ガス改質部に供給することが好ましい。
本発明では、発生ガスを改質するための水又は水蒸気のフリーボード部への供給量を、フリーボード部から排出される改質ガス中の水分量が33容量%(HOモル分率:0.33)以上好ましくは35容量%(HOモル分率:0.35)以上となるように調整する。水分割合が33容量%未満の場合は、急激に炭素微粒子を発生し、水の補給が多量になるだけでなく、発生した排水の処理が容易ではなくなる。
但し、改質ガス中の水分量が多くなればなる程熱効率が悪くなるので、熱効率の観点からは、好ましくは、35%〜60%、より好ましくは35%〜50%、更に好ましくは35%〜45%、好ましい設定値としては40%とするのがよい。
【0018】
フリーボード出口の改質ガスは高温であり、腐食成分も存在するので、改質ガス中の水分量を直接測定することは困難である。また、飽和型冷却装置で凝縮した水量は、循環使用していること、及び炭素微粒子が存在するために分析計の閉塞も考えられることから、連続的に測定することは容易ではない。そこで、本発明では、測定が困難である改質ガス中の水分量を乾きガス中のガス組成から計算する。
すなわち、改質ガス中の水分量は、精製合成ガス中の水素、一酸化炭素、二酸化炭素組成と、前記フリーボード出口温度より、以下の反応式での平衡計算によって求める。実際の操業に実験的に凝縮水量を測定したところ、平衡計算で求められる数字とほぼ一致した。
CO + HO = H + CO K反応定数
Oモル分率=(COモル分率・Hモル分率)/(COモル分率・K)
【0019】
本発明においては、フリーボード出口ガス温度を1000℃以上となるように制御する。具体的には、改質設備での酸素供給量を制御することにより出口ガス温度を1000℃以上とすることができる。1000℃を下回ると、炭素微粒子だけでなく、タールなどの炭化水素を発生し、後工程の飽和型冷却を阻害する。また、炭素微粒子の発生を抑制するためには1100℃以上が好ましく、1200℃以上とするのがより好ましい。
【0020】
また、改質ガスは、該ガス改質空間内での滞留時間が1.5秒以上好ましくは2秒以上となるように運転制御する。滞留時間を長くすることにより炭素微粒子が水性ガス反応[C+HO→CO+H]によって一酸化炭素に変化し、改質ガス中の炭素微粒子の含有量が低減される。
滞留時間は下記式で求めることが出来る。
滞留時間=ガス改質に利用されるフリーボード空間容積/(単位時間当たりの湿ガス量×(273+T)/273)
ここで、Tは出口ガス温度であり、湿ガス量は乾きガス量の測定値と湿ガスのHO%の測定値から、又は後述の低位発熱量の推算の時に求められたものを使用できる。
前記式中の「単位時間当たりの湿ガス量×(273+T)/273」は、改質ガスの水蒸気量と精製合成ガスの乾きガス量を合計することによって求められた該改質ガスの単位時間当たりの実流量である。
【0021】
本発明の方法は、処理される廃棄物中のプラスチック含有量が30重量%以上である場合に特に好適である。プラスチックが30重量%以上含まれる場合、本発明の方法によって処理しないと、ガス化溶融炉から排出される改質ガス中に炭素微粒子が多く含まれるようになり、後段の冷却洗浄工程における飽和型冷却装置で凝縮水中に高濃度の炭素微粒子が浮遊し、この炭素微粒子が浮上しスカムとなり、飽和型冷却を阻害し、さらに悪化した場合、ガス流れが阻害されるようになる。
プラスチック含有量が30重量%未満である場合には、フリーボード出口ガス温度1000℃以上及び滞留時間1.5秒以上の条件は通常に満たされるが、改質ガス中の水分量には揺らぎがあり33容量%から外れる場合がある。また、プラスチック含有量が30重量%を超えるとフリーボード出口ガス温度1000℃以上とすることができるが、改質ガス中の水分量は33容量%未満となり、また、発生ガス量が増大するので滞留時間が1.5秒を下回ってスカムが発生する場合がある。このため、本発明では特に、プラスチックが30重量%以上含まれる場合にフリーボード出口ガス温度を1000℃以上、滞留時間を1.5秒以上、改質ガス中の水分量を33容量%以上となるように制御するものであり、これにより、スカムの発生を低減し、操業が中断するという事態が生じないようにすることができる。
【0022】
ガスを急冷する方法としては、水を噴霧して、水が蒸発する蒸発潜熱でガスを冷却する方法が一般的であるが、本発明においては飽和型冷却装置を用いる。飽和型冷却装置は、ガスに多量の水をかけて、水の顕熱、すなわち、かけた水温を上昇させることで、ガスを冷却させる。この場合、露点より低い温度で冷却するため、ガス中の水分が凝縮する。水を多量にかけることにより、冷却塔の壁面の温度を100℃より低くすることができ、表面を湿潤状態に保つことができ、材質の選択が容易になる。好ましくは、70℃以下までガス冷却するのがよい。また、蒸発する必要がないので、冷却容積が小さくてすむ、従って、急冷することが可能となる。
これに対して、蒸発型冷却装置の場合は、ガス温度の低下とともに、温度低下速度がきわめて小さくなる。
【0023】
急冷洗浄は例えば次のようにして行う。
ガス化溶融炉から排出される改質ガスに対して、冷却塔で酸性水を噴射することによってガスの温度を約1200℃から約70℃にまで冷却し、ダイオキシン類の生成を阻止する。この時、酸性水によってガスが洗浄され、粗合成ガス中に含まれるPbなどの重金属成分と塩素分は洗浄液中に溶け込む。酸洗浄された合成ガスは、アルカリ洗浄、脱硫(例えば、鉄キレートによる無機硫黄の除去)、除湿(冷水スプレー)の各処理を受けて排出される。
【0024】
さらに、飽和型冷却装置によると、かけた水を蒸発させる必要がないので、小さな水粒子にする必要がなく、ノズルの径を小さくする必要がないため、ノズルでの閉塞などの問題がない。また、析出物などがある場合は、冷却塔の内部で析出物を溶かしてしまうので、長期に安定的に使用が可能である。但し、飽和型冷却装置では、水処理が必要となる。
飽和型冷却装置は急冷部と洗浄部との2段以上の構成とすることができる。すなわち、1段目では急冷効果を高めるために多量の冷却水(洗浄水)をかけて洗浄効果よりも冷却効果を大きくし、2段目以降を洗浄効果を上げるための洗浄部とすることができる。
【0025】
また、飽和型冷却装置においては、冷却水(洗浄水)により濡れ壁が形成されて内壁温度が100℃以下に保持されることが特に好ましい。例えば飽和型冷却装置の壁面から対向する壁面に向けて冷却水を多量にかけると、大部分の洗浄水は管内を落下し、一部は壁面に沿って流下し濡れ壁を形成する。冷却装置全体で粒子に捕捉された液滴が蒸発しにくくなり、壁面に捕捉されても、表面が濡れて、落下していると、その部分に堆積することがない。さらに、100℃以下の温度が保障されていると、材質的にも選択の幅が広がり、設備を長期に使用することが可能となる。
飽和型冷却装置で使用した冷却水の一部若しくは全部を熱交換によって冷却し、再び急冷洗浄装置の冷却水として再利用することが好ましい。再利用をせず新たな水を用いて冷却すると、処理しなければならない水が増加し、水処理装置の経済性が悪化する。
【0026】
ガス化改質においては、炭素微粒子だけでなく、沸点の低い重金属のガスも存在する。この重金属は冷却時に、粒子として析出するが、これは、酸性の水によって吸収除去することが可能である。この場合、pHが高いと、除去率が低下し、pHが低すぎると、長期の使用に関して、冷却装置の材質や、pH計の材質に問題が出てくる。上記のことを勘案すると、急冷洗浄装置で使用する冷却水のpHは2以上、5以下に調整することが好ましい。
【0027】
また、廃棄物中には、塩素分が含まれており、これは廃棄物をガス化した際には、通常は、塩化水素ガスとして、発生ガス中に含まれ、この塩化水素は冷却水に溶けることによって冷却水が塩酸酸性の水溶液になる。この塩酸水溶液は、ガス化改質炉で回収されたガス状の亜鉛金属又は亜鉛化合物を吸収除去することができるので、急冷洗浄装置で使用した冷却水をガス化改質炉で回収された亜鉛金属又は亜鉛化合物の洗浄に用いることが好ましい。
ガスに添加するため水、水蒸気の供給源としては、系内で発生する温水を用いることが経済的であり好ましい。
【0028】
洗浄後のガスは適宜の精製装置で更に精製することができる。ガス精製装置は図1に示したように、アルカリ洗浄装置、脱硫装置および除湿装置を含むことが好ましい。高度な除塵、脱塩化水素、脱硫などを行うためには、湿式方式の方が好ましい。100℃以下に冷却するには、蒸発型冷却装置よりも、飽和型水冷却の方がコンパクトで、急冷することができる。蒸発型冷却装置は水滴が蒸発するまでの時間を確保する必要があり、装置容積が大きく必要である。冷却することによってダイオキシンの再合成を防止することができる。
また、ボイラなどの熱交換器を設置する場合は、原料に不純物が多いため、付着物のために、長時間の運転が容易ではない。
生成ガス中には、原料中の水分に由来する水蒸気、さらには、ガス化の過程で原料中の水素分と酸素との反応で発生した水蒸気が含まれている。この生成ガスを飽和型冷却装置で冷却すると、この水蒸気が凝縮して水が生成する。この水の一部を蒸気で加熱して前記ガス改質部に装入することで、放流水量を減少させることができる。
【0029】
本発明においては、前記(a)〜(c)の制御と共に、廃棄物の低位発熱量(真発熱量)を求めて、廃棄物および水分の装入速度を制御することによってスカム発生量の低減を図ることが好ましい。
一般に、廃棄物の処理においては、廃棄物は組成が千差万別であり、たとえ炉への投入量が一定であっても供給される熱量は絶えず変動する。そのため、炉内での燃焼状態も常に変動し、発生(回収)するガス量が不安定であるばかりでなく、炉へ供給する燃料ガスの使用量も必要以上に多くなったり、あるいは炉体耐火物の損耗も激しくなる傾向がある。従って、炉へ投入する廃棄物の有する熱量については、事前にサンプリングして成分分析し、その分析結果より廃棄物の低位発熱量(真発熱量)を求めて、操業での廃棄物の装入速度に反映させることが好ましい。
低位発熱量を計算するための手法を以下に述べる。
【0030】
(低位発熱量を計算するための手法)
以下の計算では、S(硫黄)量は全体ガス量に対して少ないので無視する。
また、V、Fはそれぞれ以下の単位で表されるガス量であることを意味する。
V:mN/h単位のガス量
F:kg/h単位のガス量
算出に必要なデータは以下の表1に示す通りである。
・(清浄化後の)乾きガス量 Vg
・乾きガス中のガス組成
一酸化炭素 xCO
二酸化炭素 xCO
水素 xH
メタン xCH
窒素 xN =1−xCO−xCO−xH−xCH
・炉へ装入するLNG量 VLNG
・(NとOからなる)高濃度酸素量Vho
・(Vho中の)酸素濃度xho
酸素量VFO =Vho×xho
窒素量VFN =Vho×(1−xho)
(重量ベースの)酸素量FO =32/22.4×Vho×xho
(重量ベースの)窒素量FN =32/22.4×Vho×(1−xho)
・溶融固化物(スラグ+メタル)量 Fsl
(全廃棄物量に対する)溶融固化物量の比率 Ash
・反応定数(出口温度Tでのブルドワ平衡の) K
(注)通常、出口温度Tは一定値になるようにコントロールされるので、その温度での平衡定数(文献値による)
【0031】
上記の値から各組成ガス量は次のように求めることが出来る。
(各組成ガス量)
VCO = Vg×xCO
VCO= Vg×xCO
VN = Vg×xN
VCH= Vg×xCH
VH = Vg×xH
VHO=(VCO×VH)/(VCO×K)
ここで、水蒸気量(VHO)は出口温度Tでブルドワ平衡が成立していると仮定して計算で求めることとした。
【0032】
また、上記の各組成ガス量から、湿りガス量、ガス元素量を次のようにして求めることが出来る。
(湿りガス量) : Vwg=Vg+VH
(ガス元素量)
炭素(C) : F(C)=(VCO+VCO+VCH)×12/22.4
水素(H) : F(H)=(4VCH+2VH+2VHO)×1/22.4
酸素(O) : F(O)=(VCO+2VCO+2VHO)×16/22.4
窒素(N) : F(N)=(2×VN)×14/22.4
トータル Fg =F(C)+F(H)+F(O)+F(N)
【0033】
また、炉に吹込むLNGに関して次の量を求める。
炉に吹込むLNG量 FLNG
LNG起因のガス元素量
炭素(C) : LNG(C)
水素(H) : LNG(H)
窒素(N) : LNG(N)
そうすると、装入物からのガス元素量及び装入物量は次のように計算できる。
(装入物からのガス元素量)
炭素(C) : Fr(C) =F(C)−LNG(C)
水素(H) : Fr(H) =F(H)−LNG(H)
酸素(O) : Fr(O) =F(O)−FO
窒素(N) : Fr(N) =F(N)−FN−LNG(N)
Total Fgr =Fr(C)+F(H)+F(O)+F(N)
装入物量 Fr =Fgr + Fsl
【0034】
また、装入物の元素組成は次のように計算できる。
(装入物の元素組成(水分込))
炭素率(RC) RC = Fr(C)/Fr
水素率(RH) RH = Fr(H)/Fr
酸素率(RO) RO = Fr(0)/Fr
窒素率(RN) RN = Fr(N)/Fr
ash率(Ra) Ra = Fsl/Fr
【0035】
そうすると、装入物中の三成分の割合は次のように表すことができる。
(装入物中の三成分の割合)
水分(W) W = 1− Ra − RC/Rbc
計算式の導出
W=1−A−B=1−Ra−B
ここで、可燃分中の炭素の割合をRbcとし、装入物の炭素率をRC、装入物中の可燃分の割合をBとすると、Rbc=RC/Bであるから、B=RC/Rbcと表せる。
すなわち、W=1−Ra−RC/Rbc
可燃分(B) B=1−W−A
灰分(A) A=Ra
【0036】
上記の式において、可燃分中炭素(Rbc)を0.6(プラスチック含有量30重量%以上)と仮定して装入物の元素組成を求めると次のようになる。
なお、可燃分中の炭素率をほぼ一定にできることは、参考文献「ごみ処理施設整備の計画・設計要領 (社)全国都市清掃会議(1999)p145,p143参照)」に記載があり、本発明者等はプラスチック含有量が30%以上の場合は、可燃分中の炭素率は60%であるとの知見を得て低位発熱量の推算に利用した
【0037】
(装入物の元素組成)
炭素成分比 c =RC
水素成分比 h =(RH−W×2/18)
酸素成分比 o =(RO−W×16/18)
窒素成分比 n =RN/B
硫黄成分比 s=0と仮定する。
そして、低位発熱量は、Steuerの式(「ごみ処理施設整備の計画・設計要領」(社)全国都市清掃会議(1999)p145,p143参照)により次のように計算できる。
(低位発熱量:Hu)
Hu(kJ/kg)=33.94*(c−3*(o/8))+23.88*3*(o/8)+144.56*(h−(o/16))+10.48*s−2.5*(9*h+W)
【実施例】
【0038】
以下では、本願発明の実施例と比較例について述べて、本願発明の効果を明らかにする。
[実施例1]
装置としては図1に示される装置を用いた。
プラスチックを40重量%含有した廃棄物に15%の水を添加してガス化改質設備でガス化改質処理した。フリーボード部の装入酸素量、処理量(炉下部の酸素量)を調整して、炉頂温度が1200℃、フリーボード部を出る改質ガス中の水分量が37.0容量%、改質ガスのガス改質空間内での滞留時間が2.3秒となるようにした。
ガス化改質によって発生した乾きガスの組成はH:39.1%、CO:34.2%、CO:22.2%、であった。平衡計算すると湿りガス中のHOは37.0%であった。スカムの発生もなく、連続的な運転が可能であった。このときの冷却凝縮水の固形物濃度は1250mg/Lであった。
【0039】
[実施例2]
装置としては図1に示される装置を用いた。
プラスチックを40重量%含有した廃棄物に15%の水を添加してガス化改質設備でガス化改質処理した。フリーボード部の装入酸素量、処理量(炉下部の酸素量)を調整して、炉頂温度が1200℃、フリーボード部を出る改質ガス中の水分量が37.0容量%、
改質ガスのガス改質空間内での滞留時間は、前記の低位発熱量を計算するための手法において示した仮定と標式を用いて、時時刻刻の低位発熱量を求め、その発熱量に従って炉下部から吹き込む酸素量を制御する方法で装入速度をコントロールし、その値が2.0〜2.5秒となるようにした。
ガス化改質によって発生した乾きガスの組成はH:33.9%、CO:35.1%、CO:25.0%、であった。平衡計算すると湿りガス中のHOは34.2%であった。スカムの発生もなく、連続的な運転が可能であった。このときの冷却凝縮水の固形物濃度は1500mg/Lであった。
【0040】
[比較例]
プラスチックを40重量%含有した廃棄物を、水を添加することなくガス化改質設備でガス化改質処理した。炉頂温度が1190℃、滞留時間が2.1秒となるようにした。
ガス化改質して発生した乾きガスの組成はH:37.9%、CO:37.2%、CO:20.4%、であったが、すぐにスカムを発生し、操業を中断する必要があった。このときの乾きガス組成から平衡計算すると湿りガス中のHOは32%であった。このときの冷却凝縮水の固形物濃度は2800mg/Lであった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の方法を用いると、廃棄物のガス化改質設備におけるガス急冷洗浄装置内でのスカムの発生によるトラブルを回避しガス化改質設備を安定的な操業が可能とするのでは、プラスチックを含む廃棄物のガス化改質設備の運転制御方法として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】ガス化改質方式による廃棄物処理の概要を示す図である。
【図2】冷却水中の固形物濃度(SS:mg/L)とガス中の水分濃度との関係を示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックを30重量%以上含む廃棄物を竪型分解炉で熱分解・ガス化・溶融し、発生したガスを該竪型分解炉内の廃棄物のストックライン上部に設けられたフリーボード部で水蒸気改質し、改質後のガスを飽和型冷却装置において洗浄水で急冷した後、精製して燃料ガスとして利用するプラスチック含有廃棄物のガス化改質設備の運転制御方法であって、下記の条件(a)〜(c)を満足するように運転制御することを特徴とする運転制御方法。
(a)該フリーボード出口ガス温度を1000℃以上となるようする。
(b)フリーボード部を出る改質ガス中の水分量が33容量%以上となるようにする。
(c)該改質ガスのフリーボード部での滞留時間が1.5秒以上となるようにする。
【請求項2】
前記改質ガス中の水分量は、精製合成ガス中の水素、一酸化炭素、二酸化炭素組成と、前記フリーボード出口温度より、以下の反応式での平衡計算により、求めることを特徴とする請求項1記載のプラスチック含有廃棄物のガス化改質設備の運転制御方法。
CO + HO = H + CO (反応定数:K)
Oモル分率=(COモル分率・Hモル分率)/(COモル分率・K)
【請求項3】
前記滞留時間の制御を、
(i)精製合成ガス中の水素、一酸化炭素、二酸化炭素及びメタンの組成に基づいて、炉から出てきた炭素、水素、酸素及び窒素の各元素量を求め、
(ii)前記(i)で得た元素量から、装入した水分もしくは水蒸気、燃料ガス、酸素、窒素の元素量を除去することにより、廃棄物由来の元素量を求め、
(iii)スラグ量及び前記(ii)で得た廃棄物由来の元素量から、廃棄物中の三成分(灰分、可燃分、水分)の割合および可燃分中の元素組成を求め、
(iv)可燃物中の炭素率が0.6の一定値であると仮定して、
(v)廃棄物の発熱量を算出し、
該発熱量に従って該廃棄物の装入速度を変えることによって行うことを特徴とする請求項1又は2記載のプラスチック含有廃棄物のガス化改質設備の制御方法。
【請求項4】
改質ガス中のHOモル分率と別途測定された該精製合成ガスの乾きガス量から計算された該改質ガスの水蒸気量と該精製合成ガスの乾きガス量を合計することによって求められた該改質ガスの単位時間当たりの実流量でフリーボード空間容積を割ることによって炉における滞留時間を算出し、前記改質ガスの前記ガス改質空間で内での滞留時間を1.5秒以上となるように該廃棄物の装入速度をも同時に制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプラスチック含有廃棄物のガス化改質設備の運転制御方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−106117(P2008−106117A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289417(P2006−289417)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【出願人】(593141481)JFE環境ソリューションズ株式会社 (47)
【Fターム(参考)】