説明

ガス拡散電極内の触媒として使用可能な、酸化ジルコニウムによって活性が高められた銀粉の多孔質クラスター、及びその製造方法

本発明は、銀粒子の多孔質クラスターを複数含む触媒である。各クラスターは、(a)複数の銀の一次粒子と、(b)酸化ジルコニウム(ZrO)の結晶状粒子とを含み、ZrOの結晶状粒子の少なくとも一部が、複数の銀一次粒子の表面によって形成される孔内に配される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化ジルコニウムによって活性が高められた銀粉の多孔質クラスターを含む銀ベース触媒、該銀ベース触媒を製造する方法、該銀ベース触媒と撥水ポリマーを含む触媒混合物、及び該触媒混合物を製造する方法に関する。より詳細には、本発明は、このような銀ベース触媒と混合物を含むガス拡散電極、及び該電極の製造方法に関する。
【0002】
本発明はまた、本発明の銀ベース触媒を、各種のアルカリ電解質電気化学セルで使用することに関する。アルカリ電解質電気化学セルとしては、アルカリ型燃料電池、金属水素化物陽極を備えるアルカリ型燃料電池、金属−空気充電式電池、金属−空気非充電式電池、酸素センサー及び電解セル等が挙げられる。電解セルとしては、塩素−アルカリセル等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0003】
本発明はまた、本発明の触媒混合物と本発明のガス拡散電極を、このようなアルカリ電解質電気化学セルにおいて使用することに関する。
【背景技術】
【0004】
銀触媒は、化学工業(例えば、エチレン酸化反応)、電池(一次電池及び充電式電池の両方)並びにアルカリ電解質、酸素センサー及び電解セルを用いた燃料電池など、様々な用途に使用される。サブミクロン及びナノサイズの銀金属粉及び銀ベースのバルク合金触媒は、異なる方法で製造可能である。この方法は、例えばAg−Ca、Ag−Mg、Ag−Al及びその他の合金から「スケルトン」触媒を製造するというラネー考案の方法を含み、この触媒は、加熱処理したAl−Ag合金の一片からAlを溶出させた化学沈殿物である(例えば、特許文献1参照のこと。特許文献1を参照することにより、その全ての内容を本発明に含むこととする)。
【0005】
上記方法により、数十分の1ミクロンから数十ミリメータの範囲の多孔質の銀凝集体又は粒子クラスターが得られる。これらは、平均粒径が約サブミクロンから数百ミクロンの一次粒子で構成される。
【0006】
上述の方法は全て、サブミクロン又はナノサイズの一次粒子を有する銀粉触媒を生成可能である。しかしながら、この最終生成物が電池用の空気又は酸素電極及びアルカリ電解質を含む燃料電池として使用された場合には、これら技術は欠点を有することが見出されている。この欠点とは、アルカリ電解質内で銀触媒が溶解する現象に関連するものである。
【0007】
銀は、単独ではアルカリ溶液における溶解率が非常に低い一方、酸化銀の溶解率がかなり高い。アルカリ溶液における銀の陽極酸化において、一次相転移は、+0.24V電位(本明細書全体において、電位は、Hg/HgOの参照電極に対する値である。)でAg→AgOである。次の相転移は、約+0.5Vの電位でAgO→AgOである。
【0008】
これらの電位値は、平滑な銀箔に用いられる各種公知の検査によって測定される(非特許文献1参照)。特に微細な銀粉と任意の種類のナノサイズ銀触媒に関しては、かなり大きい陰極電位で酸化銀の形成が開始する。非特許文献2は、約0.1Vの電位において、超微細銀触媒の表面にAgOが生じることを開示する。この電位範囲は、アルカリ電解質内の酸素/空気電極の開回路電圧(OCV)に一致する。銀触媒された陰極が二機能電極として機能する場合では、作動充電モード中の電位は、酸素発生が生じるまで、+0.4〜0.5Vやそれ以上の値にまで達することがある。これは、銀触媒溶解に係る全ての問題が、実質的には、OCVにおける様々な種類の酸化銀の形成、陽極分極、続いて生じるこれらの分解と沈殿に起因することを意味している。
【0009】
酸化銀溶解の本質については、技術文献で一部検討がなされている。この一方、銀は、アルカリ電解質内でAg(OH)又はAgO等の陰イオンの形態で存在していること(非特許文献3)、及び、分解中には金属銀の微粉黒色沈殿物を徐々に形成する傾向があることについては一般的に同意が得られている。分解率は、溶解した酸化銀の濃度、温度及び存在する各種不純物が増加するにつれて高くなる。
【0010】
沈殿した銀黒は驚異的な拡散能力を有する。これにより、一次超微細多孔質構造が粗面化し、触媒の比表面積が減少し、これに伴い電極性能が減少する結果となる。
【0011】
銀の溶解は、意図的に阻害する又は減少させることが可能である。この一方、銀触媒もしくはバルク−銀−合金触媒された空気陰極又は酸素陰極を有する電気化学電源の分極を継続的に維持することは、非常に不利な点であり、様々な事例において実質的に実装不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,476,535号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】M. Pourbaix, Atlas of Electrochemical Equilibria in Aqueous Solutions (1966), p.393
【非特許文献2】Y. Golin, et al (Electrochimia Vol.18, p1223)
【非特許文献3】H. Fleischer (ed.), Zinc-Silver Oxide Batteries, J. Wiley (1971)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した如く、本質的な安定性且つ溶解抵抗性を備える、化学的に改質された銀物質の必要性が認識されており、このような物質は非常に有利なものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の教示によれば、銀粒子の多孔質クラスターを複数含む触媒が提供され、複数のクラスター中の各クラスターは、(a)複数の銀の一次粒子と、(b)酸化ジルコニウム(ZrO)の結晶性粒子とを含み、ZrOの結晶状粒子の少なくとも一部が、複数の一次粒子の表面によって形成される孔内に配される。
【0016】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、ZrOの結晶状粒子の平均粒径は、約50ナノメートル未満である。
【0017】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、ZrOの結晶状粒子の平均粒径は、約20ナノメートル未満である。
【0018】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、ZrOの結晶状粒子の平均粒径は、約10ナノメートル未満である。
【0019】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、ZrOの結晶状粒子の平均粒径は、約6ナノメートル未満である。
【0020】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、ZrOの結晶状粒子の平均粒径は、約2〜5ナノメートルである。
【0021】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、銀粒子のクラスターの平均粒径は、1〜50ミクロンの範囲である。
【0022】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、銀粒子のクラスターの平均粒径は、3〜25ミクロンの範囲である。
【0023】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、銀の一次粒子の平均粒径は、100ナノメートル以下である。
【0024】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、銀の一次粒子の平均粒径は、60ナノメートル以下である。
【0025】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、銀の一次粒子の平均粒径は、20〜100ナノメートルである。
【0026】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、銀の一次粒子の平均粒径は、40〜60ナノメートルである。
【0027】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、多孔質クラスター内の孔の平均代表粒径は、15〜250ナノメートルである。
【0028】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、多孔質クラスター内の孔の平均代表粒径は、50〜80ナノメートルである。
【0029】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、触媒のB.E.T.比表面積は、3〜16m/gの範囲である。
【0030】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、触媒のB.E.T.比表面積は、6〜10m/gの範囲である。
【0031】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、触媒中の酸化ジルコニウムの結晶状粒子の濃度は、1〜6重量%である。
【0032】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、触媒中の前記酸化ジルコニウムの結晶状粒子の濃度は、2〜4重量%である。
【0033】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、触媒における凝集体のB.E.T.平均空隙率は、30〜50%の範囲である。
【0034】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、触媒における凝集体のB.E.T.平均空隙率は、35〜45%の範囲である。
【0035】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、本明細書に記載される触媒のタップ密度は、1〜3g/ccの範囲である。
【0036】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、本明細書に記載される触媒のタップ密度は、1.5〜2.5g/ccの範囲である。
【0037】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、触媒中における銀及び酸化ジルコニウムの結晶状粒子の濃度は、99重量%を超える。
【0038】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、触媒中における銀及び酸化ジルコニウムの結晶状粒子の濃度は、99.6重量%を超える。
【0039】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、触媒中における銀及び酸化ジルコニウムの結晶状粒子の濃度は、99.6〜99.95重量%の範囲である。
【0040】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、実質的に本明細書に記載される触媒と撥水ポリマーを含む活性触媒混合物が提供される。
【0041】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、撥水ポリマーは、5〜20重量%の濃度範囲で存在する。
【0042】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、撥水ポリマーは、12〜18重量%の濃度範囲で存在する。
【0043】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、撥水ポリマーは、パラフィンからなる撥水ポリマー及び疎水性ポリマーからなる群から選択される。
【0044】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、撥水ポリマーは、フッ素化ポリマーを含む。
【0045】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、フッ素化ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂クロロトリフルオロエチレン、及びポリフッ化ビニリデンを含む。
【0046】
本発明のその他の態様によれば、(a)銀触媒の活性混合物を備える空気電極が提供され、活性混合物が、銀粒子の多孔質クラスターを複数含み、該複数のクラスターの各クラスターは、(i)複数の銀の一次粒子と、(ii)酸化ジルコニウム(ZrO)の結晶状粒子とを含み、ZrOの結晶状粒子の少なくとも一部が、複数の一次粒子の表面によって形成される孔内に配される。空気電極はさらに、(b)1×10−5オームメーター未満の電気抵抗を有する導電性電流コレクタと、(c)多孔質疎水性膜を備え、活性混合物と電流コレクタとが一緒に、多孔質疎水性膜の1つの幅広面上に配されるとともに疎水性膜に接着している。
【0047】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、電流コレクタは、金属スクリーン、金網、不織金属繊維マット、穴あき金属シート、及び膨張金属箔からなる群から選択される。
【0048】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、電流コレクタは、ニッケル、ニッケル合金、鋼鉄、ステンレス鋼、銀、銀被覆ニッケル、銀被覆ニッケル合金、銀被覆鋼、銀被覆ステンレス鋼からなる群から選択される物質を含む。
【0049】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、電流コレクタは銀で被覆されている。
【0050】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、多孔質疎水性膜は、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂、クロロトリフルオロエチレン、及びポリフッ化ビニリデンからなる多孔質疎水性膜の群から選択される。
【0051】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、(a)銀触媒の活性混合物と、(b)電流コレクタと、(c)多孔質疎水性膜とで実質的に構成される空気電極が提供される。
【0052】
本発明のその他の態様によれば、(a)複数の銀粒子の多孔質クラスターを有する銀触媒を備える空気電極が提供され、該複数のクラスター中の各クラスターは、(i)複数の銀の一次粒子と、(ii)酸化ジルコニウム(ZrO)の結晶状粒子とを含み、ZrOの結晶状粒子の少なくとも一部が、複数の一次粒子の表面によって形成される孔内に配される。空気電極はさらに、(b)電流コレクタと、(c)多孔質疎水性膜を備え、触媒と電流コレクタとが一緒に、多孔質疎水性膜の1つの幅広面上に配され、活性混合物と電流コレクタが疎水性膜に接着している。
【0053】
本発明のその他の態様によれば、(a)銀触媒の活性混合物を備える空気電極が提供され、活性混合物が、銀粒子の多孔質クラスターを複数含み、該複数のクラスター中の各クラスターは、(i)複数の銀の一次粒子と、(ii)酸化ジルコニウム(ZrO)の結晶状粒子とを含み、ZrOの結晶状粒子の少なくとも一部が、複数の一次粒子の表面によって形成される孔内に配される。空気電極はさらに、(b)多孔質疎水性膜を備え、銀触媒の活性混合物が、多孔質疎水性膜の1つの幅広面上に配され、活性混合物が疎水性膜に接着している。
【0054】
本発明のその他の態様によれば、(a)銀粒子の多孔質クラスターを複数有する銀触媒を備える空気電極が提供され、該複数のクラスター中の各クラスターは、(i)複数の銀の一次粒子と、(ii)酸化ジルコニウム(ZrO)の結晶状粒子とを含み、ZrOの結晶状粒子の少なくとも一部が、複数の一次粒子の表面によって形成される孔内に配される。空気電極はさらに、(b)多孔質疎水性膜を備え、触媒が、多孔質疎水性膜の1つの幅広面上に配されるとともに接着される。
【0055】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、電流コレクタは、導電性であるとともに、金属スクリーン、金網、不織金属繊維マット、穴あき金属シート、及び延伸(膨張)金属箔からなる群から選択される。
【0056】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、電流コレクタは、ニッケル、ニッケル合金、鋼鉄、ステンレス鋼、銀、銀被覆ニッケル、銀被覆ニッケル合金、銀被覆鋼、銀被覆ステンレス鋼からなる群から選択される金属を含む。
【0057】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、電流コレクタは銀で被覆されている。
【0058】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、多孔質疎水性膜は、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂クロロトリフルオロエチレン、及びポリフッ化ビニリデンから選択されるが、これらに限定されない。
【0059】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、電極は、炭素粉を含む。
【0060】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、電極は、活性混合物と炭素粉を含む混合物を含有する。
【0061】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、電極は、本明細書に記載の触媒と炭素を含む混合物を含有する。
【0062】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、多孔質疎水性膜は、平均5ミクロン未満の大きさのポリマー粉末を含む。
【0063】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、多孔質疎水性膜は、平均約5ミクロン未満の大きさのポリテトラフルオロエチレン粉末を含む。
【0064】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、ポリテトラフルオロエチレン粉末の大きさが、平均約3ミクロン未満である。
【0065】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、活性触媒混合物の搭載量は、5〜10mg/cmの範囲である。
【0066】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、上記搭載量は、80mg/cm未満である。
【0067】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、上記搭載量は、60mg/cm未満である。
【0068】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、上記搭載量は、40mg/cm未満である。
【0069】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、電極は、圧縮工程と焼結工程を備える方法により製造される。
【0070】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、疎水性層の厚みは、25〜300ミクロンの範囲である。
【0071】
本発明のその他の態様によれば、(a)陽極と、(b)陰極として機能するように構成された上述の空気電極と、(c)電解質とを備える電気化学セルが提供される。
【0072】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、電解質がアルカリ電解質であって、セルがアルカリ電解質電気化学セルである。
【0073】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、電気化学セルが、アルカリ型燃料電池、金属水素化物陽極を備えるアルカリ型燃料電池、金属−空気充電式電池、金属−空気非充電式電池、酸素センサー及び電解セルからなる群から選択される。
【0074】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、電解セルが、塩素−アルカリセルを含む。
【0075】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、アルカリ型燃料電池は、水素、エタノール、メタノール、エタノール水溶液、メタノール水溶液からなる陽極燃料の群から選択される陽極燃料を消費するように構成される。
【0076】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、アルカリ型燃料電池は、空気、二酸化炭素を濾過して除去した空気、及び酸素からなる群から選択される陰極燃料のための燃料として使用するよう構成される。
【0077】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、電気化学セルは金属−空気充電式電池であって、陽極は、亜鉛、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、これら金属の合金、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0078】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、電気化学セルは金属−空気非充電式電池であって、陽極は、亜鉛、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、これら金属の合金、及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請。
【0079】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、セルは、空気又は酸素減極塩素−アルカリ電池である。
【0080】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、アルカリ電解質電気化学セルは、(a)陽極と、(b)陰極と、(c)アルカリ電解質とを備え、陰極が上述の触媒を含む。
【0081】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、アルカリ電解質電気化学セルは、(a)陽極と、(b)陰極と、(c)アルカリ電解質とを備え、陰極が上述の触媒混合物を含む。
【0082】
本発明のその他の態様によれば、酸化ジルコニウムによって活性が高められたナノサイズの銀触媒を製造する方法が提供され、(a)平均一次粒径が150ナノメートル未満の銀粒子の多孔質凝集体を含む銀粉を準備する工程と、(b)粒子を、二硝酸酸化ジルコニウム(IV)水和物と二塩化酸化ジルコニウム(IV)水和物からなる群から選択されるジルコニウム(IV)化合物を含む水溶液に接触させ、銀粒子の凝集体を該水溶液に含浸させることにより、懸濁液を調製する工程と、(c)懸濁液を水溶性アルカリ溶液に接触させることにより、水酸化ジルコニウムを生成し、多孔質凝集体の孔内に沈殿させる工程と、(d)凝集体を、孔内に沈殿した水酸化ジルコニウムで洗い流した後、乾燥させることにより、乾燥残留物を生成する工程と、(e)乾燥残留物を、250〜300℃で30〜60分間加熱して脱水させた後、400〜550℃で10〜30分間加熱して酸化ジルコニウムの結晶を生成することにより、酸化ジルコニウムによって活性が高められたナノサイズの銀触媒を形成する工程を備える。
【0083】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、銀粒子の平均一次粒径は100ナノメートル以下である。
【0084】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、洗い流す工程を行うことにより、溶液のpHをpH6〜8の範囲とする。
【0085】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、アルカリ溶液は、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムからなる群から選択される金属水酸化物を含む。
【0086】
好適な実施形態に記載される更なる特徴によれば、アルカリ電気化学セル内に使用される空気電極は、(a)実質的に本明細書に記載される銀触媒の活性混合物を含む。この銀触媒が約84重量%存在し、ポリテトラフルオロエチレンが約16重量%存在し、酸化ジルコニウム(IV)によって活性が高められた銀粒子の多孔質クラスターの大きさが3〜25ミクロンの範囲である。ZrO(IV)の結晶状粒子は、一次粒子の表面上の銀凝集体の孔内に配され、これら粒子の大きさは20ナノメートル未満であり、最も好ましくは約3〜5ナノメートルである。凝集体の平均空隙率は35〜45%の範囲である。平均孔径分布は、好ましくは50〜80ナノメートルである。多孔質クラスターのB.E.T.比表面積は、好ましくは6〜10m/gである。タップ密度は、g/cm単位において、好ましくは1.5〜2.5g/ccの範囲である。触媒中の銀の純度は、好ましくは99.6%〜99.95%である。触媒多孔質クラスター中の酸化ジルコニウム含量は、好ましくは2%〜4%である。活性が高められた触媒(即ち、銀及び酸化ジルコニウムの両方)の最小純度は少なくとも99.7重量%である。空気電極はさらに、(b)網、スクリーン又は膨張穴あき箔形態である金属電流コレクタを含む。これらの金属は、ニッケルとステンレス鋼のいずれか、又はこれら金属の銀被覆物である。空気電極はさらに、(c)多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜を含む。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】銀粒子の多孔質クラスターの高分解能走査電子顕微鏡(HRSEM)画像である。
【図2】本発明の空気陰極構造の一実施形態の概略図である。
【図3A】銀粒子の多孔質クラスターの概略図である
【図3B】図3Aの銀粒子の多孔質クラスターの概略図であり、多数のナノメートル酸化ジルコニウム結晶が、銀一次粒子で構成される表面上及び銀一次粒子の表面によって形成される孔内に堆積している。
【図4】本発明に係る電気化学セルの概略断面図であり、本発明の空気陰極が電気化学セル内部に配されている。
【発明を実施するための形態】
【0088】
本発明は、本明細書において、添付の図面を参照してほんの一例を説明している。特に図面の詳細に関連して記載される個々の項目は、単なる一例であり、本発明の好適な実施形態を図示して考察するためのものにすぎないことを強調しておく。そして、これら個々の項目は、最も有用であるとともに本発明の原理と概念を容易に理解可能とする記述を提供するために示したものである。この点において、本発明の基本的な理解に必要なこと以上に本発明の構成を詳細に示すことを目的としておらず、図面内の記載は当業者が本発明の幾つかの形態を実際に実現する方法を明らかにするものである。図面中、同じ参照文字は同じ要素を規定するために用いられる。
【0089】
本発明の一態様は、酸化ジルコニウムによって活性が高められた銀粉の多孔質クラスターを含む銀ベース触媒、及び銀ベース触媒を製造する方法に関する。
【0090】
この本発明の触媒、触媒混合物、電極及びこれらの製造方法の原理と操作は、図面と添付の記述を参照することにより、より理解されるものとなる。
【0091】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、以下の記述又は図面内の図例に記載されている構成要素の構造及び配置の詳細において、その応用を限定するものではないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態で実施することも可能であり、様々な方法で実行又は実施される。また、本明細書で使用される表現及び専門用語は、記述を目的としたものにすぎず、制限するものとして扱われるべきではないことに留意されたい。
【0092】
本明細書内及び請求の範囲内で使用される如く、用語「空気陰極」及び「酸素陰極」は、電気化学セル内で酸素反応部位として使用されるガス拡散電極を参照するための同等の意味を有するものとして使用される。
【0093】
ここで図を参照すると、図1は銀粒子の多孔質クラスターの高分解能走査電子顕微鏡(HRSEM)画像である。
【0094】
図2は、本発明の空気陰極構造の一実施形態の概略図である。本発明の活性触媒混合物(C)が、少なくとも1つの電流コレクタ(B)の周りに分布されるとともに直接的に接触している。活性触媒混合物(C)及び電流コレクタ(B)はともに疎水性層(A)の1つの幅広面上に配されている。
【0095】
本発明の一実施形態では、このような電極は、本発明の触媒又は本発明の触媒混合物用の炭素粉担体を用いて製造可能である。
【0096】
本発明の好適な実施形態では、アルカリ電解質空気/酸素陰極は、本発明の触媒又は本発明の触媒混合物用の炭素粉担体を用いずに製造可能である。
【0097】
実際には、本発明の触媒の組成及び構造により、炭素を含まない空気陰極の製造が可能となる。様々な実施形態におけるこれら本発明の電極は、様々に応用して使用できる。例えば、アルカリ電解質電気化学セル(例えばアルカリ型燃料電池が挙げられるがこれに限定されない)、金属水素化物陽極を備えるアルカリ型燃料電池、金属−空気充電式電池、金属−空気非充電式電池、酸素センサー及び電解セル(例えば塩素−アルカリセルが挙げられるがこれに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
このような電極、即ち本発明の銀触媒と銀触媒混合物で作られた電極は、従来の銀触媒された電極の性能よりも良好であるという利点を有している。この利点は、より長い耐用期間を備えること、より頑強な構造であること、かなり高い安定性を有する多孔質構造であること、及び開回路電圧(OCV)において比表面積を維持可能であることを含み、また、アルカリ電解質内で二機能方式を作動させるための性能(酸化方式と還元方式の両方を実施可能な能力を意味する)がかなり向上していることを含む。電池の専門用語において、二機能方式の性能とは、明らかに電池の充電及び放電の両方を示すものを意味する。
【0099】
本明細書に記載される本発明の陰極の応用において、アルカリ型燃料電池は、水素、エタノール、メタノール、エタノール水溶液、メタノール水溶液を含む(これらに限定されない)群から選択される陽極燃料を使用する種類のものを含む。水素源は、直接的な水素ガスによるものであってもよく、メタノールもしくはその他の源(限定されないがエタノール等)の改質により生成した水素によるものであってもよい。
【0100】
これらのアルカリ型燃料電池は、陰極燃料に使用される空気から二酸化炭素を濾過して除去するためのフィルターを使用する種類のものを使用してもよく、陽極燃料に使用される空気から二酸化炭素を濾過して除去するためのフィルターを使用しない種類のものを使用してもよい。言い換えると、本発明の空気陽極は、二酸化炭素を含む空気中で直接的に機能可能である。
【0101】
本発明の陰極とともに使用、充電式金属空気電池内で使用、及び非充電式金属空気電池内で使用する金属陽極は、亜鉛、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、これら金属の合金、及びこれらの混合物を含んでもよい。
【0102】
本発明の銀触媒で作られる電極は、従来の銀触媒された電極の性能よりも良好であるという利点を有している。この利点は、より長い耐用期間を備えること、より頑強な構造であること、かなり高い安定性を有するとともに開回路電圧及び閉回路状態両方において比表面積を維持可能な多孔質構造であること、そしてアルカリ電解質内で二機能方式を作動させるための性能がかなり向上していることを含む。
【0103】
本発明を電気化学セルに適用するために選択されるアルカリ電解質は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化ニッケル及びこれらの混合物を含む群から選択される金属水酸化物を含むが、これらに限定されない。この電解質の濃度は、サブモル濃度から飽和濃度の範囲が可能である。
【0104】
本発明の一実施形態では、電解セルが、酸素減極陽極を用いた塩素−アルカリセルである。
【0105】
クリーンで地球に優しい持続的エネルギーには、世界的関心が集まっている。空気陰極は、現在最も進歩した電源、即ち、高エネルギーの金属−空気電池及びアルカリ型燃料電池の核心部に用いられる。これらの電源は、バックアップ電源、携帯及び緊急用用途、電気自動車、補聴器や人工内耳等の生物医学装置、軍及び民間用携帯通信機器、携帯用電子機器、無人飛行機及び宇宙計画に用いられ、これら用途はほんの数例を挙げたものである。アルカリ型燃料電池は、燃料電池のうち最も進歩した種類の1つである。アルカリ型燃料電池は、1960年代半ば以降、NASAによるアポロ計画及びスペースシャトル計画、並びにロシア宇宙飛行において使用されている。これら電源における空気陰極の機能は、電気化学的な共役反応の陰極部分として酸素を電気に変換することである。しかしながら、これら重大な役割にも関わらず、空気陰極は最も費用がかかる部品の一つであり、プラチナやその他高価な金属触媒を使用するため、電池に要する費用の約4分の1がかかることもある。また、空気陰極は、電池性能を制限する主な要因でもある。したがって、空気陰極の質を向上させるとともに費用を下げるという重要な点が要求されている。
【0106】
本発明の空気陰極は、電池や燃料電池等の電気化学セルをより長期間使用することを可能にし、その費用を著しく削減することも可能にする。商業用の空気陰極は、触媒担体として機能する炭素粉で作られている。しかしながら、炭素は通常使用中に悪化することがあるため、電池寿命が一般的に短くなる。本発明の銀触媒によって炭素を含まない空気陰極の生成が可能になるため、陰極がより長い耐用期間頑強であり、製造が容易になり、耐久性が高くなる。また、本発明の触媒は、マグネシウム、コバルト、ニッケル又はこれらの混合物等をベースにした高価ではない金属触媒よりも非常に高い電力を、プラチナよりもかなり低い費用で提供する。本発明の炭素を含まない銀ベースの触媒電極は、アルカリ型燃料電池や金属−空気電池内の従来の空気陰極用の直接的な「差し込み式」代替物として使用でき、費用を削減するとともに性能を向上させることが可能である。充電可能な金属−空気電池の商業化を制限する1つの要因は、陰極内に炭素が存在することにより、充電中に酸化及び分解傾向が存在することである。したがって、本発明の炭素を含まない陰極は、充電可能な金属−空気電池を進歩させることができ、これは、本発明の陰極なしでは実現不可能である。
【0107】
本発明によると、ZrO(酸化ジルコニウム(IV))によって活性が高められた銀触媒の多孔質クラスターを製造する方法が提供される。本製造方法は、
1.多孔質凝集体構造及び100−150ナノメートル、より好ましくは100ナノメートル未満の範囲の一次粒径を有する銀粉を準備する工程と、
2.銀凝集体を、二硝酸酸化ジルコニウム(IV)水和物−ZrO(NO・xHO又は二塩化酸化ジルコニウム(IV)水和物−ZrOClOを含む水溶液に含浸させる(本処理を少なくとも30分継続する)工程と、
3.懸濁液を水溶性アルカリ溶液で処理し、好ましくは強攪拌下で行い、水酸化ジルコニウムを凝集体の孔内に沈殿させる工程と、
4.懸濁液を洗い流して略中性pHであるpH6−8にし、孔内のアルカリ水溶液を除去した後、乾燥させることにより乾燥残留物を生成する工程と、
5.乾燥懸濁物を加熱し、好ましくは250〜300℃で30〜60分間加熱し、水酸化ジルコニウムを脱水した後、続いて400〜550℃でさらに10〜30分間加熱して酸化ジルコニウムの結晶を生成する工程と、
6.40ミクロンを超えた粒径から250ミクロンを超えた粒径までの粒径を有する粗粒材料を、一般的には篩によって、分離する工程とを備える。
【0108】
アルカリ水溶液は、好ましくは水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム、又はこれらの混合物のいずれかを、5〜40重量%の濃度で用いる。
【0109】
(作用機構及び生成物の構造)
銀多孔質凝集体を、二硝酸酸化ジルコニウム(IV)水和物又は二塩化酸化ジルコニウム(IV)水和物−ZrOClOを含む水溶液に含浸させ、続いて、アルカリ水溶液で、好ましくは強攪拌下で処理することにより、凝集体の孔内に水酸化ジルコニウムを沈殿させる。懸濁液を洗い流し、乾燥し、加熱(好ましくは250−300℃)した結果、ZrOの超微細無水結晶粒子が一次粒子表面の銀凝集体の孔内に沈殿する。400−550℃において、ZrOの単斜晶の最終形成が起こる。これらの結晶は、強アルカリ溶液で、空気電極が作動する電位(操作の二機能方式を含む)の全範囲内において、完全な腐食安定性を有している。本発明に係る酸化ジルコニウム結晶の大きさは、50ナノメートル未満であり、好ましくは20ナノメートル未満、最も好ましくは約3−5ナノメートルである。酸化ジルコニウム結晶は、銀凝集体の多孔質構造における強度の表面拡散と粗化を防ぎ、これは銀のバルク合金では達成できないことである。
【0110】
本発明の触媒は、酸化ジルコニウムによって活性が高められた一次銀粒子の多孔質クラスターを含む。ZrOの結晶状粒子は、一次粒子表面の銀凝集体の孔内に配される。
【0111】
図3Aは、本発明の処理方法を実施する前の、複数のナノメートル銀粒子(120)の多孔質クラスタ(100)の概略図(縮尺図ではない)である。銀粒子(120)の凝集により、孔部又は多孔質空洞部(140)等の複数の孔部又は多孔質空洞部がナノメートル銀粒子(120)の集団の表面によって形成される。
【0112】
図3Bは、図3Aのナノメートル銀粒子(120)の多孔質クラスターの概略図(縮尺図ではない)である。図中、多数のナノメートル酸化ジルコニウム結晶(150)が、ナノメートル銀粒子(120)の表面(160)に沈殿している。酸化ジルコニウム結晶(150)はまた、複数のナノメートル銀粒子(120)表面(160)によって作り出される孔部又は多孔質空洞部(140)等の複数の孔部又は多孔質空洞部に沈殿する。得られた構造は、酸化ジルコニウムが被覆した、銀粒子の多孔質クラスター(200)である。
【0113】
ナノメーター酸化ジルコニウム結晶(150)の堆積により、表面(160)上及び孔部又は多孔質空洞部(140)等の複数の孔部又は多孔質空洞部の表面上に、連続的又は半連続的なナノ層(180)を生成してもよい。
【0114】
一次銀粒子の粒径は、20〜100ナノメートルの範囲であり、好ましくは40〜60ナノメートルの範囲である。この特徴は、走査型電子顕微鏡画像(図1)によって測定され、また、Coulter Counter(登録商標)モデルSA3100(Beckman Coulter, Inc.)粒径分析によるレーザー回折粒径分析によって測定される。
【0115】
クラスター(凝集体)の平均サイズは、1〜5ミクロンの範囲であり、好ましくは3〜25ミクロンの範囲である。この特徴は、走査型電子顕微鏡画像(図1)によって測定され、またCoulter Counter(登録商標)粒径分析によるレーザー回折粒径分析によって測定される。Coulter Counter(登録商標)は、Beckman Coulter, Inc.の登録商標である。
【0116】
凝集体の平均空隙率は、30〜50%の範囲であり、好ましくは35〜45%の範囲であり、この値は公知のB.E.T法によって決定したものである
【0117】
孔の平均粒径分布は、15〜250ナノメートルの範囲であり、好ましくは50〜80ナノメートルの範囲である。好ましい実施形態においては、孔の平均粒径は約65ナノメートルである。
【0118】
多孔質クラスターのB.E.T.比表面積は、3〜16m/gの範囲であり、好ましくは、6〜10m/gの範囲である。
【0119】
タップ密度は、g/cm単位において、1〜3g/ccの範囲であり、好ましくは1.5〜2.5g/ccの範囲である。
【0120】
触媒中の銀の純度は、99重量%を超え、好ましくは99.6〜99.95重量%である。
【0121】
本発明では、触媒多孔質クラスター中の酸化ジルコニウム含量は、1〜6重量%の範囲であってもよく、好ましくは2〜4重量%である。
【0122】
活性が高められた触媒(即ち、銀及び酸化ジルコニウムの両方)の最小純度は、少なくとも99.7重量%であるべきである。
【0123】
次に、本発明に係る酸化ジルコニウムによって活性が高められたナノサイズの銀触媒を生成する方法の一例を示す。
加熱処理された25Ag−75Al合金(重量%)一片から生成されるとともに一次粒径が約40−50ナノメートルである100gの銀粉を、前駆体物質として取り出した。B.E.T.法によって測定される本粉末の比表面積(SSA)は、6.7m/gであった。10gの硝酸酸化ジルコニウム(IV)水和物を200mlの水に溶解させた。この溶液に銀粉を浸漬させ、1時間浸しておいた。その後、30mlの25%NaOHを強攪拌下で懸濁液中に注ぎ込んだ。反応終了(白色薄片の沈殿)まで2〜3分かかった。そして、混合物を約pH7の中性pHとなるまですすいでNaOH溶液を除去した後、上澄み液を取り除き、乾燥させた。次の手順に従い、加熱処理を施した。
250℃、60分間で脱水し、その後、
450℃、15分間で酸化ジルコニウム結晶を生成した。
【0124】
触媒中の最終的なZrO含量は3.8重量%であり、触媒のSSAは7.5m/gである。一般的には、本発明の触媒中の酸化ジルコニウム含量は、1〜6重量%の範囲であってもよく、好ましくは2〜4重量%の範囲である。活性が高められた触媒(即ち銀及び酸化ジルコニウム)の最小純度は、少なくとも99.7重量%又はそれ以上であるべきである。
【0125】
本発明の触媒の空気/酸素電極への応用
a.電極の製造
空気電極は、本発明の銀触媒の活性混合物、電流コレクタ、及びそこへ結合した多孔質疎水性膜(例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等)からなり、圧縮と焼結により製造可能である。
【0126】
図2で上述した陰極は、本発明の活性触媒混合物(C)、少なくとも1つの電流コレクタ(B)及び疎水性層(A)を含む。疎水性層(A)の幅広面は、活性触媒混合物(C)と電流コレクタ(B)の両方を覆う。さらに、図2には、触媒混合物(C)及び電流コレクタ(B)が、疎水性層(A)の幅広面の片側面に配されることが明示されている。
【0127】
実際には、触媒混合物は、本発明の銀粒子の多孔質クラスターと、粉末状又は繊維状の撥水材料を含む。具体的には、撥水ポリマー(パラフィンを含むがこれに限定されない)及び疎水性ポリマーである。このような疎水性ポリマーとして、フッ素化ポリマーが挙げられる。フッ素化ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂クロロトリフルオロエチレン、及びポリフッ化ビニリデンを含むがこれらに限定されない。
【0128】
触媒混合物における撥水粉末の重量%は、5−20重量%であるべきであり、より好ましくは12−18重量%、好ましい実施形態では16重量%である。
【0129】
実際には、本発明の空気陰極は、導電性電流コレクタに用いられる各種材料を使用できる。各種材料としては、金属スクリーン、金網、不織金属繊維マット、穴あき金属シート、及び延伸(膨張)金属箔が挙げられるがこれらに限定されない。これらの電流コレクタ形態に選択可能な金属は、ニッケル、ニッケル合金、鋼鉄、各種のステンレス鋼、銀、銀被覆ニッケル、銀被覆ニッケル合金、銀被覆鋼、銀被覆ステンレス鋼、及びその他アルカリ電解質内で銀と接触するのに好適なものを含む。
【0130】
疎水性層に用いられる材料は、フッ素化ポリマーを含むがこれに限定されない。このようなフッ素化ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂、クロロトリフルオロエチレン、及びポリフッ化ビニリデンを含むがこれらに限定されない。疎水性層の空隙率と厚みは、本発明の陰極の性能が電気化学セル中で最適化されるように選択される。この最適化を検討するためのパラメータは、目標とする速度能力(電流出力)、作動耐用期間、及び当業者にとって公知のその他項目を含む。例えば、低空隙率である薄い疎水性層は、高電流(層全域における酸素ガス拡散率が高いこと)を可能とするが、電解質から陰極のガス側に液体が移動する可能性がある。これにより、電池が完全に乾燥するとともに孔部に液体があふれ、有効な耐用期間が短くなる。他の場合においては、薄い疎水性層は低空隙率を有する可能性があり、厚い疎水性層は高空隙率を有する可能性がある。厚みと空隙率を組み合わせた効果は、ガーレー値によって測定及び定量化できる。ガーレー値とは、4.88インチの一定の水圧を加えた時に、1平方インチの膜に100ccの空気を通過させるために必要な秒数を示すものである。
【0131】
空気電極に用いられる活性混合物は、上述の触媒を75ミクロンの篩に2回篩過させ、得られた触媒を、DuPont社製造の等級Zonyl MP1200(登録商標)のPTFE粉末とともに手動で混合することにより生成した。このPTFE粉末の平均粒径は、3ミクロンである。PTFE粉末に対する触媒の比率(重量比)は84:16であった。
【0132】
試験用電極に搭載する活性混合物は85mg/cmであった。格子形状の大きさが20メッシュであり、0.19mmの網径を有するとともに5〜7ミクロンの銀で被覆されている織ステンレス鋼を、電流コレクタ及び電極の支持部材として使用した。代わりに、例えばDexmet(登録商標)から提供される3Ni5−077等のニッケルで作られる膨張金属電流コレクタを用いてもよい。圧縮前の格子形状を、250kg/cm圧力下で鋳造(平坦化)した。W.L.Gore&Associates,Inc.によって製造されるPTFEガス拡散膜D型を、疎水性層として使用した。
【0133】
これら構成部品を全て、プレス成形の型内に配し、110kg/cmで圧縮した。電極の焼結は、340℃で20分間、空気中で実施した。
【0134】
空気陰極に活性触媒混合物を搭載する量は、電極の幾何学的領域あたり10mg/cm〜250mg/cmであってもよく、好ましくは、幾何学的領域あたり約20mg/cm〜120mg/cmである。
【0135】
b.電極の電気化学試験
分極は、水銀/酸化水銀参照電極に対する空気陰極の電圧変化を示すものであり、静止(開回路)値から表示電流密度が電極によって支持される到達値までの変化である。低い分極(電圧変化)が最適な性能には望ましく、値が低いほど電極の速度能力がよくなる。
【0136】
図4は、本発明に係る電気化学セル(10)の概略断面図である。このセル中に配される本発明の空気陰極(4)、陽極(2)及び電解質(3)の全てが、セルケーシング(1)内に含まれる。
【0137】
電気化学セル(10)は、空気又は酸素を空気陰極(4)に供給するための第一通路(5)、及び/又は水素又はその他の陽極燃料を陽極(4)に供給するための第二通路(6)を任意で備えてもよい。
【0138】
(実施例)
以下、実施例を参照する。上記記述と同様、本発明の説明は、本発明を制限するためになされるものではない。
【0139】
(実施例1)
電極の初期電気化学性能は、半電池において、25%KOH内でニッケル対極を用いて24−26℃で測定した。試験用電極に用いられる分極データ(IRドロップ補正、即ち、参照電極と陰極間の人工抵抗を除外したもの)は、以下の通りである。
【0140】
【表1】

【0141】
(実施例2)
初期電気化学性能の測定に用いたものと同じ半電池を用い、同じ条件下で、作動のサイクル(二機能)方式における電極の電気化学実験を、一定電流密度21.5mA/cmで実施した。
【0142】
各サイクルの時間:陽極(充電)及び陰極(放電)が35分であった。
【0143】
各サイクルの最終時点における電極の分極mVは、以下の通りである。
【0144】
【表2】

【0145】
第3回目のサイクルの後、電極の分極は、実施した電流密度全ての範囲において変化せず維持されていた。電極の総銀含量を考慮すると、陽極サイクルの最終時点の電位は、銀金属がAgOへ変換する(酸化過程)最終時点に相当する。
【0146】
データが良好に示唆しているのは、本発明に基づいてZrOによって活性が高められた銀触媒によって触媒された空気電極の電気化学性能は、上昇した温度下、OCV条件下及び作動の二機能方式においても、何百さらには何千もの時間及びサイクルの間、安定が保たれることである。
【0147】
(実施例3)
電極は、異なるガーレー値を有するとともに異なる厚みの疎水性層を備えるPTFE膜で作られることにより、性能を最適化してもよい。ガーレー値とは、4.88インチの一定の水圧を加えた時に、1平方インチの膜に100ccの空気を通過させるために必要な秒数を示すものである。
【0148】
【表3】

【0149】
(実施例4)
電流密度に対する電圧をプロットすることにより下記に明らかに示される如く、本発明の電極は、炭素粉上に担持された銀触媒を備える従来の空気電極よりも顕著に良く機能する。
【0150】
【表4】

【0151】
(実施例5)
本発明の電極は、幅広い作動温度範囲を有し、アルカリ電解質の凝固点付近まで低く、アルカリ電解質の沸点付近まで高い温度で好適に機能する。以下のグラフは、室温および上昇した温度における性能を示す。
【0152】
【表5】

【0153】
(実施例6)
本発明の電極は、活性触媒混合物を広範囲量搭載して作動可能である。好ましい搭載量は、電極の幾何学的領域あたり5mg/cm〜500mg/cmである。
以下に示すグラフは、活性触媒混合物の搭載量による電極性能を示す。
【0154】
【表6】

【0155】
【表7】

【0156】
本発明は、特定の実施例とともに説明をしてきたが、様々な代替例、変更例や変形例を実施可能であることは当業者にとって明らかである。したがって、このような代替例、変更例や変形例の全てを、添付の請求の範囲の広義の範囲及び本質に含むものとする。本明細書で引用した全ての刊行物、特許や特許出願物は、参照することによりその全体を本発明に含み、また、各刊行物、特許や特許出願物の内容を具体的且つ個別に指し示す如く、同等の内容を本発明に含むものとする。さらに、本出願におけるいかなる参照物の引用又は同定も、このような参照物が本発明の従来技術として利用可能であったと認めるものとして解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀粒子の多孔質クラスターを複数含む触媒であって、該複数のクラスター中の各クラスターは、
(a)複数の銀の一次粒子と、
(b)酸化ジルコニウム(ZrO)の結晶状粒子とを含み、
前記ZrOの結晶状粒子の少なくとも一部が、前記複数の一次粒子の表面によって形成される孔内に配されることを特徴とする触媒。
【請求項2】
前記ZrOの結晶状粒子の平均粒径が、約50ナノメートル未満であることを特徴とする請求項1記載の触媒。
【請求項3】
前記ZrOの結晶状粒子の平均粒径が、約20ナノメートル未満であることを特徴とする請求項1記載の触媒。
【請求項4】
前記ZrOの結晶状粒子の平均粒径が、約10ナノメートル未満であることを特徴とする請求項1記載の触媒。
【請求項5】
前記ZrOの結晶状粒子の平均粒径が、約6ナノメートル未満であることを特徴とする請求項1記載の触媒。
【請求項6】
前記ZrOの結晶状粒子の平均粒径が、約2〜5ナノメートルであることを特徴とする請求項1記載の触媒。
【請求項7】
前記銀粒子のクラスターの平均粒径が、1〜50ミクロンの範囲であることを特徴とする請求項1記載の触媒。
【請求項8】
前記銀粒子のクラスターの平均粒径が、3〜25ミクロンの範囲であることを特徴とする請求項1記載の触媒。
【請求項9】
前記銀の一次粒子の平均粒径が、100ナノメートル以下であることを特徴とする請求項1記載の触媒。
【請求項10】
前記銀の一次粒子の平均粒径が、60ナノメートル以下であることを特徴とする請求項1記載の触媒。
【請求項11】
前記銀の一次粒子の平均粒径が、20ナノメートルを超えることを特徴とする請求項9記載の触媒。
【請求項12】
前記銀の一次粒子の平均粒径が、40ナノメートルを超えることを特徴とする請求項9記載の触媒。
【請求項13】
前記多孔質クラスター内の孔の平均代表粒径が、15〜250ナノメートルであることを特徴とする請求項1記載の触媒。
【請求項14】
前記多孔質クラスター内の孔の平均代表粒径が、50〜80ナノメートルであることを特徴とする請求項1記載の触媒。
【請求項15】
前記触媒のB.E.T.比表面積が、3〜16m/gの範囲であることを特徴とする請求項1記載の触媒。
【請求項16】
前記触媒のB.E.T.比表面積が、6〜10m/gの範囲であることを特徴とする請求項1記載の触媒。
【請求項17】
前記触媒中の前記酸化ジルコニウムの結晶状粒子の濃度が、1〜6重量%であることを特徴とする請求項1記載の触媒。
【請求項18】
前記触媒中の前記酸化ジルコニウムの結晶状粒子の濃度が、2〜4重量%であることを特徴とする請求項1記載の触媒。
【請求項19】
前記触媒における凝集体のB.E.T.平均空隙率が、30〜50%の範囲であることを特徴とする請求項1記載の触媒。
【請求項20】
前記触媒における凝集体のB.E.T.平均空隙率が、35〜45%の範囲であることを特徴とする請求項19記載の触媒。
【請求項21】
前記触媒のタップ密度が、1〜3g/ccの範囲であることを特徴とする請求項1記載の触媒。
【請求項22】
前記触媒のタップ密度が、1.5〜2.5g/ccの範囲であることを特徴とする請求項1記載の触媒。
【請求項23】
前記触媒中における前記銀及び前記酸化ジルコニウムの結晶状粒子の濃度が、99重量%を超えることを特徴とする請求項1記載の触媒。
【請求項24】
前記触媒中における前記銀及び前記酸化ジルコニウムの結晶状粒子の濃度が、99.6重量%を超えることを特徴とする請求項1記載の触媒。
【請求項25】
前記触媒中における前記銀及び前記酸化ジルコニウムの結晶状粒子の濃度が、99.6〜99.95重量%の範囲であることを特徴とする請求項1記載の触媒。
【請求項26】
請求項1記載の触媒と撥水ポリマーを含むことを特徴とする活性触媒混合物。
【請求項27】
前記撥水ポリマーが、5〜20重量%の濃度範囲で存在することを特徴とする請求項26記載の活性触媒混合物。
【請求項28】
前記撥水ポリマーが、12〜18重量%の濃度範囲で存在することを特徴とする請求項26記載の活性触媒混合物。
【請求項29】
前記撥水ポリマーが、パラフィンからなる撥水ポリマー及び疎水性ポリマーからなる群から選択されることを特徴とする請求項26記載の活性触媒混合物。
【請求項30】
前記撥水ポリマーが、フッ素化ポリマーを含むことを特徴とする請求項29記載の活性触媒混合物。
【請求項31】
前記フッ素化ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂クロロトリフルオロエチレン、及びポリフッ化ビニリデンを含むことを特徴とする請求項30記載の活性触媒混合物。
【請求項32】
(a)銀触媒の活性混合物を備える空気電極であって、
前記活性混合物が、銀粒子の多孔質クラスターを複数含み、該複数のクラスターの各クラスターは、
(i)複数の銀の一次粒子と、
(ii)酸化ジルコニウム(ZrO)の結晶状粒子とを含み、
前記ZrOの結晶状粒子の少なくとも一部が、前記複数の一次粒子の表面によって形成される孔内に配され、
前記空気電極はさらに、
(b)1×10−5オームメーター未満の電気抵抗を有する導電性電流コレクタと、
(c)多孔質疎水性膜を備え、
前記活性混合物と前記電流コレクタとが一緒に、前記多孔質疎水性膜の1つの幅広面上に配されるとともに前記疎水性膜に接着していることを特徴とする空気電極。
【請求項33】
前記電流コレクタが、金属スクリーン、金網、不織金属繊維マット、穴あき金属シート、及び膨張金属箔からなる群から選択されることを特徴とする請求項32記載の空気電極。
【請求項34】
前記電流コレクタが、ニッケル、ニッケル合金、鋼鉄、ステンレス鋼、銀、銀被覆ニッケル、銀被覆ニッケル合金、銀被覆鋼、銀被覆ステンレス鋼からなる群から選択される物質を含むことを特徴とする請求項32記載の空気電極。
【請求項35】
前記電流コレクタが銀で被覆されていることを特徴とする請求項33記載の空気電極。
【請求項36】
前記多孔質疎水性膜が、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂、クロロトリフルオロエチレン、及びポリフッ化ビニリデンからなる多孔質疎水性膜の群から選択されることを特徴とする請求項32記載の空気電極。
【請求項37】
(a)前記銀触媒の活性混合物と、
(b)前記電流コレクタと、
(c)前記多孔質疎水性膜とで実質的に構成されることを特徴とする請求項32記載の空気電極。
【請求項38】
(a)複数の銀粒子の多孔質クラスターを有する銀触媒を備える空気電極であって、該複数のクラスター中の各クラスターは、
(i)複数の銀の一次粒子と、
(ii)酸化ジルコニウム(ZrO)の結晶状粒子とを含み、
前記ZrOの結晶状粒子の少なくとも一部が、前記複数の一次粒子の表面によって形成される孔内に配され、
前記空気電極はさらに、
(b)電流コレクタと、
(c)多孔質疎水性膜を備え、
前記触媒と前記電流コレクタとが一緒に、前記多孔質疎水性膜の1つの幅広面上に配され、
前記活性混合物と前記電流コレクタが前記疎水性膜に接着していることを特徴とする空気電極。
【請求項39】
(a)銀触媒の活性混合物を備える空気電極であって、
前記活性混合物が、銀粒子の多孔質クラスターを複数含み、該複数のクラスター中の各クラスターは、
(i)複数の銀の一次粒子と、
(ii)酸化ジルコニウム(ZrO)の結晶状粒子とを含み、
前記ZrOの結晶状粒子の少なくとも一部が、前記複数の一次粒子の表面によって形成される孔内に配され、
前記空気電極はさらに、
(b)多孔質疎水性膜を備え、
前記銀触媒の活性混合物が、前記多孔質疎水性膜の1つの幅広面上に配され、
前記活性混合物が前記疎水性膜に接着していることを特徴とする空気電極。
【請求項40】
(a)銀粒子の多孔質クラスターを複数有する銀触媒を備える空気電極であって、該複数のクラスター中の各クラスターは、
(i)複数の銀の一次粒子と、
(ii)酸化ジルコニウム(ZrO)の結晶状粒子とを含み、
前記ZrOの結晶状粒子の少なくとも一部が、前記複数の一次粒子の表面によって形成される孔内に配され、
前記空気電極はさらに、
(b)多孔質疎水性膜を備え、
前記触媒が、前記多孔質疎水性膜の1つの幅広面上に配されるとともに接着されることを特徴とする空気電極。
【請求項41】
前記電流コレクタが、導電性であるとともに、金属スクリーン、金網、不織金属繊維マット、穴あき金属シート、及び延伸(膨張)金属箔からなる群から選択されることを特徴とする請求項37及び38記載の空気電極。
【請求項42】
前記電流コレクタが、ニッケル、ニッケル合金、鋼鉄、ステンレス鋼、銀、銀被覆ニッケル、銀被覆ニッケル合金、銀被覆鋼、銀被覆ステンレス鋼からなる群から選択される金属を含むことを特徴とする請求項37及び38記載の空気電極。
【請求項43】
前記電流コレクタが銀で被覆されていることを特徴とする請求項41記載の空気電極。
【請求項44】
前記多孔質疎水性膜が、これらに限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂クロロトリフルオロエチレン、及びポリフッ化ビニリデンから選択されることを特徴とする請求項40記載の空気電極。
【請求項45】
前記電極が、炭素粉を含むことを特徴とする請求項40記載の空気電極。
【請求項46】
前記電極が、前記活性混合物と炭素粉を含む混合物を含有することを特徴とする請求項32記載の空気電極。
【請求項47】
請求項1に記載の触媒と炭素を含む混合物を含有する空気電極。
【請求項48】
前記多孔質疎水性膜が、平均5ミクロン未満の大きさのポリマー粉末を含むことを特徴とする請求項32記載の空気電極。
【請求項49】
前記多孔質疎水性膜が、平均約5ミクロン未満の大きさのポリテトラフルオロエチレン粉末を含むことを特徴とする請求項32記載の空気電極。
【請求項50】
前記ポリテトラフルオロエチレン粉末の大きさが、平均約3ミクロン未満であることを特徴とする請求項32記載の空気電極。
【請求項51】
前記活性触媒混合物の搭載量が、5〜10mg/cmの範囲であることを特徴とする請求項32記載の空気電極。
【請求項52】
前記搭載量が、80mg/cm未満であることを特徴とする請求項51記載の空気電極。
【請求項53】
前記搭載量が、60mg/cm未満であることを特徴とする請求項51記載の空気電極。
【請求項54】
前記搭載量が、40mg/cm未満であることを特徴とする請求項51記載の空気電極。
【請求項55】
前記電極が、圧縮工程と焼結工程を備える方法により製造されることを特徴とする請求項32記載の空気電極。
【請求項56】
前記疎水性層の厚みが、25〜300ミクロンの範囲であることを特徴とする請求項32記載の空気電極。
【請求項57】
(a)陽極と、
(b)請求項32、40、45、46及び47のそれぞれに記載されるとともに陰極として機能するように構成された空気電極と、
(c)電解質とを備える電気化学セル。
【請求項58】
前記電解質がアルカリ電解質であって、
前記セルがアルカリ電解質電気化学セルであることを特徴とする請求項57記載の空気電極。
【請求項59】
前記電気化学セルが、アルカリ型燃料電池、金属水素化物陽極を備えるアルカリ型燃料電池、金属−空気充電式電池、金属−空気非充電式電池、酸素センサー及び電解セルからなる群から選択されることを特徴とする請求項57記載の電気化学セル。
【請求項60】
前記電解セルが、塩素−アルカリセルを含むことを特徴とする請求項57記載の電気化学セル。
【請求項61】
前記アルカリ型燃料電池のうちの1種が、水素、エタノール、メタノール、エタノール水溶液、メタノール水溶液からなる陽極燃料の群から選択される陽極燃料を消費するように構成されることを特徴とする請求項59記載の電気化学セル。
【請求項62】
前記アルカリ型燃料電池が、空気、二酸化炭素を濾過して除去した空気、及び酸素からなる群から選択される陰極燃料のための燃料として使用するよう構成されることを特徴とする請求項59記載の電気化学セル。
【請求項63】
前記電気化学セルが金属−空気充電式電池であって、
前記陽極が、亜鉛、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、これら金属の合金、及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項57記載の電気化学セル。
【請求項64】
前記電気化学セルが金属−空気非充電式電池であって、
前記陽極が、亜鉛、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、これら金属の合金、及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項57記載の電気化学セル。
【請求項65】
前記セルが、空気又は酸素減極塩素−アルカリ電池であることを特徴とする請求項57記載の電気化学セル。
【請求項66】
(a)陽極と、
(b)陰極と、
(c)アルカリ電解質とを備えるアルカリ電解質電気化学セルであって、
前記陰極が請求項1に記載の触媒を含むことを特徴とするアルカリ電解質電気化学セル。
【請求項67】
(a)陽極と、
(b)陰極と、
(c)アルカリ電解質とを備えるアルカリ電解質電気化学セルであって、
前記陰極が請求項26に記載の触媒混合物を含むことを特徴とするアルカリ電解質電気化学セル。
【請求項68】
酸化ジルコニウムによって活性が高められたナノサイズの銀触媒を製造する方法であって、
(a)平均一次粒径が150ナノメートル未満の銀粒子の多孔質凝集体を含む銀粉を準備する工程と、
(b)前記粒子を、二硝酸酸化ジルコニウム(IV)水和物と二塩化酸化ジルコニウム(IV)水和物からなる群から選択されるジルコニウム(IV)化合物を含む水溶液に接触させ、前記銀粒子の凝集体を該水溶液に含浸させることにより、懸濁液を調製する工程と、
(c)前記懸濁液を水溶性アルカリ溶液に接触させることにより、水酸化ジルコニウムを生成し、前記多孔質凝集体の孔内に沈殿させる工程と、
(d)前記凝集体を、前記孔内に沈殿した前記水酸化ジルコニウムで洗い流した後、乾燥させることにより、乾燥残留物を生成する工程と、
(e)前記乾燥残留物を、250〜300℃で30〜60分間加熱して脱水させた後、400〜550℃で10〜30分間加熱して酸化ジルコニウムの結晶を生成することにより、酸化ジルコニウムによって活性が高められたナノサイズの銀触媒を形成する工程を備えることを特徴とする方法。
【請求項69】
前記平均一次粒径が100ナノメートル以下であることを特徴とする請求項68記載の方法。
【請求項70】
前記洗い流す工程を行うことにより、前記溶液のpHをpH6〜8の範囲にすることを特徴とする請求項68記載の方法。
【請求項71】
前記アルカリ溶液が、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムからなる群から選択される金属水酸化物を含むことを特徴とする請求項68記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−521277(P2010−521277A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529424(P2009−529424)
【出願日】平成19年9月24日(2007.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/079261
【国際公開番号】WO2008/036962
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(504164206)バーイラン ユニバーシティー (7)
【Fターム(参考)】