ガス栓
【課題】過流出防止弁によるガス流通の阻止を適切に行うことができるガス栓を提供する。
【解決手段】ガス流通路1が内部に形成された筒状のガス栓本体2に、閉じ位置と開き位置との間でガス栓本体2の軸方向に移動自在なスライド弁Gと、ガス流通路1のガス流通方向でスライド弁Gよりも上流側に配置された過流出防止弁Hとが備えられているガス栓であって、過流出防止弁Hは、受圧部Haにてガスの流動圧を受けることで、当接部材G1から離間してガスの通過を許容する初期位置から当接部材に当接してガスの通過を阻止する作動位置に移動自在であり、受圧部Haが、ガス流通路1の流路径方向の全体に亘る状態で形成されている。
【解決手段】ガス流通路1が内部に形成された筒状のガス栓本体2に、閉じ位置と開き位置との間でガス栓本体2の軸方向に移動自在なスライド弁Gと、ガス流通路1のガス流通方向でスライド弁Gよりも上流側に配置された過流出防止弁Hとが備えられているガス栓であって、過流出防止弁Hは、受圧部Haにてガスの流動圧を受けることで、当接部材G1から離間してガスの通過を許容する初期位置から当接部材に当接してガスの通過を阻止する作動位置に移動自在であり、受圧部Haが、ガス流通路1の流路径方向の全体に亘る状態で形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス流通路が内部に形成された筒状のガス栓本体に、閉じ位置と開き位置との間で前記ガス栓本体の軸方向に移動自在なスライド弁と、前記ガス流通路のガス流通方向で前記スライド弁よりも上流側に配置された過流出防止弁とが備えられているガス栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の過流出防止弁を備えたガス栓としてのガスコンセントとして、例えば特許文献1には、下流におけるガス流路において、例えば、ガス接続具に接続されたゴム管の破損やゴム管がガス接続具からはずれるような問題が発生して、無負荷や多流量状態でガスが流れると、そのガス流動圧で過流出防止弁を移動させてガスの流通路である弁孔を閉塞してガス供給を遮断する過流出防止弁を備えたものが開示されている。
【0003】
このガス栓によれば、ガス流通路のガス流出口に連通する部位に、スライド弁がガス栓本体の軸方向に摺動自在に備えられている。スライド弁の下流側端部が弁座に着座することでガス流通路を閉弁しており、スライド弁の上流側部位が円筒状に形成されており、その内部が上流側端部に形成された開口からガスを流入してガスを流通させる流路として構成されている。
【0004】
一方、過流出防止弁の初期位置は、過流出防止弁がスライド弁の上流側部位から上流側に離れた位置となっており、過流出防止弁の作動位置は、スライド弁の上流側部位に当接して、その上流側部位に形成された開口を閉塞する位置となっている。過流出防止弁は、ガス流通路の流路径方向の外側ほど下流側に傾斜するわん状に形成された弁体と、その弁体から上流側に延びる摺動棒とから構成されている。過流出防止弁は、過流出防止弁より上流側に設けられた弁体取付部の摺動孔に摺動可能に取り付けられる。弁体取付部はガス流通方向に直交するようにガス通流路の流路径方向の全体に亘って設置された板状に形成されており、その弁体取付部に設けられたガスの通孔によってガスの流通が可能であり、通孔を通るガスの流れによる流動圧を弁体が受けるように構成されている。
【0005】
そして、過流出防止弁を初期位置に復帰するように付勢するバネが設けられており、過流出防止弁の弁体が受けるガスの流動圧がバネによる付勢力を上回ると、弁体が初期位置から作動位置に移動してスライド弁の上流側部位に形成された開口の周囲に設けられた弁座に当接してその開口を閉塞する。
【0006】
また、ガス栓本体に装着されているガス接続具を取り外すことで、スライド弁が開き位置からガス流通路の下流側に移動して閉じ位置に位置してガス流通路が閉弁される。これにより、ガス流通路でのガスの流通が遮断され、そのガス流通に伴う流動圧も低下することから、過流出防止弁は、バネの付勢力によって初期位置に復帰される。
【0007】
一方、上記のようなガス栓として、ガス栓本体へのガス接続具の装着とは関係なく、操作つまみ等の操作部に対する回転操作に伴って開閉弁である回動弁を回転させて開閉を行ってガスの供給及び停止を切り替える所謂回転式のガス栓(例えば、特許文献2を参照。)などが知られている。また、ガスコンロ等に内蔵されガス流入路とガス流出路との間の開閉を行ってガスの供給及び停止を切り替える開閉弁として、操作ボタン等の操作部に対する押圧操作に伴って開閉弁であるスライド弁をスライドさせて開閉を行う所謂プッシュプッシュ式の開閉弁(例えば、特許文献3を参照。)などが知られており、上記ガス栓についても、この開閉弁と同様にプッシュプッシュ式に構成することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭57−28983号公報
【特許文献2】特公平02−021660号公報
【特許文献3】特開平02−154918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に開示のガス栓では、過流出防止弁の弁体の上流側面がガス流動に伴う流動圧を受ける受圧部となっており、この受圧部にて受ける流動圧がバネの付勢力を上回ることで、過流出防止弁が初期位置から作動位置に移動することになる。
しかしながら、ガス流通路の流路径方向において、弁体の両端部とガス流通路との間にガスの通流を許容する隙間が形成されており、弁体の配置スペースは中央部のみとなっている。したがって、弁体の直径が小さく、ガスの流動圧を受ける受圧部の面積が小さくなっている。また、弁体は、ガス流通路の流路径方向の外側ほど下流側に傾斜するわん状に形成されているので、ガス流通路の流路径方向において、弁体の端部とガス流通路との間に形成された隙間に多くのガスが流動し易くなっており、弁体の受圧部がガスの流動圧を受け難くなっている。したがって、特許文献1に開示のガス栓では、弁体の受圧部に対して、本来ガス流通を阻止すべき流動圧よりも大きな流動圧がかからなければ、過流出防止弁が作動位置に移動しなくなり、過流出防止弁によるガス流通の阻止を適切に行えなくなる可能性がある。
【0010】
そして、特許文献1に開示のガス栓では、弁体から延設された摺動棒が弁体よりも上流側に配置されているので、この摺動棒にてガスの流れが遮られて弁体の受圧部が受ける流動圧が小さくなっている。また、過流出防止弁より上流側に設けられた弁体取付部についても、ガス通流路の流路径方向の全体に亘る板状に形成されていることから、ガスの流れを遮ることになり、弁体の受圧部が受ける流動圧が小さくなる。したがって、このような点からも、過流出防止弁によるガス流通の阻止を適切に行えなくなる可能性がある。
【0011】
本発明は、かかる点に着目してなされたものであり、その目的は、過流出防止弁によるガス流通の阻止を適切に行うことができるガス栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明のガス栓は、
ガス流通路が内部に形成された筒状のガス栓本体に、閉じ位置と開き位置との間で前記ガス栓本体の軸方向に移動自在なスライド弁と、前記ガス流通路のガス流通方向で前記スライド弁よりも上流側に配置された過流出防止弁とが備えられているガス栓であって、その特徴構成は、
前記過流出防止弁は、受圧部にてガスの流動圧を受けることで、当接部材から離間してガスの通過を許容する初期位置から前記当接部材に当接してガスの通過を阻止する作動位置に移動自在であり、前記受圧部が、前記ガス流通路の流路径方向の全体に亘る状態で形成されている点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、過流出防止弁は、受圧部にてガスの流動圧を受けることで、当接部材から離間してガスの通過を許容する初期位置から当接部材に当接してガスの通過を阻止する作動位置に移動するので、流路径方向の全体に亘って面積が大きく形成された受圧部によりガスの流動圧を正確に受けることができる。そして、ガス流通を阻止すべきガスの流動圧を受けた場合には、その流動圧によって過流出防止弁を初期位置から作動位置に移動させて当接部材に当接してガスの通過を阻止することができる。
【0014】
本発明のガス栓の更なる特徴構成は、
前記過流出防止弁は、前記ガス流通路において前記スライド弁の前記閉じ位置に相当する流路部位よりも流路径が大きく形成された過流出防止弁収容用流路部位に配置されており、前記受圧部は、その過流出防止弁収容用流路部位の全体に亘る状態で形成されている点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、過流出防止弁が配置される過流出防止弁収容用流路部位は、スライド弁が閉弁してガス流通路を閉じる流路部位よりも流路径が大きく形成され、過流出防止弁の受圧部は、その過流出防止弁収容用流路部位の全体に亘る状態で形成されているので、受圧部の面積をさらに大きなものとすることができる。したがって、ガスの流動圧を正確に受けることができるので、本来ガスの流通を阻止すべき流動圧を受けた場合には、その流動圧によって過流出防止弁を初期位置から作動位置に移動させて過流出防止弁収容用流路部位を閉じて、ガスの流通を阻止することができる。
【0016】
本発明のガス栓の更なる特徴構成は、
前記当接部材は、前記ガス栓本体の軸方向に移動自在であり、前記スライド弁の前記開き位置から前記閉じ位置への移動に伴って前記作動位置に位置する前記過流出防止弁から離れた離間開き位置まで前記ガス流通路の下流側に移動自在に構成され、
前記過流出防止弁を前記初期位置に復帰するように付勢する付勢手段を備えている点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、当接部材は、スライド弁の開き位置から閉じ位置への移動に伴って作動位置に位置する過流出防止弁から離れた離間開き位置に移動するので、スライド弁の閉じ位置への移動によって過流出防止弁と当接部材の当接が解かれ、ガスが流通する状態とすることができる。さらに、過流出防止弁を初期位置に復帰するように付勢する付勢手段が備えられているので、スライド弁が閉じ位置に移動することでガス流通路が閉じると、ガスの流動圧が小さくなって、その付勢力によって自動的に過流出防止弁が初期位置に復帰して付勢される。これにより、過流出防止弁が作動してガス流通が阻止された場合でも、スライド弁を閉じ位置に移動させることによって、過流出防止弁を初期位置に復帰させて再びガス流通が可能な状態にすることができる。
【0018】
本発明のガス栓の更なる特徴構成は、
前記当接部材は、前記スライド弁の上流側端部部位にて構成されている点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、当接部材は、スライド弁の上流側端部部位にて構成されているので、スライド弁の上流側端部部位を当接部材として使用して、過流出防止弁とスライド弁によってガス流通を阻止することができる。また、スライド弁とは別に当接部材を設ける必要がなくガス栓本体の軸方向の長さを短くすることができ、さらに、当接部材が不必要となるためプラグ製造時において低コスト化を図ることが可能となる。
【0020】
本発明のガス栓の更なる特徴構成は、
前記ガス栓本体の軸方向に沿って前記初期位置と前記作動位置とに移動自在に前記過流出防止弁を支持する支持部が備えられ、その支持部は、前記過流出防止弁よりも前記ガス流通路の下流側に配置されている点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、ガス栓本体の軸方向に沿って初期位置と作動位置とに移動自在に過流出防止弁を支持する支持部が備えられるので、過流出防止弁のガスの流動圧を受ける受圧部をガス流通方向に対して一定の方向となるように支持することができ、ガスの流動圧を安定して受けることができる。また、支持部は、過流出防止弁よりもガス流通路の下流側に配置されているので、ガスの流れが過流出防止弁の受圧部に至る前に支持部に遮られて、過流出防止弁が受けるガスの流動圧が小さくなることがなく、安定してガスの流動圧を受けることができる。従って、過流出防止弁をガスの流れによる流動圧に対して迅速かつ正確に反応するように作動させることができる。
【0022】
本発明のガス栓の更なる特徴構成は、
前記過流出防止弁には、前記ガス流通路の下流側に延設された被支持部が備えられ、
前記支持部は、前記スライド弁の上流側端部部位に形成され、前記被支持部が前記ガス栓本体の軸方向に摺動自在に挿入支持された溝部にて構成されている点にある。
【0023】
上記特徴構成によれば、過流出防止弁にはガス流通路の下流側に延設された被支持部が備えられるので、ガスの流れが過流出防止弁に至る前に被支持部で遮られて、過流出防止弁の受圧部が受けるガスの流動圧が小さくなることがなく、安定してガスの流動圧を受けることができる。また、被支持部がスライド弁の上流側端部部位に形成され、前記ガス栓本体の軸方向に摺動自在に挿入支持された溝部にて構成されている。これにより、スライド弁の上流側端部部位を被支持部として使用することができ、スライド弁と別途に被支持部を設ける必要がなくなるので、被支持部を設ける場合よりガス栓本体の軸方向の長さを短くすることができる。さらに、被支持部が不必要となるためプラグ製造時に低コスト化を図ることが可能となる。
【0024】
本発明のガス栓の更なる特徴構成は、
前記過流出防止弁には、前記作動位置に移動した場合に、前記当接部材との隙間に嵌り込んでその当接部材に当接する嵌り込み部が備えられている点にある。
【0025】
上記特徴構成によれば、過流出防止弁収容用流路部位と当接部材との間に隙間がガスの流路となっているところ、過流出防止弁によってその隙間を閉じることでガスの流れを遮断することになる。しかしながら、単に、当接部材を過流出防止弁に当て付けるだけでは、ガスの流れを遮断できないこともある。そこで、過流出防止弁が作動位置に移動した場合に、その隙間に嵌り込み部が嵌り込むので、ガスの流通を確実に遮断することができる。
【0026】
本発明のガス栓の更なる特徴構成は、
前記ガス流通路は、上流側から順に、前記過流出防止弁、前記スライド弁を備えて、前記ガス栓本体の軸方向に沿う直線状に設けられている点にある。
【0027】
本特徴構成によれば、ガス流通路内において、過流出防止弁、スライド弁の順で設けられつつ、ガス栓本体の軸方向に沿う直線状に設けられているので、ガス栓本体をコンパクトに構成することができながら、過流出防止弁とスライド弁とをガス栓本体の軸方向に隣接する状態で直線状に並べて配置することができる。したがって、過流出防止弁とスライド弁との位置関係を簡易なものとすることができ、スライド弁の移動を利用して簡易に過流出防止弁をリセットさせることができる。しかも、ガス栓全体を直線状とすることで、ガス栓を設置する場合に、ガス栓本体に接続するガス配管と同軸にガス栓を設置することが可能となり、設置スペースの縮小を図ることができる。更に、ガス栓本体を直線状とすることで、ガス栓を壁内に埋め込む形態や壁を貫通する形態にて設置する場合に、壁に形成する開口部の面積を小さくすることができる。更に、ガス栓全体を直線状とすることで、ガスはその流動を妨げられることなく流れて、最も上流側に位置する過流出防止弁にその流動圧を与える。従って、過流出防止弁をガスの流動圧によって正確に作動させて、ガスの流通を確実に遮断することができる。
【0028】
本発明のガス栓の更なる特徴構成は、
前記スライド弁が、前記ガス栓本体に対するガス接続具の装着及び取り外しに伴って前記閉じ位置と前記開き位置との間で移動する点にある。
【0029】
即ち、本発明に係るガス栓は、スライド弁が前記ガス栓本体に対するガス接続具の装着及び取り外しに伴って前記閉じ位置と前記開き位置との間で移動するようにして、所謂ガスコンセントとして構成できる。
【0030】
このように本発明のガス栓は、スライド弁が操作部に対する押圧操作に伴って前記閉じ位置と前記開き位置との間で移動するようにして、所謂プッシュプッシュ式のガスコックとして構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施形態におけるガス接続具をガス栓本体から取り外している状態でのガス接続具とガス栓との断面図
【図2】第1実施形態におけるガス接続具をガス栓本体に装着している状態でのガス接続具とガス栓との断面図
【図3】第1実施形態におけるガス栓の動きを示す断面図
【図4】別実施形態におけるガス栓の断面図
【図5】第2実施形態のガス栓の開栓時の状態を示す側断面図
【図6】第2実施形態のガス栓のスライド弁及び操作機構部を示す分解斜視図
【図7】第2実施形態のガス栓の過流出防止弁の作動時の状態を示す側断面図
【図8】第2実施形態のガス栓の閉栓動作途中の状態を示す側断面図
【図9】第2実施形態のガス栓の閉栓時の状態を示す側断面図
【図10】第2実施形態における閉栓動作時のガイド溝におけるガイドピンの位置の遷移状態を説明する説明図
【図11】第2実施形態における開栓動作時のガイド溝におけるガイドピンの位置の遷移状態を説明する説明図
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明に係るガス栓の実施形態を図面に基づいて説明する。
<第1実施形態>
本実施形態に係るガス栓は、図1及び図2に示すように、ガス流通路1が内部に形成された円筒状のガス栓本体2を備えており、そのガス栓本体2にガス接続具100を装着することでガス流通路1でのガス流通によりガス供給を行い、ガス栓本体2からガス接続具100を取り外すことでガス流通路1でのガス流通を停止してガス供給を停止する、所謂ガスコンセントとして構成されている。図1は、ガス接続具100をガス栓本体2から取り外している状態を示しており、図2は、ガス接続具100をガス栓本体2に装着している状態を示している。
【0033】
ガス栓本体2には、ガス流通路1を開閉自在なスライド弁Gと、ガス流通路1でのガス流量が一定以上の過流量となった場合にガス流通を阻止する過流出防止弁Hとが備えられている。
【0034】
ガス流通路1は、その流路断面を円形状とし、ガス栓本体2の軸方向(図1及び図2中X方向)に沿う直線状に設けられており、ガス栓本体2の軸方向とガス流通路1のガス流通方向が同一方向となっている。ガス流通路1は、複数の流路部位1a〜1eから構成されており、ガス流通方向の上流側(図1及び図2中X方向右側)から順に、過流出防止弁H、スライド弁Gが備えられている。複数の流路部位として、ガス流通方向の上流側から順に、第1流路部位1a、第2流路部位1b、第3流路部位1c、第4流路部位1d、第5流路部位1eが備えられている。第2流路部位1bは、第1流路部位1aよりも流路径が小さく形成されており、第3流路部位1c(過流出防止弁収容用流路部位に相当)は、第1流路部位1aよりも流路径が大きく形成されており、過流出防止弁Hが配置されている。第4流路部位1dは、第3流路部位1cよりも流路径が小さく形成されており、第5流路部位1eは、上流側よりも下流側の方が流路径を小さくする傾斜状に形成されており、ガス栓本体2の先端部に形成されたガス流出口3に連通されている。
【0035】
スライド弁Gは、ガス流通路1における第4流路部位1dを閉弁自在な第1弁体G1と、ガス流通路1における第5流路部位1eを閉弁自在な第2弁体G2とを備えている。
第1弁体G1は、第4流路部位1dと第3流路部位1cとに亘ってガス栓本体2の軸方向に沿って移動自在に設けられている。第1弁体G1の上流側端部部位の外径が第4流路部位1dの流路径と同一となっており、第1弁体G1が着座する弁座部が第4流路部位1dの内壁部にて構成されている。第1弁体G1は、第4流路部位1dに移動した場合に第4流路部位1dを閉じる閉じ位置に位置し、第3流路部位1cに移動した場合にガス流通を許容する開き位置に位置する。第1弁体G1は、第1付勢部材F1によって閉じ位置に付勢されており、ガス接続具100がガス栓本体2から取り外されている場合には、閉じ位置に位置して第4流路部位1dを閉弁している。
【0036】
第2弁体G2は、第4流路部位1dと第5流路部位1eとに亘ってガス栓本体2の軸方向に沿って移動自在に設けられている。第2弁体G2の下流側端部部位の外径が第5流路部位1eの傾斜部位の流路径と同一となっており、第2弁体G2が着座して閉弁する弁座部が第5流路部位1eの傾斜部位にて構成されている。第2弁体G2は、第5流路部位1eに移動した場合に第5流路部位1eを閉じる閉じ位置に位置し、第4流路部位1dに移動した場合にガス流通を許容する開き位置に位置する。第2弁体G2は、第2付勢部材F2によって閉じ位置に付勢されており、ガス接続具100がガス栓本体2から取り外されている場合には、閉じ位置に位置して第5流路部位1eを閉弁している。
このようにして、スライド弁Gを構成する第1弁体G1と第2弁体G2の両者は、ガス栓本体2の軸方向に沿って閉じ位置と開き位置との間で移動自在で、ガス流通路1を閉じる閉じ位置に付勢されている。
【0037】
ガス栓本体2に対して装着及び取り外し自在なガス接続具100について説明する。このガス接続具100は、既に公知の構成であるので、詳細な説明は省略して簡単に説明する。
ガス接続具100は、第1コイルバネ101により前方側(図1及び図2中X方向右側)に付勢される突出部材102と、ロック用ボール103と、ロック用ボール103の位置を径方向の内側から規制するとともに、ガス栓本体2の先端部に当接して押圧されて引退する内径部材104と、ガス栓本体2に装着される際にスライド弁Gを押圧する棒状の押圧部105とを備えている。
【0038】
ガス接続具100をガス栓本体2に装着する場合には、図2に示すように、ガス栓本体2の先端部が内径部材104に当接して内径部材104を第2コイルバネ106の付勢力に抗して引退させる。内径部材104の引退によりロック用ボール103が径方向の内側に移動して、ガス栓本体2に形成された嵌込溝2aにロック用ボール103が嵌り込んで、突出部材102が第1コイルバネ101の付勢力により前方側(図2中X方向の右側)に突出する。このように、ガス接続具100のロック用ボール103がガス栓本体2の嵌込溝2aに嵌り込むことで、ガス接続具100がガス栓本体2に外嵌装着される。ガス接続具100がガス栓本体2に装着される際に、ガス接続具100の押圧部105にてスライド弁Gが押圧される。この押圧部105によるスライド弁Gに対する押圧によって、第1弁体G1と第2弁体G2の両者が、ガス栓本体2の軸方向に沿ってガス流通路1の上流側(図2中X方向の右側)に移動して、閉じ位置から開き位置に移動することになり、ガス流通路1が開弁されてガス供給が行われる。
【0039】
ガス接続具100をガス栓本体2から取り外す場合には、突出部材102を第1コイルバネ101の付勢力に抗して押込操作することで、嵌込溝2aへのロック用ボール103の嵌り込みが解除されるので、ガス接続具100をガス栓本体2から取り外すことができる。そして、ガス接続具100をガス栓本体2から取り外すと、スライド弁Gに対する押圧部105による押圧が解除され、第1弁体G1と第2弁体G2の両者が、付勢部材F1、F2の付勢力によって、ガス栓本体2の軸方向に沿ってガス流通路1の下流側(図2中X方向の左側)に移動して、開き位置から閉じ位置に復帰されて、ガス流通路1が閉弁される。
【0040】
ガス流通路1の第3流路部位1c(過流出防止弁収容用流路部位に相当する)には、ガス流通路1でのガス流量が一定以上の過流量となった場合に、そのガス流動の流動圧によって初期位置から作動位置に移動する過流出防止弁Hと、過流出防止弁Hが作動位置に移動した場合に、過流出防止弁Hと当接して第3流路部位1cを閉じる当接閉じ位置に位置する第1弁体G1(当接部材に相当する)と、過流出防止弁Hを初期位置に復帰するように付勢する第3付勢部材F3(付勢手段に相当する)とが備えられている。
【0041】
過流出防止弁Hは、弁軸H1(被支持部に相当)と弁体H2によって形成される。弁体H2は、弁軸H1から放射状に外延する複数のリブH2aと、その先端部に設けられて、弁体H2の外周を形成する円環状弁部H2bによって形成されている。また、弁軸H1は弁体H2の下流側面においてガス流通路1の軸方向に突出して設けられている。このように構成された弁体H2の上流側面は、ガスの流れ方向に対して直交して、ガスの流動圧を受ける受圧部Haとなる平面が形成されている。そして、弁体H2において、リブH2aが形成されていない部分をガスの通過を許容する通過許容部H3として、ガスが通過することを可能にしている。
【0042】
また、過流出防止弁Hは、ガス流通路1において、第1弁体G1が閉弁する第4流路部位1dおよび第2弁体G2が閉弁する第5流路部位1eよりも流路径が大きく形成された第3流路部位1cに配置される。そして、ガスの流れから流動圧を受ける弁体H2の受圧部Haは、第3流路部位1cの流路径方向の全体に亘って形成される。つまり、弁体H2は、第3流路部位1cの内周面1cbの流路径方向の全周に接触するように形成されている。
【0043】
そして、弁体H2の外周を形成する円環状弁部H2bは、ガス接続具100がガス栓本体2に装着された際に、図3(c)に示すように、当接閉じ位置にある第1弁体G1の外周面G1aと第3流路部位1cの内周面1cbとの隙間に形成される円環状ガス流路部4(隙間に相当)に嵌り込んでガスの流れを遮断する。円環状弁部H2b(嵌り込み部に相当)は、第1弁体G1の外周面G1aと当接する面がテーパ状に加工されたテーパ面H2cを有している。このように形成された円環状ガス流路部4に円環状弁部H2bが嵌まり込むことで、ガス栓本体2内におけるガス流通路1のガスの流れが確実に遮断される。
【0044】
過流出防止弁Hは、その下流側に延設された被支持部としての弁軸H1を備えている。また、過流出防止弁Hの下流側に位置するスライド弁Gの上流側端部部位には、ガス流通路1の流路径方向の中央部に、下流側に凹入された軸受溝G1c(溝部に相当)が設けられている。この軸受溝G1cに、過流出防止弁Hの弁軸H1がガス栓本体2の軸方向に摺動自在に挿入支持されている。これにより、過流出防止弁Hと第1弁体G1とが軸方向で対向した状態となる姿勢を保ちつつ、過流出防止弁Hが軸方向に往復移動することが可能に設けられ、ガスの流通を許容する初期位置とガス流通を阻止する作動位置とに移動自在とされる。
【0045】
なお、過流出防止弁Hの材質はガスに対する耐腐食性を有し、第3流路部位1cの内周面1cbとの摩擦に対する耐摩耗性を有し、さらに、ガス流通部を閉塞することができる可塑性を有する合成樹脂などとされている。
【0046】
本実施形態においては、スライド弁Gの上流側端部部位となる第1弁体G1が当接部材として使用されている。また、第1弁体G1の当接閉じ位置は、スライド弁Gがガス接続具100によって押圧された上流側の位置となっており、この当接閉じ位置に第1弁体G1が位置する場合には、スライド弁Gは開き位置にある。一方、作動位置に移動した過流出防止弁Hは、図3(c)に示すように、当接閉じ位置に位置する第1弁体G1に当接して第3流路部位1cにおけるガス流通路1を遮断する。この状態でガス接続具100を取り外すと、図3(d)に示すように、第1付勢部材F1の下流側への付勢力によって、第1弁体G1は下流側へ移動して、過流出防止弁Hから離れた離間開き位置に移動し、第1弁体G1と過流出防止弁Hによるガス流通路1の遮断状態が解除される。
【0047】
また、上述のように、第1弁体G1が過流出防止弁Hから離れた離間開き位置に移動して第1弁体G1と過流出防止弁Hによるガス流通路1の遮断状態が解除される場合には、第1弁体G1を上流側端部部位として有するスライド弁Gが第1付勢部材F1の下流側への付勢力によって閉じ位置に移動するので、ガス流通路1内においてガスの流通が阻止された状態となる。そうすると、ガス流通路1内におけるガス流量は当然に一定以下となり、第3付勢部材F3の過流出防止弁Hを初期位置に復帰するように付勢する上流側への付勢力が、ガス流動圧による下流側への力を上回ることとなって、過流出防止弁Hが初期位置に復帰して付勢される。これにより、再びガス流量が一定以上の流量となると、過流出防止弁Hが受圧部Haにおいて受けるガスの流動圧による下流側への力が、第3付勢部材F3の上流側への付勢力を上回って過流出防止弁Hが初期位置から作動位置に移動してガスの流通を遮断することが可能となる。
【0048】
以下、図3に基づいて、スライド弁G、過流出防止弁Hの動きについて説明する。
図3(a)は、ガス接続具100をガス栓本体2から取り外している状態を示している。図3(b)は、ガス接続具100をガス栓本体2に装着した状態を示している。図3(c)は、ガス接続具100をガス栓本体2に装着しているときに、過流出防止弁Hが初期位置から作動位置に移動した状態を示している。図3(d)は、ガス接続具100がガス栓本体2から取り外されて過流出防止弁Hが初期位置に復帰した状態を示している。
【0049】
図3(a)に示すように、ガス接続具100をガス栓本体2から取り外している場合には、スライド弁Gが閉じ位置に位置しており、ガス流通路1がスライド弁Gによって閉弁されている。また、過流出防止弁Hについては第1付勢部材F1の上流側への付勢力によって初期位置に復帰された状態となっている。
【0050】
ガス接続具100をガス栓本体2に接続して、スライド弁Gを閉じ位置から開き位置に移動させた場合には、図3(a)から図3(b)に示した状態に変化する。つまり、第1弁体G1が第3流路部位1cに押し込まれ、第1弁体G1の外周面G1aと第3流路部位1cの内周面1cbとの間にガスの流通が可能な円環状ガス流路部4が形成されて、ガスの流通が可能な状態となる。通常のガス流通状態では、ガス流通路1内におけるガス流量は一定以下となるため、過流出防止弁Hは作動位置に移動せずに、第3流路部位1cにおいて第3付勢部材F3により初期位置に保持されている。
【0051】
そして、ガス流量が一定以上となると、ガス栓本体2は図3(b)から図3(c)の状態となる。つまり、過流出防止弁Hが一定以上のガス流量による流動圧を受けて、第3付勢部材F3による上流側への付勢力に反して、ガス流通路1の下流側に移動し、過流出防止弁Hの円環状弁部H2bが、第1弁体G1と第3流路部位1cの内周面1cbとで形成される円環状ガス流路部4に嵌まり込む作動位置に移動して、円環状ガス流路部4を閉塞してガスの流通を遮断する。
【0052】
次に、円環状ガス流路部4が閉塞された状態でガス接続具100を取り外すと、ガス栓本体2は図3(c)から図3(d)に示した状態となる。つまり、第1弁体G1が第1付勢部材F1の下流側への付勢力によって、下流側に移動するとともに、第1弁体G1と過流出防止弁Hとの嵌り込みが解かれる。そして、図3(d)示すように、過流出防止弁Hは第3付勢部材F3の上流側への付勢力によって作動位置から初期位置に復帰した状態となる。
【0053】
<第2実施形態>
これまで説明してきた実施の形態では、本発明に係るガス栓を、ガス栓本体2に対するガス接続具100の装着及び取り外しに伴ってスライド弁Gを閉じ位置と開き位置との間で移動させてガス器具へのガスの供給と停止との切り替えを行う所謂ガスコンセントとして構成したが、以下に、本発明に係るガス栓を、操作部に対する手動操作に伴ってスライド弁を閉じ位置と開き位置との間で移動させてガス器具へのガスの供給と停止との切り替えを行う、所謂ツマミ付きガス栓として構成した実施形態について、図5〜図11に基づいて説明する。尚、これまで説明してきた実施形態と同様の構成については、説明を割愛する場合がある。
【0054】
本実施形態のつまみ付きガス栓として構成されたガス栓は、図5及び図6に示すように、弁収容部5と、当該弁収容部5に対して夫々が開口するガス流入路1A及びガス流出路1Bが、内部に形成されたガス栓本体2と、弁収容部5に収容され、ガス流入路1Aとガス流出路1Bとの間の開閉を行う弁機構部Aと、操作部11に対する操作に伴って弁機構部Aを開閉させる操作機構部Bとを備えている。
以下、ガス栓本体2、弁機構部A、及び操作機構部Bの詳細構成について、順次説明する。
【0055】
〔ガス栓本体〕
ガス流入路1A及びガス流出路1Bの夫々は、互いの軸線X、Yを直角に交差する状態でガス栓本体2の内部に配置された円形断面を有する流路である。具体的には、ガス流入路1Aの軸線Xを上下方向に配置すると共に、ガス流出路1Bの軸線Yを横向きに配置することで、本実施形態のガス栓は所謂L型のガス栓として構成されている。このように構成されたL型のガス栓は、下から上に向けてガス栓本体2に流入したガスgを横向きに吐出して、側方に配置されたガス機器(図示せず)等に供給する。尚、本実施形態においてガス栓を上記L型のガス栓として構成するのではなく、例えば、ガス流出路1Bを斜め下向きに設けるなど、ガス流入路1Aとガス流出路1Bとの交差角度は適宜改変可能である。
また、弁収容部5は、ガス流入路1Aの上方延長上にガス栓本体2の内部に形成された円形断面を有する空間であり、弁収容部5の下方にはガス流入路1Aが開口し、弁収容部5の側方にはガス流出路1Bが開口することになる。
【0056】
〔弁機構部〕
ガス流入路1A及びガス流出路1Bの何れか一方の特定ガス流通路をガス流入路1Aとし、同特定ガス流通路の軸線である特定軸線をガス流入路1Aの軸線Xとすると、弁機構部Aは、当該特定ガス流通路であるガス流入路1Aの弁収容部5に対する開口部1Aaに形成された弁座部6と、同特定軸線である軸線Xに沿ってスライドして弁座部6に対して着座して当該開口部1Aaを閉塞する閉じ位置と、軸線Xに沿ってスライドして弁座部6に対して離間して当該開口部1Aaを開放する開き位置との間で変位するスライド弁G'とを有して構成されている。
即ち、スライド弁G'は、上下方向に配置されたガス流入路1Aの軸線Xに沿って、上下方向にスライドする。そして、そのスライド範囲の下端位置が、スライド弁G'が弁座部6に着座して開口部1Aaを閉塞する閉じ位置であり、同範囲の上端位置が、スライド弁G'が弁座部6に対して離間して当該開口部1Aaを開放する開き位置となる。よって、本実施形態において、閉じ位置側とは下方側を示し、開き位置側とは上方側を示すことになる。
ここで、図8及び図9にはスライド弁G'が閉じ位置にある状態が示されており、図5及び図7にはスライド弁G'が開き位置にある状態が示されている。
【0057】
〔操作機構部〕
操作機構部Bは、操作者による操作部11に対する下向きの押圧操作をスライド弁G'に伝達させて当該スライド弁G'と共にスライド可能なスライド部Cと、スライド部Cを軸線Xに沿って閉じ位置側から開き位置側に向かう上向きに付勢する軸線付勢手段Dと、スライド部Cのスライドをガイドするガイド部20とからなる。
操作部11は、ガス流入路1Aの軸線Xと同軸上に配置されガス栓本体2の上部を覆う逆カップ状の操作ボタン10の上底部の上面として設けられている。
また、操作ボタン10は、軸線Xに沿って上下方向にスライド可能に設けられており、更に操作ボタン10の上底部の下面とガス栓本体2の上面との間には、ガス栓本体2に対し操作ボタン10を上向きに付勢するコイルバネ13が介挿されている。
尚、このコイルバネ13は、巻線部分が隣接間において互いに離間している通常のコイルバネが利用されており、軸線Xに沿って圧縮力を受けることで同軸線Xに沿って膨張力を発生する。
【0058】
スライド部Cは、軸線X周りに回転自在に設けられたガイドピン18と、当該ガイドピン18を軸線X周りの方向に付勢する回転付勢手段Eとを有して構成されている。
ガイドピン18は、軸線Xと同軸上に配置され当該軸線Xに沿ってスライド可能な円柱状の軸部材17の外表面において、軸部材17の円形断面の径外方向に向けて突出形成されている。
一方、回転付勢手段Eは、操作ボタン10における上底部の下面に一端部が固定され、上記軸部材17の上面に他端部が固定されて、ガス流入路1Aの軸線Xと同軸上に配置されたねじりコイルバネ15で構成されている。
尚、このねじりコイルバネ15は、巻線部分が隣接間において互いに密着しているコイルバネであり、ある回転方向にねじりモーメントを受けることで当該回転方向とは逆の回転方向(図5における右方向)に反発力を発生する。更に、かかるねじりコイルバネ15は、巻線部分が隣接間において互いに密着していることで、一端側から受けた操作部11の軸線Xに沿った下方向の押圧力を、他端側の軸部材17に伝達することができる。
ねじりコイルバネ15の両端部には、突起部16が設けられており、突起部16を含む巻線部分が、操作ボタン10における上底部の下面に形成された溝部12、及び軸部材17の上面に形成された溝部19に嵌め込まれることで、ねじりコイルバネ15の両端が操作ボタン10及び軸部材17に固定されている。
【0059】
軸線付勢手段Dは、巻線部分が隣接間において互いに離間している通常のコイルバネ24からなり、軸線Xに沿って圧縮力を受けることで同軸線Xに沿って膨張力を発生する。
このコイルバネ24は、スライド弁G'の下面と、弁収容部5の下方に設けられた筒状部材H1の上面との間に軸線Xに沿って圧縮状態で介挿されており、筒状部材H1の上面に対してスライド弁G'を上向きに付勢する形態で、スライド弁G'とスライド部Cとを軸線Xに沿って閉じ位置側から開き位置側に向かう上向きに付勢する。
【0060】
ガイド部20は、ガイドピン18が挿入されて当該ガイドピン18の軸線X上のスライド及び軸線X周りの回転を誘導するガイド溝22を外表面に形成した筒状部材21で構成されている。
更に、このガイド溝22には、操作部11に押圧力を付加してスライド弁G'を開き位置から閉じ位置まで変位させるときにガイドピン18をねじりコイルバネ15の付勢力に抗して回転させる回転誘導部22a、22bと、続いて当該押圧力を抜いたときにスライド弁G'を閉じ位置に維持する状態でコイルバネ24及びねじりコイルバネ15により付勢されるガイドピン18が係止する係止部22cとが形成されている。
そして、このような構成により、本実施形態のガス栓は、詳細については後述するが、操作部11に対する一の押圧操作により閉栓動作が行われ、それに続く操作部11に対する一の押圧操作により開栓動作が行われる所謂プッシュプッシュ式の開閉動作を実現している。
【0061】
図10(a)に示すように、このガイド溝22において、回転誘導部22a、22bの閉じ位置側の端部が、ねじりコイルバネ15の軸線X周りの付勢力に抗する回転方向において係止部22cより回転奥側(例えば図10(a)において左側)に位置する。回転誘導部22a、22bの閉じ位置側の端部から係止部22cにかけて、ガイド溝22がコイルバネ24の軸線Xに沿った付勢方向側(即ち上方側)に膨出してなる膨出部22dが形成されている。
よって、ガイドピン18が、その膨出部22dを介して、回転誘導部22a、22bの閉じ位置側の端部から係止部22cに向けてガイド溝22の上辺に沿って直接的に移動可能となり、係止部22cに適切に係止されるようになる。尚、この膨出部22dの形状等は適宜変更可能であり、また、膨出部22dを省略して、閉じ位置側回転誘導部22bの途中に上方に切れ込む係止部22cを形成し、閉じ位置側の端部にガイドピン18がある状態で操作部11に付加する押圧力f11を取り除いたときに、ガイドピン18が閉じ位置側回転誘導部22bを若干逆行しその途中にある係止部22cに係止されるように構成しても構わない。
【0062】
この回転誘導部22a、22bは、軸線X周りの方向において係止部22cよりも閉じ位置側に配置された閉じ位置側回転誘導部22bと係止部22cよりも開き位置側に配置された開き位置側回転誘導部22aとからなる。
更に、ガス流入路1Aの軸線Xの直交面をSとすると、閉じ位置側回転誘導部22bにおける直交面Sに対するガイド溝22のリード角αbが、開き位置側回転誘導部22aの同リード角αaよりも小さく設定されている。
即ち、閉栓動作において、操作部11に押圧力が付加され回転誘導部22a、22bに沿って誘導されるガイドピン18は、開き位置側から係止部22cが形成された位置までの間は開き位置側回転誘導部22aに沿って変位し、その係止部22cが形成された位置からそれよりも回転奥側に形成された閉じ位置側の端部までの間は閉じ位置側回転誘導部22bに沿って変位することになる。
そして、閉じ位置側回転誘導部22bのリード角αbが、開き位置側回転誘導部22aのリード角αaよりも小さいので、ねじりコイルバネ15の付勢力に抗してガイドピン18を閉じ位置側回転誘導部22bに沿って変位させるために必要な操作部11に対する押圧力は、開き位置側回転誘導部22aに沿って変位させるときよりも大きくなる。
以下、ガイド溝22の詳細構成について、本実施形態のガス栓の開閉動作時におけるガイド溝22におけるガイドピン18の遷移状態とあわせて、図10及び図11等に基づいて説明する。尚、図10及び図11において、ガイド溝22は、筒状部材21の外周面を平面に展開したときの状態で示されている。
【0063】
〔閉栓動作時〕
先ず、本実施形態のガス栓の閉栓動作時のガイド溝22におけるガイドピン18の位置の遷移状態について、図10等に基づいて説明する。
スライド弁G'が開き位置にあって開栓しているとき(図5参照)には、ガイドピン18は、図10(a)に示すように、ガイド溝22において回転誘導部22aの開き位置側の端部(図10(a)において右上端部)に位置している。
次に、操作部11に押圧力f11を付加し、その押圧力f11がスライド部Cに伝達されると、スライド部Cに設けられたガイドピン18は、図10(b)に示すように、ガイド溝22において開き位置側回転誘導部22aと閉じ位置側回転誘導部22bとの境界部に移動する。
この移動の際に、ガイドピン18は、コイルバネ24による軸線Xに沿った閉じ位置側から開き位置側へ向かう上向きの付勢力fdに抗して開き位置側から閉じ位置側へ向かう下向きに変位すると共に、ねじりコイルバネ15による軸線X周りの方向への付勢力feに抗して回転することになる。
即ち、開き位置側回転誘導部22aと閉じ位置側回転誘導部22bとの境界部に位置するガイドピン18には、図10(b)において、上向きの付勢力fdと右向きの付勢力feとが付加された状態となっている。
【0064】
更に、操作部11に比較的大きい押圧力f11を付加すると、ガイドピン18は、図10(c)に示すように、ガイド溝22において閉じ位置側回転誘導部22bの回転奥側(図10(c)の左側)の端部に移動し、それに伴ってスライド弁G'は閉じ位置(図8参照)に変位する。
この移動の際においても、ガイドピン18は、コイルバネ24による上向きの付勢力fdとねじりコイルバネ15による右向きの付勢力feに抗して左下方向に移動することになり、移動後のガイドピン18には、上向きの付勢力fdと右向きの付勢力feとが付加された状態となっている。
尚、これら付勢力fd、feは、ガイドピン18の左下方向への変位量が増加するに伴って増加するが、説明を簡単にするためにそれらの符号は同じものを使用する。
【0065】
次に、上記のように操作部11に対して付加していた押圧力f11を取り除くと、図10(d)に示すように、コイルバネ24による上向きの付勢力fdとねじりコイルバネ15による右向きの付勢力feによって、ガイドピン18は、膨出部22dに沿って右上方向にある係止部22cに当接する位置まで移動する。
そして、係止部22cのガイドピン18が当接する壁面の角度が、付勢力fd、feの合力が付加されているガイドピン18が回転誘導部22a、22b側に変位することを防止する角度に設定されているので、当該ガイドピン18の位置は係止部22cに係止された状態で保たれることになり、結果、図9に示すように、スライド弁G'が閉じ位置で維持されて、閉栓動作が完了する。
【0066】
〔開栓動作時〕
次に、本実施形態のガス栓の開栓動作時のガイド溝22におけるガイドピン18の位置の遷移状態について、図11等に基づいて説明する。
スライド弁G'が閉じ位置にあって閉栓しているとき(図9参照)には、ガイドピン18は、図11(a)に示すように、係止部22cに係止される位置にある。
次に、操作部11に比較的小さな押圧力f11'を付加し、その押圧力f11'がスライド部Cに伝達されると、スライド部Cに設けられたガイドピン18は、図11(b)に示すように、付勢力fd、feに抗して左下向きに若干変位することで、係止部22cにおける係止が解除された位置に変位する。
この際に、操作部11に付加される押圧力f11'は、上述した閉栓動作時に付加した押圧力f11よりも小さなものとなっているため、ガイドピン18は、例えば閉じ位置側回転誘導部22bに沿って閉じ位置側に変位することはない。
更に、閉じ位置側回転誘導部22bのリード角αbが開き位置側回転誘導部22aのリード角αaよりも小さく、ねじりコイルバネ15の付勢力feに抗してガイドピン18を閉じ位置側回転誘導部22bに沿って閉じ位置側へ変位させるためには比較的大きな押圧力が必要となるので、その押圧力よりも小さな押圧力f11'で操作部11を押圧した場合には、ガイドピン18が閉じ位置側回転誘導部22bに沿って回転奥側に変位することはない。
【0067】
次に、上記のように操作部11に対し付加されていた押圧力f11'を取り除くと、図11(c)に示すように、コイルバネ24による上向きの付勢力fdとねじりコイルバネ15による右向きの付勢力feによって、ガイドピン18は、開き位置側回転誘導部22aに沿って右上方向に移動し、結果、図5に示すように、それに伴ってスライド弁G'が閉じ位置から開き位置まで変位して、開栓動作が完了する。
尚、本実施形態では、ガイド溝22の回転誘導部を開き位置側回転誘導部22aと閉じ位置側回転誘導部22bとで構成したが、当該回転誘導部を一様のもので構成しても構わない。また、回転誘導部22a、22bのリード角αa、αbについては、一様のものとせずに、例えば開き位置側から閉じ位置側にかけて徐々に減少させるなど、適宜改変可能である。
【0068】
〔リセット手段〕
本実施形態のガス栓は、一定以上の流量のガスgが流れると当該ガス供給を遮断するために、図5に示すように、特定ガス流通路としてのガス流入路1Aには、過流出防止弁H2を備えた過流出防止機構Hとスライド弁G’とが設けられている。尚、本実施形態のスライド弁G’は、第1実施形態の第1弁体G1と形状が異なるものの、本質的な働きは同じである。以下、過流出防止機構Hの働きを、図5〜9に基づいて説明する。
過流出防止弁H2は、図7に示すように、スライド弁G'が開き位置にあるときに、一定以上のガス流量による流動圧を受けると、その円環状弁部H2bが、スライド弁G’の上流側の外周面G’aと、第3流路部位1cの内周面1cbとの間に嵌り込む作動位置に位置して、ガスgの過流出を防止する。
この状態で、操作機構部Bが操作されて、スライド弁G’が開き位置から閉じ位置へ移動(図7から図8へ移動)した状態では、過流出防止弁H2は、作動位置にあり、ガスgの過流出を防止する状態を維持している。
さらに、操作機構部Bが操作され、スライド弁G’が閉じ位置で上流側から下流側へ移動(図8から図9へ移動)する過程、又は閉じ位置から開き位置へ移動(図8から図9を介して図5へ移動)する過程において、過流出防止弁H2は、第3付勢部材F3により上流側へ付勢されている状態で、スライド弁G’が上流側から下流側へ移動することにより、当該スライド弁G’の上流側の外周面G’aと第3流路部位1cの内周面1cbとの間に挟まれた作動位置から、ガスgの流通を許容する初期位置へ復帰する形態で、リセットされる。
【0069】
<別実施形態>
(1)上記実施形態においては、第1弁体G1を過流出防止弁Hの当接部材として使用したが、これに限らず、第1弁体G1と別個に当接部材が設けられてもかまわない。
【0070】
(2)上記実施形態においては、第1弁体G1の上流側側面G1bの流路径方向中心部に設けられた軸受溝G1cを支持部として使用したが、これに限らず、第1弁体G1と別個に支持部が設けられてもかまわない。
【0071】
(3)上記第1実施形態では、複数の流路部位における中心軸を同一として、ガス流通路1を一直線状に設けているが、例えば、図4に示すように、ガス流通路1の上流側部位(第1〜第3流路部位1c〜1c)における中心軸とガス流通路1の下流側部位(第4および第5流路部位1dおよび1e)における中心軸とを流路径方向にずらした直線状のガス流通路1を形成することもできる。このように、ガス流通路1をガス栓本体2の軸方向に沿う直線状に設けるとは、上記第1実施形態の如く、一直線とするものに限らず、図4に示すように、流路径方向にずらしたものも含まれるものとする。
そして、図4に示すものでも、上記第1実施形態と同様に、最も上流側に位置する過流出防止弁がガスの流動圧を受けることで正確に作動して、ガスの流通を確実に遮断することができる。
【0072】
(4)これまで説明した実施形態では、スライド弁Gの外面がガス流通路1の内面に着座してガス流通路1を閉止する例を示したが、例えば、ガス流通路1の内面にシール部材を設け、当該シール部材にスライド弁Gが着座する形態で、ガス流通路1を閉止するようにしても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上説明したように、過流出防止弁によるガス流通の阻止を適切に行うことができるガス栓を提供することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 ガス流通路
2 ガス栓本体
1c 第3流路部位(過流出防止弁収容用流路部位)
1e 第5流路部位(流路部位)
4 円環状ガス流路部(隙間)
F3 第3付勢部材(付勢手段)
G スライド弁
G1 第1弁体(当接部材)
G1b 上流側側面(上流側端部部位)
G1c 軸受溝(支持部、溝部)
H 過流出防止弁
H1 弁軸(被支持部)
H2b 円環状弁部(嵌り込み部)
Ha 受圧部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス流通路が内部に形成された筒状のガス栓本体に、閉じ位置と開き位置との間で前記ガス栓本体の軸方向に移動自在なスライド弁と、前記ガス流通路のガス流通方向で前記スライド弁よりも上流側に配置された過流出防止弁とが備えられているガス栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の過流出防止弁を備えたガス栓としてのガスコンセントとして、例えば特許文献1には、下流におけるガス流路において、例えば、ガス接続具に接続されたゴム管の破損やゴム管がガス接続具からはずれるような問題が発生して、無負荷や多流量状態でガスが流れると、そのガス流動圧で過流出防止弁を移動させてガスの流通路である弁孔を閉塞してガス供給を遮断する過流出防止弁を備えたものが開示されている。
【0003】
このガス栓によれば、ガス流通路のガス流出口に連通する部位に、スライド弁がガス栓本体の軸方向に摺動自在に備えられている。スライド弁の下流側端部が弁座に着座することでガス流通路を閉弁しており、スライド弁の上流側部位が円筒状に形成されており、その内部が上流側端部に形成された開口からガスを流入してガスを流通させる流路として構成されている。
【0004】
一方、過流出防止弁の初期位置は、過流出防止弁がスライド弁の上流側部位から上流側に離れた位置となっており、過流出防止弁の作動位置は、スライド弁の上流側部位に当接して、その上流側部位に形成された開口を閉塞する位置となっている。過流出防止弁は、ガス流通路の流路径方向の外側ほど下流側に傾斜するわん状に形成された弁体と、その弁体から上流側に延びる摺動棒とから構成されている。過流出防止弁は、過流出防止弁より上流側に設けられた弁体取付部の摺動孔に摺動可能に取り付けられる。弁体取付部はガス流通方向に直交するようにガス通流路の流路径方向の全体に亘って設置された板状に形成されており、その弁体取付部に設けられたガスの通孔によってガスの流通が可能であり、通孔を通るガスの流れによる流動圧を弁体が受けるように構成されている。
【0005】
そして、過流出防止弁を初期位置に復帰するように付勢するバネが設けられており、過流出防止弁の弁体が受けるガスの流動圧がバネによる付勢力を上回ると、弁体が初期位置から作動位置に移動してスライド弁の上流側部位に形成された開口の周囲に設けられた弁座に当接してその開口を閉塞する。
【0006】
また、ガス栓本体に装着されているガス接続具を取り外すことで、スライド弁が開き位置からガス流通路の下流側に移動して閉じ位置に位置してガス流通路が閉弁される。これにより、ガス流通路でのガスの流通が遮断され、そのガス流通に伴う流動圧も低下することから、過流出防止弁は、バネの付勢力によって初期位置に復帰される。
【0007】
一方、上記のようなガス栓として、ガス栓本体へのガス接続具の装着とは関係なく、操作つまみ等の操作部に対する回転操作に伴って開閉弁である回動弁を回転させて開閉を行ってガスの供給及び停止を切り替える所謂回転式のガス栓(例えば、特許文献2を参照。)などが知られている。また、ガスコンロ等に内蔵されガス流入路とガス流出路との間の開閉を行ってガスの供給及び停止を切り替える開閉弁として、操作ボタン等の操作部に対する押圧操作に伴って開閉弁であるスライド弁をスライドさせて開閉を行う所謂プッシュプッシュ式の開閉弁(例えば、特許文献3を参照。)などが知られており、上記ガス栓についても、この開閉弁と同様にプッシュプッシュ式に構成することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭57−28983号公報
【特許文献2】特公平02−021660号公報
【特許文献3】特開平02−154918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に開示のガス栓では、過流出防止弁の弁体の上流側面がガス流動に伴う流動圧を受ける受圧部となっており、この受圧部にて受ける流動圧がバネの付勢力を上回ることで、過流出防止弁が初期位置から作動位置に移動することになる。
しかしながら、ガス流通路の流路径方向において、弁体の両端部とガス流通路との間にガスの通流を許容する隙間が形成されており、弁体の配置スペースは中央部のみとなっている。したがって、弁体の直径が小さく、ガスの流動圧を受ける受圧部の面積が小さくなっている。また、弁体は、ガス流通路の流路径方向の外側ほど下流側に傾斜するわん状に形成されているので、ガス流通路の流路径方向において、弁体の端部とガス流通路との間に形成された隙間に多くのガスが流動し易くなっており、弁体の受圧部がガスの流動圧を受け難くなっている。したがって、特許文献1に開示のガス栓では、弁体の受圧部に対して、本来ガス流通を阻止すべき流動圧よりも大きな流動圧がかからなければ、過流出防止弁が作動位置に移動しなくなり、過流出防止弁によるガス流通の阻止を適切に行えなくなる可能性がある。
【0010】
そして、特許文献1に開示のガス栓では、弁体から延設された摺動棒が弁体よりも上流側に配置されているので、この摺動棒にてガスの流れが遮られて弁体の受圧部が受ける流動圧が小さくなっている。また、過流出防止弁より上流側に設けられた弁体取付部についても、ガス通流路の流路径方向の全体に亘る板状に形成されていることから、ガスの流れを遮ることになり、弁体の受圧部が受ける流動圧が小さくなる。したがって、このような点からも、過流出防止弁によるガス流通の阻止を適切に行えなくなる可能性がある。
【0011】
本発明は、かかる点に着目してなされたものであり、その目的は、過流出防止弁によるガス流通の阻止を適切に行うことができるガス栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明のガス栓は、
ガス流通路が内部に形成された筒状のガス栓本体に、閉じ位置と開き位置との間で前記ガス栓本体の軸方向に移動自在なスライド弁と、前記ガス流通路のガス流通方向で前記スライド弁よりも上流側に配置された過流出防止弁とが備えられているガス栓であって、その特徴構成は、
前記過流出防止弁は、受圧部にてガスの流動圧を受けることで、当接部材から離間してガスの通過を許容する初期位置から前記当接部材に当接してガスの通過を阻止する作動位置に移動自在であり、前記受圧部が、前記ガス流通路の流路径方向の全体に亘る状態で形成されている点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、過流出防止弁は、受圧部にてガスの流動圧を受けることで、当接部材から離間してガスの通過を許容する初期位置から当接部材に当接してガスの通過を阻止する作動位置に移動するので、流路径方向の全体に亘って面積が大きく形成された受圧部によりガスの流動圧を正確に受けることができる。そして、ガス流通を阻止すべきガスの流動圧を受けた場合には、その流動圧によって過流出防止弁を初期位置から作動位置に移動させて当接部材に当接してガスの通過を阻止することができる。
【0014】
本発明のガス栓の更なる特徴構成は、
前記過流出防止弁は、前記ガス流通路において前記スライド弁の前記閉じ位置に相当する流路部位よりも流路径が大きく形成された過流出防止弁収容用流路部位に配置されており、前記受圧部は、その過流出防止弁収容用流路部位の全体に亘る状態で形成されている点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、過流出防止弁が配置される過流出防止弁収容用流路部位は、スライド弁が閉弁してガス流通路を閉じる流路部位よりも流路径が大きく形成され、過流出防止弁の受圧部は、その過流出防止弁収容用流路部位の全体に亘る状態で形成されているので、受圧部の面積をさらに大きなものとすることができる。したがって、ガスの流動圧を正確に受けることができるので、本来ガスの流通を阻止すべき流動圧を受けた場合には、その流動圧によって過流出防止弁を初期位置から作動位置に移動させて過流出防止弁収容用流路部位を閉じて、ガスの流通を阻止することができる。
【0016】
本発明のガス栓の更なる特徴構成は、
前記当接部材は、前記ガス栓本体の軸方向に移動自在であり、前記スライド弁の前記開き位置から前記閉じ位置への移動に伴って前記作動位置に位置する前記過流出防止弁から離れた離間開き位置まで前記ガス流通路の下流側に移動自在に構成され、
前記過流出防止弁を前記初期位置に復帰するように付勢する付勢手段を備えている点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、当接部材は、スライド弁の開き位置から閉じ位置への移動に伴って作動位置に位置する過流出防止弁から離れた離間開き位置に移動するので、スライド弁の閉じ位置への移動によって過流出防止弁と当接部材の当接が解かれ、ガスが流通する状態とすることができる。さらに、過流出防止弁を初期位置に復帰するように付勢する付勢手段が備えられているので、スライド弁が閉じ位置に移動することでガス流通路が閉じると、ガスの流動圧が小さくなって、その付勢力によって自動的に過流出防止弁が初期位置に復帰して付勢される。これにより、過流出防止弁が作動してガス流通が阻止された場合でも、スライド弁を閉じ位置に移動させることによって、過流出防止弁を初期位置に復帰させて再びガス流通が可能な状態にすることができる。
【0018】
本発明のガス栓の更なる特徴構成は、
前記当接部材は、前記スライド弁の上流側端部部位にて構成されている点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、当接部材は、スライド弁の上流側端部部位にて構成されているので、スライド弁の上流側端部部位を当接部材として使用して、過流出防止弁とスライド弁によってガス流通を阻止することができる。また、スライド弁とは別に当接部材を設ける必要がなくガス栓本体の軸方向の長さを短くすることができ、さらに、当接部材が不必要となるためプラグ製造時において低コスト化を図ることが可能となる。
【0020】
本発明のガス栓の更なる特徴構成は、
前記ガス栓本体の軸方向に沿って前記初期位置と前記作動位置とに移動自在に前記過流出防止弁を支持する支持部が備えられ、その支持部は、前記過流出防止弁よりも前記ガス流通路の下流側に配置されている点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、ガス栓本体の軸方向に沿って初期位置と作動位置とに移動自在に過流出防止弁を支持する支持部が備えられるので、過流出防止弁のガスの流動圧を受ける受圧部をガス流通方向に対して一定の方向となるように支持することができ、ガスの流動圧を安定して受けることができる。また、支持部は、過流出防止弁よりもガス流通路の下流側に配置されているので、ガスの流れが過流出防止弁の受圧部に至る前に支持部に遮られて、過流出防止弁が受けるガスの流動圧が小さくなることがなく、安定してガスの流動圧を受けることができる。従って、過流出防止弁をガスの流れによる流動圧に対して迅速かつ正確に反応するように作動させることができる。
【0022】
本発明のガス栓の更なる特徴構成は、
前記過流出防止弁には、前記ガス流通路の下流側に延設された被支持部が備えられ、
前記支持部は、前記スライド弁の上流側端部部位に形成され、前記被支持部が前記ガス栓本体の軸方向に摺動自在に挿入支持された溝部にて構成されている点にある。
【0023】
上記特徴構成によれば、過流出防止弁にはガス流通路の下流側に延設された被支持部が備えられるので、ガスの流れが過流出防止弁に至る前に被支持部で遮られて、過流出防止弁の受圧部が受けるガスの流動圧が小さくなることがなく、安定してガスの流動圧を受けることができる。また、被支持部がスライド弁の上流側端部部位に形成され、前記ガス栓本体の軸方向に摺動自在に挿入支持された溝部にて構成されている。これにより、スライド弁の上流側端部部位を被支持部として使用することができ、スライド弁と別途に被支持部を設ける必要がなくなるので、被支持部を設ける場合よりガス栓本体の軸方向の長さを短くすることができる。さらに、被支持部が不必要となるためプラグ製造時に低コスト化を図ることが可能となる。
【0024】
本発明のガス栓の更なる特徴構成は、
前記過流出防止弁には、前記作動位置に移動した場合に、前記当接部材との隙間に嵌り込んでその当接部材に当接する嵌り込み部が備えられている点にある。
【0025】
上記特徴構成によれば、過流出防止弁収容用流路部位と当接部材との間に隙間がガスの流路となっているところ、過流出防止弁によってその隙間を閉じることでガスの流れを遮断することになる。しかしながら、単に、当接部材を過流出防止弁に当て付けるだけでは、ガスの流れを遮断できないこともある。そこで、過流出防止弁が作動位置に移動した場合に、その隙間に嵌り込み部が嵌り込むので、ガスの流通を確実に遮断することができる。
【0026】
本発明のガス栓の更なる特徴構成は、
前記ガス流通路は、上流側から順に、前記過流出防止弁、前記スライド弁を備えて、前記ガス栓本体の軸方向に沿う直線状に設けられている点にある。
【0027】
本特徴構成によれば、ガス流通路内において、過流出防止弁、スライド弁の順で設けられつつ、ガス栓本体の軸方向に沿う直線状に設けられているので、ガス栓本体をコンパクトに構成することができながら、過流出防止弁とスライド弁とをガス栓本体の軸方向に隣接する状態で直線状に並べて配置することができる。したがって、過流出防止弁とスライド弁との位置関係を簡易なものとすることができ、スライド弁の移動を利用して簡易に過流出防止弁をリセットさせることができる。しかも、ガス栓全体を直線状とすることで、ガス栓を設置する場合に、ガス栓本体に接続するガス配管と同軸にガス栓を設置することが可能となり、設置スペースの縮小を図ることができる。更に、ガス栓本体を直線状とすることで、ガス栓を壁内に埋め込む形態や壁を貫通する形態にて設置する場合に、壁に形成する開口部の面積を小さくすることができる。更に、ガス栓全体を直線状とすることで、ガスはその流動を妨げられることなく流れて、最も上流側に位置する過流出防止弁にその流動圧を与える。従って、過流出防止弁をガスの流動圧によって正確に作動させて、ガスの流通を確実に遮断することができる。
【0028】
本発明のガス栓の更なる特徴構成は、
前記スライド弁が、前記ガス栓本体に対するガス接続具の装着及び取り外しに伴って前記閉じ位置と前記開き位置との間で移動する点にある。
【0029】
即ち、本発明に係るガス栓は、スライド弁が前記ガス栓本体に対するガス接続具の装着及び取り外しに伴って前記閉じ位置と前記開き位置との間で移動するようにして、所謂ガスコンセントとして構成できる。
【0030】
このように本発明のガス栓は、スライド弁が操作部に対する押圧操作に伴って前記閉じ位置と前記開き位置との間で移動するようにして、所謂プッシュプッシュ式のガスコックとして構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施形態におけるガス接続具をガス栓本体から取り外している状態でのガス接続具とガス栓との断面図
【図2】第1実施形態におけるガス接続具をガス栓本体に装着している状態でのガス接続具とガス栓との断面図
【図3】第1実施形態におけるガス栓の動きを示す断面図
【図4】別実施形態におけるガス栓の断面図
【図5】第2実施形態のガス栓の開栓時の状態を示す側断面図
【図6】第2実施形態のガス栓のスライド弁及び操作機構部を示す分解斜視図
【図7】第2実施形態のガス栓の過流出防止弁の作動時の状態を示す側断面図
【図8】第2実施形態のガス栓の閉栓動作途中の状態を示す側断面図
【図9】第2実施形態のガス栓の閉栓時の状態を示す側断面図
【図10】第2実施形態における閉栓動作時のガイド溝におけるガイドピンの位置の遷移状態を説明する説明図
【図11】第2実施形態における開栓動作時のガイド溝におけるガイドピンの位置の遷移状態を説明する説明図
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明に係るガス栓の実施形態を図面に基づいて説明する。
<第1実施形態>
本実施形態に係るガス栓は、図1及び図2に示すように、ガス流通路1が内部に形成された円筒状のガス栓本体2を備えており、そのガス栓本体2にガス接続具100を装着することでガス流通路1でのガス流通によりガス供給を行い、ガス栓本体2からガス接続具100を取り外すことでガス流通路1でのガス流通を停止してガス供給を停止する、所謂ガスコンセントとして構成されている。図1は、ガス接続具100をガス栓本体2から取り外している状態を示しており、図2は、ガス接続具100をガス栓本体2に装着している状態を示している。
【0033】
ガス栓本体2には、ガス流通路1を開閉自在なスライド弁Gと、ガス流通路1でのガス流量が一定以上の過流量となった場合にガス流通を阻止する過流出防止弁Hとが備えられている。
【0034】
ガス流通路1は、その流路断面を円形状とし、ガス栓本体2の軸方向(図1及び図2中X方向)に沿う直線状に設けられており、ガス栓本体2の軸方向とガス流通路1のガス流通方向が同一方向となっている。ガス流通路1は、複数の流路部位1a〜1eから構成されており、ガス流通方向の上流側(図1及び図2中X方向右側)から順に、過流出防止弁H、スライド弁Gが備えられている。複数の流路部位として、ガス流通方向の上流側から順に、第1流路部位1a、第2流路部位1b、第3流路部位1c、第4流路部位1d、第5流路部位1eが備えられている。第2流路部位1bは、第1流路部位1aよりも流路径が小さく形成されており、第3流路部位1c(過流出防止弁収容用流路部位に相当)は、第1流路部位1aよりも流路径が大きく形成されており、過流出防止弁Hが配置されている。第4流路部位1dは、第3流路部位1cよりも流路径が小さく形成されており、第5流路部位1eは、上流側よりも下流側の方が流路径を小さくする傾斜状に形成されており、ガス栓本体2の先端部に形成されたガス流出口3に連通されている。
【0035】
スライド弁Gは、ガス流通路1における第4流路部位1dを閉弁自在な第1弁体G1と、ガス流通路1における第5流路部位1eを閉弁自在な第2弁体G2とを備えている。
第1弁体G1は、第4流路部位1dと第3流路部位1cとに亘ってガス栓本体2の軸方向に沿って移動自在に設けられている。第1弁体G1の上流側端部部位の外径が第4流路部位1dの流路径と同一となっており、第1弁体G1が着座する弁座部が第4流路部位1dの内壁部にて構成されている。第1弁体G1は、第4流路部位1dに移動した場合に第4流路部位1dを閉じる閉じ位置に位置し、第3流路部位1cに移動した場合にガス流通を許容する開き位置に位置する。第1弁体G1は、第1付勢部材F1によって閉じ位置に付勢されており、ガス接続具100がガス栓本体2から取り外されている場合には、閉じ位置に位置して第4流路部位1dを閉弁している。
【0036】
第2弁体G2は、第4流路部位1dと第5流路部位1eとに亘ってガス栓本体2の軸方向に沿って移動自在に設けられている。第2弁体G2の下流側端部部位の外径が第5流路部位1eの傾斜部位の流路径と同一となっており、第2弁体G2が着座して閉弁する弁座部が第5流路部位1eの傾斜部位にて構成されている。第2弁体G2は、第5流路部位1eに移動した場合に第5流路部位1eを閉じる閉じ位置に位置し、第4流路部位1dに移動した場合にガス流通を許容する開き位置に位置する。第2弁体G2は、第2付勢部材F2によって閉じ位置に付勢されており、ガス接続具100がガス栓本体2から取り外されている場合には、閉じ位置に位置して第5流路部位1eを閉弁している。
このようにして、スライド弁Gを構成する第1弁体G1と第2弁体G2の両者は、ガス栓本体2の軸方向に沿って閉じ位置と開き位置との間で移動自在で、ガス流通路1を閉じる閉じ位置に付勢されている。
【0037】
ガス栓本体2に対して装着及び取り外し自在なガス接続具100について説明する。このガス接続具100は、既に公知の構成であるので、詳細な説明は省略して簡単に説明する。
ガス接続具100は、第1コイルバネ101により前方側(図1及び図2中X方向右側)に付勢される突出部材102と、ロック用ボール103と、ロック用ボール103の位置を径方向の内側から規制するとともに、ガス栓本体2の先端部に当接して押圧されて引退する内径部材104と、ガス栓本体2に装着される際にスライド弁Gを押圧する棒状の押圧部105とを備えている。
【0038】
ガス接続具100をガス栓本体2に装着する場合には、図2に示すように、ガス栓本体2の先端部が内径部材104に当接して内径部材104を第2コイルバネ106の付勢力に抗して引退させる。内径部材104の引退によりロック用ボール103が径方向の内側に移動して、ガス栓本体2に形成された嵌込溝2aにロック用ボール103が嵌り込んで、突出部材102が第1コイルバネ101の付勢力により前方側(図2中X方向の右側)に突出する。このように、ガス接続具100のロック用ボール103がガス栓本体2の嵌込溝2aに嵌り込むことで、ガス接続具100がガス栓本体2に外嵌装着される。ガス接続具100がガス栓本体2に装着される際に、ガス接続具100の押圧部105にてスライド弁Gが押圧される。この押圧部105によるスライド弁Gに対する押圧によって、第1弁体G1と第2弁体G2の両者が、ガス栓本体2の軸方向に沿ってガス流通路1の上流側(図2中X方向の右側)に移動して、閉じ位置から開き位置に移動することになり、ガス流通路1が開弁されてガス供給が行われる。
【0039】
ガス接続具100をガス栓本体2から取り外す場合には、突出部材102を第1コイルバネ101の付勢力に抗して押込操作することで、嵌込溝2aへのロック用ボール103の嵌り込みが解除されるので、ガス接続具100をガス栓本体2から取り外すことができる。そして、ガス接続具100をガス栓本体2から取り外すと、スライド弁Gに対する押圧部105による押圧が解除され、第1弁体G1と第2弁体G2の両者が、付勢部材F1、F2の付勢力によって、ガス栓本体2の軸方向に沿ってガス流通路1の下流側(図2中X方向の左側)に移動して、開き位置から閉じ位置に復帰されて、ガス流通路1が閉弁される。
【0040】
ガス流通路1の第3流路部位1c(過流出防止弁収容用流路部位に相当する)には、ガス流通路1でのガス流量が一定以上の過流量となった場合に、そのガス流動の流動圧によって初期位置から作動位置に移動する過流出防止弁Hと、過流出防止弁Hが作動位置に移動した場合に、過流出防止弁Hと当接して第3流路部位1cを閉じる当接閉じ位置に位置する第1弁体G1(当接部材に相当する)と、過流出防止弁Hを初期位置に復帰するように付勢する第3付勢部材F3(付勢手段に相当する)とが備えられている。
【0041】
過流出防止弁Hは、弁軸H1(被支持部に相当)と弁体H2によって形成される。弁体H2は、弁軸H1から放射状に外延する複数のリブH2aと、その先端部に設けられて、弁体H2の外周を形成する円環状弁部H2bによって形成されている。また、弁軸H1は弁体H2の下流側面においてガス流通路1の軸方向に突出して設けられている。このように構成された弁体H2の上流側面は、ガスの流れ方向に対して直交して、ガスの流動圧を受ける受圧部Haとなる平面が形成されている。そして、弁体H2において、リブH2aが形成されていない部分をガスの通過を許容する通過許容部H3として、ガスが通過することを可能にしている。
【0042】
また、過流出防止弁Hは、ガス流通路1において、第1弁体G1が閉弁する第4流路部位1dおよび第2弁体G2が閉弁する第5流路部位1eよりも流路径が大きく形成された第3流路部位1cに配置される。そして、ガスの流れから流動圧を受ける弁体H2の受圧部Haは、第3流路部位1cの流路径方向の全体に亘って形成される。つまり、弁体H2は、第3流路部位1cの内周面1cbの流路径方向の全周に接触するように形成されている。
【0043】
そして、弁体H2の外周を形成する円環状弁部H2bは、ガス接続具100がガス栓本体2に装着された際に、図3(c)に示すように、当接閉じ位置にある第1弁体G1の外周面G1aと第3流路部位1cの内周面1cbとの隙間に形成される円環状ガス流路部4(隙間に相当)に嵌り込んでガスの流れを遮断する。円環状弁部H2b(嵌り込み部に相当)は、第1弁体G1の外周面G1aと当接する面がテーパ状に加工されたテーパ面H2cを有している。このように形成された円環状ガス流路部4に円環状弁部H2bが嵌まり込むことで、ガス栓本体2内におけるガス流通路1のガスの流れが確実に遮断される。
【0044】
過流出防止弁Hは、その下流側に延設された被支持部としての弁軸H1を備えている。また、過流出防止弁Hの下流側に位置するスライド弁Gの上流側端部部位には、ガス流通路1の流路径方向の中央部に、下流側に凹入された軸受溝G1c(溝部に相当)が設けられている。この軸受溝G1cに、過流出防止弁Hの弁軸H1がガス栓本体2の軸方向に摺動自在に挿入支持されている。これにより、過流出防止弁Hと第1弁体G1とが軸方向で対向した状態となる姿勢を保ちつつ、過流出防止弁Hが軸方向に往復移動することが可能に設けられ、ガスの流通を許容する初期位置とガス流通を阻止する作動位置とに移動自在とされる。
【0045】
なお、過流出防止弁Hの材質はガスに対する耐腐食性を有し、第3流路部位1cの内周面1cbとの摩擦に対する耐摩耗性を有し、さらに、ガス流通部を閉塞することができる可塑性を有する合成樹脂などとされている。
【0046】
本実施形態においては、スライド弁Gの上流側端部部位となる第1弁体G1が当接部材として使用されている。また、第1弁体G1の当接閉じ位置は、スライド弁Gがガス接続具100によって押圧された上流側の位置となっており、この当接閉じ位置に第1弁体G1が位置する場合には、スライド弁Gは開き位置にある。一方、作動位置に移動した過流出防止弁Hは、図3(c)に示すように、当接閉じ位置に位置する第1弁体G1に当接して第3流路部位1cにおけるガス流通路1を遮断する。この状態でガス接続具100を取り外すと、図3(d)に示すように、第1付勢部材F1の下流側への付勢力によって、第1弁体G1は下流側へ移動して、過流出防止弁Hから離れた離間開き位置に移動し、第1弁体G1と過流出防止弁Hによるガス流通路1の遮断状態が解除される。
【0047】
また、上述のように、第1弁体G1が過流出防止弁Hから離れた離間開き位置に移動して第1弁体G1と過流出防止弁Hによるガス流通路1の遮断状態が解除される場合には、第1弁体G1を上流側端部部位として有するスライド弁Gが第1付勢部材F1の下流側への付勢力によって閉じ位置に移動するので、ガス流通路1内においてガスの流通が阻止された状態となる。そうすると、ガス流通路1内におけるガス流量は当然に一定以下となり、第3付勢部材F3の過流出防止弁Hを初期位置に復帰するように付勢する上流側への付勢力が、ガス流動圧による下流側への力を上回ることとなって、過流出防止弁Hが初期位置に復帰して付勢される。これにより、再びガス流量が一定以上の流量となると、過流出防止弁Hが受圧部Haにおいて受けるガスの流動圧による下流側への力が、第3付勢部材F3の上流側への付勢力を上回って過流出防止弁Hが初期位置から作動位置に移動してガスの流通を遮断することが可能となる。
【0048】
以下、図3に基づいて、スライド弁G、過流出防止弁Hの動きについて説明する。
図3(a)は、ガス接続具100をガス栓本体2から取り外している状態を示している。図3(b)は、ガス接続具100をガス栓本体2に装着した状態を示している。図3(c)は、ガス接続具100をガス栓本体2に装着しているときに、過流出防止弁Hが初期位置から作動位置に移動した状態を示している。図3(d)は、ガス接続具100がガス栓本体2から取り外されて過流出防止弁Hが初期位置に復帰した状態を示している。
【0049】
図3(a)に示すように、ガス接続具100をガス栓本体2から取り外している場合には、スライド弁Gが閉じ位置に位置しており、ガス流通路1がスライド弁Gによって閉弁されている。また、過流出防止弁Hについては第1付勢部材F1の上流側への付勢力によって初期位置に復帰された状態となっている。
【0050】
ガス接続具100をガス栓本体2に接続して、スライド弁Gを閉じ位置から開き位置に移動させた場合には、図3(a)から図3(b)に示した状態に変化する。つまり、第1弁体G1が第3流路部位1cに押し込まれ、第1弁体G1の外周面G1aと第3流路部位1cの内周面1cbとの間にガスの流通が可能な円環状ガス流路部4が形成されて、ガスの流通が可能な状態となる。通常のガス流通状態では、ガス流通路1内におけるガス流量は一定以下となるため、過流出防止弁Hは作動位置に移動せずに、第3流路部位1cにおいて第3付勢部材F3により初期位置に保持されている。
【0051】
そして、ガス流量が一定以上となると、ガス栓本体2は図3(b)から図3(c)の状態となる。つまり、過流出防止弁Hが一定以上のガス流量による流動圧を受けて、第3付勢部材F3による上流側への付勢力に反して、ガス流通路1の下流側に移動し、過流出防止弁Hの円環状弁部H2bが、第1弁体G1と第3流路部位1cの内周面1cbとで形成される円環状ガス流路部4に嵌まり込む作動位置に移動して、円環状ガス流路部4を閉塞してガスの流通を遮断する。
【0052】
次に、円環状ガス流路部4が閉塞された状態でガス接続具100を取り外すと、ガス栓本体2は図3(c)から図3(d)に示した状態となる。つまり、第1弁体G1が第1付勢部材F1の下流側への付勢力によって、下流側に移動するとともに、第1弁体G1と過流出防止弁Hとの嵌り込みが解かれる。そして、図3(d)示すように、過流出防止弁Hは第3付勢部材F3の上流側への付勢力によって作動位置から初期位置に復帰した状態となる。
【0053】
<第2実施形態>
これまで説明してきた実施の形態では、本発明に係るガス栓を、ガス栓本体2に対するガス接続具100の装着及び取り外しに伴ってスライド弁Gを閉じ位置と開き位置との間で移動させてガス器具へのガスの供給と停止との切り替えを行う所謂ガスコンセントとして構成したが、以下に、本発明に係るガス栓を、操作部に対する手動操作に伴ってスライド弁を閉じ位置と開き位置との間で移動させてガス器具へのガスの供給と停止との切り替えを行う、所謂ツマミ付きガス栓として構成した実施形態について、図5〜図11に基づいて説明する。尚、これまで説明してきた実施形態と同様の構成については、説明を割愛する場合がある。
【0054】
本実施形態のつまみ付きガス栓として構成されたガス栓は、図5及び図6に示すように、弁収容部5と、当該弁収容部5に対して夫々が開口するガス流入路1A及びガス流出路1Bが、内部に形成されたガス栓本体2と、弁収容部5に収容され、ガス流入路1Aとガス流出路1Bとの間の開閉を行う弁機構部Aと、操作部11に対する操作に伴って弁機構部Aを開閉させる操作機構部Bとを備えている。
以下、ガス栓本体2、弁機構部A、及び操作機構部Bの詳細構成について、順次説明する。
【0055】
〔ガス栓本体〕
ガス流入路1A及びガス流出路1Bの夫々は、互いの軸線X、Yを直角に交差する状態でガス栓本体2の内部に配置された円形断面を有する流路である。具体的には、ガス流入路1Aの軸線Xを上下方向に配置すると共に、ガス流出路1Bの軸線Yを横向きに配置することで、本実施形態のガス栓は所謂L型のガス栓として構成されている。このように構成されたL型のガス栓は、下から上に向けてガス栓本体2に流入したガスgを横向きに吐出して、側方に配置されたガス機器(図示せず)等に供給する。尚、本実施形態においてガス栓を上記L型のガス栓として構成するのではなく、例えば、ガス流出路1Bを斜め下向きに設けるなど、ガス流入路1Aとガス流出路1Bとの交差角度は適宜改変可能である。
また、弁収容部5は、ガス流入路1Aの上方延長上にガス栓本体2の内部に形成された円形断面を有する空間であり、弁収容部5の下方にはガス流入路1Aが開口し、弁収容部5の側方にはガス流出路1Bが開口することになる。
【0056】
〔弁機構部〕
ガス流入路1A及びガス流出路1Bの何れか一方の特定ガス流通路をガス流入路1Aとし、同特定ガス流通路の軸線である特定軸線をガス流入路1Aの軸線Xとすると、弁機構部Aは、当該特定ガス流通路であるガス流入路1Aの弁収容部5に対する開口部1Aaに形成された弁座部6と、同特定軸線である軸線Xに沿ってスライドして弁座部6に対して着座して当該開口部1Aaを閉塞する閉じ位置と、軸線Xに沿ってスライドして弁座部6に対して離間して当該開口部1Aaを開放する開き位置との間で変位するスライド弁G'とを有して構成されている。
即ち、スライド弁G'は、上下方向に配置されたガス流入路1Aの軸線Xに沿って、上下方向にスライドする。そして、そのスライド範囲の下端位置が、スライド弁G'が弁座部6に着座して開口部1Aaを閉塞する閉じ位置であり、同範囲の上端位置が、スライド弁G'が弁座部6に対して離間して当該開口部1Aaを開放する開き位置となる。よって、本実施形態において、閉じ位置側とは下方側を示し、開き位置側とは上方側を示すことになる。
ここで、図8及び図9にはスライド弁G'が閉じ位置にある状態が示されており、図5及び図7にはスライド弁G'が開き位置にある状態が示されている。
【0057】
〔操作機構部〕
操作機構部Bは、操作者による操作部11に対する下向きの押圧操作をスライド弁G'に伝達させて当該スライド弁G'と共にスライド可能なスライド部Cと、スライド部Cを軸線Xに沿って閉じ位置側から開き位置側に向かう上向きに付勢する軸線付勢手段Dと、スライド部Cのスライドをガイドするガイド部20とからなる。
操作部11は、ガス流入路1Aの軸線Xと同軸上に配置されガス栓本体2の上部を覆う逆カップ状の操作ボタン10の上底部の上面として設けられている。
また、操作ボタン10は、軸線Xに沿って上下方向にスライド可能に設けられており、更に操作ボタン10の上底部の下面とガス栓本体2の上面との間には、ガス栓本体2に対し操作ボタン10を上向きに付勢するコイルバネ13が介挿されている。
尚、このコイルバネ13は、巻線部分が隣接間において互いに離間している通常のコイルバネが利用されており、軸線Xに沿って圧縮力を受けることで同軸線Xに沿って膨張力を発生する。
【0058】
スライド部Cは、軸線X周りに回転自在に設けられたガイドピン18と、当該ガイドピン18を軸線X周りの方向に付勢する回転付勢手段Eとを有して構成されている。
ガイドピン18は、軸線Xと同軸上に配置され当該軸線Xに沿ってスライド可能な円柱状の軸部材17の外表面において、軸部材17の円形断面の径外方向に向けて突出形成されている。
一方、回転付勢手段Eは、操作ボタン10における上底部の下面に一端部が固定され、上記軸部材17の上面に他端部が固定されて、ガス流入路1Aの軸線Xと同軸上に配置されたねじりコイルバネ15で構成されている。
尚、このねじりコイルバネ15は、巻線部分が隣接間において互いに密着しているコイルバネであり、ある回転方向にねじりモーメントを受けることで当該回転方向とは逆の回転方向(図5における右方向)に反発力を発生する。更に、かかるねじりコイルバネ15は、巻線部分が隣接間において互いに密着していることで、一端側から受けた操作部11の軸線Xに沿った下方向の押圧力を、他端側の軸部材17に伝達することができる。
ねじりコイルバネ15の両端部には、突起部16が設けられており、突起部16を含む巻線部分が、操作ボタン10における上底部の下面に形成された溝部12、及び軸部材17の上面に形成された溝部19に嵌め込まれることで、ねじりコイルバネ15の両端が操作ボタン10及び軸部材17に固定されている。
【0059】
軸線付勢手段Dは、巻線部分が隣接間において互いに離間している通常のコイルバネ24からなり、軸線Xに沿って圧縮力を受けることで同軸線Xに沿って膨張力を発生する。
このコイルバネ24は、スライド弁G'の下面と、弁収容部5の下方に設けられた筒状部材H1の上面との間に軸線Xに沿って圧縮状態で介挿されており、筒状部材H1の上面に対してスライド弁G'を上向きに付勢する形態で、スライド弁G'とスライド部Cとを軸線Xに沿って閉じ位置側から開き位置側に向かう上向きに付勢する。
【0060】
ガイド部20は、ガイドピン18が挿入されて当該ガイドピン18の軸線X上のスライド及び軸線X周りの回転を誘導するガイド溝22を外表面に形成した筒状部材21で構成されている。
更に、このガイド溝22には、操作部11に押圧力を付加してスライド弁G'を開き位置から閉じ位置まで変位させるときにガイドピン18をねじりコイルバネ15の付勢力に抗して回転させる回転誘導部22a、22bと、続いて当該押圧力を抜いたときにスライド弁G'を閉じ位置に維持する状態でコイルバネ24及びねじりコイルバネ15により付勢されるガイドピン18が係止する係止部22cとが形成されている。
そして、このような構成により、本実施形態のガス栓は、詳細については後述するが、操作部11に対する一の押圧操作により閉栓動作が行われ、それに続く操作部11に対する一の押圧操作により開栓動作が行われる所謂プッシュプッシュ式の開閉動作を実現している。
【0061】
図10(a)に示すように、このガイド溝22において、回転誘導部22a、22bの閉じ位置側の端部が、ねじりコイルバネ15の軸線X周りの付勢力に抗する回転方向において係止部22cより回転奥側(例えば図10(a)において左側)に位置する。回転誘導部22a、22bの閉じ位置側の端部から係止部22cにかけて、ガイド溝22がコイルバネ24の軸線Xに沿った付勢方向側(即ち上方側)に膨出してなる膨出部22dが形成されている。
よって、ガイドピン18が、その膨出部22dを介して、回転誘導部22a、22bの閉じ位置側の端部から係止部22cに向けてガイド溝22の上辺に沿って直接的に移動可能となり、係止部22cに適切に係止されるようになる。尚、この膨出部22dの形状等は適宜変更可能であり、また、膨出部22dを省略して、閉じ位置側回転誘導部22bの途中に上方に切れ込む係止部22cを形成し、閉じ位置側の端部にガイドピン18がある状態で操作部11に付加する押圧力f11を取り除いたときに、ガイドピン18が閉じ位置側回転誘導部22bを若干逆行しその途中にある係止部22cに係止されるように構成しても構わない。
【0062】
この回転誘導部22a、22bは、軸線X周りの方向において係止部22cよりも閉じ位置側に配置された閉じ位置側回転誘導部22bと係止部22cよりも開き位置側に配置された開き位置側回転誘導部22aとからなる。
更に、ガス流入路1Aの軸線Xの直交面をSとすると、閉じ位置側回転誘導部22bにおける直交面Sに対するガイド溝22のリード角αbが、開き位置側回転誘導部22aの同リード角αaよりも小さく設定されている。
即ち、閉栓動作において、操作部11に押圧力が付加され回転誘導部22a、22bに沿って誘導されるガイドピン18は、開き位置側から係止部22cが形成された位置までの間は開き位置側回転誘導部22aに沿って変位し、その係止部22cが形成された位置からそれよりも回転奥側に形成された閉じ位置側の端部までの間は閉じ位置側回転誘導部22bに沿って変位することになる。
そして、閉じ位置側回転誘導部22bのリード角αbが、開き位置側回転誘導部22aのリード角αaよりも小さいので、ねじりコイルバネ15の付勢力に抗してガイドピン18を閉じ位置側回転誘導部22bに沿って変位させるために必要な操作部11に対する押圧力は、開き位置側回転誘導部22aに沿って変位させるときよりも大きくなる。
以下、ガイド溝22の詳細構成について、本実施形態のガス栓の開閉動作時におけるガイド溝22におけるガイドピン18の遷移状態とあわせて、図10及び図11等に基づいて説明する。尚、図10及び図11において、ガイド溝22は、筒状部材21の外周面を平面に展開したときの状態で示されている。
【0063】
〔閉栓動作時〕
先ず、本実施形態のガス栓の閉栓動作時のガイド溝22におけるガイドピン18の位置の遷移状態について、図10等に基づいて説明する。
スライド弁G'が開き位置にあって開栓しているとき(図5参照)には、ガイドピン18は、図10(a)に示すように、ガイド溝22において回転誘導部22aの開き位置側の端部(図10(a)において右上端部)に位置している。
次に、操作部11に押圧力f11を付加し、その押圧力f11がスライド部Cに伝達されると、スライド部Cに設けられたガイドピン18は、図10(b)に示すように、ガイド溝22において開き位置側回転誘導部22aと閉じ位置側回転誘導部22bとの境界部に移動する。
この移動の際に、ガイドピン18は、コイルバネ24による軸線Xに沿った閉じ位置側から開き位置側へ向かう上向きの付勢力fdに抗して開き位置側から閉じ位置側へ向かう下向きに変位すると共に、ねじりコイルバネ15による軸線X周りの方向への付勢力feに抗して回転することになる。
即ち、開き位置側回転誘導部22aと閉じ位置側回転誘導部22bとの境界部に位置するガイドピン18には、図10(b)において、上向きの付勢力fdと右向きの付勢力feとが付加された状態となっている。
【0064】
更に、操作部11に比較的大きい押圧力f11を付加すると、ガイドピン18は、図10(c)に示すように、ガイド溝22において閉じ位置側回転誘導部22bの回転奥側(図10(c)の左側)の端部に移動し、それに伴ってスライド弁G'は閉じ位置(図8参照)に変位する。
この移動の際においても、ガイドピン18は、コイルバネ24による上向きの付勢力fdとねじりコイルバネ15による右向きの付勢力feに抗して左下方向に移動することになり、移動後のガイドピン18には、上向きの付勢力fdと右向きの付勢力feとが付加された状態となっている。
尚、これら付勢力fd、feは、ガイドピン18の左下方向への変位量が増加するに伴って増加するが、説明を簡単にするためにそれらの符号は同じものを使用する。
【0065】
次に、上記のように操作部11に対して付加していた押圧力f11を取り除くと、図10(d)に示すように、コイルバネ24による上向きの付勢力fdとねじりコイルバネ15による右向きの付勢力feによって、ガイドピン18は、膨出部22dに沿って右上方向にある係止部22cに当接する位置まで移動する。
そして、係止部22cのガイドピン18が当接する壁面の角度が、付勢力fd、feの合力が付加されているガイドピン18が回転誘導部22a、22b側に変位することを防止する角度に設定されているので、当該ガイドピン18の位置は係止部22cに係止された状態で保たれることになり、結果、図9に示すように、スライド弁G'が閉じ位置で維持されて、閉栓動作が完了する。
【0066】
〔開栓動作時〕
次に、本実施形態のガス栓の開栓動作時のガイド溝22におけるガイドピン18の位置の遷移状態について、図11等に基づいて説明する。
スライド弁G'が閉じ位置にあって閉栓しているとき(図9参照)には、ガイドピン18は、図11(a)に示すように、係止部22cに係止される位置にある。
次に、操作部11に比較的小さな押圧力f11'を付加し、その押圧力f11'がスライド部Cに伝達されると、スライド部Cに設けられたガイドピン18は、図11(b)に示すように、付勢力fd、feに抗して左下向きに若干変位することで、係止部22cにおける係止が解除された位置に変位する。
この際に、操作部11に付加される押圧力f11'は、上述した閉栓動作時に付加した押圧力f11よりも小さなものとなっているため、ガイドピン18は、例えば閉じ位置側回転誘導部22bに沿って閉じ位置側に変位することはない。
更に、閉じ位置側回転誘導部22bのリード角αbが開き位置側回転誘導部22aのリード角αaよりも小さく、ねじりコイルバネ15の付勢力feに抗してガイドピン18を閉じ位置側回転誘導部22bに沿って閉じ位置側へ変位させるためには比較的大きな押圧力が必要となるので、その押圧力よりも小さな押圧力f11'で操作部11を押圧した場合には、ガイドピン18が閉じ位置側回転誘導部22bに沿って回転奥側に変位することはない。
【0067】
次に、上記のように操作部11に対し付加されていた押圧力f11'を取り除くと、図11(c)に示すように、コイルバネ24による上向きの付勢力fdとねじりコイルバネ15による右向きの付勢力feによって、ガイドピン18は、開き位置側回転誘導部22aに沿って右上方向に移動し、結果、図5に示すように、それに伴ってスライド弁G'が閉じ位置から開き位置まで変位して、開栓動作が完了する。
尚、本実施形態では、ガイド溝22の回転誘導部を開き位置側回転誘導部22aと閉じ位置側回転誘導部22bとで構成したが、当該回転誘導部を一様のもので構成しても構わない。また、回転誘導部22a、22bのリード角αa、αbについては、一様のものとせずに、例えば開き位置側から閉じ位置側にかけて徐々に減少させるなど、適宜改変可能である。
【0068】
〔リセット手段〕
本実施形態のガス栓は、一定以上の流量のガスgが流れると当該ガス供給を遮断するために、図5に示すように、特定ガス流通路としてのガス流入路1Aには、過流出防止弁H2を備えた過流出防止機構Hとスライド弁G’とが設けられている。尚、本実施形態のスライド弁G’は、第1実施形態の第1弁体G1と形状が異なるものの、本質的な働きは同じである。以下、過流出防止機構Hの働きを、図5〜9に基づいて説明する。
過流出防止弁H2は、図7に示すように、スライド弁G'が開き位置にあるときに、一定以上のガス流量による流動圧を受けると、その円環状弁部H2bが、スライド弁G’の上流側の外周面G’aと、第3流路部位1cの内周面1cbとの間に嵌り込む作動位置に位置して、ガスgの過流出を防止する。
この状態で、操作機構部Bが操作されて、スライド弁G’が開き位置から閉じ位置へ移動(図7から図8へ移動)した状態では、過流出防止弁H2は、作動位置にあり、ガスgの過流出を防止する状態を維持している。
さらに、操作機構部Bが操作され、スライド弁G’が閉じ位置で上流側から下流側へ移動(図8から図9へ移動)する過程、又は閉じ位置から開き位置へ移動(図8から図9を介して図5へ移動)する過程において、過流出防止弁H2は、第3付勢部材F3により上流側へ付勢されている状態で、スライド弁G’が上流側から下流側へ移動することにより、当該スライド弁G’の上流側の外周面G’aと第3流路部位1cの内周面1cbとの間に挟まれた作動位置から、ガスgの流通を許容する初期位置へ復帰する形態で、リセットされる。
【0069】
<別実施形態>
(1)上記実施形態においては、第1弁体G1を過流出防止弁Hの当接部材として使用したが、これに限らず、第1弁体G1と別個に当接部材が設けられてもかまわない。
【0070】
(2)上記実施形態においては、第1弁体G1の上流側側面G1bの流路径方向中心部に設けられた軸受溝G1cを支持部として使用したが、これに限らず、第1弁体G1と別個に支持部が設けられてもかまわない。
【0071】
(3)上記第1実施形態では、複数の流路部位における中心軸を同一として、ガス流通路1を一直線状に設けているが、例えば、図4に示すように、ガス流通路1の上流側部位(第1〜第3流路部位1c〜1c)における中心軸とガス流通路1の下流側部位(第4および第5流路部位1dおよび1e)における中心軸とを流路径方向にずらした直線状のガス流通路1を形成することもできる。このように、ガス流通路1をガス栓本体2の軸方向に沿う直線状に設けるとは、上記第1実施形態の如く、一直線とするものに限らず、図4に示すように、流路径方向にずらしたものも含まれるものとする。
そして、図4に示すものでも、上記第1実施形態と同様に、最も上流側に位置する過流出防止弁がガスの流動圧を受けることで正確に作動して、ガスの流通を確実に遮断することができる。
【0072】
(4)これまで説明した実施形態では、スライド弁Gの外面がガス流通路1の内面に着座してガス流通路1を閉止する例を示したが、例えば、ガス流通路1の内面にシール部材を設け、当該シール部材にスライド弁Gが着座する形態で、ガス流通路1を閉止するようにしても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上説明したように、過流出防止弁によるガス流通の阻止を適切に行うことができるガス栓を提供することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 ガス流通路
2 ガス栓本体
1c 第3流路部位(過流出防止弁収容用流路部位)
1e 第5流路部位(流路部位)
4 円環状ガス流路部(隙間)
F3 第3付勢部材(付勢手段)
G スライド弁
G1 第1弁体(当接部材)
G1b 上流側側面(上流側端部部位)
G1c 軸受溝(支持部、溝部)
H 過流出防止弁
H1 弁軸(被支持部)
H2b 円環状弁部(嵌り込み部)
Ha 受圧部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流通路が内部に形成された筒状のガス栓本体に、閉じ位置と開き位置との間で前記ガス栓本体の軸方向に移動自在なスライド弁と、前記ガス流通路のガス流通方向で前記スライド弁よりも上流側に配置された過流出防止弁とが備えられているガス栓であって、
前記過流出防止弁は、受圧部にてガスの流動圧を受けることで、当接部材から離間してガスの通過を許容する初期位置から前記当接部材に当接してガスの通過を阻止する作動位置に移動自在であり、前記受圧部が、前記ガス流通路の流路径方向の全体に亘る状態で形成されているガス栓。
【請求項2】
前記過流出防止弁は、前記ガス流通路において前記スライド弁の前記閉じ位置に相当する流路部位よりも流路径が大きく形成された過流出防止弁収容用流路部位に配置されており、前記受圧部は、その過流出防止弁収容用流路部位の全体に亘る状態で形成されている請求項1に記載のガス栓。
【請求項3】
前記当接部材は、前記ガス栓本体の軸方向に移動自在であり、前記スライド弁の前記開き位置から前記閉じ位置への移動に伴って前記作動位置に位置する前記過流出防止弁から離れた離間開き位置まで前記ガス流通路の下流側に移動自在に構成され、
前記過流出防止弁を前記初期位置に復帰するように付勢する付勢手段を備えている請求項1又は2に記載のガス栓。
【請求項4】
前記当接部材は、前記スライド弁の上流側端部部位にて構成されている請求項1〜3の何れか1項に記載のガス栓。
【請求項5】
前記ガス栓本体の軸方向に沿って前記初期位置と前記作動位置とに移動自在に前記過流出防止弁を支持する支持部が備えられ、その支持部は、前記過流出防止弁よりも前記ガス流通路の下流側に配置されている請求項1〜4の何れか1項に記載のガス栓。
【請求項6】
前記過流出防止弁には、前記ガス流通路の下流側に延設された被支持部が備えられ、
前記支持部は、前記スライド弁の上流側端部部位に形成され、前記被支持部が前記ガス栓本体の軸方向に摺動自在に挿入支持された溝部にて構成されている請求項5に記載のガス栓。
【請求項7】
前記過流出防止弁には、前記作動位置に移動した場合に、前記当接部材との隙間に嵌り込んでその当接部材に当接する嵌り込み部が備えられている請求項1〜6の何れか1項に記載のガス栓。
【請求項8】
前記ガス流通路は、上流側から順に、前記過流出防止弁、前記スライド弁を備えて、前記ガス栓本体の軸方向に沿う直線状に設けられている請求項1〜7の何れか1項に記載のガス栓。
【請求項9】
前記スライド弁が、前記ガス栓本体に対するガス接続具の装着及び取り外しに伴って前記閉じ位置と前記開き位置との間で移動する請求項1〜8の何れか1項に記載のガス栓。
【請求項10】
前記スライド弁が、操作部に対する押圧操作に伴って前記閉じ位置と前記開き位置との間で移動する請求項1〜8の何れか1項に記載のガス栓。
【請求項1】
ガス流通路が内部に形成された筒状のガス栓本体に、閉じ位置と開き位置との間で前記ガス栓本体の軸方向に移動自在なスライド弁と、前記ガス流通路のガス流通方向で前記スライド弁よりも上流側に配置された過流出防止弁とが備えられているガス栓であって、
前記過流出防止弁は、受圧部にてガスの流動圧を受けることで、当接部材から離間してガスの通過を許容する初期位置から前記当接部材に当接してガスの通過を阻止する作動位置に移動自在であり、前記受圧部が、前記ガス流通路の流路径方向の全体に亘る状態で形成されているガス栓。
【請求項2】
前記過流出防止弁は、前記ガス流通路において前記スライド弁の前記閉じ位置に相当する流路部位よりも流路径が大きく形成された過流出防止弁収容用流路部位に配置されており、前記受圧部は、その過流出防止弁収容用流路部位の全体に亘る状態で形成されている請求項1に記載のガス栓。
【請求項3】
前記当接部材は、前記ガス栓本体の軸方向に移動自在であり、前記スライド弁の前記開き位置から前記閉じ位置への移動に伴って前記作動位置に位置する前記過流出防止弁から離れた離間開き位置まで前記ガス流通路の下流側に移動自在に構成され、
前記過流出防止弁を前記初期位置に復帰するように付勢する付勢手段を備えている請求項1又は2に記載のガス栓。
【請求項4】
前記当接部材は、前記スライド弁の上流側端部部位にて構成されている請求項1〜3の何れか1項に記載のガス栓。
【請求項5】
前記ガス栓本体の軸方向に沿って前記初期位置と前記作動位置とに移動自在に前記過流出防止弁を支持する支持部が備えられ、その支持部は、前記過流出防止弁よりも前記ガス流通路の下流側に配置されている請求項1〜4の何れか1項に記載のガス栓。
【請求項6】
前記過流出防止弁には、前記ガス流通路の下流側に延設された被支持部が備えられ、
前記支持部は、前記スライド弁の上流側端部部位に形成され、前記被支持部が前記ガス栓本体の軸方向に摺動自在に挿入支持された溝部にて構成されている請求項5に記載のガス栓。
【請求項7】
前記過流出防止弁には、前記作動位置に移動した場合に、前記当接部材との隙間に嵌り込んでその当接部材に当接する嵌り込み部が備えられている請求項1〜6の何れか1項に記載のガス栓。
【請求項8】
前記ガス流通路は、上流側から順に、前記過流出防止弁、前記スライド弁を備えて、前記ガス栓本体の軸方向に沿う直線状に設けられている請求項1〜7の何れか1項に記載のガス栓。
【請求項9】
前記スライド弁が、前記ガス栓本体に対するガス接続具の装着及び取り外しに伴って前記閉じ位置と前記開き位置との間で移動する請求項1〜8の何れか1項に記載のガス栓。
【請求項10】
前記スライド弁が、操作部に対する押圧操作に伴って前記閉じ位置と前記開き位置との間で移動する請求項1〜8の何れか1項に記載のガス栓。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−207788(P2012−207788A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−60457(P2012−60457)
【出願日】平成24年3月16日(2012.3.16)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月16日(2012.3.16)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】
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